04/11/15 第3回心臓移植に関する作業班議事録             心臓移植に関する作業班(第3回)                     日時   平成16年11月15日(月)                          16:05〜18:00                     場所   合同庁舎5号館                          共用第8会議室(6階) 〇齋藤主査  第3回心臓移植に関する作業班をこれより開催いたします。  本日は、議事に即しまして東北大学の田林教授、埼玉医科大学の許教授、東京大学の 高本教授、九州大学の森田助教授、及び日本臓器移植ネットワークの菊地チーフコーデ ィネーターを参考人としてお招きしております。  なお、御発言をいただく際ですが、お手元にあるマイクのトークというスイッチを押 していただきましてから御発言をいただきたいと存じます。御発言を終わりましたらス イッチを切っていただくようにお願いいたします。  また、室長がこちらに到着次第、人事異動の御挨拶をさせていただきたいと存じま す。以降の進行は、北村班長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 〇北村班長  大変にお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。前回の開催は平成 14年3月ということでしたので、随分と間があいております。その間、心臓移植の部門 も、少しずつではございますが21例が行われて現在に至っております。その過程におい て移植施設が3施設から7施設に新しく増えました。それらのことから適応、あるいは 従来からの問題としても上がっておりましたが、改めてその辺りを御検討賜りまして、 明確な形で記録するなり、あるいは方法を変えるなり、皆様のお考えを示していただき たいと存じます。十分な議論を踏まえて、変更できるものは変更をするという方向で進 んでいきたいと思います。  では、齋藤主査から資料確認をお願いいたします。 〇齋藤主査  資料の確認をさせていただきます。お手元に資料1・資料2の2種類を御用意させて いただいております。  資料1が心臓移植希望者(レシピエント)選択基準について、という資料でございま して、全体で15ページございます。  資料2が心臓提供者(ドナー)適応基準について、という資料で、全体で17ページご ざいます。  落丁等がございましたら事務局までお申しつけくださいませ。以上でございます。 〇北村班長  御質問ございませんか。きょう御出席の委員の先生方、あるいは参考人の方々はお互 いによく御存じだと思います。佐多先生には感染症の関係で来ていただいておりまし て、あとでまた御意見をいただこうと思います。  本日の作業班の会議では心臓移植希望者(レシピエント)の選択基準のところでは、 特にPDE阻害剤の問題。提供者適応基準のところでは、C型肝炎の問題等々、他臓器 とも整合できるかどうかということです。  もう一つ、レシピエント側ですが、エルバス(LVAS:左室補助人工心臓)がつい ている患者を、米国のような取り扱いに持っていくのがわが国の過去6〜7年の経験を 踏まえて適切かどうか、あるいは時期尚早か、問題点が多すぎるか、等々の御意見を伺 いたいと思います。では最初の説明からお願いします。 〇齋藤主査  では資料1、心臓移植希望者(レシピエント)選択基準について御説明いたします。 この議題につきましては、今年5月に開かれました第17回臓器移植委員会において,レ シピエントの選択基準における「カテコラミン等の強心薬」という記述について、北村 班長より一部の現場において混乱が生じている、という旨の報告をいただいたところで あります。その結果、作業班において一度議論をすることが適当であるという判断をい ただきまして、この場において御議論をいただくものであります。  具体的には、アムリノン等のフォスフォディエステラーゼIII阻害薬の名称を選択基 準に明記することについて御検討いただきたいというものです。  資料2ページを御覧ください。現行のレシピエント選択基準を付けさせていただいて おります。この3ページの上段の辺りに医学的緊急度status1の(エ)として、投与さ れている薬剤についての考え方が示されております。こちらの中では「ICU、CCU 等の重症室に収容され、かつ、カテコラミン等の強心薬の持続的な点滴投与が必要な状 態」とされております。  次に資料5ページです。このレシピエント選択基準上のPDE阻害薬の使用について は、平成11年に通知を出させていただいております。通知の6ページの上段に辺りに考 え方としてPDE阻害薬が含まれるものであるということをお示ししております。読ま せていただきます。  「優先順位のstatus1の定義については、その規定を明確にするとともに、従来、重 症室におけるカテコラミンの持続的な点滴投与をstatus1の条件としていたが、当該持 続的な点滴投与が必要とされる薬品については、カテコラミン以外のフォスフォディエ ステラーゼ阻害薬などの強心薬についても、これに加えたこと。」とあります。  しかしながら、先ほどお示ししました選択基準の本文においては、この考え方が明確 にされていないということから、より明確にさせるために選択基準を本文にも明記した ほうがよろしいのではないかということでございます。  再度、資料1ページにお戻りください。この論点につきましては、「2.これまでの 意見」のところにもお示ししましたとおり、薬剤名を明記するという点のほかに、使用 されている用量についても検討が必要ではないか。またICU、CCU等の重症室に収 容とありますが、ここでも「等」という言葉が使われておりますので、これについても 検討する必要があるのではないかという意見が出てございます。  次にもう1つの論点としまして、補助人工心臓を装着したレシピエントのstatusにつ いて検討する必要があるのではないか、という点がございます。これが論点の(2)でご ざいます。これは国内では補助人工心臓を使用する期間が、もともと想定されている期 間よりも非常に長くなっているという現状を踏まえまして、現行のstatusの区分けを変 更する必要があるのではないかという意見があったためです。  この点につきましては、北村班長より心臓移植施設に対してアンケートを実施してい ただき、その結果statusの引き上げについては賛成、あるいは条件付きで賛成、という ように意見が分かれたということのようです。そのため、本日はこのstatusの変更、あ るいは現状のまま、というような対応の選択肢を念頭に入れまして御議論をいただきた いと考えております。  この点に関する資料でございます。3ページ、レシピエント選択基準の上段のところ でございます。医学的緊急度のstatus1の(ア)として、補助人工心臓を必要とする状 態というようにして考え方が示されております。  また、7ページ以降の資料について簡単に御説明をさせていただきます。  7ページ目以降には、全米臓器配分ネットワークUNOSにおける規定を参考として お付けしております。こちらにある下線部や取り消し線はインターネットに掲載されて いたとおりのものでございます。ここでのstatusの考え方についてです。7ページ目の 下段以降に3.7.3 としまして、成人患者の基準として、status1A、1Bの考え方が示 されております。status1Aの基準としましては、(a)補助循環装置の使用。(b) 客観的な合併症を伴った補助循環装置の使用。(c)持続的な人工換気状態。(d)持 続的な高用量の変力性薬剤の使用。(e)その他主治医が特別な申請を行ったとき。と いうようにされております。  特に(a)の補助循環装置の使用については、心室補助人工心臓、あるいは全置換型 の人工心臓、大動脈内バルーンポンプ、体外式膜型人工肺、のいずれかを用いるという ことが条件となっております。  また(d)の高用量の薬剤の使用ということについては、ドブタミンとミルリノンの 投与量が具体的な例示として示されておりますが、その他の変力性の薬剤の使用も条件 として認められているところです。  また9ページです。ここにはstatus1Bの定義が示されております。status1Bは、 心室補助人工心臓の使用、あるいは持続的な変力性薬剤の投与が条件としてあげられて おります。  status1Aとの違いについては、status1Aは指定された移植病院に入院しているこ と。また急性の心不全状態であること、が条件になっておりまして、この点でstatus1 Bとの差別化が図られております。資料の説明については以上でございます。  ただいま室長の片岡が参りましたので、御挨拶をさせていただきます。 〇片岡室長  大変遅れて申し訳ございませんでした。この7月に臓器移植対策室長に着任いたしま した片岡でございます。先生方におかれましては、日ごろより心臓移植ならびに臓器移 植医療全般につきまして大変なる御協力をいただいておりますことを、この場を借りま して厚く感謝申し上げます。本日はよろしくお願いいたします。 〇北村班長  片岡室長、ありがとうございました。いま斎藤主査から御説明をいただきました点に 入ります。最初には薬、選択基準に書いてあるのが、3ページの(2)医学的緊急度の 中の定義:status1(エ)に書いてあるところです。ここは実は「カテコラミン等」と いうことで明確でなかったということですが、この選択基準の通達は平成9年に移植の 法律ができたときに、保健医療局長通知として出ているものだそうです。ところがその 1年半後の平成11年6月の同じく保健医療局長からの通達では、ここは6ページの一番 上のところですが、フォスフォディエステラーゼ阻害剤についても「等」の中に含める ということが通達で出ているわけです。ですので、「等」に含まれるという解釈で平成 11年からできるわけですが、規約集という本文のほうには「注」付けもできていなかっ たというか、変わっていなかったために、関係者の周知が徹底していなかったことがあ って、新しい移植施設の増加とともに明確でないという意見が上がってきまして、アン ケートをした結果、多くの方々がフォスフォディエステラーゼIIIを含め、かつ、明確 に書いたほうが良いのではないかということがあったわけです。  明確に書いた場合に、また新たに次の薬が出てくることがあるのか、あるいはstatus 1として変えない場合には良いのかもしれませんが、量というものも、最初の検討項目 にも載っておりましたが、ごく少量のものを使って腎機能の維持という形で使っている ものもstatus1とするということで、アメリカの1Aというような形で量の規制を加え たほうが良いのか、というようないろいろな考え方が生じると思います。  あまり複雑になると厄介ですね。どのような形で現場の混乱とか問題点が解消できる のか、皆さんの御意見をお願いしたいと思います。  カテコラミンとか少量のアムリノン単独、カテコラミンなしでアムリノンだけで一般 病室で元気にしているという患者さんもあり得るわけですが、そういう場合にここの 「ICU、CCU等の重症室に収容され」ということが一つの足かせというか、制限に 入ってきているわけです。斎藤主査からいわれたように、そこにも「等」が付いている という形で、また現場では混乱したりするのかということです。少し御意見を賜った り、こういう方向性がよいのではないか、という御意見がありましたらお願いいたしま す。 〇和泉委員  前回も加わった委員の一人として、少し私の記憶に残っているところを申し上げま す。心臓移植が発足するときの文面が現状に合わないのではないかということで、すぐ に作業班が立ち上げられて、この文面に改められる作業が行われたと思います。その経 緯の中で、今の議論がすべてその時に行われております。ICU、CCU等のしばりを 設けないといけないのではないか。量などを明記するとかえって混乱が大きくなるので はないか。あるいはフォスフォディエステラーゼをあえて書かなかったのは、カテコラ ミン等の強心薬という表現で、あとは注意書き等で十分であろうということ。今後起き てくるであろう新薬が出たときにも、それで対処できるのではないかという議論でし た。その時に今の議論がほとんどされたように記憶しております。  いま顧みましても、あまり大きく状況は変わってないと思いますので、私自身はこの 点のところはフォスフォディエステラーゼは含まれているのだ、ということを明記する ということに今回はとどめたほうがよろしいのではないか。そのことだけで十分で、も う少し全体を見て推移を眺めながら、ここの文面を変えるのであれば、その時に変えて よろしいのではないか。11年であったでしょうか、その時の合意事項を大きく崩さない 表現にとどめるべきではないか、という意見をもっております。以上です。 〇北村班長  実際にネットワークではその辺で何か問題点がありますでしょうか。 〇菊地参考人  カテコラミン等の「等」の部分に何が入るのかというのは移植施設の先生方から質問 を受けるところです。評価委員の先生方に評価をしていただいているので、その通りに ネットワークとしては入力をしております。薬剤もさることながら、ICU、CCU等 というのが、病院がICU、CCUに匹敵すると定めれば、それはその部分を黙認とい うか、容認しても良いのかというところもありますので、回答することが難しい事例が 非常に多いように思います。 〇北村班長  11年の保健医療局長のところにも出ております。ここのところはネットワーク等々に 出ている、あるいは各施設が持っているレシピエントの選択基準というブックレットの 中には現在のところは入っていないわけです。これを11年6月のことを尊重するという 和泉先生の意見もあり、ここを書き加えるという形を「注書き」で加える、「等」とい うものに対して「注書き」を加えるという意見もございます。  むしろ文書そのものを変えたほうが良いという意見もありますか。 〇許参考人  今回、強心薬の種類という議論と、もう一つはドースという議論、この2つが先ほど 班長より提示されたと思います。和泉委員よりドースはあまりにもややこしくなるから やめよう、という議論も一部あったということであります。ただ、強心剤というもの は、強心剤として作用するドースが投与されてこそ、はじめて強心剤である。その意味 からいうと、ほとんど象徴的に持続投与されて、しかもネットワークの方がおっしゃい ましたが、通常の個室をICU並みと称して、そこに移植まで待機しておくということ と、本当に内科の先生方が必死になってICUとかCCUで管理されて、何とか移植ま でつなげようと努力されている症例とは、おのずと区別されるべきものである。  そこで私は常に強心薬というものに対して思いますのは、各々の強心薬は今後も増え るかもしれません。ただその投与量は、通常は強心薬として効果がはっきりしているド ース以上の量を強心薬というべきであろう。例えばドーパミンでいえば通常は我々は3 γ/kg以上で強心薬としての作用を通常は期待するわけですが、それ以下のものに関し て、本当にここの議論のところにも書いておりますが、レーナルドースといわれるもの でICUで必死の内科の先生方が心不全をコントロールしておられるものと同等に扱っ て良いのかどうかといいますと、私はこの文書から見ましても、強心薬に関して、文書 はこのままで良いのですが、ドースに関しては、通常の有効最少量を超えるものと解釈 するべく、これも注意書きをお付け加えをいただけるなら、それは付け加えるべきであ ろうと思います。  と申しますのは、私どものところでもでは、本当にわずかな薄い量でずっとつなぎと めておけば良いのかという議論が常にございます。その意味では強心薬というのは薬と しての効果のあるドースを超えた量、最低限の量を超えた量と解釈するべきであろう、 私はそのように考えております。 〇田林参考人  東北大学の田林です。なかなか難しい問題であると思います。1点、この「カテコラ ミン等」というのは、和泉先生がおっしゃったように注意書き等でPDEIII阻害剤が 入る、その辺の解釈で良いと思いますが、量に関しては、いま先生から意見がありまし たが量をある程度規定しますと、なかなか難しいことがあるのではないでしょうか?量 も変動しますので、それでstatus1にいったりstatus2に行ったりするので、そのよう なところをどのように判断するのかというところもあります。  もし量を限定しないとすれば、ICU、CCU等の「等」を外してはどうかというの が僕の提案です。少なくとも量を限定、規定しないで、重症であるという裏書きとして ICU、CCUという「等」を外して、そちらに収容されているという条件にしてはど うかと思います。少量のカテコールアミン投与で、一般病室にいる患者さんをstatus1 とするということを考える必要があると思います。 〇高本参考人  重症心不全の患者さんは、決していつもいつも同じ状況では必ずしもないですよね。 多少は調子が良くなるときもあるし、あるいはちょっと具合が悪くなるときもある。だ からあまり細かくやると、ICUに入って少し良くなったし、患者さんのいろいろなメ ンタリティーのために少しICUから出したほうが良いということもあるだろうと思い ます。  そうなるとstatusがしょっちゅう変わらないといけないから、あまり細かく決めるの は僕は良くないのではないかと思います。「等」というのはその意味では、確かに、ち ょっと不明瞭な部分がありますが、でもこちらのほうがやりやすいのではないかという 感じがいたします。 〇北村班長  ほかに御意見ございませんか。 〇森田参考人  九大の森田です。確かに許先生がいわれることは正論できちんとしたものを作らない といけないと思いますが、例えばそうすると、私も今はじめて気づいたのですが、UN OSのほうではミルリノンが0.5 γです。ぼくらの感覚からいうと多いという感覚です ね。薬の合意をそれぞれに求めるのは非常に難しくなる、あと「カテコラミン等」とし てもらえれば常識的なところにいく。ではノルアドはどうなるのかとか、ボスミンはど うなるのか、そういうことになっていくと、非常にその作業がきちんとしないといけな いと思うのですが、まとめるのは非常に難しいのではないかと思いますので、「等」と いうことで逃げるという言い方はおかしいのですが、そこで常識的なところで判断して もらうというのが実際的ではないでしょうか。 〇松田委員  このミルリノンのことは前にいろいろと議論になったときに、前に議論をしてそれは 了承されておりますと申し上げていました。要するにこの通達が出ているのは、現場で 認識度が悪かったということがありますので、今回は和泉先生の意見に私は賛成です。 あの時の議論もそういうことで落ち着きましたので、今回はこの通達を平成11年の通達 をよくわかるようにする、ということにとどめて、他のことは、これだけいまとにかく ドナーが非常に少ない状況で、いまの状況を触るというのは現場では混乱をしますの で、私は特に文言をいろいろと変えないで、カテコラミンの量ということも今回は言及 をしないで、このフォスフォディエステラーゼが含まれるということを、どこかに「注 」を入れるということで当分行くのが、何もそれで選択基準がおかしくなるということ でもないので、現状これまで来ておりますので、もうひと辛抱これで行けばいいのでは ないかと思います。 〇北村班長  笠貫委員がいまおこしになりました。いま検討しているのは、実は、3ページのレシ ピエントの選択基準に書いてある「カテコラミン等」というのが、施設が増えたりとか でいろいろなことがあったと思いますが、実は平成11年6月の5ページの資料の6ペー ジの一番上に、その「等」の中にはフォスフォディエステラーゼ阻害剤を含めるという ことが11年に決められておりまして通達は出ていますが、このレシピエント選択基準と あがっているこの書類の中にはそれが見えてなかったことがあって、知っている人と知 らない人があり、気づかない場合があったということです。それで根本的にもう一度見 直すか、あるいはどのような形で分かりやすくするのか、という御議論をいただいてい るところです。  いろいろな意見はありますが、何か先生から御意見があれば、大体全員の方が御意見 を述べられたということになります。 〇笠貫委員  遅れまして申し訳ございません。PDE阻害剤につきましては、私も承知しておりま した。松田委員がおっしゃいましたように、この時点では、PDE阻害剤に関する平成 11年のものを何らかの形で確認をし、さらに認識を広げるという程度でよろしいのでは ないかと思います。 〇北村班長  菊地参考人、ここの選択基準に※でも付けて明確にフォスフォディエステラーゼを含 む、と記載すればわかりやすくなりますかね。 〇菊地参考人  はい。ただし「等」と書かれているので、それ以外のも今後議論によって入ってくる 可能性があるのかどうかを知りたいのですが。 〇和泉委員  平成11年のときには具体的に2〜3の項目は私たちの視野の中に入っていたのです。 しかし、いま強心薬は冬の時代を迎えておりまして、強心薬として開発されたものが、 必ずしも市場に出てくるという状況にはいまはないのではないかと思います。ここ数年 は少なくとも今の状態が持続するというのが、私たち内科医の一般的な認識です。です から、新たに候補が出てきたときに、個別にまたそれを議論すればよろしいのではない かと思います。 〇北村班長  御意見を聞きますと平成11年の通達を覆すのではなく、尊重した形で平成9年の選択 基準に分かりやすい形で付記してもらう。書き直してもらうという形と、ICU、CC U等の「等」を取るかということがもう1つ出されております。量を規定するのはなか なか難しいだろうし、種類もノルアドレナリン、アドレナリン等もカテコラミン等の中 に入っているという形、これは皆さん理解できると思います。ICU、CCU等の「等 」が入った経過はどういうことであったのか。  恐らく、1年も待っているという患者さんは、どうしても個室がいるようになります ね。ICU、CCUの個室の中でがさがさしたところでは耐えることができないから、 個室等も含めてはどうか、ということであったのではないでしょうか。この経過を御存 じの方はおられませんか。 〇和泉委員  いまいわれている通りです。ICU、CCUで長くなってきたら、部屋に窓がないと いうことでICU症候群になったり、家族との接触が非常に困難になってくるというこ とで、一般の個室も転用して使わざるを得ない患者側のニーズが出た場合でも駄目とい うことになるのか、という議論がありました。それは「見なし」でいこうということで 「等」です。ですからICU、CCUにいったん収容されて、それが長期化されて、そ れが個室に移されたとしても、それがICU、とかCCUの認定を受けていなかったに しても、認める立場で議論をしようという趣旨であったと記憶しております。 〇北村班長  少し違った御意見をもっておられる方は、選択基準にPDEIII阻害薬等を「等」の 中に含めるということを、「注」か「添え書き」で追加するという形で了解いただける かどうかです。しっかり量を決めたほうが良いという許先生はどうでしょうか。 〇許参考人  例えばドーパミンを1γ投与して、それを切っても切らなくても良いのですが病棟で ずっと続けていても良いと思います。その意味では、具体的にそれぞれの薬剤のドース を決めるのは困難ですが、それぞれの薬剤におのずと最低の薬効量というものがある。 その最低薬効量を切るようなドースで病棟でただつないでいるという状況もあり得るの で、具体的にそういうことを考える人も出てくるであろう。その意味では、ほかの上段 に書かれているような補助人工心臓、IABP、あるいは人工呼吸、これはわざと薬効 量以下のレベルで維持するというようなことまずあり得ないわけです。その意味では (エ)のカテコラミンの強心薬の持続的な点滴投与という趣旨が我々は善意に解釈すれ ば、もちろん薬効量以上のものが投与されて、しかもICUおよびそれに同等な管理が 必要である。田林委員がいわれたとおりにそういう重症例を想定するわけですが、文書 の解釈のしようによっては、わずかな薄いものがただ付いていればよい。  しかも別に重いから個室に入っているわけではなく、御本人の御希望でお金があるか ら個室に入っているという人もおられる。ですからその意味からいうと、具体的なドー スを規定しなくても、強心薬それぞれの薬効の最低薬効を超えている、ということが必 要ではないかと私は考えます。  そういうことで具体的な数値を決めるというのは煩雑であるかどうかというと、きわ めて煩雑であると思いますが、それぞれの薬において、強心作用が出る最低量というの は薬理学的にもはっきりしておりますから、それを超えるレベル、この文書からいって も解釈するべきであろうと思いますので、それもこの際、もしもここをいじるのであれ は、はっきりと文書で規定したほうが良いと思います。  今後、いろいろな薬剤が出てきて強心薬作用を持つ、その時にそれのドースはいかが なものか、その時に単に末梢血管を拡張するだけのドースと、本当に心臓の強心作用を 持つドースいろいろな良い薬が出てくると薬効も複雑になってきますから、単にこの薬 の種類が入っていれば良いとか悪いという問題で片づけられる問題ではないと思いま す。ただ、判定がややこしくなるという可能性は否定しません。 〇松田委員  許先生のこともわかりますが、非常に少ない量でも切ると悪くなって、乗せないとい けないという患者さんがいるわけです。ですから患者さんによっても違うわけですか ら、量を決めてしまうというのは非常に難しいと思います。ですから、あえてそういう ことを乗せるとするなら、参考程度にとかという何かをやることで量で何かを規定する のは難しい。  もちろんstatus1Aのような超特急の1週間とか2週間というものを作るというスタ ンスであれば、また出てくるかもわかりませんが、現状、今までやってきた中では、そ れをあえて触らないほうが良いと思います。  施設も限定されて認定されているわけですから、20もとか30もということでいろいろ なところがという状況ではないので、その意味で施設認定もしているわけです。プロフ ェショナルのいるというところで認められているわけですから、量については、内科の 先生が例えば参考というものをどこかに置くというのは検討されても良いと思います が、文言に入れるというのは、私は無理だと思います。 〇和泉委員  患者の特性からいって、非常にいろいろなタイプが考えられるので、それを全部を考 慮にいれて議論をするのは難しいと思います。許先生がいわれるような懸念が発生する ことは、今のところは心臓移植委員会での評価適応のときにも厳しい目でやっているわ けです。実際に実施施設のほうで責任をもって申請をしてくるという形、なによりも最 終的には検証という作業があって、検証という作業において1例1例の症例が妥当で行 われたかどうかということが検証されているわけです。  ですから、そういう3つの関門を考えれば、あまり細かい規定を作って現場を混乱さ せることは得策ではないと思います。この21例の中においても、先生がいわれるような 事態は発生していないということを考えれば、今のままでなるべく浸透するまでやっ て、先生が懸念されるようなことが表面化する、あるいはそういう事例が出たときには 思い切った改正をしていくということのほうが、より現実的ではないかと理解しており ます。 〇笠貫委員  私も内科の立場でレシピエントの方々をたくさん治療してきた経験からいきますと、 通常の最低薬効量、あるいは薬理学的は有効用量と、重症心不全の患者さんのカテコラ ミン等に対する反応は全く違うと思います。その意味では厳密に評価しえたとしても、 それをオフにできるかどうかということは、非常に難しいところがあります。  その意味では、患者様が持続点滴を受けるという苦しみを十分に認識した上で、カテ コラミンを通常の最低用量それ以下でも切れるかどうかは極めてむずかしい判断になる と思います。  私は臨床の現場から、用量について記載することはできないというふうに思います。 〇北村班長  大体、意見が出尽くしましたでしょうか。皆さんの御意見を総合しますと、保健医療 局長が11年6月3日付でこういう委員会に基づいて出されたこの6ページ上のことは、 現在存続しておりますので、これを変えるほどの大幅な量の規定は、なかなか現状では 難しいのではないか、参考人の中からは変えてはどうかという御意見がございました が、多くの委員からは、そこを何とか使っていくほうが現状ではマッチしているのでは ないか、という意見が多かったように思います。  そうしますと、医学緊急度の(エ)のところですが、現時点ではICU、CCU等で はじまる文書をそのままにおいて、カテコラミン等の上に、下にも※がついて注釈がつ いたところがありますので、同じように※1とか※2とかにしていただき、ここに平成 11年の局長通達を付け加えていただいた形で、これを各施設等に、あるいはネットワー ク、ネットワーク支部、移植施設等に通達してもらう方向性です。   これは作業班でございますので、臓器移植の親委員会に上げますが、この辺りの今の ところでしたら親委員会でも問題はないと想像しますので、そういう形で徹底していた だくということは対策室としては可能ですね。 〇許参考人  この局長通達ではフォスフォディエステラーゼはIIIに限定していませんよね。では III以外のものでも強心作用の持つものなら良いということですか。このままの文書で いくのでしょうか。それともIIIに限定される予定でしょうか。 〇北村班長  IVというのがバイアグラです。フォスフォディエステラーゼIV阻害剤というのがバイ アグラの名前で、何の薬か知らないという方はここにはおられないと思います。肺高血 圧症の薬として小児に使用するということはいま研究されております。狭心症という位 置づけはできていないと思います。どうでしょうか。委員の方々は。 〇和泉委員  許先生にお聞きしたいのですが、フォスフォディエステラーゼで強心薬と認められて いるのはバイアグラは含まれないのではないですか。 〇許参考人  使いようによってです。今後のこともあります。それでアメリカなどではPDEIII ミルリノンと規定しております。ほかのところでもPDEIIIと規定しているところは あるのではないでしょうか。ですから現実でいま使われているのはPDEIIIだけです から、はっきりとIIIと書かれたほうが、先ほどもチェンジがあればチェンジするとい うことですから、今はアムリノン、コアテック、ミルリノンその3者になると思いま す。 〇和泉委員  これはむしろ班長にお聞きしたいのですが、いまここに用いられている心臓移植レシ ピエント選択基準というのは、これは11年に改定されたもので、その注釈として通達が 出ているというのが私の理解ですが、そうですよね。これは平成9年に出たものではな いですよね。これは11年に出たものですね。 〇北村班長  ここの2〜3ページに書いてあるのは、最初から変わってないものですよね。 〇斎藤主査  事務局から御説明させていただきます。この選択基準は11年の通知を反映した形のも のになっております。平成9年当時のカテコラミン等の部分の記述については、「等」 がありませんでした。11年に「等」がつきました。 〇北村班長  失礼しました。この「等」にこういうものが含まれたということで解釈してくれとい う形で、文書自身には注釈とかは付いてないわけですよね。 〇斎藤主査  当時の通知でございますが、平成9年のものを読み上げます。  「ICUやCCUなどの重症室に収容され、カテコラミンの持続点滴」となっており ます。ですので、ここに「カテコラミン等」というのが11年の通知を反映して付いたと いう経緯になっております。 〇松田委員  「等の強心薬」が加わったわけですね。そこが大事ですよね。 〇北村班長  では少し明確にするのに、フォスフォディエステラーゼという11年のこの通達の部分 をIIIとかIVということではなく、強心薬ということで、このままで※でも付けていた だくということでよろしいのではないかと思いますがどうでしょうか。 〇和泉委員  むしろ厚生労働省のほうがどうなのかということですね。正確を記するのであれば私 はIIIで良いと思いますが、それをIIIを加えるだけで大変な作業がいるのであれば、現 場を混乱させるだけですから、私たちの理解という運用の仕方でしばらくはいじらない ようにしたほうが良いのではないかというのが、私の発言の主旨です。 〇許参考人  むしろ、先ほど北村班長の御発言にありましたように、バイアグラではないのです が、それと類似の肺血管抵抗に対するロングタームの薬もあるようでございます。それ を使えるように、現状でIIIと規定しないと言っていただいたほうが、将来は可能性は あると思います。  その意味で、和泉委員が先ほど、「現状で」とおっしゃったので現状ではIII以外は あり得ない、ただこの文書自体がフォスフォディエステラーゼ阻害薬であれば何でも良 いという解釈でよければ、このままの文書で幅広くしておいたほうがよろしいと思いま す。 〇北村班長  阻害剤等の強心薬という言葉が入っている。現在あるIV阻害剤は強心薬とは位置づけ られていません。血管拡張作用が強いから肺血管系にも効くということはわかっており ますが、強心薬という位置づけにはなっていない。  次にいかないと時間もございませんので、一応、委員の方々の意見を尊重させていた だきまして(エ)の部分には強心薬のところに、別に記録されてきた書類の一部を6ペ ージの上の部分の必要な部分を「等」の中にはこれが含まれるという形を明記していた だくという形で、まず親委員会に出してみたいと思います。よろしいでしょうか。  次の問題にも関係してきます。カテコラミン量等を規制しますと、またそれ以下のも のをstatus2にするのか1のBにするのかというような、アメリカの関係に入ってきま す。わが国の状況でそこまで細かく分けて、果たしてドナーの対応に意味があるのかと いうことは大変な大きな問題であろうと思います。  先に進めさせていただきます。次は補助循環装置の取り扱いについてです。これはア ンケート調査をさせていただきますと、優先順位を付けるのが必要であるという方と反 対という方、あるいは現時点では賛成できないが、いろいろな条件を付記しないと賛成 できない。いろいろな意見がこの点では分かれておりました。  委員の方々、あるいは参考人の方々の御意見を頂戴したいと思います。  現在、わが国で人工心臓の依存度が非常に高い。米国はせいぜい50%以下ですが、わ が国では70%以上の人が補助循環装置を付けて待機をしているという状況もあります。 その期間が著しく長いということから、そういう人の優先を認めてはという意見と、現 状ではそれは非常に難しい条項にある、という形の御意見の両方があると思います。  現状のわが国でこれを新たに作っていくべきかどうか、その辺りの御意見をお願いし たいと思います。 〇松田委員  こういう議論は大事ですが、現実にはドナー不足で非常に厳しい状況です。それがど んどん状況が変われば別です、しかも補助心臓を付けている方が、現実にはなかなか移 植にいかなくて、強心剤だけの人が多いというとこであればそうですが、現実には補助 心臓の人がほとんどになってきている。  そういう状況ですので、それをあえてもう一度優先というのは、現実的なことからい うと、なかなか理論武装はできないと思います。現場が頑張ってやっている中ですの で、これ以上status1Aのようなことをするというのは、あまり感心しない。現場が混 乱するだけではないかと思います。私は現状のままでしばらく様子を見るのが良いとい う意見であります。 〇和泉委員  全く同じ意見ですが観点は違っております。私たちはいまstatus1でカテコラミンで 認可している人たちがいるわけです。その人たちが認められているのは、私たちにもき っとチャンスがあるだろうということで私たちも後押しできるわけです。  これがもし補助循環を装着している人たちが全部優位に来るということであれば、そ ういう人たちが今度は外されて、むしろ積極的に補助心臓を付けてほしいというよう な、非常に反転した考えになびく恐れもありますので、私は現状が許容できるのであれ ば、現状を追認していくべきであると考えております。 〇田林参考人  現状は松田先生のおっしゃるとおりです。実際問題、補助心臓を着けている人がほと んど適応になっているわけです。2つの点から考える必要があると思っております。  人工心臓の埋め込みか体外設置型かということです。もし埋め込みであれば、体外と いうのは体外においた場合にどれくらい持つのかということを考えた場合に、ある程度 は優先をおいたほうが良いかなという意見が1つです。今後埋め込み症例が増加してき た時点で考える必要があると思います。  もう1つは、status1の判断基準が許先生がおっしゃるように、カテコールアミンが 投与されている人がすべてstatus1で同等であることに問題があるように思います。人 工心臓が適応されない患者さんもおりますが、人工心臓はカテコールアミンでコントロ ールできずに人工心臓を埋め込まれたという状況を考慮すると、status1を1A1Bに 分けた方がよいと思います。 〇北村班長  カテコラミン、少量とかで量の問題がありましたが、そういう人が成人であれば、次 に人工心臓にいく道があるということが、こういう問題の意見が出てきた大きな根拠で あろうと思います。少量カテコラミン、あるいはアムリノンでいっている人がさらに悪 くなったときは人工心臓という道がある。人工心臓がついている人は、その後に移植に 継がないと現状ではなかなか難しいという状況もある。しかし人工心臓にもいろいろな 種類があって、家庭に帰る人はアメリカでも1Bになってしまうわけです。1Bに置く ぐらいに安定して生活に戻っているような人工心臓の方もおられる。  こうなると人工心臓の種類とかいろいろなことが大きな厄介な問題になってきて、恐 らく急性としてついた1Aという時期に入ってくる形でアメリカは分けてきたと思いま す。  いまわが国がそこに足を踏み出して分けてやるべき状況であるかどうか。そうします と米国のようにカテコラミンの量とかのいろいろな規定を難しくしないと、今度は現場 の判定、あるいはネットワークの判定も非常に難しいものになるというところがあると 思います。 〇森田参考人  私自身はアンケートでは優先するということに賛成と書きました。ちょっと誤解があ ったようで確認したいのです。UNOSの1A/1Bの分け方を見ると、これは単にV ASに乗っているということではなく、今すぐに何かをしないとVASに乗っていても 死にそうであるということですよね。ですから、14日ごとにそれを更新するという作業 が要求されているわけなので、いま班長がいわれたことの1Aということと、UNOS の1Aは観点が違うのではないかと思いました。  その点から考えると、私たちのところにも先天性心臓病絡みの候補者で、どうもこの 人はVASに入れるのは難しい、あるいは入れられない、という人が出てくると思いま す。するとそういう人でも今は緊急の黄色い旗をあげてすぐにしないといけない。そう いうのは1Aという感覚ではないでしょうか。  そういうことからいうと、VASに乗っているとか乗っていないということで1Aと か1Bとするのではなく、VASに乗っていても、例えば、急性であるとかという意味 での1Aということにしないといけないと思うので、基本的な何が急性のものであるの かという経緯から入っていかないといけないから、単純にVASだから1Aということ にはならないと思いました。私の賛成というのは、その意味では訂正しないといけない と思います。 〇許参考人  VASは今後どんどん進歩すると思います。わが国の年間3例という移植状況からい うと、むしろ我が国のVAS治療はデスティネーションセラピー(半永久使用を目的と した治療)ではないかと欧米の研究者たちから見られているわけです。  ただVASで状態の悪い症例を急いで移植をするというよりは、状態が安定してスタ ビライズされた状況で移植するほうが、非常に成績が今は良いわけです。90%以上の1 年生存率が得られています。その意味からいうと、VASの今後の性能の向上。スタビ ライズしてからゆっくり移植をやったほうが成績が良いという観点からいうと、あまり 今の現状をいじらずに、VASで良い状態で移植にもっていく。そのほかのIABPに 乗っている患者さんのほうがむしろ急ぐのではないか、そういう感じかあるわけです。 VASに乗ったからといって、区別して超特急というグループを別箇に作る必要はな い。むしろ我々はVASをつけて良い状態にもっていって、今後移植をするべきだろう ということで、私は現状の非常にドナーが少ない状況では、それ以上に細かくわけても 意味がないし、むしろVASでスタビライズしてもっていけるように。  恐らく、今の体外設置型でも厚生労働省のほうの保険は大変でしょうが、うまく取り 換えながらいきますと、私どもでこの前移植させていただいたものも1030日ほど体外設 置型で待機しておりますし、今は体外設置型でも半数以上の方が1年以上の生存を得ら れる状況ですので、そこであまり細かく分ける必要はないと思います。 〇北村班長  米国の人工心臓は1Aも1Bもあります。1Aというのは、それにさらに感染があっ たり、血栓塞栓症を起こしたり、そうして人工心臓を変えないといけないとか、あるい は人工心臓機械不具合が起こる。そういうように緊急度の高い人工心臓の患者ですよ ね。ですから、そういうものは結構あることはあるわけです。脳梗塞を起こして実際に 死んでいく手前の患者はたくさんある。実際に脳梗塞を起こしてから心臓移植を受けた 患者もある。そういう緊急度の特に高いもので、ほとんどそれが日本では人工心臓にな ってしまっているわけです。  カテコラミンだけでそういう状況になっている人は年齢が低い子ども以外は、ほとん ど人工心臓が付けられているのではないかと思います。そういうものを更にstatusをあ げるのは、まだ時期が早いのではないかという意見がありました。皆さんそれでよろし いでしょうか。 〇笠貫委員  私も賛成です。内科の立場からいきますと、このVASの進歩と、それに伴う適応の 問題は、変わっていくというのが現状であろうと思います。その意味では、カテコラミ ンの持続点滴での患者さんの苦しみとリスク、VASを体外式に植え込んだ場合の患者 さんの苦しみとリスク、というものを区別することはほとんど不可能ではないでしょう か。  その意味では、班長がお話になった緊急避難については、日本の現状でその考え方を 入れるのはかなり難しさがあって、カテコラミンの持続点滴であろうとVASであろう と、長期の重症心不全での患者さんの苦しみ、そしてその治療やインターベンションに 伴うリスクを抱えている患者さんを、どう今の移植で救い得るのかということから考え ますと、今のVASによって1A/1Bに分けることは現状としては難しいし無理では ないかと思います。 〇北村班長  左心補助装置がついた状況がstatus1で、あとは御存じのように待機期間の順番にな っている形で、さらに重症度の高いものを区別していくには、少し現状では無理がある し、それを実際に分けたところで、どのくらい状況改善に反映できるのかという大きな 問題があります。現場としてもむしろ混乱を起こすのが現状ではないかという御意見が 多いようですので、従来どおりに左室補助循環装置がついた患者はstatus1としてその まま置く。さらに細かい分類に向かうことは、現状では差し控える。  したがいまして、この点については従来どおりのレシピエントの適応基準でいじると ころはなし、ということでよろしいですね。 〇松田委員  それで結構です。ただ、親委員会にあげてほしいことがあります。体外式で非常に苦 しいということが田林委員からも出ました。一方、埋め込み型の一つが心臓移植という ことで保険適用になったのですが、そういうことも我々は考えないといけません。施設 と適用がすごく限られたわけでがこれは非常に高額であるということで中医協でそのよ うになったわけです。こういう議論の中では、そのように同じ移植を待ちながら施設に よって違う、そういうことは直してもらいたいわけです。その意味で、埋め込み型がも っと広く使えるようにということを、この作業班でも認識をして、親委員会でもそうい うことを申し上げるということをしないと、体外式は大変苦しい状況にあることが伝わ らない。ですからそれを全く無視するわけにはいきませんが、方向としては埋め込み型 をもっと広く使えるようにしていただきたい。 〇許参考人  もう1つです。いま体外式のほうも非常に成績が良くなってきました。ただ今のルー ルでは病院内にずっといないといけない。自宅復帰というものが全く今のルールでは不 可能です。ところが非常に安定した状況では、少なくとも外出あるいは一泊とか二泊の 外泊、患者さんの1年猶予に及ぶ待機からいいますと、人道上もある程度は患者さんの 安全性が今の経験則に基づくと担保されてきたと思いますが、体外設置型でも自宅に帰 れる道も検討していただきたい。同時に体内設置型の人工心臓と同時に、体外設置型の 自宅での外出プログラム、あるいは外泊プログラム、自宅復帰プログラム、これも進め ていただきたいということも意見に付け加えていただければありがたいと思います。 〇北村班長  ありがとうございました。NOVACORという人工心臓が保険適用になっておりま すが、従来、保険局のほうは心臓移植自身が保険適用になっていないのに、それのため の道具を保険適用にするのはおかしいのではないかという議論でした。メンバーが変わ りますと、そういう意見は吹き飛んでしまいまして、心臓移植は保険適用になっていな いが、そこまでに行く左室補助が保険適用になったりするのです。  ですから、今のような意見を機会があるごとに申し上げていくことも必要であると思 っております。  では、この2点につきましては、PDE阻害剤のところは明記する。どういう形でや るのかということにつきましては、事務局の臓器移植対策室と詰めを行わせていただき まして、明記する形で親委員会に報告することにさせていただきます。LVASにつき ましては御意見では現状でいじる必要はないということですので、これは親委員会にあ げる必要もなくなったと判断しますので、そのように取り扱わせていただきます。  では心臓移植適応、今度は提供のほうの問題の議題2に入らせていただきます。事務 局から御説明をお願いいたします。 〇斎藤主査  では資料2、心臓提供者(ドナー)適応基準について御説明をいたします。この議題 につきましては、前回の平成14年に行われましたこの第2回の心臓移植に関する作業班 においても、C型肝炎ウイルスの取り扱いということで御議論をいただいております。 その際には東京大学感染症内科の小池先生においでいただきまして、概論的なお話を含 めて御議論をいただいております。  まず2ページ目です。現行の選択基準を付けております。こちらの中では、適応除外 とされる基準として、特にC型肝炎につきましては、HCV抗体などが陽性とあげられ ております。  3ページです。これについては平成14年10月に開かれました第10回の臓器移植委員会 でお配りしたものです。ここでは各臓器のHCVの取り扱いについて一覧にしておりま す。臓器ごとに適応基準ごとの取り扱いが異なっているという状態でございます。ただ しHCV抗体が陽性のドナーからは、HCV抗体陽性のレシピエントに関してのみ移植 が許されるという点では、抗体が陽性のドナーからの移植を可としている臓器について も一致しております。  C型肝炎ウイルスのRNAが陰性であるが抗体は陽性である、というようなドナーで あれば、レシピエントが抗体陽性・陰性のいかんにかかわらず移植ができるであろうと いうところまで踏み込んだ判断をしている臓器は、今のところはないという状況でござ います。  4ページです。前回のこちらの心臓移植の作業班における議論、ということでまとめ させていただいております。この結果については、第10回の臓器移植委員会に報告をし ていただいたものでございます。この中ではC型肝炎抗体陽性ドナーからC型肝炎抗体 陽性レシピエントへの移植については、慎重に検討することとし、絶対禁忌から外すべ きではないか。またstatus1の最重症患者に対する移植については、レシピエントがC 型抗体が陽性・陰性のいかんにかかわらず、RNAの量を測定した上で陰性であれば慎 重に検討してもよいのではないかという形でまとまっております。  5ページ目です。現在のC型肝炎ウイルスのRNA検査の状況についてまとめており ます。C型肝炎の検査については、抗体検査より抗体力価を求めて、これでウイルス量 を推定するという検査もございますが、ウイルスの存在そのものについては、RNAの 測定が確実な検査方法であるということで、RNAの検査に限定してまとめておりま す。検査自体はウイルスの量そのものを測定する定量検査と、ウイルスの存在の有無に ついて測定する定性検査に分かれております。  特に問題となるのは、移植の場合は検査時間についてでございます。事務局で調べる ことができた検査時間のみこちらに記しております。臨床検査会社等にも確認をいたし まして、わかる範囲で調べたものでございます。同じ方法の検査法であっても、例えば 必要となる検出感度に応じて試薬の調整をしないといけない。また検査機関の体制など によっても必要な手間が異なってまいりますので、いちがいに何時間とは決めづらいと いうことのようです。  少なくとも前回御議論をいただいた平成14年の時点から比較して劇的に検査時間が短 縮されたという検査方法は、今のところはRNA検査に関しては出てきていないという ことでございます。よって3〜4時間以内、移植の時間に間に合うような検査方法とい うことについては、まだ確立がされていないというような状況でございます。  また検査時間については、これ以外に検体の搬送時間なども加味する必要がございま すので、移植の現場で時間以内に実施可能かということについては、まだ難しいという ような状況でございます。  続きまして6ページ目にUNOSの規定を付けさせていただいております。一番下の 2.2.7.1 というところで、C型肝炎に関する検査項目を定めております。アメリカでは C型肝炎の検査に関しては抗体検査の結果のみを義務づけておりまして、これ以上の検 査の必要性につきましては、各移植施設の判断とされております。  7ページです。英国の基準を付けさせていただいております。英国では、C型肝炎ウ イルス抗体陽性ドナーからの移植は禁忌ではありますが、すでにC型肝炎ウイルスに感 染している場合で、かつ、生命が脅かされる場合のレシピエントに対しては、患者及び その家族とも十分に相談のうえ認められるということになっております。  続きまして8ページ以降です。前回の作業班の開催後に報告のあった論文を2編参考 として付けさせていただいております。8ページ目の報告についてですが、これは東京 大学感染症内科の小池先生からいただいたものです。これは自然寛解あるいは治療によ ってHCVが消失したと考え得る症例を対象に、血清及び単核球内のHCV・RNAを 再度測定したところ、すべてにおいてHCV・RNAが認められたというものです。  この報告自体は16例についての検討で、いずれも一般の臨床検査レベルのPCRでは 血清中のRNAは陰性とされていたものですが、より高精度、一般の検査よりも10倍程 度精度の高いPCR検査を行ったということでございますが、その結果、血清中でもR NAが認められる症例があった。また、血清中ではRNAが陰性であったものの、単核 球について検索を行うとRNA陽性であったというものでございます。結果として、血 清あるいは単核球のいずれかにおいてRNAが陽性であったというような報告でござい ます。  16ページです。こちらはフランス国内における報告でございます。これにつきまして は、フランス国内における臓器移植、組織移植のドナーについて血清反応が陰性であっ たドナーについて、核酸増幅検査を行った結果について報告しております。その結果、 このような血清反応陰性ドナーであっても、RNAは陽性となる症例が認められたとい うような報告でございます。  臓器移植、組織移植、角膜移植とすべてを合計して3,049 例について調べておりまし て、そのうち臓器移植であったものは2,236 例であったとされております。臓器ごとの 詳しい内訳は明らかにされておりませんが、全体のうちHIV抗体が陽性、またHCV 抗体が陽性であったものを除いた全体の95.7%については、いずれも血清学的には抗体 は陰性であったのですが、この集団を対象に再度RNAを検査したところ、5例におい て陽性であったということでございます。  ただし、この5例について、実際に移植に用いられた臓器は肝臓と腎臓であって、心 臓については移植されていなかった。また実際に臓器の移植を受けたレシピエントの転 帰については、この中では情報は得られていないということでございます。  しかしながらこの報告全体の結語としましては、核酸増幅検査でドナーをスクリーニ ングすることでRNAの有無を判定することはできたが、このような検査は3〜4時間 以内で結果を出さなければならないという臓器移植の特殊性を踏まえれば、今のところ 導入は現実的ではない、ということについても述べられてございます。  以上、臓器移植におけるHCV検査ということに関して簡単にまとめさせていただき ました。以上でございます。 〇北村班長  ありがとうございました。これも以前の会で一度検討したことがございました。その 後の報告、新しい報告も2つ付けていただきました。結局、どこかにウイルスはいると いう結論の論文が結構あるわけです。リバースPCRかあるいはNATという方法も、 移植の場合には時間的な制限と行える施設、あるいはネットワークで可能かという対応 が現在は解決していないといえるわけです。実際に、PCRという核酸検査をして抗体 陽性のドナーを選別することは大変に技術的にも難しいし、学術的にも血清からだけで はわからない。細胞の中にウイルスはいるという論文と思います。  佐多先生、結局、最近は細胞で調べないと血清ではわからないという方向になってき ているのですか。どこかにいてるということでしょうか。 〇佐多委員  私はHCVについてはあまり詳しくない、ということだけお断りしておきます。ただ 一緒にやっている同僚などがいいますのは、血清からいままでPCRをやって調べてい たが、細胞あるいはドナーの臓器、そういう組織から調べたほうが出る場合があるとい うことをいっているので、血清だけのRTPCRのデータだけなら、不十分なことがあ り得るかもしれないと感じます。 〇北村班長  ありがとうございます。3ページを見てください。抗体陽性ドナーの取り扱いが各臓 器で違っています。心臓、肺、心肺、膵臓は抗体陽性、実際、抗体にも程度があるので しょう。+1ぐらいから+3とか、強抗体陽性とか、それとPCR法などでのウイルス パーティクルの数とが相関するのかどうか知りませんが、今は日本では定量的な抗体、 反定量的な抗体の量というものも移植の時には検査していません。現状では(+)か (−)かというオールオアナンでやっております。(+)であれば心臓の場合には絶対 禁忌という形になっております。  腎臓は透析患者でC型肝炎の患者が非常に多い。あるいは肝臓も肝炎で多いというこ とから、小腸、腎臓、肝臓については、実際は適応は慎重に検討するという形になって おります。抗体陽性のドナーから抗体陽性のレシピエントには、慎重に検討した上で移 植可能という判断をしているわけです。  心臓はstatus1で抗体陽性の方であれば、してあげたほうが生存には意義があるので はないかというのが論点で、それがこの絶対禁忌としているところを、肝臓や腎臓のよ うに変えるかどうか、その根拠となる理由が皆さんにあるかどうか。そういうところの 御議論をお願いします。  以前にもそういうところがあったのですが、PCR法と掛け合わせた上での判断、時 間が以前よりは短くなっておりますが、結構10時間レベルかかる上に、現在、ネットワ ークでは対応できないということで、PCR法を加えた形での判定というのは流れてい るわけです。  今度はもう一度プラクティカルに抗体だけで陽性から陽性というものも、心臓も絶対 禁忌にしておくのかどうか、という御意見を検討したいというのが目的ですので御意見 を賜ればと思います。 〇佐多委員  前回は確か小池先生に来ていただいた気がします。第1回目だけ出たような気がしま す。その時の議論は、簡単にまとめますといろいろな臓器がたくさんありますが、いず れにしても輸血を含めた方で基本的に同じような基準にするべきであろう、そうしない といろいろなところで間違いが起きるのではないかというのが1つです。ただ、それで あっても、例えば腎臓の移植の例のように、班長がいわれましたが、ほとんどの人がH CVが陽性であるというような状況の中では、実際にあまり大きな問題が起きていない というようなデータがあるということ。  あるいは肝臓の場合もUNOSのほうではB型と違って大きな問題にはならなかっ た、そういうエビデンスがあるということで、確かこのように絶対禁忌から慎重に検討 するというようにニュアンスが変わったと考えております。  それはそれで全然問題はない。絶対禁忌から相対禁忌に変えるときには、それなりの 理由があってそれなりに説明できるようであれば、それは変えるべきであろうというよ うなディスカッションであったと記憶しております。  そうするといまその原則を変えないと考えた場合に、この心臓の場合、それに付け加 えた状況に変化があったかどうかということになると思います。その辺がいまはっきり しない。むしろこの2つの論文が追加されて、その内容からみると、むしろRNA陽性 というのはウイルスのゲノムが入っていくということになると、感染のリスクは昔より も遥かに高くなっているようなエビデンスとして出てくる。そうすると逆に他の部分 が、肝臓や腎臓は除いても他のところが、エビデンスはないが希望があれば行うという ことも、本当にこれでいいのか、逆の方向にいってしまうのではないかというような印 象を感じているわけです。その辺はいかがでしょうかということです。 〇北村班長  おっしゃる通りです。臓器移植対策室としては、例えば心臓と肺と心肺同時、この3 つが胸部の臓器移植ですね。これがばらばらの取り扱いになるのは困るだろうと思われ ます。もし、肺のほうはそういう(+)から(+)にも慎重を期すだけの緊急度は必要 ないという判断であれば、全体像を見ると難しいのかもしれませんが、心臓には、先ほ どから何度も出ておりますが人工心臓の予後が伸びてきて良くなってきたということは ございますが、限られているということで、そういう(+)の方からドネーションがあ れば、もしレシピエントが(+)であれば移植するほうが、人工心臓でそれを見送るよ りも次の機会を待つにはどうかというのが現場にはありますね。  そこで事務方としては、肺、心肺、心臓は皆違うとなるとこれは大変に厄介だと思い ますが、そういうところの整合ができるのであれば、この作業班として慎重に検討する まで緩和するほうが良いかどうか、という方向性を出していただければと思っておりま す。 〇松田委員  質問です。ネットワークでいままでいろいろなスクリーニングでやっておられると思 いますが、どのくらいなのか、今までの現状で説明をしていただければ参考になると思 います。 〇菊地参考人  脳死体からの臓器の提供については、HCV抗体陽性者から提供いただいた経験はあ りません。これは単純にHCVの抗体陽性の臓器提供候補者がなかったということで す。心臓停止後の腎提供については、過去に7件のHCV抗体陽性ドナーからHCV抗 体陽性のレシピエントへの移植が行われています。中にはPCR検査の定量まで行った 事例もございます。PCR検査をは必須ではないので、心臓停止までに時間があればP CRを行っています。  PCRは、検体を施設に届けてから7時間前後で定量の検査が出ます。 〇松田委員  脳死でなかったというのは、その前に先に除外されているということはあるのです か、そういうことはないのですか。 〇菊地参考人  たまたまHCV抗体陽性の候補者がいなかったということです。 〇北村班長  31人の中でなかったということですね。 〇菊地参考人  はい。HCV抗体陽性であっても、肝臓と腎臓の提供はいただくことができます。た またまいなかったということです。 〇北村班長  斎藤主査から報告がありましたが7ページのイギリス型にするかどうかということで すよね。はっきり申し上げますとね。恐らく現時点でNATあるいはPCRを加えても 抗体陽性ドナーから抗体陰性ドナーへの移植は、PCRをやって血清中ではネガティブ になっても細胞内には、あるいは臓器内には存在している可能性があるということも論 文にも出されたとおりなので、その点は避けるべきであろうという意見があると思いま す。イギリス型に緊急度の高い患者であれば、頭からはねるということではなく、抗体 陽性の患者に慎重に適応を考慮してはどうかです。  話はずれますが、レシピエントで抗体陽性の人は登録していないのですか。心臓移植 が必要なレシピエントで、HCV抗体陽性者は登録していないのですか。 〇菊地参考人  HCV抗体陽性との理由で登録されないことはないと思います。心臓移植適応の禁忌 事項にもありません。 〇北村班長  それは陰性ドナーからもらうから、それは入れているわけですね。その方々がそうし たら陽性ドナーからもらうのはいかんことかな。 〇許参考人  この表によりますと、心肺同時と心臓は少なくとも、心臓移植をすることにおいて は、同等に取り扱わないといけないわけですね。すると心肺同時のときにはHCV抗体 陽性でレシピエントも希望があれば行うということになっているのですか。この表の整 合性からいくと、心肺同時と心臓は同じ条件を作らないといけないような気がするので すが、その点はいかがでしょうか。 〇松田委員  肺は心肺協議会で肺移植のときに最初にこれをやりましたか。心肺のときに出てきた のですよね。記憶が定かでないのですが。 〇斎藤主査  心肺同時の議論については、この時点で心臓の作業班と肺の作業班を合同で開催した というのがあります。そちらの結果で出てきた結果であるというふうになっておりま す。先ほど許先生からありました肺との並びということでございますが、心臓のところ で抗体高力価ドナーから抗体底力価レシピエントへの移植というところで、他の臓器と 若干考え方が違っております。そこのところがこういう結論になったと理解しておりま す。 〇許参考人  でも心肺同時も心臓も移植するわけですから、それが肺を同時に付けて移植したら良 い、心臓だけならだめというのは全く整合性が取れていないと思います。 〇北村班長  いまの3の表の真中から下の(1)ですね。 〇和泉委員  ここから下はこういう議論がわいているというだけですよ。行われている基準を私が 説明しないといけないというのは変な話ですが、現在のドナー適応基準というところで す。 〇北村班長  だから心臓のところだけ(1)が抜けていますから、ここが肺と心肺同時と同じ形であ ればこの3つはまとまれることはまとまれるわけですよね。 〇和泉委員  ウイルス感染ということからすれば、臓器移植は横並びでやらないとならないという のが原則ではないかと思います。たとえ腎臓や肝臓で特殊事情があるといっても、原理 原則は同じでやらないといけないと思います。  心臓の場合に抗体陽性者のレシピエントに抗体陽性者のドナーから、もちろんこれは 開示して危険性もよく理解した上ですが、それが受託できると患者さんがいっているの にだめだというのは、むしろ移植医療の原則に反するのではないか、と個人的には思っ ております。 〇北村班長  現時点のままでしたら、ネットワークの段階で情報の段階で(+)の陽性者のドナー が出た場合にはそれで終わってしまっているわけですよね。 〇和泉委員  多分親委員会が決めることではないかと思いますが、横並びになっていない状況を解 決するべきであるということを申し上げているのです。 〇北村班長  もう少し明確にいっていただくと肝臓・腎臓・小腸がそうしているのに。 〇和泉委員  そうであれば、他の臓器移植もそれに横並び。 〇北村班長  だから(+)から(+)は認められた、という方向でまとまったほうが良いという御 意見ですか。 〇和泉委員  開示して患者さんが受けるのであればです。エイブルにしておくことが正しいのでは ないかということです。 〇佐多委員  議論はそれで何となくわかるのですが、問題は各臓器ごとに作業班で議論をしました よね。それで肝臓と腎臓についてはそういう特殊性があるということでデータをお示し になった。この場合にはそのようにしてもおかしくはない。理由はちゃんと説明できた と思います。だからあとは臓器移植委員会にもう一回あがったと思いますが、そこで何 となく基準がバラバラなのは良くないから、何とかという話があったと思います。だか ら作業班はそれぞれのデータを示すということ、方針を示すということでもいいのです が、臓器移植委員会としては、その辺を一回議論をしていただいたのでしょうか。よく 覚えていないのです。 〇斎藤主査  前回の臓器移植委員会では、いま佐多先生からありましたような方向でいったんまと まっております。その後、全臓器にわたっての基準について見直すという議論はされて おりません。 〇北村班長  そうしたら肺と心肺移植の(1)の意見は、小委員会のようなところで上がってきたの でしょうか。 〇斎藤主査  そういう御理解で結構です。 〇北村班長  そして心臓のところはそこが抜けておりますが、これは前にやったと思います。心臓 移植の小委員会でも同じようなことでね。やりましたよね。その時にPCRを一緒にや るのであれば、現実問題としてネットワークが対応できないという形であったのです が、抗体陽性から抗体陽性への議論では、今のような例えば、自分で私がstatus1で人 工心臓をつけられていたら、そして肝炎で希望があれば、肝炎のほうはいろいろと治療 を後でしてもらいますから、とにかく人工心臓を外してくださいという形で受けたいと いう気が起こるという気がするのです。ですから、そこのところをはじめからドナーが 出てもけられてしまっているのはいかがなものか、というのが心臓のほうでもするので す。  もし、皆さんが同等の考えであれば、改めて親委員会にあげて、ここから推察すると ころ、肺も心肺同時移植のほうも同等な意見であれば、全臓器がその方向で検討しても らいたいというふうに、慎重に対応し検討するという言葉で全部できておりますので、 適応を慎重に検討する。しかしながら、心臓や心肺のときには抗体陽性のドナーがあっ た場合に、はじめからけらないでほしい、ということでネットワークに伝えるというこ とは大分意味があるかもしれませんね。特にC型陽性患者で待っている人がポッと上に あがれる可能性があるわけです。 〇笠貫委員  私も前回、陽性から陽性の方は認めても良いのではないかという方向でなっていたの ではないかと記憶しております。先ほどから出ておりますように、移植を受ける患者側 の立場に立ちましたら、人道上どうであるか。医学的にどうなのか、インフォームド・ コンセントはどうなのか。この3つの観点から考えれば、心臓だけが厳しいということ はないと思います。あとはどういうふうにインフォームド・コンセントを取るかという ことをきちんとすれば、同じような他の臓器と一緒にすることがベターとなるのではな いかと思います。 〇松田委員  私も一番上の欄の一部の臓器で絶対禁忌で、一部が慎重にというのはおかしいので、 横並びにする。絶対禁忌のところを心臓やほかも、適応を慎重に検討することとして、 あとはそれぞれ違うのでそこで厳しくする、方向では。横並びの一番上のところで、門 前払いを取ってしまうようなことを全体の会議でまず検討する、ということが良いので はないでしょうか。今では。 〇北村班長  佐多先生は、むしろ適応を慎重に検討するほうをとれという御意見であると思いまし たが、どうでしょうか。 〇佐多委員  この基準を決めるときに、必ず付記として適宜見直されること、というものを入れた 記憶があります。それは別に説明することでもないのですが、その当時からエビデンス も変わっていきますので最新の知見を入れて考えるべきである、ということだと思いま す。それで今日出た2つの論文であるなら、どこでもRNAがいるという話が2つ出た ということですね。これは2004年の論文である。このデパートメントオブヘルスのもの がガイドラインは何年のものでしょう。また最近リバイスされているのでしょうか。 〇斎藤主査  英国のものは2000年のものでインターネットで確認できるものではこれは最新のもの です。 〇佐多委員  それなら前と同じだと思います。するとデータとしてはむしろRNAがどこでも見つ かるという方向に来たということであって、それが変わった。基準のほうのディスカッ ションは2000年の平成14年当時のディスカッションのままであるとすると、その後にエ ビデンスとして積み重なったのは、危険性が高いというエビデンスが積み重なったとい うことになると、ここで逆にいまの議論で、適応を慎重に検討するという方向に変わる ということは、理屈上では合わないということになると思いますがいかがでしょうか。 〇北村班長  ただ人間の生存の可能性と、C型肝炎になってその治療を受けるということのバラン スで、それを比較した論文はまだないと思います。比較するのがきわめて難しいと思い ます。そこの問題です。  佐多委員は人工心臓の患者さんとの余命というものを比較した場合のことは、むしろ 移植側の人がよく知っているということです。むしろ腎臓のほうは死亡しませんから ね。透析で移植がなくてもね。そういうほうは数が多いということから、そこを認めて きたという経緯があると思います。  心臓のほうはおっしゃる点を考慮しますと、果たしてその再感染・再燃という危険性 と、人工心臓で肝臓がやられるか、心臓がやられるか、どちらが早いかで死亡原因にな るかというバランスになると思います。そのバランスにおいてstatus1は、心臓で死亡 する危険が高かろう、しかしそのデータを示せといわれるとなかなか難しい。実際にア メリカなどでたくさんの例でどうかというような論文などはありませんか。 〇松田委員  なかなか難しいと思います。諸刃の刃のようなものがあって、いま佐多委員がおっし ゃったように確かにいろいろと調べると難しい。今の社会的には、例えばそういうウイ ルス感染ということに非常に慎重になっているのに、臓器移植をやっている人はそれを 緩めるのかということで、かえって危ないことをやるのではないかということが起こる リスクはあります。  一方、検査は随分と進んでいるわけですので、私はそのアドバンテージを取るとする と、適応を慎重にということの中に非常に検査法も駆使すれば、それで安全なところも あるのではないかととれば道はあるのではないか。せっかく医学の検査法が進んでいる ので、そっちを大事にする一方で、適応を慎重という言葉はおかしいかもしれません。 ただ、何かもう少し感染状況とか、それを精度を高めて検討する。その方向は、移植患 者を診ているほうとしてはやっていただきたい。 〇許参考人  この新たな知見の2つ目の論文、これは実際に陰性の方で核酸を調べたら陽性であっ た。だからといって先ほどの御説明では成績がどうであったのかというのは全く議論は ないわけです。すなわちこれは見つかったというだけであって、これは決してこれが混 じっていたからリスクが増したとか増さない、という種類の論文ではないように私は思 います。  その意味からいいまして、この論文があるからより厳しくという議論の方向には行く べきではないであろう。ただ松田委員がおっしゃいましたように、検査法が優れてき て、本当に無罪であると思っていたものも、ひょっとしたら私もHCV陰性であるので すが、ひょっとしたらあるかもしれない。ただ私は自分が死んだら提供できるものは提 供したいと思っているわけです。  その意味からいいますと、確かに検査が進めば、そういうものが混じってくる可能性 はある。ただ混じったものを分析してはいないので、それを分析しても、これは本当は 分析するべきであろうと思いますが、分析をして本当にそれが成績が悪かったとするな ら、このデータはより慎重な方向にという動機付けにはなるわけですが、この段階では より慎重な取り扱いを、この論文がゆえにするべきだという方向には考えなくてもよろ しいのではないかと思います。  現場の話ですが、人工心臓を着けておられる患者さんは、ある日に突然血栓が飛んで 亡くなるわけでございますので、その意味でいいますとHCVポジティブからポジティ ブというのは道が開かれるほうが、患者さんにとっての利益は、現状の人工心臓の成績 からいうと大きいと思います。 〇北村班長  時間も迫ってまいりました。佐多先生、この3ページの(1)のところで肺のところの 議論のところで、HCV抗体陽性、HCV・RNA(−)のレシピエントでもと書いて ありますよね。抗体陽性のレシピエントですが、NATをやればRNAは検出できない レシピエントというのですが、これは今の2つの論文からすると、こういうことは単核 球等々を調べたり、臓器を調べれば(+)であるということで、この肺と心肺移植のと きに書いてあるのは、もはや2004年の論文からすると、必ずしもこういうものはないと 言えるのでしょうかね。 〇佐多委員  詳しくは読んでないということはありますが、この当時のディスカッションのときは こうであったということです。 〇北村班長  そうですね。ここでは抗体陽性でも見つからないウイルスパーティクルは見つからな いという人がある。ところがまた新しい論文では、確かに血清中には見つからない、で も単核球とか臓器の中では見つかるということになってくると、(1)の議論も少し変え ないといけないかもしれません。松田委員がいわれましたように検査法を何とかの形で 組み込むかどうかは別として、(+)から(+)のstatus1のようなところは現場と患 者さんに判断をゆだねる機会を与えてもらいたい。ドナーをはじめから打ち切るのでは ないかという形で厚生科学審議会の臓器移植委員会のほうに持ち上げるということでい かがでしょうか。 〇笠貫委員  私はいま最初に班長がいわれました心臓によるの命の問題と肝炎の問題ですが、この エビデンスはこれから作られるものであり、エビデンスというと問題はなかなか難しい ように思います。検査についても、今回の2つの論文で検査というのは、もっとまた進 歩するかもしれない。その意味では、不確定要素がある医学上の問題があります。さら に大事な問題は、先ほど人道上とインフォームド・コンセントの話をしましたが、命と いう体の問題と精神的な問題、最近重要視されているスピリチュアリティーといわれる その人の人生観・価値観、そういうものを含めた移植のレシピエント側の権利として は、そこまで含まれるのではないでしょうか。  その意味では、不確実性のある医学の状況を考えると門前払いのところで絶対禁忌に するのは、問題があるのではないかと思います。そういう医学上の問題があることを十 分認識したの上で、ここのところで少し緩めるという方向があっても良いのではないか と思います。 〇北村班長  ありがとうございました。佐多委員の御意見も十分に踏まえた上で、感染症の方々の 御意見を踏まえた上で、厚生科学審議会のほうに作業班の意見としては適応を慎重に検 討するということで、ネットワーク、あるいは現場の対応をさせていただくという方向 性であげていただくということでよろしいでしょうか。 〇佐多委員  議論に反対するわけではないのですが、うちの研究所の中で体外診断薬を担当してい るものがおります。その人に聞くと、HCVのコア抗原に対する検査法が最近出ている そうです。それはかなりRTPCRの結果とパラレルにいくという話を聞いておりま す。もし御存じならと思います。そういうものが本当に有用性があれば、もう少し簡単 にできるかもしれないし、そういうものを加えてより慎重にいけるのではないかという 思いがあります。ちょっと御検討いただきたいと思います。 〇北村班長  ネットワークも現場もですが、新しい検査法が伸びてきているのに、それにいつまで も対応できない。5時間というのは長い、6時間かかるというのは結構長いのですが、 それでも脳死判定の2回をやる間になんとかなるような気もしますが、現場でネットワ ークで新しいNAT法、あるいはリバースPCRあるいはいまのコア、HCVのウイル スも幾つも種類があるそうですが、そういう新しい検査法を取り込もうという姿勢を示 していただかないとなかなか動かないのですね。  それには機械と技師がいるということで、金がいるということになってしまうと思い ますが、どこまでネットワークが現状で対応できるのか、核酸検査ですね。そういう新 しい検査法を踏まえて抗体陽性から抗体陽性に、さらにそういう核酸検査も参考にして 慎重に検討するという方向で、感染症の研究者の御意見も十分に踏まえたことで厚生科 学審議会にあげていただくという形にしたいと思います。腎臓・肝臓のこともあります が、さらに新しい検査法を一歩加えることができるのかどうか、御検討をお願いしたい と思います。よろしくお願いします。  以上、2つのことを厚生科学審議会に上げてみたいと思っております。事務局から御 意見その他ございませんか。  次回もし行うとすれば、それは親委員会のほうを受けてからになるかもしれません。 特に他に委員の方から御意見がございませんようでしたら、終わらせていただきます。 よろしいでしょうか。ありがとうございました。では終了させていただきます。                                    −終了−                        ┌――――――――――――――┐                        │照会先:健康局臓器移植対策室│                        │担当者:斎藤        │                        │内線 :2362      │                        └――――――――――――――┘