04/11/22 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会 平成16年11月22日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録 1.日時及び場所   平成16年11月22日(月) 15:00〜   厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(12名)五十音順   井 上 和 秀、 岩  崎   学、 堺   秀  人、 首 藤 紘 一、   田 島 知 行、 谷川原 祐 介、 土 屋 文 人、◎永 井 良 三、  ○長  尾   拓、 長谷川 紘 司、 樋 口 輝 彦、 村 勢 敏 郎 (注) ◎部会長 ○部会長代理 他 参考人1名   欠席委員(4名) 金  井    淳、 小 嶋 茂 雄、 南 部 鶴 彦、 早  川   浩 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、 川  原   章(審査管理課長)、    平 山 佳 伸(安全対策課長)、    豊  島   聰(医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    古 澤 康 秀(医薬品医療機器総合機構審議役)、    森   和 彦(医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   坂  本   純(医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   辻 村 信 正(医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、   国  枝   卓(医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは出席予定の先生はお見えでございまして、ほぼ定刻になりま したので薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきたいと思います。 本日はお忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。一部まだ遅れて おられる先生がいらっしゃいますが、当部会委員数16名のうち12名に御出席いただく 予定でございますので、定足数に達しております。御欠席は金井委員、小嶋委員、南部 委員、早川委員でございます。それから首藤先生は30分程度遅れる予定とのことでござ います。それでは以後の進行については永井先生、よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 それでは始めさせていただきますが、最初に事務局から配付資料の確認 と資料作成にかかわりました委員の報告をお願いします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。資料1〜6まであらかじめお送りしてお りますが、それ以外に本日の配付資料といたしまして資料1-3、エンブレル皮下注用25 mgの添付文書でございます。それから資料7-1は「優先対面助言制度について」、資料 7-2は優先審査等の取扱いについての審査管理課長通知でございます。それから資料9 といたしましてエンブレル皮下注用25mg専門委員、それからキュバール50エアゾール、 キュバール100エアゾール専門委員の名簿をそれぞれ席上に配付させていただいており ます。それ以外にも議事次第、座席表、本部会委員の名簿、それから「医薬品第一部会 審議品目の薬事分科会における取扱い、毒薬・劇薬の指定の要否及び生物由来製品/特定 生物由来製品の指定の要否について(案)」を配付させていただいております。  それから平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づきます資料作成に関係された 委員の確認でございますけれども、本日の議題については関与委員はいらっしゃいませ ん。また、本日は議題1における参考人といたしまして、岡山大学大学院医歯学総合研 究科助教授の山村昌弘先生にお越しいただいておりますので、よろしくお願いいたしま す。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは本日は審議事項が4題、報告事項が 3題となっております。まず議題1について機構から審査概要の説明をお願いいたしま す。 ○機構 それでは議題1、資料1、医薬品エンブレル皮下注用25mgの輸入承認の可否等 について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。なお、本品目の審査は医薬 品医療機器審査センターにおいて審査を開始し、機構で引き続き審査を行っていたもの でございます。  本品目の有効成分エタネルセプトは、ヒト腫瘍壊死因子II型受容体の細胞外ドメイン とヒト免疫グロブリンG1のFc領域を遺伝子組換え技術により融合させた蛋白質で、本 薬がTNFと結合することでTNFの受容体への結合を阻害し、抗炎症作用を発揮する と考えられております。  本剤は米国、欧州各国を含む世界67か国で関節リウマチに対する効能・効果が承認さ れております。今般申請者はICHE5ガイドラインに基づくブリッジング試験を国内 で実施し、海外成績の日本人への外挿は可能と考え、関節リウマチを効能・効果とする 承認申請を行いました。  本申請の審査では通常の専門協議のほか、伝達性海綿状脳症の伝播リスクに焦点を当 てた専門協議も実施しておりまして、本日お越しいただいております山村委員を始め、 川西委員、北本委員、木村委員、佐多委員、品川委員、高岡委員、中村委員、奈良間委 員、早川委員、林(邦)委員、林(正)委員、松岡委員、森委員、森田委員、山口(照)委員、 山口(直)委員、安田委員の18名の委員を指名いたしました。  審査内容について簡単に御説明させていただきます。規格については本剤は米国の子 ウシ血清を培養過程で使用しており、TSE感染のリスクについて検討されましたが、 リスクは完全に否定し得ないものの、そのリスクは極めて低く、本剤による治療上のベ ネフィットはリスクを上回るものと判断しております。なお、TSE感染のリスクにつ いては添付文書上で明記し、本リスクについて十分な情報が患者にも提供されるべきだ と判断しております。そのほか製造方法の変更等についても検討しておりますが、最終 的に適切な規格が設定されたと考えております。本剤は18か月までの安定性が確認され ております。  毒性については注射部位反応、抗体産生、発がん性等について検討しておりますが、 本剤が遺伝子組換えによるヒト化融合蛋白であることから、最終的には臨床成績も踏ま えて判断することが適切と考えております。薬理については関節炎モデルにおいて本剤 の有効性が示されており、特に大きな問題はないと判断しております。ADMEについ ては年齢、体重による用量調節の必要性、抗体産生の影響等について検討しており、特 に問題はないと判断いたしました。  臨床成績についてでございますが、今回提出された臨床データパッケージについては 審査報告書の32ページに記載されております。国内でブリッジング試験としてプラセボ 対照用量反応性試験を実施し、その後長期試験、自己注射試験が国内で実施されており ます。ブリッジング試験の結果、ACR20%改善率はプラセボ群で6.3%、10mg群で64 %、25mg群で65.3%と、本剤群とプラセボ群との間に有意差が認められ、本剤の有効性 が検証されましたが、10mg群と25mg群では差はなく、本邦における最小有効用量は10 mgと判断しております。ただし、海外では25mgの用量のみが承認されており、本剤の薬 物動態に国内外で差はなく、関節破壊の進展防止効果については25mg群で明確になって おり、安全性については両投与群で差はないと考えられることから、本剤の本邦におけ る用法・用量としては10〜25mgを週2回と設定することが適切であると判断いたしまし た。なお、10mgと25mgでの関節破壊進展防止に対する効果を日本人で明確化するため、 市販後臨床試験の実施、10mgバイアルの開発を指示しております。  安全性については結核、間質性肺炎その他の感染症の発現に注意が必要であり、自己 免疫疾患、悪性腫瘍等の発現、脱髄性疾患あるいはうっ血性心不全の悪化等が示唆され ており、十分な注意喚起が必要と判断しております。市販後には全例調査の実施、長期 特別調査の実施が必要と判断いたしました。また、本剤については週2回皮下投与する 必要があり、関節リウマチ患者の負担を軽減するため、自己注射による投与についても 検討されております。十分な訓練等を行うことで特に問題はないと判断し、本邦でも海 外と同様に自己注射による投与が可能と判断しております。  市販後全例調査、長期特別調査、自己注射への移行に関する市販後の対応については あらかじめ送付させていただいている資料1-2の中にまとめられておりますので、御一 読いただければ幸いです。全例調査、長期特別調査については既に承認しておりますイ ンフリキシマブと同様の対応をとることを予定しております。自己注射に関しましては 本剤の投与は必ず医師による投与から開始し、有効性が確認でき安全性上も問題ないと 考えられる患者に対して注射方法等を指導、教育し、自己注射について問題がないと考 えられる患者に対してのみ自己注射が可能となるよう医師、患者等への教育プログラム を作成するよう指示しております。  以上のような審査を踏まえ、本剤については市販後の全例調査、長期特別調査の実施、 10mgと25mgでの関節破壊の進展防止効果を比較するための市販後臨床試験の実施、自 己注射を適切に実施するための措置を講ずることを条件に、既存治療で効果不十分な関 節リウマチ患者に対する本剤の適用を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部 会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であ り、再審査期間は6年間、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、また生物由来製品に 該当すると判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。  なお、誠に申し訳ありませんが、添付文書については本日改めて資料1-3として席上 に再配付させていただいております。変更箇所については下線で表示されておりますが、 基本的には副作用等の集計整理を再度実施しております。御審議のほどよろしくお願い いたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは山村先生に参考人としておいでいた だいておりますけれども、御意見をお願いいたします。 ○山村参考人 岡山大学の山村と申します。よろしくお願いいたします。私は先ほどの お話を臨床家の立場から追加させていただきたいと思いますけれども、現在のリウマチ の治療というのは欧米ではTNFの阻害薬を始めとした生物製剤が非常に導入されてき て、患者さんの予後がよくなってきております。ただ、日本では一つはメソトレキセー ト、リウマトレックスという薬剤ですけれども、そういった薬剤の使用量の制限とか、 あるいは導入が遅れているために患者さんがまだ十分に治療されていないというのが現 在の状況ではないかと思います。既にインフリキシマブ、レミケードという薬が昨年よ り認可されておりますけれども、かなり患者さんの治療がよくなってきたというのを実 感しております。  ただ、レミケード1剤だけでいいかというと必ずしもそうではなくて、レミケードの 場合はキメラ抗体であるということからメソトレキセートの併用が中和抗体といいます か、そういったものを阻害するために必要であるということです。それとメソトレキセ ートで問題になるのは間質性肺炎という合併症がございますので、どうも日本人ではそ の頻度が高いという状況の中で、そういったものを使わずにTNFを阻害する薬剤、今 回審議されるエンブレルというのは非常に貴重な薬剤ではないかと考えております。臨 床家の立場から申しましても、こういった薬剤が早く患者さんの手元に届くという状況 が生まれればいいというふうに希望しております。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは御討議をお願いいたします。幾つか の論点があると伺っていますけれども、例えば培養にウシの血清を使っている、あるい は用量が10〜25mg、日本の場合には少し少量から用意するということ、それからこうい う薬がすべての病院で使われていいのかどうかという施設の認定の問題、あるいは自己 注射になじむかどうか、このようなところが論点かと思いますが、いかがでしょうか。 どうぞ。 ○田島委員 ちょっと教えていただきたいのですが、審査報告書の7ページに「(1)製 造方法」というところがございます。そこで発現プラスミドをCHOの細胞にしょわせ て、まずマスターセルバンクを作ってそこからワーキングセルバンクをとるということ ですが、このワーキングセルバンクの形質発現の安定性とかそういうものが…、調製、 保存及び管理方法が規定されているというのですけれども、具体的にはどういう方向で それを検証するのか。それからもう一つ教えていただきたいことは、ウイルス除去のD V50膜というのはアフィニティーか何かがあるのですか。それともふるいの目で分けて いるのでしょうか。その二点について教えていただきたいのです。 ○機構 まず一点目のワーキングセルバンクの管理方法でございますが、資料概要の75 ページからになるかと思いますけれども、調製しました際に76ページに記載したような 試験項目の試験を実施しまして、例えばマイコプラズマが入っていないかですとか、in vitroの外来性ウイルスが混入していないか、そういったような確認を実施しておりま す。また定期的に細胞生存率を確認してバンクの安定を評価しております。 ○田島委員 ありがとうございます。一つはこの有効成分がどのくらい安定に作られて いるかというのはどこに書いてあるのでしょうか。そういう力価の検定ですね。 ○機構 例えば80ページを見ていただきますと、そこに表ロ-13がございますが、その 中でマスターセルバンクとワーキングセルバンクとEOPCという項目があるかと思い ますけれども、EOPCというのは培養終了後の細胞ですが、遺伝子発現構成体がきち んと入っているかということですとか、EOPCにおいても一番下の項にありますよう にエタネルセプトを作製した際に、アミノ酸配列が理論値と一致しているということが 確認されております。それから二点目は…。 ○田島委員 教えていただきたいのですが、DV50というのは…。 ○機構 それは先生がおっしゃった後半の方(ふるいの目で分けている)で、要は孔径 が50nmのメンブランのフィルターで物理的にろ過するということでございます。 ○田島委員 ありがとうございます。 ○永井部会長 それはアグリゲーションを起こしていないということですか。 ○機構 この目的物質であるエタネルセプトは50nmでは当然ろ過されますけれども、ア グリゲーションがあれば少しはそこでトラップされると思います。ただ、最終製品に疑 集体が含まれておりますので、100%除去できるわけではございません。むしろウイルス 等を削除する目的があるのですがすべて100%除去できるわけではございませんが、ウ イルスに関しては除去能がございますが、プリオンは50nmではちょっと無理という話を 聞いております。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。そのほかいかがでしょうか。 ○谷川原委員 用量の設定のところでもう少しお伺いしたいのですが、先ほどの報告に もありましたように真のエンドポイントである関節破壊の進展防止は25mg週2回投与 においてのみ確認されていると。日本で実施されました用量反応性試験で10mgと25mg がACR20%の改善率で見て差がなかったということから、日本においては10mgも承認 用量に加えるという話なのですが、御専門の先生がACR20%で見た10mgというもので 本当に患者さんに不利益がないかどうか。それは真のエンドポイントとして効果が確認 されていないのですけれども、そういう考えで用量を決めていいかということなのです。 ○山村参考人 臨床的には恐らくACR20、50、70というのが効果の程度を見る指標に よく使われます。20だと感覚的には患者さんがよくなったかなという状況だと思いま す。恐らく50であればかなりの患者さんの日常生活が元の状態に戻ってきます。70で あればほとんど寛解と申しますか、患者さんのアクティビティーというのは発症前の状 態まで戻っているのではないかと思います。ほぼ病気のない状態と考えていいと思いま す。  ただ一つ問題であるのが、ほかの疾患でもそうかもしれないのですけれども、リウマ チの炎症とあるいはそれに関連した症状を抑えたとしても関節破壊は進行するという事 実があります。多くの疫学調査によりますと、関節の炎症と破壊というのは必ずしも同 じように進まなくて、炎症が止まった状態であっても破壊は進むという状況です。特に 慢性期の患者さんではそういった傾向が強いということがありまして、今すべての疾患 でそうだと思いますけれども、治療のゴールというのは関節破壊、レントゲンで見て関 節の障害が見られる場合は将来的には患者さんのQOLが非常に下がってくるという状 況が生まれますので、関節破壊を防止するというのが一番大きな治療になっていると思 います。恐らく今FDAとかそういった欧米の多くのところでは、薬物の効果として関 節破壊をいかに抑えるかということに非常に重点が置かれている状況ですので、今回10 mgでACR20あるいは50といったものが25mgと同じ程度の効果を示したとしても、臨 床家として欧米のデータを元にして見ると、恐らく長い経過の中では低用量の場合には 関節障害が起こってくる可能性があるのではないかと予測されると考えます。 ○谷川原委員 そうしますと、今回10〜25mgという幅で承認した場合にどのように用量 の使い分けをされるのですか。 ○山村参考人 もう一つの治療の観点として、早期に治療するとより寛解が得やすくて 疾患の進行を抑えることができるという事実があります。ほかの疾患でもそうだと思い ますけれども、欧米では「window of opportunity」と呼んで、非常に早期の患者さんを 早く強力に治療するとより寛解を維持できるということと、もう一つは治癒の可能性も あるのではないかという考え方があります。そういった中で早期であれば薬剤の反応性 は比較的いいというのも事実なのです。そうしますと、長い目で見ると早期の患者さん の場合では10mgで寛解を維持して、最近では5年とか10年と使用した経験などが報告 されておりますけれども、長期的には10mgの少ない量のままで病気を維持できる可能性 があると思います。ただ、ある程度進んだ時期というのは病態的にもより複雑になって、 恐らくは25mgといった高用量を使わないとコントロールできない可能性があるのでは ないかと。一応既存治療で無効な場合といった重篤な患者さんが対象になっております けれども、そういった疾患の重症度以外に時期による使い分けを考えた場合には、10〜 25mg使えるというのはどれぐらいコストの削減になるか分かりませんけれども、そうい った意味でも治療効率を上げるというのでいいのではないかと考えます。 ○谷川原委員 現在は10mg製剤はないですね。これはどう対応されるのですか。 ○機構 今あるのは25mgバイアルのみということで、審査の過程でも申請者の方に強く 求めておりまして、今申請者の方からは10mgバイアルについても早急に日本向けに製造 するということで、その検討を始めているところでございます。 ○谷川原委員 発売までに間に合うのですか。 ○機構 今回のこの承認の発売までには間に合わないと思います。近々できるだけ早い 時期に10mgバイアルを別途承認するということになると思います。 ○谷川原委員 ありがとうございました。ちょっと別のことで添付文書の書きぶり、効 能・効果の中で「既存治療で効果不十分な場合に限る」というのは、下に使用上の注意 が書いてあるのですが、既存治療の中にレミケードは入るのですか。 ○機構 そこは確かに御議論のあるところでございますが、今の例えばACRガイドラ インなどを見ると、基本的にはDMARDで治療した後に生物製剤へ移行するという位置付 けになっているかと思います。したがって、レミケード投与後にこの薬を使用するのか という点については、やはり患者の選択によるのだろうと思います。また、山村先生か らもお話しいただければと思いますが、一つ、この薬は先ほどから申し上げていますよ うにメソトレキセートと併用しなくてもいいこと、あるいは自己注射が可能であるとい うメリットもあって、メソトレキセートのリスクのある患者さんであれば、やはりイン フリキシマブを使うよりもこちらのエタネルセプトが投与されるだろうということも予 想されますし、患者さんの病態によってどちらの生物製剤を使っていくかということに ついては検討がされるべきだろうと思います。海外でも別にインフリキシマブとエンブ レルのどちらがいいかというところは位置付けていない、むしろ現場できちんと判断を していただくということになっているかと思います。 ○山村参考人 どちらを先に使うか、あるいは先行薬を使った後に使うかどうかという ことですが、アラバの問題はよく御承知のことだと思いますけれども、リウマチの治療 から見てもどうも日本人では間質性肺炎の薬剤に関する感受性は高そうだというのは、 経験といいますか、日本のいろいろな臨床的な治験の報告などを見ても明らかなような 気がします。レミケードの一つの欠点は恐らくメソトレキセートを併用しなければいけ ないということだと思いますので、そういった特に間質性肺炎を合併するリウマチの患 者さんではリスクが数倍高くなる、報告によっては10倍ぐらい高くなるということがご ざいます。それを考えますと、間質性肺炎を合併しているリウマチの患者ではメソトレ キセートというのは非常にリスクの高い薬で、恐らく禁忌に近いものだと考えます。リ ウマチの患者でどれぐらい間質性肺炎を合併するかということですけれども、今非常に 高感度CTあるいはCHなどを含めた画像診断の技術が上がっておりまして、推定で半 分近い患者さんが合併している可能性があると言われています。そうなりますと、恐ら く半分の患者さんは自動的にメソトレキセートを使えないということで、レミケードは 使用できないというふうになります。そういった患者さんにはこの単剤で使用できるエ ンブレルというのは、もし重症であればこれしか使えないという状況もあることを考え れば非常に有効な薬剤ではないかと思います。  それともう一つ、どちらを先に使うかという問題は欧米でも非常に難しいのですけれ ども、恐らく1〜2か月に1回注射するだけでいいわけですから、医師の手元で管理し ているということで、高齢者などでは恐らくそういったチョイスの方がいいのではない かと思います。逆にリウマチの患者さんの発症年齢は40歳代が最も多いですから、そう いった働き盛りの方にはむしろ自己注射で自分で管理できるという方を選択される方が 多いのではないかと。そういった使い分けはできると思います。  もう一つ重要なポイントとしてはどちらもTNFという炎症のカスケードを作る重要 な分子を標的にしているわけでございますけれども、このエンブレルの場合にはTNF 受容体の可溶性の分子であるということで、リンホトキシンというもう一つのTNFの ファミリーの分子を阻害することができます。実際に欧米で報告されているのを見ます と、レミケードを使って無効になった患者さんがエンブレルに変更することによって再 び効果が得られたということがあります。そういった患者さんで詳細に関節の滑膜の組 織を採って検討したものでは、滑膜の組織は一般的にはTNFというのが非常にたくさ ん出ているわけですけれども、リンホトキシンという分子が非常に強く、恐らく経過中 に病態が変わった可能性はあると思いますが、そういったふうに長期的にTNF阻害薬 で疾患をコントロールするということも可能ではないかと考えます。 ── 首藤委員着席 ── ○谷川原委員 どうもありがとうございました。よく分かりました。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。 ○田島委員 確かに先生が今おっしゃっていた、私はリウマチ友の会の方々といろいろ お目にかかってお話を伺ったりしますと、とにかく通院するのがつらいということをよ く伺います。そういう意味ではこの自己注射ができるようになると通院の機会が減りま すから、患者さんにとっても非常にいいことだと思っております。ただ、患者さんは中 には我々が当たり前と思う事も間違って理解している方が居りますので、その辺の管理 については先生はどのようにお考えになっていらっしゃるか、教えていただきたいと思 います。 ○山村参考人 私の教室は糖尿病の患者さんの治療も違うグループでやっていますので 病棟で見ておりまして、かなり高齢で難しいかなと思う患者さんでもインスリンの自己 注射をきちんと管理してやられているのを見ます。リウマチの患者さんはこういった二 つのチョイスがあれば、自己注射を回避することも可能だと思います。恐らくこういっ た自己管理する治療というのはより若い方が選択されると思いますので、臨床の現場で はもちろんそういった体制を十分に作る必要がありますが、専門施設ではそういった体 制は比較的早く確立されて、最初は多少の問題は起こるかと思いますけれども、長い目 で見ればそういった問題が減少して、患者さんが余り通院しなくても済むという状況が 生まれるのではないかと思います。  欧米のリウマチ専門施設の先生方に伺っても、欧米の場合はほかにも使用できる薬剤 があるわけですけれども、TNF阻害薬が導入されて大体6〜7割ぐらいの人は元気な 状態で通院してこられ、彼らは余り手の変形などが来ないためにきちんとできるといわ れます。リウマチの患者さん方は非常に手指の変形などがございますので、最初は非常 に難しいのではないかと思われていたようですけれども、彼らは比較的早く使うことに よってほとんど健康な人が通院しているのと同じような状況のようです。日本でも同じ ような状況が生まれる可能性があるのではないかと私は期待しております。 ○田島委員 どうもありがとうございました。 ○機構 事務局からちょっと補足させていただいてよろしいでしょうか。自己注射の件 でございますが、これも我々の審査の中で検討しております。お配りしてあります資料 1-2の3あるいは4のところを御覧いただきながら話を聞いていただければと思います が、我々のイメージとしてはまずこのエンブレルについては必ず病院に行っていただい て、医師の管理下で医師による注射から治療を開始すると。それで1か月くらいたちま して基本的にその患者さんには有効で、なおかつ安全性上の問題等がその時点で認めら れないということを確認した後で、自己注射への移行のトレーニングを開始すると。そ のトレーニングというのは例えばビデオや資料であるとか、直接医師から患者さんへ説 明をしながら、実際に患者さんと一体となって皮下注射をやってみると。そのプロセス は4の「自己注射のためのガイドブック」というところに書いてありますけれども、そ ういったプロセスを経て最終的に医師が何も説明しないで患者さん一人でやってみてく ださいといったときに、問題なく一人で自己注射を完結できることを実演させて、それ を確認した上でもう一度署名をして自己注射の方へ移っていただくと。  自己注射へ移っていただいた後も例えば患者日誌を使うとかそういったもので、自己 注射をするからといって何らかの副作用の漏れがないようにきちんと患者さんに書いて いただくと。基本的には2週間に1回程度はやはり病院の方に来てくださいということ を今申し上げておりまして、その時点で患者日誌などを回収して、例えばそこにきちん と記録できていない患者さん、あるいは自己注射中に何らかの異変が認められた患者さ んは、直ちにその時点で自己注射ではなくてもう一度医師の管理下による注射に戻して くださいというプログラムを今作っております。基本的にはそういったプログラムのト レーニングを受けていただいて、なおかつきちんと自分で管理しようという能力の高い 患者さんについては、特に問題になるようなことはないのではないかと。いきなり全員 を対象にするというのはなかなか難しいだろうということも我々は考えておりますし、 実際に日本で自己注射試験というものが経験的にやられておりますけれども、そこでや られたプログラムが今申し上げたような形で実施しておりますので、そういったプログ ラムを利用することでこの薬をより安全に自己注射プログラムの中で定着させていくこ とができるのではないかと考えているところでございます。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。そのほか何か御質問ございますか。 ○谷川原委員 安全性に関してなのですが、「使用上の注意」のいろいろなところに感 染症という問題が書かれているのです。特に免疫抑制剤と併用する場合は感染のリスク を高めるというのは当然考えられまして、審査報告書にもそう書いてあるのですけれど も、併用注意として添付文書に明示されていないのです。例えば細かい「2.重要な基本 的注意」を全部読んでいくと、(7)に「免疫抑制剤を長期間投与した場合、感染症や悪 性リンパ腫の発現の危険性が高まる」うんぬんと書かれているのですが、もう少し添付 文書を分かりやすくという意味では「併用注意」のところに免疫抑制剤という項目を入 れてもいいのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。 ○機構 可能性としてはもちろんございます。それについて検討させていただきますが、 現時点ではまだレミケードの方にも入っていないということと、そもそもこの薬を使う のは恐らく何らかの免疫抑制剤を使っている患者さんが大部分、ほとんどの患者さんが その対象であろうと思われますので、その辺は少し整理させていただきたいと思ってお ります。 ○谷川原委員 レミケードに入っていないのは承知しているのですけれども、ですから これも同じようにないと思うのですが、そこでもう一度メカニズムから考え直していた だいて、現時点で一番いいと思われる形に整理していただいて、恐らくシクロスポリン も今リウマチの治験等もやっています。将来それが出てくるときに、全体の整合性とし てシクロスポリン等の薬剤の添付文書ではどのように表すか、そういう将来のことも見 越して整合性のあるような形でお考えいただきたいと思います。 ○土屋委員 二点ございます。まず一つは添付文書で販売名の下のところに「本剤は」 というのが赤枠で囲ってございますが、これをこういうところに書くことの位置付けと いいますか、添付文書の記載事項については警告なら警告のところに書くとかいろいろ あるのですけれども、この欄外というのは今まで余り使われたことがなくて、こういう ものが標準化からだんだん外れていってしまうのです。そうすると、やはり添付文書の 構造としてまた変わるのかなとかそういうことがあるものですから、これはなぜ例えば 警告なら警告に入れてはいけないのかということです。  それからもう一点は先ほどの自己注射の件ですが、現在ですと院外処方ということが 当然あるわけでございまして、その場合の対応として資料1-2の3の2ページで「5) 患者さんがエンブレルを受け取る調剤薬局の確認」とございまして、「患者さんが自己 投与に移行する場合、スムーズな薬剤交付のために調査担当医師は事前に患者さんが薬 剤を受領する薬局を確認し、企業に連絡する」と。このこと自体はとても大事だと思い ますし、保険薬局において自己注射のときの様々な手続をとるということも必要だと思 います。ただ、療担規則では基本的には医師が薬局を指定…、あるいはこれは指定はし ていないのだということになるのかと思いますが、そういう問題もございますので、そ のことについては大丈夫ということでございましょうか。 ○機構 まず一点目、TSE関連の注意喚起の話でございますが、これは確かに余りな いのですけれども、既にハーセプチン、リツキサンなどのTSE感染のリスクについて 否定できないものでは、こういう下のところに書いてある添付文書が既に存在するとい うことでございます。今回のエンブレルについてはリスクは否定はできないけれども、 ベネフィットが生まれている、そういう場合どこに書くかという位置付けを考えたとき に、この品目については従来のものと合わせたということでございます。ここの記載の 全体的な位置付けとしては、可能性としては低いのだけれども、一応きちんとインフォ ームしておこうという位置付けに今はなっているかと思います。 ○審査管理課長 二点目の件でございますけれども、先ほど田島先生の方からもお話が ございましたが、一応このものについて薬事法上の審査の結果は、自己投与の適用につ いては医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後本剤投与による 危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認した上で、 医師の管理指導の下で実施することという形になっています。ただ、日本の場合実際上 は国民皆保険という形になりますので、薬事上の承認が下りました後にこの品目の保険 上の薬価が決まりまして、同時に恐らく保険での医師の管理指導の関係の診療報酬上の 手当てもしなければいけないということが起こってくると思います。そのときに今薬事 で審査していただいたような情報を基にその判断がされると思いますけれども、その中 で先生が御指摘のような点も意見としてあったということで、保険サイドの方には伝達 したいと思います。 ○土屋委員 添付文書の件ですが、結局そういう新しい形をどんどん作っていくという ことは決して望ましいことではないと思うのです。空いているところをどんどん使って 新しい注意を…、要するに我々も添付文書の読み方についていろいろ講義をしたりする のですけれども、ここの欄にこういうことが書かれるのだよ、熟読しなさいということ を警告に入れていたりするわけですね。ですからこういう枠外にするということ、それ から赤字、赤枠はこうで赤枠で黒字はこうだといういろいろな教育をやっている中で、 これは少なくともそういう規定がほとんどないところで、過去のものがあるからといっ てこういうことを本当にやっていくのかというのは、最初の段階でもう少しきちんとし ていただきたいという気がいたしました。 ○永井部会長 いかがですか。 ○事務局 事務局より補足します。今御指摘の添付文書の冒頭の記載の件でございます が、平成15年7月に改正薬事法の一部が施行された際に、生物由来製品の関連で一応添 付文書の記載の整備も行っております。特に特定生物由来製品と言われる製品に関しま しては、感染被害のリスクについての注意喚起をまず最優先にしてという意味で、販売 名の下にこういった赤枠のような形で書くようになってきておりまして、今回のケース ですとそれに準じたような形になっているかと思います。したがいまして、その感染被 害の関連についてのこういった冒頭記載は一応制度が施行された当初からこういう形で 考えてきているというものになるかと思います。 ○永井部会長 今までにも例があるということで、よろしいでしょうか。谷川原先生、 どうぞ。 ○谷川原委員 資料1-2の市販後調査の実施計画書で確認させていただきたいのです が、市販後の一定期間全例調査をするということですけれども、その予定をする施設と いうのはいろいろ施設基準、選定基準があるのですが、簡単に言えばこういった基準を 満たして協力できる施設のみにこの薬剤が納入されるという理解でよろしいのですか。 ○機構 そのとおりでございます。 ○谷川原委員 もう一点なのですけれども、審査報告書の27ページなのですが、「代謝 及び排泄について、非臨床試験は必要ない」という、これはいわゆる蛋白ペプチド製剤 に関する一般的な考えなのでしょうか。今回出てきた考えなのでしょうか。 ○機構 基本的には可能な限り調べることが望ましいということで、これまでも指導し てきていることは変わらないと思います。今回のものについては一応出てきている蛋白 シークエンスの理論上の配置は確認しておりますし、具体的に出ているものあるいは海 外の情報等から、この薬について特に何らかの新たな代謝を生むことはないだろうとい うことで判断しておりました。しかし、可能な限り何か検討できないのかということで 彼らに例えば血液とのインキュベーションの実験であるとか、現状できるようないろい ろなことは検討するように指示しましたが、実際血液の凝固あるいは溶解等の問題もあ り同定できるということには至らなかったということでございます。しかしながら、実 際に今見ていますペプチドシークエンスなどの観点からすると、恐らく彼らが言ってい るような通常のIgGの下流領域、そういった代謝経路に乗って最後は細かいアミノ酸 にまで分解されていくのだというストーリーについては、我々としてもそのとおりであ ろうと解釈していいという判断をしました。 ○谷川原委員 今後これは一般的に適用されるのでしょうか。修飾された蛋白質だった ら当然必要だと思うのですが、そういう人の内因性の蛋白と全く同じであるならば今後 こういう考えは使えるのか。というのは、同じ蛋白質ペプチドといってもやはり分子量 によっても分子の形状によっても、腎臓で排泄されたり代謝されたりとかいろいろある と思うのです。 ○機構 なかなか難しい御質問ですけれども、今回の判断が一般化できるというところ までお答えするには我々は十分なデータを持っていないと思います。今回のものについ てもやはり可能な限りの検討はしてくださいということをお願いしておりますので、こ れからもしばらくの間はそういうケース・バイ・ケースの判断をさせていただいて、そ れが新しいシークエンスが入ってきていないということを理論的に確認する、それから ビジュアルマップを確認する、そういうことを一つ一つやって、最終的にどうも一般化 できそうだということになれば、その時点でそういう考えを御提示できるかもしれませ んけれども、今はその判断にはないと思います。 ○谷川原委員 どうもありがとうございました。 ○永井部会長 ほかにないでしょうか。 ○岩崎委員 話を前に戻して申し訳ないのですけれども、クリニカルデータパッケージ は本当に妥当かというところなのですが、日本の試験が用量設定試験だとすればどう考 えても10mgでいいという結論になると思うのです。それとの比較相手である海外臨床試 験を見ると、3か月でプラセボが23%、10mgが47%、25mgが62%というふうに、プラ セボが高いプラスだんだん上がっていると見えるのですけれども、それとそれが同じで あると判断された根拠がちょっと心配だと思います。それからACR20というのがプラ イマリーエンドポイントになっているわけですので、当然ここで比較すべきものではな いかなと思います。先ほどの話ですと20だけでなくて実は50、70が大事だということ ですが、日本の試験では50、70で見ても副次的ではありますけれども、10よりも25が いいという判断はできないような気がするのです。  もう一つ、あとはやはり海外の試験は体格の差がちょっとどうなのかなと思っていま して、中には体重は余り影響がないと書いてあるのですけれども、いかんせん平均体重 20kgの違いがあるということで、それで本当に大丈夫なのかと。ですからもし申請者で あればこの日本の試験結果を見て、もしかしたら10、25では10の方が推定値として高 いというのであれば、日本人あるいはもう少し広げてアジアでもいいのだと思うのです けれども、患者さんの中で10から始めようというのは当然のことではないかと思いま す。したがって、これが実際にどのような使い方をされるのかというところがちょっと 心配なわけですけれども、先ほどの話ですとどちらから始めるのかということは余り明 確でなかったことプラス、10は間に合わないということでしたので、私はそこを非常に 心配しているのですが、いかがでしょうか。 ○機構 ありがとうございます。先生のおっしゃった点は我々も審査当初からチーム内 で議論させていただきましたし、専門委員とも議論してきたことでございます。確かに 日本の臨床試験、ブリッジング試験だけを見てみますと、おっしゃるとおり10mgでいい のではないかという判断になるかと思います。しかしながら、少し繰り返しになります けれども、今回出てきたACRというものと、それから海外はどこの国を見ても今25 mgでしか承認していないと。血中濃度は基本的に国内外で一緒と。  それからどうして25mgを付けたかという必要性でございますけれども、これは審査報 告書の60ページ辺りを御覧いただきたいのですが、ここに「(3)用法・用量の妥当性に ついて」ということで我々の考え方を書かせていただいたつもりでございます。そこに 書いてある表を御覧いただきますと、何が書かれているかということでございますが、 下がこのエンブレルの血中濃度でございます。それからACR20がだんだん一番上に上 がっていっている折れ線でございます。そういうものを見ますと、大体1,500ぐらいで 本剤の有効性がプラトーになるだろうということを考えております。確かに10mgでもA CRは改善しておりまして、10mgで有効域に達する患者さんは恐らくいるだろうという ことで、我々は最小有効用量を10mgと判断しておりますが、こういう血中濃度分布を見 ますとやはり25mgの方が血中のトラフ値などが高いということもありまして、どの患者 さんにも一定の安定した有効域に達していただくためには、恐らく25mgも必要になって くるケースがあるだろうと日本のデータからも判断しているということがまず一点。  それから先ほどから申しておりますが、RA患者にはこういうTNFの阻害剤、抗T NF療法ということについては、やはり真のエンドポイントとして関節破壊の進展防止 もある程度期待されているということでございます。確かにそれは今回の評価項目の中 に入ってきておりませんので何とも申し上げられませんが、やはりそういうところをに らんでこの薬を使っていく方がベネフィットとリスクを考えたときにより好ましいだろ うと。そういうベネフィット、関節破壊の進展防止ということを考えてみますと、この 薬の海外で行われた成績については25mgのみ明確になっていると。それから海外の早期 リウマチ患者の試験がございますが、それで10mgと25mgの関節破壊の進展防止を比較 してみると、やはり10mgよりも25mgの方が効果が高いという結果も出ております。  それはあくまでも海外での結果ですけれども、そういったことを考えると10mgで有効 な患者さんもいますが、10mgだけに縛ってしまうとやはり十分な効果が得られず最終的 には関節破壊まで至ってしまうですとか、どんどん進行していってしまう患者さんが存 在するだろうと。やはりこの薬のリスクそのものを考えてみますと、十分なベネフィッ トが得られないような用量域で治療を続けるということ自体が余り適切ではないのでは ないかと。そういうことを考えて海外の情報などを踏まえると、10mgが最小有効域です けれども、我々としては25mgまで用量が使えるように設定しておくことが日本の患者さ んにとっては一番いいのではないかと。そのときに安全性の方を見てみますと、10mgと 25mgで比較したときに特にこれといって上昇するようなものは認められておりません。 したがいまして、リスクとベネフィットをより向上させるという観点で、25mgについて も用法・用量の中に含めたという判断をさせていただいたということでございます。 ○岩崎委員 先ほどちょっと言ったのですけれども、海外と体格の差がありますね。体 重で20kgという差が平均値であるのですけれども、海外のデータというのはその下での 話だと思うのです。それがそのまま日本でもそうだとお考えですか。 ○機構 体重による層別を有効性あるいは安全性の観点で詳しく解析した結果を提示し ておりますけれども、特に体重別によって何か大きな変動があるということではありま せんでした。体重がもともとファクターとして入ってきたのですが、それは最終的には 軽微な動きでしかないと。むしろ個人間のばらつきの方がやはり大きいだろうという判 断で、確かに外国人と日本人を比べると体重差というのはあるのですけれども、その差 が日本人の有効域を下げているということにはなっていないと確認しておりますので、 その体重差によって日本人の方がむしろ10mgでいいのだという話には多分ならないだ ろうと考えております。 ○岩崎委員 そして結局日本の医療現場で使われるときにはどのようになるのかという ところが、今おっしゃった話は添付文書の中にはないわけです。ですから、臨床試験成 績だけ見ると多分先ほどのACR20の3か月というところしかないと思うのですけれ ども、結局どちらを使うのかというところが…。 ○機構 一つはそういった判断もあろうかと思いまして、審査報告書の中には可能な限 り詳しく書かせていただいたつもりです。今回の全例調査を実施する施設には必ずすべ てこの審査報告書を付けて契約するようにと申請者には伝えております。実際にどう使 っていくかですけれども、先ほど山村先生の方からもお話がありましたが、我々として は患者さんによって10mgを使っていただく。その中でやはり改善が不十分だと、ある一 定期間使ってこの人の症状がよくなっていかないというときには当然増量されるケース もあるでしょうし、あるいは既にDMARD、メソトレキセートなどを十分使っているにし てもやはりこの患者さんは止められないということであれば、最初から25mgを使うとい う選択もあろうかと思います。そこは例えば最初の投与量を10mgから開始し25mgに増 量するといった用法・用量についても我々考えましたけれども、やはりそういう規定よ りも10〜25mgという幅記載をしておいて現場で判断していただいた方が、この薬をより 適切に使っていただけるのではないかと。そこは今後リウマチのガイドラインといった もの、あるいは今後10mgと25mgの関節破壊の進展防止効果を比較する市販後臨床試験 を実施することとなっておりますので、そういった結果が得られたときにより適切な情 報を現場に伝えて、この薬の用量の使い分けといったことが徹底できていくのではない かと思っております。 ○土屋委員 使用の安全という観点からいったときにこれをそういう形で調節するとい う、要するに25mgと10mgがあってそれは構わないのです。ただ、そういうときにこれ を途中の量で止めるということは自己注の場合でもヒューマンエラーとしては起き得る わけです。要するに10mgのものがきちんとあれば、10mgの人はどれほどやっても10mg しかいかないです。しかし、万が一10mgの人が10mgだといってこれを溶いてやったと きに、やはりそこはエラーの可能性があるわけです。そうすると、物によってエラーを 防止できるにもかかわらず、いつか出るだろうといってそれを待つのかと。極端な話、 では25mgの人は自己注に行ってもいいかもしれないけれども、10mgの人はそういうこ とをさせないのかとか、いろいろなことがあると思うのですが。 ○機構 一つ、まず自己注について説明不足で申し訳ございません。今回自己注への移 行を考えておりますのは25mgが適切と判断された患者のみということでございます。医 師の方で10mgで治療をしている患者さんに25mgバイアルを渡して、患者さんの方で調 製して投与してくださいというのはやはりなかなか難しいだろうということで、当面の 間は25mgが適切と判断されている患者のみを自己注へ移行させるということにしてお ります。10mgが適切という患者さんについては、当分の間はやはり病院の中で医者によ る投与ということで徹底させていただきたいと思います。今回部会の方でも10mgバイア ルの必要性について再度強く御意見を頂いたということでございますので、その点につ いては改めて我々の方から申請者に指示して早急に開発するようにということを伝えた いと思います。 ○土屋委員 そうだとするならば、それは少なくとも添付文書に書いておかないとまず いのではないでしょうか。 ○機構 自己注への移行ということでございますか。 ○土屋委員 要するに当面の間であっても自己注は25mgの人だけだという今御説明の あった話は、少なくとも添付文書にないですよね。 ○機構 どちらの用量を移行させるかということについては今のところは書いてござい ませんが、詳細な自己注射移行への手順書等ではそもそも対象になるのが25mg週2回の 投与を受けた患者ということで記載させていただいておりますので、そこを添付文書上 でどう書くかということでございましたら少し検討させていただきたいと思います。 ○土屋委員 基本的には添付文書に必要なことはきちんと書いてあってこれだけは読め と言っているわけですから、その辺はやはりきちんと書いて、10mgが出たらそれは外し ても結構かもしれませんが、それまでは…。 ○機構 ではその旨は追加させていただきます。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。ちょっといろいろ論点があるお薬ですけれども、 少し気を付けてフォローしていただいて、更にまた問題があればこちらに上げていただ くということにしたいと思いますが、そういうことでよろしければ承認とさせていただ きます。  では次の議題に移らせていただきます。機構からお願いします。 ── 山村参考人退席、審議官退室 ── ○機構 それでは議題2、資料2、医薬品キュバール50エアゾールの輸入承認事項一部 変更承認申請の可否等について、機構より御説明させていただきます。この品目も先ほ どと同様審査センターで審査を開始し、機構で引き続き審査を実施した品目でございま す。  キュバール50エアゾールの有効成分はプロピオン酸ベクロメタゾンで、既に本邦で成 人気管支喘息に対して2002年に承認されており、今回の申請は小児に対する用法・用量 を追加するというものでございます。海外では米国、カナダ等22か国で小児に対する用 法・用量が承認されております。本剤の特徴は噴霧剤として代替フロンHFA-134aを用い ていることであり、オゾン層保護条約に基づきフロン製剤については順次製造、販売等 が中止されていることから、本剤を早期に承認するよう日本小児アレルギー学会等から 要望書が提出されております。したがいまして、本申請については迅速審査として取り 扱って審査を進めてまいりました。  本申請の専門委員としては資料9に記載されております越前委員、加藤委員、川崎委 員、下方委員、宮川委員の5名を指名しております。  審査内容ですが、ADMEについては患児での動態は国内外で大きな差はないと考え られ、特に大きな問題はないと判断しております。  臨床成績についてでございますが、フロンを使用した製剤であるCFC-BDPから本剤へ 切り替える臨床試験が実施され、起床時ピークフロー値変化量の平均値は5.4L/minであ り、95%信頼区間はあらかじめ定められた許容範囲内で、CFC-BDPと本剤は同等と判断 しております。なお、本剤はCFC-BDPの半量で同等の効果を示すと考えられます。  安全性についてでございますが、ステロイド剤によるコルチゾール値の減少、副腎皮 質機能抑制等について注意が必要ですが、設定されている200μg以下の用量において現 時点で特に問題はないと判断しております。なお、市販後には長期使用に関する特別調 査を実施することが計画されております。  以上のような審査を踏まえ、本剤については小児に関する適応を追加承認して差し支 えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。 本剤は新用量医薬品で再審査期間は4年、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、 また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。 薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは御討議をお願いいたします。村勢先 生、どうぞ。 ○村勢委員 本剤はステロイド剤だということで、問題は安全性に関してでありますけ れども、本剤の糖代謝に対する影響というのはほとんど記載されていないというような …、これは小児だけではなくて前の大人に対しての注意事項のところにも余り言及され ていないようです。ステロイド剤というとまず我々は糖尿病、糖代謝に対する影響を考 えるわけですけれども、ここでは52ページに代謝・栄養障害に関して影響はないという ことを書いてある程度で、ほかには言及されていません。要するに、取り分け糖代謝に 目を向けてそれに対してフォローアップしていないということです。皮膚科のお薬だと かあるいはこういう吸入剤でもそうかもしれないのですが、量的には恐らく糖代謝には 余り影響はないのかなと思っておりますけれども、やはりその辺は無視することができ ないと思います。小児に対してもこのごろ小児の2型の糖尿病がやはり増えているわけ でありますので、そういうことに対してきちんと検討されているかということと、大丈 夫だったら大丈夫だと、糖代謝に対しては影響はないと言って、なかなか言い切れない とは思いますけれども、その辺に関してのフォローアップを十分検討されていたかどう かということを併せて、ちょっと御回答をお願いしたいと思います。 ○機構 先生がおっしゃるように、例えば糖代謝との関連で尿糖といったものが認めら れていることは確かでございます。しかしながら、我々がこの審査を進める中では例え ばこのお薬は既に販売されておりまして、成人に対する市販後調査等が進められている ということ。それからそれ以外のいわゆる経口ではなくて吸入のステロイド剤という観 点で審査した場合には、今の時点では特にその点が問題になることはないだろうと。確 かに否定することはなかなか難しいのですが、この薬でよりリスクが高いということは ないだろうと判断しております。先生から今日コメントを頂きましたので、その点も含 めて市販後調査の中でまた追ってフォローアップをして評価させていただきたいと思い ます。 ── 審議官入室 ── ○村勢委員 その辺を是非お願いいたします。大人に対しては十分かどうかは知らない ですが、とにかく以前にこれは審査に通っておりますので認められていると思いますけ れども、繰り返しますが小児の場合も2型、要するに大人型の糖尿病があるということ が認められておりまして、独立のものとしてその辺も検討していかなければいけない問 題だろうと思いましたので、一言追加させていただきました。 ○堺委員 今の村勢委員の御質問に関連いたしますけれども、やはりこの添付文書(案) の3ページの上から3行目になりますが、「特に長期間、大量投与の場合には定期的に 検査を行い」となっております。確かに全部を包括するのでこれでいいかなとは思うの ですが、特にこれはやはり内分泌専門の方々だけではなく一般の臨床医の方々がお使い になりますので、もう少し具体的な検査が指示してあった方がよろしいのかなと思いま した。 ○村勢委員 ちょっと追加いたしますと、先ほど尿糖はチェックしているということで すけれども、糖尿病は尿糖でチェックできるようなものばかりではないといいますか、 大半は違いまして、血液の中のヘモグロビンA1cをチェックするとか、そういうこと が必要になってきますので、特に堺先生がおっしゃったように長期に使用されるような 場合にはその辺に対する配慮が必要だろうと思います。 ○機構 まず堺委員の方の定期的にということでございますけれども、今実際には長期 使用の調査ということで1年以上症例を集積することを計画しておりますので、その中 で今おっしゃっていただいた検査項目を付け加えながら観察をしていくということでご ざいます。ここの添付文書の記載でございますけれども、大量投与の場合には定期的に 何を具体的に検査するかというと、例えばフルチカゾンの方では全身に関する事項、身 長、成長過程、あるいは副腎皮質機能との影響などを観察するということも添付文書に 書かれておりますので、そこと少し整合化を図って記載についてはこちらの方で見直し をさせていただきたいと思います。 ○永井部会長 ほかにいかがでしょうか。スペーサーは必要ということだったのでしょ うか。これも今はなくてよいということでしょうか。 ○機構 この臨床試験の中ではスペーサーを使用していない患者さんでもコントロール できたということになっておりますけれども、実際やはり低年齢層になりますとなかな かタイミングを合わせにくい、同調しにくいということがあります。会社の方は今こう いうスペーサーを用意しておりまして、これを無償で提供することになっておりますの で、希望される方についてはスペーサーを使用していただくことは可能です。 ○永井部会長 いかがでしょうか。添付文書の中にうがいの指導というのはかなり強調 して書かれておりますね。よろしいでしょうか。ではよろしければ承認を可とし、薬事 分科会報告とさせていただきます。  では次の議題にまいります。ルボックスについて御説明をお願いいたします。 ○事務局 次は、医薬品ルボックス錠25及び同50並びにデプロメール錠25及び同50 の再審査期間延長の可否についてということでございます。お手元の資料の1枚目に諮 問書が付いているかと思いますけれども、ここに薬事法第14条の4第2項の規定に基づ きということが書かれてございます。薬事法第14条の4第2項には、厚生労働大臣は新 医薬品の再審査を適正に行うため、特に必要があると認めるときは薬事・食品衛生審議 会の意見を聴いて、調査期間をその製造承認のあった日から10年を超えない範囲内にお いて延長することができるという規定がございます。この薬事法の規定を受けまして平 成12年12月27日に医薬安全局長名で、医薬品の市販後調査の基準に関する省令の一部 を改正する省令の施行、及び医薬品の再審査に係る市販後調査の見直しについてという 通知を出しております。その通知の中で、小児の用量設定等のための臨床試験を計画す る場合には再審査期間を10年を超えない範囲で一定期間延長するということが書かれ ておりまして、今回のこの再審査期間の延長の可否と申しますのはその通知を受けて出 されたものであるということでございます。  まず1枚めくっていただきますと「品目の概要」というページがございますので、こ れに沿って簡単に説明をさせていただきます。まず申請者名ですけれども、ソルベイ製 薬株式会社と明治製菓株式会社と二つございます。対象となります品目はマレイン酸フ ルボキサミン、効能・効果はうつ病及びうつ状態、強迫性障害ということでございます。 現在の用法・用量は「通常成人にはマレイン酸フルボキサミンとして、1日50mgを初期 用量とし1日150mgまで増量し、1日2回に分割して経口投与する。なお、年齢・症状 に応じて適宜増減する」という書き方になっております。初回承認日、再審査期間はこ こに記載があるとおりでございまして、その下の再審査延長案の根拠というところを御 覧いただきたいのですけれども、このマレイン酸フルボキサミンについて小児の用法・ 用量の設定及び小児集団における有効性・安全性を把握する目的で、市販後臨床試験と いたしましてプラセボを対照とした二重盲検比較試験を計画しているということでござ います。この試験の所要期間等を勘案いたしますと、再審査期間を当初より4年間延長 することが適当ではないかと考えておりまして、そのことについて今般諮問させていた だくものでございます。御審議よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 ありがとうございました。それでは御意見、御討論をお願いいたします。 樋口先生、どうぞ。 ○樋口委員 このマレイン酸フルボキサミンという薬はSSRIと呼ばれている新しい 抗うつ薬の一つでございます。我が国ではこのフルボキサミンともう一種類SSRIが 市販されているわけでありますが、いずれにしても小児の適応は取っておりません。し かも、もう一種類の方は今使用禁忌となっております。したがいまして、可能性がある のはフルボキサミンだけで、しかもまだ小児に関する適応を取っていないということで、 片方が使用禁忌になったことも影響して、臨床現場の小児の医師の中では非常に対応に 窮していると。なかなか使いづらい、使えない、しかし現場ではこのごろは小児のうつ 病、うつ状態は増えてきておりますので、早く使えるようにしてほしいという要望は非 常に強いと思います。  私がちょっと懸念いたしますのは、もちろんこの内容の4年間延長ということに異議 があるわけではございませんが、非常に困難な市販後臨床試験でございます。この精神 科領域の小児を対象としたプラセボ比較試験というのはこれまでに前例がございません ので、初めての試みであると。大ざっぱな調査をしたところでは日本全国で今のところ 15施設とかどこかに書いてありましたが、可能性がある施設も非常に少ないという環境 でございますので、我々としてはできるだけ早期にこういう試験がきちんと行われて、 臨床現場でそれが使える、使えないということをはっきりさせてもらう必要があるので すけれども、これは4年間やってまだ症例が集積できませんので、更にもう少しやりま すということになってくると非常に困ると。ですから、是非メーカーサイドにいろいろ な学会等に対する働きかけとか、そういうことを積極的にやってもらって、4年と言わ ずできるだけ3年とか2年とかで症例集積してもらって、早い時期にこの使用の可能性 の結論を出してほしいと思っております。ちょっとコメントだけさせていただきました。 ○永井部会長 ありがとうございました。そのほか何か御意見ございますか。基本的に は延長はオーケーということでよろしいでしょうか。それでは承認を可として薬事分科 会に報告させていただきます。どうもありがとうございました。  では議題4のアレグラについてでございます。 ○事務局 次は医薬品アレグラ錠のやはりこれも再審査期間の延長の可否についてでご ざいます。これも資料の2枚目に「品目の概要」がございますので、そちらを御覧いた だけますでしょうか。申請者名はアベンティスファーマ株式会社、品目はアレグラ錠60 mg一つでございます。効能・効果は現在アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴う掻 痒ということでございますが、これも通常成人には塩酸フェキソフェナジンとして1回 60mgを1日2回経口投与すると。なお、症状により適宜増減するということでございま すが、「通常、成人には」という書き方ですので、実態としては小児にも使われるケー スはあるのだと思われます。初回承認日、再審査期間はここに記載があるとおりでござ います。再審査延長の根拠でございますけれども、平成16年2月4日に既に本剤の小児 使用に係る承認事項一部変更承認申請がなされております。しかし、小児における使用 経験の情報を更に集積する目的で、市販後臨床試験(承認事項一部変更承認取得後の母集 団薬物動態試験)及びレトロスペクティブ調査を計画しているということでございます。 これは先ほどのプラセボを対照としたダブルブラインドという試験にかんがみますと、 期間はもう少し短くていいのかなということで、2年間延長で適当ではないかと考えて いるところでございます。よろしくお願いいたします。 ○永井部会長 これについて御意見いかがでしょうか。これは薬剤自体は余り問題ない のかと思いますが、よろしいでしょうか。よろしければ延長を可とさせていただきます。 どうもありがとうございました。  それでは報告事項にまいりますが、まず医薬品塩酸モルヒネ注射液について御説明願 います。 ○機構 まずは議題1について報告いたします。資料5を御覧ください。これは今先生 がおっしゃったように塩酸モルヒネの注射剤についてのものです。現在皮下投与、静脈 内投与により激しい疼痛時における鎮痛・鎮静などの効能・効果で承認されているもの でございます。今般、武田薬品工業株式会社、三共株式会社、塩野義製薬株式会社、大 日本製薬株式会社及び田辺製薬株式会社の5社から、硬膜外投与及びくも膜下投与の新 投与経路、用法・用量などの追加等についての承認事項一部変更承認申請がなされたも のでございます。本投与経路の追加については日本癌治療学会及び日本麻酔科学会より、 当該投与経路の追加等に関する要望書が出されたことを踏まえ、申請者において検討が 進められ、平成11年2月1日の研究開発振興課長、審査管理課長二課長通知であります 「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」に基づき、医学・薬学上公知であ ると申請がなされたものでございます。総合機構における審査の結果、本剤を承認して 差し支えないと判断したものでございます。  続きまして議題2の方に移りたいと思います。医療用医薬品の再審査結果について報 告いたします。資料6-1のプロピオン酸フルチカゾン、フルナーゼ点鼻液から資料6-3 のアカルボース、グルコバイ錠50mg、グルコバイ錠100mgまでの三つの医薬品再審査確 認等結果通知書及び再審査報告書になります。これらの品目については市販後の使用成 績調査、特別調査の成績等に基づいて再審査申請が行われまして、それぞれ審査の結果 いずれの品目についても薬事法第14条第2項各号承認拒否事由のいずれにも該当しな いこと。すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項については変更の必要はないカ テゴリー1と判定したものでございます。なお、資料6-2のツロブテロールについて1 枚めくっていただきますと、真ん中ほどの欄のすぐ下に書いてありますが、本製剤を使 用し承認時に同時に承認された製剤、吸入剤でありますホクナリンエアゾールが、別の 投与経路、貼付剤の開発等によりまして平成12年に承認整理されています。資料6-2 にはその関係で、最後のホクナリンエアゾールの添付文書及び今製剤としてございます 別の投与経路のホクナリンテープの添付文書の2つが添付されているものでございま す。 ○機構 続きまして議題3の優先対面助言品目指定の審査結果について、総合機構の方 から御報告申し上げます。本制度については初めてのものでございますので、若干制度 の説明等を追加させていただきたいと思います。本日机の上に資料7-1と7-2という形 で配付させていただいた資料でございますが、まず制度について資料7-1の方を御覧い ただければと思います。この優先対面助言制度でございますが、薬事法第14条第5項で 規定する「その他の医療上特に必要性が高いと認められるもの」に該当することが期待 される治験薬について、その開発の段階から迅速化を図り開発をより促進しようという ことで、他の品目に優先して対面助言、いわゆる治験相談を行う制度でございます。治 験相談については旧機構時代の平成9年4月から続いておりまして、これを優先的に取 り扱うという制度でございます。申請者、医薬品を開発する相談者が任意で申込みに応 じて有料で相談するというのが治験相談の制度でございます。こういう制度がございま したが、それとは別に医薬品の承認申請の段階で優先的に審査を行うという制度が平成 5年から行われております。  今般優先審査制度のより効率的な運用を図るために、優先審査制度等に関する検討会 というものが昨年9月に開催されまして、本年2月26日に最終報告書が取りまとめられ ております。その報告書の中で、医薬品・医療機器の開発段階から迅速化を図るために 適切な承認申請資料の作成が効率的に行われるように、開発者に対する優先的な指導・ 助言が必要であるという提言がございました。これを受けまして、本年2月27日に審査 管理課長通知が出ておりまして、この中で初めて新たな制度といたしまして優先対面助 言制度が設けられたわけでございます。そして本年4月1日、総合機構ができてから本 制度が開始されております。  なお、このものについて品目指定の申請というものがあるわけですが、これとは別に オーファン、希少疾病用医薬品及び希少疾病用医療用具については自動的に対面助言の 方は優先的な取扱いになるということになっております。また、優先対面助言の指定の 考え方でございますが、これは優先審査品目の選定の考え方に準じておりまして、適応 疾病の重篤性と医療上の有用性を総合的に評価するということで行われております。  なお、この制度に基づきまして医薬品第一部会の関連品目といたしまして9月に2品 目の申請がございました。まず1品目でございますが、□□□□□□□□□□□□□を 予定効能・効果といたします□□□□□□□□□□□、これについては□□□□□□□ □とは別のメカニズムでございまして、製薬企業から申請がございました。もう1品目 については□□□□□□□を予定効能・効果といたします□□□□□□□□□□□□□ □□が、いわゆる医師主導型治験として治験を実施する医師からそれぞれ優先対面助言 の品目指定の申請がございました。総合機構における検討の結果、両品目とも優先対面 助言の品目として指定するという判断を行いましたので、この結果をそれぞれの申請者 に通知しております。  なお、本日は部会の各委員に本制度及び本制度に基づく審査の結果の概要について御 理解いただくために報告を行ったものでございますが、今後とも本制度に基づく審査の 結果が出るごとに本部会に御報告する予定でございます。以上でございます。 ○永井部会長 ありがとうございます。何か御質問ございますか。 ○土屋委員 塩酸モルヒネ注の件なのですが、このアンペック注1%のものは販売名は 「アンペック注」で止まっているのでしょうか。もしそうであるならば、6月2日の通 知があって既存のものにもという話になればアンペック注1%なら1%…、たしかアン ペック注は200mgは200mgという名前が付いていると思うのですけれども、そういうこ とをさせているのかどうかという点が一つ。それから三共のものは添付文書では販売開 始時期不明となっていますけれども、こういうことが本当にあるのかということをお伺 いしたいのですが。 ○事務局 事務局からお答えいたします。アンペック注もそれから三共のものもそうな のですけれども、用量に関しては医療事故防止のために明確にするようにという通知も 出ておりますので、それに基づいてきちんと他社と同じように明記するように一部変更 承認をしてもらうという話を指導しております。 ○永井部会長 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ御確認 させていただいたということにいたします。以上でございますが、事務局から何かござ いますか。 ○事務局 事務局からの報告でございますけれども、今年の8月19日にこの部会で御審 議いただいた塩酸プラルモレリン及び注射用GHRP科研100、臭化チオトロピウム水 和物及びスピリーバ吸入用カプセル18μg、ヘプセラ錠10及びゼフィックス錠100の併 用療法の効能、ペグイントロン皮下注用50μg/0.5mL用、100μg/0.5mL用、150μg/0.5mL 用、イントロンA注射用300、600、1000及びレベトールカプセル200mgの併用効能につ いて、本年10月22日付けで承認いたしましたので報告をさせていただきます。  それから次回の本部会の日程でございますけれども、現在調整中でございまして、ま た決定次第御連絡をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 以上です。 ○永井部会長 よろしいでしょうか。それではこれで本日の部会を終わらせていただき ます。どうもありがとうございました。                                     ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734) - 1 -