第12回福祉部会議事録 1 日時:平成16年11月2日(火)16:00〜18:00 2 場所:厚生労働省専用第21会議室 3 出席委員:      岩田部会長、大石委員、小島委員、京極委員、佐口委員、佐々木委員、      高岡委員、高原委員、福原委員、福間委員、堀田委員、松浦委員、      松尾委員、村田委員   欠席委員:      新津委員、福田委員 4 議事  (1)岩田部会長による開会あいさつ  (2)事務局による委員及び事務局の出席状況・資料確認  (3)事務局による資料の説明  (4)審議 5 審議の概要 (小島委員) ○ 従業員の意見を反映する立場から発言するが、今回退職手当共済制度への公費助成  の在り方については2つの視点から議論すべき。 ○ 1つは、民間とのイコールフッティングの観点からの見直しで、公費負担を最終的  には廃止という方向で示されているが、このイコールフッティングについて、介護保  険施設の数からいうと実際の施設の数や職員の数の比率から言えば、圧倒的に社会福  祉法人の比率は高い。そういう意味では、社会福祉法人の役割というのは引き続き大  きい。 ○ 高齢者福祉については、社会福祉法人はすべて介護保険の適用ということではな  く、養護老人ホームなど、いまだに一部、低所得層を対象に措置制度も行っている。  そういうことも踏まえて、単に民間とのイコールフッティングという話にならない。 ○ また、今回、高齢者福祉関係施設の公費負担は将来的になくしていき、障害者や児  童福祉等については今後も引き継ぐとなっている。しかし、介護保険と障害者施策と  の統合問題が議論されている最中であり、統合の方向についても含めて考えるべき  で、今回の考え方だと、障害者施策と介護保険は引き続き別制度ということを前提に  した論議ということになってしまう。これからの介護保険の適用範囲の見直し問題も  含めて慎重に議論すべき。 ○ 2つ目の視点として、退職手当共済制度は社会福祉従事者の確保、従事者の待遇改  善を目的につくられている。社会福祉法に基づく基本方針では、国の役割とともに、  退職手当共済制度の加入に努めることが経営者の努力義務として記されており、公費  負担をなくすとなれば、経営者が共済制度に加入するインセンティブがなくなってし  まい、基本方針の趣旨から外れてしまう。そういう意味で、公費負担については、職  員の待遇改善、人材確保という観点から残しておくべきではないか。新規採用者につ  いては公費負担をなくすという考え方が示されているが、それだけでいいのか。 ○ 今後、新しい人は、この制度に加入しないということになってしまう危険性があ  り、結果的に、共済制度の目的・意義ということが薄れてしまうのではないかと思う  ので、ほかの選択肢も考えるべき。3分の2がいいかどうかという問題はあるが、新  しい人についてもゼロではなく、一定の公費を引き続き出すということで、例えば2  分の1ぐらいにするとか、そういったことも含めて、別の選択肢も含めて検討すべ  き。 ○ 給付水準の在り方では、4つの考え方が示されているが、従事者の勤務期間という  のは極めて短く、平均では4、5年となっているので、全体の水準の在り方を見直す  場合には、この10年以下の人の水準について改善するというような手直しも必要では  ないか。25年、30年、35年で急に立ち上がるところについての見直しも含めて10年以  下、特に5年前後ぐらいの水準の改善も含めて考えるべき。 ○ 勤務期間3年未満の給付について、労働組合の立場からすると、退職金は賃金の後  払いという性格なので、3年未満であろうとも働いた期間に応じて給付をするという  のは当然。 ○ 結論を言うと、公費助成の在り方については、新規採用者はゼロにすることについ  て、そう拙速に結論を出すべきではなく、当事者の意向を十分聞きながら慎重に検討  をすべき。 ○ 次回の部会でこの結論を出すということはやめるべき。聞きようによっては来年度  の厚生労働省予算の自然増1兆円余りのうち、約2,000 億円を圧縮するということが  シーリングとしてかかっているので、そのための財源探しとして受け止められる可能  性がある。財政上のつじつま合わせではなく、これからの社会福祉で働く従事者の待  遇改善、人材確保をどうするかという観点から慎重な検討が必要。 (岩田部会長) ○ 社会福祉法人における介護分野の職員の数はどのぐらいか。事業所数より少し高い  ぐらいか。 (小島委員) ○ 何を分母にするかだが、高齢者福祉の施設の数ということにすると、圧倒的に社会  福祉法人が多い。そこで働く従事者の数ということにすると、更に社会福祉法人の比  率が高い。そのため、居宅サービスを含めたすべての事業所数という単純な比率だけ  では比較にならないのではないか。 (福祉基盤課長) ○ 前回の審議会資料でもお示ししたが、特養・老健等の施設サービスの分野における  社会福祉法人の職員数は常勤換算比率5割弱程度。 ○ 来年度予算との関係では、改正法の施行日は、準備期間等が必要なので、18年4月  を考えており、来年度予算に関しては非関連。 ○ 養護老人ホーム自体の在り方というのは別途老健局の方で議論しているが、措置制  度との関係で言えば、今回公的助成の在り方について考えているのは介護保険の対象  である特養等である。 ○ 障害については、経営主体の参入状況等を考え、現行どおりの公的助成を残すとい  うことが適当ということで、御提案させていただいている。 (大石委員) ○ この部会で検討していく内容は、過去の経緯がいろいろあったと思うが、その経緯  をどう清算していくのか、どう経過措置をつくっていくのかというのは非常に重要だ  が、将来を見ていくときに何が重要なのかということをこの場で議論するべき。 ○ 介護分野における経営主体は社会福祉法人だけではない。その他の主体に今後の介  護分野が関わっていくウエートは増えていくというのが将来の予測だと思うが、その  中で、イコールフッティングというのは非常に重要で、そこで過去の経緯にとらわれ  て、その縛りから抜けられないというのはおかしい。 ○ 民間企業と比べたときに、社会福祉法人での給付条件が悪いとか、著しく労働条件  がよくないというようなことも拝見できない中で、ずっと恩典を与え続ける理由とい  うのはよくわからない。 ○ 民間の退職金制度と比べた場合も、一般的な民間の場合は勤続年数にかけた乗数と  いうのはそう著しくは存在しない。この辺は民間に合わせていくというのが一つの筋  ではないか。そうなってくると、介護福祉に携わる人たちの労働条件がますます悪く  なるのではないかという懸念はあると思う。公費助成や制度の問題もあるが、例えば  医療法人の経営で、退職金はできるだけ提供できる仕組みにしていこうとは思ってい  るが、その財源がなかなか取りにくいような収益状況とコストの状況になっている。 ○ 経営努力の中でやっていけるものもあるが、経営努力だけではできない制度上の縛  りもあって、それが取れることによってきちんと経営努力をやっている医療法人が報  われ、その職員が報われるという仕掛けが一様にできている。この分野でもそういう  物の考え方も取り入れてはどうか。 (岩田部会長) ○ 一律的にやるのではなくて、もう少し個々の事業主体の努力、特に医療や福祉の実  現にどう寄与をしたかというようなことがもっと評価されてもいいのではないかとい  うことか。 (大石委員) ○ ある種の経営の自由度をもう少し広くすることによって、結果として経営努力した  経営主体と、そこにいる従業員が報われる制度というのが一つの方向性ではないか。 (佐口委員) ○ 退職手当制度の被共済組合期間の通算措置について、これは昭和49年から、「共済  契約者が現に使用している被共済職員を他の共済契約者の要請に応じて異動させ」云  々とあるが、これは「要請に応じて異動させ」というところがかなり重要なのだろう  が、自発的に退職して、異動した場合も通算措置がなされるのか。それとも、「要請  に応じて異動させ」というところが強いので、そうならないのか。 (福祉人材確保対策室長) ○ 法律上、被共済職員でなくなるということを退職と定義しており、空白期間があれ  ば退職とみなさざるを得ない。被共済職員の期間が続いているということが重要で、  そのためには異動する法人間での合意があって移籍をされるということが一般的で、  事務的には両方の契約者の同意を得て異動しているという扱いにしている。 (佐口委員) ○ 実質的には合意というのはどのような場合も成立するのだということか。 (福祉人材確保対策室長) ○ 異動のきっかけが要請であったかどうかというのは、結果としては重要でない。 (松尾委員) ○ 介護保険制度の中のイコールフッティングと、その他の施設のところを分けて議論  しないと、すべてやめるという話になってしまう。介護保険制度と措置制度は基本的  に違うので、同じ議論にはできない。 ○ 社会福祉従事者の給与や労働条件が良くなったのは、厚生労働省や社会福祉法人経  営者が努力してここまで持ってきたからである。社会福祉の労働職員はかつては給与  も低く、3K、5Kと言われた職場であった。これまでの経緯も大事に議論していた  だきたい。 (高岡委員) ○ イコールフッティングの中で出てきている論点は、介護保険事業者はある程度理解  するものの、他の施設関係者には理解が十分ではない。そもそも措置費から退職金を  手当てすることができない仕組みで来ているので、退職金はこの制度によるしかな  い。制度の今後の在り方を検討する必要があるにしても、今回は介護とそれ以外を切  り離しておかないと混乱が出てくる。 ○ 法人として脱退した時、職員の退職金の扱いについてはどう考えているのか。 (福祉人材確保対策室長) ○ 今でも法人全体として脱退することは認められているが、共済に入っている職員全  員の同意を取ることが要件。その際、現行制度上は、もともと賦課方式で、その年に  要する退職金の支給財源を集めており、また、その法人としても退職者が生じる都  度、退職金が支払われてきたということであり、脱退に当たり何らかの給付を行うと  いう制度にはなっていない。 ○ 法人全体として、脱退するのか加入し続けるのかという2つの選択肢しかないとい  うのが現行の法律だが、今回、介護保険対象の施設等の公費助成を廃止するというこ  とになれば、将来的には経営者の全額負担となることを踏まえ、そういう施設だけ部  分的に脱退をするという選択肢をつくってはどうかというところが趣旨であり、脱退  の時点で給付を行うことは今もなく、部分的にもなかなか難しい。 ○ いずれにしても、脱退する場合は、職員にとって退職金を受け取れないということ  になるので、脱退する部分の該当職員の同意は取るという要件は必要。 (岩田部会長) ○ まず、介護保険制度の対象となる高齢者関係の施設事業等の職員についてのみ、民  間とのイコールフッティングの観点から公費助成を段階的に廃止するという方向でよ  いか。 (福原委員) ○ 事業に参画している主体の数というのが議論の根拠だと思うが、保育分野において  も、民間の参入に意義があるという認識に立てば、少数であるからそこは無視してい  いという考え方はおかしい。 ○ 介護分野に関連する論点でもあるが、従業員の処遇改善というのは基本的にはどの  事業者でも目指さなくてはいけないことだが、そこに公費が使われることについては  違和感がある。 ○ 事業者の自助努力でいい待遇を提示できるということがそもそものイコールフッテ  ィングの観点なので、職員の募集における不公平は是正してほしい。 ○ 保育分野は民間事業者の数は少数であるが、少数だからといってそこの議論を切り  捨てることにはならない。この分野に公費が使われてきた歴史的な経緯は十分理解し  ているつもりだが、今の経済環境等を考えると、もうそういう時代ではない。 (堀田委員) ○ 10年後、15年後を見てどういう姿にするのがいいのか、そこの見通しの問題と、経  過措置をどうするかということは議論をしっかり分けなければいけない。あるべき方  向に向かわないような経過措置というのは反対だが、そちらに向いていれば、どこか  ら始めて、どう緩やかに移していくかというのは理屈の問題というよりも現実の妥協  という要素が非常に強い。 ○ 10年先、15年先のことを考えるのに、この問題はいろいろな要素が関わってくる  が、退職金制度そのものがどうなるのかという問題があって、これについては昨年、  厚生労働省の委員会で報告書が出ており、雇い主側の都合で人を雇うのではなく、働  き方が選べる社会、その働く人それぞれの人間性が働く中で花開いていく人間開花社  会というものを目指そうではないかというもの。 ○ 経過はともかく、そちらの方向に持っていくということになると、意思に応じて働  き、その時々の能力に応じて給料が決まり、仕事が決まり、成果、貢献度に応じて給  料を払うという姿になっていくわけで、退職金はなくなってしまう。いずれ目指すべ  き社会の方へ向けていけば、退職金制度そのものが、分野を問わず、人間開花社会に  そぐわないのではないかいう見通しがある。 ○ 老健局でやっている福祉人材のキャリアアップ、研修の在り方を考える勉強会で、  福祉の分野で働く方がまだまだ未熟で、きちんとキャリアとして評価して、能力を深  める道をつくって、その中で働き方を決め、給料等も決めていくこと。こういう方向  に議論が大体まとまり11月10日に中間報告が公表される予定である。 ○ その議論の中で、将来の見通しとして、福祉分野の就労者が足りなくなり、あと10  年も経ったら、人材確保自体が非常に難しくなり、フィリピンを始めとする外国から  の人材も導入しないと到底もたない状況になっていく。今の需要の増大ぶりと福祉の  現場の仕事から見て明らかであり、大学・専門学校卒業者だけでは今もニーズは満た  せていないので、専業主婦の方とか、公共事業から男性が参入してくるという状況に  なっているが、参入した人の4割ぐらいはすぐに辞めてしまうという状況。 ○ この状況はすぐには変わるようにも思えないので、このまま10年先、15年先になっ  ても、いろいろな人が参入し、働いて、また去っていく。国内で去る場合もあり、国  外に帰ってしまう場合もある。そういう中で、1つのところへ就職してずっと勤めて  退職金をもらうというような仕組みが一体どれだけ魅力を持ち、どれだけ機能するの  かという問題も出てくる。 ○ 措置については、大きな方向として、施設にお金を付けるのではなく、個々の人に  必要なお金を付ける介護保険制度のような方向に移り、これからも次第にその方向に  移っていくということも大体見通されるので、事業者の方でどれだけの仕組みをつく  れば人を引っ張れるのかという問題ではなくなってしまう。利用者が選ぶ問題にな  る。 ○ いろいろな要素が錯綜した激変期であるが、移っていく状況を考えると、将来的に  はそもそも退職金制度自体が機能しなくなっていくというように見通さざるを得な  い。したがって、それについての公費助成の問題も消えてしまうだろう。 ○ 方向としては、公費助成を廃止していくというのが時代の流れにも沿ったものであ  るが、そちらの方向に行くにあたり、大きなマイナスが今生じることは大変好ましく  ないので、急激な措置は勿論避けなければならない。 ○ 介護保険制度で基盤ができているので高齢者介護からやるのがよい。障害者支援費  制度ができて、今後一体化して、実態が付いてくれば同じような問題では同じように  していくことが道筋としては正しいと思うが、それを今、経過措置のところで平仄を  合わさなくても、今の制度を永久に維持するということを決めるのではなくて、そち  らについては条件の熟するときがあるだろうという意味で、とりあえず、条件の熟し  たところから着手していくことが経過措置としていい。 (京極委員) ○ 基本的な整理としては、介護保険適用下における退職手当共済については方向をま  ず決めるということが原則で、それ以外については今後の課題としてまた議論してい  く必要があるのではないかということで、それ以外の社会福祉法人の施設は今後とも  これでいいのだという結論をこの部会で出すのは時期尚早。ペンディングということ  で灰色になってしまうが、それで議論を整理して、とりあえず一歩議論を踏み出して  いることが大事ではないか。 ○ 制度論的な問題で考えると、措置制度における剰余金をどうとらえるかということ  がこの議論の中で根底になくてはいけない。措置制度の下では剰余金は出ないことが  原則で、出たものは使ってはいけないのが原則だったため、国が3分の2出すから、  あと3分の1は剰余金の中で使ってもいい、あるいは剰余金ではない福利厚生として  使っていいということで認められた。介護保険の場合は、そういう剰余金という考え  はないから流用してもいいわけで、制度論的に言うと、措置制度の下にある施設とは  若干違う。 ○ 支援費や保育所についても、まだ措置制度の残滓が残っており、そういう制度論的  にもともとできないものを許したという点と、基準が低かったので3分の2出さない  と施設もできなかったという状況があった。これは国の努力によって措置費の単価が  上がってきたため問題はなくなったが、剰余金を自由に使えるという体制に、今後ど  んどん自由化して規制緩和をしていけば、他の施設についても可能性が出てくる。 ○ そうすれば、社会福祉法人の方がお金をくれなくては退職金ができないと言ってい  る方々だけではなくて、今の制度上、なかなか退職金を積み立てにくい仕掛けという  のがあるので、経営努力でいろいろやってもいいとなれば、結構やれる施設がたくさ  んあると思うので、その問題は将来課題とする。 ○ 当面は、やはり介護保険の中でのイコールフッティング論もあり、また、社会福祉  法人がこれによってダメージを受けてだめになってしまうという状況でもなさそうな  ので、むしろ、これを機会に社会福祉法人がより経営努力を発揮して、自主的な活動  をやっていける一つのきっかけになればと思う。 (村田委員) ○ 公費助成の目的が福祉現場で働く人たちの待遇をよくし、人材を確保しようという  ねらいで導入されたということだが、それが今の時代に果たして本当に機能している  かどうかという基本からまず考える必要がある。 ○ 取材の実感では、多くの人が職場を離れる場合の理由としては経済面ではなく働き  がいである。福祉現場というのは、ほかの事業、民間の企業とは違って非常に意気に  感じて、その仕事をしたいからということで入ってこられる方がものすごく多い。そ  れゆえに、誇りという部分を非常に大事にする職場である。 ○ だからといって、経済状況がよくなくていいということではなく、誇りを持ってい  る人たちがそれなりの処遇を受けて、働きがいのある職場にしていくというのは当然  の話だが、そういう特徴を持った職場であるということも考えたい。 ○ 支援費制度で事業をしているところは公費助成を継続して行うこととしてはどうか  ということがあるが、介護報酬をもらって事業をしている高齢者福祉施設は当然のこ  ととして、支援費制度で事業をしているところもこれでいいのかということについて  は少し疑問を感じる。 ○ 一つの例だが、コロニーといわれる大規模施設で実態調査したところ、市町村が決  めた障害程度区分と、施設の認識には乖離があり、市町村職員の障害程度区分は甘か  ったという結果になった。お金に換算したら、3,000 万余計にもらっていたから返納  した。返納の理由は、福祉に従事する者の誇りであるとおっしゃっている。 ○ ただ、そういうところがある一方で、経営実態調査というものがなされていないの  で取材の実体験からしか物を言うことができないが、非常に乖離がある部分を内部留  保しているところも相当あると聞く。 ○ そういうことから考えると、この支援費制度で行うところを別建てにしていいの  か。支援費制度と介護保険事業と一緒にやっているところもたくさんあるので、一概  にこう言えるのかどうかというのは非常に疑問を感じる。 ○ 今後、介護報酬や支援費制度で事業を行っていくところが増えていくときに、やは  り福祉の分野でも経営実態調査をきちんとやって、それを示してもらって議論をして  いかないと、なかなかその実態を把握できないのではないか。 (岩田部会長) ○ 社会福祉の事業主体が今後どういう形でいくのかという、非常に根本的な議論であ  るが、一方で、恐らく契約型の方向にいくだろうということが一つあるが、それでは  全部それでいくだろうかというと、社会福祉全体を見通すと、そこがなかなか難しい  点。 ○ 現状で多いか少ないかということで見るというのは大変難しいと思うが、今、障害  者の支援費の問題と保育の問題でそれを見直さない方に置いておくということに対し  ての異議が出ているわけだが、絶対そうしないというように分けるというよりは、差  し当たり、制度的な条件が整っているのは介護保険だけ。支援費はどうなるかという  のはわかっているのか。 (京極委員) ○ まだ検討中。 (岩田部会長) ○ 介護だけは、一応、制度的な条件もあるので、退職手当共済制度の見直しをまず、  そこからスタートする。そのほかの部分については、一応、現状で行く。しかし、そ  れは永久にこうしようということではなく、今回の福祉部会の提案としては、差し当  たり、そういう形で改革をスタートしてみようということでどうか。給付の在り方の  見直しの問題は、その後で御議論いただきたいので、その点においてはそう大きな隔  たりはないのではないか。 (福間委員) ○ 部会長の考え方で基本的に賛成。私どもも高齢者介護の世界で、もう一つ、居住費  と食費の問題を抱えているが、まさにそういうこと自体はやむを得ないが、そういう  中での経営をどう努力するか。また、そのための社会福祉法人という制度の中での経  営の力とか自由度とか、そういう議論に行くのだと思う。 ○ この退職共済なり退職金そのものについても、給料の後払いではなくて、今、現実  の中であれは給料としての評価とか、人事考課とか、いろいろな議論があるが、それ  はそれで法人として考えていく世界で、むしろ完全に補助がなくなれば任意加入の中  で皆さんが判断をしていくだろうということでかえっていいのではないか。 ○ ただ、これまでの経緯の中でのことについては、また別途に議論していかないと、  措置制度云々は別にしても、その対価としての措置委託費と、その使い方としての会  計処理というのが全部リンクしているので、その中での退職金や処遇の在り方という  のは、リンクした中での自由な発想でできるかどうかということで、やはり少し違  う。今の焦点の中では、まず整理できる、そして業界としても、やはりそれは受け止  めて、より積極的にどうするかという考え方でいきたいと思っており、今回の見直し  の考え方の整理の仕方としては、内部の議論でもほぼ納得していると思う。 ○ 支給率の話があるが、現場としては、5年から10年ぐらいがほとんど職員の退職の  ピークなので、その中での水準がまず守られていけば、実は東京等の大都市部の方が  人材の確保が困難で、ある程度職員の条件をよくしておかないと、社福だから人が確  保できるというわけではないので、やはりそこはキープしていきたい。 (佐口委員) ○ 私も今の基本的な議論の流れに賛成なのですが、あえて別の角度から申し上げたい  が、退職金の問題というのは賃金の問題と非常に関係しており、後払い報酬というの  を少し前倒ししていくという大きな流れがあるということもよくわかる。それは、今  の福祉の労働の実態とも非常によくかみ合った話だということもよくわかるが、それ  と同時に、本当に退職金というのは要らないのかという話になってくる。 ○ 実際のところとして、介護労働者の中には長期で働く方もいる。その人たちの老後  の生活の予見可能性もやはり確保しておく必要がある。総合的に見て、いろいろな制  度の組み合わせの中で、いろいろなパターンがあると思うが、介護労働者の老後の生  活の予見可能性をどう確保するのかということも同時に見ながら議論していかない  と、そもそも退職金制度は要らないではないかという話になってしまう。 (高原委員) ○ 1点目に、方向性として、できることからやってみようではないかという意見につ  いては、とにかく行動するという視点から賛成である。 ○ 2点目に、退職手当共済制度は良質な職員確保を目的の一つにしているということ  だが、需給関係というのは労働条件によって変わってくるものである。公費の助成は  民間とのイコールフッティングの方向で見直していくことが必要である。 ○ 本制度の持続可能性を考えるのであれば、給付水準の見直しについては改正案1と  いうのを選択し、当該職員への説明については、民間企業との比較などをもとに十二  分に説明して、納得をしてもらう努力が必要である。 ○ 助成の在り方を見直すことについては、社会福祉施設の施設整備費の補助金もある  と思うが、どう考えているのか。 (福祉基盤課長) ○ 概算要求の時点では老人関係については交付金という形。それから、児童・障害の  関係については従来どおりの補助金ということで概算要求はさせていただいた。 ○ 三位一体の議論もあり、先般、三位一体に対するそれぞれの省の考え方をお示しし  ているが、その中で厚生労働省の部分については、基本的に交付金化していくという  考え方を示させていただいた。施設整備に限らず、補助金を10ぐらいの大くくりの補  助金に交付金等も含めて再編・統合をしたらどうかというのを提案している。 (松浦委員) ○ 保育所についてはできるだけ残してほしい。都会の方は子どもたちが増えているか  もしれないが、私の市などは少子化が進んでおり、その中で、三位一体改革などあり  ますので、財政が切り詰まっており、民営化できるものは民営化して効率をよくしよ  うとしている。 ○ 老人福祉施設を公がやれば、反対が出ると思うが、保育所の場合は民営化するとい  っても大変。ずっと議論しているが、なかなか大変で、経営的にマイナスになる部分  が新しくできると、それは意欲をそれだけそぎますから、私ぐらいの市の意見として  は、やはり保育所というのはそのままにしておいてもらった方がいい。それは是非お  願いしたい。 (岩田部会長) ○ 福祉全般の確保という観点から考えると、それぞれが分野ごと、あるいは地域ごと  に同じ状況に置かれているのではないということはおっしゃるとおり。一緒に同じ方  向に動いて一斉にできないというのは歯切れが悪い感じはするが、いたし方ない。 (小島委員) ○ 現実的に、介護保険適用の高齢者関連施設の公費について見直しを行うことについ  てはやむを得ない。あとは見直しの中身の話で、この分野での人材確保ということを  考えた場合に、公費負担が全くゼロでいいかという部分の問題。あくまでも3分の2  が是だという話ではなくて、そこはもう少し弾力的な別の選択肢があるのではないか  ということも含めて検討すべき。 ○ 退職金の在り方について、退職一時金制度が今までのような形で残るかどうかとい  う問題はある。最近民間企業は退職一時金制度から企業年金の方に移行しているとい  う流れであるが、退職給付が全くないという話ではない。今の一時金制度のような退  職手当共済制度でいいかどうかというのは当然、議論すべき。 ○ 経営努力によって質のいい人材を確保するということも当然だが、経営努力したか  ら介護報酬は上がるという話ではなく、公定価格で決まっているため、経営努力する  となると、正規職員を減らしてパート、臨時職員に切り替えるということが最も手っ  取り早い話になってしまう。 ○ 私どもが調査した介護三施設調査の中でも、介護保険制度の導入によって正規職員  の比率が下がり、パート、臨時職員の比率があがったという結果が出ている。それが  経営努力だと言われているが、果たしてそれでいいのか。身分保障もきちっとしたこ  とがあって初めて良質なサービスが提供できるので、単に経営努力という形で安上が  りの介護サービスということに流れることにはすべきではない。 ○ 福祉現場の賃金、あるいは退職金というのは、この退職金制度と介護報酬によって  それなりの水準が保たれている。民間の企業で働いている方と違って、世間相場とい  うのは言わば今の制度の中で一定に保たれるということが前提であり、ここのところ  はやはりきちっと押さえておく必要がある。そういう意味で、民間事業者とのイコー  ルフッティングということだけでは整理できない問題である。 ○ 施設介護の介護報酬の設定に当たっては、当然、現在の退職手当共済制度への公費  助成3分の2が前提にあって、その上に立って介護報酬が設定されているはず。この  公費助成3分の2をなくすということになれば、介護報酬の水準自体の見直しも必要  になってくるので、そう簡単に公費助成をやめればいいという話ではない。そこも含  めて十分な検討が必要。 (松尾委員) ○ 介護保険制度はイコールフッティングという約束があるので、そのように進めてい  くという前提に立てば、残った施設をどう考えるのかということである。残った施設  等は現状維持が強い意見だが、私が申し上げたいのは、現状維持したときに制度とし  て保てるのかどうかというのは非常に心配。介護施設等が抜けたときに、残ったグル  ープでできるのか。まして、そこに障害も抜けたらどうかということをよく考えて議  論するべき。 ○ ただ、障害者施策等のまだ枠組みが決まっていない中でこれを決めるというのはな  かなか難しい話で、枠組みのところで混乱しているところにこの退職共済はどうする  かという議論をする余裕がないというように感じる。枠組みがきちんと決まって、そ  れでどうするかというところまで行かないと、いきなり、この制度を変えるというの  はいかがなものか。また、支給率を社会の動きでどうしても下げざるを得ないという  のであれば、一番無理のない仕組みにした方がいい。 ○ 同じ施設で公と民があって、そこに差があるのはおかしい。だから、民も公に近い  職員処遇をすべきだということで公私格差是正をずっと求めてきて、ここで逆に、公  は高くていい、民が公並みで高過ぎるから下げようという議論はのめない。民は低く  てもいいという議論が世の中に通るかどうかということを大いに議論してもらいた  い。 ○ ここで議論されている給与の後払いとか退職金制度がなくなるという議論は、大部  分の施設の中ではそういう議論をしておらず、理解もしていない。社会の流れ等をき  ちんとした議論をしていただいて、これからの退職制度とういう形で持っていこうと  いう段取りをつけていただくというのが大事。 (佐々木委員) ○ 保育の分野ではやはり公立のウエートが半分以上だが、実態を考えると、民間との  関係をにらみながら、公務員労働者との関係、退職金がどうなるかということもにら  んだ視点を入れる必要がある。 ○ 現実に民営化の流れというのはこれからどんどん出てくると思うが、まだまだ半分  以上が公立。残りも、大方が社会福祉法人だということから、先ほど部会長が基本的  なスタンスのまとめをされたが、私もその点で賛成。 (岩田部会長) ○ 激動の時期で、枠組み自体が変わろうとしているときに、各論のところをやらなけ  ればならないという難しさがあるが、そうかといって何もやらないというわけにもい  かないので、そうした意見を付けた形でまとめていくしかないのではないか。 ○ いろいろな形で合意を形成していくためには無理やりということではなくて、地域  格差、あるいは分野別の歩調が違うということと、全体的な変動というものを仕分け  ながら、議論もきちっとして、一歩踏み出せるところから踏み出すという方向に行く  しかない。 (佐口委員) ○ 公共性はこれから新しくつくり上げていって、行政と社会福祉法人、それから、営  利組織がどう分担し合っていくかという問題で、初めから与えられているものではな  いというのが基本的な議論だったと思うので、そういう点から考えれば、イコールフ  ッティングというのは基本的に賛成。 (松尾委員) ○ 優秀な人材確保の視点からいえば、中堅クラスの退職金制度はむしろ優遇しておい  てもらった方がいい。中堅職員を育てていくというのは専門性を高めるために大事。  どういう形にするかは別にして、意見としては中堅職員、リーダーと申しますか、そ  ういう方たちを優遇できるような制度に仕組んでもらえないか。 (岩田部会長) ○ 中堅というと、やはり10年ぐらいと考えればいいのか。 (松尾委員) ○ もっと上でもいい。10年か、15年ぐらい。 (高岡委員) ○ 給付についてはできるだけ現行水準を維持していくということでお願いをしたい。  今回、介護保険事業にかかる公費助成がなくなれば、法人・施設自らが退職金を出し  ていくという状況の中で、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の意義や、将来の在  り方も課題になると認識している。今回は介護保険事業以外のところには余り激変と  いうことはないようにお願いしたい。 ○ 特に改正案にはこだわらないが、現行に近い形で考えていただきたい。 (京極委員) ○ 財政当局を信頼しないわけではないが、例えば3分の2の公費が減ったら、あと3  分の1の施設から出た部分は、例えば介護報酬からカットするとか、あるいは支援費  からカットするとか、そういうことになる。もともと3分の1というのは退職金の根  っこになるかもしれないし、職場の中の福利厚生に使うかもしれない。いろいろなと  ころに使い道がある。それを3分の2の公費助成がなくなったら、あと、残りの施設  側の対応の3分の1の費用を予算からカットしてしまうということになると、これは  また二重にだまし討ちだということになってしまうので、その辺は確認をしたい。 (福祉基盤課長) ○ まさに我々が問題設定しているのは3分の2の助成の部分だけで、それ以外の部分  というのは特段の変更というのは考えていない。介護報酬の世界で言えば、収入と支  出、その収支差というものを見て、随時、改定していくというのが基本で、それが例  えば、独自に退職金を払うにしても、支出としてカウントされていけば、マクロとし  て、事後的な形で報酬の方も対応していくということになるのではないかと思う。 (岩田部会長) ○ 根本的な方向というものがまだ確定できない、あるいは確定することがそもそもあ  り得ないのかもしれないが、そういう時期にあってこういう議論をすること自体、大  変難しいが本日の議論はこれで終了させていただきたい。 ○ 次回、社会福祉法人そのものと、共済制度の見直しについての部会としてどういう  レベルでとりまとめるかということの提案をしたい。今日、出していただいた意見を  過不足なく取り入れ、合意できるところと違う意見というものを書き分けながらまと  めるということになると思う。 (総務課長) ○ 次回は12月8日水曜日の16時から。社会福祉法人制度と退職手当共済制度の見直し  について、意見書の素案を事務局の方で用意し、御議論をいただき、部会としてのと  りまとめをしていただきたいと考えている。併せて、11月30日に生活保護制度の在り  方に関する専門委員会の報告書がとりまとめられる予定なので、その報告書について  も御報告をさせていただきたい。また、次回、意見がまとまらない可能性もあるの  で、予備日として12月14日火曜日15時からを準備している。 (岩田部会長) ○ それでは、本日の部会を終了する。 (照会先)  厚生労働省 社会・援護局 総務課 企画法令係   03(5253)1111(内線2815)