戻る

資料2

WHO-FICネットワーク会議(旧WHO-FIC
協力センター長会議)について

 2004年WHO−FICネットワーク会議報告

 WHOは健康に関する分類を所有することとされており、ICD(国際疾病分類)、ICF(国際生活機能分類)を「中心分類」とし、プライマリーケアに対する国際分類等の「関連分類」、腫瘍学(ICD-O-3)、精神及び行動障害分類等の「派生分類」によるFIC(分類ファミリー)を形成している。ICDとICFは、国連統計局の定義する標準的統計分類として扱われている。
 FICの概念は2001年に導入され、データの保管、抽出、解析、国際比較といったニーズに対応するものである。(別紙1参照)
 WHOは、WHO保健分類を開発、維持、普及するために世界に協力センターを認定し、年1回のセンター長会議によって保健分類に関する運営を行ってきたが、近年、この年次会議外での活動も活発になったことから、以前の協力センターの活動をWHO−FICネットワークとして見直す(2003年10月)に至った。(別紙2参照)

(1) 年月日、場所等

 平成16年10月24日〜30日、アイスランド国、レイキャビク市において開催された。同会議において話し合われた重要事項で、かつ、わが国にも関連が深いと考えられる項目については次のとおりである。

(2) ICD-10の改正(アップデート:ICD-10のまま一部改正を行うもの)

 ICD-10改正の必要性については、1989年のICD-10に関わる会議においてWHOで決定され、1996年のWHO-FIC協力センター長会議(東京開催)で承認を得た。しかしながら、正式な改正プロセスは、MRG(1997年)、URC(2000年)の設立をもって開始された。
 3年に1度の大改正、1年に1度の小改正をもって、改正のサイクルが決定され、現在、2007年までの改正スケジュールが決定している。また、ICDのヴァージョンコントロールもURC改正のスケジュールに連動して行われている。
 ICD-10は1900年に初版が出版され、第2版(2003年版)が、近日出版予定である。また、ICD-10の電子媒体版(2003年版)については、2004年10月完成し、WHOのウェブサイトからダウンロード可能である。

 なお、わが国は、1990年版を使用しているため、平成16年10月14日の本分科会において設置が認められた「疾病、傷害及び死因分類部会」において、現在までにWHOから勧告されたICD-10の一部改正のわが国への適用について検討することとしている。

(3) ICD-10の改訂(リビジョン:ICD-10をICD-11に改訂)

 ICD-10は、1990年、第43回WHO総会決議で承認されたものであるが、ICD-10以降の改訂については、これまでの10年サイクルでの改訂ではなく、ICDをより広く普及するため、意図的に2010年以降の改訂とした。
 2003年のWHO-FICネットワーク会議で、ICD-10が医学の進歩に即していないた めこの改善を図るようにとの、国際学会等からの要望についての報告がWHO側からなされ、ICD-10改訂の必要性が議論されるようになった。これを受けて2004年5月に第1回ICD-10の改訂に関する企画委員会が開催された。ICD-10の改訂の必要性、改訂するとすればその時期、方向性等についての議論は、2004年ネットワーク会議、これに続くジュネーヴ会議でも議論されたが、ICD-10を導入していない国が約80か国にのぼること、ICD-11に改訂するためのコストが莫大で対応できない、統計の連続性が確保できるか、などの意見が表明され、最終的な結論は出されなかった。

(4) 医療行為(手術、処置)の分類(「その他の保健関連分類」)

 医療行為の分類(ICHI)ベータ版(使い勝手や信頼性などをみるため、現場で使ってみるもの)が、WHO-FICネットワークFDC委員会の監督下においてオーストラリアセンターにより作成された。ICHIは、自国の分類を持っていない国のために作成されている。

(5) 標準用語

 標準用語については、IND(国際疾病用語)がICDの関連として取り扱われてきた。INDはWHOが出版した用語集であり、ICD-9対応で出版年が1979年から1992年であることから、現在の医学の進歩に合っていない。医学のIT化(電子カルテ)においては、標準用語の使用が重要であるが、IND以降のWHOとしての正式な用語集はない。英語圏を中心にSNOMED-CTR(アメリカ病理学会出版)が使用されているが、世界的なコンセンサスは得ていない。また、WHO-FICのメンバーともなっていない。

(6) ICD−XM

 ICDは統計分野ではICD-10が使用されているが、医療現場でもICDが利用されるようになり、統計分野とは別に医療現場向けに各国の医療システムに応じた各国版が作られている(これらを総称してICD-XMと呼んでいる)。XMは、医療現場で使用されることから、医学の進歩と連動している他、自国の医療制度、特にDRGに代表されるCasemixグループに基づいている。ICD-XMは、WHO-FICの正式分類ではないが、現存のICD-XMについてメタデータベース化し、標準化されたICD-XMを作成し、自国での作成ができない国に提供するという議論もある。現存するXMは以下のとおりである。

 ICD-9-CMとICD-10-CM(アメリカ)、ICD-10-CA(カナダ)、ICD-10-GM(ドイツ)、
 ICD-10-AM(オーストラリア)、ICD-10-TM(タイランド)

(7) 平成17年(2005年)WHO−FICネットワーク会議

 2005年WHO-FICネットワーク会議の日本開催が決定された。


 2005年WHO−FICネットワーク会議の日本開催への対応

(1) これまで、わが国はオブザーバーではあるが、センター長会議には1980年から出席しており、協力センターの機能を果たしている。本会議は、参加主要国の持ち回りで開催されており、日本においては昭和61年(1986年)、平成8年(1996年)の2回、開催している。2005年の日本での開催については、WHOからの強い要請があったこと及びICDに関する国際貢献の点からやむを得ないものと判断したものである。

(2) 本会議は、協力センターが持ち回りで開催するものであるが、わが国はセンターを置いておらずオブザーバーであることもあり、平成8年(1996年)の日本開催では、厚生統計協議会(現社会保障審議会統計分科会)の4名の委員の方々に会議の議長などの役割をお願いした。このため、2005年の日本開催においても、平成8年同様、社会保障審議会統計分科会の委員の方々に同様の対応をお願いしたい。


別紙 1

世界保健機関国際分類ファミリー

World Health Organization Family of International Classifications(WHO-FIC)


関連分類


プライマリーケアに対する国際分類(ICPC)

  症状、疾病、診断、予防等の、国民の健康、疾病に対する総合的・継続的ヘルスケアにおける分類

外因に対する国際分類(ICECI)

  損傷、中毒及びその他の有害作用の原因としての周囲の状況及びできごとの分類

解剖、治療の見地から見た化学物質分類システム

  1日使用薬剤用量を基準とした薬物、薬剤等に関する分類

障害者に対する補助機能の分類及び用語集(ISO 9999)

  国際標準化機構(ISO)規格による福祉機器の分類と用語集

中心分類


国際疾病分類

(ICD)


疾病、傷害及び死因の統計を国際比較するための分類

国際生活機能分類

(ICF)


人間の生活機能と障害に関して分類したものであり、心身機能・身体構造、活動、参加等の因子で構成

医療行為の分類

(ICHI)

[ 作成中 ]


術式、治療行為等に関する分類

派生分類





より適切な分類を行うためのICD-10を補助する詳細な分類。





腫瘍学第3版(ICD-O-3)



精神及び行動障害の分類



歯科学及び口腔科学への適用第3版(ICD-DA)



神経疾患への適用(ICD-10-NA)






別紙 2

WHO−FICネットワークについて


 WHO-FICネットワークは、WHO-FICの開発、導入、普及を行う目的のために構築され、WHO-FIC協力センター、WHO本部事務局、地域事務局で構成される。ネットワークは、WHOと協力センターの年次会議により、管理、運営される。大きな案件についての決定は、WHO本部の承認が必要とされる。
 WHOは、各国の幅広い知識、情報を得るとともに、各国の相互扶助を図ることを求めていることから、その地域に協力センターがないなどの理由により協力センターとの連携が確立していない国であっても、WHO-FICネットワークに参加し、支援を得ることができる。


 WHO-FICネットワークは、企画実行委員会を含め、6つの委員会によって運営されている。

企画実行委員会(Planning Committee )

 ネットワーク会議からネットワーク会議までのネットワークの運営を担当する。委員長、直近の開催国センター長、次回開催国センター長、次々回開催国のセンター長、5つの委員会の委員長、WHO事務局で構成される。ネットワークに関する執行計画の遂行状況を把握するとともに、ネットワーク会議の企画を行う。毎年4月に国際分類ファミリー拡張委員会との合同会議を開く。

国際分類ファミリー拡張委員会(Family Development Committee)

 各分類が全体としての整合性を確保できるよう、ある分類をWHO-FICに加えるかどうかの基準を設け、新たにWHO-FICに参入する分類についての審査を行う。WHO-FICの各分類の改訂方法についての勧告を行うことも可能である。毎年4月に企画実行委員会との合同会議を開く。
 この委員会には、(1)用語ワーキンググループ(2)ホスピタルデータ・ワーキンググループ(3)プライマリケアー・ワーキンググループがある。

普及委員会(Implementation Committee)

 WHO加盟国に於ける、WHO-FICの導入、普及を行うことを目的とする。ICDとICFの2人の委員長を持つ。

教育委員会(Education Committee)

 実務の最高水準を設定し、教育についての専門的・実務的経験を共有するようネットワークを作るなど、WHO-FICの教育を推進することを目的とする。

分類改正委員会(Updating and Revision Committee)

 WHO-FICの各分類の改正(アップデイト)の必要性を評価し、ネットワーク会議にむけて、詳細な原案を作成する。死因分類改正グループ(MRG)を下部部会として置き、死因に関わるコーディングルールの明確化やルール及びコードの修正、変更等の勧告を行う。WHO-FICの分類の改訂がネットワークにおいて承認された場合には、WHO-FICの改訂作業を担当することもあり得る。

電子媒体委員会(Electronic Tools Committee)

 共通の基準と知識を用いて実務が行えるようWHO-FICにおける各種分類の電 子化の企画、実施を目的とする。



 WHO−FICネットワーク会議は、毎年10月下旬の1週間、WHOの主催で開催される。企画実行委員会委員長と開催国センター長が総括議長を務める。参加にはWHOの承認が必要であり、自費での参加となる。
 会議形態の要約は次のとおりである。
 ・ 開会全体会議では、議題の採択、全議事の議長、書記の決定、各委員会、ワーキンググループ、WHO事務局からの年次報告を行う。
 ・ 各委員会とそれに付随するワーキンググループの会議は同時並行して行われる。
 ・ 科学論文発表の枠を設ける。
 ・ ネットワーク必須業務に関する討議、採択を行う全体会議を設ける。
 ・ 最終セッションでは、次年に向けての業務計画、会議報告を採択し、委員長の任命があればこの場で行う。
 ・ 論文掲載は、会議開催10業務日(土日含まない)前に、ウェブに掲載する。間に合わない場合は自身で持参する。
 ・ 会議開催年の年末までに報告書を完成する。


WHO−FICネットワーク


図

WHO-FIC協力センター(2004年11月現在)

アメリカ合衆国国立保健統計センター
イギリス全国統計局
オーストラリアオーストラリア国立保健福祉研究所
オランダ国立公衆衛生環境研究所
クウェート公衆衛生省統計・医療記録部
ドイツドイツ医療統計研究所(2003年から)
ブラジルサンパウロ大学公衆衛生学教室
フランス国立衛生・医学調査研究所
ベネズエラベネズエラ疾病分類センター
北欧スウェーデン国ウプサラ大学病院社会医学部
中国北京医科大学病院
ロシアセマスコ科学調査研究所

 + 日本(オブザーバー)


トップへ
戻る