第4回 |
資料3 |
総論 |
※ | ILO事務局ジェラルド・スタール「世界の最低賃金制度」(「Minimum wage fixing」, 1981)(旧労働省賃金時間部訳)より。 |
※ 以下、「OECD Employment Outlook,1998」より。
B.OECD諸国の最低賃金制度
1.最低賃金の適用範囲、運用及び決定
ほとんどの国は、全国一律最低賃金を設定することを選んでいるが、若年者や見習生といった一部のグループに対して減額又は「準最低賃金(sub-minimum rate)」が存在するものがある。(略)
適用範囲は国によりかなり異なる。障害のある労働者はしばしば除外されるか、別の規制を受ける。見習生や訓練生はしばしば除外されるか、減額のみが適用される。公務員には適用されない場合もある(フランス、ギリシャ、ルクセンブルグ)。カナダとアメリカでは、管理的被用者や運営的被用者は通常、除外される。
若年労働者に対する準最低賃金(sub-minimum rate)はかなり一般的である。減額の幅は様々であるが、次表の半分以上の国で、減額が適用される。オランダ、ベルギー、ルクセンブルグでは成人の最低賃金(adult rate)はそれぞれ23歳以下、21歳以下、18歳以下で1歳ごとに連続的に減額されている。17歳以下の減額もフランスで設定されているが、比較的少数の労働協約にしか組み込まれていない。若年者の最低賃金を設定しているその他の国では単一の最低賃金のみが設定されている。いくつかの国では、例えばフランスのようにSMICより低い賃金を支払うか社会保障費用を低くするかのいずれかを使用者に認める特別の雇用プログラムがあることにより事実上の準最低賃金が存在している。
若年労働者の法定最低賃金の設定はいくつかの国で近年変化してきた。スペインでは、1990年に18歳未満の全ての労働者に適用される一律の最低賃金が設定され、17歳未満の最低賃金は廃止された。スペインでは、さらに1998年の初めに、年齢による差のない単一の法定最賃が導入された。1994年、ニュージーランドでは20歳未満の労働者に対して別の減額(大人の最低賃金の60%)が導入された。カナダでは、いくつかの州で若年者の最低賃金が存在するものの、近年これらの最低賃金は廃止される傾向が著しい。それとは対照的に、アメリカでは連邦レベルでの若年者の最低賃金は1996年に導入されている。しかし、その最低賃金は就業開始後最初の90日間にのみ適用される。
国名、導入された年 | 除外される労働者 | 若年労働者の最低賃金(年齢と成人の最低賃金に対する割合) | その他 |
ベルギー(1975) | 公共部門の労働者、見習生、訓練生、授産施設の労働者 | 20歳94%;19歳88%;18歳82%;17歳76%;17歳未満70% | |
カナダ (女性:1918−1930、 男性:1930s-1950s) |
見習生、農業従事者、管理的・運営的労働者はしばしば州法により除外 | 若年者に対する減額は一般的に廃止されている。 | |
チェコ共和国(1991) | MWT(Minimum Wage Tariffs)は労働協約によりカバーされない労働者のみに適用。公共部門は別に定められる。 | 若年成人に対する減額はないが、未成年に対する減額あり | 障害者には減額適用。MWTは仕事の複雑さ、責任、肉体的困難性に応じて変わる。 |
フランス(1950;現在の形になったのは1970) | 政府一般職員、障害者(別の規則でカバーされる) | 在職6ヶ月未満の労働者について、17歳90%;17歳未満80% | 見習生と訓練生は年齢や訓練の段階に応じてSMICの25%から78% |
ギリシャ(1953;現在の形になったのは1990) | 民間労働者のみに適用。公共部門は別に政府により定められる。 | 減額なし | 勤続や配偶者の有無により高い最低賃金が適用 |
ハンガリー(1977;現在の形になったのは1992) | 見習生は少なくとも最低賃金の10% | 減額なし | 特定の場合には低い最低賃金率が適用されうるが、実際には施行されていない。 |
日本(1959;現在の形になったのは1968) | 公務員、見習生、訓練生、障害者、断続的労働従事者、試用期間中の者、短時間労働者 | 減額なし | |
韓国(1988;現在の形になったのは1990) | 10人以上の企業のみ適用。見習生、訓練生、試用期間中の者、障害者、断続的労働従事者 | 在職6ヶ月未満の労働者について、18歳未満90% | |
ルクセンブルグ(1944) | 民間労働者にのみ適用 | 17歳80%;16歳70%;15歳60% | 技能労働者には20%高い最低賃金。配偶者の有無、家族構成により最低賃金が変化 |
メキシコ(1917;現在の形になったのは1962) | 適用除外なし | 減額なし | それぞれの地域の88の職業にはより高い賃金率適用 |
オランダ(1968) | 労働契約のあるすべての労働者に適用。1992年に週13時間未満の労働者にも適用範囲が広がった。 | 22歳85%;21歳72.5%;20歳61.5%;19歳52.5%;18歳45.5%;17歳39.5%;16歳34.5%;15歳30% | |
ニュージーランド(1945;現在の形になったのは1983) | 見習生、訓練生、障害者 | 16〜19歳60% | |
ポーランド(1990) | 適用除外なし | 減額なし | |
ポルトガル(1974) | 軍隊 | 18歳未満75% | 見習生、訓練生、内勤者、障害者には低い最低賃金が適用 |
スペイン(1963;現在の形になったのは1976) | 適用除外なし | 18歳未満89% | 1998年1月1日以降若年者の減額廃止 |
トルコ(1971) | 見習生 | 16歳未満85% | 1989年8月、農業従事者に低い最低賃金を設定 |
アメリカ(1938) | 役員、管理的・運営的被用者、他の特別の小さな集団 | 1996年10月より20歳未満の労働者の最初の90日は4.25ドル/時間 | ある条件のもと、訓練生に連邦最賃の85%、フルタイムの学生や障害者に低い最低賃金を支払える |
アメリカ |
※ | 在米日本大使館のアタッシェが、アメリカ労働省賃金時間部のSenior Analystより聴取したところによると、次のとおり。 |
○ | 適用除外の考え方
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○ | 減額措置の考え方
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イギリス |
○ | イギリス政府(貿易産業省(Department of Trade and Industry))は、1999年の最低賃金法施行時点においては、16歳〜17歳を適用除外とし、18歳〜21歳を減額措置とした。 これは、1998年6月の低所得委員会(Law Pay Commission)の第1次勧告を踏まえたものであり、その勧告によると、適用除外及び減額措置の考え方は下記のとおり。 (なお、低所得委員会は21歳には減額措置を求めていないが、政府は21歳も減額措置とした。) |
○ | しかし、低所得委員会は、2004年3月、第4次勧告を提出し、その中では、下記のような考え方で16歳〜17歳も適用すべき(見習生は除く)と勧告した。政府はこれを受け入れ、2004年10月より、 16〜17歳 3.00£(時間額) 16歳〜17歳の見習生は適用除外 とした。
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