04/11/25 第9回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会議事録  第10回 ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会     第9回 医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会                    議事録 1.日時  平成16年11月25日(木)16:00〜17:00 2.場所  経済産業省国際会議室 3.出席委員 位田委員、宇都木委員、小幡委員、垣添委員(座長)、鎌谷委員、        具嶋委員、黒木委員(座長代理)、栗山委員、武田委員、辻委員、        富永委員、南条委員、廣橋委員、福嶋委員、堀部委員、柳川委員、        吉倉委員       (事務局)        文部科学省:佐伯ライフサイエンス課長、安藤生命倫理・安全対策室長        厚生労働省:松谷技術総括審議官、上田厚生科学課長、高山研究企画官他 4.議題  (1)遺伝子治療臨床研究及び疫学研究における個人情報保護に係る諸課題への対応     について  (2)その他 5.配布資料  資料II―1:「遺伝子治療臨床研究に関する指針」新旧対象表(案)  資料II―2:「疫学研究に関する倫理指針」新旧対象表(案) 6.議事 ○高山研究企画官  それでは、引き続き文部科学省ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い 等に関する小委員会及び厚生労働省医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関す る専門委員会を始めさせていただきたいと思います。  議事に入ります前に、事務局より本日の委員会の進め方についてご説明させていただ きます。  本日は最初に、お手元にございますように、先週までにいただきました相当数のパブ リックコメントの意見につきまして、それを踏まえた形で遺伝子治療臨床研究指針と疫 学研究指針の最終的な見直し案を事務局で作成いたしましたので、これについてご検討 いただければと思います。先に行いましたゲノム指針と同様、指針の見直し案につきま しては本日でとりまとめいただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。  また、その後、先ほどの3省委員会でゲノム指針について法制化の議論を行っていた だいたところでございますが、この2指針についてもさらにございましたらご意見を伺 えればと考えております。  それでは、議事の進行につきまして、座長の垣添先生にお願いしたいと思います。 ○垣添座長  それでは、引き続きまして、よろしくお願いします。  では、配付資料の確認からお願いいたします。 ○事務局  配付資料の確認をさせていただきます。配付資料といたしましては、遺伝子治療臨床 研究と疫学研究の指針の新旧対照表を資料II―1、資料II―2という形でお配りしてお ります。また、こちらもパブリックコメントをまとめた結果につきましては、机上配付 資料としてお手元に配付しております。机上配付資料の今後の取り扱い等についても、 先ほどのゲノム指針のときと同様に考えております。  以上でございます。 ○垣添座長  ありがとうございました。  それでは、議事に入りますが、本日は2つありまして、まず初めに、遺伝子治療臨床 研究指針の見直し案について検討することにいたします。資料のご説明をお願いしま す。 ○事務局  遺伝子治療臨床研究に関する指針について、資料II―1に基づきましてご説明させて いただきます。ちなみにパブリックコメントは机上配付資料ということでお配りしてお りますが、遺伝子治療臨床研究に関しては寄せられたコメントは少のうございました。  先ほどゲノム指針のときに、4指針全部共通の考え方として、細則を本則にあげたり という考え方を説明いたしましたが、遺伝子治療臨床研究についても同じでございま す。細則の中でも新しく規定を設けるものについては本則に設けるべきではないかと か、インフォームド・コンセント等で実質上担保してきた個人情報保護法の各種規定に ついても、基本的にこの指針の中に盛り込むべきではないか等々ございます。  あともう1つ、遺伝子治療臨床研究固有の問題として大きな見直しがございます。見 直しといいますのは、この前、先生方にやや不確定な形でお話をさせていただいたかも しれませんが、後ほどまたご説明をさせていただきますが、全体の個人情報保護の責任 者をだれにするかという問題が遺伝子治療臨床研究についてはかなりご議論があったか と思っております。こちらにつきましては、今回、全体として個人情報保護法も事業者 という形で整理していることを踏まえ、この指針についても個人情報保護については法 人として扱っていくものと考えております。法人ということになりますと、安全管理措 置等々については法人の長という形で整理し、開示やその他については、法人の中の1 人であります総括責任者、要するに研究責任者でございますが、そういった方々に責任 を負わせていく。ただ、最終的な責任は、もし人であれば法人の長であり、そういった 意味で法人の長に監督権限を与えてはどうかというような形での整理をさせていただい ています。これが今回大きな変更と思っております。  それでは、資料の3段表に基づきまして、1ページからご説明させていただきます。  1ページの最初の六と七でございますが、研究を行う機関、また研究を行う機関の長 というのが新しく出てまいりました。その関係で定義をそれぞれ規定しているというと ころでございます。また第六章で出てきますので、そちらでご説明させていただきま す。  2ページでございます。九のところで、個人情報保護法で、個人情報の中で保有する 個人データについては、個人情報よりももう少し狭い縛り方をしております。それを踏 まえた規定でございます。6ヵ月以内に消去することとか、その存在が明らかになるこ とによって公益その他の利益が害されるものとして下の1から4に掲げているものと か、こういったもの以外を指すという形での規定ぶりにしております。基本的には個人 情報保護法の条文を踏まえての文言になっております。  3ページは特に直しはございません。  4ページでございます。細かいところですが、代諾者というものを新しく定義を置い て、それに基づいて代諾者という言葉がところどころ出ているというものでございま す。  5ページにつきましても、代諾者という言葉がありますのと、あわせて条項の追加な ど事務的な直しが入ってございます。  10ページでございます。第六章、個人情報の保護に関する措置でございます。こちら につきましては、前は実施機関の長は機関単位でとらえておりまして、法人単位という 形のとらえ方をしておりませんでした。冒頭ご説明いたしましたように、研究を行う機 関の長ということで、最終的な責任者を法人単位で規定して、研究を行う機関の長とい う形にしております。  また11ページ、研究を行う機関の長は、個人情報保護に関する措置に関し、適正な実 施を確保するため必要があると認めるときは、総括責任者に対して、監督上必要な命令 をすることができるという形にしております。また、研究を行う機関の長は、機関に定 められる規定によって、その権限を適当な者に委任することができるというような規定 になっております。また、研究を行う機関の長に関する細則がございましたけれども、 これは冒頭の定義のところに入れて本則に上げております  11ページの下の利用目的の特定でございます。総括責任者は、利用目的をできる限り 特定しなければならない。これもインフォームド・コンセントにおいて、利用目的の特 定をいたしますのでこれをもって特定されているのではないかという考え方で今まで整 理しておりましたが、これも個人情報保護法を踏まえて、インフォームド・コンセント で対応するということだけではなくて、きちんと規定するということで、法律上のこと で整理をしたものでございます。以下、利用目的の特定のところに、受任総括責任者と いう言葉がかつてはございました。実施機関の長から権限がおりるという形で、受任総 括責任者という形で置いておりましたけれども、これは受任という形ではなくて、冒頭 お話ししましたように、研究を行う機関の単位で考えていくこととし、その中で長が全 体的な包括的な権限と最終的な責任と安全管理措置など法人全体で求められるものにつ いては、法人の長に対して課すこととし、それぞれの研究責任者、いわゆる総括責任者 については、開示など各種研究対象者の方と相対で接するような物事等々について、そ の責任者となっていただくこととしました。ただ、総括責任者が責任者になったとし て、それについて研究を行う機関というのは何も権限をもっていないということでなく て、先ほど申しましたような監督権限を与えていこうというような形の整理でございま す。  12ページでございます。利用目的の権限の二のところを新しく追加しております。前 回、このようなケースはあまり想定しにくいということで削除しておりましたが、全く あり得ないと確証できるものでもないことから法と同様の規定を盛り込んでいるもので ございます。その他、本人という言葉について被験者という形で統一させていただいて いますし、パブリックコメントの結果を踏まえて用語を若干追加させていただいており ます。  12ページの適正な取得についても、インフォームド・コンセントによって適正な取得 が行われるから必要ないのではないかと思っておりましたが、その点についても指針の 中に盛り込むという形でございます。  13ページの取得に際しての利用目的の通知等も、基本的にインフォームド・コンセン トで今まで担保してきたものを、こちらで規定したものでございます。  14ページ、安全管理措置についての表現について、法と同様の規定とするため、若干 修正を行ったものでございます。  16ページにつきまして、オプトアウトに関しての規定、法律第23条第二項第三項につ いて、こちらにも規定したものでございます。  また17ページ、一番下のところでございますが、これもインフォームド・コンセント で今まで担保してきたものをここで規定したというものでございますし、18ページの保 有する個人情報に関する事項の公表も基本的に同じような並びでございます。  19ページの一番上、他の法令の規定により云々という部分がございます。ほとんどこ ういったケースは想定しにくいということで外しておりましたが、全く想定できないわ けではないことから、つけ加えたものでございます。  21ページ、理由の説明についてでございます。理由の説明の中の前段の部分につきま しては、基本的に法律に表現を合わせておりまして、後半のなお書き以降の部分につい ては、ゲノム指針と並びをとって、このような規定に直しております。  21ページの下のところと次の22ページの手数料の関係も、インフォームド・コンセン トの中で書いてあったものをここで規定したものでございます。 ○垣添座長  ありがとうございました。  では、パブリックコメントをいただいた上で、修正された全体を通してご議論をいた だければと思いますが、いかがでしょうか。 ○福嶋委員  質問というか、確認になるのですけれども、先ほどの3省指針のこともそうなのです が、研究を行う機関の長といった場合に、私の所属するところは信州大学、医学部、附 属病院と3人いるわけです。法律ですと、全部学長ということになるわけですか。研究 を行う機関の長といった場合に、みなさんがそう理解すると限らないと思うのです。個 人情報保護法の関係で法人の長でなければいけないということになると思うのですけれ ども、これが実施されることになると、各大学ほとんど医学部、あるいは附属病院単位 で全部やっているので、かなり大幅な見直しを迫るということになると思うのですが、 この辺の徹底をしておいた方がいいかなと思います。 ○事務局  おっしゃるとおり、その辺の周知徹底はきちんと行っていきたいと思いますし、以前 は細則でいろいろ規定していたのですが、細則で法人の長であると規定することはいか がなものかというような指摘もあって、遺伝子治療臨床研究の最初の1ページの七のと ころに、この指針において「研究を行う機関の長」とは、研究を行う機関に該当する法 人の代表者ということで、学校ですと学校法人、独立行政法人なら独立行政法人という ことになりますが、そこの代表者の学長になるのではと思っております。ただ、いずれ にしても、こういう形で書いてあっても、研究を行う機関の長といったときに、研究所 の所長ではないかとか、病院長ではないかとか、そのような読まれ方をされかねないと 思いますので、周知についてはきちんとやっていきたいと思っております。 ○垣添座長  法人の長ということでの周知をよろしくお願いします。 ○位田委員  全部まだ見切れていないのですが、12ページのところで――12ページだけではないの ですけれども、倫理審査委員会を審査委員会としたという点について、従来から審査委 員会という名前だったかもしれないのですけれども、いろいろな指針がある中で、多分 これだけが審査委員会という名前になっているので、そうすると、そのほかの指針の中 でいっている倫理審査委員会と同じでいいのか違うのかという問題が出てくると思うの です。パブリックコメントの結果を踏まえて倫理を削除という、これも1つのオプショ ンでしょうけれども、むしろ全部に倫理をつけるというオプションもあり得たかなと思 いますし、その方がいろいろな指針を通じての用語の統一という点ではいいのではない かと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。 ○垣添座長  この指針だけ倫理を削除するというのは何か妙な感じがしますね。 ○黒木座長代理  遺伝子治療は最初、臨床研究審査委員会という名前で出ていて、倫理が最初から入っ ていなかったのです。その中には、ベクターをどのように使うとか、非常に医学的な内 容の審査があって、さらに生殖細胞に入れてはいけないという倫理規定が入っていて、 最初は医学的な規定が非常に強かったので、臨床研究審査委員会という名前だったので す。 ○垣添座長  そうすると、遺伝子治療というのは少し特殊になるということですか。 ○黒木座長代理  はい、特殊な位置づけになります。 ○垣添座長  そうすると、倫理という言葉を除いてもよろしいですね。 ○吉倉委員  今、1つ気がついたのですけれども、10ページの三の1なのですが、新規のベクター と書いてあるのです。これは実は、遺伝子治療の場合もカルタヘナ議定書に含まれるこ とになり、法律ではベクターという使い方をしなくなったのです。できればベクターと いう言葉をここで使わないでいただいた方が混乱がないように思います。  新規の遺伝子投与方法(疾病の治療のために……用いられるものなどをいう)という ようにして、ベクターという言葉をここで使うのを避けていただけないでしょうか。  補足しますと、カルタヘナ議定書では、ウイルスの中に遺伝子を入れているので宿主 という言葉を使うのですが、宿主という言葉をここで使うと、またわけわからなくなる ので、むしろベクターという言葉を使わないで済ますような修文にしていただいた方が いいということです。 ○事務局  そこは整理させていただいて、適当な表現に直させていただきたいと思います。 ○垣添座長  お願いします。  ほかにいかがでしょう。――それでは、遺伝子治療臨床研究に関する指針に関しては 以上にさせていただきまして、意見を黒木座長代理と整理したものを事務局で修文して いただくということでよろしゅうございましょうか。     (異議なし)  ありがとうございます。  では、続きまして、もう1つの疫学研究における個人情報保護に関してよろしくお願 いします。 ○事務局  疫学研究に関する倫理指針につきまして、資料II―2に基づき説明いたします。基本 的なところにつきましては、先ほどの説明のとおりでございます。  パブリックコメントについては机上配付資料としてお配りしておりますが、ゲノム指 針ほどではございませんでしたが、それなりの数の意見をいただいたところでございま す。これらについも反映しながら修正いたしました。  資料II―2でございますが、1ページ、2ページにつきましては特段変更はございま せん。  3ページでございます。守秘義務関係のところでございますが、その下の(2)個人 情報の保護のところで規定するのがより適当であろうということで、整理をしたもので ございます。  4ページでございます。右側に書いておりますように、一般的な事項を示したもので あることを明確にするためということで、パブコメの意見を踏まえての修正でございま す。また、インフォームド・コンセントの関係をいろいろ修正しておりますので、その 関係で引用条項の変更に伴う修正がございます。  続きまして、12ページでございます。基本的に今のインフォームド・コンセントの話 と同様でございまして、いくつかの条項の追加に伴う引用規定の変更等による事務的な 修正でございます。  13ページ、研究を行う機関の長の責務について規定しております。ほかの項目に合わ せまして、項目名を記載し、用語の適正な修正を行っております。また、研究を行う機 関の長に関して細則で規定しておりましたのを、ほかの指針も全部そうでございます が、細則ではなくて本則ということで定義のところで規定しております。研究を行う機 関の長とは法人の代表者であるという規定を本則に置いたというものでございます。  13ページの (2)の(1)も、利用目的のところで、ゲノム指針でも遺伝子治療指針でも ご説明させて頂いたことと同じでございます。インフォームド・コンセント関係での修 正でございます。  14ページ、利用目的による制限関係の(2)、これもゲノム指針、遺伝子治療指針、両 方にございましたように、想定しにくいということで外していたものを、絶対想定でき ないわけではないことから追加いたしました。 (4)の適正な取得についても、インフォ ームド・コンセントで担保していたものですが、こちらに規定したものでございます。  15ページの取得に際しての利用目的の通知等も、インフォームド・コンセントで今ま で担保してきたものをこちらに規定したものでございます。  18ページでございます。こちらの整理がやや悪かったのかなと思っているのですが、 13ページに同じような規定がございまして、18ページの委託者等の監督の部分を入れる べきではないかという指摘を受けて入れてしまったのですが、規定が重複しており、本 来どちらかを整理しなければいけないと思っておりますので、いずれかを整理させて頂 きます。  19ページにつきましても、法と同様の規定とするための修正を加えております。  20ページにつきましても、インフォームド・コンセントで担保されているとしていた ものを、こちらに規定したというものでございますし、21ページについても同じような ものでございます。  22ページは、レアケースということで外したものを新しく追加したものでございま す。  23、24ページにつきましては、用語の適正化等々の修正でございますし、25ページ、 理由の説明のところで、上の欄につきましては法律の条文に合わせまして、なお書き以 降についてはゲノム指針に合わせたということで、遺伝子治療指針と同様の修正でござ います。  25ページの(15)、26ページの手数料の関係の(16)、いずれもインフォームド・コンセ ントのところで規定していたものをこちらに規定したというものでございます。  27ページでございます。代諾者が同意を行う場合も含めた表現ということで、「本人 の同意」というのを「研究対象者等の同意」に修正しました。また、本人については基 本的に研究対象者という形で修正を行っております。  28ページ、見直しにあたっての考え方のところに、代諾者が同意を行う場合を含めた 用語に修正とございますが、これは間違いでございまして、単に本人という言葉を研究 対象者に変えているということで修正したものでございます。  29ページ、こちらも技術的な修正でございます。「7柱書」と以前ありましたが、細 則のタイトルをそのまま引用したというものでございます。  30ページ、遺伝子治療指針にもございましたが、保有する個人情報の定義として、個 人情報保護法ですと、最初に保有する個人情報云々とあって、その後の第4項か第5項 か、後の方の条項の中で、一定期間後に消去されるものは個人情報保有データから外れ るとなっておりましたので、保有する個人情報の定義としては、一定期間後に消去され るもの以外のような形で修正しております。  31ページでございます。連結可能匿名化につきましては、指針の中にこの用語があ り、本来、定義すべきだったかと思いますが、定義規定を置いていなかったということ で、規定しております。  31ページの下でございますが、研究を行う機関及び研究を行う機関の長、それぞれ定 義で記載しているものでございます。  32ページにつきましては、ほかの文言修正に伴う技術的な修正でございます。 ○垣添座長  ありがとうございました。  パブリックコメント以降、修正された部分を示していただきましたが、全体を通しま して何かご意見がありましたら承りたいと思います。 ○富永委員  総論的なことで確認したいのですが、従来も疫学研究の中で遺伝子を取り扱うような 研究、分子疫学という領域ですけれども、これにつきましては、遺伝子を取り扱う部分 についてはヒトゲノムに関する倫理指針を適用してきました。将来も同じ方針で、疫学 研究の中で分子疫学、あるいは遺伝子疫学というような言葉で呼ばれているようなヒト ゲノムに関する疫学的研究の扱い部分については、やはりヒトゲノムに関する倫理指針 で、その他の疫学的な研究の一般的なものは疫学研究の倫理指針で対応すればいいと思 います。きちんと集約した方がいいと思います。  それから、少し似た要素があるのですけれども、疫学の中には介入研究といいまし て、例えばがんの化学予防などをやります。対照群と比べて化学予防剤を服用した分で はがんの発生率が高くなるか、または低くなるかといったことを見るわけですが、これ は臨床研究や治験と同様の研究デザインなのです。しかし、疫学研究の中には介入研究 も位置づけられておりまして、その目的は疾患発生の予防です。臨床研究は治療効果の 評価ですので、このような介入研究は、臨床試験とよく似ているけれども、やはり疫学 の土俵の中で検討したらいいのではないかと思います。後者について、疫学者の中に混 乱がありますので、そこを明確にしておいた方がいいと思います。 ○垣添座長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○位田委員  用語の定義で、31ページ(12)、(13)ですが、研究機関と研究を行う機関というように 使い分けをされているというのは私もよくわかりますが、先ほどの福嶋委員のご質問で もあったと思うのですけれども、これで混同しないのでしょうか。というのは、ゲノム の倫理指針は、43ページのところで、もともとの倫理指針では研究機関といっていたの を研究を行う機関といいかえて、研究機関という言葉はなくなったわけです。ところ が、こちらは研究機関という言葉が残っているし、研究を行う機関がふえていて、これ は混同しそうな気がするので、何か整理が必要ではないでしょうか。 ○事務局  引き続きよく考えたいと思っておりますが、ここはなかなか難しいところがございま して、研究機関という言葉は今まで使われておりますので、それを変えてしまうと、ま た皆さんの中で誤解が生じてくるのではないかということと、研究を行う機関という言 葉が、ゲノム指針など他の指針でも法人全体を指す言葉として使われておりますので、 これを変えるとまた誤解が生じるのではないか。いろいろな意味で問題点があるもので すから、ほかの指針との関係からみて、こういった形で整理をさせていただいておりま すが、どういった整理がいいか、よく考えてはみたいと思います。いずれにしても、そ ういった形でこちらは定義したところでございます。 ○垣添座長  ほかにいかがでしょうか。――よろしゅうございますか。それでは、今頂戴しました 幾つかのご意見に関しては、私と黒木座長代理とにお任せいただいて、修文をしたいと 思います。 ○位田委員  先ほどの研究機関、研究を行う機関と並んで、共同研究機関というのは、共同で研究 を行う機関なのか、共同研究機関なのか分からないのですが。これはすべての指針につ いて同じだと思うのですけれども、そこもあわせて考えていただいて、場合によって、 もう少し説明をつけ加えていただくか、Q&Aで処理していただくことが必要ではない かと思います。 ○事務局  Q&A等々を含めていろいろ考えさせていただきます。  ちなみに、先ほどの富永委員からのご指摘についても、非常に大切なご指摘だと思っ ておりますし、内容によっていろいろではないかと思うのですが、一口にゲノムといっ てもいろいろな場合があるので、そのままそっくり入れていいのかどうかということも あろうかと思います。もし通常のような、個人情報保護の必要性等々からみて、ヒトゲ ノムの研究で行われているようなものとほとんど同じようなものは、基本的にそちらの 中でみるべきものだと思いますし、全く違うようなものであれば、その辺は考えなけれ ばいけないかと思います。それは我々もよく考えてやっていくべきかと思っておりま す。現場に混乱がないようにやりたいと思っております。 ○垣添座長  それをQ&Aの中に入れるとか、富永委員のご発言の内容が含まれるように考えてく ださい。 ○堀部委員  今までの議論とは違うのですが、個人情報保護法にかなり近づけて整理していただい ているので、個人情報保護法の観点からは大変わかりやすくなったように思います。  他方、行政機関の個人情報保護法とか独立行政法人個人情報保護法との整合性はこれ で大丈夫なのでしょうか。これらは少しずつ違いますので、そこが気になってきたとこ ろでもあります。3つの法律の言葉遣いが微妙に違うところがあるので、そのあたりは 今後また検討する際にぜひ整理する必要があるのではという印象をもちました。 ○事務局  おっしゃるとおりだと思います。ここは非常に難しいところでございまして、独法と か国の法律にそろえると、個人情報保護法とそろわなくなってくるという、悩ましいと ころで、主体で分かれている法律と、それを横でみる我々が指針をつくると、非常に苦 しむところではないかと思っております。いずれにしても、そういう混乱が起きないよ うにしたいと思いますし、ゲノム指針については、独法や大学が実施施設として多いと いう中で、個人情報の定義など独法の方にそろえているところもございますが、一方で 疫学になってくると、様々な機関が実施していることから、その辺を少し変えてござい ます。そういったことも踏まえてやっているつもりでございますが、いずれにしても、 その辺をよく整理したいと思います。 ○柳川委員  パブリックコメントの30番のところ、資料では27ページの11番ですけれども、他の機 関等の資料の利用というところで、コホート研究の場合には、例えばある調査を始めて 5年とか10年後の間に、いろいろ病気になったりします。これには第三者からの医療機 関の情報が必要となるわけですが、それは該当しないと考えてよいかとあります。それ から、その下の方に、疫学研究の特色である追跡調査の手続を理解し、学術研究の適用 除外を理解されている場合が少なく、したがって、第三者提供に当たることを懸念し て、提供してもらえない場合が多いのではないかという懸念があります。これは、我々 疫学をやっていれば強くこの懸念をもつわけです。これについてはQ&A等で具体的に 事例について回答すると書いてありますが、指針の方では全くいじっていないのです が、協力を維持するためにも、きちんとそういうことを書いていただきたいと思いま す。 ○垣添座長  ありがとうございました。ご指摘のとおりだと思います。よろしゅうございましょう か。――それでは、事務局から今後の予定をお願いいたします。 ○高山研究企画官  ゲノム指針と同様に、修文につきましては、座長、座長代理の先生と相談の上、対応 させていただきたいと思います。また、先ほどもご説明させていただきましたが、法令 用語などで若干事務的に修正する箇所が生じることはご了承いただければと思います。  告示時期につきましては、ゲノム指針と同様に、12月中旬ごろになるかということで 考えてございます。 ○垣添座長  最後に、この2つの指針に関しても法制化の問題をご議論いただきたいと思います。 仮にこの2つの指針に関して、ゲノム指針とは異なる論点があれば、この場で議論をい ただければと思います。先ほど大分ご議論いただきましたけれども、異なる点があれば いかがでしょうか。 ○事務局  資料はご用意させていただいておりませんが、私どもの考え方といたしまして、恐ら くゲノムの関係が、個人情報保護などのご関心の高い分野かと思っておりまして、そち らの議論というのは、基本的に遺伝子治療や疫学についても同じような考え方が適用さ れ得るのではないかと思っておりました。遺伝子治療や疫学について、特に議論を今ま でしてこなかったわけでございますが、12月の段階で意見をまとめなければいけないと いうところに来ておりますので、これらについて、ゲノムにはない特有の問題が何か考 えられ、それで、法制化すべきだとか、法制化すべきでないというようなご意見があれ ば、整理しなければいけないと思っておりますので、本日、先生方からいろいろご意見 をいただければと思います。もし特段何か問題がなく、ゲノム指針等をある程度踏まえ て、それからすべきだということであれば、基本的に意見書の中でもゲノム指針と同じ ような考え方で整理をさせていただきたいと思っております。 ○垣添座長  いかがでしょうか。 ○宇都木委員  前の疫学倫理指針で、がん登録を外したのですが、がんに限らず疾病登録の問題をき ちんとした法制度の中に置いていかないと、これは国民の情報という点でも、研究とい う点でも、いけないのではないでしょうか。そうすると、それはやはり法制度化すべき ことなのではないかと思っております。 ○垣添座長  ありがとうございます。非常に重要なご指摘だと思います。 ○位田委員  今の宇都木委員のご意見と多分同じだと思うのですが、個人情報保護という観点で は、先ほどの倫理指針で議論いただいた部分と余り変わりないのですけれども、遺伝子 治療臨床研究については、遺伝子治療の臨床研究だけではなくて、臨床応用そのものが すぐ目の前に来ていると思いますので、遺伝子治療そのものについての法制度、遺伝子 もしくは遺伝療法を用いた医療についての法制度というのはそれなりに必要ではないか と思います。特に遺伝子治療などの場合には、ジャームラインに対する介入をどうする かという問題もございます。 ○高山研究企画官  先ほどの宇都木先生のご質問と位田先生のご質問について、関連の情報で申し上げま すと、疾病登録の関係につきましては、健康増進法が制定されていまして、その関係で 地域がん登録事業というのが位置づけられ、その関係と個人情報保護法の関係について は健康局で整理をしまして、4月8日付で通知を出しているところです。担当部局にも 相談しましたところ、もしさらに問題などあれば教えていただければということです。 担当は健康局の生活習慣病対策室でございます。  それと、位田先生のご意見につきましては、例えばゲノム指針のときにご議論いただ きました生命倫理基本法のようなもので、こういうものはしてはいけないという位置づ け方と、ここだけを絞ってやるやり方といろいろ手法があるけれども、そういうものに ついて検討すべきだというご意見でよろしいでしょうか。 ○位田委員  はい。 ○垣添座長  先ほどゲノム指針のところの議論にもありましたように、差別禁止法とか、生命倫理 基本法といったものが別途必要ではないかという議論につながる問題かと思います。  よろしゅうございましょうか。――それでは、本日の議論はここまでにしまして、今 後の予定をお願いいたします。 ○高山研究企画官  ご審議ありがとうございました。先ほどの法制化の議論につきましては、両指針それ ぞれの特有のことについて検討すべき事項がありましたら、全体のまとめの中で、別に 分けるとか、何かたたき台をつくらせていただきたいと思います。そして、ゲノム指針 と同様に、12月15日水曜日の委員会で最終的なご議論をいただいて、とりまとめの方向 で考えております。  厚生労働省の委員の先生方は、引き続き臨床研究指針についてご検討頂くこととして おりますので、お残りいただきますようよろしくお願いいたします。 ○垣添座長  それでは、2省の合同委員会はこれで終了させていただきます。ありがとうございま した。                                   ――了―― 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:鹿沼(内線3804)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171