04/11/29 第2回結核医療に関する検討小委員会議事録           第2回厚生科学審議会感染症分科会結核部会               結核医療に関する検討小委員会   第2回厚生科学審議会感染症分科会結核部会結核医療に関する検討小委員会議事録 1.日時 平成16年11月29日(月)13:30〜15:30 2.場所 経済産業省別館1014号会議室(10階) 3.出席者 (委員)   青木 節子、阿彦 忠之、坂谷 光則、重藤 えり子              雪下 國雄、山川 洋一郎、森 亨(敬称略)       (厚生労働省)瀬上参事官、牛尾結核感染症課長、滝本感染症情報管理室 長、              塚本課長補佐、前田課長補佐、新課長補佐 ほか 4.議題  (1)発病前治療について       (2)結核患者に対する適切な医療提供のあり方について       (3)結核病床について 5.内容   次葉以下に記載 ○事務局  定刻になりましたので、ただいまから第2回結核医療に関する検討小委員会を開催い たします。  開催に当たりまして、結核感染症課牛尾課長よりごあいさつを申し上げます。 ○牛尾結核感染症課長  結核感染症課長の牛尾でございます。先生方におかれましては、平素より結核対策行 政の推進に御理解と御尽力をいただいておりますこと、また、本日は御多忙のところお 集まりいただきまして、ありがとうございます。  第1回目を開催いたしましたのが本年5月14日でございました。大分日にちが経って しまいましたが、誠に申し訳ございません。そのときについても本日の議題とほぼ同じ ような内容で、発病前治療について、それから、結核患者に対する適切な医療提供の在 り方について、それから、結核病床についてということでということで、ブレーンスト ーミング的な形で自由に御議論いただいたわけでございます。本日は、前回の議論を発 展させまして、政策に反映できるような形でできるだけ取りまとめていくことができれ ばと考えております。  まず、議題の1番の発病前治療でございますけれども、これは最近の治験に基づきま して、いわゆる予防内服の位置付け、それから、対象者の見直しについて御議論いただ くことを考えております。  それから、入退院基準を含めました医療提供の在り方と結核病床、2番と3番につき ましては、お互いにリンクしているわけでございますが、入退院基準についてあらかた 御議論いただいた上で、結核病床の基準病床の見直しについて、非常にまだ大ざっぱな ものでございますけれども、結核感染症課の方で作成しました案を基に御議論をいただ きたいと思っております。  また、先般、結核患者収容モデル病床を有する医療機関の皆様に御協力いただきまし て、アンケートを取りまとめたところでございます。この中間報告も予定しております ので、結核病床の在り方を議論する際の御参考にしていただければと思っています。  本日は、約2時間ほど予定しております。いずれの議題も非常に重たい、また、歴史 的な背景も有するものでございますけれども、どうか忌憚のない御意見をいただければ と思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○事務局  この後の議事の進行につきましては、森委員長、よろしくお願いいたします。 ○森委員長  本日の会議の進め方でございますが、今、課長からもありましたように、3題の議題 がありますが、最初に発病前治療については、重藤委員に準備をしていただいておりま すから、プレゼンテーションしていただいて、その後質疑応答し、続きまして、2番と 3番、結核患者に対する適切な医療提供の在り方について。これについても重藤委員か らプレゼンテーションしていただき、引き続きまして、結核病床について、これは事務 局の方からプレゼンテーションしていただいて、この2つをまとめて質疑応答に入りた いと思います。  それでは、まず1番の発病前治療について、重藤委員よろしくお願いします。 ○重藤委員  それでは、座ったままで失礼します。  発病前治療といいますのは、いわゆる従来の化学予防という言葉で表されているもの で……。 ○森委員長  ちょっと重藤さん、ごめんなさい。私がうっかりしていまして、資料の確認を忘れま した。お願いします。 ○事務局  それでは、資料の確認をさせていただきます。  まず、お手元の資料一覧という3枚めくったところにございますこちらをごらんくだ さい。資料が4つ、それから、参考資料を7つ御用意しております。  資料1に関しましては「さらに積極的な科学予防の実施について(案)」、日本結核 病学会予防委員会に作成していただいた案。  それから、資料2につきましては4枚めくっていただきまして、「結核の入院と退院 の基準に関する見解」、重藤先生に御作成いただきました。  それから、資料3としましては3枚めくっていただきましたところにありますが、 「今後の結核病床の在り方について」、こちらは当課の案でございます。  それから、2枚めくっていただきまして、資料4といたしまして「結核患者収容モデ ル事業に関する調査(中間報告)」がございます。  また、2枚めくっていただきまして、続きまして参考資料が7つ。  参考資料1といたしまして「初感染結核に対するINHの投与について」。  参考資料2といたしまして「結核予防法による入所命令の対象及び命令入所の期間に ついて」。  1枚めくっていただきまして、参考資料3といたしまして「都道府県−14大都市・中 核市別にみた病床数及び人口10万対病床数」、それから「病床利用率及び平均在院日数 」の表がございます。  次のページ、参考資料4といたしまして公衆衛生審議会結核予防部会、平成11年にい ただきました「21世紀に向けての結核対策(意見)」。  それから、参考資料5になりますが、独立行政法人国立病院機構様の「結核部会中間 まとめ」。  続いて、参考資料6といたしまして厚生科学審議会感染症分科会結核部会の平成14年 にまとめていただいた「結核の見直しに関する提言」より抜粋したもの。  次のページ、参考資料7、最後になりますけれども、先ほど申し上げた結核患者収容 モデル事業に関する調査票になります。  以上でございます。 ○森委員長  よろしいでしょうか。  それでは、重藤先生、改めてよろしくお願いします。 ○重藤委員  化学予防ということで、従来の化学予防ではカバーできない部分がいろいろ出てきた ということで、アメリカなどではかなり進んだ考え方に変えておりますけれども、日本 においても、それに対応していかなければいけないということで、結核病学会の予防委 員会が案としてまとめております。この作成には私はかかわっておりませんが、同じ学 会員ということで御説明いたします。  その案というのは結核病学会でまとめまして、もともとリュウマチの新しい抗リュウ マチ薬で結核が多発するということが問題になりまして、リュウマチ学会の方からも問 題が提起されまして、結核病学会とリュウマチ学会で合同でこのような指針を出したい という方向もありました。結核病学会として一応まとめた案がこれです。  まず、従来の化学予防というのは若い人だけで、原則として接触者検診で見つかった 29歳以下の人ということになると思うんです。それでは、結核の多発に対応できない状 況になってきたと。それが、まず年齢制限、29歳以下と限りますと30歳以上からも結構 接触者からの発病者が出る。それから、最近感染のチャンスがあったかないかにかかわ らず、合併症などによっては非常に結核が多発する集団があると。特に高齢者、既感染 率の高い高齢者の中で発病のリスクが高い人たちがいると。その中から発病を予防でき る人たちがいるのではないかということで、このような案がまとめられています。  この案ですけれども、化学予防の適応となる者として、1、2、3というふうに挙げ られています。1は、従来の化学予防適応者ということになると思います。ただし、こ れは年齢制限なしですね。  それから、2番目も、ただし書きのように入っていたと思うんですけれども、レント ゲン上明らかな感染しているという証拠があると。従来の結核の化学療法を受けたこと がない人、やはりこれは発病のリスクが高いということで、2番。  それから、3番目に、医学的な結核の発病リスク要因が高い人たちに対するというこ とで、3.1、3.2、3.3というふうに列挙されています。  これで結局、発病のリスクが非常に高い人たちには、化学予防というときに副作用も 問題になるとは思うんですけれども、本当にリスクが高い人というのに対しては、副作 用はそれほど問題にならないと。きちんと発病のリスクの高い人を特定していけば、非 常に利点がある、利益があるということで、このような方針をまとめております。  多分、実施するときの問題点は、本当に発病のリスクが高い人をどうやって特定する かということになると思うんですけれども、現在、利用可能ないろいろな検査を、言わ ばかき集めた形でこのように記載されているということになるかと思います。  以上、簡単でこのぐらいでよろしいでしょうか。 ○森委員長  ありがとうございました。  それでは、これについては質疑応答を行いたいと思います。どなたか御質問あるいは 御意見がございましたら。 ○坂谷委員  いわゆる予防内服の範囲を広げるというのは、発病者を減らすためにも、発生率を下 げるためにも非常に結構なことだと思います。そのメリットと裏腹に、やはり今まで予 防内服をしてこなかったこの種の人たちに予防内服をさせた場合に出てくるデメリット の方も、きちんと計算して出さないといけないと思います。  話が飛ぶようですけれども、先般も実施の予定がされている、ツベルクリン反応なし でのBCG接種などの場合も同じような議論があったと思いますけれども、特に今回の 対象者の2番に入る胸部X線上明らかな陳旧性結核の所見があって、今まで化学療法を 受けたことのない、年齢が割合高い人たちになろうかと思いますが、老齢者に対しまし てこの種の予防内服をしたときに、どれくらいの肝機能障害でありますとか、その他の 副反応・副作用が出るかということは、よくかわっていないかもしれないと思っておる んですが、その辺との勘案で最終的には判断すべきものと考えたいと思いますけれど も、いかがでしょうか。 ○森委員長  これについてどうでしょうか。重藤先生、学会の方では、これについては何か議論さ れているのでしょうか。 ○重藤委員  予防委員会は私はタッチしておりませんので、検討の過程でどのようなことがあった のかわかりませんけれども、一応、委員長に問い合わせまして相談してみましたら、や はり発病のリスクが本当に高い人がきちんと特定できれば、副作用というのは大したこ とではないと。一番問題は、どのように本当に発病の高い人を特定していくかであろう ということだったと思います。  今まで接触者検診でもツ反でやっていましたけれども、これは足らないんじゃないか と思いつつ行って、やはり発病者が出た例もありますし、これは過剰ではないかと思っ て何事も起こらなかった例もありますけれども、最近のいろいろな新しい検査法でいき ますと、従来、化学予防を行うような人でも新しい検査法でやってみたら全く要らなか ったと、これはしばらく時間が経たないと結論は出ませんが、要らないんじゃないかと いうような例も出ていますので、やはり現在、利用可能な検査で、こうこうこういう条 件でというのがこの案ですけれども、将来的にはきちんともう少し発病のリスクの高い 人をより正確に抽出できるようにすべきだと思います。それができれば、化学予防の副 作用によるリスクというのは無視できるというふうに考えられるということです。 ○森委員長  坂谷先生、よろしいですか。 ○坂谷委員  今の重藤先生のお話のとおりだと思います。ただ、正確に発病予定者という言い方は おかしいですけれども、それが特定できるかどうか。技術的・理論的には不可能ではな いと思うんですが、まだまだそれが一般的にはっきりするまでには時間が掛かると思う んです。それまでの間、やはり「えいや」ということで、この群は高いであろうという ことで予防内服を開始するという方法がとられざるを得ないのかなという理解でおりま すけれども。 ○牛尾結核感染症課長  私の方から確認させていただきたいんですが、これまで29歳以上の方に対して、基本 的には予防と予防内服をしていなかった理由というのは、肝機能障害を起こしやすかっ たからという理解でよろしいでしょうか。 ○重藤委員  もう一つは、感染したかどうかという根拠の一つに、ツベルクリンが大きなものがあ ったと思うんですけれども、30歳以上になるとツベルクリンというか既感染率が高かっ た。現在どんどん低くなっていますが、高い状態でつくられた基準であったということ だと思います。 ○森委員長  そうすると、時代が経ったから平成元年度のときの29歳も40何歳になっているわけだ というような話ですね。ツベルクリンの診断的価値が前より高くなってきているという ことですね。 ○重藤委員  そうですね。 ○阿彦委員  今のことに関連があるかもしれませんが、予防内服、化学予防のことで研修会でよく 質問があるのは、もともとは最近の感染があった、古い感染ではなくて新しい感染で、 菌の増殖は大体一日一遍しかしないわけですから、新しい感染のうちに菌が少ないうち だったので、ヒドラジッド単独で化学予防の効果があるんだというふうにもともと教わ ったわけですけれども、古い感染、休眠期の結核菌に対して、本当に抗結核薬単剤で予 防効果があるのだろうかという質問はよく受けています。従来は新しい感染に対してと いうのが説明しやすかったと思うんですが、高齢者などの若いころに感染を受けて免疫 で抑え込んだ形で休眠している結核菌に対して、抗結核薬をやることについてのメカニ ズムといいますか、現象的にはそういう人に対してやって効果がある研究があるという ことですけれども、抗結核薬の効果のメカニズムを考えると、休眠期に効く薬というの は余りないわけで、その辺のことをきちんと説明が、我々から一般の医師に向けてさえ もきちんと説明ができない状態の中では進めにくいのではないかと思うんですが、その 辺、森先生からでもコメントがあればと思ったんですけれども。今のところ我々はなか なか説明しづらいですね。 ○森委員長  重藤先生、いかがですか。 ○重藤委員  私も先生と同じレベルです。 ○森委員長  実は私がしゃべってしまってはまずいのかもわかりませんが、この予防委員会のこの 策定にも加わっておりますので申し上げますと、それについては、幾つかトライアルに よる証拠がありまして、一番有名なのがIUATが1970年代にやった国際共同研究ですが、 ファイブロティクリジョン、線維化した古い病巣を持った人たちに対して、イソニアジ ド単独で4か月、6か月、9か月、12か月、いろいろな期間別に投与して効果を調べて いるんですけれども、6か月以上投与すると発病率が4分の1ぐらい下がるという成績 が出ているんですね。同じような成績が幾つかアメリカでも出ていますし、そういうの を受けてアメリカでは数年前に更にだめ押しで、そういう人に対する化学予防を推進す るという声明を出しているわけですけれども、今度の結核病学会もそれと同じような根 拠でそういう議論をしているわけです。  それから、ちょっと用語がいろいろ出ていますので、これも確認しておいた方がいい かなと思いますが、この議題には「発病前治療について」と書いてあるんですね。学会 の方は「化学予防」という言葉を使ったり「予防内服」という言葉を使ったりしている んですが、発病前治療というのは、2002年3月に出ました結核部会の提言がこの言葉を 使っているんですね。これを積極的に取り組むという意味で使っていて、これは多分ア メリカの「潜在的結核感染症に対する治療について」という言葉の影響で、こういう言 葉が出てきたのではないかと思いますが、従来は日本では「予防のための内服」という ことを言っていたんですが、アメリカはもう予防ではないんだと、治療なんだというこ とを積極的に進めるために言い出した。それを当時の部会でも受けて、「予防」とする のではなくて「治療」とするんだという位置付けだったと思います。  しかし、翻って考えてみますと、正式には結核予防法では、化学予防というのは初感 染結核に対する治療として位置付けられているんですね、昔から日本では。そこへまた 戻ってきたということになるんですけれども。これが制度化されるときには、その辺の 用語の統一というのをやる必要があるかなとも考えております。  雪下委員、いかがでしょうか。 ○雪下委員  専門家の意見を聞かせていただいております。 ○森委員長  もし、よろしければ。 ○山川委員  非常に初歩的な、副反応が肝臓障害で起こり得るということをおっしゃいましたけれ ども、どの程度深刻な副反応で、それから、発生の確率といいますか、頻度というのは どの程度なのでしょうか。 ○森委員長  重藤先生、お願いします。 ○重藤委員  頻度の数字はちょっと私は今思い出せないんですけれども、INHの副作用というこ とに関しては、多少人種差があるように思うんです。日本においての数字もちょっと思 い出せないんですが、若年者であれば非常に低いと。年齢が高くなればなるほど頻度が 高くなるということは言えると思います。  重症度はいろいろですけれども、非常に重症、最悪の場合には劇症肝炎、死亡もあり 得る。ただ、注意して観察して、早期に対応するようにすれば、大半が防げると考えて おります。 ○森委員長  よろしいですか。 ○青木委員  今の山川先生の御質問に関係するんですけれども、医療従事者が予防実施に当たって 副作用が起きた場合、その予防従事者に対する責任の免除のような方式というのは、法 的な手続というものはあるのでしょうか。アメリカでは保険法で、どういう場合に連邦 政府が被告になるのかというような場合がまとめてあると思うんですが、日本の実態は 今どういうふうになっているのでしょうか。 ○森委員長  ヒドラジッドという薬は結核の治療には必ず使う薬なんですね。一般的に一番使われ ている薬で、それに対する副作用に対する注意ということを、この場合もやっていただ くということでカバーできるのではないかと思いますけれども。  よろしいですか。もし、御議論がこれ以上なければ、次の議題に進ませていただきた いと思います。2番目の結核患者に対する適切な医療提供の在り方について。また、重 藤委員お願いします。 ○重藤委員  適切な医療提供の在り方といいますのは、入退院の基準についての説明ということで よろしいでしょうか。  では、資料2なんですけれども、入院と退院の基準に関する見解ということで、これ は、そこに書いてありますように私がつくりました原案ということで、実は一応退院の 基準をつくったんですけれども、やはり入院の基準も入れて、治療委員会だけでなく て、予防委員会と治療委員会の合同できちんとした見解を出そうということで、つくり 直しになっております。そのたたき台としてこれをつくった段階でして、一応、委員長 同士で、大体こんな線で行こうという合意はできていますが、まだ委員との検討は全く と言っていいほどできておりませんので、そのように了解していただきたいと思いま す。  退院の基準をつくる段階では、治療委員会の委員の中で一応合意を得ています。大体 コンセプトとしては、ほぼ同じものでつくっております。  まず、医療提供ということで、外来治療か入院治療かということで、入院治療にする 条件として挙げましたのがそこの2つです。従来から結核としての感染性が高い状態、 これは必要であろうと。それから、感染性が高い・低いにかかわらず、やはり結核で入 院が必要な方というのはいらっしゃいます。適切かつ確実な医療提供のために入院が必 要という2つの条件を挙げました。  感染性が高いと考えるべき状態というのは、従来の命令入所の条件と原則として同じ ということになると思うんですけれども、要するに感染性の高い肺結核、または喉頭、 気管支結核で喀痰中の抗酸菌が塗抹陽性、菌の量が多いということであったと思いま す。これに私はもう一つ未治療というのを入れました。未治療といいますと、1回でも 薬を飲めば既治療になるという理屈も成り立つんですけれども、十分にまだ治療が入っ ていない状況という意味で「未治療」という言葉を使わせていただきました。であっ て、生活環境や行動から周囲に結核を感染させるおそれが高い場合というのは、従来の 命令入所の、どこかに資料がありましたけれども、その規定にも同じような一文があっ たと思います。このような考え方で、まず入院をしていただくということが必要ではな いかと思っています。  それから、感染性が高かったら勿論ですけれども、高くなくても適切かつ確実な医療 提供のために入院が必要な場合があると思います。これは、排菌量が少なくても重症の 結核、これは当然入院が必要であって、やはり結核の専門施設に入院が適当であろう と。  それから、今、菌の量が多くなくても合併症で治療に支障を来たしかねないという場 合には、やはり入院していただくのが適切であろうと。従来、私たちがやっていること を文章にしていったということになろうかと思います。  それから、次なんですけれども、これはいろいろ検討課題だとは思います。治療の継 続性が入院治療でなければ確保できない、治療の中断、不規則治療の可能性が非常に高 くて、その結果、結核の再燃だとか、最悪の結果として薬剤耐性化を来たすという可能 性が高い場合、これはやはり入院していただきたいと考えております。  従来DOTというのがないころから、入院ではDOTと同様のことをしていたんです けれども、退院してしまうとそのDOTがない状態では、私たちはやはりこの人は退院 したら、たちまち治療を中断するだろうという予想がつく人たち、そういう方々は治療 終了までいていただいたりしています。こういう方々が治療を脱落しますと、多剤耐性 結核の原因になるわけですから、こういう方々は非常に今から重要な集団ではないかな と思います。  DOTSというシステムで外来でちゃんと治療を継続すべきなんですけれども、そういう まだシステムが整っていない状況のところもありますし、かなりの努力をしても、なか なか外来では追い掛けていって治療継続のできないという、かなり限定された方だと思 うんですが、そういう方々もいらっしゃるので、そういう方々にはできれば入院治療と いうことで医療を提供したいと思いました。  感染性がある状態の、今申しました治療脱落の可能性が非常に高くて、外来DOTSを提 供できないという場合には、従来で言ういわゆる命令入所と同じように、いわゆる全額 公費負担というか公費での治療。ある程度の強制力を持って治療をしたいと私たちは考 えております。  退院の方になりますけれども、こちらは感染性が消失すればいいと。  それから、もう一つの重要な条件としては、退院後の治療の継続性が確保できる、こ れは医療の提供ということで非常に重要な課題だと思います。この2つがそろえば退院 できると。  もう一つは、感染性の消失をどのように規定するかという問題がありますけれども、 これは従来いろいろな病院の退院基準というのがありまして、菌の検査結果がどうとか こうとか、細かく規定されていたんですが、大分前から世界的には化学療法をして2週 間経てばほとんど感染性はなくなるのではないかということで、大体2週間ぐらいから 可能性があると。それから、全身状態がよくて退院後も治療の継続性が確保できれば、 それで退院していただいてもいいのではないか。ただ、病状によっていろいろ差があり ますので、一応これは本当に私の一存なんですけれども、2週間から2か月ぐらいかな と。この辺の数字を委員会で皆さんで検討していきたいなと思っているんですが、一応 こういうふうに規定してみました。  ただ、家庭に帰る、社会に戻るという場合、普通周りは健康な方々ですから、ほぼ感 染性はありませんと言い切っていいんですけれども、集団生活、それから、例えば、お 孫さんが生まれたところに帰るというような、非常に免疫が弱い方々と新たに同居する 場合には、少しきつい条件をつけて安心して帰っていただくというふうに考えておりま す。  それから、多剤耐性結核の場合には、その感染性の低下とかそういうことは、今言い ましたような条件では全く保障されないということで、これはまた別扱いということ で、少し別枠で書いております。  入退院の基準につきましては、大体このような方向で、大枠がそう変わることはない と思うんですけれども、細かいところは今から委員の間で検討するという予定になって おります。 ○森委員長  ありがとうございました。  先ほど申し上げましたように、引き続き3番の結核病床について、事務局の方からプ レゼンテーションをお願いしたいと思います。 ○事務局  それでは、資料3についてでございます。「今後の結核病床の在り方について」とい う資料と、あと参考の資料といたしまして、参考資料3でございます。参考資料の5ペ ージ目にございます。そちらについて説明をさせていただきます。  まず、資料3の「今後の結核病床の在り方について」ということでございますが、 「医療計画上の結核病床の基準病床数について」ということで、副題をつけさせていた だいております。  1番目でございますが、結核病床数・病床利用率の推移ということでございます。こ れは参考資料の方に各都道府県ごとのデータを掲載してございますが、病床数につきま しては、平成13年の2万847床から平成15年の1万4,507床に減少しております。  人口10万対の病床数でございますが、平均では人口10万対当たり11.4。ですから、大 体1万人に1床という状況でございます。ただ、少ないところは山形県で4.1床、高知 県で36.1床ということで、8.8倍の開きがございます。  そしてまた、病床利用率についてでございますが、そちらにつきましては参考資料の 6ページ目に掲載してございます。平成13年43.7から平成15年46.3と横ばい状況でござ いますが、こちらについては一番低いところが島根県の14.2、一番高いところが山形県 の73.1ということで5.1倍の開きがございます。  平均在院日数につきましては、その隣でございますが、平均が82.2日でございます。 一番短い県が福井県の43.5日、一番長い県が和歌山県の130.2日ということで、3倍の 開きがあるということで、病床の数、そして、利用のされ方、入院の期間、いずれにつ いても3倍以上の地域格差があるというのが、この表から読み取れるというところでご ざいます。  医療計画をめぐる最近の動きでございます。医政局の指導課が中心となって行ってお ります医療計画の見直し等に関する検討会のワーキンググループの報告が、つい2か月 ほど前に出されたところでございますが、その中で基準病床、これは医療法上、以前 「必要病床」と言われておりましたが、現在は「基準病床」という表現でございます が、それを廃止するかどうかという議論が、この検討会の中でされているところでござ います。そのときに、基準病床を廃止する場合の最低限必要な条件ということで4点挙 げてございます。  1点目が、入院治療の必要性を検証できる仕組み。  2点目が、入院治療が必要なくなった時点で退院を促す仕組み。  3点目が、地域に参入する医療機関の診療内容等の情報が公開されるという仕組み。  4点目が、不採算の地域においては補助金や診療報酬上の評価によって、医療サービ スの提供を保障あるいは促進することができる仕組み、この4点がクリアされた暁に は、基準病床を廃止してもいいのではないかというような報告がされているところでご ざいます。  2ページ目でございます。10月18日に告示をさせていただきました「結核の予防の総 合的な推進を図るための基本的な指針」でございます。  その中の第二「結核患者に対する適正な医療の提供のための施策に関する事項」のう ち、3番の「その他結核に係る医療の提供のための体制」ということで、この結核の指 定医療機関におきましては重篤な、「重篤」の文字は「重い」と「篤い」でございます が、重篤な他疾患合併患者等については一般病床等において結核治療が行われることも あるということと、結核病床と一般病床を一つの看護単位として治療に当たる場合もあ るということで、国の定める施設基準・診療機能の基準等に基づき、適切な医療提供体 制を維持・構築することとするということで、必ずしも病棟単位で結核病床を確保しな くてもいいのではないかという方針を示しているところでございます。  今後の考え方でございます。本日御提示させていただく案といたしまして、全国一律 の結核の基準病床の算定基準というものを廃止いたしまして、都道府県の区域ごとに都 道府県知事が定める数という形で改正するということを現在考えてございます。  そして、その上で、陰圧病室を有するとか、菌陽性の肺結核患者の入院に必要な最小 限の病床、そういうものを地理的・社会的状況を踏まえて配置するよう、技術的助言を 行うということが必要ではないかと考えております。  それから、あと結核患者さんのうち重症の身体合併症を有する方につきましては、一 般病床に入院させるという事業がございます。その名称を「結核患者収容モデル事業」 というふうに申しておりますが、そういう成果を踏まえて、一般病床に結核患者を入院 させる際の施設基準を策定する必要があるのではないかと考えております。  この考え方の理由として4点ございますが、医療計画の見直し等に関する検討会に合 わせて、4つの基準を現在の結核病床について当てはめることができるかどうかを検証 したのが、この2ページの下の段でございます。  まず、1点目の入院治療の必要性を検証できる仕組みということでございますが、現 在、各保健所に設置されております結核審査協議会におきまして、入所命令に関する審 議を行っていただいているということで、必要性の検証が行われるところでございま す。  2点目の、入院治療が必要なくなった時点で退院を促す仕組みという点でございます が、先ほど重藤先生からの御説明もございました結核患者の退院基準の策定の予定とい うことでございますので、その基準を満たす患者に対して退院を促すことが今後可能に なるのではないかという点でございます。  3点目の医療機関の診療内容の情報公開の点でございますが、今後、結核病床を有す る医療機関の診療内容の情報の提供を促進するということで、医療の質の向上が図られ るのではないかということで考えております。  4点目の不採算地域における補助金や診療報酬上の評価という点でございますが、3 ページ目の一番上にございますとおり、結核患者収容モデル事業の活用により、医療サ ービスの提供を保障・促進することが可能ではないかと考えているところでございまし て、この医療計画の見直し等に関する検討会の4条件を、ほぼクリアできそうな状況に あるということから、基準病床については都道府県知事の定める数というふうに改正す ることを考えているところでございます。  その技術的助言としての必要病床数ということでございますが、新規喀痰塗抹陽性患 者の感染性消失までの期間の入院に要する病床と、あと公衆衛生上の理由による慢性排 菌等長期の入院に要する病床といったものを合わせた数値を必要病床とすることが望ま しいというふうな形で技術的助言として行うことを考えているところでございます。  参考でございますが、現行の結核の基準病床の算定式でございます。Σの中に括弧で A×B+C−Dというのがございますが、Aというのが性別・年齢別人口。Bというの が地方ブロックごとの性別・年齢別の入院率でございます。それにCを加えております が、これは他県からその県に県域を越えて入院される方。Dというのが、当該県から他 県へ越境して入院される方を引くということで、その県の中に住所を有する方がどれだ けの結核病床が必要かというものを掛け合わせております。それを病床利用率、この当 時0.89で割っているということでございまして、基準病床を算定しているというところ でございますが、現在は現行の基準病床の算定式によらず、各都道府県ごとに定める数 ということで、各県の裁量を拡大したいと考えているところでございます。  あと、慢性排菌者と多剤耐性結核の現状でございます。平成15年末現在で2年以上登 録されている、そして、1年以内に菌陽性であった肺結核患者の数は731名でございま して、入院患者はうち329名ということでございます。平成12年度の緊急実態調査によ りますと、この慢性排菌者のうち80%にイソニアジドの耐性、60%に多剤耐性が認めら れているというところでございます。  また、平成10年度に登録されました培養陽性の肺結核患者3,342名のうち、薬剤感受 性検査を行われている方が1,912名。そのうち多剤耐性と判断された方は118名というこ とでございまして、新規登録患者のうちの大体0.3%を占めているというような状況で あるということでございます。  あと、関連する参考資料について、先ほど参考資料3で統計データを説明させていた だきましたが、その中に関連する部分がございますので、簡単に説明をさせていただき ます。  参考資料の7ページの参考資料4でございます。こちらは平成11年6月の公衆衛生審 議会結核予防部会の「21世紀に向けての結核対策」でございますが、今後の結核対策の 具体的進め方としまして、医療の多様化が進んでいるという点でございます。  この1番の典型的な結核患者から4番の慢性排菌化した結核患者まで4類型が示され ているところでございますが、今後、予算事業ですとか診療報酬上の基準の設定で対応 していくことが考えられるということと、あと、その5〜6行下に、結核病床の医療法 上の病床すべてについて、更に細分化を図ることは地域における結核医療の硬直化を招 く等の理由から好ましくなく、現行どおりが適切というような御意見をいただいている ところでございます。  それから、あと、参考資料の9ページから国立病院機構さんが非常に熱心に検討され た結核部会の中間まとめが掲載されているところでございます。その中におきまして も、一般病床と結核病床とのユニット化について、10ページの4番の当面の急ぐべき対 策のところに記載されているところでございまして、入院患者の減少に対応した結核病 床のユニット化、外来DOT等の充実ということでございまして、ユニット化とは結核 病床と一般病床とその他の患者を1つの看護単位で担当するという方向性も、国立病院 機構さんの検討の中で出てきているという状況でございます。  以上でございます。 ○森委員長  ありがとうございました。  それでは、2と3の議題について、まとめて議論したいと思います。御質問・御意見 等ありましたら。 ○坂谷委員  適切な医療の提供ということで、適切なというのはよいという考えも入っていると思 うんですが、その中で今まさに議論されようとしております入院期間の、適切な病床数 であるとか期間は、その一部分であると考えます。医療でありますから、その中には診 断も入りますし、それから、治療が勿論入るわけですけれども、治療の中には入院治療 と外来治療が含まれると思います。それも一貫したものでありまして、入院治療だけを 取り出してどうこうということは、やはりよく考えなければならないというか、入院治 療にスポットを当てるのはいいんですけれども、診断及びその後の通院治療もセットに して考えるべきだと思います。  診断のみは今回はちょっと省きたいと思いますが、ただ、1点申し上げたいのは、第 一線におる者といたしましては、最近どんどん結核の新規発生が減っている、患者数が 減っているということは間違いないことでありますが、その大部分は今まではもしかし たら過剰に反応しておった非排菌者、そういうものがどんどん減って、本当に対応しな いといけない排菌者に限られた数になってきている。これはこれで適正なことでありま すが、そういうことで見掛け上随分と患者が減ってきたように見えるのではなかろうか という感じがしております。ということは、入院治療の対象になる排菌多量の、どうし てこうなるまで放っておいたか、発見できなかったかという患者さんが決して減ってい るようには思わない、これに対しても今回はいいとしましても、何か対応しなければな らないと思っております。  それから、退院を早くするというのは結構なんですが、その後の治療の完遂も大事な ことでありますから、それが適切に保障されておる、担保されておるという状況とセッ トでなければ、退院を早期化するということはいかがなものであろうかという感じを持 っておりますので、ちょっと先鞭を切って一言申し上げさせていただきました。 ○森委員長  それについては重藤先生、結核病学会の主として予防委員会などでは患者管理のこと について議論して、重藤先生が言われた入退院の方とジョイントするという話ですよ ね。併せてもっと包括的に議論中であると。 ○重藤委員  そうです。これは治療委員会の委員長がつくりましたということであって、今から予 防委員会にもうちょっと入ってもらって、患者管理もやっていくと。今、坂谷先生がお っしゃってくださいましたけれども、私がつくりましたこの案というのは、勿論、治療 終了までを見通して入院をどうするか、退院の時期をどうするかということがポイント だと思うんです。 ○森委員長  それから、坂谷先生が言われた診断の質の問題とか、早期発見の問題というのも、確 かに適正な医療の提供という点から大事な話ですけれども、何かそれについてカバーで きる部分というのはあるんですか。学会で先生などが議論している議論の中では、一応 切り離されているんですか。 ○重藤委員  入院と退院の基準ということで指示されてつくっておりますので、入院になるまで、 治療開始までのことに関しては、今回のこのまとめには入らないということになると思 うんです。診断がされて治療が開始されるという段階での話です。それ以後の話になり ますね。 ○森委員長  よろしいですか。 ○雪下委員  重藤先生が言われた2ページのところの、必要であれば強制力を持って入院治療を実 施するというところがいつも問題になるところですけれども、これは政省令等に書かれ るときに、具体的にどういう形で書かれるということがいいかということを教えてくだ さい。また、書かれるのか、書かれないのか。 ○重藤委員  だから、こういうところが今から議論しなければならないところであると思います。 これは、私は今日伺いたいと思って来たんですけれども、多剤耐性の方が現前としてい らっしゃるわけですよね。治療可能な方はいいけれども、治療不能になった方をどうす るかという問題が1つあります。私たちは長いこと結核の患者さんたちを見ていますか ら、こういう人は治療不能の多剤耐性になるだろうなという方はわかるわけですよね。 その前の段階で、強制的にでも治療を入れるのが本当の医療ではないかと、私は常々思 っているわけで、そういうことでこの強制力というのをここに入れたいと思っているん です。もう治療不能の状態になった方をどうしろというんだというのが、本当は私の切 実な感想です。なってしまった方は感染性に関しての注意を守ってくだされば、私はと ても言えません。それで、今までのところは現実に何も起きていないと。治療不能の多 剤耐性になる前の段階で、御本人がどう言おうと治療可能なうちに治療してしまって、 結核菌を止める、これが本当の人権尊重ではないかなと思うんですけれども、その辺は 予防的に何とかできないとか、そういうことが法律的にあるのではないかと思って、今 日伺いたいと思って来たんですけれども。 ○森委員長  一応、重藤先生のこのお考えは、入院の基準というのは今の制度でいきますと、命令 入所の基準ですよね。措置入院とか何とかというのは別の考え方で、命令入所の基準と して一応こういうふうに考えると。 ○重藤委員  全額公費負担という、医療費の心配をせずに入院していただくと。 ○森委員長  それから、重症結核、慢性排菌例などの予防が大事だというお話があるわけですけれ ども、それについては一応、国の制度としてはネットワークシステムというのがあっ て、対応に困難な患者はどんどん専門性の高い拠点病院から、最後は近畿中央病院の頂 点に運ぶことになっているんですが、そこら辺は実際にはどういうふうになっているん でしょうか。 ○重藤委員  実際に私もある患者さんで苦労したことがあるんですけれども、幾ら説得しても思う ようには動いてくださらないという方々ですね。そういう方というのは、今までそうい う状態を続けてきたから多剤耐性で治療不能になってしまって、近畿中央にお願いして も、だから治るというものでもないけれども仕方ない、ここから出ていくと言われるな ら、もっといいところがあるから行ってくださいという形で、そういうような手配をし たことはあります。  ただ、実際のお話をしますと、その前の晩にするっと病院を出て行かれまして、翌朝 いろいろ手配しまして、遠くから移送の車が来るはずだったんですけれども、翌朝、広 島駅の近くの警察に御本人が出頭しまして、どうしようかと。やっぱりいなくなっちゃ ったということで、移送を一旦お断りして、またしばらく我慢してねということで話を し直したんですけれども、警察からちゃんとうちの病院にまた移送されてきましたが、 その日のうちにいなくなられました。  もっと次の話をしますと、いなくなられた翌日ですか、岡山の方の警察から電話があ りまして、こうこうこういう方がそちらの病院に入院されていたそうですが、どういう 方なんですかと。御説明しまして、仕方がないんですねという話ですね。それから、次 はどこでしたか姫路でしたか、駅を順番に2〜3か所回りまして、最後は尼崎の警察か らという話があります。  結局、警察の方も「このような場合に法的な強制力はないんですか?」と私に聞かれ ましたが、「ないんです」とお答えしましたら、「ああそうですか。仕方がないですね 」という話になってしまったんですけれども、では、どうしたらいいのかと言われる と、私たちはあの方々をどうにも説得できないし、無理やりいていただいたとして、な かなか入院生活に適応できないということがあるんですね。ある程度、治療の可能性が あるのでしたら、まだいろいろ説得したり、話をしたりして受け入れてもらえる余地が あるんでしょうけれども、実際問題、医学的に治療の可能性のない方に一生いてくださ いと言うわけにもいきませんので、説得力がありませんので、結局、現実に今のような ことが何人かの方は起こしていますね。  ですから、やはり力を入れるのであれば、そうなった方々をどうするかというより も、そうならないように何とかどこかで食い止められないかというのが、私たちの思い です。 ○山川委員  今の方というのは、定まった住所は……。 ○重藤委員  ないです。 ○山川委員  家族もいない。 ○重藤委員  はい。 ○山川委員  なぜ新幹線の各駅停車みたいに警察に行くんでしょうか。 ○重藤委員  そこのところが……。そのたびに、例えばどこかまで行く旅費をもらうとか、そうい うことがあるようなんですよ。 ○山川委員  警察署に寄るというのは、その旅費をもらうために寄るのであって、自分の病気のこ とを気にして何とかというわけではないんですか。 ○重藤委員  そのようです。結局、その方は何度か病院を出たり入ったり。要するに、かなり広域 の病院で結核病院のある近くの駅で救急車を頼んで、そこでどこに運んでもらうかと言 えば、私は結核ですということで、絶対断らないところに運ばせるということなんです ね。それで、一応元気を取り戻しましたら、また出ていくと。 ○森委員長  さっきの事務局の御発表だと、慢性排菌例の患者の60%が多剤耐性ということは、40 %が多剤耐性じゃないんですよね。だから、治せる可能性がかなりある人もいるという ことですから、それを何かうまくシステムを動かして防がなければいけないんじゃない かと思うんですが、ちょっと入退院そのものからはそれる議論ですが、考える必要があ る。 ○阿彦委員  資料2の重藤先生の大体こういったことで私はいいと思いますが、前回の5月のとき に私から発表したこととちょっと重なりますが、入院が必要だという理由は大きく分け ると、まとめ方をちょっと変えれば3つの視点があるんじゃないかと私は思うんです。  1つは、現在の患者の感染性から見て、今の時点の社会防衛といった視点で絶対必要 だというのが一番だと思うんです。  2番は、粟粒結核の大部分は喀痰では菌が出ませんから、そういう感染性は低いんだ けれども、外来治療は望ましくない、難治例、難治性の結核や重篤な結核という方々 は、社会防衛というよりは、やはり福祉的な意味合いから、入院治療が欠かせないだろ うということが2番目だと思うんです。  3つ目が、感染症法にはない考え方で、結核以外の感染症の関係では余りない考え方 だと思いますが、将来に向けた社会防衛というか、これは結核は是非考えないといけな いことで、これは第34条の通院医療でもそうなんですけれども、きちんと治療を完遂し ないと、将来の多剤耐性結核が増えて非常に社会的な脅威になるだろうと。それを防ぐ ために外来DOTS、地域でのDOTSをきちんと提供できそうにない患者さんについては、外 来DOTSを提供できるまでの間は、将来に向けた社会防衛を目的に入院を認めるといった ことがいいんじゃないかと個人的には考えております。  以上が意見ですが、あと、質問もいいですか。事務局の方から御提供いただいた資料 3の2ページ以下なんですけれども、「今後の考え方(案)」ですが、全国一律の基準 病床数算定基準廃止云々とありましたが、教えていただきたいのは、都道府県ごとの基 準病床というのは、病床の整備の上限を定めたものだと理解しておりますが、これ以上 は整備は望ましくないという上限設定だったはずですけれども、今日の資料の書き方 は、必要最小限の病床数については技術的助言を行うあるいは3ページ目で技術的助言 としての必要病床数の案とありますが、上限である基準病床を廃止して必要最小限の病 床数について助言をするというのは、何かしっくりこないんです。もともとこれ以上は つくってはいけませんよという上限設定の概念を廃止して、今度はこれ以上は絶対に必 要ですよと、そういうものを助言するということなんでしょうか。この辺が医療法の基 準病床数の概念とそぐわないような提案だったので、考え方が変わるという提案なので しょうかということです。 ○事務局  委員御指摘のとおり、実際に一般病床がどんどん増えてきている、右肩上がりで病床 が増えているというのが、上限を定めるという意味で運用されていた経緯はあろうかと 思います。ただ、実際、必要病床という考えから基準病床という考え方に変わってきて いるという経緯は、実際その県の医療政策を進めていく上で、入院治療としてどれくら いのベッド数が必要かという考え方に変わってきていると。また、結核病床については 平成13〜15年で6,000床以上減少しているという中にございまして、今の段階で病床数 の上限を定めて、これ以上結核病床をつくってはいけませんよというふうに指導するの か、それとも、これ以下に減らしては困りますよという最小限の病床を示すのか、どち らかの選択が必要な時期というふうに認識をいたしております。  そういう中で、この技術的助言の案として示させていただきました新規の喀痰陽性の 患者、そして、慢性排菌患者の病床は必要ですと。ただ、これも技術的助言でございま すので、最終判断は勿論県が行うものでございますが、一応現在、結核病少数が減少し てきている中における医療計画上の結核病床の位置付けというものを考えた上での基準 病床の考え方ということですので、従来の右肩上がりの段階とは違うということを御理 解いただければと思います。 ○阿彦委員  そういうことであれば、私もその御意見に賛成ですけれども、これ以上、結核病床が 無秩序に減り過ぎて必要な結核治療が保障できないような状態にならないように、必要 最小限の結核病床は技術的助言で確保しようという趣旨だと理解してよろしいわけです ね。 ○事務局  そうでございます。 ○森委員長  そのほかございますか。  私は、ちょっと重藤先生にお聞きしたいんですが、モデル病床の話が事務局から出て いますよね。学会の議論の内容には、そこら辺は何か意識された議論はあるのでしょう か。 ○重藤委員  まだ、議論していないというか、治療委員会では議論は全く出ていません。現実問 題、周りを見回して、このような病床がほとんど動いていないというのが現実なわけ で、もう一つは、病床で本当に結核医療のできる人というのが余りいないというものあ ると思いますが。モデル病床としては、確かに本当に特殊な病態に関しては必要だとは 思いますけれども、入退院の基準の話の中では、今までのところほとんど計算に入って いません。 ○森委員長  事務局の方から補足していただきたいんですが、今、重藤委員が余りモデル病床とい うのが目につかないという話なんですけれども、最近増えているような感じがあります よね。 ○事務局  モデル病床について資料4を御用意いたしておりますので、説明させていただきま す。 ○事務局  資料4につきまして、事務局の方から御説明させていただきます。  「結核患者収容モデル事業に関する調査(中間報告)」という形でございますが、ま ず、この資料の前に、参考資料7の21ページのモデル事業実施要領につきまして、ごら んいただきたいと思います。  1つ目の「事業の目的」のところでございますが、先ほどの資料3のところでも多少 触れさせていただいておりますけれども、もともと収容モデル事業につきましては、い わゆる高度な合併症を有している患者の方々に対しまして、医療上の必要性から一般病 床かあるいは精神病床におきまして、収容治療するためのより適切な基準を作成するた めに、モデル的に平成4年度から行われている事業でございます。将来的には、このモ デル事業におけます実施状況等が新たな基準を策定するための参考になってくるのだろ うと思います。  こういった実施要領の目的を踏まえまして、今回このモデル事業を実施しております 医療機関からアンケートという形で現場の御意見をお聞きしまして、その御意見等をま とめましたのが資料4ということになります。  また、資料4に戻っていただきますと、ごらんいただきますとわかるんですけれど も、主に現行の結核患者収容モデル事業実施要領に規定されております各種要件がござ いますが、事業実施者の要件ですとか、結核患者さんの要件といったものがございます けれども、こういった要件に対します御意見という形で中間報告としてまとめさせてい ただいております。  比較的積極的な御意見が寄せられておりました要件としましては、資料4の4番目の 施設の構造及び設備の要件ですとか、あるいは6番目のその他の要件というものが、比 較的多数いろいろな御意見を寄せていただいております。  簡単に資料4に記載しております内容について一通り御紹介申し上げますと、ごらん いただくとおりなんですけれども、今回54医療機関に実際にモデル事業を実施していた だいておりますが、そこに対しまして調査を掛けまして、本日現在43医療機関からの御 回答を得ております。  まず、1番目の事業実施者の要件について、適切でないと考えておられる医療機関と いうことで、これは非常に少数の意見ではございましたけれども、1医療機関ございま した。これは本年度モデル事業実施要領の改正というものがございまして、このときに は、今までは結核病床を有しない病院というのが要件として入っていたわけですが、こ れが削除されてしまったことについて多少疑義をお持ちの医療機関ということでござい ます。  2つ目の結核患者の要件について、適切でないと考えておられる医療機関ということ で、4医療機関ございます。集約いたしますと大きく2つの御意見という形であったわ けですけれども、合併症のない結核患者さんも一時収容できればよいのではないかと考 えていると。  それから、結核の疑いのある患者さん、これは確定診断がつくまでの期間ということ でございますけれども、そういった方々についても要件に含めてはどうかというような 御意見がございました。  それから、3つ目の、これは実際現行の要件には入っていないんですが、要件に入れ た場合に何か問題点があるかというような問いでございます。合併症のない結核患者さ ん、健康な結核患者の要件には該当しておりませんけれども、仮に合併症のないの結核 患者さんにつきましても、結核患者の要件に含めるとした場合問題があるかということ で、これは10医療機関から御回答いただいておりまして、ほとんど少し問題ありという ような傾向がございましたが、1つは、合併症のある結核患者さんの収容に支障が出て しまうおそれがあるのではないかというようなことですとか、あるいはこれは精神病棟 をお持ちの病院からの御意見でしたけれども、精神疾患のある患者さんを対象とした病 院の場合、合併症のない患者さんについては想定していないというような御意見がござ いました。  それから、先ほど申し上げましたとおり、たくさん意見としていただいている4の施 設の構造及び設備の要件についてでございますけれども、これは1つ目として、空気遮 断につきまして、引き戸と開き戸を比較しても機密性には差がないため、陰圧及び二重 扉にして病室から廊下までの開放を避ける構造であれば、必ずしも引き戸でなくてもよ いのではないかと。また、要件中に「扉は自動的に閉じる構造とすること」という表現 がございますけれども、この手動扉による半自動構造も含まれるかどうかということ が、ちょっとこの表現だとあいまいではなかろうかというような御意見でございまし た。  それから、2つ目の換気についてでございますが、陰圧に保つ設備、独立換気及び屋 外へ排気する際のフィルターの装着は必須条件にすべきではないかと。現在これは「望 ましい」という形で規定されておりますので、これを必須条件にすべきではないかとい うことでございます。  それから、3つ目に殺菌等設備について、病室内に殺菌等設備を設置することは空気 の除菌や安全確保の両面から考慮すると効果的ではないというふうに考えるというよう な御意見でございます。  そのほか、手洗い設備につきましてとか、トイレ、浴室、処置室につきましても幾つ か御意見がございましたので、まとめさせていただいております。  それから、5番目の患者管理及び施設運営の要件について、適切でないと考えている 医療機関、3医療機関ございます。これは、結核患者さんは通常のガーゼマスクまたは 使い捨てマスクを着用することというような条件があるんですけれども、例えば、排菌 ですとか未治療の場合には外科マスクのレベルのものが必要ではないかというような御 意見でございます。  それから、6番目のその他の要件につきまして、適切でないと考えておられる医療機 関、これも8医療機関ということで、かなり御意見をいただいております。1つ目とし て、モデル事業に従事する病院の職員の方々について、定期的に結核感染の有無を検査 によって確認しなければならないというのが要件としてございますが、この枕詞に「結 核と診断された患者に接した職員は」というような条件をつけるべきではないかという ような御意見でございます。  それから、2つ目のモデル事業実施施設には、経験を有する医師等が常勤しているこ とを原則とするとあるが、単科精神科などでは、経験を有する内科医の非常勤併任の先 生でも十分ではないかというような御意見でございます。  それから、最後の3つ目ですが、モデル事業に係る諸施設について、定期的に結核菌 有無の検査を行うこととございますが、陰圧管理を行っているのであれば、結核菌の有 無の検査は不要ではないかというような御意見でございます。  最後のその他、結核患者収容モデル事業に関します御意見ということでいただきまし たが、現行の要件には酸素とか吸引設備に関する要件というのが明確に示されておりま せんので、そういった要件ですとか、あるいはこれに対する補助があってもよいのでは ないかということ。  それから、2つ目の精神病床及びモデル病床として運用する場合、施錠等の取扱いに つきまして、精神保健福祉法等との整合性を図りまして、明確な運用基準を整備する必 要があるのではないかと。  最後のモデル病床を設置する場合、設置規模、1床を指定するところもあれば、10床 ぐらい指定するところもございますけれども、こういった設置規模に応じた基準という ものが必要ではないかというようことでございます。  こういったような御意見等をいただいている状況でございまして、この場の本調査に つきまして最終報告というような形でまとめるようになるというふうに思われますが、 本日は中間報告という段階での御報告をさせていただいたところです。  以上、簡単ではございましたが、モデル事業に関する調査中間報告につきまして、御 報告を終わらせていただきます。 ○森委員長  ありがとうございました。  これは、モデル病室に収容する患者の要件というのが書いてあるんですが、これと病 学会で議論している入退院の基準というのは、何か整合性をとる必要があるんですか ね。 ○重藤委員  特に意識して整合性をとらなくても、感染性がある状態であれば、モデル病床内とい うことになると思いますけれども。そこから出る場合には、一般病床に移る場合の条件 を考えればいいと。 ○森委員長  それから、あくまでもモデル病床というのは一般病床ですよね。そうすると、それは さっきの基準病床数の計算や何かに全く埒外な話なんですか。それに影響するほど数が ないということなんですか。 ○事務局  今現在、全国に54医療機関で274床の指定という形になっております。 ○森委員長  これは増える勢いにあるんでしょうか、それとも余り変わらないんでしょうか。 ○事務局  平成16年につきましては、2か所指定が増えておりましたけれども、平成13年とか平 成14年の一年度に10か所以上増えていた勢いと比べますと、少し増え方としては減少傾 向にあるというのが現状です。 ○森委員長  だから、もうモデルとなってから随分長い。 ○重藤委員  私たち結核医療をしていまして、余り存在感がないというのが正直なところなんです けれども。  もう一つは、結核と診断された患者さん、それ以前に結核が疑われる人というのは、 かなり一般医療機関は苦労しているわけですよね。そういう方々を例えばPCRで結核 菌と確定するまで見ていただくとか、そういう病床は必要だと思うんです。  もう一つは、非常に特殊な合併症を持つ方というのは、大きな病院でこれは必要であ ろうと思います。 ○坂谷委員  委員長がおっしゃっていることも、まさしくポイントだと思うんです。ただ、一番最 後のページに書かれていますように、モデル病室というのは結核患者の要件というのが くっついていまして、現状ではまさしく重藤先生のところでありますとか、私ども結核 病棟を持っておるところとしましては、これ以外の患者を扱っているので、この種の患 者は今扱っていないことはないんですけれども、質が違うんですよね。ところが、今、 事務局の方から御説明がありましたように、アンケート調査の中間報告に書かれていま すように、これは私個人の意見ですが、2番の結核患者の要件について適切でないと考 えている医療機関として2つの回答があって、合併症のない結核患者も一時収容、診断 がつくまで収容というのを認めていただく、縛りを軽くしていただくことによって、モ デル病室というのはもっと普及しますし、私ども医療機関全体として、日本の結核に対 するいろいろな手段を持っているということはいいことですから、その1つの武器とし て、この縛りを緩めていただいて、モデル病室の設置を許可していただくというのがい いことではなかろうかと考えるんです。まさしく、このアンケートの2つの意見という のは、ポイントであろうと私は考えます。 ○森委員長  ひところ院内感染の問題が取り上げられたときに、トリアージュというのが出ました ね。トリアージュのために、こういう施設をどこの病院でも持ってもらった方がいいと いう議論があったと思うんですけれども、それも静かになっちゃって。 ○坂谷委員  それで、今は結核部会ですから、小委員会で結核のことだけを言っていますけれど も、同じくエアボーンで伝染するものをみんなここに含めればいいのであって、水痘で あるとか麻しんでありますとか、SARSまではいくわけにはいきませんけれども、そうい うふうに共有の病室として使うということになれば、日本全体の感染症対策としても有 用でなかろうかと思いますが。 ○阿彦委員  今の坂谷先生の御意見に大賛成で、今、保健所で結核患者さんが出て定期外検診を、 特に定期外集団検診、集団感染対策として発動するものの、我々のところは3割くらい は病院なんですね。それで、結核を疑った段階で最低限独立換気の個室が病院にあれ ば、こんなに範囲広く検診しなくてもいいのにというケースはたくさんあるので、我々 病院の立入検査などを定期で医療法でやったときも、病院長さんには今度、病院を改修 するときは、必ず独立換気の個室を最優先に整備してはどうですかとか、そういった話 を申し上げているところなんですね。基本的に、やはり病院の設備構造上、病院には必 ずそういう病室が必要なんだという文化といいますか、日本の医療を変える文化をつく るべきではないかと思うんです。  土曜日も東北の院内感染対策の研究会というのが10回目で仙台であったんですけれど も、そのときも結核以外に東北大の感染管理室の先生が、麻しんの院内感染というもの もあちこちで起きていて、麻しんの予防接種を病院の職員対象にやっているところが徐 々に増えてきていますが、それを考えても、結核だけが問題ではなくて、病院の換気シ ステムをきちんとすべきだと思います。これが意見です。  あと、関連ですけれども、山形も第一種感染症指定医療機関というのを県立中央病院 に2床整備しているわけですが、中にいるドクターは感染症や結核治療についても比較 的造形が深いドクターがいますので、こういう合併症を持った結核患者さんで感染性と いう場合、第一種感染症指定医療機関は施設の構造から見れば、治療のための入院には 適していると思うんですが、現実そういう形では使われていないのが実情でして、各都 道府県で第一種感染症指定医療機関の整備が進んでいない現状を考えれば、合併症を有 する結核患者さんに対する入院施設という意味合いも含めて、各都道府県で整備をして いただければ、結核のことだけでなく、第一種感染症指定医療機関の整備も今より進む のではないかと、そう考えるんですが、以前のここでの議論で質問すると、第1種感染 症指定医療機関は結核患者さんは原則としては対象ではない答えがあったかと思ったん ですけれども、現実的に第1種指定医療機関の整備が進んでいない現状があるわけです ので、結核との兼ね合いで、両方に対応できる病室だということで整備を進める方法も あるのではないかということで御意見を申し上げます。 ○森委員長  ありがとうございます。  時間が押していますから、もう一つ別の問題を議論したいと思いますが、重藤先生の プレゼンテーションを受けられて阿彦先生が指摘された入院の要件の中に、現在の感染 源としてのリスクのほかに、放っておくと必ず将来感染源になるおそれがあるので、 今、感染性ではない患者さんも入院の適応とするという条件がありましたね。これは結 核の専門家は何となく認めているんですけれども、そこら辺は法律の専門の先生方はど ういうふうにお考えになりますか。予防的な観点から入院を要求するという問題。 ○山川委員  初めて出された試験問題のようなものでありまして、今まで考えたことがないんです けれども、今大急ぎで考えますと、多分、放っておくと将来結核になるという方です ね。どれほどタイムスパンでイミネントであるかということと、どの程度蓋然性が高い かという、その2つかなと思うんですが、そこら辺時間をどの程度放っておくと発病す るあるいは感染性が強くなるというふうに言えるのか。それから、100%なのかあるい は50%なのか、70%なのか、そこら辺の考え方なのかなと思うんですが。すみません、 全くの思いつきで。 ○雪下委員  今、予防投与の適応中にもその枠がありますよね。それと入院させなくてはいけない というところには、その差があるんでしょうか。予防投与の中に又、治療中にいわゆる そういう合併症を持っていたりして、放っておくと排菌するだろうというグループにも 入院させるということですね。 ○重藤委員  それはまた別に。 ○雪下委員  それは予防でやってるわけですけれども、それと別に入院させなければいけないとい う、発病者扱いするということですか。 ○重藤委員  もう既に発病していて、放っておいたらどんどん感染性になる、もしくは非感染性に なったけれども、将来また再燃してまた感染性になるであろうと、その場合には薬剤耐 性になるだろうと。  治療の中断の状況によって確率というのは非常に違ってくると思いますけれども、現 実的には例えば1か月中断してしまったと。菌陰性化した段階で1か月中断してしまっ たと。保健所とか医療機関からの働き掛けに対してもどうして応じないという場合に は、1か月中断したら緊急に対応しないと、やはりその状況にもよると思いますけれど も、半分以上はまた再燃して、かなりの率で薬剤耐性になると。それを繰り返している と、もう確実に多剤耐性になっていくということであると思います。 ○森委員長  そうすると、さっきの御質問のもう一つの部分ですけれども、菌が2か月で陰性化し ますね。普通の人はそこで退院させるんだけれども、この人は退院させると危ないから 入院させておくというのは、あと4か月入院させればいいと。6か月ですか。 ○重藤委員  一気に確実に終わらせてしまおうと思えば、そうなりますね。現実的には、一遍退院 してだめだったと、再発してしまったと。その場合に、その次には絶対確実に治さなけ ればいけないというふうに思います。 ○森委員長  山川先生、あと4か月ぐらいだったら我慢していただけますか。 ○重藤委員  一気にやってしまうのが一番順当というか効率的であって、御本人の治療期間も少な くて済むわけなんですけれども。 ○山川委員  これは、命令入所になるわけですよね。 ○重藤委員  そうしていただきたい。 ○森委員長  青木先生、いかがですか。 ○青木委員  どの程度似た話なのかわかりませんけれども、例えば、SARSの流行地域から帰ってき て、罹患しているかもしれないというときに、仕事を例えば2週間休まなければならな いとなって、そのときの収入を失うかもしれないけれども、休まなければいけないとい うときに、今、命令で家に隔離しておくことは法律でできないんですけれども、お願い をするという形ですよね、多分。そうではないんでしょうか。強制的に命令をつくって おいて、違反した場合の制裁基準をつくっておかないというところから始めたら、一 応、行為規範のような形で命令はつくっておく、だけれども、それに違反をした場合の 罰則がないという状況から始めることは、公共の福祉との関係で感染性があり、周囲の 健康に対して障害を及ぼす蓋然性が高いものについては、つくることはできるのではな いかと思います。イギリスの公衆衛生法は多分そうなっていて、罰則はなかったように 思います。 ○森委員長  今日は、そのレベルまで議論していないんですけれども、これは実はアメリカで拘束 化の治療を導入するときに大議論しているんですね。菌陽性じゃない患者さんも薬を飲 まないと言った人は措置入院させる制度をつくっているわけですけれども、そのときに 大議論したことを思い出して、ちょっとお聞きしてみたかったわけですが、今日はその レベルの議論をしていませんから、また別にしたいと思いますけれども、そのほかいか がでしょうか。 ○坂谷委員  青木委員がおっしゃったことで1つ思い出したことがございますが、今、入退院のこ とを言っておりますが、退院を許可したからといって、それが即就業禁止の解除ではな いと。この辺をきちんと整理しておかないとだめなのと違うかなと思うんです。だか ら、自宅療養に戻ってもいいですよというだけであって、退院したからすぐ明日から会 社に行っていいですよということではないと。この辺をきちんと整理し、何らかの法や 基準の改正的なことに及ぶのでしたら明記をする必要があるというふうに思いますけれ ども、いかがでしょうか。 ○森委員長  重藤先生、いかがですか。 ○重藤委員  ちょっとそういう話もありましたけれども、なかなか言葉にするのは難しいですね。 ○森委員長  それは、職業によるとかそういうレベルの話ですか。学校の先生はだめだけれども、 トラックの運転手はいいとかという話。 ○重藤委員  そうですね、例えば、乳幼児に接する職業であるとか、そういう場合には、何か要る んじゃないかという話は出てきています。 ○森委員長  退院してもいいけれども、しばらく家にいてと。そうすると、家にいる期間、家にい なければいけない期間の基準というのも考えなくていけない。 ○重藤委員  はい。そこまでいちいち設定できませんね。割り切ってしまえば、今まで勤めていた ところなら大丈夫じゃないかということになってしまうんですけれども。その線引きと いうのは非常に難しいと思うんですよ。可能性がどうか、100%を問われると切りがな いわけです。文章にしてしまうと、やはり100%にだんだん近づいてしまいますので、 非常に苦しいわけですよね。そうなると、あいまいなまま抜かしておいてしまうという のが、この基準になってしまうかと思うんですけれども。 ○坂谷委員  この委員会の中で、医者である者は承知しておると思うんです。医者以外の方には 「へぇ」と思われるかもしれませんけれども、今までの話では結核菌が出ておれば、特 に塗抹で出ておれば全部入院命令になるのかということなんですが、そうではありませ ん。それは逆に御存じかもしれませんけれども、参考資料2に書かれていますように、 現行の予防法でも上手にうまく書かれておって、菌が出ているけれども感染性があるけ れども、その居住環境から判断して、同居者に結核を伝染させるおそれのある者だけが 命令入所の対象になるのであって、独居であるとかあるいは年寄り夫婦であるとか、も う既に同居の家族にうつしておると、今更隔離をしても仕方がないという人は、自宅に おってもいいということになっておるんですよね。これでいいのだろうと思います。  それから、青木先生がおっしゃったように、これを当てはめても、やはり命令入所で あるけれども、それに従わなくても罰則はありません。というようなことを踏まえて、 先ほど事務局からお話のあった、現状では2年以上登録されている、常時排菌しておる 者が731名もあって、そのうち入院しているのは329名しかいない。逆に言うと402名は 入院していない。通院治療か登録はされているけれども治療もされていない。その中に は、これは非常にはっきりスポットを当てると問題かもしれませんが、その中に多剤耐 性が62%、すなわち240人ぐらいが多剤耐性で薬が効かん患者がウロウロしておるとい う事実があるよということを、はっきりここに書かれておるんですね。といって、どん どんその病気が広がっているという様子は勿論ありません。ということは、そういう人 が入院していなくても、周りに患者を広げている様子はないんです。ということで、昔 からそうですし、今もそうですけれども、周りにきちんと予防的なことをされていてと いうか、意識的に伝染させるというようなことはないでしょうけれども、そういうこと さえしなくて同居者及び同業者に伝染させるおそれのない者は無理に入院しなくてもい いですよということはあるし、これをどのように整理するかというのも一度徹底的にき ちんとしておかないといけないのではなかろうかと感じています。  その要件で、周りへの感染性が否定できれば、通院で生活してもらっていても構わん のかということなんですけれども、私個人的には条件さえ整えれば、それでいいのだろ うと感じはしていますけれども。 ○重藤委員  私も、この入退院の基準をつくるときに、ほかの人たちに結核を感染させるおそれが 高い場合という条件を出したのは、そういうことをちゃんと考えて入れているわけで す。実際に今、坂谷先生が言われたとおりのことを私も思っていますし、患者さんも診 ています。こういうおそれが高い場合というのは、やはり治療をしようと思ってもでき ないけれども、ちゃんとある程度の指示には従ってくださる方ですよね。治療をしよう と思っても、そのように従ってくださらないで、結局、多剤耐性になってしまって自由 に行動される方というのが、先ほどからの強制力を持って入院していただきたい方と。 しかも、多剤耐性になる寸前か、もう2歩ぐらい前で確実に治したいということなんで す。 ○森委員長  よろしいでしょうか。 ○山川委員  今、坂谷先生がおっしゃられたことからすると、要するに240〜250名の人のことを考 えているわけですね。 ○坂谷委員  数字上としては、そういう具体的な数字が出ておりますけれども。日本全国では予防 法に乗っかっていない人がまだおるでしょうから、これは最低の数ですが。だから、そ ういう人たちもいるということの現状の認識及びそれが問題であるか、問題でないかと いうことに関しての判断及びそれを入れた上での全体の議論ということになりましょう か。  それから、山川先生に御関係があることとしましては、それに対して法的なかなり厳 しい規制をする人権問題が絡んでくる話は、私どもにとっては全くというか、ほとんど 不案内なことですが、どういうふうに考えたらいいのだろうかということなんです。そ れに対する強制的なことを発動した場合にどうなるんだろうかということでしょうか。 ○山川委員  今、入院命令を出されたときには、それを執行する手続はどうなっていましたか。 ○牛尾結核感染症課長  今の結核予防法は「命令入所」という言葉を使っておりますが、実際には強制力がな いという点が問題でございます。ほとんどの方々は「命令入所」という言葉の意味合い を感じてか、ほとんどの方は従っていただく。 ○山川委員  自発的に。 ○牛尾結核感染症課長  はい。ところが、時々それに従わない方、かつ排菌、かつ薬剤耐性の方が社会的に時 々大きな問題になるんですが、全体の中で大きな比重をそういった方々が占めているわ けではない。現行の制度で大体うまくいっているんですが、時々それに従っていただけ ない方が問題になっているというのが現状だと御理解いただければいいと思います。  数年前にそういう事例が東北地方でございまして、何とかしなければならないという のが、この結核に関しての一つ課せられた課題でございまして、今の「命令入所」とい う名前だけではなくて、感染症法のように強制的な措置ができるような仕組みを是非構 築すべきであるというのが、その時点でもやはり話題になったところでございます。 ○森委員長  そのほか何かございますか。もし、ありませんでしたら、今日の議論をまとめたいと 思いますが、2番と3番につきましては、まだ専門家の集まりであります結核病学会の 方で、かなりこれにジャストミートする議論をしているということもございますし、今 日もいろいろ御意見をいただいて、これというふうにまとめるのは難しいと思いますの で、次の検討会でもう一回議論をさせていただきたいと思います。私と事務局の方で、 今日の議論をまとめた簡単な資料をおつくりしまして、次回の検討会でごらんいただ き、その上で更に議論をさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょう か。               (「異議なし」と声あり) ○森委員長  ありがとうございました。  では、事務局の方から。 ○事務局  本日は長時間にわたって活発な御討論をいただき、ありがとうございました。厚生労 働省といたしましては、本日の議論を踏まえ、今後も適正な結核対策の推進を図ってま いりたいと考えております。 ○森委員長  それでは、これで第2回の結核医療に関する検討小委員会を閉会いたします。ありが とうございました。                                    (終了) ● 照会先:厚生労働省健康局結核感染症課結核対策係 ● 電話 :03−5253−1111(内線2380,2933)