04/11/10 労働政策審議会安全衛生分科会第14回議事録            第14回労働政策審議会安全衛生分科会 1 日時  平成16年11月10日(水)13:00〜15:00 2 場所  厚生労働省16階 専用第17会議室 3 出席者  (委員)公益代表  櫻井委員、今田委員、北山委員、内藤委員、平野委員、            和田委員      労働者代表 鈴木委員、中桐委員、徳永委員      使用者代表 加藤委員、金子委員、讃井委員、中田委員  (事務局)     青木労働基準局長、小田安全衛生部長、中沖計画課長、            寺岡安全課長、阿部労働衛生課長、古川化学物質対策課長、            川島国際室長、高橋建設安全対策室長、中村環境改善室長、            角元化学物質評価室長 4 議事録 ○分科会長(櫻井) 定刻になりましたので、ただいまから第14回労働政策審議会安全 衛生分科会を開催いたします。今日の出席状況ですが、名古屋委員、高橋委員、仲田俊 一委員、眞部委員、芳野委員、伊藤委員、小島委員、山崎委員は所用のため欠席されて おります。金子委員はただいま遅れているようですが、ご出席の予定です。それを加味 しても、労働政策審議会令第9条に規定する定足数を満たしているので、当分科会が成 立していることを申し上げます。  今日の議事に入ります。今日の議題ですが、前回に引き続き「今後の労働安全衛生対 策について」です。資料に沿って審議を進めていきたいと思います。前回は、お手元の 資料1の検討項目にある2、3についてある程度議論しましたが、今回は、検討項目3 の「過重労働・メンタルヘルス対策について」をご議論いただきます。追加の資料が用 意されているので、まず事務局から説明をお願いいたします。 ○労働衛生課長  説明させていただきます。前回から資料番号No.2にある「過重労働・メンタルヘル ス対策について」の「検討の視点」に沿ってご検討、ご審議をいただいてきたところで す。その際に委員の皆様からいくつかのご指摘等をいただきまして、それに対しての説 明資料を揃えたので、そちらの説明をさせていただきます。  追加資料No.2の11頁をご覧ください。これは過重労働の場合の、労働者が面接指導 を受ける場合の実施イメージを示したものです。この場合は、各事業場で面接指導を行 う基準は衛生委員会等で労使双方了解の下に決めたということですが、その実施方法の 例としてお示ししたものです。あくまでも例示です。  例えば、労働者が自ら健康に不安を感じて申し出た場合ですが、労働者が産業保健ス タッフ、もしくは産業医に対して申告をします。それから産業保健スタッフ、産業医の ほうから面接指導の必要性について事業者に助言をして、面接指導を受診指示します。 そして面接指導を実施した上で、その結果について、事後措置も含め、意見や指導を行 い、また産業医やスタッフは事業者に意見具申をして、事業者は必要な事後措置を実施 する、というようなことになるかと思います。  この場合は、基本的には申告イコール産業医等の面接ということも考えられると思う ので、各事業場でこのようなルールづくり、きちんとしたルートをつくっていただきた いということです。  また、周囲の方々が、該当労働者の健康に対して何らかの異常を認めて申し出た場合 にどうなるかということが、真ん中に示してあります。周囲の方々が、この人はだいぶ 過重労働で疲れている、あるいは持病があって大変そうだということに気づいた場合、 情報提供を産業保健スタッフ、もしくは産業医等に行い、そこから事業主、事業者に対 して面接指導の必要性についての助言があります。そこで事業者が面接指導の受診指示 を受け、面接指導を実施した上で事後指導、並びに実施した医師のほうから事業者に意 見、勧告等がいって、事業者が事後措置についてきちんと実施する、というような形で す。  いちばん下に、その他「客観的な基準に基づく場合等」と書いていますが、この客観 的な基準というのは、これは事業場内で衛生委員会等で自主的に決めた場合に、この基 準を満たしたら面接指導を受ける場合です。これがどういうことかと言うと、次の頁に あります。従来、総合対策で、例えば月に45時間という限度基準のところで、なるべく 健康管理の指導等を行うとしてきたわけですが、ここのところは各事業場においていろ いろな健康保持のために基準を設けていただいて、それに基づいてやるという場合で す。これも1つの例としてお示ししたものです。  例えば、(1)に自ら健康に不安を感じて申し出た場合とあります。例えば月に何十時 間を超える時間外労働を行って、かつ自ら申し出た場合に、きちんと医師の面接に持っ ていくというようなルートを自主的に定めてつくっていただくと。それが45時間である か、30時間、60時間というのは、事業場のご判断ということになるかと思います。これ は周囲の者が健康の異常を認めて申し出た場合も同様ですし、さらに高血圧、高脂血 症、糖尿病、肝炎でもいいのですが、このような慢性疾患や生活習慣病等の基礎疾患を お持ちになっている方が多いような場合には、これをプラスした基準を自主的に衛生委 員会等で、労使双方の了解の上に定めていただいてもよろしいかということです。これ はあくまでも一例で、実際の基準は個々の事業場の衛生委員会等の中でお決めいただく のがよろしいかということです。  その次が、前回のご議論の中で、事業場における労働者の心の健康の保持増進のため に、いろいろとガイドライン等をお示ししていかなければならないというお話をしまし た。そのガイドラインというのは、具体的にどんな内容になるのかということを事務局 側で検討し、このような内容になるのではなかろうかということで想定し、ここにお示 ししたものです。  これはいままでもあった部分がありますが、メンタルヘルス対策の基本的な考え方が あります。それから心の健康づくり計画の策定、メンタルヘルスケアの具体的進め方に ついて載せています。セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等に よるケア、事業場外資源によるケア、ここまでは前回までの通知の中でもお示ししたと ころです。さらにこれに加えて、メンタルヘルスが不調になった場合の具体的対応の進 め方が、メンタルヘルス対策を産業保健分野できちんと遂行していくためには必要であ るということで、検討した結果このようなものが考えられるのではないかということで お示しをいたしました。  4に(1)メンタルヘルス不調への気づきと対処というところがあります。それか ら、職場復帰への支援です。これは後でご説明いたしますが、つい近頃、職場復帰への 支援のガイドラインを出させていただいたところですが、これも盛り込んだものになる のではないかと考えています。それから、検討会の報告書等にもありましたが、メンタ ルが入るとどうしても産業保健、事業場内の資源だけでは対処できない場合が多くなる だろうということで、専門機関によるサポート体制をどのようにつくって運用していく のか、というようなノウハウも、次のガイドラインにはお示ししていきたいと考えてい るわけです。具体的には、精神科医や心療内科医等からの情報提供の体制や助言のシス テム、あるいは事業場の必要に応じたEAPの活用策、産業医等と外部の専門機関との ネットワークに関する、産業保健推進センターや地域産業保健センターによる具体的支 援の在り方について、また社会資源として精神保健福祉等に一生懸命やってきたところ の保健所や、精神保健福祉センターなど、このような社会資源との連携、活用の方法等 について、お示しする必要があるのではないかということです。  さらにはメンタルヘルスということになると、どうしても個人のプライバシーの問題 が非常に重要味を帯びてくる関係上、面接指導時や相談窓口における配慮、情報提供の 場合の配慮、職場復帰時における配慮など、このような場合について、より具体的にプ ライバシー保護のための情報の扱い方についてもお示しする必要があるのではないかと いうことで、これらもメンタルヘルス全般のガイドラインの中には盛り込むべきではな いかと私どもで考えまして、ここにお示ししたわけです。  これらを具体的な施策として実現していくためには、このような点についてもう一度 専門家の先生方にご検討をお願いした上で、現場で役に立つガイドラインをより充実さ せた上で提出していかなければならないと考えています。  次が、特にメンタルの場合に支援体制をどうするのかというご指摘がありました。私 どもは産業医や産業保健スタッフに対するメンタルヘルスの研修等とお答えしました が、それを具体的にはどのような形で進めるのかというのをチャートのようにお示しし たのが15頁のものです。これも試案です。  基本的に労働者、先ほどの面接指導の際に、メンタルヘルスのチェック等もここで行 うと。産業医によって面接指導が行われることを、労働者が別の医師を望む場合はそち らのほうでもいいということになっていますが、産業医の方々から、メンタルヘルスに 関してもう少し研修と勉強の機会をきちんと与えていただかないとまだ不足だという意 見もありましたので、これに対してはメンタルヘルスに関する面接指導のための研修、 それから例えば職場復帰等も含めて、先ほどのガイドラインの内容と絡めて、より充実 した研修が必要であろうと考えています。  片や、右下のほうにありますが、精神科医、心療内科医の関与ですが、現実に精神科 や心療内科の先生方で産業保健、産業医をやっている方はどのくらいいるかと申します と、これはもう数パーセントしかありません。4%か5%弱だったと思います。非常に 産業保健に疎い方々が多いということで、この専門家については、精神保健、心療内科 については専門家ですので、むしろ産業保健部門に関する講習を徹底し、この専門家を 産業保健のほうでご支援いただく体制をつくり上げていくことが必要であると考えてい るわけです。基本的に精神科医、心療内科医が産業医としてメンタルヘルス面を担当し ていただくのがいちばんいいわけですが、おそらく数が充足しないと考えるので、基本 的には精神科、心療内科等の専門医が産業保健を担当する産業医を支援する体制をつく っていくというシステム化が必要であろうと考えています。そのときに産業保健推進セ ンターや地域産業保健センター等の支援、協力体制を行政主導でもつくっていきたいと 考えていて、研修費用やこのようなシステム化のための予算確保にも今後頑張っていき たいと考えています。  その次の頁ですが、産業医の職務内容について、前回に「もう少し細かいところまで きちんと示していただけないか」というご意見がありました。いままでの産業医の役割 としてきちんと決まっている部分は、真ん中の網かけのところに書いてありますが、こ の度、過重労働やメンタルヘルスを取り入れたところで、新たにどのような職務が出て くるのかということになると、下に書いてありますが、「想定される産業医の新たな職 務」として、まず「過重労働による健康障害防止対策」、これは基本的には面接指導の 実施の中で、前回ご議論いただきましたが、脳・心血管障害リスクの把握等、それに基 づく指導、事後措置に係る助言、あるいは事業主に対する勧告というような内容になり ます。先ほど過重労働における健康障害防止対策のところで、金子委員から「面接指導 の内容でどういうところのリスクをちゃんとチェックすべきかはっきりさせていただき たい」というご指摘がありましたので、基本的には脳・心血管障害リスクの把握等、そ れに伴う事後措置に係る助言・勧告というところになるかと思います。  もう1つの「メンタルヘルス対策」では、まず前回からご議論いただいた、面接指導 の際にまずメンタルヘルス面のチェックをしていただく、これはある程度スクリーニン グという意味が大きくなるかと思います。しかもメンタルヘルスに不調をきたした場合 に、その原因あるいは悪化要因というものが職場における場合には、その職場における 要因の除去に関する対策、勧告ということを、まず産業医の職務として私どもは想定し ているわけです。さらには、職場要因と絡めた上で、精神科医等への専門家に対する相 談、紹介、それから職場復帰等の場合の支援策などを、今度このような施策を遂行する 上で、産業医の新しい職務としてきちんと位置づけるべきではないかと考えているとこ ろです。  次は健康情報の保護ですが、前回のご議論である程度指摘いただいたところに関する 資料の説明はここまでです。 ○分科会長  追加の資料についてのご説明を承って、今日は前回ご欠席の委員の方々もいらっしゃ いましたし、改めて追加として「過重労働・メンタルヘルス対策」の全般的なご議論を いただくことになっているので、参考資料2の検討の視点、いろいろな点にまたがった ご意見が出るのではないかと思います。どうぞご意見、ご質問をお願いいたします。 ○加藤委員  いまご説明いただいた中で、11頁の図ですが、まさしく私は健康問題が発生した場合 にこういった図が必要だと思います。いまご説明があったのは、1頁の「視点」の(2 )の話だったと思うのですが、時間だとかの問題ではなく、労働者なり、管理監督者 が、体に不調を訴えた場合はこういったシステムの中で回していくことが非常に重要で はないかと思います。だから(1)、(2)を分けるよりも、これを1つにして考える ことはできないのでしょうか。 ○労働衛生課長  1つにして考えると申しますと、100とか80ということではなく、不調を訴えた場合、 疲労が相当蓄積した場合、周りの方々が相当疲れているということを感じた場合という ことですか。 ○加藤委員  はい。 ○労働衛生課長  おそらく私の考えからすると、脳血管障害というのは、必ずしも自覚のないときに突 然出てくる。疲労蓄積にも自覚の度合いがあって、必ず診ればあったのではないかと。 後追い的にレトロスペクティブで見ればそうなるかもしれませんが、必ずしもそういう 自覚がないままに危険性が高まってくることも考えられるので、そこは専門家にご意見 をお伺いしたいと思いますが、やはり100とか80というと、医学的にはかなり危険性が 高くなるので、そこを自覚的な所見で全部カバーできるかというと、ちょっと無理があ るのではないかと思いますが、専門家のご意見を伺いたいと思います。 ○和田委員  ご承知のように予防医学というのは、一次予防、二次予防と大きく分けられているわ けで、いままでは大体二次予防でやっていたわけです。症状があった場合や検査で異常 があった場合に早期発見して、早期対処をするのが二次予防だったわけです。したがっ て、ここに書いてある不安を感じたり、健康に異常があるというのは、これはある程度 病気を発病しているわけです。これに対処するというのは二次予防になるわけです。  ところが、むしろ明らかに一次予防をしなければいけない、医学的に確かな根拠があ って、しかもリスクが高いという場合は、やはりまず第一に一次予防をやるべきである と。最近ではほとんどが二次から一次に移っているわけです、原因予防です。そういう 意味において、明らかな異常がある場合は一次予防で、ちょっとおかしいとか早期発見 に関する二次予防に関しては、こういうシステムでやっていったらどうかと、普通医学 的には考えられるわけです。 ○讃井委員  いまのお話に関してということになりますが、この過重労働の「検討の視点」の(1 )です。月に100時間、または2ないし6カ月間に80時間を超える場合に、医師による 面接指導が必要ということですが、前回もこの点で申し上げたので多少重複するところ もありますが、申し尽くせなかったところもあるので、もう一度意見を申し上げたいと 思います。  実際にここの部分というのは、平成14年の通達に盛り込まれているところです。それ を今回法制化しようということですが、通達が出されたときに、過重労働による健康障 害を労働時間のみを物差しとして決めるということは、どうも納得できないということ で、産業界としては厚生労働省に対して申し入れを行った経緯があります。  しかしながら、納得はできなかったにしても、通達が出て以降、企業はいろいろな意 味で必死に対応の体制をつくろうということで整備をしてきた、努力をしてきたという ことで、そういうことを考えると、この時期に法制化というのはちょっと性急なのでは ないかという気がするわけです。  前回ご説明の中で、面接指導をしている実施率が60%というご紹介がありました。行 政から見ればまだ不十分ということなのかもしれませんが、一面では企業がこうした努 力をしてきたからだということも言えるのではないかと思うわけで、この部分の通達の 効果を判断するには、もう少し時間をかけてもいいのではないかということを感じま す。  前回も申し上げたように40%が実施できていないとすれば、それはなぜなのだろう か、産業医が不足しているのか、あるいは認識が不足しているのか、そういった困難の 要因、できない要因を調べて、実際的に効果を出していくことが健康障害の予防につな がるのではないかと思うわけです。  労働時間との一元的なリンクというか、業務の過重性の判断ですが、労働時間の他に もさまざまな要因があります。労働者一人ひとりの働き方や、作業環境、年齢、健康状 態など、いろいろと差が出てくるわけで、その点については平成13年に出された脳・心 臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告においても、業務の過重性は労働時間のみに よって評価されるものでなく、就労態様の諸要因も含めて、総合的に評価されるべきも のであるということが述べられています。こうした観点からすれば、先ほど加藤委員か らもご発言があったように、(2)に挙げられているようなアプローチ、すなわち実際 の仕事のなされ方、これを目の前で見ている現場の労使が自分たちに最も相応しい基準 を作成し、本人の申告あるいは周囲の気づきでもって、医師が面接指導をするというや り方をもっと活用すべきではないかという気がするわけです。  この場に相応しい例になるかどうかわかりませんが、大きなビルの出口に1つ火災報 知器なり、煙探知機があるよりは、個別の部屋にそういったものが備えられているほう が効果的であるわけで、制度的なアプローチということだけでなく、こういった言わば 人間力による対応と言うのでしょうか、そういったものが重要なのではないかと思うわ けです。  「今後の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会」報告では、事業場個別の特性に応 じた対策も必要であるとか、人間力という観点の必要性が基本的な考え方に示されてい ます。そこで促進しようという労働安全衛生マネジメントシステムは、職場で問題点を 探していって改善をしていこうというアプローチです。マネジメントシステムだけでな く、過重労働やメンタルヘルスといった対策においても、そういった考え方を本来は活 かしていくべきではないかと思います。首尾一貫した労働安全衛生問題に関するアプロ ーチというか、哲学というか、そういったものも考えてみる必要があるのではないかと 思うわけです。  (2)を活用することによって、本来労働時間管理、あるいは時間外労働といった概 念に馴染まないような管理監督者等についても、効果的な措置が取れるのではないかと 思うわけです。  さらに、もうちょっと一般的な話になってしまいますが、過重労働やメンタルヘルス という問題は、労働者のプライベートな要因によるものと、業務上の要因によるものと の境界線を付けるということは非常に難しい、区別をすることが難しいという特別な事 情があるわけで、こうした中で事業主の責任の範囲はどこまでかということを、本来は もっと議論すべきであるかもしれません。そうした議論がないままに法律によって義務 を定めるということについては、慎重であるべきだと考えています。以上です。 ○分科会長  「検討の視点」の(1)に書いてあるような時間外労働の時間を明記して、対策を義 務づけることは賛成できない、やるにしても時期尚早ではないかというご意見ですね。 また、管理監督者について労働時間管理が馴染まないというご意見、ストレスについて 業務上の負荷とプライベートの負荷との分離が難しいという点からのご意見かと思いま すが、いかがでしょうか。 ○和田委員  平成13年度の基準改正と今回の検討会に携わった者として、ちょっと発言をさせてい ただきます。少なくとも平成13年度の改正の根拠はすべて医学的、科学的な根拠に基づ いてこうなったと言っていいと思います。80時間とか100時間は、それ以上の労働をす ることによって疫学的に明らかに脳・心臓疾患のリスクは2倍、3倍以上になる。これ が、すべての根拠になっているわけです。この疫学というのは、非常にストレスのかか った人やかかっていない人とか、そういう人を総まとめにして全部調べるわけです。平 均として出した値が時間になったということで、それを明らかに疫学的に見れば非常な リスクである。それを放っておくのはおかしいのではないかという考え方に一応立って いるわけです。したがって、そういうハイリスクのものに対して今回の検討会では、や はり特別の対策を立てるべきである。そのほかのストレスとかそういうのも関係するの は明らかだけれども、時間ですべての人を見た場合に明らかにリスクがあるのだから、 それは相応しい医学的な根拠として考えていいだろうと。したがって、そういうハイリ スクに対しては特別の管理が必要であろうという意見が大勢を占めたわけです。それを やるには、事業者の時間管理の義務を考えなければいけないだろうという考えと、中に は原則として100時間以上の時間外労働は禁止すべきであるという意見もかなり出たわ けです。今回はそこまでは踏み込んでいませんが、そういうものに対して管理をしてい く。80時間や100時間以上のものに対してはかなりきちんと管理しなければいけないだ ろう。ただ45時間から80時間に関しては、それほど強い根拠はない。したがって、そう いう人たちに対しては何か異常があった場合とか、二次予防でも十分だろうという考え 方で答申させていただいた。  こういったことで最近、中央労災医員をやっていますからそっちも関係しますが、80 時間、100時間はもとより、大体60時間ぐらいの時間外労働で裁判で事業者が負ける時 代になってきているわけですから、その辺も見据えて80時間、100時間は当然きちんと 管理すべきであるという基本的な考え方があるし、そういったことにより、いま言われ ている企業の社会的責任とか社会的制裁とか、こういうこともかなり大きな問題になっ てきていますからその辺をきちんと考えてやっておくべきだろうという方針を出しまし た。いまは40%しかやっていないということで、それは専属産業医がきちんとやってい る所で60%の総合対策をやっていて、それ以下のところではほとんどやっていないわけ です。だから、そういうところにもきちんとやってもらいたいです。 ○分科会長  検討会でのご議論の内容をまとめてご説明いただきました。 ○労働衛生課長  もう1つは、確かに総合対策を始めてからまだ2年半で、大手の事業場でも6割ぐら いしかやっていただいていないということですが、実際に過労死の認定件数を見てもら うと労働災害死亡件数の1割近くになっています。しかも、これが減る傾向が出てきた かというと必ずしもそうではなくて高止まりの状態で、どうやったら減らせるだろうか というのは我々の喫緊の課題になっていると考えています。まさに見逃せない状況だ と。さらにこれらを見てみますと、通達による総合対策のままでいいと判断して、この まま6割前後で実施率も頭打ちになっています。そこで、そのままこの高止まりの労災 死亡でいいのかという話になると、国民に対してきちんと行政の義務を果たしているか というご批判も出てくるかと考えるわけです。  さらには、先ほど和田委員から検討会の中で医学的な根拠についてお伺いしています が、100時間、2ないし6カ月80時間というのは、そんなに甘い基準であるかという話 になれば医学的基準からも、これを超えると相当健康に対する障害やリスクが高まって くるのは明らかですので、ここで面接指導として、一応のチェックをかけることでこれ を義務化していけば、一次予防の面からも相当の効果が期待できるのではなかろうかと いう考えがあります。ただ先ほど讃井委員がおっしゃったように、管理監督者の場合は 時間管理の対象になっていませんので、このような方々をどうするかはよほど具体的に これから検討していかなければならないと考えています。  ただ管理監督者といえども、この労災認定の件数からすると過労死でも大体2割ぐら い管理監督者はなっています。だから何らかの形で、きちんと健康のチェックの中に入 るようにしていかなければならないと考えていますが、時間外の対象となっていません ので、例えば自己責任としてきちんと時間管理を行っていただいた上で、事業者にその 旨を申し出たときにはきちんと面接指導の対象としていくとか、このような検討を、こ れから具体的、技術的にしていかなければならないと考えているところです。 ○中桐委員  先ほどの月80時間、100時間ですが、もちろん労働時間だけが過重労働の主要な原因 ではありません。けれども私どもも議論がありまして、ちゃんと三六協定を結んで守っ ていれば100時間などは出てくるはずがないわけです。しかしながら、実際にはそうい う方々がいるという現実で、予防的に救うためにはこういうことが必要なのではないか ということで、内部でもいろいろと議論がありましたがこれについては支持をしたいと いうことで連合側では確認していますが、残念ながらなかなか長時間の残業が減らな い。来週に連合で長時間労働、不払い残業の何でも相談のダイヤルを全国的に展開しま す。どういう結果が出てくるかわかりませんが、その中でも45時間を超える労働は、本 当は労働基準法できちんと押さえていただきたい部分があります。そういうところは基 準法の世界できちんとやっていただければいいと思いますが、それにも増して実際に 100時間の方々がいることについて我々の評価としては、そういう方々を安全衛生法の 世界で救うための、1つの科学的な根拠のある数字ということで活用するのは、私ども としては画期的なことではないか。それは、きちんと義務づけなければいけないと思い ます。  さらに申し上げますが、以前と比べてどの職場でも、何パーセントかの方々がうつ病 で休業されているということが広がってきていると思います。それは事業場にとっても 我々労働組合にとっても大変な損失で、予防的にやる場合に80時間、100時間という1 つの数字を示しておくことは非常に大切なことではないかと考えています。以上です。 ○安全衛生部長  和田先生にお伺いします。80時間あるいは100時間の関係で、以前も確かデータをお 示ししたと思いますが、うつ病等で自殺された方が100時間だと50%を超えるというデ ータがありましたね。全労働者に占める、どれぐらいの時間を労働しているかのデータ の詳細がないのですが、事業場で働いている人は最高何時間かと区分したデータはあり ます。最高の労働時間の人は100時間を超えるところは1.6%というデータで、そこから 53%の自殺者が出ている。一方で、85%ぐらいの労働者が働いている事業場は最高労働 時間が45時間未満と。あのデータを掛け算すると、200倍ぐらいの出現率。単純には比 較できないのでしょうが、45時間未満の事業場に比べて、うつ病で自殺する割合は100 時間以上の事業場だと200倍ぐらい、80〜100時間だと40倍ぐらいと単純に計算すると出 てきます。先ほどの先生のお話だと発生率が2、3倍とありますが、その辺はどうです か。 ○和田委員  そういう発想で、多分計算されていると思います。過重労働による健康障害、脳・心 臓疾患に関しては時間的要素が非常に強く作用することは明らかで、どんな医学調査を やっても80時間なり100時間以上では2、3倍になっている。外国のデータでも日本の データでも、みんなそうです。ところが、過労自殺やストレスに関する調査はそんなに 多くないのですが、この前高田先生がまとめた報告書は確かに時間とは関係があるとは 書いてありますが、よく見ると大体過労自殺に至る睡眠時間が4、5時間の人であると いうことです。4、5時間ということは、過重に考えることにすると100時間から120時 間以上ぐらいにならないと、過労自殺は出ていないよと書いてあるわけです。半分が 100時間以上ということは、半分は100時間以下ですよね。ということは、結局は同じだ ということです。100時間以上働いた人が50%以下ということは、100時間を超える人が 半分ですから、ウェイトからすれば理論的に、多くても少なくても同じ発生率になるわ けです。  確かに過重労働による健康障害、脳・心臓疾患に関しては時間的な関与が非常に強 く、きれいに出てくるわけですが、メンタルの面に関しては時間以外の要因のほうが、 はるかにいろいろと強く働いていると考えられるわけです。確かに、100時間ないし120 時間以上になると増えますということは結論としてはいまのところ出ていますが。 ○安全衛生部長  出現率は関係ないのですか。労働人口における100時間以上働いている人の割合に対 する自殺の方の出現率。 ○和田委員  それは疫学における因果関係になるわけです。すなわち、そういうところでそれだけ 働いている人というのは、時間もそうだけれどもそのほかのストレスやほかのいろいろ な要因が働いているのではないかということで、因果関係があるかということになって しまいます。 ○分科会長  いま安全衛生部長がおっしゃった症例対照研究の発想で、もし過労自殺という診断を するときに時間のファクターを考慮していないとしたら非常にはっきりした証明になり ますが、少しそういう部分があるので、でもおそらく実態を示しているのだろうと思い ます。 ○金子委員  いまの過労自殺の場合、超時間勤務というのは病気の結果である可能性が出てくると 思います。病気になるのは自殺の少し前からなので、どこの時点を病気になる前の負荷 になった労働時間かと考えると、心の病気は心の病気になった結果眠れなくなってしま ったり、仕事がなかなか捗らなくなって帰るに帰れず、仕事が長引くという労働時間に 対する影響が入りますので、体の病気ほどきれいに、いつが病気の原因となったオーバ ータイムなのかを見分けるのは非常に現場としては難しいです。オーバータイムがうつ 病の結果であることもままありますので、心の病気は体の病気のようにはクリアカット にいかないのではないかと思います。 ○徳永委員  確か2番目のこの部分で、そういうふうに処理ができればベストですね。労働時間は 関係なしに、労働実態をしっかり掴んでおいて、それはそれできちんとやる。これは現 実にはいまお話がありましたように、オーバーワークの疫学的なお話がありましたが、 その関連はある程度整理されていますので、そのリンクで時間の問題も押さえておく必 要があるのではないか。ご案内のように、三六協定の一定の延長時間の指針があります ね。45時間からありますが、中桐委員もおっしゃったけれどもそこら辺から見ていく と、100時間などという労働は、こんなことをやったら本当に死んでしまうだろうなと 思いますが、この時間が妥当かどうかは私は素人ですからわかりません。先生方は一定 の目安でおっしゃっているわけですからいいのですが、それはそれとして一定の時間を 押さえて、こういった指針を出していくことは必要ではないかと思います。 ○加藤委員  時間そのものを否定しているとかではなくて、リスクファクターの1つだと思いま す。そういう意味で義務づけるとか何かよりも、例えば産業医の先生が現場を見てここ が問題かどうかを判断される。あるいは職場全体のデータを取って、マネジメントシス テムの中で回していくことも、1つのリスクとして捉えるのは非常に重要だと思いま す。そういう意味で、時間だけで切っていくことのほうが、かえって怖くないかなとい う心配もあります。もっといろいろなファクターがあっていろいろな問題が出てきてい ると思うので、昔の環境問題のようにある1つのファクターがあって影響するというも のであれば非常に重要だと思いますが、こういった問題は必ずしもそうではなかろうと いう気がしますので、もう少し総合的にものを捉える考え方のほうが重要ではないかと 思います。ですから、これを否定するものではありませんし重要なファクターだとは思 います。ただ法律で、そこだけを決めてしまうのはどうかなという気持があります。 ○労働衛生課長  具体的に、法律そのものの中に80、100は出てきませんが、安衛法は労働者の健康確 保という大目的がありますから、そちらのほうからいくと80と100は医学的根拠がはっ きりしています。これは普遍的に、あるレベルでは規定してお示ししなければならない 数字でしょうということでわかっています。確認の意味になりますが、限度基準の45で もいままで総合対策でお願いしてきたわけですが、健康確保からすると45で切るところ に医学的な意味はそんなにはっきりしてこないことから、こちらは(2)のようにいろ いろな症状や事業場の自主的な基準を設けて、そちらで対処していただく形にしたいと いうことでこのようなご議論をお願いしたという経過がありますので、一応確認のため に申し上げます。 ○金子委員  (3)で、事業場内での面接指導を希望しない場合に自分で外の先生の面接を受けて ということですが、これは多分メンタルヘルスを念頭に置いているのだと思いますが、 その結果を提出できる。その提出されたものを産業医が見ただけで意見を言ったりする ことが可能かというと、これはかなり難しいのではないか。なぜ、事業場で面接を希望 しない場合というのをここで分けて考えなければいけないのか、その辺をもう一度ご説 明いただきたいと思います。 ○労働衛生課長  これは一部、労働者ご本人が慢性疾患等で、いろいろなデータを見ますとある程度の 年齢にいけば半数以上の方が慢性疾患を持っているわけで、さらにその半分以上の人た ちは主治医を持っていらっしゃる方々です。高血圧などの生活習慣病の方々は、主治医 を持って月2回はきちんと行っていらっしゃる。そういう方々についても「私は、いつ もの先生の所でいいですから」と、重複していちいち面接時間を取って行くぐらいだっ たらあれだと。もちろんメンタルのプライバシーの問題を自分でなんとかしたくて、当 初は面接をしなければいけないのだったら、私はあっちの病院でやってきましたという ことだけ今回出させてくださいということも全部含めていますが、そういうケースを入 れた上でこのようにさせていただいています。 ○金子委員  その結果、提出したあとは産業医の意見と同じように会社が扱うというのが付いてく るのですか。ただ出すのは自由ですよという意味ですか。 ○労働衛生課長  出して、それはきちんと医師の面接が行われたということを事業主の義務としてして いただかなければいけませんし、労働者側は面接の指示を受けて、きちんと受けなけれ ばならないということをいま考えていますので、それをどこでやるのかを担保する上で 広くやりやすくするためには、これが必要だと考えてこのような形にしてあります。 ○金子委員  それについて、事業主に何か意見が付くということではないのですか。 ○労働衛生課長  意見が付く場合もあろうかと思います。全くほかのこともあると思いますし、実は全 く別の病気が見付かって、ほかのことで何か事業場に配慮ということもあるかもしれま せん。 ○金子委員  そのときは産業医でなくても、そういう方法で医者の意見を事業場が聞くことがある ということですか。 ○労働衛生課長  それは提出されて聞くことはあるかと思います。そのときに産業医がどのように噛む べきかは、きちんと事業場ごとに衛生委員会等でルールづけをしていただきたいという のが私どもの考え方です。 ○金子委員  希望しない場合について、事業場ごとにルールを作るのはまずいのですか。希望しな い場合というのも、事業場のルールの中に入れてしまえばいいことのように思います が。 ○労働衛生課長  けれども、私どもの立場からするとこれを入れておかないと、必ずそこの産業医に面 接を受けなさいということになってしまうので、それは産業医に対する負担が多くなる のと非常勤の産業医でやっている所が、かなりきつくなるのかなという配慮もありま す。 ○中桐委員  先ほど申し上げましたが、労働組合でも事業場外の資源ということになるのでしょう が、メンタルヘルスの電話相談を受けている産業別組合の例はいくつかありまして、そ ちらは大体基本的には中小職場、産業医がいない職場を対象にしているのですが、かか ってくる電話の半分ぐらいが産業医の先生がいらっしゃる大企業の方という実態があり ます。やはり自分の職場の産業医の先生に相談するのはとてもはばかるというか、どう しても外の相談体制を使ってやっているというのが現実にありますので、この(3)は 必要な事項だと思います。以上です。 ○労働衛生課長  もう1つは、今回は法改正をお願いしたいというので、あとで健康情報の部分のお話 をしますが、基本的には労働者の情報の取扱いについて各事業場ごとに、きちんとルー ル化していないところがかなりあるのではないかと思います。この度、雇用管理指針と それを補完する健康情報の保護に関する通知を出しましたので、それを参考にしてご異 議があれば具体的にどうするかもまた検討はしてみたいと思いますが、情報の保護につ いて労働者に安心感を与えるようなルール化をしてそれをきちんと表現しないと、いま 中桐委員がおっしゃったような事例が結構増えるのではないかという感じがします。 ○加藤委員  いまのは、例えば100時間以上または80時間の2〜6カ月でオーバーして、要は産業 医の面談を受けなさいよと。ところが産業医のは受けたくない。外の先生の面談を受け たい場合、定期検診で必ずしも事業場内で受けなくても外の先生で受けてもいいよと同 じ感じで受け取ればいいわけですね。 ○労働衛生課長  そうです。 ○分科会長  私がこういうのを聞くのもおかしいかもしれませんが、面談の頻度は、いままで一度 も特段明確に出ていないのですね。これは必要に応じてということですか。 ○労働衛生課長  一応、労働時間の管理は月ごとに締めるのが望ましいとなっていますから、例えば今 月120時間やった、もう一回やりなさいと。次の月は110時間になった、またやりなさい という話になるのでしょうが、医師その他が状況を知っていたら職場のルールでいいの かなという感じがします。 ○分科会長  実質的には、毎月面接をやるというものではないのではないか。 ○労働衛生課長  そこはケース・バイ・ケースではなかろうかと思います。 ○加藤委員  大体月末で締めますから、明くる月に出てきますので、現状はそこで面談をかなりや っていると思います。 ○労働衛生課長  確か検討会のときに、ここは基本的には時間外労働時間で月単位で処理するという話 ですが、大抵の事業場で検討会の最後の辺で具体的な事例で出てきたのは、年がら年中 100を超える事業場はかなり珍しいのではないかという話がありまして、季節的に今月 はあれだったけれども来月の締めが終わると、少し時間の余裕ができるというところも 配慮して、適当な回数、時期を産業医や産業保健スタッフが事業主に相談してきちんと 決めるという考え方もあるのではないかというご議論があったのではなかろうかと思い ます。基本的には月ごとに、きちんと締めてやってください。ただ80時間のところにな ると2ないし6カ月間にという条件が付きますから、それぞれの条件を満たした時点で 早急に医師の面談を受けてくださいという話になるだろうと思います。 ○金子委員  そこが難しいですね。 ○労働衛生課長  だから、どういう締め方をするかはその事業場の管理になるだろうと思います。 ○分科会長  ほかにはよろしいですか。この場でなかなか議論を集約あるいは収束したというわけ にはいかない面があろうかと思いますので、今日の議論は事務局で整理していただいて 再度議論をすることにしたいと思いますが、よろしいですか。では、そういうご了解を いただきましたので、次の検討項目の「労働者の健康情報の保護について」を事務局か ら説明をお願いします。 ○労働衛生課長  資料番号No.3です。「検討の視点」ということで今回お願いするのは、「労働者の 健康情報の保護について」で報告書がありますが、その中に、特殊健康診断の結果につ いても通知を義務づけるとされていることから、法律によって事業者にこの特殊健康診 断の結果の通知を義務づけてはどうかというものです。皆様よくご承知のように、一般 健康診断の結果は本人に通知するよう法律に定められています。特殊健康診断の結果は その規定がありませんので、これもきちんと通知するように改めるべきではないかとい うものです。  3頁に「健康診断結果の通知状況の事例」があります。これは愛知産業保健推進セン ターのアンケート調査結果ですが、一般定期健康診断を全員に「通知している」が97.7 %、「通知していない」が0.2%もあるのが、法律があるのに不思議に思います。法定 の特殊健康診断を「通知している」が全員で71.9%、「通知していない」が2.7%です。  特殊健康診断は4頁にありますが、安衛法第66条2項に基づくもので、有機溶剤、 鉛、四アルキル鉛、特定化学物質等の製造・取扱い等業務、高圧室内・潜水業務、放射 線業務に関する健康診断と、塩酸、硫酸等のガス・蒸気・粉じんのような歯科の場合 と、作業環境測定結果の評価に基づいて行う健康診断と、粉じんの健康診断です。これ らの結果を法律上、きちんと診断を受けたご本人に通知するという規定を盛り込みたい わけです。  なお、前回、前々回に資料に基づいて説明しましたが、労働者の健康情報の取扱いに 関しては本年7月23日に、雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いについてというこ とで告示を出しています。7月1日付厚生労働大臣告示で示しているわけですが、その 中でほとんど重複していますが、健康情報の特殊性に基づいた部分について、それを補 完する意味で労働基準局長通知を10月29日付で発出しています。これがそのあとの所に あります。  内容は、個人健康情報の内容、事業者がその取扱いについて留意すべき事項、適切な 取扱いを確保するための措置、収集すべきでない健康情報などの場合、委託の場合など も雇用管理情報指針の中にあるわけですが、それを補完することで出したところです。  また、これらについては、具体的な情報の取扱い等については、さらに今後メンタル が入ってまいりますと、もう少し具体的な事例に則したマニュアルと申しますか、そう いうケース事例の報告と申しますか、提示というか、そういうものが必要ではなかろう かと考えていますので、今後、事務局においてそのような内容についての検討をしたい と思っています。 ○分科会長  ただいまご説明いただいた労働者の健康情報の保護について、特に特殊健診結果の本 人への通知の義務化の問題、ご質問、ご意見がありましたらどうぞ。  特段、よろしいですね。特段のご意見もありませんので、次に進みます。次の検討項 目である5番目の「その他」について、事務局から説明をします。 ○計画課長  資料番号No..4に基づいて「その他」を説明します。「検討の視点」ですが、報告 書の中では、安全衛生に関し多様な知識を獲得することが安全衛生活動にも有効であ り、また、事業者あるいは労働者の負担軽減を図るためにも、幅広い資格取得が可能と なるような制度の見直しが必要という提言があったわけです。これを踏まえて3つの視 点から書いてあります。  1つ目は、作業に必要な知識又は技能に共通点が多い資格であって、かつ1人の労働 者が両方の資格を取得していることが多い、あるいは1人の労働者が災害防止という観 点から2つの資格を持つことが望ましい等の事情があるものについては、効率的な修得 という観点から統合してはどうかということです。例えば地山の掘削と土止め支保工作 業主任者の技能講習を統合してはどうか、あるいはデリックの運転士免許、これらの運 転士免許、実技教習等を統合してはどうか等が該当するのではないか思います。  2つ目の視点としては、作業方法の変化などにより、災害がほとんど発生していない ことから、一定水準の作業指揮が行われることなど他の方法によっていまと同じ安全衛 生が確保できる資格については、廃止してはどうかということで、例えばボイラー据付 け工事の作業主任者技能講習が該当するわけです。  3点目は、制度改正等により、1つの資格で行うことができる作業の中で必要な知識 または技能が拡大した作業がある場合には、資格を分離してはどうかということです。 これは前にアスベストの関係でもご指摘がありましたが、特定化学物質等作業主任者技 能講習から石綿関係を分離し、独立の資格としてはどうかということでした。  なお、お手元の資料の3頁以下にその辺の若干の状況を付けています。例えば3頁。 これは(1)の地山の掘削と土止め支保工の関係ですが、2「近年の状況」の(1)を見 ていただきますと、溝掘削工事については、実は地山の掘削と土止め支保工作業は一連 の作業であり、クロスしている部分で土砂崩壊による死亡の3分の2が起きているとい う状況にあります。また、資格取得の状況を見ても、両方の講習を修了した方が8割を 超えています。  さらに次の頁ですが、岩石の性質、あるいは崩壊の予知など、両方の技能講習におい て必要とされる知識については共通する部分が多いといえます。したがって、これらを 統合していけば、一連の作業でもあり、そうした安全対策に精通した作業主任者が多く なることによる災害防止の効果が期待できるわけです。なお、現行のガイドラインにお いては既に一体的な施工をお願いしています。さらに、修了試験が1回になること等に より、当然、負担も減るわけです。  その次の頁は(2)の例です。例えば、ボイラーの据付け工事についてどうかという話 があったわけです。1で書いてありますように、現在はボイラーの据付け工事について もパッケージボイラー、これは工場で組立てを行ってしまってほとんど工事は要らない ものですが、これについては、作業主任者の選任を要しないということになっているわ けです。  そうした中で近年の状況を見てまいりますと、ボイラーついてはそもそも、れんが積 み工事等を行うような非常に大規模なものは大変減ってきているわけです。また、工事 の水準等も上がってきていますし、災害の事例もほとんどない状況です。さらに、現在 ほとんどがパッケージボイラーであり、作業主任者の対象となる工事そのものが減少し ています。そうしたことから受講者、修了者ともに大幅に減少しています。こうした観 点から見てまいりますと、作業指揮者なりを置けばこうしたものについては技能講習ま で必要はないのではないかということです。 ○分科会長  ただいまのご説明に対し、ご意見、ご質問がありましたら、どうぞご発言をお願いし ます。 ○徳永委員  この文はよく整理されていて、私もいま非常にわかりやすく見ました。いまご説明が ありましたように、現実に合わせた必要なものといいますか主になれるものにするとい うことで、これが現地で全部出ている分がどうかという判断は私はまだできませんが、 そういう観点で実効のある作業主任者制にしてもらえればいいということです。それと 併せまして、(3)ですが、これは今度、石綿関係が分離されたという部分で整理され、 対策がこれから本格化することになっていますから、それに併せて作業主任者制度もリ ンクさせて充実させていくのだと、こういう形での整理だと思いますので、これは是非 進めていただきたいということを申し上げます。 ○鈴木委員  (1)の「デリックとクレーンの運転士免許」の関係ですが、現状を見るとクレーン運 転士のほうが非常に取得が難しい。こういう状況の中でこれを統合することによって取 得が困難になる。だから、こういう状況があっては、また作業だったりそういうところ にもいろいろ問題が発生しますので、この辺のあり様についても考えてほしいというこ とです。 ○安全課長  ご指摘ですが、デリックとクレーンを一緒にする1つの理由が、デリックの操作その ものがクレーンと非常に似かよってきているということです。それであれば統合したと しても、付与すべき技術はいまは非常に近くなってきていますので、統合免許を取るに あたって必要な知識も若干広がる部分もありますが、いままでに比べて勉強する範囲が 大幅に広がるとかそういうことはないので、受験者にとっての大幅な負担になることは 考えられないと思っています。 ○分科会長  いかがですか。ほかに何かありますか。  この件についても概ねこのとおりでいいというご意見で、ほかに特段のご異議もない ようです。  今日の審議事項は大体予定の所が終わったわけですが、ほかに問題として、10月6日 から議論を行ってきた今後の労働安全衛生対策に係る各検討項目は、今日、再度議論を 行いましょうということになりました、その部分がまだ残っている過重労働・メンタル ヘルス対策を除いては、いままでの議論を踏まえて事務局で取りまとめの素案を作って いただいて、次回の審議会に提出をしていただくことにしたいと思いますが、いかがで しょうか。                 (一同異議なし) ○分科会長  それでは、そのようにします。なお、今日はもう1つ報告事項として「心の健康問題 により休業した労働者の職場復帰支援の手引きについて」があります。これは事務局、 よろしくお願いします。 ○労働衛生課長  報告です。先ほどのご議論の中でも、メンタルヘルスの問題で長期休職になっている 方が非常に増えているというお話がありました。そういう労働者とその家族にとっては 職場復帰は極めて重要な課題ですので、事業場も適切な職場復帰支援の実施に対してし ばしば苦慮している、と聞き及んでいたわけです。そのため今回、「職場復帰支援のた めの事業場向けマニュアル」となるものを、平成14年度から中央労働災害防止協会に検 討を委託し、策定したものです。  これは平成14年度において職場復帰支援対策を実施している事業場12社を任意に選定 し、ヒアリング調査を実施しました。このヒアリング調査を基にして職場復帰支援プロ グラム案を作成し、平成15年度において平成14年度作成のこのプログラム案を基にし て、公募した事業場において職場復帰支援規程等の作成、施行を行ったものです。今回 は、この2年間の結果を踏まえてこのような手引きを作成したということです。私ども としては、メンタルヘルス指針の周知徹底とともに、この手引きの内容の周知も行い、 労働者のメンタルヘルス対策の一層の推進を図ることにしています。また、事業場にお いてはこの手引きを参考にしていただき、それぞれの事業場の状況に応じた職場復帰支 援プログラムを策定し、職場復帰支援のための体制整備等を進めていただきたいと考え ているところです。  これは厚生労働省のホームページで公表していますし、各都道府県労働局、産業保健 推進センターでも、10月以降、11月ですのでもう行っているかと思いますが、入手でき るようになるはずです。 ○分科会長  ただいまのご説明について、ご意見、ご質問はありますか。  よろしいですか。ほかにご発言、一般的なご発言もないようですので、今日の会議は 以上をもって終了します。次回は11月29日(月)15時からの予定となっていますので、 よろしくお願いします。議事録への署名は、鈴木委員、讃井委員にお願いします。どう ぞよろしく。皆さま、お忙しい中どうもありがとうございました。               照会先:労働基準局安全衛生部計画課(内線5476)                        03−5253−1111(代表)