04/11/19 平成16年度第2回雇用政策研究会議事録             平成16年度 第2回雇用政策研究会                       日時 平成16年11月19日(金)                          9:30〜                       場所 厚生労働省共用第7会議室 ○小野座長  定刻になりましたので、ただいまから、雇用政策研究会を開会いたします。本日は、 あらたに委員に就任していただきました、政策研究大学院大学教授の黒澤昌子先生がご 出席ですので、簡単にご紹介をお願いします。 ○黒澤委員  これまでは、どちらかというと職業能力開発の政策のあり方ですとか、政策の評価・ 研究などを主にやってまいりました。よろしくお願いいたします。 ○小野座長  では、お手元の議事次第にありますとおり、本日は事務局から資料が提出されており ますので、まず事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○中井雇用政策課長補佐  本日はフリーディスカッションということで、今後の我が国の経済のシナリオ及び雇 用政策の課題についてご議論いただければと思っております。第2回目ですが、第1回 目に続いて我々からいろいろ議論の材料を提示させていただいて、それをもとにいろい ろご意見をいただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  資料No.1は、雇用政策研究会で議論して頂く論点(案)です。これは第1回目に提 出した資料に、ご指摘があったことなどを盛り込んだ形で整理しております。資料No.2 は追加資料です。こちらは第1回目の指摘を踏まえ、いろいろ宿題をいただいたものも ありますし、あるいは、今日の議論のため、いくつかデータ等を追加しております。  資料説明の前に、今回から出席される委員の先生もいらっしゃいますので、今回の雇 用政策研究会の趣旨について、手短に説明いたします。ご承知のとおり、2007年には人 口が減少に転じて、団塊の世代が60歳代に到達する状況にあり、我が国の経済・社会が 大きな転換点を迎えることになり、産業、企業活動、社会保障制度、地域社会をはじ め、あらゆる分野に深刻な影響を与えかねないと。こうした中で、人口減少社会におけ る経済・社会の姿について、複数のシナリオを展望していただいて、それらの実現に必 要な諸条件の整備、それに向けた今後の雇用・労働政策のあり方について、検討を行う というのが今回の研究会の趣旨です。第1回目でも申し上げましたとおり、来年の初夏 ごろまでには、一定の報告を取りまとめていきたいと思っておりますので、よろしくお 願いいたします。  それでは資料説明に入らせていただきます。資料No.1をご覧ください。論点として 大きく3点挙げております。1点目は、「今後の我が国経済・社会の展望」です。これ については、今後の経済成長率、経済産業構造がどう変わっていくか、生産性の上昇程 度をどう見通していくか、これらが大きなテーマであると考えております。これについ ては前回の研究会において、例えば生産性の上昇の見通しに当たっては、過大なものと ならないように留意が必要ではないか、また、少子化の論点については、少子化が進ん だとしても1人当たりの資本装備率が高まって、生産性が高まれば特に問題はないとい う議論が世の中にあるが、果たしてそうした循環が働くのかというようなことについ て、この研究会で回答を考えていく必要があるのではないかというご指摘があったとこ ろです。  2点目は、今後の我が国労働市場の展望です。これは(1)で想定した経済・社会の 展望を前提とし、今後の労働市場を展望するということで、シナリオとしては大きく考 えて、できる限り多くの人が就労し、社会の支え手となるケース、あるいは高齢者、女 性、若年者等の労働力率が、これまでの趨勢のまま推移して、結果として全体の労働力 が大きく減少するケースということが、想定されるのではないかと考えております。こ ういったシナリオごとに、労働力の需給の推計を行っていきたいと考えております。  幾つかの論点として、政策的に労働力率を引き上げることについても考えるというこ とや、あるいは、就業形態の多様化という中において、労働時間についてどう考える か。特に非正規型の社員の労働時間をどう考えるかということ、そういった方々の全体 の労働者に占める割合はどうなっていくか、ということについてもいろいろ考えられる のではないかと考えております。そうした中で、産業、職業、あるいは地域といった切 り口から見通していきたいということです。前回ご指摘があったのは、例えば納税就業 者や保険加入の資格のある就業者などのように、社会全体のことを考えるに当たって、 納税や社会保険などの加入ベースで考える等、目安になるものを考えていくべきではな いかと。また、人口減少については、いろいろ言われておりますが、その中でメリット とデメリットを整理することも重要ではないかというご指摘です。  以上のような1、2の展望を踏まえ、3点目は、今後の雇用・労働政策のあり方につ いて検討することとしております。その中の論点として(1)〜(5)まで示しております。 (1)について、 前回の議論では、例えば高齢層では、高齢者は働くことが生きがいにな るという議論もあってしかるべきではないか。また、多様な就業形態間における均衡処 遇の在り方ということで言えば、パートの供給がいつまで続くのか、どのくらい増えて いくのか、そういった議論が大きな論点になるということです。あるいは、流動化とい う言葉でよく言われていますが、フルタイムで働く時代は終わったという議論、あるい は長期雇用についての議論、フリーターの増加は問題であるという議論を、どう折り合 いをつけていくのかを考えるべきではないか。また、先ほど申し上げた納税就業者とい う概念について考えてみたらどうか、というご指摘もありました。  3頁の(2)は生産性に関する政策ということで、いわば若年者をはじめとした職業能 力向上への取組というところで、能力向上という供給面の問題として、能力形成プロセ スが大きく変化していることから、きちんと議論しておく必要があるだろうと。また、 賃金、処遇、雇用管理という関係では、所得格差等の拡大や階層化が現われつつある が、どのようにその部分を反映させたらよいのかという議論をしたほうがよいのではな いか、というご指摘もありました。  (3)の少子化に関する政策では、子供を産み、育てたいと考える人にとっての良い環 境を整えるべきであり、その良い環境とはどういうものかという問題を、正面から捉え て議論したほうがよいのではないかというご指摘がありました。  (4)の地域雇用政策では、地方公共団体の人材誘致を含め、定年退職者等による地方 への人材移動を進めるべきではないか、というご指摘がありました。  (5)の外国人労働者問題では、日本としての受け止め方の整理がまだされていないの ではないか、研究会できちんと整理しておいたほうがいいのではないか、というご指摘 がありました。こうしたご指摘を踏まえ、本日のご議論につなげていただければと思っ ております。  引き続き資料No.2について説明いたします。本日ご議論をいただきたいと思ってい る話の中心としては、今後の我が国の成長率、経済産業構造の変化、生産性の上昇程度 の見通しを我々としては重点に考えており、そのための参考資料です。  1頁は、我が国の実質GDP及び就業者数の長期的な伸び率の推移です。全体的に成 長率は鈍化傾向にある中で、就業者数も、実は高度成長期以降、伸び率は2%前後でず っと推移してきましたが、近年になって減少傾向で推移している状況になっておりま す。  2頁は、そうした中での労働生産性上昇率の推移です。こちらも成長率同様、長期的 に上昇率は縮小傾向で推移しています。2002〜2003年に拡大したということですが、生 産性はこういう姿になっています。  3頁は、ここ10数年間の生産性の産業別の数字を見たものです。製造業は相対的に高 い水準できており、一方、建設業はずっとマイナスです。サービス業等は相対的に低 く、御売・小売業はだんだん低下傾向にあります。  4頁は、成長率等を国際比較したものです。最近の主要国のGDP成長率の推移を見 ると、1994年以降、日本とドイツは相対的に低く推移しており、一方、アメリカ、イギ リスは相対的に高くなっています。ただ、近年は少し低下傾向にあります。  5頁は、生産性です。日本は1984〜1993年にかけて相対的に高くなっていましたが、 その後、低下しました。一方、1999〜2003年の最近の傾向では、ドイツ以外の主要国の 上昇率は、概ね2%程度になっています。以上が、いまの経済あるいは生産性の姿にな ろうかと思います。  6頁からは、前回のご指摘を踏まえ「人口減少社会がもたらす影響(メリット・デメ リット)について」です。この人口減少について言えば、メリット・デメリットと2分 的に整理し難い面もありますので、ここの整理では、人口減少社会がもたらす影響につ いて、今後の経済成長をどう見るかという切り口を中心に整理をしました。大きく二つ の見方に分けますと、一つは、人口減少下でも技術革新・労働生産性向上により引き続 き経済成長が可能であるという見方です。ただ別の見方としては、生産性の向上があっ ても、労働力の減少あるいは貯蓄率の低下による資本ストックの減少により、経済規模 の縮小は避けられないという見方です。その場合においても、1人当たりのGDPは維 持されるということで、必ずしも悲観的な見方をしている限りではないということで す。  最近の主な論調を見ますと、将来も経済成長が可能であるという見方、これは期間の 取り方によって変わるのですが、今後10年で年2%程度の成長が可能であるという考え 方、あるいは分析、そういったものがあります。また生産性についてどう見るかという ことですが、生産性の上昇が年1%ぐらいあれば労働力の減少を補って、GDPは一定 のレベルを維持していける、最低でも、0.46%に維持できれば、1人当たりのGDPを 一定に維持できる。そういうことで長期的に見ても悲観していないという見方もありま す。  7頁ですが、労働力人口の減少している国は生産性が2%ぐらい上昇しているという ことで、今後においても、例えば2025年まで2%、2050年まで1.5%の労働生産性の伸 び率を想定すれば、実質経済成長率も、2025年まで1%台半ば、あるいは、2050年まで 0.5%程度の伸びが期待できるという分析もあります。一方、経済のマイナス成長は避 けられないという指摘もあります。例えば、就業者数が減少し貯蓄率が緩やかに低下し ていく、その中で労働投入の減少、資本蓄積の減少からマクロの経済成長率も低下して いき、成長率は2020年代に入るとマイナスになるだろうという分析もあります。また、 労働力の投入という観点で言えば、労働力率を上げても、特に女性については、人口の 減少と相殺されて、大して労働力は増えないということや、高齢化による資本のストッ クが減少していくことで社会全体の実質GDP成長率は、2030年代からマイナスになる という整理をしているものもありました。  そういった中で、マイナス成長でも、必ずしも問題ではないという考え方もありま す。1つは、労働力人口の減少の速度が上昇するので相対的に人手不足になる。また、 雇用者1人当たりの資本ストックが大きくなるために、労働生産性が向上するというこ とで、1人当たりで見ると、実質賃金も向上するし、あるいは失業率についても改善が 見込めるという見方もされています。同様の見方がいくつかある中で、労働のあり方も 抜本的な改革が必要である。人口減少期は失業リスクも減り、過重労働を減らすのは、 この機会であるという指摘もあります。  8頁は、深刻なのは、少子化よりも団塊の世代が高齢化するという意見です。技術進 歩による生産性向上よりも労働力人口が減少するスピードのほうが速く、2009年から日 本経済はマイナス成長に転じるという見方もあります。この場合でも1人当たり国民所 得は維持されるということで、生産性向上と賃金上昇が続けば、時短が進む、余暇につ ながるということで悲観することはない、という意見もあります。  あとは、今後の人口動態と地域経済に関する見方です。これについては、都市圏と地 方圏で見たときには、今後については高齢化が、特に大都市圏のほうが進むので、大都 市圏のほうが厳しくなるのではないかという中において、地域バランスを考えて、例え ば、一部すでに開発された地域から「賢い撤退」をしていくことが必要ではないかとい う意見もあります。同様に、高齢化が都市部の方が進み大都市圏ほど経済が縮小するの で、大都市圏と地方圏の経済格差は小さくなる。これを消費主導経済への移行に伴って 労働力や産業の分布も分散化されていくという見方もあります。単純に人口で考えた場 合は、都市圏は人口増加が今後もしばらく続く。一方で、都市圏以外の所については、 もう既に人口減少が始まっており、例えば2030年には、2000年の4分の3程度まで減少 すると予想される、といった指摘もあります。  9〜11頁は、昨年度の『経済財政白書』の楽観論と悲観論の比較です。人口規模と経 済成長、労働投入と経済成長、資本投入と経済成長、技術進歩や人的資本と経済成長の 観点で整理をしていますので、ご参考にしていただければと思います。なお、説明は割 愛いたします。  あと、何点か前回いろいろご指摘があったことについて資料を揃えました。12頁から は所得格差です。12頁はジニ係数が近年数値がどんどん高くなって、所得格差が広がっ ているのではないかという分析です。  13頁は、年齢別格差の状況です。同じ年齢層で時系列に見ると、高齢層の収入格差は 縮小傾向にあります。一方、若年層では、わずかながら拡大傾向で推移しているという 結果になっております。  14〜15頁は、パートタイム労働者と一般労働者の賃金格差です。いずれにおいても近 年、両者の格差は広がっている分析結果となっております。  16頁は、就業率及び納税就業者の割合を時系列で見たものです。就業率も低下をして おり、また、納税就業者の割合も低下しているのが最近の状況です。  17頁は、高年齢層の就業者数の推移です。特に定年近辺の高年齢層がどの程度のボリ ュームにあるかです。「国勢調査」「就業構造基本調査」について、それぞれ大都市圏 とそれ以外についてです。1歳刻みにとれる国勢調査では59歳、5歳刻みでしかとれな い就業構造基本調査では55〜59歳ということで、全体と比較したものです。近年の傾向 としては、13大都市、あるいは13大都市以外の各々においても若干高齢層の増加が見ら れている現状です。  18頁は、55〜59歳の雇用者を全体と比較して見たものです。この10年間程度で55〜59 歳は429万人から530万人へと、約100万人増加しています。  19頁は、就業理由です。高齢者の就業動機が、年齢が上がるにつれて変わっていると いう資料です。20頁は、都市の住みやすさの状況。21頁からは、諸外国の少子化政策の 概況です。これは今後の議論で活用したいということで、本日は、説明については割愛 させていただきます。 ○小野座長  意見交換に移りますが、いまお示しした資料について、何かご質問等ありましたら、 まず、その辺から議論をしていただければと思います。 ○八代委員  追加資料の12頁の所得格差の問題ですが、これは非常にいろいろな要因で世帯別で見 た格差が拡大しています。ここには世帯の小規模化とか、世帯主の年齢構成の高齢化と いう2つの要因が指摘されております。これ以外の大きな要因としては、やはり共働き 化があると思います。つまり、昔は世帯主の所得が低い層で女性が働いていたために、 共働きというのは世帯間の所得格差を縮小する要因であったのが、今や、世帯主の所得 が高い世帯でも、高学歴の女性が働くことによって所得が増える。そうすると、世帯格 差は当然広がるわけです。そういう所得格差の拡大は、何ら社会的に問題はないわけで す。  そういう意味で、所得格差というときには社会的に問題のある格差、例えば、世帯主 間での所得格差が広がっているという問題と、配偶者というか、共働き等の働き方の多 様化による要因は、きちんと分けて考えなければいけないのではないかと思います。そ うでないと、例えば規制緩和をするから所得格差が拡大するという俗論が出てくるわけ で、そういう意味でも、もう1つの「共働き世帯の要因」を是非、何らかの形でチェッ クしていただければと思います。  もう1つは、賃金格差と言ったときに、労働市場だけで見ていいのかどうかというこ とです。これは10年ぐらい前に『海外経済白書』で1度やったのですが、人口ベースで 見た所得格差というか、そういう概念を持っているわけです。つまり、無業の専業主婦 が低賃金のパートタイム労働者になったときに、労働市場だけで見れば、それは賃金格 差が拡大する要因と思われるのですが、人口ベースで見れば、それはゼロから少ない賃 金の労働者になったわけですから、むしろ所得格差は改善しているわけです。そういう 意味でも、多様な形で所得格差の推移を見る必要があるのではないかと考えておりま す。もし可能であれば、そういう分析も是非、お願いしたいと思います。 ○樋口委員  今回の研究会の目標は、少子高齢化の進展が経済にどういう影響をもたらすかが1つ だと伺っております。そうした場合に、先ほどのGDPの成長、あるいは産業構造の転 換がどうなるかといったことも重要な問題ですが、同時に世帯構造の変化というような こと、あるいは個人の行動の変化、こういったものもポイントになってくるかなと。特 に労働供給制約ということを考えると、需要面もさることながら、世帯側の変化も相当 大きく経済にも影響を及ぼしてくるわけです。従来よりは、そこのところを注目してい かなければいけないと思いますので、そういったデータがあれば、いまの八代委員の指 摘とも合わせて、お願いしたいと思います。 ○八代委員  No.1の資料のどこに当たるか分かりませんが、労働生産性と言ったときにミクロと マクロの違いがありまして、ミクロであれば1人当たりの資本装備率とか、技術進歩が 重要な要因ですが、マクロであれば、いま樋口委員も言われましたが、就業構造の変化 です。つまり、生産性の低いところから生産性の高いところに労働者が移動すること で、マクロ的に見た労働生産性は上がる、そういうものもこれからは非常に重要である わけです。そういう観点というか、就業構造の変化と言ってもいいのですが、それを注 目する必要があると。  それから、労働力が減少する時代は、GDP成長率はあまり意味がないわけです。こ の中にも一部書いてありますが、ターゲットとなるのは労働生産性の上昇率です。だか ら人口が減ることにより労働生産性が上がるのか、下がるのかが最大のポイントで、そ こに議論を集中したほうが効率的ではないかと思います。 ○大橋委員  1人当たりの生産性も非常に大事だと思いますが、社会の明るさというか、業界の明 るさのようなもの、つまり、利益率の動きが非常に大きいと思うのです。利益率の格 差、それと推移といったものについて、できたら見せていただきたいと思います。 ○黒澤委員  追加資料の14頁で「パートタイム労働者と一般労働者との賃金格差の推移」とありま す。これに関連してですが、この背後に、パートでなくてもいいのですが、いわゆる非 正社員と正社員と括った場合に、非正社員の賃金の分布がどうなっているのか、その推 移もあると非常に有用ではないかと思います。 ○小野座長  非正社員ですね。 ○黒澤委員  はい。パートでもよろしいのですけれども。いわゆる、だんだんと卸売・小売、流通 などの分野では非正社員でも、以前に比べれば高い時間給で働かせる、責任を任せるよ うな動向も徐々に見えているのではないかと思われますので、その辺りもわかればいい と思います。 ○八代委員  パートと一般労働者の賃金格差の拡大といったときに、どちらにより原因があるのか を見るために、例えば一般賃金のほうの賃金のうち、年齢構成の変化のようなものを取 り出せないかどうか。つまり、1990年のときの年齢別労働者の比率を固定して2001年ま でもってきたときに、どのぐらいの格差に変わってくるのか。つまり、年功賃金及び賃 金の高い高齢者層に一般の労働者がシフトすることによって、自動的に格差が広がって いるという要素がどのぐらい重要かということを見たいわけです。それとも、パートの 人の賃金が年々下がっているから格差が広がるのか。ここはかなり政策的に重要な点だ と思います。 ○小野座長  それは計算できますよね、固定ウェイトでやるというのは。 ○樋口委員  先ほどからパートという言葉がしばしば出てきておりますが、労働時間が短いという 基準で考えていくのか、あるいは有期雇用であるか、期間限定であるかでは、かなり違 った意味を持つだろうと思うのです。例えば、一国全体におけるマンアワータームで労 働力供給がどうなるのかということであれば、これはフルタイマーとパートタイマーの 増加や減少がどうなってくるかは重要ですが、能力開発や雇用の安定、生活の安定とい うことであれば、それと同時に期間の限定された雇用者なのか、最近であれば契約労働 者であるのかどうか。そういったところが政策的には非常に重要な問題になってくると 思いますので、両者を使い分けて議論したほうがいいと思います。かなりダブッてい る。非正社員というと両方で限定しているわけですが。  国際的に議論する上でも違ったものになってくると思いますので、そこのところを分 けて、統計を作ってもらえないかと思います。賃金格差の議論も同じと思いますので、 お願いします。 ○小野座長  そういうデータは利用できますか。 ○樋口委員  派遣、雇用形態あるいは有期かどうかということについて、「就業構造基本調査」で は聞いているのですね。それを特別集計すれば可能だと思いますが、行っているものが あるかどうかはわかりません。 ○小野座長  それが、もし可能なら。 ○勝田雇用政策課長  データに当たってみます。可能かどうかは、ここでは即答できません。 ○小野座長  先ほど八代委員がジニ係数の所で、共働き世帯のところに注目して発言をされました が、それは厚生労働省の所得再分配調査ですよね。これでできますか。 ○中井雇用政策課長補佐  これもデータを見ないと、わからないとしか申し上げられませんので、そこは確認を させていただきます。 ○小野座長  今までは共働き世帯が所得分布を平等化する役目を持っていたけれど、高所得層でも 共働きが増えているために、かえって格差が大きくなってしまうという指摘があります ので、八代委員が言われましたが、絵を見るときは重要なポイントですから、そこは何 か補強するようなデータがないといけないと思います。 ○石井雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課長  パート賃金の格差の拡大の関係ですが、八代委員がおっしゃったように、確かに年功 賃金の関係で正社員が上がっていくことによる影響はあろうかと思います。パートタイ ム対策を議論した際に研究会報告をまとめておりまして、その際に分析をしているので す。職種の構成変化によるところが最も効いているようです。平成8年と13年を比較し た場合に、職種構成を揃えた場合と揃えない場合では全然格差の開きが違っておりま す。ちなみに調整前の段階ですと、平成8年と13年では72.5から68.3と、かなり大きく 拡大しています。職種構成を揃えた場合には、82.6から80.3とさほど変動は、相対的に はないという状況です。  おそらく効いておりますのは、相対的に賃金の水準の低い職種でのウェイトが我が国 は高まった、これが平均値でのパートと正社員との賃金格差の拡大につながった大きな 要因ではないかと思います。 ○八代委員  そのときに政策的な意味で言いますと、賃金の高い職種から賃金の低い職種にパート が動いているのか、それとも無給の専業主婦が賃金の安いパートのほうに入っているか で、だいぶ意味が違います。世の中が悪くなっているのか良くなっているかという計算 になるわけですから、それも是非よろしくお願いしたいと思います。  格差が広がると、とにかく世の中は悪くなっているのだという人が非常に多いですか ら、その原因について、是非、分析をよろしくお願いしたいと思います。 ○島田委員  雇用政策の課題について2つほど問題提起させていただきます。1つは、雇用と言っ たときに、供給側の議論も大変重要ですが、需要側の議論も大切で、需要と供給で雇用 が成立するわけですから。この需要をこのレポートで研究するのかを確認しておきたい のです。  特に、今後の我が国経済のシナリオというものを前段で位置づけるとすると、供給以 上に需要のことを考えることになるのではないかと思います。そのときに地域的な需要 構造はどうなるかを考えておく必要があるのではないかと思います。人口構造は、これ から高齢化して、少子化して、労働力は減りはじめているわけですが、長期的には人口 そのものも減っていく。我々は、少なくとも5年、10年を見通すと、かなりはっきり減 っていくと見ているわけですが、そのときに東京のような大都市と地方ではどういう減 り方をするかというと、東京のほうが減り方は少ないでしょうから、地方がものすごく 大きく減ってしまう可能性があるわけです。そのことは、多分需要構造を反映して減っ ていくのだと思うのです。地域に需要があれば、そういう減り方はしないだろうと思い ます。  戦後50年、日本列島で、東京、大阪、名古屋、福岡等に人口が集中しました。これか らの高齢成熟社会というのは、もう少し人口や労働力分布が、極端な工業化時代ではな くて、もう少し広がっていく。生活者時代というか、そういう時代が展望できるのでは ないかと思うのです。その辺はどうなっていくのか、という論点があったほうがいいよ うな気がします。  私が1つ仮説を持っているのは、雇用政策として地域の需要をおこしていくようなこ とを考えてもいいのではないかということです。それはどういう格好でおきるかという と、一昔前だと4つの方程式でおきたと思うのです。それは何かというと、交付金を増 やす、補助金を増やす、減税をする、工場誘致をする、この4つです。ところが前段の ほうは財政的に非常に難しくなってきているし、工場誘致も非常に難しくなってきてい る。  どうするのだというと、実は人口の再配分がもし起きると需要が出てくる可能性が非 常にあるのではないか。つまり、首都圏に集中した人たちが定年退職を迎えるわけで す。その中に、すべての人ではないと思いますが、相当数の方々が、もっと健康的な、 もっとリラックスした生活をしたいと、老後の生活プランを、いい機会があれば、条件 の恵まれた地方で過ごしたいという方々が相当数いらっしゃるのです。実際に最近は自 治体がそのことに気がつきはじめていて、何かやろうと。一昔前とは違った考えで、よ り高いアメニティを地方でできないかという考え方があって、その辺の可能性について 探っておく必要があるのではないか。  例えば、相当数のまとまった方々が地方の中小都市に、例えば数百人の人が移り住ん だというようなことがあると、それ自体が、本屋さん、ガソリンスタンド、ラーメン屋 とかいろいろなものを生むわけです。それ自体が需要を創出する。若い人たちも雇用機 会が提供される。国の全体の需要構造や人口配分から見てもノーマライゼーションが起 きる。  いま全国の住宅を調べて見ると大変高い空き家率ですし、公共施設も非常に空いてい ます。ですから新しいものをつくる時代ではなく、すでに我々が持っているものを活用 し、そしてアメニティを高めていくことがあり得るのではないか。地方自治体もかなり 関心を持ちはじめているので、少しそういうものを展望してはどうかと。研究会として 非常に重要なデータは何かというと、大都市圏に集まった方々の年齢構造、就業上のス テータス、どのぐらいの人たちが定年退職というか、老後生活に入ろうとしているの か。そういう人たちがどこに住みたいのかというのは、調べるのは無理だと思います が、いろいろなデータがあると思います。国調は口座預金を調べていますし、就調も調 べている。しかし、どれも我々の必要からみて全く適合するデータはないのですが、3 つか4つのデータを参考資料として比較できるように揃えていただけると、どのぐらい の規模の人たちがそういうことになっているのか。  人口構造から見ると、いまの定年退職者の年齢は、男女合わせれば1年間に250万人 ぐらいいるわけですが、100万人ぐらいの人が、いわゆる定年退職に近い形で離職しつ つあるのではないかと思うのです。そのうちの半分ぐらいの人はハッピーでは必ずしも ないのではないか、住宅はきちんと確保されていないのではないか。おそらく3分の1 ぐらいの人は、いいチャンスがあればいい所へ行ってみたい、という気持があるのでは ないか。それで地方も、そういう人たちがいるらしいということを気がついていても、 まとまった対策をまだとっていないのです。しかし、北海道でも九州でも非常に関心は 高まっています。そういうベースになるようなデータを揃えて、どのぐらいの人が移動 予備軍でいるのかどうか、どういうアメニティを提供できるのか、というようなことを 考えると、マクロで見た数字も相当変わってくる可能性があると思います。  もう1つは、失業は最近そんなに問題にならなくなったかもしれませんが、むしろ若 年のNEETのような問題なのかもしれません。ただ家族を抱えた長期失業者は依然と して相当な、何十万人かはいるわけで非常に厳しい問題です。この実態がどうなってい るのかが、実は非常にわかりにくいのですが、雇用保険の業務統計ではわかるのです。 業務統計で限度まで失業保険をもらっている家庭は明確にわかりますし、その後の延長 給付もよくわかりますが、それを過ぎると、私の印象では何もわからない。他方、労調 ではわかるのですがベースが違います。  実は、こういうことをしてくれるとずっとわかりやすくなるのです。労調の項目の中 に、長期失業者は主にどのような所得で暮らしていますかという項目が入ると非常にわ かりやすい。その中に、雇用保険は受給しているのか切れたのか、いつ切れたのかがあ ると、業務統計と労調はある程度つながるのです。つまり、雇用保険関連のステータス に1つ質問項目が入っているといい。それから、どういう所得で食べているのか、この 2つのクエスチョンが入ると、つながるはずです。労調の場合は、大まかな地域分布が ある程度わかります。そのデータがなかったので、実は1年半前に総務省が強く働きか けて、特別に2回ばかり特別調査をしてもらったことがあるのです。それは実験でやっ たのだから、その後ずっと継続してくださいと強く申し上げたのですが、総務省の回答 は、そういう要望は労働省からきていませんと。労働省からこないと駄目なのですね。 私は内閣府特命顧問としてやったのですが、特命顧問は何の意味もないのだと言われま して、労働省から要望がなければいけないと。そこで労働省に働きかけて、労働省と一 緒になってお願いしたのですが、今度は、統計審議会で認めなければいけない、統計審 議会は順序があって、期間があって、そういうことが論議になるのは2年後だ、そして 実際に行うのは3年後だということだったので、私は3年経ったら国が滅びるかもしれ ない、統計局の責任だぞ、と息巻いてきたのですが全然相手にされませんでした。  あるとき総理と一緒にテレビに出たときに、そのことを言ったのです。唯一1つだけ それを言ったのです。闇夜に向かって鉄砲を打とうとしているのか、この国はとね。何 も統計がない中でなぜ労働政策ができるのだと言ったら、統計局長がふっ飛んで来て、 わかりました、やりますというので2回やってくれたのです。その後、調べていただい たら消えているのですね。そういう要望はイレギュラーな要望だったらしくて。  私は正式な雇用政策研究会のような所で、そうではないと、なぜ労調に失業保険との 関連の質問が入ってないのか、どういう所得で食っているのか、この2つを入れてほし いのです。そうすると、業務統計が切れた後どこへ行ったのかがある程度見えてくるの です。つまり、霧の向こうに見えてくる。労働政策で長期失業者をどうするのかという のは、特に中高年の場合は非常に難しいです。再訓練の問題があり、再配置の問題があ りといろいろあるのですが、どこの地域がどうなっているのかというのが、例えば京都 なら京都、和歌山なら和歌山の労働局の方は現場ですから知っているのです。だけど、 それが全国でどう展開しているかがわからないのです。  全国でどう展開しているのかがわからないと、全国の戦略図が見えないですよ。現場 では、それぞれ大変だとかという話は上がってきますが、つながっていませんから。だ から、業務統計と労調を組み合わせた数字を作っていれば、全部見えるわけです。これ を真剣に議論していただきたいなという問題提起です。 ○樋口委員  第1点は全く賛成です。地域の雇用創出が今後非常に大きな問題になってくるだろう と思いますので、最大の目玉でもこの研究会ではいいのではないかと思います。やはり 言われたように公共事業も駄目だし、事業の誘致といってもグローバル化した中での誘 致は限界が出てくる。よく「外発的な雇用創出」と私は言いますが、外から持ってくる にも限界があって、やはり内発的にどう作っていくかという。日本もいよいよ、そこま できているなという。  人口移動のところは、今までの人口移動というのは、やはり若者が移動することによ る、供給側の移動によって、ある程度地域間の格差を是正したところがあるわけです が、これは少子化の影響がものすごく強く現われていると思います。長男長女社会にな って地元定着率が非常に高まっています。そのために東京を見ても、同一市町村内にお ける移動はすごく盛んになっています、親の近くに移動するという形で。ところが県を 越えての移動は、高度成長期の半分以下に、率にしても落ちてきています。  今までは東京へ出て行けば雇用機会があると言っても、それが雇用政策としては役に 立たない状況になってきた。それではどこへ移動させるのかと。島田委員は高齢者とお っしゃいましたが、高齢者は難しい面もあるのですが、やっていかなければいけない面 もあります。そうすると、若者の雇用機会を地方でどうつくっていくのかが、やはり重 要な問題です。少子化の質的な面で重要になってくると思いますので、ここの議論を是 非やっていただきたいと思います。 ○島田委員  いまの樋口委員の問題提起に対して受けたいのです。逆説的ですが、地方に若者の雇 用機会をつくるには、いま残された最大の手段は、高齢者がアメニティを求めて地方に 住んでくれると、自ずからこういう機会が。生活産業関連の八代委員が年中言われてお りますが、そういうのが出てくるのです。  私は全国各地をよく歩いているものですから1、2の例を申し上げて、できれば調べ ていただきたいという感じがあります。例えば北海道に白老町という所があり、ここに は3カ所の住宅団地があります。1,000軒ほどの団地ですが、そこに住んだ人たちが、 いま樋口委員が言われたケースで、定年退職者が住むのですが、どちらか連れ合いが死 ぬと子供の所へ戻りますので空き家が出ているのです。これは相当立派な家で全部に温 泉が付いています。これが最初は2,800万ぐらいで売りに出していましたが、いまは600 万、700万で売っています。すごい資産ロスになっていますが、それはなぜかと言うと 需要が開拓できない。なぜかと言うと白老町の周辺の人を入れているからです。それを 聞きつけて横浜や埼玉が打診が少しあるのですが、これを大々的に展開したらすぐに埋 まってしまうと思うのです。1人や2人では寂しいけれども、20人や30人と出てくれ ば、そういうことで町は一生懸命やりたい。  もう1つは函館で、100万ドルの夜景が見える西部地区です。ここにはロシア教会が ありますが、雪があまり降らない所で、ここの傾斜地に海が見える瀟洒な洋館が何10軒 と空いていますが、それが1,000万円台で出ています。私が函館市にやりなさいと言っ ているのは、そういう空き家のデータを家主さんのご意向を全部聞いて、それを載せ て、それを首都圏へどんどん出す。これがまとまっていったら素晴らしいのです。函館 は昔47万人の人口がいたのが今は20万人しかいません。ここは日本で最初の国際港です から素晴らしいのですが、そういう可能性を持った所です。  いま宮崎県も同じことをやっています。福井もやろうとしています。たくさんあるの です。もちろん、自分には埼玉や千葉に家があって、老後は、ばっちりという人はOK ですが、そうではなくて不安な人がたくさんいらっしゃるはずです、自分の所得との関 係で。家がどのぐらい余っているかというと、いま日本には4,600万世帯ありますが、 そのうち1,000万世帯は独り暮らしです。家は5,300万戸あるのですよ。700万戸、800万 戸が余っています。これは流通市場がないものですからデモリッシュされているので す。廃屋になって、しかも子供たちは、子供たちといっても60歳代ですが、親が80歳、 90歳で死ぬと、固定資産税を払わされているという時代です。  つまり、日本中そういう状況になってしまっていて、すごいストック過剰なのです。 再配分を起こさなければいけないのですが、何が欠けているかというと情報が欠けてい るのです。ですから、そういう物の考え方ね。そういうことがあると、何十人、何百人 という人がいろいろな街で展開していくと、そのこと自体が、本屋さん、ガソリンスタ ンド、ラーメン屋、映画館でもできるわけですから、そうすると地元の生活産業雇用に なる。医療介護はもちろんのこと。  介護の場合は、送り出しの市町村が介護保険になるという方向性をいまやっているわ けですから、受け入れる側は全くウエルカムの条件が出てきているのだけれども、彼ら もどうやって大都市に情報を流していいかわからないし、国の政策としても、今のよう な視点をもっと強烈に持って、そういう統計を整えて、可能性はすごくあるということ を国民に伝えることがあっていいのではないか。地方を活性化するのに残されたのは、 もはやそれしかないのではないかとすら思うのです。 ○樋口委員  地方の人材、雇用戦略を立てられる人材をどうつくっていくかというところだと思い ます。 ○島田委員  だから、こういう所でそういうのが重要であるという認識をしっかり書くと、また地 方も呼応してきます。認識がないのではないでしょうか。 ○青木職業安定局長  地方とか地域と言ったときに、都道府県とかを超越した圏域でみるのか、都道府県単 位でみるのか、市町村単位でみるのか、どこで境目を付けるのか難しい点があります。 ○樋口委員  我々が調べていく上でヒアリングも、当然その地域へ行ってやりますけれど、やはり 基本的に統計に頼るところがあるわけです。ところが日本の場合に、地域の統計という のが非常に弱いということがあります。例えば失業率1つ取っても、都道府県別の失業 率が発表されるようになったのは3年前ですから、それまでは都道府県単位での失業率 自体が毎年わからなかった。毎年というか全然わからなかったという現状だったわけで す。  そういうふうに考えて、やはり統計に基づいてやるということになると、都道府県で あるとか、あるいは我々がいまやっているのですが、市町村の行政担当者が何を思っ て、その町では労働需給が逼迫していると判断しているか、どういう指標を使っている のかということをやると、ほとんどがハローワークです。有効求人倍率に基づいて判断 するしか他に情報がないというわけです。そういったものから遅れている。そこをどう するのかがすごく重要なポイントになってきます。戦略を作れと言っても町の現状を把 握できないのです。感覚としては持っているのですが、それが悪化したのかどうかとい うのも全部感覚なのです。 ○島田委員  いま樋口委員が言われたのはそのとおりで、だからいま差し当たり声をかけて少なく とも何かデータが出てきそうなのは県です。県ならある程度は出るでしょうね。市町村 になると、やるところはやっているのです。自分の域内で何百人がどうという話はして いるのですが、それはかなり今度は質的な感じになります。それを全部揃えて全国でこ ういうマトリックスを作りましたというふうには簡単にならない。だから差し当たり県 でアプローチしてみるというのが第1段階ではないですかね。 ○小野座長  地域雇用が非常に重要だということは、そのとおりであるし、地域の雇用政策を立案 したり企画するリーダーを育成しなければならないというのも、そのとおりです。た だ、島田委員の議論はそこへお年寄りが移って行って、それで地域の生活がだんだん広 がっていき、いろいろサービス産業などもおこるというお考えですね。 ○島田委員  平準化の循環がね。 ○小野座長  どの程度お年寄りが動いていくか、その辺、今日もデータが出ていてご覧になったで しょう。それと市のデータで20頁をご覧いただくと、住みやすさの状況についても事務 局がデータを整理してくれました。こういう地域に雇用をおこす1つの大切な要因を島 田委員がご指摘になったと思います。  もう1つ島田委員がご指摘になったのは、失業手当が切れた後、どうやって暮らして いるのかというのですが、あれはこの前の労調の特別に調査したものですね。 ○島田委員  特別ですね。 ○小野座長  ああいうものを2回やり、その後はなくなってしまった。あれはちょっと残念な気が します。 ○島田委員  あの労調というのは、サンプルをお願いして3年間続けましたよね。終わったとき に、「さっき終わったんで、すみませんけど、この2つの質問に追加的に答えてくれま せんか」という頼み方なのです。そうすると審議会を必ずしも通さなくてもできるよう で、要するに何かを変えたわけではないのでできる。ただ、リスポンデンツのご好意に すがってという、それを統計局長が編み出してくれてやったのです。審議会を通すと3 年後になってしまいます。3年は許さないと私が言っているものだから、やっていただ いてということなのです。これはいくら何でもちょっと不自然でしょう。どう思います か。これについて雇用政策の当局者はどうお考えですか。あのときはずいぶんご協力い ただいてやっていただきました。 ○勝田雇用政策課長  この後、実は私どものほうでも統計局のほうに少しお願いに行ったりもしているので すが、いろいろなお話がございまして、まだうまくいっていませんので、内部でも検討 させていただいて、また統計局のほうと話し合ってみたいと思っています。 ○島田委員  長期失業者の業務統計の雇用保険の受給が切れた後、何十万人かの人がつかめなくな るというのは重大なことではありませんか。そういうふうに統計局にちゃんと言ってい るのですか。厚労省から要望がないから駄目だと言われているのです。 ○小野座長  それは大切な情報ですので、この前ので結構わかりましたよね。失業手当が切れた後 の人が何人というのがある程度わかりました。 ○島田委員  ある程度わかったのです。結構関西が大変だということが見えてきたのです。 ○小杉委員  地域の話で、やはり若者の雇用機会という話も非常に重要ではないかということで、 若者の場合には雇用の範囲を少し広く考えなければいけないのではないか。移行的な労 働市場という考え方なのですが、一人前になるまでのプロセスなので、労働者として一 人前ではないということを前提にすると、社会参加レベルのボランティア、あるいはコ ミュニティワークなど、さまざまな形で社会にだんだん入っていくプロセスとしての労 働というのを考えていかなければいけないかということで、少し概念を広くとって、若 者を一人前にしていくプロセスとしての教育訓練を含めた機会というか、そういう位置 づけで考えていかなければならないと思います。若者の雇用機会創出の場合には幅広く 雇用を考えたほうがいい。場合によっては高齢者の場合も逆の移行という意味で働かな い移行、その意味でも移行的という部分もあるのではないか。これが1点です。  もう1つ、格差の議論ですが、学歴間の格差というのがかなり大きくなっています。 特に若い人の場合ですと、学歴と雇用形態の関係も非常にはっきりしてきて、例えば高 校卒業の女性ですと、いま20代で正社員は4割しかいないという状態になっています。 学校教育を通じた職業能力形成を考えたほうがいいのではないかと思います。学校教育 による能力形成の結果として雇用形態のチャンスがかなり違っているし、たぶん賃金格 差の部分も学歴間の格差というのは大きくなっているのではないかと思います。そうい う意味で学校教育というものを、能力形成の中で位置づけて考えていかなければいけな いのではないかと思います。  これから労働力率の若い人がどうなるかという話ですが、長学歴化するという方向は 変わらないのではないかと思います。教育期間を長くして能力を付けるという方向でな ければ、就業できないことがはっきりしています。その長学歴というなかで能力形成を どううまくしていくのかというので、学校教育以外の能力開発と学校教育における能力 開発を連続した形で考えて、雇用政策の中でも学校教育の中での能力形成について一 言、言っていかなければいけないのではないかと思います。 ○小野座長  能開の妹尾さん、いまの小杉委員のご意見についていかがですか。 ○妹尾職業能力開発局総務課長  確かに従来、能力開発としては就職した後の能力開発という観点しかなかったのは事 実だろうと思います。いま、小杉委員が言われたように就職する以前の能力開発という か、教育の部分がどうあるかというのは重要なポイントになっています。若年者に限ら ず、そういう点をどう捉えるか少し考える必要があるかなと思っています。 ○小杉委員  学校教育を18歳までとか22歳までという形でなくなってくる。これから生涯学習とか 生涯能力開発という方向になりますので、そうすると当然、その関係が入り組んでくる と思います。ですから学校教育については、ある意味ではものを申せないという段階で はなくて、お互いにはっきりものを言っていくべきではないかと思います。 ○島田委員  今日の追加資料の17頁を見ていただけますか。こういうふうにデータを整理していた だいてありがたく思っています。左のほうの国調で見ると全体はもう減っている。これ は人口構造を反映して労働力そのものが減っていますから、こういうことですよね。就 調で見ても同じようなことですが、就調のほうは大都市はちょっと増えているというこ とです。だから全年齢構造を見ると地方の相対的な減少が著しい。大都市は人口は減っ ていく中でもやや吸引力がある。だから我々が先ほど議論したとおりの姿です。このま ま延長すると、全体として大都市は比較的まだ雇用就業人口をキープしていますけど、 地方は非常に少なくなっていってしまうという姿が見えます。  一方で、右のほうの高齢者雇用を見ると、大都市は少し増えていますが増え方はわず かです。ところが、地方のほうは定年前の人たちはかなり増えています。だから熟年の 雇用上の地方移転が少し進んでいると考えるのか、あるいは中年が熟年化したと考える のか、両方混ざっているのだと思います。先ほどから申し上げているのは定年後ですか ら、私が是非やっていただきたいのは次の年齢なのです。この区分がどうなっていたか はっきり覚えていないのですが、60代の年齢区分は国調と就調はどうなっていました か。 ○中井雇用政策課長補佐  1歳刻みでというのが国調で、就調は5歳刻みしかとっていません。 ○島田委員  5歳で60代前半がとれますか。  就業でなくていいのですが。就業構造基本調査であれはベースは何でしたか。労働力 が分母でしたか。 ○中井雇用政策課長補佐  就業状態全体です。 ○島田委員  全体でしよう。だからいちばん知りたいのは、定年退職して、さあ、どこへ住もうか なという人を知りたいのです。これは傾向が見えます。もし60代前半と後半の人たちを 5歳刻みで分けて同じようなことをすると、数字は地方がグッと増えると思います。つ まりキャンペーンをしていないのに、そのぐらい増えるということは、ポテンシャルな 需要はすごく大きいだろうと思います。つまり生活上のアメニティの問題で、移動しよ うというポテンシャルはあるのだと思います。  これは意識調査はほとんど役に立ちません。なぜかというと、意識というのは商品が なければ意識がないのです。商品が提供されて初めて潜在意識が顕在化するのです。携 帯電話のないときに、歩きながら電話してみろと言っても絶対に無理です。だから消費 者の意識調査というのはほとんど役に立ちません。あれは事業者が機会を明確に提供し て、初めて「それならな」と言って5年ぐらいのラグで対応するのです。クロネコヤマ トがそうでしたね。5年間ずっと赤字続きでした。5年経って「あんな商売、あるらし いぞ」というので皆が使うようになって、10年ぐらい経ったら非常にブームになるので す。  政策というのはそういうのが重要なのです。誰よりも先に気がついて、世の中の歴史 の流れを捉えて、政策資源を投入していくということのために、こういう勉強会をやっ ているわけですから頑張っていただきたい。ということで、60代の前半と後半でもう1 回調べてください。そうするとずっと人口が動いていると思います。それは何もないの に動いているのですから、具体的に提案したらドッと来ます。白老町で打診があったの は2件か3件なのです。それが首都圏で知れ渡っていろいろな趣味の雑誌などに載った ら、おそらく数百人が殺倒します。そういうことが重要だと言っているのです。 ○勝田雇用政策課長  資料はまた整理させていただきます。実は委員からお話があった函館、宮崎等にも、 いまの検討状況等をお願いしているところなのです。 ○島田委員  この60歳代のものは是非お願いします。 ○小野座長  資料No.1の(3)今後の雇用・労働政策のあり方について、2頁目以降ですが○を 付けて5つのトピックスが書いてあります。(1)が労働力率に関する政策、(2)が生産性 に関する政策、(3)が少子化対策、(4)が地域雇用、(5)が外国人労働者です。地域の問 題は今までいろいろ議論していただき、例えば(5)は後々までずっと問題になっていき ますが、昨年か一昨年の7月に出ましたね。あれが参考になるのですか。どうなのです か。 ○勝田雇用政策課長  外国人雇用問題研究会報告です。  ご参考になると思いますので、資料としてまだ配っていませんが、また次回以降、こ の議論をしていただく機会のときに準備させて頂きます。 ○小野座長  それはお願いします。そういうことで(5)は必要が起こったときにやっていただくこ とにします。少子化というのは前回、出生率がどうなるかという話をしました。まだま だ議論が足りないところがあるかもしれません。 ○島田委員  今度は政策です。 ○小野座長  これは政策です。今日はどうしますか。 ○勝田雇用政策課長  お願いできればと思っています。実は経済成長の見方とか労働生産性の今後の見方に ついて、委員の方々のご意見を今日は少しいただければと思っています。 ○島田委員  経済成長のお答えをいただく前に2、3分お願いします。この前は少子化の原因の統 計的な話をしましたので、対策として少し考えると、我々の研究会でどのぐらいまで視 野を広げるべきかを考える必要があるような気がします。というのはヨーロッパの経験 を見ると、ご存じのようにフランスやスウェーデンなど、いくつかの国は20〜30年前ま で出生率が非常に下がったのです。それが復活してきている。中身をいろいろ見てみる と国が相当いろいろなことをやっているわけです。もし皆さんがご興味があればそうい うデータを出しますけれども、主要国で国の資金で高齢化対策に使う資金と、少子化の ような家庭支援に使う資金の配分状況を考えると、日本は主要国の中で4分の1か5分 の1になってしまいます。また別の印象的な言い方をすると、高齢者に7割、家庭支援 に3割というのがG8の国だとすると、日本は9対1ぐらいになります。ですから本当 に家庭支援が少ないのです。  家庭支援と言うとすぐ児童手当と言いますが、そういうのではないと思います。どん なことになっているかというと、一昔前までは日本でもどこの国でも地域社会が子供の 面倒を見れたのです。親なんかいなくても地域で何となくごろごろ育ったのですが、い まは全部、いわゆるソーシャルネットワークが切れているものですから、全部政策でも う1回作り直さないと、子供が危なくて生きていけないような、産んで育てられないよ うな社会になっているわけです。  今日のワイドショーの事件も典型的ですが、いつの間にか殺されてしまった。私は 「魔の8時間」と呼んでいるのですが、特に大都市の場合、お母さんが仕事をしていま すから夜中に帰って来る。子供はお昼か、午後2時ごろで終わってしまうわけです。そ れすらカバーするものがない。保育園が足りないというのは大都市の問題で、これも重 要なのですが、これは民間が入らなければ今の財源状況ではカバーできない。民間に門 戸開放ということが重要ですが、その後でもいま言ったような魔の8時間問題があっ て、子供を育てるには最悪の環境です。  フランスなどでも、皆さんご存じだと思いますが税金が二分二乗方式になっていま す。わかりやすく言うと子供の数で所得を割って課税する格好になっているから、相当 な高額所得者でも子供が多いと課税最低限に入らないのです。フランスのフォンテーヌ という産業大臣は子供が6人もいますが、非常にその税制が助かったと言っているわけ です。ですから、そういうところまで踏み込むのかどうかということです。世界の中で 最も少子化が進んでしまっていますから、そこまでここに研究して書き込むのかという のは、問題提起をしておきたい。 ○戸苅厚生労働事務次官  そこは自由にやっていただいて結構です。 ○島田委員  ということは是非、悪いけど税制まで含めて調査して、二分二乗方式とフランス、ス ウェーデンの実態を調べてもらいたい感じです。それと先ほどの資源配分をどうしてい るのか調べて欲しい。 ○勝田雇用政策課長  一応、今日も21頁以降に諸外国の政策は、各国で取りまとめて出していますが、引き 続き調べさせて頂きます。 ○小野座長  では、そういうことで。 ○八代委員  労働生産性のほうでもいいですか。いま、まさに言われた労働人口とか労働力が減少 する中で、労働生産性をどう高めていくかというときのポイントは労働移動だと思いま す。それは先ほども少し申し上げたように、生産性の低いところから高いところに労働 力がスムーズに移動すれば、マクロの生産性は上がるわけで、これがいちばん大事なこ とではないか。  統計的に見ても、これは日本経済研究センターや「経済白書」でも昔やりましたが、 横軸に労働力の伸び率を取って、縦軸に労働生産性を取ると、右下がりの関係がある。 つまり労働力供給の伸び率の高い国ほど生産性の上昇率は低いのです。逆に言うと、労 働力が逼迫している国ほど労働生産性の上昇率は高い。これは単に「必要は発明の母」 というのと全く同じで、労働力が十分でなければ、それだけ過剰部分から余剰な労働力 を不足部分へ引っ張ってくるという市場の力が働くわけで、問題はそれを促進するため に労働市場をいかに効率化していくかというのが、ここの課題だと思います。これは前 から言われていることですが、職業紹介機能というのをもっと効率化していく、正社員 にこだわらない多様な働き方をもっと認めていく。これは、そういう政策の方向に行っ ていますけれども、まだまだスピードが遅いのではないか。  それと米国の労働市場のように、いまのような働き方に対する規制は、極力緩和、撤 廃する一方で、雇用機会の均等化のための規制というのはもっと強化していいのではな いか。この組合せで労働市場を効率化・平準化していく。  特に、ここはあまりありませんが、是非均等法の強化というところも少し議論してい ただきたいと思いますが、これは結局、私も男女共同参画のほうで言っているのです が、もっと雇用者責任の強化です。つまり差別しているか、していないかを労働者が立 証するのでなくて、事業主が差別していないことを立証するということです。これは公 害対策基本法と全く同じ考え方で、工場が公害を出していないということを工場側が立 証する責任がある。これまでのように被害者が出しているということを立証する必要は ない。雇用差別というのは一種の「社会的公害」ですから、そういう形でやることによ って、雇用機会の均等化というのは進むのではないか。  これは一部に反対する人もいるかもしれませんが、差別をしていないということを事 業主が立証するということは、逆に言うと、労働者がどういう働き方をしているかを人 事部がきちっと押さえているということになるわけで、それは逆に言えば人事管理の効 率化にも当然ながらプラスになるわけです。そういう意味では新たに職を求める人が求 めやすいようになると同時に、過剰な保護を受けている人が市場の競争にさらされる。 人口減少社会では、そういう形での労働市場の効率化というのが、まさにマクロの意味 での労働生産性上昇との結び付きが強まってくるわけです。その点を是非、議論してい ただければと思っています。 ○樋口委員  私も規制改革、規制緩和の一方で、規制の強化するべきところというのがあるように 思います。そこのところが均等のところで日本は非常に遅れているという印象を持って います。片方で規制改革のほうは皆さんの努力で進んでいくのですが、そこの歪みとい うのが、いま現れてきているという感触を持っています。そこのところを是非、検討し て書いてほしいと思います。  一方、生産性との関連で言うと、ミクロレベルでそれぞれのR&Dといったものを高 めていくこともあると思いますが、マクロレベルでの生産性の議論のときに、いま八代 委員が言われたように、生産性の高いところに人が移動することによって形式的には全 体として生産性は上がると思います。ところが90年代に起こった雇用の喪失、片方でジ ョブ・デストラクションです。雇用の破壊というか失われるほうですが、こういったも のを見ると、どうも雇用のつくられているところというのが国際的に見て生産性の高い 部門で作られているとは必ずしも限らない。例えばTFPでアメリカを各産業別に100 にして、日本の各産業のレベルはどうか。自動車などは圧倒的に高いわけですが、ここ のところで雇用が増えているかというと、どうも増えていない。  その一方で、介護といったところはTFPで測れるかどうかわかりません。形では測 れるのですが、それで見ると相対的に低い。低いところで雇用が増えている。どちらか というと雇用条件との問題を気にしていかないと、労働移動が重要だというのは十分承 知していますが、それを今度、引き金として引き起こすためのジョブ・クリエーション のほうです。どこで雇用をつくり出すのか。何で逆に生産性の高いところは海外へ逃げ て行くのか。ある意味で産業空洞化が最も懸念される状況になっているわけで、そこの 問題を解決しないと、ディマンドサイドは重要になってくるのではないかと思います。 ○大橋委員  マクロの生産性に関して、いま議論がいろいろありました。私がミクロの生産性につ いて少し心配になっていることは、生産性を上げるというのは高齢者も若年者も中年も 一緒に働くわけで、その中でいろいろなアイデアを出して、いちばん重要な役割を果た すのは中年だと思うのです。  そういう点で最近、ある労働組合の役員の方とお話したときに、30代がすごく不満を 持っているというわけです。1つは高齢化でなかなか上のポストが空かなくて、いい仕 事ができないこともありますが、同時に忙し過ぎるというのです。目の前の仕事をこな すだけで精いっぱいで、クリエイティブな仕事がなかなかできない。クリエイティブな 仕事をするためには自分の部署ばかりでなく、関連部署をいろいろ回ったりして勉強し たりしないと、なかなかそういったアイデアが出てこないということがあります。それ を聞いて、考えてみれば私たちも原稿に追われて書いているときは、あまりいい論文を 書いていないなという気がして、確かにそうだなと思いました。そういう意味で、あま りに今の30代が忙し過ぎるというのが、すごく気になっていることなのです。  だからサービス残業は悪いけれども、クリエイティブな残業ということで私たちも土 日は働きますが、それは自分で喜んでやっているわけです。時間短縮だけという話でな くて、もう少しそういった面の働き方をトータルに捉えるような視点が、ミクロの生産 性について、特に中年について必要ではないかというのがあります。 ○樋口委員  ただ、一方で気になるのは、生産性と言ったときに、今まではマンタームで測ってき たのです。そこは個人の時間が無限にあるような調整で、時間を延ばせばマンタームの 生産性は上がりますねという議論になってしまうことがあります。そこのところのマン アワーターム、あるいはTFPといった生産性を基準に考えていかないと、高齢化のも とで働ける人たちの限界というのがあるわけですから、ここは重要なポイントになって くるのではないかと思います。 ○島田委員  いまの生産性の問題は事務局への提案もあって、ミクロの問題が出ましたけれども、 経済構造で、より生産性の高いところへ労働力の配分を集中していくことがマクロの生 産性を上げるという、八代委員の議論はオーソドックスな議論で全くそのとおりです が、もう少し政策次元に下ろしてそれをどう考えたらいいかということで、ちょっと印 象的になって恐縮ですけれども、日本の生産性は樋口委員がいま言ったように、例えば トヨタやキヤノンは非常に生産性が高いですが、マクロで見ると労働生産性はかなり低 いのです。それは何だと言うと、膨大なサービス業、流通、建設、医療の分野で生産性 が非常に低いというのは、アメリカやヨーロッパと比較すると出てきます。  この意味でマッキンゼーが数年前に、ベンチマークになるような国際比較調査で、相 当インセンティブなのを彼らの自主研究としてやっているので、きちっとした方法論で ドキュメンテーションしながらやっていますから、一度全部精査なさるといいと思いま す。いま樋口委員が言われたように、アメリカをベンチマークにしながらやっていて、 ドイツ、イギリスもときどき使うのです。  印象的に言うと、日本の小売がものすごく生産性が低いのです。パパ・ママショップ です。1,200万人も吸収しています。アメリカの流通構造を見ると卸もすごく少ないし、 ウォルマートひとつ見てもわかりますけど、パパ・ママショップはすごく少ないですか ら、トータルでサービス部門や第3次産業のマクロの生産性を非常に上げるのです。実 態は一度はっきり認識されたらいいと思います。  その上で、ではそういうことが日本でできるかということですが、政策的にやろうと したら大変な話になりますが、労働市場のメカニズムとしてはそっちへ動くのです。ど ういうことかというと若い人がどこへ就職するかなのです。若い人はパパ・ママショッ プは継がないです。流通でも変なところに行かないし建設も行かない。だから10年ぐら いかけると様変わりになって、現にそういうことが起きています。1年間に100万人以 上が就職しますから、10年経つと1,000万人ぐらい入れ替わってしまうのです。若い人 はそういうところにほとんど就業しない。みんな年寄りになっていきます。農業もそう です。だから善いことか悪いことか別問題として、冷静にジェネレーショナルな就業行 動が、マクロの生産性に影響を持つような就業構造変動をどう引き起こすかというの は、冷静に見ておいたほうがいいです。  政策的にそこをてこ入れするという話になると、農業も医療も小売もみんな政治団体 ですから、とても大変なことになります。そのマクロの世代間の行動の変化と、マッキ ンゼーのだけよく調べて次回、お願いします。 ○勝田雇用政策課長  当たってみます。次回は再来週ですので間に合うかどうかわかりませんが研究させて ください。 ○島田委員  次々回、紹介しますから頑張ってください。 ○勝田雇用政策課長  それから、先ほどマンベースでなく、できるだけマンアワーベースでというお話があ りましたので、今回は資料のほうは、できるだけマンアワーベースの資料にさせていた だいているつもりです。 ○小野座長  労働移動で、生産性の高いところへ移動することによって、全体のマクロの生産性が 上がる。そのとおりですが、資料No.2の3頁に事務局が作ってくれた「産業別労働生 産性の推移」があり、これはマンアワーベースですが、これは水準でなくて成長率です ね。ただ、これを見ると、卸売・小売は成長率は下がっている。サービスも下がってい る。建設は増えているけれど成長率はマイナスということです。製造業は、この中でい ちばん高い生産性を示しているわけですが、これからの労働移動というと、卸売・小売 はどうですか。サービスは増えるでしょう。運輸・通信などはどうなのでしょうか。こ ういうのは、あまり生産性が高い率で伸びてくれないところが拡大しそうだということ です。そうすると、こういう産業別のデータを与えられると、どうも生産性の伸び率に 関してはあまり明るい展望は出てこないように思うのですが、そうでもないですか。 ○島田委員  例えば流通とか小売みたいな場合は、小規模の店がたくさんあります。あれが要する に代理店になってしまえば生産性は上がるのです。ただ、それは政治的に結構難しいで す。そういうことは運輸でもそうですし、みんな起きています。だから私が是非データ を出していただきたいのが、国調で産業別の階層別でなく1歳刻みのグラフを取れます ね。つまりある産業にこういう分布が取れるではないですか。あれを5年おきにずらし ていくと明確に見えてくるのです。それは伸びる産業のほうに若年者がみんな移ってし まうのです。伸びない産業のほうは高齢者しか残らないという姿が明確に出ます。それ が20年も経つと全体の底上げになるのです。そのデータがあったらいいと思います。そ れは直接に生産性を測ったデータではないけれども、就業構造の変化を通じて国民経済 の生産性に影響する話ですから。 ○勝田雇用政策課長  年齢別、産業別の就業者数というイメージですか。 ○島田委員  1歳刻みのグラフです。そのグラフが5年で移行するのです。例えばある産業で就業 者を1歳刻みでグラフをかけるでしょう。それが5年経つと動くではないですか。 ○中井雇用政策課長補佐  産業別の人口ピラミッドの推移ですね。 ○島田委員  それの移行が重要なのです。1995年、2000年、2005年でとって何人移行したか。そう すると、どれだけそこからこぼれ落ちたかビジュアルに見えます。前に何度かやったこ とがある。 ○樋口委員  こういう生産性を取るときに、生産性と言うとよく企業サイドの話だという形で捉え ることが多いのですが、むしろ需要がすごく反映するのです。需給のバランスです。例 えば今の移動の話でも改革は痛みを伴わなければという話もありますが、痛みのない改 革を進める上では、需要のほうが逼迫していないとどうにもならない。痛みがますます 大きくなるということです。 ○島田委員  価格が反映します。 ○樋口委員  そうなのです。80年代を見ると、80年代の後半というのはすごい変化だったのです。 移動も頻繁に行われますし、バブル経済のあれだけ人手不足の中で起こった政策のいろ いろな転換というのがあったわけです。これを見ると90年代から数字をとると一方的に 下がるように見えていたのですが、80年代まで入れてみると、80年から90年代はむしろ ガンと下がってというような変化がいろいろ出てくるので、今後を考えたときに需給が 逼迫するのだということも考えられるわけで、そういう状況のもとの数字というのも是 非入れておいてほしいと思います。  生産性と、もう1つGDPの成長率の関連で言うと、人口減少というのは人数が減る だけでなくて、少子高齢化ということで年齢構成が大きく変わるというのが私は決定的 に重要かなと思います。そうなってくると、1人当たり生産性とか1人当たりのGDP が維持されればということ自身、かなり懐疑的にならざるを得ないところがあって、ど うも相似形で全部の比率が経済が縮小するということでは起こらないわけです。必ずそ こで重要になってくるのは現役世代の人数が減って、逆に引退世代の人数が増えてく る。問題はそこの比率であって、絶対的な年齢というのはどう頑張っても変わらないわ けですが、制度を変えれば現役と引退の比率は変えることができるわけです。そこのと ころが変わってくることによって大分話が変わってくるので、どういうふうに痛みを和 らげて改革できるかが重要になってきます。  特に労働力人口の問題と同時に、この現役世代と引退世代の比率というのは、貯畜率 に相当大きな影響が出てくるだろうと私は思います。貯蓄率の低下というと、これはど うしても国内での資金調達が難しくなってくることを考えれば、公的部門の国債の消化 の問題が出てくる一方で、片方は民間の資金調達が難しくなる。必然的に起こってくる のは国内の金利は上がらざるを得ない。金利が上がればその分だけ投資が逆に減退す る。海外から金を借りてくるにしても高い金利を払わなければ借りられないという状況 になってくると思います。  労働力も、貯蓄あるいは資本も、供給サイドの制約が厳しくなるもとでは、この限ら れた資源をどういうふうに有効に活用するのかが、最大の問題だろうと思います。そう なってくると雇用政策としては、失業率の引き下げというのも重要な問題だろうと思い ますが、それ以上に重要になってくるのは就業率の引き上げだろうと思います。ターゲ ットをそちらへ移したらどうですかということなのです。  やはり人口の中で働いている人たちの比率を高めていく。そのための政策が何か。そ れは人数だけの話でなくて能力面でもあるわけで、能力の向上といったものが、供給キ ャパシティを拡大するといったところでは重要なことになるわけです。それを1つの柱 に、その視点から見て政策はいかにあるべきか。たぶん政策ごとにやっていくと、ここ も必要、ここも必要という話で、いろいろ必要なものが羅列されてくる危険性があるの で、何か柱を作るということを考えたらどうでしょうか。地域の問題もそうですし、い まの就業率の引き上げというような柱です。 ○島田委員  樋口委員の言われたことをセカンドしておきたいのですが、いま貯蓄率の話を出され ましたが、ものすごく重要な話なのです。日本というのは過去30年ぐらいを振り返る と、家計貯蓄率が20%近辺にあって世界でいちばん高かったのです。企業は投資過剰 で、その資金を家計貯蓄が賄ったのです。近年は国が赤字ですが、それも家計貯蓄率が 賄った。国債を消化してきたわけです。これがどうなっているか、この5年間の動きを 出してください。どうなっているかというと家計貯蓄率はイギリス並みになってしまっ た。アメリカは少し落ち出したのですが、落ちなかったら実はアメリカ以下になるので す。  これが長期なのか、一時的なのか。つまり不況が続いたので雇用が不安になり、消費 構造は簡単に変えられないから貯蓄率が減ったというのはある。ディスセイビングした というのはあるのですが、これは論争がありますけれども、私はもう1つの理由として 高齢化が貯蓄率を減らしていると思います。高齢化はもともとディスセイビングなので す。  いま、どういうことが起きているかというと、65歳以上で世帯主が無業の世帯の貯蓄 率は完全にマイナスです。その比重が2割ぐらいの家計の比重になった。それが下げて いるのです。とうとうアメリカ並みになってきた。そうするとこれは戻りません。日本 の経済構造は戦後のストーリーが全部終わったのです。日本は低貯蓄国なのです。全 然、経済政策、雇用戦略の意味が変わります。ですから樋口委員の言ったとおりなので す。  幸いなのは企業の内部留保が増えてきたので、企業貯蓄率が家計貯蓄率よりうんと高 くなりました。これは戦後初めてのことです。この先はどうなるかですが、ただ、これ だけでは焼け石に水なのです。今のままだと、おそらく国債の消化を中国に頼まなけれ ばならない時代が来るだろうという感じです。  だから、それを労働の面で切り取ってどうするかというと、樋口委員の言われること を私はセカンドしたいのですが、就業率を高めないと駄目です。就業率を高めるという のは、先ほどの地域でも高齢者が動けば若年者の仕事が出てくるということもあります けれども、定年をどう考えるかが非常に重要で、本当は定年を見直したほうがいいので す。  もう1つは、ただ、定年というのは雇い主から見ると玉石混淆で、権利として保障し ないとえらいことになるというのが定年ですから、雇い主はたまらないのです。あれ以 上引き上げたくない。だけどマクロ経済や働く人の意味から言えば、元気なうちは働く のがいいのは決まっているわけですから、その辺の制度をどういうふうにするかです。  行政は工夫が遅れていますが、民間で何が起こっているかというと、既に1回定年退 職した人たちが、SOHOとかもありますが、ベンチャーラボという面白い会社があり ますから一回調べに行ってください。これは何かというと、技術関係の技師長とか研究 所長とかをやっていた人たちを300人ぐらいネットワークして、この人たちが技術評価 をするという会社をつくったのです。そしたら中小企業というのは技術評価されにくい から殺到しているのです。今度上場しますけれども、そういう、要するに家に置いたら 濡れ落葉になってしまう人たちを全部集めて展開すると、まだまだすごく使えるので す。そういう雇用形態がある。いわゆる定年を引き延ばすのでなくて新しい形でつくっ ていくというのをやる。  例えば三鷹市が、SOHOを中心にした三鷹市の第3セクターをつくっています。あ れもケースとして出していただくといいと思いますが、ずいぶんあります。そういうも のを学びながら、もう限度に来ていますから行政としては定年引き上げばかりが雇用政 策ではない。実際は75ぐらいまで現役なのです。そういうのをどう作るかです。樋口委 員の応援です。 ○小野座長  就業率の上昇というのは今後、大変重要な政策の目標になると思います。元に戻るの ですが、先ほどの3頁の産業別生産性の成長率を見ると、あまり明るい展望が出てこな いのですが、産業別の生産性の絶対水準は比較して出せますか。  もう1つは、島田委員が言われたマッキンゼー調査というのは私は知らないのです が、例えば日米とか日米英独仏とか、そういう産業別生産性の国際比較みたいなものが 出せるでしょうか。これは将来、これから労働移動が産業間であって、どっちの方向に 労働が動いていくか。そういうときに、日本でどの程度、産業別の生産性の改善の余地 があるのかどうかを見定める上でも、そういう生産性の国際比較というのは是非ほしい のです。  できなかったら日米だけでもいいし、そうすれば、いま日本はこういう調子だけど、 もう少し上げていけるといった見通しが立つし、その辺の見通しをつけてもらうために も、その辺のデータがあればいいと思います。次回は無理だと思いますので先でもいい です。島田委員が言われたマッキンゼーの調査というのは、こういうことをやっている のですか。 ○島田委員  やっています。 ○小野座長  そしたら、そういうのを参考にしながらやってくだされば、バラ色にはならないにし ても少し明るい展望が出てくるかもしれない。 ○勝田雇用政策課長  産業別生産性の国際比較のデータは、たぶんあると思います。私も昨日見ていて、為 替ベースと購買力平価ベースとで話がずいぶん違ってきたりしていますので、そこも検 討した上で揃えてお示ししたいと思います。 ○島田委員  これはフットノートがあるのですが、皆さんよくご存じの530万人雇用計画の元の研 究を樋口委員と一緒にやったのです。そのときに労働生産性の比較を日米でやろうと思 って、日本の某有力シンクタンクに頼んだのですが、はっきり言うと使いものにならな かった。樋口委員はよく知っています。私は本当にがっかりした。  マッキンゼーというのは相当力がありました。結局、彼らはアメリカから呼んでやら せたのですが、ちゃんとしたシンクタンクはリサーチストックを持っているのです。そ のリサーチストックの重要なところを忠実にしっかり勉強して、それを超える努力をし なければ駄目です。たぶん超えられないから、そしたら忠実にそのエッセンスを紹介す るだけでいい。余計なことをやると、かえってでたらめなデータを出すことになる。こ れはそういうような世界です。 ○樋口委員  たぶんマンフレッドという話はTFPでなくて、労働生産性の話をしているのかなと 思います。付加価値労働生産性ですよね。それはおっしゃるとおりの問題があって、ジ ョルゲンソン・クルーガーのチームが、TFPについての国際生産性産業別300部門か 何かやっているのです。すごく厚い本があって、来月、ジョルゲンソンが日本で講演を するのです。それについて各国比較のシンポジウムとかカンファレンスが2、3開かれ ると思いますので、そこで提供されるのがいちばん信頼性が高いと思います。 ○島田委員  そうでしょうね。 ○樋口委員  ものすごい作業をしています。 ○島田委員  インターセクトラルな分析としては、そうでしょうね。 ○小野座長  小売とかサービスというのは、時系列的に見る場合は実質でしょう。 ○樋口委員  ええ。 ○小野座長  実質で、サービスのをどうやってやるのでしょうね。 ○樋口委員  製造業だって全く一緒なのです。何となく物が見えると生産性がわかるような感じで すけれども、車が何台造られたかではないですから。 ○小野座長  見えないから、なおさらね。 ○樋口委員  全く付加価値でやっていって。 ○小野座長  やはり実質化するのでしょう。 ○樋口委員  実質ベースで、だからそれぞれの国におけるレベルでやるわけです。それを為替レー トで絶対化というのは、ものすごく難しいです。たぶん国内成長率でやるしかないと思 います。 ○大橋委員  サービスとか卸売・小売を、製造業と同じように労働生産性と付加価値で測るという のはちょっと気になるのです。どうしてかというと、例えば卸売、小売のところが鮮や かに下がっていますね。むしろ昔と違って例えば99円ショップとか、よりクオリティが 上がって安い商品を提供するようになれば、これはむしろ下がるのではないか。消費者 にとっていいわけでしょう。安い商品を消費者に売るとなったら、付加価値は下っても いいと思いますが、その辺はどうですか。  もう1つは、例えばコンビニなどはすごく便利ですよね。家の周りでも四方にあるわ けですから、そういった消費者に対する便利さなるものはそれに含まれていないと思い ます。だから、そういった価格が競争で低くなって、昔のように幾つもの構造でリベー トを取っていくような仕組みではなくなって、値段が下がって付加価値がむしろ下がっ た状況がこれだとすれば、これは素晴らしいことではないかと読めるのです。 ○樋口委員  本来であれば、それは価格デフレーターのほうに反映されることです。だから同じサ ービスを提供していながら、その量が数量的に下がるかどうかが物的実質生産性の話 で、いまのお話で言うと、サービスが低下しているのであれば、それは数量としても低 下していることになると思います。価格が下がったという分には、それは価格デフレー ターが下がったわけで、実質はむしろ押し上げる形で出てくるのではないか。名目は一 定だということです。 ○島田委員  3頁の小野座長が言われたデータ、あるいは大橋委員が言われた、これは少し下がっ ているでしょう。これマンアワーでやっているけど、マンアワーでやっても売上げが下 がって稼働率が下がってきて、雇用はしているというとこういう格好になります。だか ら、ある意味では本当の生産性ではないのです。例えばTFPでやる生産性というのは そういうのではないわけです。 ○大橋委員  TFPを頭に描いていると思う。 ○島田委員  TFPは資本のインプット、労働のインプットは数量で捉えて、働き方や資本の効率 が違ったらどういうことになるかという本当の技術進歩をやろうとしてやっているわけ です。それはある意味で厳密な狭義の生産性ですが、これは全然そうでないはずで中へ 入ってしまっています。だから生産性でこの程度のデータだとすごく難しいですね。 ○樋口委員  小売店だと、お客が頻繁に来てくれれば生産性は上がるのです。時間は同じで拘束さ れていて売上げですからね。だけどそれは供給サイドの話でなくて需要サイドの話なの です。それを見極めるためには労働生産性というのは非常に危険だと通常はされている のだと思います。 ○島田委員  お客が3人来たときに、いままでは2人で3人に対応した。もちろん2人に比べれば 3人来れば生産性は上がるけれど、それを1人で対応しても同じ3人をこなせるとなっ たときに上がるのです。そういうのは、この方法論では出てこないですね。 ○小野座長  生産性はそういう難しさがあるので、そこも踏まえた上でのことなのですが、一応、 数字を出さないと将来の展望に差し支えるので、ご努力をお願いします。 ○樋口委員  最大の問題は、TFPの場合には残差で取りますから、経済にとっては外生変数なの です。それをどう内生化していくか。たぶんそれは経済の活力とか企業活力、個人活力 との関連で決まってくるのだろうと思います。 ○島田委員  それから働き方の変化とか、資本の効率が高まるかとか、残差はそういう話ですか ら。 ○樋口委員  そこは、それの世界は越えちゃって、シナリオを描くしか私はないだろうと思いま す。 ○島田委員  そこは技術進歩ですよね。 ○諏訪委員  高名な経済学の先生方が議論すると私は何も話せなくなるのですが、生産性の議論を しても、資本装備率の問題だとか技術進歩というのは、実は我々は予見としては入れま すが、雇用政策として何をやれるかというとやれる範囲は限られている。とりわけこの 役所が持っている政策資源からすると、あまりないのです。そうすると、ここでも3頁 目にあるように生産性に関する政策というのは、どうしても能力開発みたいなもの、あ るいは働かせ方、人の使い方のうまさみたいなビジネスモデルかもしれませんが、そう いうところになっていくのだろうと思います。  そうすると、本当は産業別の生産性のそういうグラフを入れても、実は我々の政策を やる上にあまり役に立たないのです。役に立つのは、そんなものをどうやって得るかと いう問題を脇に置いておくと、例えば我々が持っている人的資源の生産性みたいなもの を全体として測ることが仮にできて、それが外国のそのようなものと比較してみると、 高いのか低いのかがうまく出てくるようなデータがあればと思います。普通はこれはな かなか難しいものですから、学歴とか専門職化の率で代替して見ているのだろうと思い ますが、我々が新しい政策を考える上では、ここを少し工夫してみないといけない。  いま、会計基準などでもエコ会計とかいろいろなことを言うと同時に、こういう人材 のストックみたいなものを、会計基準の中に入れようという声が前からあるのはご存じ のとおりですから、我々は雇用政策をするときに、ここが大事なのではないかと思って います。  そういうふうに見ていくと、日本の場合、いままで教育というのが若いところにかな り集中すると同時に、その後はOJT中心で、リカレント・エデュケーションというの があまり盛んでなかった。その点を小杉委員などが先ほど指摘していますが、そういう リカレント・エデュケーションが欠けている結果、実は日本でいちばん人的資源として 質が劣化しているのは、ひょっとしたら中年かもしれないのです。壮年の部分なのかも しれないのです。言葉を変えて言うと、日本というのは中年が勉強しない国なのです。 中年の大学院に行っている比率が、おそらく人口比で非常に低いだろうと思います。め ちゃくちゃ忙しいですし、出すばかりで自分は入れていかない。そうすると50過ぎたと ころで本当に人的資源として劣化してしまうのです。時代に付いて行けなくなるし、い まさら能力開発というより燃え尽きてしまう。  そうすると、30歳から59歳の部分はここしばらくそう急激に減らないと考えると、そ こをもう一度活性化すると、次へつなげられるのではないかというのが1つです。そこ でうまく勉強の仕方とか、個人の人的資源を絶えず再生産していく。この手法が一人ひ とりの中に仮に付いてくると、あるいはそれを活用する企業の側に出てくると、実は60 歳から後の高齢者の就業率を高めることに、かなり影響するのではないかと思います。  高齢者の部分で就業率が低いのはどこかを見てみると、実は女性なのです。女性は50 代を越えるとものすごく就業率が下がるのです。この部分をどうするか。いままで政策 的に我々はきちんと対応してきませんでしたが、ここはいま申し上げたのと同じような 問題があって、一部には介護という問題があります。実は健康寿命というのでは女性は 78歳ぐらいある。男性は72歳です。ここが早々とリタイアすることによって、考えよう によっては地域やいろいろなところの活性化や介護を支えていると思いますが、考えよ うによっては、これが高級ホテルの昼のバイキングなどは女性ばかりなのです。そうい うものも支えているのかもしれない。こういうようなものを、今までと違った視点で捉 えたほうがいいのではないかというのが2点目です。  3点目は、雇用政策で次に大事なのは、島田委員、樋口委員、八代委員が言っておら れますが、結局、すごく減っていく若者の資源を、どこに、どのように傾斜配分してい くかという問題が起きてくるだろうと思います。傾斜配分と言うと何か統制経済みたい ですから、市場がどんなふうにこれを引っ張っていくか。本当に学生たちの就業構造を 見ているとすごい変化なのです。かつてならば必ず第1志望にしたであろう有名デパー トなどを第2志望、第3志望に降格したりしています。誰も驚くようなデパートに受か った地方出身の女子学生に、「よかったね、親御さんも喜んでいるでしょう」と言った ら、「親は喜んでいるけれど自分はここは第2志望なのです」と言うのです。「第1志 望はどこ」と聞いたら、カタカナの聞いたこともない会社なのです。こういうところに 人材が動いていくときに、それに沿った教育体系になっているのか。それに沿った職業 訓練、その他ができているのかどうか。こうしたことももう少し考えなければいけな い。  団塊の世代のときは270万人近く生まれた年もあったのに対して、いま110万人ぐらい になっていますから絶対的に足りなくなって、これを今までのようにフルセット型の産 業が全部奪い合うと、どこにも薄くしか人材がいなくて、戦略的に日本が次の時代を担 うことができなくなります。こういう戦略的な若年者の人的資源配分をどうするかとい う問題は、NEET問題、フリーター問題と同じようでありながら、ちょっと違った側 面で考えなければいけないことではないか。  その先には少子化という問題の対応が、こうした部分の人材をどう確保していくか。 もう既に若者の間で競争という意識が弱くなって、海外の同世代の若者たちに比べても 勉強しない層が、とりわけ高学歴層と言われる部分に出てきています。大学の責任もあ りますけれども、もう1つは、内発的な自発性とかモチベーションみたいなのがすごく 弱いのです。雇用政策としては、生産性と言ってもやれる手段は限られていますから、 我々のやれる部分で対応策を考えていくのがいいのではないかという感じがします。 ○樋口委員  今日、皆さんのお話を聞いて痛感したのは、社会としてインセンティブをどう高める か。その仕組みをどう作っていくかが重要だという感じがしたわけです。なぜ格差の拡 大をここで議論するのかとか、あるいは均等問題、差別の問題というのを議論するの か。これは明らかにインセンティブと関連してくるわけです。  例えば法的には人権の問題ということでしょうけれど、経済学者にとって関心がある のは、それによって諦めを持ってしまう人が増えてくることです。格差が拡大して階層 化することになれば、自分たちは努力しても階段を登れないのだということから諦めを つくってしまう。あるいは雇用機会が均等に与えられなければ、それなりに頑張っても しようがない。こういうことになるのがいちばん怖い。それが故に少子高齢化の中でイ ンセンティブを高めるためにこういったものを位置づけていく。そういった視点が必要 なのかなと思います。  就業率も、ある意味ではインセンティブを高める仕組み、働くというインセンティブ を高めるには、どうしたらいいかということにつながってきますから、能力開発もそう ですし、いまの教育の問題もそうです。そこは供給サイドの視点から必要になってくる だろうと思います。片方で需要の問題、雇用の創出の問題といったことがあると思いま すが、個人のインセンティブを高める社会をどう作るかがポイントになってくると感じ ました。 ○島田委員  諏訪委員が言われたことで一言だけ、諏訪委員が言われたことに大賛成なのですが、 産業別の生産性の分析は依然として重要だと思います。 ○諏訪委員  いえいえ、重要でないなどとは言っていないです。 ○島田委員  というのは、雇用政策の厚生労働省が持っている政策手段の中に、いま諏訪委員が言 われたことはみんな入っていますけれども、労働移動を円滑化する、職業転換を円滑化 するというのは非常に重要なのです。なぜかというと、効率の高いものとそうでない部 分があるから、先ほど八代委員が言われたように効率の高いものに資源を配分していく というのを、市場のメカニズムとしても厚生労働省は支援しようという格好になってい る。それの基のデータですから、ちょっとそこだけ。 ○小野座長  言い足りないところがたくさんおありでしょうが、次回も次々回もありますのでご議 論いただきたいと思います。予定の時間を過ぎました。今回はこれで閉じますが、事務 局からご連絡がありましたら、どうぞ。 ○中井雇用政策課長補佐  本日、いろいろご指摘とかご議論がありましたので、それについては我々としても努 力させていただきたいと思っています。なお次回の第3回ですが、12月1日(水)、14 時〜16時まで、本日と同じく5号館5階の共用第7会議室で開催します。次回の会議の 公開の取扱いについては内容次第で、第1回の研究のときに公開について確認させてい ただきたいことを踏まえ、別途、座長とご相談させていただければと思っていますの で、よろしくお願いします。 ○小野座長  宿題が出ましたけれど、よろしくお願いします。本日はこれで終わります。ありがと うございました。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係 TEL:03−5253−1111(内線:5732) FAX:03−3502−2278