04/11/29 労働政策審議会安全衛生分科会第１５回議事録


　　　　　　　　　　　第１５回労働政策審議会安全衛生分科会

１　日時　　平成１６年１１月２９日（月）１５：００～１７：００

２　場所　　厚生労働省７階　専用第１５会議室

３　出席者
　（委員）公益代表　　櫻井委員、今田委員、北山委員、内藤委員、名古屋委員、
　　　　　　　　　　　平野委員、和田委員
　　　　　労働者代表　中桐委員、徳永委員、芳野委員
　　　　　使用者代表　伊藤委員、加藤委員、金子委員、小島委員、讃井委員、
　　　　　　　　　　　中田委員、山﨑委員
　（事務局）　　　　　青木労働基準局長、小田安全衛生部長、中沖計画課長、
　　　　　　　　　　　寺岡安全課長、阿部労働衛生課長、古川化学物質対策課長、
　　　　　　　　　　　川島国際室長、高橋建設安全対策室長、中村環境改善室長、
　　　　　　　　　　　角元化学物質評価室長

４　議事録

○櫻井分科会長
　ただいまから第15回労働政策審議会、「安全衛生分科会」を開催します。今日は、鈴
木委員、髙橋委員、仲田俊一委員、眞部委員は所用のため欠席されています。この結
果、労働政策審議会令第９条に規定する定足数を満たしていますので、当分科会が成立
していることを申し上げます。
　今日の議事に移ります。今日の議題は前回に引続き、「今後の労働安全衛生対策につ
いて」です。10月６日から議論を行ってきた今後の労働安全衛生対策に係る各検討項目
について、そのうち再度議論を行う部分がある過重労働・メンタルヘルス対策を除い
て、いままでの議論を踏まえ、事務局で作成した取りまとめの素案を用意しています。
事務局から説明をお願いします。

○計画課長
　お手元の資料No.２をご覧ください。取りまとめの素案です。10月６日、21日、11月
10日の３回にわたって議論した結果を取りまとめたものの素案です。ただいま分科会長
からお話がありましたとおり、再度議論を行う必要がある過重労働・メンタルヘルスの
部分についてはペンディングとなっています。頁数は大したことはございません。事務
局から読み上げたいと思います。

○計画課企画担当補佐
　私から読み上げさせていただきます。
　はじめに
　安全衛生分科会では、平成16年９月より、労働安全衛生対策の見直しについて、(1)
事業者による自主的な安全衛生への取組を促進するための環境整備、(2)元方等を通じ
た安全衛生管理体制の実現、(3)過重労働・メンタルヘルス対策、(4)労働者の健康情報
の保護、(5)化学物質管理の推進、(6)その他に関し、「今後の労働安全衛生対策の在り
方に係る検討会報告書」、「過重労働・メンタルヘルス対策の在り方に係る検討会報告
書」、「労働者の健康情報の保護に関する検討会報告書」、「職場における労働者の健
康確保のための化学物質管理の在り方検討会報告書」等を踏まえ、検討を行い、その結
果を下記のとおり取りまとめた。
　第１　労働安全衛生対策をめぐる状況
　労働安全衛生をめぐる状況をみると、次のような課題が見られる。
　１　労働災害は、長期的には減少してきているが、今なお年間53万人の労働者が被災
しており、１度に３人以上が被災した重大災害は、昭和60年以降増大傾向にある。特
に、昨年の夏以降、わが国を代表する企業において爆発・火災等の重大災害が頻発して
いる。これらの要因としては、危険性・有害性の調査とそれに基づく対策の不備、安全
確保面での知識や経験の伝承不足、事業場のトップの取組不足等が指摘されており、こ
れらに対応した仕組みを導入する必要が生じている。
　また、業務請負等のアウトソーシングの増大、合併・分社化の進行、就業形態の多様
化など、企業や労働者を取り巻く社会経済情勢が変化する中で、この変化に対応した安
全衛生管理体制を構築する必要が生じている。
　２　（過重労働・メンタルヘルス対策をめぐる状況）については割愛させていただき
ます。
　３　情報化社会の急速な進展により、個人情報が大量かつ広範囲に収集・利用される
ようになったことから、個人情報の保護の必要性が高まっている。このため、個人情報
の保護に関する法律（平成15年法律第57号）が制定され、平成17年４月より全面施行さ
れることとなっており、また、同法に基づいて、雇用管理の分野についての指針や健康
情報の取扱いについての留意事項が示されたところであるが、労働安全衛生法（昭和47
年法律第57号）においても必要な整備を行うことが求められている。
　４　近年、ダイオキシン類、石綿、いわゆるシックハウス問題など、職場における化
学物質の問題に対する社会的関心が高まっている。
　また、職場における化学物質は、その種類が多様で、かつ取り扱う作業も多岐にわた
る傾向にあり、有機溶剤中毒予防規則等の特別規則によって規制されていない化学物質
による疾病が半数程度を占めるとともに、重篤な障害に結びつく一酸化炭素中毒、化学
物質による爆発・火災等も依然として発生している。
　さらに、化学物質の引火性、発がん性等の危険性及び有害性について、その程度等を
区分し、その程度等に応じて絵表示を付すこと等を内容とする「化学品の分類及び表示
に関する世界調和システムに関する国連勧告」（ＧＨＳ国連勧告）などの国際的な動向
への対応も求められている。
　第２　労働安全衛生対策の見直しの方向
　第１で述べた労働者の安全衛生をめぐる状況に的確に対応するため、次の事項につい
て見直しを行っていく必要がある。
　１　事業者による自主的な安全衛生への取組を促進するための環境整備
　（１）危険・有害要因の特定、低減措置の推進
　近年、重大災害発生件数が増加傾向を示しており、特に、昨年夏以来、大規模製造業
において爆発火災等の重大災害が頻発しているが、これらの要因の一つとして、事業場
内における設備や作業の危険性・有害性の調査とそれに基づく対策の不十分さがあげら
れている。当該重大災害の頻発を踏まえて、平成15年11月に厚生労働省が行った大規模
製造事業場に対する自主点検結果においても、危険性・有害性の調査とそれに基づく低
減措置の手法を導入している事業場は、導入していない事業場と比較すると、災害の発
生率は相当に低くなっているという結果が得られている。
　特に、生産工程の多様化・複雑化が進展するとともに、新たな機械設備・化学物質が
導入されており、事業場内の危険・有害要因が多様化し、その把握が困難になっている
現状においては、従前のように労働安全衛生法令に規定される最低基準としての危害防
止基準を遵守するだけでなく、さらに企業が自主的に安全衛生水準を向上させるため、
危険・有害要因を特定し、それぞれのリスクを評価し、これに基づきリスクの低減措置
を実施するという手法を導入することが必要である。
　このうち、機械に関しては、製造段階でリスクを評価し、低減した上で、残存リスク
の情報を機械の使用者に提供する等の安全対策を一層推進する方策を検討することが必
要である。
　また、これらの対策の推進に当たって、人的、財務的基盤が十分でなく、労働災害の
発生率が高い中小企業に対しては、危険性・有害性の調査等を普及するための支援が求
められる。
　〔対策の方向〕
　ア　安全管理者を選任しなければならない業種等の事業者は、設備を新設したとき等
に労働災害発生のおそれのある危険性・有害性を調査し、その結果に基づいて、これを
除去・低減する措置を講ずるよう努めなければならないこととすること。
　イ　厚生労働大臣は、アの措置に関してその適切かつ有効な実施を図るため必要な指
針を公表するとともに、当該指針に従い、事業者等に対し、必要な指導、援助等を行う
こと。
　ウ　機械の包括的な安全基準の実効性を高めるための方策について検討すること。
　エ　中小企業において危険性・有害性の調査等を実施する際の支援策として、標準モ
デルの作成、講師派遣等を実施すること。
　（２）自主的取組の推進と普及促進のためのインセンティブ措置
　近年、現場の実態及びこれを踏まえた実践的な安全衛生活動を熟知しているベテラン
労働者が、定年退職、リストラ等により現場を去り、また、今後「団塊の世代」が大量
に退職することを考慮すると、現場における安全衛生担当者のレベル低下による安全衛
生活動の弱体化が予測され、これを未然に防ぐ必要がある。
　このためには、個人の経験と能力のみに依存せず、危険・有害要因を特定し、リスク
の評価及びリスクを低減させる措置を組織的かつ体系的に実施し、安全衛生水準の段階
的な向上を図る仕組みを活用することが効果的であり、その仕組みの一つである労働安
全衛生マネジメントシステムの導入を促進することが望ましい。
　〔対策の方向〕
　事業者の自主的取組を促進するため、事業場における危険性・有害性の調査並びに安
全衛生計画の策定及び当該計画の実施・評価・改善など現行の労働安全衛生マネジメン
トシステム指針を踏まえて定める措置を適切に行っており、安全衛生水準が高いと行政
機関が認めた事業者に対しては、労働安全衛生法第88条に規定する機械等の設置、移転
等に関する計画の届出に代えて設置報告とする等の促進策を講じること。
　（３）安全衛生委員会等の活性化
　労働災害防止においては事業場のトップの取組が重要であるが、労働災害発生率の高
い事業場においては、その取組不足が指摘されている。
　また、事業場のトップ及び労働災害防止の当事者であり現場を熟知している労働者が
参画する安全衛生委員会等の活用は、労働災害防止のための有効な手段であるが、大規
模製造事業場に対する自主点検結果等によれば、労働災害発生率の高い事業場におい
て、安全衛生委員会等の活動は必ずしも活発でなく、労働安全衛生法上期待されている
機能も十分果たされていない状況にあることから、その活性化を図ることが必要であ
る。
　〔対策の方向〕
　ア　安全衛生委員会等の機能を強化するため、危険性・有害性の調査及びその結果に
基づく措置に関すること、安全衛生計画の策定及び当該計画の実施・評価・改善に関す
ること等を安全衛生委員会等の調査審議事項に追加すること。
　イ　安全衛生委員会等の透明性を確保するため、労働者に対し安全衛生委員会等の議
論の概要がわかるようにすること。
　ウ　事業場のトップである総括安全衛生管理者の取組を促進させるため、安全衛生方
針の表明に関すること、危険性・有害性の調査及びその結果に基づく措置に関するこ
と、安全衛生計画の策定及び当該計画の実施・評価・改善に関すること等を総括安全衛
生管理者の職務として追加すること。
　（４）安全衛生担当者の教育の充実
　安全衛生管理組職の縮小、兼務の拡大、安全衛生管理に関するノウハウの継承不足等
により、安全衛生管理担当者の実務能力の低下が懸念される中、特に、安全管理者につ
いては、実務能力が制度的に担保されている衛生管理者や産業医と異なり、学歴と実務
経験のみで選任できることが問題点として指摘されている。また、現場の長である監督
者（職長）については、危険性・有害性の調査等安全衛生に関する知識の習得等が必要
である。
　このため、これらの者に対する安全衛生教育を充実することが必要である。
　〔対策の方向〕
　ア　安全管理者がその職務を的確に遂行する実務能力を担保するため、その選任に当
たっては一定の教育を受けることを要件とするとともに、その教育の内容として、危険
性・有害性の調査等を含めること。
　イ　職長等に対する安全衛生教育の内容を充実させること。
　２　元方等を通じた安全衛生管理体制の実現
　（１）安全管理者等の専属要件の弾力化
　企業の分社化等組織形態の変化が進む中で、企業分割により生じた企業グループにつ
いては、従来の安全衛生管理のシステムやノウハウが活用されるよう安全管理者等の兼
務を認めた方が適当な場合がある。
　また、安全衛生の確保を図っていく上で、必ずしも事業場内の人的資源に限定せず、
外部の人的資源の活用を図っていくことが有効な場合がある。
　このため、上記のような事情がある場合について、一定の要件を満たすときは安全管
理者等の専属要件の弾力化を認めることが必要である。
　〔対策の方向〕
　ア　分社化して設立された子会社の事業場が親会社と同一の場所にある等一定の要件
を満たす場合は、親会社の安全管理者や衛生管理者が子会社の安全管理者、衛生管理
者、安全衛生推進者等も兼ねることができるようにすること。
　イ　第二種衛生管理者の選任が認められている業種の事業者について、一定の要件を
満たす場合は、自社の労働者でない者を衛生管理者に選任することができるようにする
こと。
　（２）元方事業者による安全衛生管理の実施
　近年、製造業等においては、構内下請の増加により、元方事業者（自らも仕事を行う
最先次の注文者）及び請負人の労働者の混在作業による危険が増大しているが、これに
伴い、元方事業者が元方事業者と請負人との間又は請負人相互間の連絡調整を十分に行
わなかったこと等を原因として、元方事業者及び請負人の労働者が被災するはさまれ、
激突等の労働災害が発生している。
　また、厚生労働省が行った大規模製造事業場に対する自主点検結果においても、作業
間の連絡調整が十分になされていない場合等には災害の発生率が高いことが判明してい
る。
　このため、製造業等の業種に属する事業の元方事業者が、作業間の連絡調整など一定
の措置を講ずることが必要である。
　〔対策の方向〕
　製造業等の業種に属する事業の元方事業者について、混在作業によって生ずる労働災
害を防止するため、作業間の連絡調整、合図の統一等必要な措置を講じなければならな
いこととすること。
　（３）施設・設備の管理権原に関する安全衛生対策
　近年、事業運営についてアウトソーシングが進行する中で、化学物質を製造し、又は
取り扱う設備の改造、修理、清掃等の仕事の外注も多く行われているが、発注者等が自
ら把握している設備の状況等の情報を請負人に十分に知らせないまま発注したことによ
る一酸化炭素中毒、爆発、火災等の労働災害が発生している。
　このため、一定の危険有害な化学物質を製造し、又は取り扱う設備の改造、修理、清
掃等の仕事の発注者等が、当該仕事による労働災害を防止するため必要な安全衛生に関
する情報を請負人に提供する仕組みが必要である。
　〔対策の方向〕
　大量漏えいにより急性障害を引き起こす化学物質、引火性の化学物質等を製造し、又
は取り扱う設備の改造、修理、清掃等の仕事で、設備の分解等の作業を伴うものの発注
者等は、労働災害を防止するため、当該化学物質の危険性・有害性、当該作業について
注意すべき事項等の情報を文書等により請負人に提供しなければならないこと。
　３　過重労働・メンタルヘルス対策は割愛させていただきます。
　４　労働者の健康情報の保護
　個人情報が大量かつ広範囲に収集・利用されるようになり、個人情報の保護が求めら
れる中で、平成15年５月に制定された個人情報の保護に関する法律においては、個人情
報は本人の求めに応じて開示しなければならないとされている。
　労働者の個人情報である労働安全衛生法に基づく健康診断の結果は、一般健康診断に
限って本人への通知が事業者に義務付けられているが、個人情報の保護に関する法律の
趣旨も踏まえると、特殊健康診断の結果についても本人に対して通知を行うようにする
ことが必要である。
　〔対策の方向〕
　特殊健康診断の結果について、現行の一般健康診断の通知と同様、労働者への通知を
義務付けること。
　５　化学物質管理の推進
　職場における化学物質管理の充実を図るためには、事業者に対して個々の化学物質の
危険性・有害性、取扱上の注意事項等の情報がより明確に提供されることが必要である
が、国際的にも、事業場の容器等に危険性・有害性の程度等に基づく絵表示を付すこと
等を内容とするＧＨＳ国連勧告がなされている。また、化学物質を取り扱う事業者は、
交付されたＭＳＤＳ（化学物質等安全データシート）等に基づき自主的に労働災害防止
措置を講ずることが必要である。
　化学物質管理指針に基づく事業者による自律的な化学物質管理を促進するため、有機
溶剤中毒予防規則等の特別規則に基づくばく露防止方法について、一定の条件が満たさ
れる場合、柔軟化、性能要件化を図ることが必要である。
　中小企業等では自律的な化学物質管理が十分でないことから、国は、未規制の有害化
学物質について、化学物質に係る労働者の作業内容等のばく露関係情報等に基づきリス
ク評価を行い、健康障害発生のリスクが特に高い作業等については、リスクの程度等に
応じて、特別規則による規制を行う等のリスク管理を講じることが必要である。
　〔対策の方向〕
（１）労働安全衛生法に基づく表示及びＭＳＤＳについて、ＧＨＳ国連勧告等を踏ま
え、発がん性等の有害性のみならず、引火性等の危険性をも対象とするとともに、化学
物質の危険性及び有害性を容易に認識できる絵表示を導入すること等必要な対応を図る
こと。また、事業場内で取り扱う容器等への表示についても同様の対応を図ること。
（２）有機溶剤中毒予防規則等の特別規則に基づくばく露防止方法について、定期的な
監査・パトロールによる維持改善等により、気中の化学物質の濃度が継続的に一定以下
となること等の条件の下、柔軟化、性能要件化を図ること。
（３）国は、リスク評価のための情報収集を目的に、事業場における労働者の作業内
容、従事労働者数、密閉系での使用等のばく露関係情報を収集する仕組みを整えるこ
と。
　６　その他
　労働者が安全衛生に関する多様な知識や技能を取得することは、事業場内における安
全衛生活動にも有効であり、また、安全衛生の確保に問題のない範囲で、事業者や労働
者の負担軽減を図るためにも、幅広い免許・技能講習資格の取得を可能とするなど資格
制度の見直しが必要である。
　〔対策の方向〕
　免許・技能講習の資格制度において、以下の見直しを行うこと。
　・地山の掘削作業主任者技能講習と土止め支保工作業主任者技能講習の統合
　・クレーン運転士免許とデリック運転士免許の統合
　・クレーン運転実技教習とデリック運転実技教習の統合
　・特定化学物質等作業主任者技能講習と四アルキル鉛等作業主任者技能講習の統合
　・ボイラー据付け工事作業主任者技能講習の廃止
　・特定化学物質等作業主任者技能講習から石綿関係の作業主任者技能講習の分離
　以上です。

○櫻井分科会長
　読み上げていただきました。全体を３つに分けて、逐次ご意見、ご質問をいただきた
いと思います。

○計画課長
　１つだけ補足させていただきます。安全衛生委員会については、10月６日の本分科会
において労働者側委員より、安全衛生委員会の設置は産業医等と異なり金銭的な負担は
小さいことから、開催頻度等、条件を緩和することにより、50人未満の事業場でも設置
するようにすべきとの意見が出されました。これに対して使用者側委員からは、小規模
事業場においては労使一体的に事業が行われており、あえて安全衛生委員会のようなも
のを設置する必要はなく、小規模事業場の経営上の負担が増すとの意見が出されまし
た。
　これを受けまして、事務局で対応を検討いたしましたが、具体的にどのような内容や
方法で委員会が実施されているかなど、事務局としても実態が十分把握できない部分も
あります。また、小規模事業場において安全衛生委員会を設置することで、安全衛生管
理上、どの程度の効果が得られるか不明な部分もありますので、まずは小規模事業場の
実態の把握を進めたいと考えます。

○櫻井分科会長
　それでは、元へ戻りまして、読み上げていただいたものの１頁から５頁の上半分、２
の「元方等を通じた安全衛生管理体制の実現」の前の行まででご意見、ご質問がありま
したらどうぞご発言ください。

○山﨑委員
　４頁、「安全衛生委員会等の活性化」とあります。これは必ずしも活動が十分ではな
くて、下に対応として機能強化のことがいろいろ述べられています。特に、この委員会
の下に必要があれば小委員会を設けるとか、実態に応じていろいろな組織を設けるとい
うことはできるのですか。

○計画課長
　現在の法律上の規定としては、安全衛生委員会を設けてやってくださいという規定が
あるわけです。ただ、その中の議事のやり方等は労使に任せられている部分もあります
ので、その範囲では当然柔軟性はあると考えています。

○櫻井分科会長
　ほかにいかがでしょうか。

○加藤委員
　同じ頁のイのところ、「安全衛生委員会等の議論の概要が分かるようにすること」と
いうのは、広報で知らせるとかいうようなイメージなのでしょうか。

○計画課長
　いろいろな方法があると思いますが、例えば議事録のようなものを一般の方が見るこ
とができるようにするといった方法は考えられるのではないか。この辺も事業場の実態
に応じて柔軟にやっていただく方法があるのではないかと考えます。

○伊藤委員
　いまの問題に関して、議事録の配付等は私どもの会社でもやはりやっていて、当然義
務づけなのです。そういうところで、あまりコストがかさむような処置が出てこないよ
うには望みたいと思います。よろしくお願いします。

○計画課長
　その点についても配慮したいと思います。

○加藤委員
　３頁の上のほう、「機械等に関しては、製造段階でリスク評価云々」と書いてありま
す。その上の段、化学物質等を含めたものについては製造段階での云々というのはない
のですか。

○櫻井分科会長
　その前の段落では「新たな機械設備・化学物質が導入されており」ということで、化
学物質も文の中に入っていることからもわかるように、当然化学物質のリスクも評価す
るというこの文の内容には含まれていると読めると思います。

○安全課長
　機械に関してはＥＵやＩＳＯなど、国際的にもメーカーの段階で出来るだけ安全性を
確保して、残されたリスクについてはユーザー側に情報を提供する。要するに、機械の
メーカーによる安全対策、本質的に安全にするということが機械災害を防止する上で非
常に重要であり、国際的にもそういう形で対応がされてきています。
　一方、化学物質については、物性、用途が相からみ合っています。メーカーからユー
ザーに渡すときに、より安全な形にするというのは物性を変えない限りなかなか難しい
わけです。その意味で、化学物質については有害性の情報をメーカーからユーザーに提
供するシステムをきちんとしていこうというのが国際的な流れになります。

○加藤委員
　そういう意味なのですね。

○安全課長
　はい。その意味で、ここは機械に関して特別に製造段階でのリスク評価という表現を
入れているということです。

○櫻井分科会長
　加藤委員、よろしいですか。化学物質についてもそういう取扱いに、というところま
ではおっしゃっていないわけですね。世界的にもそうはなっていないと思います。

○芳野委員
　同じく３頁、「対策の方向」のアですが、「結果に基づいて、除去・低減する措置を
講ずるよう努めなければならない」というように、努力義務になっているわけです。こ
こをもう少し強めて、義務化することはできないでしょうか。

○安全課長
　ここが「努めなければならないこととする」となっていますのは、対象については限
定をしない。すなわち事業場で行われているさまざまな作業、機械について、リスク・
アセスメントをしていただく。
　また、業種も非常に多岐にわたっています。例えば、屋外で行われている建設業や林
業という分野もあれば、製造業という分野もある。また、多くが中小企業であることを
考え、現実的な話としては努力義務で規定するのが妥当ではないかということで、前回
の資料でもそのような形で提案させていただきました。

○徳永委員
　いまの頁、「対策の方向」のエは、中小企業について書いてあるわけです。「標準モ
デルの作成、講師派遣等を実施すること」とあります。実施する主体はどこですか。

○安全課長
　これについてはいくつか、既に予算措置を講じているものもありますし、新たに講じ
ようとしているものもあります。災害防止団体等を中心としてということを考えていま
す。ただ、その辺についてはまだ広げていく余地はもちろんあると思います。

○徳永委員
　予算措置もするということですね。

○安全課長
　はい。ただ、いま要求していますので、どの程度取れるかということはわかりませ
ん。

○建設安全対策室長
　補足させていただきます。ちなみに専門工事業者については、御存知かと思います
が、既に平成15年度からリスク・アセスメントやマネジメント・システムについて、建
災防に標準モデルを作る委員会を設けています。それを引き続き拡充していくことを考
えています。

○櫻井分科会長
　ほかにいかがでしょうか。よろしければ、次の部分に移らせていただきます。５頁の
「元方等を通じた安全衛生管理体制の実現」というところから、７頁、３の「過重労働
・メンタルヘルス対策」の上のところまでいかがでしょうか。

○中桐委員
　６頁にある（２）の「元方事業者による安全衛生管理の実施」の中身ですが、「対策
の方向」も含めてその上の部分もそうなのですが、私もこれまでの説明の中で業種を広
げていく場合に、事業者の方に過重になるようなものを持ち込む必要はないというよう
に考えていました。そういう中で、私どもの組合のいくつかの中から指摘を受けていま
す。具体的に申し上げると、作業間の連絡調整などを実施するということであります。
有効に進めていくためにどういう必要があるのか、ということを今後検討されていかれ
ると思いますが、ここは今回の改正でも大事な、みんなが期待する部分でもあります。
　そういった意味で言うと、先ほども少し議論がありましたが、安全衛生委員会といっ
たところに既に構内請負の方、派遣の方に入ってもらって対策をしているという事業場
もあります。事業の内容、規模によってだいぶ違いますが、具体的にどうしていくかと
いうときにそういった安全衛生委員会を活用して、そこに入ってもらう。それから、も
う少し短い期間で工事をするということならば何らかの協議機関的なもの、限定的な機
関を置くということもあろうかと思います。是非、その辺について今後具体的に、先ほ
どの安全衛生委員会の活性化と同じ内容としてご検討いただければと思います。以上で
す。

○安全課長
　中桐委員からのご指摘ですが、安全衛生委員会についてはそれぞれの企業の中でその
持ち方は様々です。いわゆる、下請の業者の方を委員に加えられているところもありま
す。その辺は各企業の事情に合わせてやっていただければと思います。ただし、安全衛
生委員会については、当該事業場における事業者責任としての委員会ということですの
で、法律上は下請の方を入れることを義務づけているわけではありません。
　一方で元方の安全衛生管理については、いわゆる混在作業、元請と下請、下請同士が
混在してやることの危険を防止するための対策が必要だということで、連絡調整等が必
要なのではないかと提案させていただいています。建設業の場合に比べると製造業は、
いわゆる下請事業者の入れ替わりも少なく、製造ラインで入ってこられて、毎日下請が
変わるということは現実的にはあり得ない世界です。そういう意味で、建設業と違うと
いうことで連絡調整を主としてやっていただくという提案をしています。連絡調整のや
り方についても今後、出来るだけ効果的なやり方ができるように詰めていきたいと思い
ます。

○中桐委員
　私もこの間、いくつかの事業場を回ってきたのですが、例えば電気機器の製造メーカ
ーといったところではいまの時代なのでしょうが多品種・少量生産、それもモデルチェ
ンジが非常に早い。そういう中で、生産ラインを組み換えていく。その中に請負の方、
派遣の方が入ってやっているということがあります。そこはしっかりした事業場でした
ので、１年に１つだけの赤チン災害で終わっていましたが、やはりいろいろ感じるとこ
ろはあるとおっしゃっていました。昔の工場のように、１つの製品を長く作っていると
ころはありませんし、モデルチェンジも大変多いわけです。是非、その辺は実態調査を
しながら、今後時代に合ったような形でやっていただきたい。今後、ますます派遣が増
えていくというのは、最近のいろいろな業界の要望を見ていると港湾労働、病院勤務も
含めて、そういうものをしておいてはどうかという提言もあります。そういうことも予
測できますので、そういったものに合った形でここの部分というのは大変重要だと思い
ますので、法律事項ではありませんが適切な指導、ガイドラインを出すことを是非考え
ていただければと思います。

○加藤委員
　いまのところですが、いまのご質問にあったように、混在作業の意味というのは派
遣、請負、全然別の業者が入っている場合も含めての話ですか。

○安全課長
　派遣の場合は、ここでは混在という形で捉えておりません。いわゆる、元請に当たる
親会社の労働者として指揮命令をされていますし、安全対策も元請の労働者と同じ形で
なされているという前提ですので、混在には入れておりません。混在というのは構内の
協力会社との混在、例えばフォークリフトで運搬をする作業が他の下請会社同士、親会
社と混在して、そのフロアを使って行うという場合の安全対策が必要だということで
す。

○櫻井分科会長
　そのほかにいかがでしょうか。

○加藤委員
　いまのところというのは、そういう意味では例えば常にそこで業務をやっているとい
う前提ですか。

○安全課長
　８時間なら８時間、常に同じ所でという場合もあるでしょうし、物の移動などで共通
した通路などを使って、運搬を複数のところが一時的に混在してやるというもの、両方
あると思います。

○加藤委員
　例えば、何か物をトラックで運搬してきて、そこで物を下ろす。あるエリアではいろ
いろな運送業者が混在して行っている職場があるのですが、そういったところも対象に
なるということですか。

○安全課長
　対象になります。

○加藤委員
　そのようになると、例えば連絡調整といっても常にそこに業者がいるわけではなく
て、物を持ってきたときだけいるということになりますよね。それでも、事前に何かや
るとかいうことが。

○安全課長
　必ず連絡調整をしなければいけないということではなくて、混在作業によって危険が
生じるような場合に、例えば、Ａという業者が運搬して来て、次にＢという業者が来て
というときに混ざり合わないようにする。また、お互いに機械を使っていて、労働者が
違う事業者の機械に巻き込まれるということがないように段取りをするということで
す。常に誰か元請の人がいて、連絡役を買って出るということではありません。

○徳永委員
　その部分は元請、元方、その下の請負といろいろな形で入ってきます。そこの安全対
策を調整するということで、具体的にどうしていくかは、職場なり業者なりで違うので
しょう。要するに元方としての責任というか、この部分がはっきり前提にあって、イニ
シアティブをそこが取るということで調整をしていくことが前提になっている中での工
夫だと思います。混在という形で勝手にやっているわけではなくて、元方のきちんとし
た計画なり対策の部分が肝心だろうと読んでいるのですが、それでよろしいのですか。

○安全課長
　はい、そうです。

○徳永委員
　それなら問題ないですね。

○内藤委員
　確認なのですが、今回の取りまとめ素案の６頁、いちばん上の段、イの辺りかと思う
のですが、「第二種衛生管理者の選任が認められている業種の事業者について、一定の
要件を満たす場合は、自社の労働者でない者を衛生管理者に選任することができるよう
にすること」とあります。10月のご議論の中でこの部分があったかと記憶しています。
確か、派遣労働者の導入がどうかというお話があったように記憶しています。
　そのとき、私は多少法律を学ぶ者の立場から、派遣というものを導入することに対し
て危惧があるのではないかと質問しました。ここで言う「一定の要件」というのは、厚
生労働省ではどのような方向性でお考えでしょうか。

○計画課長
　要件ですが、１つは事業場に常駐していただく。要するに、１人の人があちこち見る
のではなくて、１つの事業場をきちんと見ていくという常駐が条件ということです。そ
れから、先生からご指摘もありましたが、その方が出来るだけ長く継続して任務に当た
るということも条件にしたいと考えています。その意味で、派遣ないし準委任というこ
とになってくるのではないかと思っています。
　なお、その際は前回もご説明いたしましたが、当然受入れ時には十分な情報提供をし
ていただく。あるいは、必要な権限を衛生管理者に付与していただく。そういったこと
は通達の中で明示して、守っていただこうというように考えています。

○櫻井分科会長
　ほかにはいかがでしょうか。よろしければ、先に進みたいと思います。７頁の４、
「労働者の健康情報の保護」から９頁の最後までになります。どうぞ、何かありました
らご発言ください。

○山﨑委員
　８頁の上から３行目に「中小企業等」とあります。中小企業にはいろいろご配慮いた
だいているのですが、３頁のところにも中小企業に対して「中小企業において」とあり
ます。この８頁だけ「等」が付いているのですが、何か含みがあるのですか。

○化学物質対策課長
　自律的な化学物質管理については、中小企業のほかに化学物質を取り扱う一部のユー
ザーの取組みが十分でない状況にあります。このようなユーザーが多くいる業種も含め
て「等」と入れています。

○山﨑委員
　具体的には書けないものですか。「等」だと見てもなかなかよくわからないのです。

○櫻井分科会長
　検討してみますか。ほかにはどうでしょう。

○加藤委員
　同じ頁の「対策の方向」、（２）の下のほうに「柔軟化、性能要件化を図ること」と
あります。この辺、有機則などいろいろな届け出も含めて、それが緩和されると見てよ
ろしいのですか。

○化学物質対策課長
　以前の審議会のときにもお話いたしましたが、有機則の中には一部、適用除外が既に
入っています。私どもが今回の中で考えているのは、ここに書いてあるような要件とい
うものが満たされれば、その上で監督署長の認定が得られたものについて適用除外を図
ることとしているものであり、従来の個別列挙方式からシステムとしてこういう制度を
規則の中に取り入れたいということでございます。

○加藤委員
　その次の段、（３）の「ばく露関係情報を収集する仕組みを整えること」とありま
す。これはまた、何か提出しなさいというものが各企業にもあると見るということでし
ょうか。

○化学物質対策課長
　労働安全衛生法の第100条に基づく報告制度がありますが、その規定に基づき、特定
の物質についてそれを製造し、又は取り扱っている事業者の方から従事労働者数、作業
内容、使用形態等について、国のほうに報告していただく仕組みを考えています。

○加藤委員
　いま、健診などでも届け出があって結果報告をしていますが、それと同じような形で
定期にそういったことをやっていくということですか。

○化学物質対策課長
　国のほうでもいろいろな物質に優先順位を付けて計画的にやっていきたいと思ってい
ます。例えば化学物質の中には製造取扱い量が非常に多いもの、あるいは有害性が非常
に高いものがあります。そういった優先順位の高いものから、今回こういう物質につい
て、製造又は取扱いの実態について報告してくださいということで、国の方に届け出を
していただくことを考えています。

○加藤委員
　できるだけ、様式的にも簡単になれば。負担のかからないように是非お願いしたいと
思います。

○化学物質対策課長
　改めてこの審議会で具体的な議論をさせていただきたいと思いますが、そのようなこ
とで考えていきたいと思います。

○櫻井分科会長
　ほかにいかがでしょうか。よろしいようですので、先へ進みたいと思います。次は
「過重労働・メンタルヘルス対策」に関する議論です。これは前回の審議会で、事務局
に議論の整理をするようにお願いしたところです。事務局で関係者から聞いていること
等があれば、それも踏まえて整理した内容についての説明をお願いします。

○労働衛生課長
　前回までの議論、そのあとに関係者の方々からご意見をお伺いし、主な意見としてい
くつか整理をしました。まず最初に、過重労働にかかわる医師による面接指導に関する
意見ですが、その最初の部分で義務化についてのものがございました。義務化について
は現在、医師による過重労働部分の面接指導が平成14年の「総合対策通知」で行われて
います。それ以来、義務化に法制化することについては時期尚早なのではないかという
ご意見がありました。それから100時間、あるいは80時間という時間だけを基準にして、
すべての労働者に実施するということになると、いささか規制としては過剰になる嫌い
があるのではないかというご意見もいただいています。
　また、これは労働側委員ですが、本来過重労働についてはきちんと時間規制を行うべ
きであるけれども、健康管理面から是非義務化していくべきであるというご意見も寄せ
られています。
　この面接指導の基準について、いくつかのご意見がございました。まず、80時間、あ
るいは100時間という時間だけで決めるのではなくて、もっと総合的な基準でとらえる
べきではなかろうかということです。労働時間法制との関係はどうなるのか。詳しく申
しますと、管理職、管理監督者などの労働時間管理の対象とならないものについてはど
のような扱いをするのか、というご指摘がありました。事業者負担についてのご意見も
いただいています。外部の面接指導が事業者にとっては、非常に負担が大きくなる可能
性があるというご意見と、特に中小企業の場合、医師による面接指導といっても極めて
実施が難しいのではないか。相当の支援が必要ではないかというご意見をいただきまし
た。
　また、産業医については事業所ごとに産業医の採用が非常に困難をきたしている現状
があるというご指摘もされています。さらには、産業医の役割の範囲の明確化、支援の
仕組みが必要であるというご意見、産業医の職務に過重労働対策というのを書くと、労
務管理まで産業医の責任とされるのではないかという懸念を示された意見もいただいて
います。これに対する事務局としての回答案ですが、義務化についてです。面接指導を
義務化することについて、時期的にまだ早いのではないかという意見がありますが、過
労死の認定件数は現在労働災害死亡件数の約１割に達しています。これは非常に見逃せ
ない数字になっています。また近年、過労死等の認定件数が高止まりしている状態にな
っていますし、定期健康診断においても高脂血症、高血圧など脳・心臓疾患に関連する
所見を有する人の割合が引き続き上昇しています。非常にリスクを負った労働者の比率
が増えていることから、過重労働対策をより強力に進めることが必要ではないかと考え
ています。
　また、特にこの過重労働対策については、労働者の人命にかかわるものですので、事
前に予防対策を確実に実施することにより、過労死を防止することが何にもまして緊急
の課題と考えているわけです。
　次に面接指導の基準についてですが、80時間、100時間という数字がありますが、基
本的にあらゆる医学的な所見を総合していくと、過重労働が100時間を超えると冠動脈
性心疾患の死亡率が倍になるとか、心筋梗塞の発症率が３倍を超えるということがあ
り、基本的には業務による過重な負荷が加わることにより、血管病変等を自然経過を超
えて著しく増悪させ、脳・心臓疾患を発症するリスクが高まることが、医学的に広く認
知されていることから、ある程度の時間による過重労働の管理対策が必要ではないかと
考えている次第です。
　ただし、面接指導の基準ですが、特に管理監督者のような時間管理の対象とならない
方々に対してはどうかということですが、管理監督者については、確かに労働時間規制
の適用がないので、管理監督者自らの責任で月単位で一般の労働者の実労働時間に相当
する時間から、法定労働時間に相当する時間を引いたものが100時間を超えていると判
断したような場合に、事業者に対して申し出を行った場合ということを考えているわけ
です。
　もう１つ、裁量労働者についてご指摘がありました。裁量労働制が適用される労働者
では、労働の実態に即して施行されることが望ましいと考えており、労使の決議、また
は協定によって定められた健康福祉確保措置を実施するために把握されている労働時間
の状況等を基にして、事業場が定めた休憩時間、あるいは労働者が申し出た休憩時間等
を減算するなど、事業場ごとに取り決めた方法によって判断していくのがよいのではな
いかと事務局としては考えています。
　次に事業者負担と産業医に対する問題です。これらは強力な国による支援策が必要で
あると私どもは考えており、今日皆様のお手元に、その概要をチャートで示した書類を
お配りしています。１枚目に小規模事業場に対する支援体制の概要があります。事業場
で産業医の確保が非常に困難になっているというご指摘がありました。地域産業保健セ
ンターが全国に347カ所、平成15年までに整備が完了していますが、この地域産業保健
センターにおいて産業医の登録紹介事業を現在も行っています。全国では認定産業医が
約６万人いますが、現在登録されている産業医の方々は２万9,881人になっていて、こ
のような産業医の方の登録紹介、斡旋の事業をより強力に進めていきたいと考えていま
す。
　もう１つ、この地域産業保健センターでは、特に中小企業を対象として、無料で健康
相談窓口を現在月2,000回、全国の347カ所で行っています。この中で、医師による面接
指導を実施していますし、今後もこれを充実強化していきたいと思い、おそらく中小企
業の事業場から出てくる面接指導の部分の相当数を、ここで吸収していけるのではなか
ろうかと考えています。また、そのような充実策を今後ともとっていきたいと思うわけ
です。
　産業医については次頁です。現在約６万人の方が認定産業医として認められているわ
けですが、特に過重労働、一部メンタルヘルスを含みますが、産業医の方々に対する面
接指導のマニュアルの作成が必要であると思います。専門医を動員し、きちんとした詳
細な面接指導マニュアルを作成し、かつこの産業医の方々に十分な研修を行うことを考
えています。現在、都道府県医師会、産業保健推進センター等で研修を行っています
が、おそらく年間では３万人ぐらいの産業医の方に、研修をできるのではないかと思っ
ています。
　さらに、各県に産業保健推進センターがあります。チャートの左側にありますが、全
国47カ所あります。ここで研修を行うと同時に、産業医の方々について脳・心臓疾患
や、メンタルヘルスの部分について専門医による情報提供、相談、その他のバックアッ
プ体制を整え、産業医の面接指導を支援する体制を整えていきたいと考えています。整
備、それから充実までに少し時間がかかるかと思いますが、これらの支援策を強力に推
進すれば、中小企業対策並びに産業医に対する支援としては、十分に国としてこの施策
を実現できるだけのものを提供できるのではないかと考えております。

○櫻井分科会長
　議論の整理案を示していただきましたが、使用者側として付け加えることがあろうか
と思いますが、どうぞ。

○伊藤委員
　前回の11月10日の分科会は都合で欠席させていただきましたので、この件に関して、
商工会議所として自分の意見を分科会で述べたいと思い、前日に事務局に厚生労働省に
対して委員としての意見を書面に残したい、当然その席で配付させていただきたいとい
う要請をしたのですが、内容があまりよくないということで配付されなかったというこ
とがありました。我々商工会議所としての意見をもみ消さないようにしていただきたい
と、まず第１番目に申し上げます。今日も変わらず申し上げることは、メンタルヘルス
の労働者の健康を守らなければならない、これは絶対にしなければいけないことです。
ただし、100時間、もしくは、２カ月、６カ月の平均80時間を超える労働時間を行った
者に対してのメンタルヘルスの義務化は反対である、と申し上げさせていただきます。
いまご説明のあった中で、根本の問題になるところは、100時間とメンタルヘルスの問
題が密接に関連しているところのサンプル数が、前回お聞きしたところでは51件、そう
いう問題であるとか、当然我々は中小企業を代表していますが、50人以下の事業所に関
して産業医の設置の義務化はない。それが地域産業保健センターが347カ所ある。東京
だけを調べてみると18カ所です。都内だけに絞るともう少し、少なくなってしまう。で
は、現実問題として全国の労働者の中で大体１割を抱える者をこの数で処置できるのか
という問題があります。この辺がどうも我々としては納得できない。ただ、これは労働
者の方にとって不利益になることを申し上げているのではなく、仮にこのようなものが
義務化された場合に、日本のいまの中小の産業界は非常に力を失っていて、そういう申
請があった方を面接に行かせるために、例えば１日がかりで行かせなければならない。
根拠は１人当たりの面接の時間が２時間です。地域産業保健センターに行かれた方に対
して補助金として１万円支払うということで、２億4,000万円の予算をとっていますと
いうことですが、このようなことで本当にできるのかということです。
　では、逆にここにコストをかけていったら、先日小泉さんに税制の問題で答申があっ
たと思うのですが、消費税を上げる、所得税をよりきつくするということで、当然我々
の所得税の負担にこの一部がなっていくわけです。そのようなことを見過ごすわけにも
いかない。そのようなことで商工会議所、他の方々も多分そうだと思うのですが、一応
100時間とメンタルということに関して、我々は反対をさせていただくということを強
く申し上げさせていただきます。

○櫻井分科会長
　必ずしもメンタルが100時間で問題が出ているという論議ではなくて。脳血管疾患が。

○伊藤委員
　死亡されてしまう方が。根本はそこにあるのではないでしょうか。当然人命にかかわ
ることは排除していかなければいけないですよね。ただ、そこの結び付けということ
が、ちょっとまだ議論をする余地があるのではないかというのが私の意見です。

○労働衛生課長
　まず、１つ誤解を解かさせていただきたいと思います。前回のときのあの意見書の取
扱いですが、私どもがいただいたのは１時間ほど前であったことが１つと、意見書の提
出というのは私どもが調べましたこの会議の運営規程になかったもので、その代わりに
代理出席を認めることになっていて、意見書の提出が初めてだったものなので、ちょっ
と取扱いを審議している時間が足りなくて、直前に座長にもご相談申し上げたのです
が、今回はということでした。

○伊藤委員
　それに関しては何時までに出せということで、私が直接事務局に行ったのですが、そ
れに関しては時間が間に合って提出させていただきました。あとはそれを皆様に認めら
れるというお答えをいただいたものですから、提出させていただいたという次第でし
た。

○労働衛生課長
　すみません、取扱い規定がなく、取扱いに苦慮しており、その間に時間が来てしまい
ました。誠に申し訳ございませんでした。

○櫻井分科会長
　いまの議論の内容で、何かお答えすることはありますか。

○労働衛生課長
　それともう１つ、100時間というところは基本的にはメンタルヘルスと労働時間の注
意相関というのは、あまり医学的には証明されていないと思います。100時間、80時間
というのは、心臓・脳血管障害のほうで、こちらは過重労働により確実にリスクが上が
るものなので、その時間をオーバーして働いた方々に面接指導を行うことにより、確実
に予防ができるという医学的な事実に基づいて対策をとらせていただきたいと考えてい
るところです。

○伊藤委員
　前回お聞きしたところでは、その100時間というのが、睡眠時間が５時間になってし
まうというところから出てきたもので、多分いまおっしゃっていることと根拠が違うよ
うに私はお聞きしています。それが何か医学的な数字に基づいているのであれば、我々
は真摯に受けとめなければならないという気持は持っています。

○和田委員
　メンタルヘルスと労働時間の特に時間外労働の関係に関しては、一昨年厚生科学研究
費で調査が行われ、いくつかの論文が出てきました。そのときの全体的な結論としては
メンタルヘルスと過重労働との関係で、残業時間及び睡眠時間との関係では、全体とし
て相関がある。特に相関があるのは睡眠時間が５時間から４時間以下になった場合に
は、明らかに相関があるという結論が得られているわけです。したがって、ほぼ過重労
働による脳・心臓疾患とそんなには違わない感じがします。

○伊藤委員
　例えば、多分その時間を算出するにあたって通勤時間であるとか、仕事後の時間の処
理の仕方も加味されていると思うのです。逆に、そういうところを追求していくことに
よって、個人のプライバシーの問題も法律で決まっていますし、そういうことがもう少
し現実的に我々に表で見えるようにしていただけると納得するのですが、その辺はいか
がなものでしょうか。もう少し議論させていただく根拠のようなものがペーパーにある
とか。

○和田委員
　それはすでに報告書にも、その後の解説書にも何回もそれについてきちんと示してあ
るわけで、是非それを読んでいただければと思います。

○金子委員
　産業医に対する支援体制の研修の部分なのですが、医師会がやっている研修はいまの
認定の更新のための研修のことですね。

○労働衛生課長
　はい。

○金子委員
　それとは別に今度新たに研修を、認定の更新の要件とは別にやっていくということで
すか。

○労働衛生課長
　その件に関しては医師会、産業保健推進センター等で、現在でも年間受講者延べ数に
すると、約３万人から４万人の研修枠を構えています。

○金子委員
　それは産業医にとっては義務化されていくわけですか。

○労働衛生課長
　いま現在は研修を産業医にとって義務化するということではありません。

○金子委員
　いまは50単位を取らないと、次の更新ができないということで取っているわけです
が、メンタルの研修を受けた人と受けない人というのは、産業医として今後どういうよ
うに扱われていきますか。

○労働衛生課長
　基本的にはいま産業医会の方々とも相談になると思いますが、まずは現在産業医活動
をしている先生方を中心に、この面接指導のマニュアルに基づいた面接のノウハウに関
する研修を、まず充実させて、なるべく早い期間に全員に行き渡るようにさせていただ
きたいと思っています。

○金子委員
　全員が受けることを確認されていくわけですか。

○労働衛生課長
　活動している方々です。認定されて、実は全く産業医をやっていない方々もおられま
すので、私もその１人になっています。

○櫻井分科会長
　先ほどのお答えがまだでしたが。

○伊藤委員
　配付されていまして、私が不勉強でした。私の言っている元に、私どもの団体の中で
幹事会があり、その者たちはそういうことは当然熟知していると思います。あと１つ
は、51人のサンプルというところからきているわけですね。ですから、そのサンプルが
多い、少ないというところの議論と、過労死です。死んでしまう方の中にいろいろな形
で亡くなる方がいらっしゃり、私が把握しているところでは月に1,700人前後が大方の
数字です。その中に、過労死の方々も含まれていて、下手をすると労働者の方より我々
のような経営者が資金繰りに行き詰まって自殺をしてしまうという、そういう数値のほ
うが多いということも厚生労働省の方から一度発表されたものを拝見したこともありま
す。そういうことと兼ね合わせて考えた場合、再度いかがでしょうか。勉強が足りない
私の根拠はこの程度しかなくて申し訳ないのですが。

○労働衛生課長
　確かにメンタルでいくと、自殺のいちばん多い理由は、細かい数字は持っていません
が病気を苦にした自殺ではなかったかと思います。ほかにいろいろな人間関係、金銭的
な問題などいろいろあると思います。それともう１つは、自殺者が３万人を超えている
状況が続いており、そのうちの約8,000人台が労働者の自殺ですが、これの大方が過重
労働が原因ということではないと思います。過重労働が続くとかなりの部分でうつ病を
中心とするメンタルヘルスに影響が及ぶということは否定できないことではないと思い
ます。ただ、その労働者の方々のいろいろな生活上の問題や個人サイドのいろいろな事
情があるので、むしろ医師による面接指導の主眼は、私どもは過重労働による心疾患、
脳虚血性疾患の血管障害における死亡や卒中、心筋梗塞の発症防止を主眼としてやりた
い。その一部で、メンタルヘルスも折角医師の面接を受けるので、一応チェックの対象
にしていきたいということです。

○伊藤委員
　やはり議論の的は時間の部分ですね。そういうことに関しては皆様のほうが専門家で
いらっしゃるでしょうから正しいと思います。そういう症状が出ないようにして自殺者
を減らすことが我々にとってもとても大きな問題です。あとはある基準、例えば100時
間、あるいはちょっと難しいのが２～６カ月の平均が80時間という部分をどうやってや
るのか。例えばいま亡くなってしまったら、２～６カ月の平均を取れば簡単なのです
が、毎月毎月そうやっていかなければいけないテクニカルな部分で、我々の中でも議論
が１つ上がっている部分です。では、さっぱり100時間にしろと言われてしまうと、そ
れまでのことなのですが、ここのところがまだまだ理解できないという意見が非常に多
いです。

○労働衛生課長
　100時間については毎月で、一応普通の会社はすべて月ごとに労働時間を締めていき
ますので問題はないかと思います。２～６カ月で80時間をオーバーした場合は平均で
す。２カ月で平均するのか、４カ月で平均するのか、６カ月で平均するのかというとこ
ろで、確かに議論はあろうかと思いますが、基本的には私どもはそれについては衛生委
員会の中で各事業所ごとにそういうラインを決めていただけないかと思っています。

○伊藤委員
　数字を１つ決めるということですか。

○労働衛生課長
　はい。

○主任中央労働衛生専門官
　２～６カ月の件ですが、あくまでも２カ月から６カ月の間での平均ということですの
で、２カ月での平均、３カ月間での平均、４カ月間での平均、５カ月間の平均、６カ月
間の平均と、５種類ありますが、これを出して、いずれかが超えていればということに
なります。そういう趣旨です。

○伊藤委員
　理由はわかりました。ただ、多くのあまり合理化されていない、そこそこの人間を抱
えている企業での、その作業をどうするのかというのは、意外とここは経営側のコスト
がかさんでしまう、例えばテクニカル的には２、３、４、５、６を拾って、割り算をし
て、そこがどうなのかということで、判断基準をもって80になっているのかということ
で、ずっと計算をしていかなければならない。これはコンピューターをもっていれば、
そんなに難しくはないですね。仮に亡くなってしまったら、失礼な言い方ですがそのと
きの計算は楽ではないですか。その方１人の方の計算を６回やればいいだけですから。
ところが、実際に毎月それをやらなければならないとなると、意外とそんなに苦労はな
いということでお決めになったのでしょうけれども、大変な作業ですね。

○主任中央労働衛生専門官
　確かに単純に１カ月分よりは手間がかかるとは思いますが。

○伊藤委員
　だから、２～６というのが非常に簡単なことではないということをまず認識していた
だけるとありがたいのですが。

○和田委員
　２～６というようにしたのは、例えば１カ月労働して100時間以上あった場合はもち
ろん100時間で引っかかるわけです。100時間以下の場合は、次の１カ月を足してみて、
平均してみて、それで80以下か以上かをただ計算すればいいわけです。それでも80以下
であった場合は、今度はそこからもう１カ月足して、そして３で割ることだけのことな
のです。それを次から次へと６カ月やってくださいというだけのことで、全部を平均し
てやるという意味ではないのです。

○伊藤委員
　やるときには全員を計算しなければいけないわけですね。

○和田委員
　はい。時間の管理というのは100時間で必ず出てくるわけですから、それを足して２
で割ったり３で割るだけのことですから、そんなに大変ではないと考えますが。

○伊藤委員
　80前後の方を全部対象にして計算をしなければいけない。賃金台帳の中から拾って、
賃金台帳をめくるのは100人いれば100回見なければいけないし、そういう部分では実際
にはそんなに容易ではないと思います。

○金子委員
　多分、実際に80に２カ月で達していない人を３カ月でなるときには、それを補うだけ
の過重労働がその前にあるわけです。だから６まで広げなくても、多分３ぐらいで100
にならないと、もう埋まらない計算になると思うのですが、もう少しシンプルなほうが
中小企業には。先ほど伺ったら、紙で全部なさって電卓で計算されるというのだと、結
構ワークロードが大変です。

○徳永委員
　いまの件は問題だと思います。そういった中小の所や自営業の関係はいろいろな難し
さはあると思うのですが、一定の労働者に対する労働条件の管理、労働時間の管理も基
本的にはします。これは残業の話でしょう。要するに超過勤務をどういうように算定し
ていくかということなので、いま和田委員がおっしゃったようなことでわかったのです
が、そういうやり方があるにしても、端的には１カ月で100時間を超す残業をさせてい
るというのは、基本的にはさせているほうは知っています。だから、それはそういう状
況でやらざるを得なかったと。しかし、こういう状態が現実に過労死という形で、いま
日本の労働状況の中では、現実に確実に増えてきているという状況があるわけです。こ
こを何とかみんなで知恵を出して、健康管理、予防対策をやっていこうではないか。そ
の流れの中で、メンタルヘルス対策と、これと関連しますが過重労働による死亡、ある
いはそういった疾患についてもリンクさせながら、予防対策としては両輪だと思うので
す。両方どちらが欠けても進まない。そういった意味でいうと、大変苦労のあるところ
ですし、私にもよくわかるのですが、基本的なところは打ち出して、問題については前
向きに進めていく。ここはきちんとやっていくのが必要なのではないかと思います。も
ちろん議論は必要です。全部否定はしていませんが、基本的にはそういった立場で、考
え方で、この100時間問題をクリアしていく必要があるのではないか。その時期にもう
きているのではないかというのが私の意見です。

○讃井委員
　事務局の方にここの問題点を整理していただきましてありがとうございました。ご指
摘があったとおり、私どもでいままで問題と考えていたのは通達が出てからまだ日が浅
いので、法制化はまだ時期尚早であると。面接指導の基準を労働時間だけにもってくる
のはいかがなものか、これは先ほど伊藤委員からもお話がありました。あとは労働時間
法制との関係です。双方の行政に矛盾があってはおかしいのではないか。さらに、小規
模事業所の負担、あるいは困難、産業医について質、量ともに十分な状況にないのでは
ないか。こういった点について整理をしていただき、それぞれについてある程度どのよ
うな形でケアすることができるかという提案も、一部ではあったかと思います。ただ、
基本的には過重労働の労働時間は医学的に根拠がきちんとあることは確かですが、それ
１つだけが理由ではないということがあるわけで、業種によっても差があるし、作業環
境、就労対応、個人の健康状態にも差があるわけですから、それを勘案しないで一律に
適用することは問題として残っているのではないかと思います。
　労働時間の把握、管理については理念的なものと技術的なものがあろうかと思いま
す。管理監督者については本来労働時間については自主管理ですので、それを事業主に
よる労働時間管理の対象にすることは、考え方自体がずれているかと思います。技術的
には先ほどからもお話があるように、把握に対する困難というか、かなりの負担がかか
るということもあろうかと思います。
　時期尚早というところなのですが、先ほどの説明についてはとにかく最近の過労死の
件数が高止まりをしているから一刻を争うのだというお話だったかと思いますが、過労
死の件数が出ているのは14年、15年のものです。通達が出たのが14年で、それをもって
まだ通達では不十分と見ることが本当に正しいかという疑問がありますし、先ほど産業
医、あるいは小規模事業所に対する支援策ということで、いろいろな施策を考え中であ
るということですが、いみじくもその整備には時間がかかるであろうとおっしゃったこ
ともありますし、そういう体制が整ってからということであればまだしも、まだそれが
できていない段階では、法制化で義務化することについては、やはりまだ尚早ではない
かということで、現在の段階の法制化には反対をさせていただきたいと思います。

○山﨑委員
　同じことになるかもしれませんが、心配されることがあります。実はご案内のとお
り、中小企業が99.7％を占めており、そのうちの８割は製造業が20人以下、商業サービ
スで５人以下。なおかつそのうちの７割が製造で５人以下、商業で２人以下というのは
圧倒的に家族的労働をする中小企業が多いわけです。小企業といっているのですが、そ
ういうのが労働時間は別として、労使でいろいろ過重労働については対策を講じていく
というのがいちばんいいということは変わらないと思うのですが、ちょっと心配される
のが２年前の総合対策の通達です。あれがどの程度浸透し、周知されているかというこ
とが非常に問題なわけです。現在でも船に乗り遅れた企業はいっぱいあると思うので
す。これまた船を少し改造して、性能のいい速力のある船にした場合に、かえって乗り
遅れる方がたくさん出るのではないかということが懸念されるわけです。
　そのようなことから取組みについて中小企業の中においても非常に格差があるので、
そこを配慮していただき、どのような形にしたら現在でさえ知らない人に、この対策を
うまく普及させることができるかということを、法改正の前にもう１つお考えいただく
ことが必要ではないかと思います。政策と企業経営のずれが生じて、政策が一人歩きし
ても困りますし、とかく補助事業というのがなかなか使い手がなく、余るというのは実
態とのずれがあると思うのです。いろいろな省庁において補助事業がかなり余っていま
すが、そういうことを見ますと、政策の一人歩きにならないように、十分に実態を踏ま
えてやっていただきたいと思います。

○安全衛生部長
　いまの議論をいろいろ伺い、事務局としてはできないことを法制化して全体に一時期
に全部やるということは避けなければならないと思いますので、過労死を少しでも減ら
していくという目的については、皆さん一致して応援してくださっていると思います。
そこで、そうであれば、核としてどこをいちばん大事にして、過労死を防ぐために医学
的に医師の面接指導等のケアが必要なのか、その最低限のところを括り出して義務化す
るのはその部分だけ、あとは80時間の計算は大変面倒であるということであれば、そち
らを努力義務の中にもっていく。あるいは体制が整う、整わないというところで法制化
の執行時期について考慮するということを事務局としては考えられるかと思います。ど
の辺りが核になるかというのを専門家の先生方にお聞きしたいと思います。

○櫻井分科会長
　それでは少し公益委員の側から何かご意見をお願いします。

○北山委員
　最近の労働災害の発生状況を見てみますと、怪我の部分は毎年どんどん減っているの
ですが、過労死は出ているということであれば、何らかの形で法制化する必要があるの
ではないかと思います。そのときに、いわゆる時間外労働の時間のことがだいぶ言われ
ていますが、時間だけを基準にするのではなく、疲労が非常に蓄積しているという自覚
をするような、特にリスクの高い労働者に限って法制化を義務付けることが考えられな
いでしょうか。こんなことをちょっと考えたのですが。

○今田委員
　使用者側の議論を伺って考えたことは、100時間という労働時間で考えるのはどうか
という疑問についてなのですが、和田委員から再三指摘があるように、きちんとしたデ
ータに基づいて、100時間を超えた労働と、脳疾患、心臓疾患の間に病理的に明瞭な因
果関係があることが医学的に示されているという、そういう過重労働だけではなくて、
メンタルヘルスにおいても総合的に関係があることが医学的に示されたのは、我々にと
っては非常に重たい事実であって、非常に意味のある重要な情報として、我々は受け取
るべきです。そのように受け取った後は、企業としてもこれに対する対応、労働行政も
きちんとこの時点で対応するということは当然この事実についての責任ある受け止め方
であると思います。時期尚早という言葉は、いまの議論からいくと適切ではないのでは
ないか。特に今後景気回復となった場合に、操業時間やサービス時間などさまざまなア
クティビティレベルが上がるわけで、労働時間の長期化という圧力も、今後予想されま
す。これまでの経緯からいっても、この時点でそういう医学的な根拠を踏まえて、100
時間という１つの基準に基づいて、それに対する何らかの対応、社会的に対応するとい
う枠組みを、ここで示すことは、是非とも必要なことであろう。客観的ないろいろな事
情から、いま申し上げたように重要なのではないか。
　さらに、中小企業には大変なのですが、より危険性ということからいったら、いろい
ろな対応そのものが、条件が整っていない事業所に対しては、もっといろいろな支援体
制を整えて、小規模事業所が対応できるような、より取りやすいような体制をとってい
く方向が。そこはいいからという体制は全く状況と逆行していると受け止めます。いま
使用者委員の皆様方のいろいろなご苦労や現状は、私なりに理解できるものですが、や
はりこの時点で事務局が出しているこの最低線は、重く受け止めて先に進めていただき
たいというのが私の意見です。

○伊藤委員
　働く人は絶対に大切にしなくてはいけない。ここだけは絶対に我々はずれておりませ
ん。申し上げたいのはその100と過労死がイコールだったら我々はもう無条件にすべて
認めます。ただ、サンプルが少ないのではないか。これはいろいろな数値の取り方など
に問題があるのではないかというお話をさせていただいているのです。当然100時間の
時間外労働をさせてはいけないのです。30時間と決まっているわけですから、ただ、こ
のような厳しい世の中で、例えば特に気になるのがホワイトカラーの方の時間外労働を
しなければならないような、体質を持っている企業の方もいらっしゃると思います。製
造業の中でも少ない人数で一遍に多くきてしまった注文を処理するために、一時的にも
のすごい過重労働をしなければならないという方も当然いらっしゃると思います。私が
もう１つ申し上げたいのは多分そういう方は少ないと思うのですが、少ない人のため
に、例えばこれが義務化されることによって、オンされる、仕事の量が管理部門の経営
者側の人間にとって、増えてしまうのです。そこの労働が増えてしまって、いま世界的
な日本の製造業、企業がどのような立場に置かれているかということを考えてみればわ
かると思うのですが、100円ショップを考えてみてください。100円ショップへ行って皆
さん安いと思いますね。あれはどういう環境で作られているか。外国からの異常な労働
によって生まれてきた産物以外の何ものでもないのです。コストなど全然あってないよ
うなものです。そういう人たちと我々は闘って、日本の国を支えているのです。仮にこ
ういうことが積み重なって、管理ばかり増えて、企業が経営できなくなるとなると、も
う廃業してしまいましょう。廃業してしまって外国の人にすべてお任せしたら、結果的
に一体どういうことが起きてくるか。我々は、日本の中で空洞化が起こって物が作れな
くなってしまうような、１つの危惧を抱いているためにこういう話をさせていただいて
います。
　絶対に労働者の方を大切にしなければいけない。これはすべて我々経営者側の人間に
共通の理念です。ただ、そこの100、もしくは２～６の80のところに固執しないで先ほ
どおっしゃっていただいた自覚の問題や、何かほかの方法が見つけられないかと思いま
す。ということが、最後に私が申し上げたい意見としてとらえていただければありがた
いと思います。

○櫻井分科会長
　先ほども北山委員からリスクが最も高いと考えられるコアの対象に絞るという考え方
が必要ではないかというご意見が出ました。先ほどは蓄積した疲労の自覚症状を訴える
ような方という縛りのご意見があったわけですが、その辺りはどうでしょうか。

○伊藤委員
　疲労の具合が血液検査をすればわかるとか、こうやるとわかるというテストでもある
といいですね。

○櫻井分科会長
　方法はいろいろ考えられると思います。

○和田委員
　サンプルが少ないとか、疫学的なあれが付いたようですが、決してそんなことはあり
ません。我々近代の医学は、すべてエビデンスベース・メディスンということで、証拠
のある医学しかやらないということで、すべて進めているわけです。今回のリスクに関
しての証拠というのは、すべて疫学調査をやるわけです。13年度検討会の時点で、そう
いったことに関する論文が全部で12ありました。その後、３つ出てきて、現在それに関
したきちんとした論文が15あります。時間外労働100時間以上は、すなわちほぼ睡眠５
時間以下になるわけですが、それに関して調査した報告が８つあります。その８つとも
すべてにおいてリスクが高い。すなわち、その中でいちばん低いリスクが1.5というリ
スクで、いちばん高いリスクが３というものです。これはどういう意味かというと、３
というリスクは何かというと、例えば100人が心筋梗塞で亡くなったとすると、そのう
ちの70人が過重労働が原因であることを示しているのです。それぐらい重い値なので
す。リスクが普通２から重視するわけです。これは50％の人が過重労働が原因で心筋梗
塞を起こしたと判断してよろしいという数値なのです。普通大体アメリカなどでは50.1
％セオリーというのを取って、半分より大きかったら、やはり認めなければいけないの
ではないかという考え方です。それをもって、リスクが３となると、70何パーセントが
過重労働が原因であるということですから、これは非常に重い数字で、医学的には非常
に大事な数字と我々は考えています。決してサンプルが少ないということはありませ
ん。そうしたきちんとした根拠に基づいていて、こういった調査はほとんど日本人がや
るわけですが、ほとんど日本人についての調査ですから、外国人のものは別だという意
味では全然ありません。すべて日本人について、こういった調査が一応なされていると
いうことです。
　ただ、もう１つは80時間という線に関しては、睡眠時間は概算すると６時間になるわ
けですが、その後の調査で６時間未満という調査と、６時間以下という調査があるわけ
です。６時間未満という調査では、ほとんどリスクが高い調査結果を出しているわけで
すが、６時間以下と６時間も含めたものとなりますと、半分くらいが全く関係なく、半
分がリスクが高いということで、６時間未満というのは非常に重要で、この中に５時間
とか４時間が入ってくるわけです。ちょうど80時間ということは６時間ですから、医学
的にいうと100％証拠があるという意味ではないと我々は考えているわけですから、計
算が非常に面倒かもしれませんが、そういう意味で80時間というのは、まだ努力義務と
いう感じでもいいのではないかと考えている次第です。
　ただ、100時間以上についてはこれだけのデータがあって、極めて高いリスクである
こと、しかも疫学調査というのは疲れていようが疲れていまいが全部集めてやるわけで
すから、平均の値が出てきます。したがって、疲れている人がもしそうであれば、本当
はもっと高い値が出るはずです。そういった意味で100時間というのはちゃんとした義
務化をすべきであると一応考えています。
　過労を自覚をした人ということが出ているわけですが、過労を自覚したことはこの前
もお話しましたが二次予防に入るわけです。すでに何らかの病気があって、それをきち
んとチェックしましょうということで、本来であれば100時間で一次予防をやるべきで
ある。すべてについてチェックすべきであると私自身考えていますが、そういった意味
で、皆さんの合意でそういう自覚症状がある人だけということであれば、特にリスクの
高い人を選んだことになるわけです。すべて二次予防でいくことになると考えられるわ
けです。いまの世の中、大体一次予防に全部移行しているところへ、二次予防を入れる
というのも、ちょっと残念な気がすることはします。もし、二次予防を重視するのであ
れば、ただ疲労の自覚症状がある人だけではなく、やはり産業医が健康診断の結果や個
別の事例、そのほかの情報によって、この人はちゃんとした相談をすべきであると判定
した人を、是非入れていただきたいと考えています。
　もちろん自覚症状よりそういう客観的な証拠のほうが、はるかに証拠としても意味付
けがあるわけです。自覚症状よりもはるかに証拠があるわけですから、是非そのように
していただきたいということと、そうすることでいま我々は産業医をやっているわけで
すが、なかなか参加してくれないのです。説明をして、「あなたは危ないから健康診断
を受けなさい。総合対策でこうなっているから受けなさい」と言っても受けてくれない
わけですから、そういう人に受けていただくためにも、是非義務化したほうがいいので
はないかという感じを受けるわけです。以上が、医学的な根拠です。
　個人的な見解としては、一定以上のリスクのある人には必ず面接指導を義務化してほ
しいというのが私の考えです。１つは事業者にとっても、いま問題になっている社会的
責任を果たすとか、社会的な制裁を受けないで済むという利点がありますので、働く人
々に健康な労働生活ができることを保障してあげるわけですから、そういう意味で非常
なメリットがあると思います。産業保健スタッフにしても、きちんとすることによって
非常に活動しやすくなるだろうと思いますし、活性化されるだろうと思います。そうい
ったことで明確にきちんとしておいたほうがいいのではないかと、個人的にも考えてい
ます。

○金子委員
　産業医として和田委員にお願いなのですが、長時間労働をしてしまう方たちというの
は、タイプＡの方が脳卒中や心筋梗塞のリスクにもなりますし、そういう方たちは疲れ
をなかなか感じにくいような性格の方が多いです。ですから産業医が面接指導をしてい
くにしても、講習を受けるにしても、どこまでも医学的に納得のいく形であってほしい
というのが１つです。条件を付けるにあたっていろいろな方たちがいて、心筋梗塞にな
りやすいリスクを、どうやって抽出するかというところは、是非専門家としての、医者
が納得できるものを作っていただきたいと思います。

○内藤委員
　少し違った点からのお話ですが、もちろん医学的な見地から両先生がおっしゃる点に
ついては、私は専門外です。ただ、先ほど労働基準法と労働安全衛生との関係というこ
とで一部お話がありましたが、これは労働法はもともと労働基準法の第32条で、１週間
の労働時間を40時間と定め、それに対しては諸先生方、また事務局の方々が十分ご存じ
のとおり、平成12年の告示、これはたまたまお手元にあります総覧でいえば、242頁以
下にあるのですが、労働基準法第36条に残業で許されるという基準が、１カ月で45時間
の残業時間と出てきているわけです。
　もちろん現実の社会の中で、そういった労働省告示が守られていないという現状が悲
しいかなあるということは理解はしているのですが、その上限が45時間とか、あるいは
３カ月で120時間と定められているものをはるかに超過して、記憶では１カ月100時間と
いうことでいま我々が議論をしているというのは、実に２倍以上であると私は思うので
す。そう考えると、和田委員がおっしゃった説明を受けるまでもなく、残業時間を許さ
れる基準として示されたものの２倍以上を超えているものを、何とかセーフティネット
として入れたいというお話であると私は理解しますので、100時間はおろか80時間であ
っても、許される労働省告示をはるかに超えていると考えられるのですが、その辺りは
いかがお考えになられますでしょうか。

○伊藤委員
　もっともなお話で、本当にそう思います。はるかに我々が日本の法律の中で決められ
た時間外労働の３倍より多い時間の問題でいま議論しているという、非常に悲しいか
な、現実にはこういうことがあるということを我々は真摯に受け止めている中での、ご
く少数の方々のために、すべての方にそういうことを毎月やらなければならない、もし
くは３～６がいけないのかもしれないのですが、そういうことをやらなければいけない
ということに対して、もう少し簡易な方法はないかということを、我々は仮に100時間
が正しいのだとしたら、何か考えていただければなと。もしくは我々がその100時間の
部分に関してもう一度勉強しなければいけない。という時間いただいてもいいのかもし
れないし、おっしゃることはごもっともだと思います。

○労働衛生課長
　事務局としてはたしか伊藤委員がおっしゃったように、もう少し簡易な方法はないか
ということについて、もう少し時間をいただきましていろいろ工夫をしてみたいと思い
ます。和田委員がおっしゃったように、産業医が客観的に見て、面接指導の必要性を出
した場合、それは確かに非常にいい条件として考えられるわけですが、中には50人未満
の中小企業や事業所をどうするのか。そこには産業医が全部付いているわけではないの
で、いくら地域産業保健センターで面接指導が行えますと言っても、そこの人たちの普
段の状況をどうやって把握するかといういろいろな問題がありますので、その辺りをも
う少し事務局で詰めた上で、次回までにご提案をさせていただければと思います。

○加藤委員
　いろいろなご意見があると思うのですが、先ほど課長がおっしゃったような高齢化の
中で健診の異常者は毎年増えていると思うのです。そういったものが、あるファクター
が加わって異常が出るようになるというのは、高齢化になればなるほど個人のばらつき
は非常に大きく、これからはそういった問題はますます大きくなってくると思うので
す。そういう意味で時間のファクターというのはリスクの一部でしかないだろうと思い
ます。現状でも、問題のある人たちに対する産業医の面談やそういった仕組みはありま
すし、時間だけでなくほかのファクターによる過重労働なりメンタルの問題は出てくる
可能性がありますので、その辺の問題をどうやってとらまえていくかは、マネジメント
システムと同じように、どうやって職場の健康リスクを把握しながら、ＰＤＣを回して
いくかだと思うのです。そういう意味では、100とか80という数字で切られてしまうと、
そこにだけしか目が行かなくなってしまって、逆にほかのファクターが見逃されたり、
あるいは産業医がそこだけ忙しくなってしまって、肝心なところが抜け落ちてしまうな
ど、そういった問題が起きないかという心配もあるので、そういう意味では労使で協議
しながら、そういった問題点を把握し、回して解決していくという方法、環境や安全の
問題と違ってある一律の基準で切るよりも、こういった人に関する非常に大きな部分と
いうのは、そういったやり方のほうがいいのではないかと思うのです。

○労働衛生課長
　現在実効性のあるしかも最も効果的な方法は何かという話です。大企業で産業医がい
る所、中小企業で産業医の選任義務がないような所全部を含めた上で、どのような形で
過重労働対策としての過労死を予防する方策を立てて、法制化にもっていくかという部
分について、かなり議論がいいところまできていると思いますので、コアの部分として
例えば義務化すべきところはどこなのかという話と、努力義務として頑張るべきところ
はどこなのかという話をもう少し整理して、ここに次回までにお出しをして、何とかで
きないかといま考えています。

○櫻井分科会長
　よろしいでしょうか。大体時間も尽きてきましたし、主な議論は十分にしていただい
たという感じがします。今日の議論は一応これで終了させていただきまして、今日の議
論を踏まえて、事務局に次回までに取りまとめ案を提出していただくということでいか
がでしょうか。よろしゅうございますか。
　　　　　　　　　　　　　　　　　（異議なし）

○櫻井分科会長
　それではそのようにさせていただきます。今日の会議は以上をもって終了いたしま
す。次回は12月13日、15時から開催の予定ですので、よろしくお願いします。議事録へ
の署名は徳永委員と小島委員にお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。それ
では今日は皆様お忙しい中をありがとうございました。


　　　　　　　　　　　　　　照会先：労働基準局安全衛生部計画課（内線５４７６）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　０３－５２５３－１１１１（代表）