厚生労働大臣
尾辻 秀久 殿
労働政策審議会 会長 西川 俊作 |
労働政策審議会
会長 西川 俊作 殿
労働条件分科会 分科会長 西村 健一郎 |
1 | 労働時間対策については、国際的に経済構造調整を求められていた情勢等を背景に、昭和63年以後 累次の閣議決定において「年間総実労働時間1800時間」を政府目標とし、平成4年に労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(以下「時短促進法」という。)を制定してからは、同法に基づく労使の自主的取組を促進し、労働時間の計画的な短縮を推進してきたところである。 特に「年間総実労働時間1800時間」という数値目標は、完全週休2日制の下で年次有給休暇を完全取得するような働き方を、労使はじめ国民に認知させる上で大きな役割を果たすとともに、我が国が内需拡大等を強く求められていた平成年代初頭の経済環境に照らしても有意義なものであった。 こうした目標の下での労使による真摯な取組や、これに対する行政の指導援助の結果、完全週休2日制の普及等が進展し、労働者1人当たりの平均年間総実労働時間は平成4年度に1958時間であったものが平成15年度には1853時間と約100時間短縮したところである。 |
2 | 近年、年間総実労働時間は短縮から横ばいに転じ、平成12年度以後おおむね1850時間前後で推移しているが、15年度の総実労働時間を一般労働者、パートタイム労働者別に12年度と比較してみると、一般労働者で17時間増の2016時間、パートタイム労働者で12時間増の1184時間となっており、いずれも所定外労働時間を中心に増加する中で、パートタイム労働者の比率が2.1ポイント上昇し、結果的に年間総実労働時間の増加を止めている状況にある。 また、「労働力調査」により週労働時間別の雇用者の分布をみると、経済のグローバル化の進展に伴う企業間競争の激化等を背景に、35時間以上60時間未満の雇用者が減少する一方、35時間未満の雇用者と60時間以上の雇用者がともに増加し、いわゆる「労働時間分布の長短二極化」が進展している。 さらに、「就労条件総合調査」により年次有給休暇の取得状況をみると、取得日数の減少及び取得率の低下傾向が8年間続き、平成15年度には取得日数が8.5日、取得率が47.4%となった。年次有給休暇の計画的付与制度がある企業の割合も、平成10年度の19.5%から平成15年度の14.4%へ趨勢的に低下している。 こうした中で、過重労働による脳・心臓疾患の労災認定件数が年間310件以上を記録し、精神障害等の労災認定件数も増加するなど、働くことをめぐる健康障害が社会問題化していると言って過言ではない。 |
3 | 一方、人材を基盤とする我が国において、急速な少子高齢化、労働者の意識やニーズの多様化等が進む中で、経済社会を持続可能なものとしていくためには、その担い手である労働者が職業生涯を通じて意欲と能力を十分に発揮できるようにしていくことが重要である。 したがって、今後のあるべき姿としては、労働者一人一人の心身の健康が保持されるとともに、その職業生涯の各段階において、家庭生活、地域活動及び自己啓発等に必要とされる時間と労働時間を柔軟に組み合わせ、心身ともに充実した状態で意欲と能力を発揮できるような環境を整備していくことが求められる。 同時に、グローバル化の進展に伴い企業間競争が激しさを増し、時間ではなく成果によって評価される仕事が拡大する中で、企業の側にとっても、効率的な事業運営の観点から、こうした環境の整備を通じて、企業活動の担い手である労働者が着実に成果を上げられるようにしていくことが期待される。 また、社会的にみても、こうした環境の整備を通じて、男性を含めて労働者が家庭や地域で過ごす時間が増加することにより、家庭や地域の再生、ひいては少子化の緩和にも資することが期待される。 |
4 | 労働時間をめぐって我々が直面している諸問題と、今後のあるべき方向性との乖離を是正していくためには様々な取組が必要とされるが、とりわけ今後の労働時間対策においては、事業場における労働時間、休日及び休暇(以下「労働時間等」という。)の在り方を、労働者一人一人の希望も踏まえつつ、その健康や生活に配慮したものとしていくことが必要である。 その際、個々の労使が時短促進法の下で培ってきた事業場における推進体制を発展的に継承し、労働時間等の在り方を改善する労使の自主的取組を促進していくことが効果的である。 以上の認識に立って、本分科会としては、9月28日以後4回にわたる調査審議の結果、「平成18年3月31日までに廃止するものとする」と規定されている時短促進法及び同法に基づく労働時間対策等について、下記のとおり見直すことが必要であるとの結論に達した。 |
1 | 法改正の基本的な方向性 時短促進法については、労使の自主的取組を促進するための努力義務を中心とする法律という基本的な性格は保ちつつも、労働時間の短縮の目標(「年間総実労働時間1800時間」)に向けた取組を推進するための法律から、事業場における労働時間等の設定を労働者の健康や生活に配慮するとともに多様な働き方に対応したものへ改善するための法律に改めることが適当であること。
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2 | 具体的な改正内容
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3 | その他
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