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雇用均等室における男女雇用機会均等法
に係る相談事案の概要


■女性であることを理由に正社員の採用の対象から排除されたとする事案
(男女雇用機会均等法(以下「均等法」)第5条関係)

相談内容】
 新聞折り込み求人広告に掲載されていた正社員募集に応募したところ、正社員については男性を対象とするものであると断られた。男性のみを対象にするとの理由で断るのはおかしいのではないかと会社に申し出たが、説明はなかった。男女不問の取扱いをしてもらえるのであれば再度応募したいので、会社を指導して欲しい。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取したところ、会社は、これまでも女性からの応募があったが、業務の都合上、宿直勤務が欠かせず、遺体を清める業務が含まれるとの仕事内容を説明するとすべて断られたため、女性は正社員として採用するのではなく、パートとして勤務してもらい、仕事の継続意思があると確認できた時点で正社員への登用を考えることが適当ではないかと考え、正社員への応募の受付は男性のみとしたものであると主張した。
 室は、会社に対し、応募の受付の対象を男性のみとすることは均等法第5条に違反するものであり、これを是正し、男女とも応募の受付を行うこと、また、その際、応募者には仕事内容を説明し、意向を確認の上、意欲、能力といった男女同一の選考基準に基づき選考することを指導した。

会社の対応等】
 室の指導により、会社からは、今後は男女とも応募の受付をすること、応募者には仕事内容を説明し、意向を確認の上、意欲、能力を考慮し選考すること、再度相談者から応募があった場合は、受付をし、上記の選考方法で採用について判断したいとの回答がなされた。室は、このことを相談者に伝え、相談者は再度応募できることとなった。


■採用面接について、男女異なる取扱いをしたとする事案(均等法第5条関係)

相談内容】
 新規採用のための面接試験に臨んだところ、第1次、第2次面接までは、男女混合で面接が行われていたが、最終面接となる第3次面接では、女性より先に男性の面接日が設定されていた。男性を優先して内定している可能性があるので、男女同一の面接日とするよう会社に対し指導して欲しい。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取したところ、会社は、(1)第3次面接については、男性は最も早い者で4月下旬、女性は5月中旬に実施したが、これは、たまたま面接会場や応募した学生の都合で早い面接日に男性が集中していただけのことであり、男女とも遅い者は6月上旬となっており、差別的取扱いを行う意図はない、(2)また、結果としても、男女同一の採用基準の下、男性は8人、女性は10人を採用している、と主張した。
 室としては、採用選考に当たって、女性より男性を優先して内定するとの方針があることが疑われたため、会社に対し、採用者の内定通知日を確認したところ、会社は全員同日と回答し、6月上旬の日付となった内定通知書の写が1通提出された。 室は、さらに内定採用者それぞれについて、内定をいつ決定したのかがわかる選考者名簿等の資料の提出を求めたが、内定日は通知日の日付であり全員同日との回答しか得られず、男性を優先して内定しているとは断定できなかった。
 しかしながら、面接会場や学生の都合によるとしながらも、早い面接日に男性が、遅い面接日に女性が集中し、これら面接日に1ヶ月の開きがあることは、応募者から誤解を招くことにもなりかねないので、室は、会社に対し、男女同一の面接日とするよう指導した。

会社の対応等】
 室の指導により、会社からは、次期の募集において面接を実施する場合においては、面接会場や応募者の都合を考慮しつつも、男女同一の面接日とするよう配慮する旨の回答がなされた。


■コース振り分けにおいて女性であることを理由に総合職から排除されたとする事案 (均等法第6条関係)

相談内容】
 入社10年目で初めて昇格辞令が交付され、この10年間、昇格しなかった理由について直属の部長に説明を求めたところ、人事制度がコース別雇用管理となっており相談者が一般職であることから、コースの違いによって処遇差が生じているとの回答があり、自分が一般職であることを初めて知った。相談者は、男性総合職と同様に倉庫管理、荷物の運搬作業に従事していたため、一般職から総合職への転換希望を部長に申し出たところ、総合職は重量物の取扱い等物流作業全般に従事できる必要があるが、女性は重量物の取扱業務が制限されているため総合職にはできないと申出を拒否された。このような取扱いは納得できない。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取したところ、会社は、総合職には女性の就業制限に係る重量物の取扱業務があることから、女性である相談者を総合職にはできないものの、相談者の高い意欲は評価しているので、総合職とほぼ同じ処遇ではあるが、重量物の取扱業務が求められず、全国転勤のない専門職を今後目指すことで双方合意していたはずであると主張した。
 室は、会社に対し、重量物の取扱業務に従事する可能性があることを理由として総合職から女性を排除し、総合職を男性のみとすることは、総合職が従事する業務のすべてに重量物の取扱業務が含まれるものではなく、総合職のほとんどは重量物の取扱業務に従事していない現状を勘案すると、均等法第6条に違反するものであり、こうした制度運用を是正するよう指導した。また、コース区分間の職務内容や職務遂行上求められる能力を社員に対し明確に伝え、コース振り分けに当たっての説明を徹底するとともに、本人の希望の考慮について検討するよう指導した。

会社の対応等】
 室の指導により、会社は、総合職は男性のみという制度運用を是正した。また、相談者は家庭の事情により全国転勤には応じられないこともあったことから、専門職への転換を目指すこととなり、会社は相談者について、研修への参加等必要な能力を修得できるよう配慮し、専門職への転換を検討することを確約した。


■出産後の職場復帰に当たり、一方的に時間外労働のない補助的業務へ配置換えされ たとする事案(均等法第6条関係)

相談内容】
 第2子の産休期間中に休業前の配属先である調査部門の組織変更があったため、休業終了後は新設された部門の補助的業務に配置換えするとの内示があった。復帰後、短時間勤務で働きたいとの申出等は行っておらず、一方的に決定されたものである。研究職として採用されており、研究職として職場復帰したいと申し出るも受け入れられず、納得できない。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取したところ、会社は、相談者の休業前の配属先については組織変更により廃止したため、各部門のマネージャーとも相談し復帰先を検討したが、(1)調査部門内のグループ間の研究職の配置換えは各グループの専門性が高いため困難であること、(2)相談者は保育所の迎えの時間には退社したいとの意向があること、から相談者に配慮し時間外労働のない復帰先を内示したものであり、研究職としての処遇に変更はないと主張した。
 室は、会社に対し相談者はこれまでフレックスタイム制を利用し時間外労働も行ってきており、第2子出産により時間外労働のない業務への配置を望んでいるわけではないにもかかわらず、相談者を補助的業務に配置することは、一方的に子供を有することを理由に女性のみを補助的業務に配置するもので、均等法第6条に違反する取扱いであり、相談者を調査部門に研究職として復帰させるよう指導した。

会社の対応等】
 室の指導により、会社は、相談者に対する配置換えの内示を撤回し、相談者は調査部門に研究職として職場復帰することとなった。


■女性であることを理由に同学歴の男性と比べ昇進が大幅に遅れたとする事案
(均等法第6条関係)

相談内容】
 事務職として入社後、人事異動により専門職として従事し勤続20年となるが、待遇は一般職員のままとなっている。一方、後から入社した同学歴の男性は入社2年目で主任に昇進しており、昇進に差が付いているのは納得できない。人事ヒアリング時には再三人事考課の仕組みについて説明を求めているが、明確な説明もない。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取を行ったところ、会社は、昇進について男女差別的な制度や方針はないと主張するも、明確な要件が定められておらず、裁量的な部分が多いことが判明した。また、相談者の後に入社し2年で昇進した男性については、部内で人員が不足した際の働きぶりを認め昇進を決めたものであるが、相談者については現在の職務に対する能力を認めつつも、昇進させるには能力が不足していると主張した。
 室が、会社に、相談者及び相談者と同学歴である男性との間の昇進の格差及びその理由を確認したところ、会社は格差の存在は認めたものの、資料等は作成していないと主張し、十分な説明は得られなかった。
 室は、会社に対し、昇進について明確な基準の説明も無い中で、相談者の現在の職務に対する能力を認めながら昇進させるには能力が不足しているとするのは具体性に欠け、男女間の差が生じていることについて差別的取扱いがなされていることが疑われることを指摘し、次期昇進時に向けて、昇進要件を明らかにするとともに均等な取扱いをするよう指導した。また、相談者の能力が不足していると言うのであれば、人事ヒアリングの際、人事考課の結果をフィードバックすべきであり、能力発揮できるチャンスを与えず昇進を見送ることは適切ではなく、改善すべき旨併せて指導した。

会社の対応等】 
 室の指導により、会社は、相談者に対し改めて面接を行い、相談者の職務遂行能力上改善すべき点を指摘するとともに、OJTを通して職務遂行能力の向上について取り組んだ結果、相談者は翌年の昇進時に昇進することとなった。


■女性についてのみ昇格試験の受験候補者に登録してもらえないとする事案
(均等法第6条関係)

相談内容】
 25年前に補助職として入社し、コース別雇用管理制度導入時に総合職となり現在に至るが、管理職への昇格試験を受験させてもらえず、一般社員のままとなっている。昇格試験の受験候補者に登録されないことについて部長に説明を求めたところ、査定が基準に満たないので登録できなかったとの回答であったが、そもそも受験候補者の登録の決定基準が不明確であり、その結果昇格の機会を奪われたと思われる。相談者のみならず女性全体の昇格が遅れていることにも不満があり、今回の昇格に係る事実関係を明らかにするとともに、昇格の遅れの改善を求めたい。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取したところ、会社は、相談者よりも上位の評価であっても、基準に達していないため昇格試験の受験候補者に登録されなかった男性もおり、女性であることを理由に登録しないということはないと主張したが、相談者の評価者である部長が登録の決定基準を十分理解しておらず、その結果相談者が登録されなかった可能性があること及び男性に比べて、女性の昇格が遅れていることを認めた。
 室は、相談者より上位の成績の男性も今回登録がされなかった事実が請求して得られた資料により裏付けられたことから、相談者の今回の登録に関しては男女差別があったとはいえないと判断した。
 しかしながら、(1)登録の決定基準が考課者に十分周知されていないことにより、考課の判断に安定性が失われ、考課者によっては女性を不利に扱う判断となりうることは否めないこと、(2)とりわけ昨年度昇格した者と比べて相談者の評価が必ずしも低くないことから、室は会社に対し、来年度の昇格試験の受験候補者として相談者を登録するとともに、昇格についても配慮するよう指導した。また、女性全体の昇格が男性に比べ遅れている事実が認められたため、ポジティブ・アクションの取組を行うことを併せて指導した。

会社の対応等】
 室の指導により、会社は、相談者を来年度昇格試験の受験候補者に登録すること及び昇格について配慮することを確約するとともに、考課者への研修を行うことや、女性の教育訓練等のポジティブ・アクションの取組を進めていくこととなった。


■営業研修から女性が排除されているとする事案(均等法第6条関係)

相談内容】  金融機関に勤務して2年目であるが、来年2月に2年目社員を対象に営業に出すための研修が行われる予定である。しかし、その対象として同期の男性は全員声をかけられたが、女性は一人も声をかけられなかった。周りの状況をみると、営業に出ている女性もいないし、女性の先輩、同期は無理して営業に出なくてもと考えているようである。今後、営業経験がない者は昇進の機会もないものと思われる。今回の研修を受け、男性と同じスタートラインに立ちたいので、会社を指導して欲しい。

雇用均等室の対応】  室が事情聴取したところ、会社は、かつては営業職として女性を中途採用したり、研修の後、中堅の女性社員を営業職に配置したことはあったが、(1)営業業務は、天候にかかわらず重い鞄を自転車やバイクに載せ、一人で顧客を回るという仕事であり、暗くなってくると危険も多いこと、(2)営業職の女性から、営業はきついとの不満が多く聞かれ、退職者も出たことから、現在は営業職に女性を配置しておらず、このような経緯から、営業研修の対象を男性のみとしたと主張した。  室は、会社に対し、営業職への配置から女性を排除することや、そうした方針の下で営業研修から女性を排除することは均等法第6条に違反するため、これを是正し、男女とも配置の対象にするとともに、研修の対象とするよう指導した。また、運用において、男性には研修の受講を奨励するが、女性には研修の受講希望を取り下げるよう促すことも均等法に違反するため、このようなことを行わないよう指導した。併せて、これを機に、女性に営業研修の受講を奨励するなどし、営業職への女性の配置に取り組むよう指導した。

会社の対応等】  室の指導により、会社は、営業研修への参加を公募制とし、研修を受講した社員のうち意欲、能力のある者を営業職に配置する方針に改めた。また、営業研修の対象者選考方法の変更については、会議の場で各支店長に対し文書を示しつつ、均等法の考え方と併せて説明を行い、その中で女性に営業研修の受講を奨励するよう、指示を行った。これにより、相談者を含む女性5人が営業研修を受講できることとなった。


■妊娠し、産休の申出をしたことを理由に有期契約の更新がされないとする事案(均等法第8条関係)

相談内容】
 有期契約社員として5回契約を更新し、2年半近く勤務しているが、この度、直属の上司に妊娠を報告し、産休の申出をしたところ、次回の契約更新は無いと言われた。契約を更新し今後も働き続けたい。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取を行ったところ、会社は、(1)現在、グループ企業全体で人員削減を行うとの方針の下、退職者が出た場合には欠員補充をしないという形で社員を減らして行くこととしている、(2)最新の契約更新の際に、更新は今回限りとするとの説明は行っていないが、契約書には会社の都合により途中解雇もあり得ることを記載している、(3)契約社員について、妊娠や出産を理由として契約更新しないという方針はなく、グループ会社の中には、妊娠・出産後も継続勤務している例もあるが、相談者について契約を更新することは考えていない、と主張した。 
 室は、会社に対し、(1)従来、契約更新について話し合いもなく自動的に更新を重ねるなどの契約更新の方法が採られており、実質においては期間の定めのない雇用契約と考えられること、(2)人員削減については、社員から退職の申出があれば欠員を補充しない形で行っているが、相談者については、退職の申出はしておらず契約の更新を望んでいるのに妊娠報告の後契約更新はしないとしていることを勘案すると、契約期間満了による雇い止めであっても妊娠を理由とする解雇に当たり、均等法第8条に違反するものであり、雇い止めをしないよう指導した。

会社の対応等】
 室の指導により、会社は、相談者の契約を更新することとし、相談者は勤務を継続し産休を取得することとなった。


■女性であることを理由に退職勧奨されたとする事案(均等法第6条、第8条関係)

相談内容】
 上司から女性である相談者のみ退職勧奨され、他の仕事を探して欲しいと言われている。年齢も高く、子を養育する必要もあるため、現在の職場で継続勤務できるようにして欲しい。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取したところ、会社は、(1)業務内容を変更することとなったことから、全員が宿直勤務を伴い、かつ一定の知識を要する機械の運転保守業務を行うことが必要となった、(2)しかし、相談者は従前、機械の運転保守業務を行ったことがないのに加え、深夜勤務があるため女性には無理であると考えたことから、相談者に対し退職勧奨したものであると主張した。
 室は、会社に対し、平成11年4月より女性の深夜業の規制は解消されており、一定の職務から女性を排除し、退職を強要することは均等法第6条及び第8条に違反するものであり、相談者に宿直勤務の可否について確認をし、宿直勤務から予め女性を排除しないよう指導した。また、相談者は機械の運転保守業務を行うことができるよう研修を受講したり資格を取得することにも意欲を持っているので、会社として支援するよう指導した。

会社の対応等】
 室の指導により、会社は、退職勧奨をやめるとともに、相談者が宿直勤務を了解したため、機械の運転保守業務のための研修を実施した結果、相談者は他の社員と同一のローテーションで勤務することとなった。


■切迫流産で医師の指導に従い安静のため欠勤したところ、退職勧奨された事案
(均等法第8条、第22条、第23条関係)

相談内容】
 介護老人保健施設の介護職として勤務していたが、妊娠が判明した直後、切迫流産で2週間入院、退院後も1週間休み、一旦復職したが、再び体調が悪化し、1週間休んだ。医師から「お腹が痛むときは安静が必要」と指導されていたため、症状が出るたびに、施設に電話の上休みを取っていたが、事務長から「体調が悪いなら、一旦退職してもらい、出産後再雇用したいがどうか」と退職勧奨された。しかし、体調が落ち着けば、復職したいし、産休、育休を取得して継続就業したい、また、再雇用を保証すると言われても不安である。

雇用均等室の対応】
 室が事情聴取を行ったところ、施設は、(1)相談者の勤務状況について、退院後一旦復職したが、欠勤が多く、同僚の負担が大きい、(2)また、現在、デイケア部門で、相談者を含む4名で勤務のローテーションを組んでいるが、相談者の突発的な欠勤で、業務運営に支障が出ている、(3)今後、相談者の体調が回復し、復職したとしても、妊娠中に施設利用者の送迎、入浴介助などの通常業務ができるかどうか疑問があるため、母体の保護のために、一旦退職させ体調が回復した後再雇用しようと考えていると主張した。
 また、施設の就業規則には、母性健康管理措置についての規定はあるものの、均等法第22、23条に基づく事業主の義務について充分認識されていなかったことが判明した。
 室は、施設に対し、(1)通常の欠勤の場合と扱いを異にし、切迫流産による欠勤等の場合のみ、欠勤等を理由として解雇する場合には、均等法第8条に違反すること、(2)また、形式的には勧奨退職でも、労働者がやむを得ず応ずることとなり、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合は、「解雇」に含まれることを説明し、注意喚起を行った。その上で、室は施設に対し、退職を求めるのではなく、均等法第23条に基づき、相談者が医師から受けた指導事項を守ることができるようにするために、相談者に休業をとらせるよう指導した。

施設の対応等】 
 室の指導により、施設は、法に沿った対応をすることを確約し、退職勧奨は撤回した。また、少ない人数で勤務のローテーションを組んでいるため、相談者の業務軽減は難しい事情を踏まえて、相談者と話し合った結果、相談者は医師から受けた指導事項を守ることができるよう体調が落ち着くまで休業とし、産休・育休を取得した後、復職することとなった。


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