04/11/25 第9回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会議事録  第10回ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小委員会     第9回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会              第9回個人遺伝情報保護小委員会                    議事録 1.日時 平成16年11月25日(木) 14:00〜16:30 2.場所 経済産業省 本館17階国際会議室 3.出席者   (委員)  位田委員(座長代理)、宇都木委員、江口委員、小幡委員、         垣添委員(座長)、         勝又委員、鎌谷委員、具嶋委員、栗山委員、黒木委員(座長代理)、         佐々委員、高芝委員、武田委員、辻委員、富永委員、南条委員、         廣橋委員、福嶋委員、堀部委員、柳川委員、吉倉委員   (事務局) 文部科学省:佐伯 研究振興局ライフサイエンス課長               安藤 研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室長         厚生労働省:松谷 技術総括審議官               上田 大臣官房厚生科学課長               高山 大臣官房厚生科学課研究企画官 他         経済産業省:塚本 製造産業局次長               河内 製造産業局事業環境整備室長 4.議題  (1)遺伝情報等の個人情報保護を中心とする研究における倫理上の諸課題への対応     について  (2)遺伝情報等の個人情報保護における法制上の措置の必要性について  (3)その他 5.配付資料    資料1 「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」新旧対照表(案)    資料2 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する個人情報保護の観点からの法制化        について 6.議事 【高山企画官】  それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきたいと思います。  本日は文部科学省ライフサイエンス研究におけるヒト遺伝情報の取扱い等に関する小 委員会、厚生労働省医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会、 経済産業省個人遺伝情報保護小委員会の第6回目の合同開催となってございます。  本日、菅委員、豊島委員、橋本委員、藤原委員よりご欠席とのご連絡をちょうだいし ております。また、大山委員ほか、二、三の先生方がおくれられているということでご ざいます。  それでは、議事に入らせていただく前に、事務局より本日の委員会の進め方につきま してご説明させていただきたいと思います。  本日は最初に、先週末までにいただきました相当数のパブリックコメントがございま したので、その意見を踏まえまして、事務局の方で整理させていただきましたゲノム指 針の最終的な見直し案につきましてご検討いただきまして、その後におきまして、前回 に引き続き個人情報保護に係る個別法の必要性等につきましてご検討いただくこととし ております。  なお、指針の見直し案につきましては、今後、告示のスケジュールもございますの で、本日でとりまとめをお願いさせていただければと考えてございます。  また、本日は3省の委員会終了後、文部科学省及び厚生労働省の2省委員会、続いて 厚生労働省単独で委員会を開催することとしております。長時間のご審議となり、先生 方には大変恐縮でございますが、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、議事を進めてまいりたいと思いますので、以後の議事進行につきましては 座頭の垣添先生にお願いいたしたいと思います。 【垣添座長】  皆さん、こんにちは。お忙しい中をお集まりいただきましてまことにありがとうござ います。今、高山研究企画官からありましたように、本日も大変長時間になるかと思い ますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。  では、まず事務局から配付資料の確認をお願いいたします。 【事務局】  私からお手元の配付資料の確認をさせていただきます。資料ナンバーを振っておりま すのが2つございます。資料1、倫理指針対照表、資料2、この研究に関する個人情報 保護の観点から法制化についてということでございます。その他、机上配付資料として 幾つかお配りをしております。1つは、パブリックコメントの関係に関する意見の概要 と対応方針について。こちらの方、対応方針についてやや不確定な部分がございますの で、机上配付資料ということにさせていただいております。その次に、連結可能匿名化 情報の取り扱いについて、同一の法人の中に2つの機関があるというときの取り扱いに ついて、この委員会でもいろいろ議論になったものでございますが、配付資料を用意さ せていただきました。それから、医療関係の個人情報の関係で、医療機関等における個 人情報の取り扱いに関連するこれまでの議論及び前回に配られましたその関係の資料を おつけしております。また、前回の3省合同の議事録でございますけれども、大変恐縮 でございますが、12月2日までにご訂正等があれば記載のあて先に送付いただければと 思います。その後、確定し、公表したいと考えております。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。――きょうもたくさん資料がありま すが、もし何かありましたら事務局に申し出ください。  では、本日の議事に入ります。まず初めに、ゲノム指針にかかわるパブリックコメン ト意見を踏まえた見直し案について議論することにさせていただきます。資料につい て、事務局から説明をお願いします。 【事務局】  資料1に基づきましてご説明させていただきます。それと、机上配付資料のパブリッ クコメントが参考資料となりますが、資料1の3段表、指針案の方でまとめてご説明を させていただければと思います。  資料1、1ページ目につきましては、これは表現の問題で若干の修正をしておりま す。ちなみに、赤い色を書いてあるのが旧指針に比べて新指針の見直しの部分、今回青 い色が書いてある部分が、先般、先生方にいろいろごらんいただいた指針案と比べて直 している部分ということでございます。もともと書いてあるものを落としたりとか、移 動したりしてある部分もございますので、その辺については私からコメントをさせてい ただきます。  もう1つ、この指針に限らずほかの指針も含めた変更の共通的な考え方でございます が、細則の部分につきまして、本来、本則の解釈的なものが細則に来るわけなのです が、新しい規定を細則で行っている部分がありまして、それは法制上やはりおかしいだ ろう。そういうものは細則ではなく本則にすべきではないかというようなことがありま して、細則から本則に上げているというグループがございます。  あと、実行上、これは大丈夫だろう、個人情報保護法の趣旨を担保できるだろうとい うことで我々が整理していたものの中で、万が一ということもあるので、それも本則に ちゃんと書きなさいというような法制上の整備がなされたものがございます。例えば、 個人情報保護法は本人同意の部分を要件としている部分がございますが、これはインフ ォームド・コンセントで基本的に対応できるだろうということで、インフォームド・コ ンセントの中にいろいろな形で物を入れ込んでおりました。こういうこともインフォー ムド・コンセントでしなさいと。ただ、その部分については、もちろんインフォームド ・コンセントで書いているのですが、一方で、ちゃんと本人同意を求めなさいという指 針の文章も新たにつけ加えております。だから、二重にかかっているという感じでござ います。というのは、インフォームド・コンセント以外で入手できるケースが全くない わけではないのではないかというようなことも踏まえて、非常にレアなケースも踏まえ てやっております。ほかにもいろいろ、こういったものはほとんど想定されないなとい うものについても、万が一ということも考えて指針案に入れているものもあります。大 体そんな感じの直しであります。ほかに、パブリックコメントを踏まえていろいろ修正 をしているというのが、全体に共通した大きな流れでございます。  戻りまして、2ページ目のところをご説明させていただきます。2ページ目の (2) は、前回までは細則であったものを本則に上げたというものでございます。また2ペー ジ目の一番下が空白になっておりますが、海外との共同研究につきましては、別のとこ ろに項立てして新しくつくっているものでございますので、決して削除したというもの ではございません。  3ページ目でございます。個人情報の定義の関係でございまして、こちらは先ほどお 配りしました机上配付資料もごらんいただきながらご説明をさせていただければと思い ますが、現状は、1つの法人の中で試料提供機関と研究を行う機関がある。そのときに お互いが匿名化されて切れているという場合について、研究機関の方でそれを個人情報 とみなすかどうかというところについて、大分ご議論があったと理解しております。パ ブリックコメントでは、それは両方とも個人情報ということでやって、意見を付記する という形でやろうということで、付記をさせていただいたところでございます。パブリ ックコメントの中でも、正直申しましていろいろな先生方からこれに対していろいろな ご意見がございました。それを個人情報をみなさなくてもいいのではないかというご意 見もございまして、私どもも整理して、今、ここにお出ししているものについては前回 のものを基本的に踏まえた形で書いております。要するに、1つの法人の中で2つの機 関があります。それについては両方とも個人情報とみなしていきましょうという形で整 理をさせていただいておりますが、もう一方、両者の機関の間で匿名化がきちんとなさ れて、その間の行き来もないよというときについては、研究を行う機関の方は個人情報 とみなさなくてもいいではないかというような書き方をしているのが、もう1つの机上 配付資料でございます。  今の方を先にご説明してから机上配付の方をご説明させていただきますが、3ページ 目で、修正点といたしまして、基本的には大きなものはございません。 (2)で表現を明 確化したりですとか、パブリックコメントを踏まえて若干直しをしたりというような形 でございます。  もう一度、机上配付資料の1枚紙をごらんいただければと思いますが、個人情報の定 義については、今の資料と同じでございまして、「容易に」という部分は落としており ます。個人情報の判断に関する細則の部分も同じでございます。また、連結不可能匿名 化の部分についても同じでございます。一番下の細則のアンダーラインを引いていると ころが違ってまいりますが、連結可能匿名化された情報が、対応表を保有している当該 機関内にあるときは、その対応表が研究部門以外で厳密に管理されていること、当該機 関が連結に当たっての十分な安全管理措置を整えること、及び対応表と連結して研究を 行う場合その連結が経常的でないことが確保されている場合――要するに、対応がきち んと管理されていて、匿名化が本当に完全になされていますよという場合については個 人情報とはみなさない。その場合、研究部門については必要最小限の安全管理措置を定 めるなど、当該機関全体として適切な取り扱いを行うこととする。なお、ここでいう部 門というのは、例えば以下のとおりであるということで、病院、保健所、医学部、研究 所と書かせていただいておりまして、この辺はまた後でいろいろご議論いただければと 思っておりますし、今、実は内閣府の方にどうかというような話を申し立てているとこ ろなのですが、向こうもなかなか忙しいようで、きょうまでに回答は得られなかったも のですから、本日は引き続き両方をお出しさせていただいているという状況でございま す。  指針の方に戻りまして、ページをおめくりいただきまして4ページ目でございます。 海外との共同研究、これは先ほどあったものをこちらに移動しまして、あわせて、パブ リックコメントの中で、「本指針の考え方が遵守」というところが国によって大分違う ので、そこを余り押しつけるのはどうなのか、むしろ人間の尊厳及び人権が尊重されて いる精神の方が大事なのではないかというご意見があったことを踏まえて、「本指針の 考え方が遵守され」を削除しております。 (2)も基本的に同じような形で考えておりま す。  5ページ目でございますが、 (5)、研究期間だけでなく研究終了後も個人情報の取り 扱いに関するということで、パブリックコメントでこのような意見があって、それを踏 まえての修正でございます。  6ページ目でございます。研究を行う機関の長に関する細則が6ページ目の上の段の ところでございました。ただ、こちらも細則という話ではなかろうということで、後の 方で定義づけをさせていただいております。  6ページ目の下の方については、表現をより明確にして、こういう形でただし書きで 書かせていただいております。  7ページ目でございますが、個人情報保護法21条の従業者の監督を踏まえて、こちら にも規定をさせていただいているものでございます。また、7ページ目の真ん中の組織 的安全管理措置の部分ですが、青では書いてございませんが、前は個人情報及び匿名化 された情報というように、匿名化された情報も入っておりましたが、匿名化された情報 は個人情報ではないということから、パブコメでご意見がありまして、それを踏まえ て、安全管理措置の対象からは外したというものでございます。  8ページ目でございます。死者に関する個人情報に関する細則ということで、こちら も個人情報保護法の附帯決議を踏まえて表現を若干修正させていただいております。  10ページ目でございます。倫理審査委員会絡みのものでございますが、国内における 共同研究の関係で、「他の参加機関が機関特有の」云々のところで、参加機関ではなく て参加機関の長であろうというご意見がありまして、そこで「長」というのを加えてい ます。これもパブコメに基づいた修正でございます。  11ページ目でございますが、(13)と(14)、個人情報保護法を踏まえた規定が書いてご ざいます。この辺、先ほど申しましたように、基本的にはインフォームド・コンセント の中できちんと利用目的も特定されているだろうということで、わざわざ指針の中に書 かなくてもいいのではないかというようにしておりましたが、そういったものも基本的 に全部書くべきではないかということで、個人情報保護法に倣っていろいろなものを入 れ込んであるというものでございます。  12ページ目につきましても、(15)、(16)、(17)、それぞれ書いてございます。(15) は、余りこういったケースはないのではないかと思っていたのですけれども、そういっ たものも含めて個人情報保護法の中にある規定をそのまま踏まえて、中に入れ込んでい るという形でございます。  12ページ目の(19)、(20)につきましても同様に、インフォームド・コンセント等でい ろいろ担保してきたものも含めて書くべきではないかということで入れております。  13ページ目でございます。(21)も、基本的にはインフォームド・コンセントで今まで は担保していたものを指針の中にきちんと書きなさいということで、法制的なもので入 れたというものでございます。(22)は個人情報の部分で、前は遺伝情報という言い方で いっていた部分なのですが、今回、遺伝情報と個人情報を両方とも分けてきちんと担保 しなさいということで、双方ともに規定するという形で、遺伝情報についてもこういっ た開示の規定がございますし、個人情報についても開示の規定を設けたというものでご ざいます。  15ページ目、(26)、(27)、(28)とございますが、こちらも従来はインフォームド・コ ンセント等で担保してきたものを、納得だけの担保では不十分だということで入れ込ん だものでございます。  16ページ目の(31)でございます。こちらはパブリックコメントの結果を受けまして、 新しく規定を設けたものでございます。16ページ目の真ん中の段の細則の部分、こちら も個人情報保護法18条3項の利用目的の変更の通知につきまして、それを踏まえて規定 を置いたものでございます。  続きまして17ページ目でございますが、これもパブリックコメントの結果を受けて若 干の修正をしているものでございます。  18ページ目でございます。真ん中、「試料等の保管の方法」が青で入っております が、これもパブリックコメントの結果で追加をさせていただいたものでございます。  19ページ目の (8)、こちらも個人情報保護法23条で規定されているものをそれぞれ入 れ込んでいるというものでございます。  21ページ目でございます。 (3)のところで、従来、個人情報管理者の管理するものの 中にインフォームド・コンセントの同意書が入っていたのですが、これもパブリックコ メントの中で、同意書までの管理はあれなのではないかというようなことがあって、そ こを削除しているものでございます。  続きまして24ページ目、 (2)でございます。左側をみていただければわかりますが、 こちらは以前、細則で掲載していたものでございますが、細則を本則に上げたものでご ざいます。 (3)につきましては、それぞれインフォームド・コンセントを適正に取得す べきということを個人情報保護法とか、過去の事例を踏まえて規定させていただいてお りますし、また細則もそれに応じて追加させていただいています。その下のところにつ きましても、個人情報保護法を踏まえて追加させていただいた条文でございます。  赤いところなのですが、ここも少し議論になったところなのでコメントをさせていた だきますが、24ページ目の (5)でございます。インフォームド・コンセントの同意の取 得が医療従事者に限るかどうかというようなところで、こちらもかなりご議論になった ところではないかと思っております。いろいろな議論の中で、私どもの文章もわかりに くい点があって、ご不明の点もあったのかと思っておりますが、 (5)で書いてあります ように、研究責任者が試料等の提供者に対して、みずからがインフォームド・コンセン トを受けるのに必要な業務を実施することができない場合には、原則として試料等の提 供が行われる機関の研究者等のうち、そういった研究の内容、意義等について十分理解 しているものに、研究責任者の指導・監督のもとで、当該業務の一部または全部を行わ せると。要するに、機関の中のものであれば、この指針上は、縛りというのは研究の内 容、意義等について十分理解しているとか、そういったことが入っております。ただ、 基本的には研究責任者とかそういった方がやれればいいのですが、その辺は若干広めて も構わないというような形になっているのではないかと思っております。  25ページ目の (6)は、以前は細則で書いてあったので、 (5)の解釈みたいな形でとら えられていたのではないかと思いますが、 (6)は試料等の提供が行われる機関に属する 者以外の場合、 (5)は行われる機関に属する者の場合というような形で、 (6)を本則に 上げたことによってそこを少しわかりやすくしたものでございます。研究責任者は、 (5)の規定にかかわらず、試料等の提供が行われる機関に属する者以外の者に、インフ ォームド・コンセントに必要な説明を行わせることができる。この場合、必要に応じ研 修の機会を確保し、その者の業務の範囲と責任を明らかにする契約を結ぶことにより、 当該者を履行補助者とすることができる。また、試料等の提供者から同意を受けること を含めて行わせる場合には、履行補助者は、原則として、医師等々の法律により守秘義 務が課せられている者でなければならないということで、履行補助者というのは医療従 事者でなければいけないよといっている部分が、前は細則の中で書いていたために、こ れが機関の中の人についても適用されるものではないかというような読み方がされてい たのではないかと思うのですが、そちらを外しまして、機関の外の人についての規定だ というようなことで書かせていただいております。  あわせて、インフォームド・コンセントをとる個人情報の内容によっては、履行補助 者は機関の外であっても基本的には守秘義務が課せられている人ではないかと思ってい るのですが、場合によっては、すべてがすべてそういった方でなければいけないのかど うかというところが議論があるのかなと思いまして、「原則として」という言葉を今回 追加させていただいております。先ほどコメントさせていただいたところとここが特に パブリックコメントでかなり意見が寄せられたということもございまして、今、規定を 案として出させていただいておりますが、ぜひこの辺もご議論をきょう賜れればと思っ ております。  続きまして、また本文の方に戻りますが、27ページ目でございます。遺伝情報と、あ わせて個人情報というのが入りましたので、「並びに個人情報」ということでつけ加え させていただいております。  28ページ目、(10)、単一遺伝子疾患等というのがどういった場合かを括弧書きで書い てある。これもパブコメの結果を踏まえた修正でございます。  30ページ目のところで補足させていただきますが、真ん中で、前は「十分な意義がな く」というような表現があったのですけれども、これを法律の表現にそろえてそこの文 章を落としたというものでございますし、30ページの下の部分も同じような形で表現を 直させていただいております。基本的に法律の文言にそろえるような形で書かせていた だいております。  31ページ目も、見直しにあたっての考え方のところに書いてございますが、理由を説 明するに際しての留意点を示したらいいですとか、研究における遺伝情報の開示につい て、それぞれ法律に準ずるような形で示させていただいているというものでございま す。  続きまして32ページ目でございます。提供者以外の人に対する開示に関する細則とい うことでございますが、提供者以外に関する開示について、個人情報保護法23条で規定 されている部分がございますので、それを踏まえて整理をさせていただいているという ものでございます。  続きまして、ちょっと飛びまして36ページ目でございます。細則2、細則3と書いて おりますけれども、こちらも幾つか表現を追加させていただいておりますが、基本的に はこれも個人情報保護法の中でそれぞれ規定されているものを入念的に書かせていただ いているというような形でございます。37ページ目も同様のものでございます。  39ページ目でございます。用語の定義の関係でございます。ヒトゲノム・遺伝子解析 研究の定義でございますが、前は細則でいろいろ書いていたのですが、細則の部分を本 則に上げたりとかしまして、青い部分、基本的には前は細則だったもの、これを本則に 移動したというものでございます。若干細則で残すべきものは細則で残している。パブ コメ等の結果を踏まえて直した修正でございます。  43ページ目でございます。研究を行う機関の長。前は、もっと前の方、まさに最初の 方に細則で書いていたものですが、細則マターではないということで、ここで本則でき ちんと定義として書かせていただいたものでございます。  45ページ目でございます。研究実施前の提供試料等、こちらも若干修正をさせていた だいているものでございます。  一応以上でございます。先ほどいいましたような、冒頭のような考え方でいろいろ直 しをしている部分と、あと論点としては先ほどいった2つの点が特にあろうかと思って おります。あとパブコメにつきましては、皆さんのお手元に机上配付資料でお出しさせ ていただいておりますが、ここにあった意見の中で、修正すべきものは修正し、また質 問は結構ございましたので、そこについてはなるべく答えるような形では書いておりま すが、いずれにしましても、私どもの中でもう少し表現等を精査して、最終的にホーム ページで回答したいと思っております。説明しますと時間が限られておりますので、も し何かございましたら、また別途いろいろご示唆をいただければと思っております。  以上でございます。 【垣添座長】  ありがとうございました。今回のパブリックコメントを受けた後で修正された青字の 箇所を中心にしまして、全体を通してご意見をお伺いしたいと思います。今、事務局か らご紹介いただきましたように、資料1で青と赤で修正が入っておりますけれども、そ の中で特に連結可能匿名化の個人情報の件について、インフォームド・コンセント取得 者について等がこれまでいろいろご議論いただいたところでありますが、その辺のこと も含めて、全体を通してご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 【廣橋委員】  連結可能匿名化情報の取り扱いについてなのですけれども、1つの施設の中でも研究 所、病院と分かれていて、その間できちんと匿名化をして研究を行うということが非常 に重要でありますので、むしろそれをきちんと行うことによって、個人情報と扱わない とする新しい1枚紙で出された案の方が、実行上、よりすぐれているのではないかと私 は感じました。 【垣添座長】  1つの施設内で2つの機関がある場合に、完全に匿名化された情報であれば、それは 個人情報として扱わないという考えがよろしいということですね。  ほかにございましょうか。 【位田座長代理】  私も今の廣橋委員の考え方に賛成というか、支持をいたします。ただ、机上配付資料 の連結可能匿名化情報の取り扱いについてというところの細則の下線の引いてある部分 で、十分な安全管理措置を整えるという、これが一番重要な要件だと思うのです。問題 は、対照表の7ページのところで、匿名化された情報は個人情報でないということにし た関係で、安全管理措置の対象から外してしまったと。1枚紙の方では安全管理措置を 整えろといいながら、対照表の7ページでは、個人情報でないから安全管理措置の対象 から外すという規定の仕方でうまくいくのかなというのが……。こういう安全措置はか からないことになってしまいますよね。そうすると、1枚紙でいう十分な安全管理措置 と同じ言葉が使ってあるので、そこのところをどのように整理するかという問題が出て くるかなと思います。趣旨は私も1枚紙の方でいいと思うのです。 【事務局】  何でも匿名化された情報はどうでもいいよというあれはないのですが、考え方として は、対応表をきちんと管理して、これが外に出ないようにしようということになると、 匿名化された情報の方が個人情報ではなくなってきてしまいますので、この指針として もそうせざるを得ないのかなと。匿名化された情報と対応表が連結されるというような ことになると、これまた全然話が違ってまいりますので、そこは絶対遮断をしてしまう ということがきちんとなされた上でという意味で、安全管理措置は対応表等についての 管理をきちんとやってくださいという意味合いで整理をしたつもりなのでございます が、もしその辺、ご意見があれば、いろいろ……。 【位田座長代理】  だから、鶏か卵かみたいな感じになるわけですよね。そこの規定の仕方だけの話なの ですけれども……。 【垣添座長】  資料1の7ページの見直しの考え方の一番下の文章は、1枚紙と相反する形になりま すよね。これは何かうまく整理はできますか。中身はこれでよろしいというご意見をい ただいていますが。 【事務局】  今、セットで両方をみられたので、片方で緩くしていて、もう一方でも緩くしている のではないか、これは何かおかしいのではないかというような感じだと思います。理屈 でいってくると、それぞれそういうことになるのかなと思って、死者の情報のように匿 名化された情報についても、個人情報とはちょっと違うのだけれども、そこはある程度 の配慮はしてくださいねという書き方は、もしかするとあるのかもしれませんけれど も、ここの部分は、それぞれ別々に考えていて、こういった形に規定したのではないか と思っています。 【辻委員】  今の問題は、匿名化された情報ではなくて、対応表については厳密に管理するという ことをつけ加えるなり盛り込むなりして対応することはできないのでしょうか。問題は 対応表であって、その後の匿名化された情報ではないと思うのです。 【垣添座長】  安全管理の内容は、対応表の管理であるということですね。 【事務局】  おっしゃるとおりです。1枚紙の方はそういった考え方でございます。 【辻委員】  ですから、それに合わせる形に、7ページの方に少し盛り込むことができればいいの ではないかと思います。 【事務局】  先ほどの匿名化された情報で、もう1つは連結不可能匿名化もこの中に入っているも のですから、連結不可能匿名化についてはもともと個人情報ではないとなっていたの で、それも全部ひっくるめてなってしまったもので、理屈上の整理と見た目の問題とが ちょっと違っているのかなという感じはしております。 【垣添座長】  今の点は、相反しないように文章上の手直しを考えてください。  ほかにいかがでしょうか。 【黒木委員】  履行補助者も1つの議論になった点と先ほど説明がありましたが、25ページです。見 直し案のところで、履行補助者は原則として医師、薬剤師等の刑法第 134条、国家公務 員法第 100条その他の法律により業務上知り得た秘密の漏えいを禁じられている者とな っておりますが、今、国立大学は法人法の中に入ったわけで、国家公務員ではないわけ です。この場合、国立大学法人法の中に職業上知り得た秘密というのが書いてあるかど うか、今、記憶がないのですけれども、そこも含めての話になってくるのでしょうか。 【安藤室長】  国立大学法人法の中にも、職務上知り得た秘密の守秘義務というものが規定されてお りますので、国家公務員法と同様に考えればいいのだと思っております。 【事務局】  ちなみに、万が一誤解があるとあれなものですから、あくまで機関の外ということで ございますので、機関の中の人であれば、 (6)ではなくて (5)で読むということでござ います。念のためということで……。 【宇都木委員】  10ページの複数機関が参画する共同研究という点なのですが、一括して審査を行うと なっているのです。この一括してということがどういう意味かなのですが、普通、一括 してというと、各参加共同機関の情報を中央機関が集めて、それも審査するというよう になってしまうと思うのですが、ここはどのように考えておられるのかというのが1 点。  それと、それを受けて迅速審査ができる形になっているのですが、細則の2項では、 機関の長が迅速審査であるという決定をするというようになってしまうのですが、倫理 委員会の方では、迅速審査に回すか回さないかというのは倫理委員会の判断でしたか ね。その辺が整合性が合わないのではないかという点と、2点。 【事務局】  順番、恐縮ですけれども、後者の方は23ページ目の (5)の規定ではないかと思います が、倫理審査委員会は、その決定により、委員長があらかじめ指名した委員またはその 下部組織による迅速審査手続を設けることができる。その他、細則がいろいろ書いてあ るところではなかろうかと思いますが、倫理審査委員会であらかじめ迅速審査の手続の やり方をきちんと定めておくということではないのかなと。個別の事案について、これ を機関特有の問題がないと認めるかどうかというところについては、一々委員会を開い てやるということとか委員長が決めるということではなくて、参加機関の長が決めると いうことなのかなと理解をしているところでございます。  あと、前半の部分は……。 【宇都木委員】  迅速審査にするかどうかというのは、細則に書いてある条項に当てはまるかどうかと いう判断を機関の長がするというのはちょっとおかしいですね。やはり倫理委員会の委 員長が判断する。現実な動きはそうなのではないかと思うのです。 【垣添座長】  最終的に機関の長に伝えて、機関の長はそれを承認するという形ですよね。でも、直 接の判断は倫理審査委員会及びその長がするということ。 【宇都木委員】  最終的には機関の長が迅速審査にという指定をするということになりますよね。 【垣添座長】  普通はそのように扱われているのではないですか。 【事務局】  ちなみに倫理審査委員会の方々の権利を担保するという意味合いで、迅速審査の結果 を委員に対して知らせて、その上で委員がそれはおかしいという話になったら、そこで また再び倫理審査委員会をやり直せるというような形の、後から担保できるという規定 も設けているということではないかと思っています。 【位田座長代理】  今のご説明の考え方は倫理審査委員会の独立性とは反対になってしまうと思います。 基本的に迅速審査にかかわる部分は、第1次的な判断は倫理審査委員会が行う。それに 対して何か問題があると機関の長が考えるときには、長が判断をする。倫理審査委員会 は決定機関ではなく、基本的には諮問機関ですから、権利とかそういう話ではありませ ん。そういうのが倫理審査委員会の地位だと思いますので、今のご説明だと、これまで の倫理審査委員会の考え方、もしくは基本的に倫理審査とは何かというものとは少し違 うのではないかと思います。 【安藤室長】  今ご指摘の規定は、参加機関の長が主語になったのは、研究への可否を判断というと ころがあったものですからこうなったのですが、先生のご指摘のところを反映するとす れば、例えば、倫理審査委員会の長と相談をするということをここに入れた上で、相談 の上決めるとか、そういう形が1つあろうかと思います。 【位田座長代理】  相談というのは変じゃない? 【安藤室長】  協議でもいいのですが、つまり勝手に決めるということを避けると。 【垣添座長】  機関長の諮問機関として倫理審査委員会があって、そこで迅速審査でいいかどうかを 判断して、迅速審査にするといった結論をまた機関長に報告して、それを承認する、し ないという形になる。ですから、相談ではないという気がします。 【高山企画官】  研究進展にかかわってご議論いただいたところでして、共同研究でそれぞれ審査しな ければいけないかどうかということについては、もう少し迅速的に合理的にできる方法 はないかというご議論の過程で、こういう審査の方式が出てきたかと思います。前回の 委員会で、一部資料として配られたものもございまして、その場におきましては、前半 の他の特定機関が研究の推進及び管理を担う場合には、他の機関の要請に応じて特定機 関に設置された倫理審査委員会が研究計画全体について、全部を一括して審査を行うこ とができるとし、その審査の妥当性については、他の参加機関の倫理審査委員会が機関 特有の問題がないと認める場合には、迅速審査により機関の長は共同研究に参加する可 否を判断することができると規定するというような考え方で進んでまいりました。た だ、先回、パブリックコメントをさせていただいた文言と今回のところで、パブリック コメントのところをみますと、先ほど安藤室長がいわれたように、研究に参画する、や るかどうかは機関の長が決めるということもございまして、最後、参画するかどうかの ところは機関の長の判断だよということをかなりこちらの方に書いたと思います。倫理 審査委員会との関係も少し整理させていただいて、修文させていただいて、その審査の やり方がいいかどうかは、倫理審査委員会の意見を踏まえて長が最終的にそれに参画す るかどうか決める形ではないかと思います。 【勝又委員】  実際の審査の流れは、基本的には研究者が機関の長にまず申請して、それを委員会に 回します。そのときに機関の中で、大抵の場合はどういうものが迅速審査の対象になる かというのは、あらかじめかなり規定されたりしているところが多いと思うのです。そ の中にそういうものを基本的には含め得るとしてやっているところが多いのではない か、あるいはこれからもそのようにできるのではないかと思うのです。そうすると、そ れを一々実際に機関の長が、具体的にこれがそうだ、ああだというのを判断するという のは大変難しいだろうと思います。ですから、むしろそれは機関ごとで実際にどういう ものを迅速審査にするかということをきちんと整理しておけば、あとは今のような流れ で倫理委員会が判断し、それがもし倫理委員会の中で問題だといったら、そこでフィー ドバックをする。最終的な決定は当然機関の長がする。こういうことが一番自然ではな いかと思います。 【垣添座長】  皆さん、ご指摘の点は同じではないかという感じがしますの。他にありますか。 【事務局】  今のご指摘の点を踏まえまして――さっきの私の説明の仕方が大変悪くて申しわけご ざいません。参画機関の長が、機関特有の問題がないかどうかという部分についてみる ということだけで、あくまで迅速審査でどうこうとか、そういったところについて決め る権限というのは、倫理審査委員会であり、倫理審査委員会の長が決めるという形で、 もう少し文章もそういった形で書いておかないとわかりにくい形なのかなと思いますの で、そこは修文を考えたいと思っております。 【位田座長代理】  基本的な考え方は多分それでいいと思うのですけれども、ただ、この2のところで、 主要な機関の倫理審査委員会が研究計画全体について一括して審査を行うことができる と。そのときに「他の参加機関の要請に応じて」という表現が入っているのはどうなの かなと思うのです。つまり、逆にいえば、他の参加機関の要請がなければ――もちろん 主要な機関は当然全体を審査しないといけないのですけれども、他の機関も研究計画全 体をやるということになるのか。私が考えていたイメージというのは、多施設共同研究 の場合には、主要な研究機関が全体の研究計画を審査して、それぞれの研究機関は、う まく切り分けられるかどうかわかりませんけれども、担当する部分についてのみ審査を すればよろしい。したがって、迅速審査の可能性もあり得るという話ではないかと思っ ているのです。それぞれの研究機関は、自分のところで全く倫理審査をやらないという わけにはいかないと思いますので、審査はもちろんやるのだけれども、根元のところは やっているから、自分のところの部分については、そこの部分だけ審査をする。しか し、それは基のところはやっているから、委員長がこれでいいということであれば迅速 審査ができる。そういうイメージではないかと思っているのです。 【垣添座長】  そのとおりだと思うのですが、今の要請に応じてというのは、その場合、どうしたら よいですか。 【位田座長代理】  だから、そこがよくわからないのです。 【垣添座長】  これは何らかのもう少しわかるような修文で。 【事務局】  はい。 【垣添座長】  今の点も含めて、ご指摘の幾つかの点をわかるような形で整理いたします。 【宇都木委員】  もう一度繰り返します。一括してという事柄の意味を細則で書くなり、何かはっきり しておかないと、随分いろいろな問題を生じる。 【垣添座長】  そうですね。要らないのかもしれませんね。  ほかにいかがでしょうか。 【吉倉委員】  ついでなのですけれども、今の文章のところですが、倫理委員会が研究全体について はやる必要があるし、各研究機関でもやる必要があるので、例えば設置された倫理委員 会が全体研究計画について審査を行うことができるとか、一括というのではなくて、全 体にかかわる部分についてできるという文章にしたらどうかというぐあいに修文の提案 です。  もう1つ、今、フラッグを挙げたのは、4ページの海外研究のところなのです。4ペ ージの (2)のアの、「相手国において、本指針の考え方の適用が困難な場合は」となっ ているのですが、上は、原則として本指針の考え方に従って研究を行うこととします と。それで、考え方の適用が困難、これは明らかに矛盾にしていますよね。2番目の「 考え方」は削除した方がいいのではないでしょうか。「本指針の適用が困難な場合は」 とした方がいいのではないかと思います。 【事務局】  確かにおっしゃるように、整理が不十分だったかと思っております。気持ち的にいう と、「考え方の適用が困難な場合」というところが、法令とか、それがそのまま適用は 困難なのだけれども、もう少し幅をもたせたようなイメージで書いてあるのですが、上 の方にも「考え方に従って研究を行う」と書いておりますので、普通読んだら全く同じ 意味にとられますので、先生がおっしゃるように、むしろ後の方の「考え方」を削除す る方がいいのかなと思っております。 【垣添座長】  よろしいですね。では、今の点はそのように修文ください。吉倉委員、よろしいです か。――ありがとうございます。 【高芝委員】  内容的なものというよりは表現の方の問題になるのですけれども、今回、修正をいた だいたところといいますか、追加いただいたところの11ページから15ページで、法律の 内容を入れ込んできていただいているわけです。法律の方は、書きぶりとしては個人情 報取扱事業者ということで、組織をイメージしている。その意味では、組織の中の特定 の役割といいますか、特定の地位の人の責任なり権限、義務とかそういうことを想定し ていない書きぶりになっているわけなのですが、今回、11ページから15ページで入れて いただいた部分が、研究を行う機関の長の責務というところで入れていただいている。 この指針は、意味はよくわかるのですが、特色として、組織として扱うよりは、それぞ れの地位にいる方の役割をはっきりさせることによって、よくわかりやすいものにしよ うというようにつくられている。これはすごくよくわかるのです。  ただ、法律をこの中にも入れてくるときに、もともとのつくり方の違いはもう一回考 えた方がいいのではないかと思っています。研究機関の長というところに入れれば、そ れはイコール組織全体とはなりにくい。組織の中の長の方の役割を記載したところにな るのではないかと思うので、例えば12ページをみると、(16)のところで、研究を行う機 関の長は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。これは研究機 関の長の責務だけではない。やはり研究機関ないしすべての研究者全体の責務のように 思うところもあるものですから、入れていただく方向はとてもいいと思っているのです けれども、書き方をもう一度検討いただければというお願いです。  意見として以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。確かに(16)などはご指摘のとおりだと思いますが、中身に よってもう少しはっきりさせることができるのではないかと思いますが、いかがでしょ うか。 【事務局】  今回の倫理指針につきましては、すべての個人情報関係のもろもろの規定の責任者と して機関の長という形で置いて、一番トップに課している。それぞれの研究責任者とい う形ではなくて、最終的にはその機関の長ということで課すべきなのではないか。そこ からもちろん実務上としては権限をおろしておいて行われるということは構わないので はないかと思っておりますが、個人情報保護法においても事業者ぐるみという形で考え ているところを踏まえて、今回、機関の長というような形でさせていただき、要する に、全体として機関ぐるみで対応しているということを意図して、こういった形に規定 させていただいたところでございますので、ある程度、法を踏まえた形でのことではな いかと思っております。 【位田座長代理】  趣旨はよくわかりますが、それを言い始めると、研究そのものも研究機関の長がやる という形になってしまうので、今、高芝委員がご指摘されたような部分は、研究機関の 長はこれこれこういうことを確保すると。例えば個人情報を取得しないことを確保する とか、そういう話だと思うのです。だから、長に課されている義務を下まで全部おろす という話よりは、むしろ長に課されているのはそれを確保する義務である。それは研究 機関の長という資格においてそうだと思うのですけれども、そこを少し言葉を変えられ れば、中身は一緒になると思います。 【宇都木委員】  今、高芝先生のいわれたのは、法律では事業者というのは法人であると。 【高芝委員】  組織という。 【宇都木委員】  組織である。だから、この長というのは基本的に全部組織にしておいた方がいいとい う……そうではないのですか。 【高芝委員】  そういう意見ではないのです。この指針は、組織をあて名とするよりは、組織の中の それぞれの役割の地位の人、立場の人をあて名にして、役割をはっきりさせようという 視点をもっているのです。それはすごくわかりやすいし、現場でワークしているという のは十分理解しているのです。ただ、それを機関の長とだけすると、なじまない部分も あるのではないかと思うものですから、もう一度そこをチェックしていただければとい う意見だったのです。 【小幡委員】  確かに徹底していないところもあるのかなというのは、例えば19ページのところ、こ の辺はずっと研究責任者、インフォームド・コンセントとか計画はもちろんそれでよろ しいのですけれども、19ページの (8)の外部提供の話は研究責任者なのですよね。これ も法律はあるわけですけれども、法律に合わせるという合わせ方のところで、機関の長 とした、そういう合わせ方を今のところではなさったのだと思うのですが、必ずしもそ ぐわない場合もあるので、そこら辺がいろいろなものが出てくるので、全体として見直 しておいた方がよいかなという感じはあります。 【垣添座長】  これは結局、研究責任者の責務と機関の長の責務で、基本的なつくりは機関の長に責 任を求めるという形でつくられている。その点は皆さんよく納得されているかと思いま すが、今の全体としてみるとその辺の整理が、例えば12ページの(16)などで、明らかに 現実をとらえていない感じがしますので、少し全体を見直していただければありがたい と思うのですが、それでよろしゅうございましょうか。  そのほかにご意見ありましょうか。 【位田座長代理】  いくつかあるのですが、まず5ページの (5)です。研究終了後というのはおっしゃる とおりなのですけれども、ある程度期間を決めておかないと、結構大変になるのではな いでしょうか。例えば一定期間はとか、妥当な期間はということにしておかないと、研 究している期間はそうですけれども、研究終了後は一定期間はとか、何か限定しておか ないと、未来永劫続くという感じがします。 【垣添座長】  今の点はよろしいですね。期間を限定するような修文をするということですね。  その次、お願いします。 【位田座長代理】  12ページの先ほどのところのすぐ下なのですけれども、(17)の個人情報を取得した場 合に利用目的を通知し公表するというのは、具体的にどういうケースが考えられるのか なと。例えばインフォームド・コンセントをとって、提供者から血液、もしくは何らか の試料をいただいて、それを解析したときに個人遺伝情報がわかった。それはこれに当 たるのかどうか。インフォームド・コンセントをするときにはいろいろなことを全部説 明して同意しているわけですから、(17)には当たらないと思いますけれども、こう書い てしまうと、そのたびごとにこういうことがわかりましたよという、その利用目的を通 知しないといけないというと、何となく煩雑になるかなという気はするのです。趣旨は よくわかるし、確かに個人情報保護法についてはこう書いてあるので、これも書き方を 考えていただいた方が、つまり現実にどういうケースがあるかというのを考えていただ いた方がいいかなと思います。 【垣添座長】  よろしいですね。 【事務局】  はい。 【位田座長代理】  それから、16ページの真ん中辺の(31)、これは同意書を責任者から個人情報管理者 等、厳格な管理が可能な者に管理させるということなのですが、それに対して21ページ の真ん中辺の (3)で、個人情報管理者が対応表を管理するのですけれども、同意書につ いては、これを管理する規定を削除したというのは、管理しないという趣旨なのでしょ うか。どっちにしても、見直しにあたっての考え方の欄なのですけれども、――この6 の(28)は多分6の(31)だと思うのですが――その辺が若干齟齬しているような気がする のです。 【安藤室長】  位田委員おっしゃいますように、インフォームド・コンセントの同意書の管理は、も ともと21ページの (3)に入っておりました。それで、少し整理をしたのですけれども、 匿名化にかかわる管理、要するにここに書いてある対応表の管理、これは個人情報管理 者に限定してもいいだろうと。ただ、試料の提供に当たっての本人同意の点について は、匿名化ということに限定されるものではないものですから、それは適切なものに行 わせればいいのではないかということで、個人情報管理者の規定から切り離して別途立 ててはどうかという提案でございます。 【位田座長代理】  わかりました。それであればよくわかりますが、パブリックコメントの結果を受けて というのは、どこの部分かよくわからないところもあって……。そういうご説明であれ ばわかりました。  それから、24ページですが、真ん中の (3)の必要以上の情報に接することがないよう に配慮しなければならない。その「必要以上の情報」という書き方はどうなのでしょう か。だれが必要以上と判断するかという問題だと思うのです。つまり、同意を受けると きに不安に陥らせてはいけないということですから、その趣旨がはっきりさせられてい ればいいので、情報が必要以上かどうかというのを書くと、研究者もしくはお医者さん が、これはあなたにとって必要ではないからといってしまうことにもつながりかねない と思うのです。「必要以上の情報に接することがないように」というのは削ってもいい のではないでしょうか。ここの部分だけ。防ぐために配慮しなければならないとか。 【垣添座長】  そうですね。それで問題ないような感じがします。 【事務局】  そういった方向で考えさせていただきます。 【位田座長代理】  これは非常に細かいことですけれども、31ページの見直しにあたってのところの(19) と書いてありますけれども、これも(22)の間違いでは……。 【垣添座長】  そうですね。改定されたときに数字が動いていないのだと思います。ほかも全体通し てもう一度見直していただくようお願いします。 【具嶋委員】  何人かの研究者と話したのですが、40ページの一番下の2の1のところで、偶然の研 究により遺伝情報が得られた場合のところですけれども、ちょっとわかりづらいといわ れていたのは、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究目的での使用、適切に管理して保存、匿 名化して廃棄する等」、「等」が1つありますよね。「その試料等の取り扱い等」で3 つ出てきて、この場合に、廃棄するだけではなくて、これからの医療にとって重要な遺 伝情報がみつかった場合は、逆にそれを例えば診断薬として医療に利用するということ も倫理審査委員会が判断したら利用していいのかという意見があったのですけれども、 それはそうとってよろしいのでしょうか。廃棄だけにするのか、「等」が幾つもついて いるので、産業上の利用も考えていいのかどうか。 【安藤室長】  たしか以前もそのようなご指摘をここの部分にはいただいておりまして、ここでは使 用と管理と保存と廃棄ということで、幾つかのオプションを示して、どの扱いにするか は倫理審査委員会に諮った上で決めるという、文章上はそういう構造になっておりま す。 【具嶋委員】  使用のところで、産業用の利用ということも可能だということですね。 【安藤室長】  はい。そのように考えております。 【具嶋委員】  わかりました。 【安藤室長】  先ほどの1点だけ、位田委員のコメントで確認だけさせていただきたいのですが、24 ページの「必要以上の情報に」ということですけれども、ここで書いてあるイメージ は、実際に提供者からいろいろなアンケート調査票をいただくといった場合に、調査票 を回収するような人がその場ですべての情報に接する必要はないのではないか。調査票 は封筒に入れて回収をしてしまえばいいわけで、提供を受ける当該者がその場でいただ く情報に必要以上に接しないようにということで書きたかったものでございます。 【位田座長代理】  それだと、主語と目的語がはっきりしないので……。ですから、研究者の側から読む と、そのように読もうと思えば読めると思うのですけれども、提供者の側から読むと、 私にとって必要以上の情報かどうかというように読めますから、そこは研究者がとか、 もしくは提供者がとか……。 【安藤室長】  今の趣旨だけご理解いただければ、文章をさらに工夫させていただきたいと思いま す。 【垣添座長】  よろしくお願いします。  ほかにいかがでしょうか。――よろしゅうございましょうか。  それでは、資料1に沿ったこれまでのご議論を踏まえた修文とパブリックコメントを 踏まえた見直し等の議論は、一応ここで打ち切りにさせていただきまして、本日ご指摘 いただきましたいろいろな点に関する修文に関しましては、座長と座長代理と事務局に ご一任いただけますでしょうか。               (「異議なし」の声あり)  よろしくお願いいたします。  それでは、もう1つ、後半の遺伝情報等の個人情報保護における法制上の措置の必要 性の議論に移らせていただきます。時間が限られておりますけれども、前回に引き続い てもう少しご議論いただければと思いますが、まず資料に関して事務局からご説明をお 願いします。 【事務局】  資料2、ヒトゲノム・遺伝子解析研究等に関する個人情報保護の観点からの法制化に ついて、この資料に基づきましてご説明をさせていただきます。  この資料ですけれども、基本的には先般お出しさせていただいた資料、論点的なもの を書いた資料がございました。それと先日、11月2日に先生方からたくさんの貴重なご 指摘をいただきまして、そういったものをできる限り盛り込むような形で整理させてい ただいたものでございます。  資料の構成でございますが、まず最初に、個人情報保護の法制化の議論の前に、個人 情報保護の必要性についてはどう考えるのかという話をしまして、その後、今回の研究 指針でどういった見直しをしているのかというのを前提的な話としてさせていただきま して、その上でこの法制化についてどう考えるのか。また、特に中長期的な視点のご議 論もございました。そういったものはどうなのかといった形で資料をつくらせていただ いております。  最初の1ページ目、ヒトゲノム・遺伝子情報に関する個人情報保護の必要性でござい ます。個人情報保護法の規定等々、最初の3つの○が書いてございますが、センシティ ブ情報に関する個人情報保護法の規定といたしましては、適正な取り扱いの厳格な実施 を求められる個人情報について、保護のための格別の措置が求められていることという 規定が法律の中にございますし、また附帯決議ですとか閣議決定の基本方針、そのよう なことが盛り込まれております。また一方で、個人情報保護法の中では、学術機関等で の学術研究については法の適用除外というようになっているところでございます。こう した中で、ヒトゲノム・遺伝子情報についてどう考えるのか。これはおおむね先生方の ご意見についてこうではないかなということで書かせていただきましたが、ヒトゲノム ・遺伝子情報については、個人情報保護の必要性が高いという情報ではないのかなとい う形で書かせていただいております。  2つ目の大きな項目でございますが、研究分野における指針の見直し案ということで ございます。こうしたヒトゲノム・遺伝子情報の特殊性を踏まえまして、今回の指針の 見直しも行われているのかなと理解しておりますが、個人情報保護の責任主体を、研究 を行う機関、法人等ということですが、こちらの機関の長とするということなど、保護 について機関ぐるみの取り組みを求めているところでございます。  また、個人情報保護法で求められております個人情報取扱事業者の義務、こういった ものについては基本的にすべて盛り込む方向で書かせていただいておりますし、一方で 5,000件以下のケースも対象にします。個人情報保護法ですと、 5,000件以上のデータ ベース化されているものというのが法の対象になるのですが、こちらの指針の中ではそ ういったもの以外のものも対象にできます。また、従来からあった規定でございます が、研究者の守秘義務も盛り込んでおります。また、死者の情報の安全管理措置など、 幾つか個人情報保護法を上回るような形での規制も行われているものでございます。指 針でございますので、規制という言葉がなじむのかどうかはあれですが、そのような趣 旨での規定を設けるというところでございます。  2ページ目でございます。こうした中で、個人情報保護法で求められるいろいろな義 務等について法制化するのはどうなのかということがございます。先般のご議論の中 で、いろいろな切り口があるのではないかと。研究という切り口ですとか、医療という 切り口とか、そういったものを整理すべきではないかというご議論もございました。こ れにつきましては、また後の方のところで整理させていただいているつもりでございま す。  そこで1つ問題でございますのが、いろいろな切り口があろうかと思っております が、包括的な法律とか、基本法とか、そういったものをどのような切り口で設けたとし ても、罰則等で実効性を担保すべきではないかということが法制化の重要な意義という ようなご指摘があったかと思っております。そういうことであれば、どんな法律の切り 口をしたとしても、個人情報で求められるいろいろな義務、安全管理措置ですとか、苦 情相談とか、第三者提供、開示、ほかにもいろいろな義務がございました。こういった もの一つ一つを条文として法制化する必要があるのではないかと。基本法という形をと ったとしても、遺伝情報一括法をとったとしても、どういったやり方をしたとしても、 この義務についてはその中で条文化する必要があるのではないかと考えているところで ございます。  米印のところに書いてございますが、先般のご議論の中で、法律の中では基本原則と 基本原則に違反した場合の罰則を規定して、基本原則に則した具体的な内容を指針で規 定するといったような考え方があるのではないかというご指摘があったかと思います が、こちらにつきまして、私ども罪刑法定主義の考え方から、罰則の構成要件になるよ うなものであれば、やはり法律の中で書かないとまずいのではないかと思っておりまし て、そういった点からどうなのだろうと思っております。こうした場合に、安全管理措 置とか苦情相談とか、もろもろの義務が法律になることについてどのように考えるのか なと思っております。まさにこの委員会の設置の目的も、中核となる部分は、まずそこ の部分があろうかなと思っております。  法制化に賛成するご意見、反対するご意見、そういったものについてそれぞれ整理を させていただきました。これ以外にもいろいろなご意見があろうかと思いますが、先般 のご議論を踏まえて、おおむねこういう感じだったかなというようなことで整理をさせ ていただきましたが、1つは、賛成するご意見としては、指針では違反しても罰則がな いではないか。そうなると、個人情報保護の実効性というのは担保される保障がない。 これが1つございました。  2点目につきましては、学問の自由がございますけれども、一方で個人情報保護とい うのは個人の保護・尊重に深くかかわる。これは憲法の問題でございます。そういった ことで、学問の自由と同様に尊重されるべき問題ではないかということでございます。  3点目、法律によって、ただ縛るということではないのではないか。個人だけでなく 研究者も保護されるということで、きちんとした仕組みが構築されることで、逆に研究 自体がやりやすくなるのではないかというご意見がございます。  4点目、問題が生じてから対応するということでなくて、やはりそれでは取り返しが つかなくなる可能性があるので、未然に対応すべきではないかというご意見があったと 思っております。  一方で、法制化に対して否定的なご意見もございました。こちらに整理させていただ いておりますが、まず1つ、先ほどの罰則に対応したものでございますけれども、罰則 等となってまいりますと、それに対して研究者がどうしても萎縮してしまう。したがっ て、罰則を恐れる余り、研究自体が進まなくなってしまう、妨げられるというおそれが あるのではないかというのがございます。  2点目、憲法上の問題として、学問の自由というのが保障されており、今回の個人情 報保護法においても、そういったことを踏まえて適用除外にされているという点があ り、こうした中で、そうした規制を法律で設けるのはいかがなのかというご指摘がござ います。  3点目、法律ではどうしてもすぐに改正するというのはなかなか難しいのではない か。そういう意味で、研究というのはどんどん日進月歩で進んでくるものでございます ので、そういった進展に迅速かつ柔軟に対応して見直すことが、どうしても法律では難 しいのではないかというご意見がございました。  4点目でございます。現実の問題として、今の指針の中でも特段問題は生じていない ではないか。現場の中でも、指針とはいえども法律並みに厳しく守られているのではな いか。こういった中での法制化をする必要性は乏しいのではないか。まずは今の新しく 見直そうとしている指針の実効性をみきわめた上で、必要に応じて法制化の検討をすべ きではないかというご意見があったかと思っております。  その他、主なご意見といたしまして1つ書いておりますが、仮に法制化をするとして も、ヒトゲノム・遺伝子解析に限った法制化を行うことについては、個人情報保護の視 点から不十分であって、もう少し時間をかけて中長期的な課題としてより広範囲なカバ ーをする法制化を検討すべきではないか。このようなご議論があったのかなと思ってお ります。  こういったご意見を踏まえまして、それぞれ法制化する場合の論点、また当面指針で 行う場合の論点、こういったものをそれぞれ書かせていただいております。法制化を仮 にするとした場合の論点といたしまして、まず1つは法律の枠組みをどうするのか。個 別法なのか、それとも幾つかのものをみるような横断的な法律なのか、それとも基本法 というような形なのか。横断的な法律とか基本法、包括的な法律といってもいいのかも しれませんが、そういったものは中長期的な課題の方で整理をさせていただいておりま すが、仮に個別的な法律にした場合、遺伝情報は研究分野を含め幅広い利用が予想され ている。こうした中で、法的な規制の枠組みの必要性をどのように考えるのかというの がございます。また、情報の漏えいを完全に防止することが非常に困難であるという中 で、遺伝情報を解析する側とその情報を別目的で利用する側の規制のバランスを図るこ とが必要ではないかと考えております。  2つ目の項目といたしまして、法律で保護すべき遺伝情報の範囲をどう考えるのかと いうことでございますが、遺伝情報が示し得る個人の遺伝的な特徴とか体質、こういっ た情報は差別につながるものからそうでないものまで非常に幅広い。また、これらの情 報が必ずしも遺伝的な特徴及び体質を決定的に示すということもないのではないか。こ うした中で、保護すべき遺伝情報の範囲や保護の程度というのは全部一律でいいのか、 いろいろ考える必要があるのではないかと思っております。4ページ目でございます。 死者の情報を今回の指針から外しながら安全管理措置的なものを書いておりますが、そ ういった死者の情報についてどのように考えるべきかという点がございます。   その他といたしまして、規制を課して個人の保護や適正な研究の実施を図るととも に、研究の実施をむしろ支援するような形での法律の枠組みも一方で考えるべきなので はないかというご指摘がございました。あと2点目といたしまして、研究の進展に対応 して迅速かつ柔軟に見直しを図るべきではないかという論点もあろうかと思います。ま た3点目、研究者の守秘義務を設けるべきではないか。また4点目、今、組織として一 生懸命匿名化とかそういったことをやっていただいているわけでございますが、法制化 されることでそういったインセンティブを阻害するのではないかというご指摘があった かと思っております。  一方で、当面、指針で行う場合の論点ということで、それ以降書かせていただいてお ります。指針で行う場合の論点といたしまして、最大といいますか、一番大きな問題が 個人情報保護の実効性をどう確保するのかという点なのかなと思っております。指針と いう罰則がない制度の枠組みの中で、実効性をどのように確保していくのかということ でございますが、(1)、(2)と書かせていただいております。まず、これは先生方は十分 ご理解、ご承知の上ではないかと思いますが、念のために書かせていただいております が、国の機関ですとか国立大学、こういったところについてはそれぞれ行政機関の保有 する個人情報保護法ですとか、独立行政法人等の保有する個人情報の保護法がございま して、それぞれ個人情報の保護を担保されております。これは学術研究機関、学術目的 ということで、適用除外ということにもなっておりませんので、こういった国の機関と か国立大学等で行われる研究については、そちらの法律がそれぞれ適用されているとい う状況でございます。また、営利企業の研究機関等については、個人情報保護法の対象 になるという整理になっております。  そういたしますと、今の個人情報保護関係の法律が全く係らないものとして何がある のかというものとしては、代表的なものとして私立大学ですとか、社団法人、財団法 人、こういった公益法人が想定されるのかなと思っております。こうした者の個人情報 保護の実効性を確保するために、論点といたしまして、現状では、指針違反の場合には 文科省さんの科学研究費補助金、いわゆる科研費でございますが、こういったものにつ いては受けられない。また、違反が発覚したところで打ち切られるといったような措置 が講じられているところでございますが、当該措置について引き続き厳格に実施すると ともに、ほかにもいろいろと国からの資金提供、国のプロジェクトとして参画してやっ ているものがございますけれども、そういったものについても指針違反の場合には科研 費と同様のような措置がとれるようなことを講ずべきではないか。  また、2つ目のポツといたしまして、私立大学とか公益法人ということであれば、そ れぞれが所管省庁の監督権限、一般的な監督権限の中に入ってございます。そういった 監督権限の中で指針の実効性を確保できないかという論点があろうかと思っておりま す。  また、先ほどの問題点、法制化に賛成するご意見の中で、やはり問題が起きてからや るのではないというようなことも踏まえて、もう1つ論点として書かせていただいてお ります。問題を生じてから対応するということではなくて、まずは改定指針の実効性が 確保されているかをこの指針に基づいてやっていただいて、きちんとそれをフォローア ップする。その結果を踏まえて、問題がどうも起こりそうだと。それとも、現場では何 も起こっていないということなのか。そういったことをフォローアップした上で、その 内容によって法制化を含めてさらに検討するということが考えられるのではないかとい うことが論点としてあろうかと思っております。  5ページ目は、もう少しそれと切り分けて、法制化に関する中長期的な課題というこ とで整理をさせていただきました。特にヒトゲノム・遺伝子解析研究につきましては、 この分野だけの個別法というよりは、前回、いろいろな形での法律のご提言があったと 思っております。ただ、それぞれの先生方、すぐにというよりはむしろもう少し長い形 でとおっしゃっていたことが多かったので、中長期的な課題という形で書かせていただ きました。ただ、そのときの法律の形式というのもいろいろなパターンがあったかなと 思っております。大きくいいますと、ここに書いてあるように4つに整理できるのかな と考えております。  1つは、研究指針が4つございますが、こういったものを統括したような研究一括法 というのが考えられる。2つ目といたしましては、研究情報、あと医療の情報、こうい ったものも含めまして個人情報保護法の特別法みたいなものが考えられないか。3点目 といたしましては、医療・医学研究のほかにも産業においても遺伝情報というのはいろ いろ利用される。遺伝情報という切り口に立って、個人遺伝情報の一般法みたいなもの が考えられないか。4点目は、さらにもう少し広く生命倫理全般を取り扱うような生命 倫理基本法があるのではないか。大きくこの4つの法律の形式のご意見があったと思っ ております。  また、法に盛り込むべき事項といたしましては、遺伝情報に基づくさまざまな差別の 禁止という点が複数の先生から寄せられたと思っておりますし、また、差別のもととな り得る個人遺伝情報の保護といったものが考えられるのではないか。  また、繰り返しになって恐縮でございますが、こうした横断的または基本法的な法律 の枠組みの中で、個人情報保護に関する事業者への義務等について、どのように規定す るのか。先ほどいった安全管理措置とか、もろもろの細かい規定について、この法律の 中でどのように規定していくのか。大きくいえば3つあるような形のどれかなのかな と。1つは、どんな法律であっても、その中にちゃんと条文を細かに書いていって、そ れに罰則を科す。2番目は、法律の中には割とふんわりした形で基本原則を書き、具体 的な内容を指針等におろして、その中で規定をして罰則を科す。これは先ほどいったよ うに、罪刑法定主義の考え方から問題なのではないかと考えております。3点目、法律 の中で基本原則のみを規定して、具体的内容は指針で規定する。ただ一方で罰則は科さ ない。こうなりますと、今度は実効性の担保という点からどうなのかなというようなご 意見があろうかと思っております。  今いったことが文章で書き連ねたものでございますが、それを図にあらわしたもの が、もう1ページおめくりいただきまして、横紙で、ヒトゲノム・遺伝子研究等の個人 情報保護に関する規定の法制化について(議論のたたき台)と書いたものでございま す。左側の個人情報保護に関する規定の法制化について、法制化する場合、法制化しな い場合。法制化する場合について、個人情報保護の実効性を確保すべきではないか。憲 法の保障する個人の保護・尊重を踏まえるべきではないか。枠組み構築で研究を促進す べきではないか。こういったことを受けて法制化をする。その法制化をする場合の論点 としては、法律の枠組みをどうするかとか、遺伝情報の範囲をどうするか等々、先ほど いったような論点があろうかなと。  一方で、法制化しない場合は、罰則等への萎縮効果とか学問の自由、そういったもろ もろの問題がある中で、法制化しないという形をとった場合には、右側にあるような個 人情報保護法等を遵守するような指針の見直し、実効性の確保。指針の見直しは今回行 うということでありますけれども、さらに指針の実効性を確保すべきではないか。そう いったことで、指針の遵守状況と国からの資金提供、国プロジェクトとの関係を整理し て、指針が守られない場合に資金提供を打ち切るとか、そのようなことが考えられない か。また、所管省庁としての監督権限ということがあるのではないか。こういったもの を担保するものとして、実効性が確保されているか、問題が発生する前に未然に対処す べきではないかということで、フォローアップの実施、必要に応じて法制化を含め検討 ということがあろうかと思っております。  また、法律はつくるのだけれども、個人情報保護のさまざまな規定についてまで法律 化しないというのが真ん中の線でございまして、法律で基本原則を規定して、具体的内 容は指針で規定。これは、先ほどのように罪刑法定指針の考え方との整合性が必要なの かなと思っております。  右側につきましては、さらに中長期的な課題として、こういった4つの枠組みがあり ますというようなこと。今いったお話を1枚の紙に整理させていただいて、図にあらわ したものでございます。  なお、医療の方の関係でございますが、いろいろご議論が行われておりまして、検討 会の資料ですとか、議事概要的なものもお配りさせていただいております。法制化につ いて、医療の方は結論が出ているという状況ではございませんが、今のところ、これま での議論をみていただければわかるかと思いますが、法制化に賛成するというご意見も ありますけれども、法制化について、まだ慎重に今回のガイドラインについてまずみる べきではないかという意見が比較的多かったという感じの印象をもっております。  以上で私からの資料の説明とさせていただきます。 【垣添座長】  ありがとうございました。法制化の問題に関しまして、これまで2回ご議論いただき ました。特に前回はかなり時間をかけて議論いたしまして、非常に活発なご意見をいた だいたかと思います。それを今、資料2として事務局からご説明いただきましたけれど も、大変よく整理いただいたかと思います。本日残り時間が約30分ほどありますので、 この時間を使いまして、個人情報保護の観点から個人情報取扱業者に対する各種の義務 などを法制化することが必要かどうかという点に関して、委員会としての意見をとりま とめなくてはいけませんので、もう少しご意見をいただければ幸いでございます。よろ しくお願いします。 【南条委員】  ちょっと出てしまうので……。全く専門家でない立場なのですけれども、結局、これ だけ議論が分かれている中で、法制化に今すぐあれするというのは私は無理な感じがす るのです。したがって、こういうものをする場合には、大体2年から3年という期間を 置くと思いますが、2ないし3年の期間を置いて、まずこの指針でやってみて、フォロ ーアップをし、あわせてここに出ている長期的な課題、そういうものも並行して議論を 詰めていった上で判断するというのが適当ではないかと思います。やはり事業とか民間 の商売とか、そういうものであれば早目に手を打たなければいけないですけれども、主 に研究というところに範囲が定められているものである場合には、今、こういう議論を されている中で急に法制化ということになると、世界的にこの分野の議論で研究という のは非常にスピードが大事で、マイナスブレーキをかけるような影響があるということ も、こういう議論が十分にされていないでやると、マイナス効果が大きくなるのではな いかと思います。  したがって、とりあえずは指針として、指針自体もできれば毎年チェックをして、機 動的に対応していく。そういうのをみながら、長くて3年ぐらいをみて、その段階で考 えるというのがいいのではないかと思います。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【鎌谷委員】  私も今のご意見に非常に賛成で、やはり法制化は今の時点では早いと思うのです。1 つは、遺伝子とか遺伝情報に関する考え方がこの2、3年で物すごく変わってきている し、恐らくこの5年ぐらいの間で、世界じゅうで1人の人の遺伝情報が全部わかるとい うような時代がすぐ来るし、そうすると、それに対する価値とか、いいこととか悪いこ ととかも非常に急速に変わると思うのです。特に日本では国民も、研究者でさえ遺伝に 関する考え方が非常にできていないと私は思うのです。例えばこの規定にしても、どう いう場合に罰するかということでも、倫理指針の中の遺伝情報とは何かというところも 私は問題があると思っていて、例えばこれでは、たんぱく質の立体構造なども当然、親 から子供に伝わるし、しかも遺伝に関する情報だから対象であるといえばあるわけで す。そこのみんなの理解が一致していないし、これからまた考え方とか概念もどんどん 変わっていく中で法律をつくっても、多分2、3年たつと非常におかしなことになる可 能性があると思います。適用についても、一人一人の意見でこれが対象になるかならな いかということも違ってくるとすると、やはり指針のままでやっていった方が私もいい と思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。どうぞ、福嶋委員。 【福嶋委員】  私も同意見なのですけれども、見直し案の基本方針の8として、啓発活動、社会の理 解の促進というのを今回加えていただいたわけです。法制化という場合に、差別を禁止 しよう、あるいは差別のもととなる遺伝情報を保護しようということが述べられていま すけれども、なぜ差別が起きるのか、何で遺伝情報は差別の対象となるのかというとこ ろについて、広く市民一般の方が遺伝ということについての理解が非常に乏しいという 状況があると思います。ですから、法制化するにしてもしないにしても、社会への働き かけ、一般の市民の理解を上げる努力をこの時点からやっておくべきだと思うのです。 余りよく知らないイメージだけで、遺伝というのは怖いものだ、だから規制しなければ いけないというような一般的な世論というのですか、そういうことをもとにこういう法 律を急いでつくるというのは非常に問題があると思います。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【栗山委員】  私もすぐさま法律をつくるということでなく、しばらく指針のまま様子をみられたら いいのではないかと思っております。指針の中にも、刑法に触れるような事柄も出てく るわけで、守秘義務であるとか、インフォームド・コンセントのとり方であるとか、そ ういうものをほかの法律できちんと精査されるわけですから、この指針でしばらくやっ てみて、不都合なことがあると、必ず見直しというところになると思うので、そこでま た法律を考えられたらいいと思います。  私自身も、さっきいわれたように、素人はなかなか遺伝情報はどういうものかという のがわかっていないというのに賛成ですし、こういうものは指針として世の中に出るこ とによって、もっと一般の人の教育というか、知識の向上にもなっていくので、その上 で考えていただければいいし、もう1つは、やはり研究ということをもっと大事に考え られるといいのではないかと思います。危なくない情報まで危ないように間違って思う こともあるやに思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。どうぞ、佐々委員。 【佐々委員】  私も法制化を早くするのはよくないと思います。ただ、それは法律だからよくないの で指針で様子をみるというよりは、議論を熟成させるために期間をかけるということ で、すぐに法律にしない方がいいと思っているのです。  ただ、今回、これに参加させていただいてとても勉強になって、議論を伺っている と、医学の研究者の方と法律の先生方の間で、優しい言い方をすると心が解けていくと いうか、法律は規制するものだとか、そういう敵対的な気持ちがだんだん薄れてきたと 思うのです。やはり専門家の間でもこういう気持ちが大事だという姿勢が示されたこと は、私は市民に情報を提供している立場としては、とても感激的な場面だったので、法 律が厳しいからとか、研究の妨げになるからというより、議論を熟成していくことをい ろいろな立場の人が見せ合っていくという意味で、法制化を急がない方がいいと思いま す。それは、指針で様子をみるというよりは、議論の熟成とか対話の場をもつという意 味で、時間をかけていただきたいというところに主眼を置いていただきたいと思ってい ます。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【堀部委員】  ほかの会議と重なっていまして、おくれて来て申しわけありません。  今の法制化の議論を伺っていまして、法律学の観点からは、その表現が必ずしも適切 でないような気もしますので、そのことについて一言申し上げます。今度の指針の見直 しというのは、これまでも何回も申し上げてきましたように、個人情報保護法が昨年5 月に制定されまして、それに基づいて指針の見直しをしている。ですから、今度の指針 は法律に基礎を置いているものであるということをまず理解していただきたいと思いま す。ですから、単なる拘束力のない指針ではなくて、この指針のどの部分というのはな かなか難しいですが、場合によると、個人情報の取り扱いで法律で制限されているも の、それの違反が生じますと、主務大臣は報告を求めたり、勧告したり、命令を出した りということがありまして、その命令に違反しますと罰則がありますので、法律に基づ いてガイドラインができていますので、その違反が場合によると法律違反ということで 処罰の対象になる。こういうものだということをぜひご理解いただきたいと思います。  そのことを念頭に置いて、さらに、これは衆議院、参議院の特別委員会の附帯決議 で、特に参議院の場合には遺伝子治療等先端的医療技術の確立のため、国民の協力が不 可欠な分野についての研究開発利用を含むといっていまして、それについて、本法の全 面施行時には少なくとも法制化といいますか、個別法という言い方をしていまして、こ の前も申し上げたのですが、法制化というと、これから法制化するような感じなのです けれども、既に法律があって、さらにその上で個別法をどうするのかという議論である ということをぜひ理解していただきたいと思います。  他の分野で議論になっていますのは、現行の法律、これにずっとかかわってまいりま したけれども、行政法ですので、先ほどいいましたように、主務大臣が命令を出して、 それに違反した場合に罰則という構造になっております。しかし、例えば法の21条にあ りました従業者の監督は個人情報取扱事業者の義務になっております。従業者、あるい は委託先、これは22条でありますが、これも個人情報取扱事業者の義務になっていまし て、個人情報取扱事業者のだれかがといってもいいのですが、その情報を盗み出したり した場合、これは例えばことし大きな問題になりましたヤフーBBの事件などがあるわ けですけれども、そういうときの対応がこの法律ではできないのです。そうしますと、 盗み出されてどこかに提供されたりしたときの責任というのは、実行行為者には処罰は 及びませんで、場合によると個人情報取扱事業者が処罰されるということになります。 そうすると、実行行為者をどうとらえるのか。その行為について何らかの罰則というの は必要あるのかないのか。これがほかでも議論になっているところですので、そういう ことはないのだといわれれば、それは別なのですが、いつ何どき起こるかわからないと いうのがこの議論ですので、そのあたりをどうされるのかということも……。先ほど事 務局から出されたのは、前回の議論のまとめですけれども、この前、そのことを申し上 げなかったので、あえて申し上げました。そういう場面について、ここでもどう対応す るのかということはぜひ考えていただきたいと思います。  まだまだいろいろ議論があるところなのですけれども、とりあえずそういう側面もぜ ひご認識いただきたいと思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。どうぞ、小幡委員。 【小幡委員】  前回、私、出席できなかったのですが、まとめ自身については、論点は比較的きちん とまとめられていると思いますが、いろいろご議論ございますように、今すぐ法制化で きるかというと、どういう形の法制化がいいかというのは、まさに中長期的なところの くくり方、非常にさまざまな議論があり得るのかなと。何が一番よろしいかというの は、私自身、非常に迷うところですので、直ちにというのは確かに難しいなという感想 をもっております。  1つだけほかの角度から、私、行政法が専門なので申し上げておきたいのですけれど も、科学技術の分野では、クローンの規制法は別としまして、カルタヘナも条約との関 係で法律にしたという事情がございますけれども、従来は指針形式が多かったというの も確かです。ただ、ここのところ行政法が非常に大きく変わりまして、この指針という のは、今、堀部先生からのお話がございましたけれども、個人情報保護法、あるいは行 政機関個人情報保護法、独法の個人情報保護法、そのような法律のもとでの指針という ような部分と、それがかかわっていない民間の研究機関、あるいは数字的に 5,000以下 の場合、これについてはどういう意味をもつかというと、行政法的にいうと行政指導と いう形になりまして、任意の協力があって初めて有効、つまり相手方が任意に従ってく ださっているというだけのものなのです。  ところが、日本の行政というのは、今までは行政指導という形であっても、主務官庁 といいますか、補助金とかもあるかもしれないし、研究者はいうことを聞いていたとい うことでうまくいっていた。指針を破るような人はほとんどあらわれなかった。そうい うのが現実であったのですが、それがはっきり行政指導であると。つまり、任意に従っ てくれない場合はどうしようもないものなのだよということは、平成5年に行政手続法 というのができたあたりから非常に明確になりまして、ある意味では日本の行政法は大 きく変わってきている。そこら辺は頭に入れておいていただいた方がよろしいのかなと 思います。  ですから、今すぐ法制化云々ということは確かにいろいろ課題はございまして、個人 情報保護だけの問題でない、いろいろな形の法律の方がいいのかもしれないと私も思い ますので、そこら辺は難しいのですが、法適用のないものについては、単なる任意に従 ってくださいという行政指導であるということは、法律の世界では現実にそうなので、 そこのところは頭に置いていただいた方がよろしいのかなと思います。非常にギャップ が激しい。適用が既にある行政機関、独法、そういうあたりとそうでないものとの間に ギャップがあるということです。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【黒木委員】  今、指針を幾つかつくっているわけですけれども、指針そのものを法律化するという ことには私は反対です。それは非常にどんどん激しくなる分野において、例えばクロー ン生物にしても何にしても、10年前には想像できなかったものが、今、どんどん可能に なっている。我々の価値観も変わってくるという中で、指針であった方がいい面が随分 あると思います。ですけれども、今、ここに何本もの指針が出ている。その中で基本的 に考えなければならないというものは幾つも出てくると思うのです。例えば生命の尊厳 であるとか、公平であるとか、差別しないとか、自立、責任であるとか、プライバシ ー、機密性を保つとか、透明性、公開性、科学的な合理性とか、そういう非常に抽象的 で基本的なものというのは、例えば生命倫理基本法といったような形で、非常に広く全 体をカバーするようなものがあって、そういう基本的な考えの上に指針ができていくと いう方が、これからはやりやすくなるのではないかと思います。  これからどんどん、何かができたたび、新しい技術ができるたびに対応していくとい うのでは、やがて対応の進め方の基本が何であったかということを我々自身が見失って しまうのではないか。そういう点を危惧するものです。ですから、長い目でみれば、生 命倫理基本法で、1つ指針を残して、そのもととなる生命倫理基本法をつくった方がい いというのが私の今の意見です。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【辻委員】  法制化のことに直接かかわる議論でないのかもしれませんが、法制化が必要であると いう考えの背景を考えたときに、幾つかの具体的な提言もしたいと思うのです。1つ は、これまでも議論があったと思うのですが、例えば遺伝に関する差別を禁止するとい いますか、遺伝についてよく知らないではないかというのが一方にあるのと、一方では 逆に遺伝に関する差別というのは非常にデリケートな問題ですけれども、社会において 非常に重要な問題だと思うのです。ですから、遺伝に関する差別を禁止するような法律 というのはむしろ考えた方がいいのではないかと私は思います。  もう1つは、例えば参議院の附帯決議の議論をみていても、研究に対する国民の徹底 的理解が得られていないという言葉がよく出てくると思うのです。今回、この会議に出 ていてもそれは痛切に感じたわけですけれども、研究者の側でもそういう国民の研究に 対する徹底的理解を得るための努力が足りない部分は多分いろいろあるのだと思うので す。例えば、これは文科省の方に考えていただきたいのですが、科研費の扱い方につい ても、直接研究につながることには使っていいけれども、国民の徹底的理解を得るため に予算の一部を使うことに関しては、難色を示すというのがございます。例えば、ある 規模以上、直接国民の参加を含むような大規模な研究プロジェクトに関しては、一定の 割合で国民の徹底的理解を得るための活動を条件にするとか、そういったものを推奨す るといいますか、そういったことはぜひ考えていただいた方がいいのではないかと思う のです。やはり研究者の側にそういう意識が欠如している部分というのは多いのだと思 うのです。社会と直接つながるところでの活動を推奨するということが必要ではないか と思います。  3番目の提言としては、研究はやはり大学が担っている部分が多いと思いますけれど も、独法化を受けて、実は現場では全国的に、予算的にも非常に苦しい思いをしている と思うのです。こういった指針で示されたことを適正に実行していくためには、それな りのインフラというのはどうしても必要になってきますし、そういったインフラという のは必ずしも研究者が率先してやるようなタイプのものではないかもしれないのです。 つまり、運営交付金の中から何とか捻出しなさいというものでは済まない可能性があっ て、研究を推進するためのインフラをいかに整備するか。あるいは、例えばゲノムリサ ーチセンター的なものを考える必要があると思うのです。モデル事業とか、何か少し検 討してみて、そういったものを試してみるといいますか、そういうことは必要ではない か。つまり、精神は立派なのだけれども、現場ではそういったインフラとか、実際のと ころはサポートがなくて、本当にボランティアというか、みんな苦労してやっているこ とも事実ですので、そういったところが充実すれば研究はより発展すると思うので、そ ういう点でインフラ整備を具体化するということもぜひ文科省の方には考えていただき たいと思います。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。続きまして、高芝委員。 【高芝委員】  3点だけお話しさせていただきます。1点は、前回、今回の指針の実効性をみきわめ ることも1つの方向ではないかということをお話しさせていただいたわけですけれど も、その点、内容は前回の議事録に出ていますので繰り返しませんが、追加する点とし ては、指針の中で私が非常に重要だと思っているのは、倫理審査委員会があるというこ と。これは私の理解するところでは非常にワープしていると思っています。先生方の研 究にかかわる方が一生懸命議論されているというのをみておりますところもあるもので すから、そういう点で、倫理審査委員会がどのように動いていくか、それもみきわめて いくというのが1つではないかと思っている理由になります。  2点目としては、先ほどのまとめていただいた資料の中で、4ページの当面指針でい く場合ということで、(1)のところで、国の機関や大学については法律がある。また、 営利企業の研究機関についても適用法律がある。ただ、法律のないところもある。そこ がまだら模様になっている。この点が個人遺伝情報との関係で、こういう状態でいいの か、上乗せの部分を法制化でどうこうという議論ではなくて、別の側面なのですけれど も、必要最小限度のところの足並みをそろえる。そこの部分は、個人遺伝情報について は法制化の観点というのは1つあり得るのかなということで、このまとめでは、中長期 の法制化でも、将来的な展望のまとめをしていただいているのですけれども、足元的と いうか、直近の部分になるのかもしれないのですが、そこのばらつきの補正というのも テーマの1つとして挙がるのかなと感じたのが2点目です。  3点目については、先ほども出ていましたけれども、具体的な問題がもし起こるとし たら差別の問題等はあり得るところだと思いますので、この点については、ぜひウオッ チをしていただくといいますか、慎重に把握、フォローアップをしていただければとい うお願いです。  以上です。 【垣添座長】  ありがとうございました。位田委員。時間の関係で、これでご意見をきょうのところ は打ち切らせていただきます。 【位田座長代理】  簡単に申し上げます。  私も、すぐにこの指針を法律にしろという考え方はとれないと思います。要するに、 法をつくればいいという話ではなくて、先ほど遺伝についての理解が不十分だというお 話がございましたけれども、法律についての理解も必ずしも研究者の方々に十分に行き 渡っていないと思っております。つまり、問題は、法律というのはこんなものだという 理解をいただいて、例えば先ほど小幡さんがおっしゃったように、行政法の問題、個人 情報保護法そのものの問題、それから、刑罰を科するというのはどのようなことか。そ ういうことをきちんと整理して理解をしていただくというのがまず1つ必要だと思いま す。  2つ目に、法律が必要かどうかという問題は、実はどのような法律をつくるか。つま り、法律の中身をどうするかという問題とかなりつながっている部分があって、このよ うな法律であれば要らないけれども、こんな法律は要りますよと。例えば、差別禁止法 だったら要るけれども、この指針をそのまま法律にするようなことは要らないでしょ う。そういう話になると思うのです。ですから、法であれば何でも研究を阻害してしま うとお考えいただくのも困るし、法律はなくて本当にいいのかといわれると、必ずしも 一般の側からすると非常に危惧があり得るということだと思います。ですから、議論を するときには、法律をつくるかどうかということを最初に判断するのではなくて、どん な法律をつくるのかということもきちんと一緒に考える必要があると思います。  3つ目は、実効性の問題というのが個人情報保護については一番重要なのです。どの ような形であれば実効性が保障できるかという問題で、場合によっては刑法的な保障が 必要かもしれないし、場合によっては行政指導でこれまでうまくいっているから今後も うまくいくのだという考え方があり得るかもしれませんし、このまとめの中では、科研 費を認めないというようなやり方もあると思いますし、どういう内容の法律が必要であ り、したがって、それぞれについてどんな形であれば実効性が担保できるかということ を具体的に考える必要があると思います。この中長期的な4つの種類の法律のうちの例 えば(1)は要らないけれども、(4)は要るかもしれないねという議論をしていかないと、 今すぐに個人遺伝情報について法制化が必要かといわれると、必要でもあり必要でもな いという答えしか出てこない。ですから、フォローするということは必要ですけれど も、どんな法律であれば必要かという議論を今から始めないと、2、3年後にフォロー した結果、問題が起きました、これから法制化の議論しましょうというわけにはなかな かいかないのではないかと考えます。 【垣添座長】  ありがとうございました。 【勝又委員】  ちょっと一言だけよろしいでしょうか。 【勝又委員】  中長期的な問題を考えたときに、やはり法律上の方向性を考えるのも重要なのですけ れども、先ほど来出ているように、遺伝情報の理解を社会なりにしっかり深めていただ く。そのやり方の1つとしては、基本的には予算が必要だと思うのです。例えばヒトゲ ノムの研究を始めたときに、LC?で全部の予算の中の5%をそちらの方に注ぎ込んだ わけで、そういうことが日本では少し欠けている。幾ら中長期的に議論していても、1 ついえば、倫理委員会だってなかなかうまく進んでいない。非常に困っているのです。 ですから、そういうことを含めた、先ほどインフラ整備ということもおっしゃられたの ですが、これは文科省だけの問題ではなくて、遺伝情報を含めた新しいものをどのよう に社会に生かしていくかという問題としては非常に切実だと思うので、むしろそのよう な形でしっかりした予算を組んで、そういう方向性を出していくということを、中長期 的なこういうものの中にでもきちんと入れて、この会として提言していくとか、そうい うことが必要ではないかと思います。 【垣添座長】  ありがとうございました。今の勝又委員のご指摘は、先ほど辻委員も一部触れられた ところでもありますし、これまでの議論で何度もご指摘いただいたことで、世の中の理 解を得ながら進めていくという意味では、啓発活動なり、特に遺伝情報ということに関 する理解をいただきながら、パートナーシップとして研究を進めていくというようなこ とが非常に重要であるということにつながるのではないかと思います。この最終的な報 告書といいましょうか、結論の中に、そういったことをきちんと盛り込んでいく必要が あろうかと思います。  まだ当然たくさんご議論があるとは思いますが、申しわけありませんが、時間の関係 で本日はこれで打ち切らせていただきまして、本日ご指摘いただきましたような点を事 務局で整理させていただきまして、次回、結論を出したいと考えますが、よろしゅうご ざいましょうか。               (「異議なし」の声あり)  ありがとうございます。それでは、最後に今後の予定に関して事務局からお願いいた します。 【高山企画官】  本日も非常に活発にご熱心にご審議いただきまして、また貴重な意見をいただきまし てありがとうございました。  1つは、先ほどご議論いただいた指針の見直しの今後の予定でございますけれども、 修文のところにつきましては、座長及び座長代理の先生方とご相談の上、対応させてい ただきます。  今後は、最初に申し上げましたとおり、各省で告示という形にしますので、法令審査 を厳密に受けますので、それで若干の事務的な修正等もさせていただければと思います ので、ご了承いただければと思います。その後、官報掲載の手続をとりまして、4つの 指針は非常に大部にわたりますので、12月中旬ごろ告示を予定しております。  法制化の議論につきましては、先ほど座長からお話がございましたように、きょうの 意見を踏まえまして、たたき台を事務局でつくらせていただきます。きょう、時間の関 係上、これだけはという意見をいえなかった先生方がいらっしゃると思いますので、早 目に各省事務局までご意見をお寄せいただければ、たたき台作成の際にそれも踏まえさ せていただきたいと思います。そして、その進め方は座長の先生方とご相談させていた だきたいと思います。  次回につきましては、12月15日水曜日午前10時からを予定しております。よろしくお 願いいたします。  また、いつものお願いでございますが、参考資料集は持ち帰らずに机の上に残してい ただきますようお願いいたします。  今後、文部科学省と厚生労働省の2省の合同委員会をさせていただきますので、大変 でございますが、引き続き先生方はよろしくお願いいたします。  安藤室長から一言。 【垣添座長】  どうぞ。 【安藤室長】  最後に一言だけ。今回の文科省の委員会の委員の皆様方に、当方の手違いで謝った時 間で連絡をさせていただくことになってしまいまして、かなり混乱をさせてしまいまし た。本当に申しわけありませんでした。この場をかりておわび申し上げます。 【垣添座長】  それでは、3省委員会は本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとう ございました。5分休憩で2省委員会を開催しますので、よろしくお願いいたします。                                     ―了― 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:鹿沼(内線3804)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171