戻る

がん治療領域における専門医制度



日本学術会議
癌・老化研究連絡委員会
癌専門委員会
委員長 鶴尾 隆
(東京大学 分子細胞生物学研究所 教授)


がん治療領域における専門医制度

1.専門医制度;日本の現状

2.がん治療領域における専門医制度の現状

3.がん治療領域における専門医制度への対応

4.がん治療領域における専門医制度への展望


1.専門医制度;日本の現状


日本の現状(歴史)

医学部講座制
 −講座の枠の中では高度のスタンダードとなる医療上の知識・技術を持つことが困難
 −専門医の必要性
専門医制度の導入
 −1962年「指導医制度」
 −1981年「学会認定医制協議会」
 −1986年「三者懇談会」(日本医学会、日本医師会、学会認定医制協議会)
 −1993年「1医師、1診療科、1認定(専門)医」
「21世紀初頭における医療保険制度と医療提供体制についての抜本的改革案」(1997年)
 −「学会認定医制協議会」の発展
 ・2001年「専門医認定制協議会」
 ・2003年「日本専門医認定制機構」(法人格の取得)
 −認定機構・日本医師会・日本医学会の意見を経て厚生労働省が審査・認可
 ・問題点:外形基準は満たしていても内容に問題がある専門医制度を持つ学会もあり得る。


2.がん治療領域における専門医制度の現状


がん領域における専門医制度の現状
他学会の専門医への対応より遅れた。 欧米に比べても著しく遅れている。
 −【原因】
 −大学に腫瘍学講座がない。
 −横断的な学会のみ
 −組織立った対応が遅れた。

がん治療領域における専門医師度の確立
時代・社会・患者の要望に応えることが最優先 エキスパートたちのチーム医療が必要
 −がんの先端医療を提供するために必要な知識・技術は個人の能力を遥かに超えている。
専門化した医師群による医療
 −がん治療は、薬物療法、手術療法、放射線治療などの総合的医療
 −対象がん腫も様々

日本のがん治療の問題点
がん患者に対して、がん専門医が少ない。
 −がん患者(平成14年)  :128万人
 ・死亡数 :30.5万人(死亡率23.8%)
 ・抗癌剤の使用対象(50%) :64万人
 必要とされるがん治療専門医の数  :2万人
 ・1人のがん治療専門医が1年間に抗がん剤を投与する患者数を20‐50人と推定した場合
 日本癌治療学会の会員医師  :1.4万人
臨床腫瘍学教育の欠如
各種学会及び既存あるいは計画中のがん治療専門医制度の問題点
 −複数の専門医育成制度の連携の乏しさ
 −教育を受ける立場の若い医師だけでなく、国民の混乱をも招いている。
主要内科、腫瘍外科の非認知


3.がん治療領域における専門医制度への対応


日本癌治療学会による専門医制度

【目的と特徴】
1995年 第1回臨床腫瘍医制度検討委員会
「全診療科におけるがん治療の共通基盤となる臨床腫瘍学の知識・技術に習熟し、生命倫理に配慮したがん治療に従事する優れた医師の養成」
臨床腫瘍学の基盤的部分を担当
 −がん医療の基盤を担う医師の質と量の保証が日本の危急的課題

【申請資格と認定施設】
申請資格
 −医師免許
 −会員歴5年
 −所属する基本学会の認定医又は専門医の資格
 −5年以上の認定施設におけるがん治療の臨床経験
 −学会発表及び論文発表
 −学術単位合計20以上
 −試験に合格
認定施設(暫定認定申請施設)
 −全国がんセンター協議会参加施設(30施設)
 −地域がん診療拠点病院(87施設)
 −特定機能病院(81施設)
 −暫定がん治療専門医が所属する施設
 −日本婦人科腫瘍学会、日本放射線腫瘍学会、日本臨床腫瘍学会認定施設

【教育カリキュラムと教育セミナー】
教育カリキュラムの作成
教育セミナー
 −1995年から毎年開催

【今後の取り組み】
専門医制度規則、認定試験の最終承認
 −2004年理事会・評議員会・総会
2005年12月 第1回目の専門医認定予定


日本臨床腫瘍学会による臨床腫瘍学専門医制度
教育カリキュラム
 −ASCO、ESMOを参考として日本臨床腫瘍学会専門医研修カリキュラムを整備中、現在最終段階。
教育セミナー
 −目的:臨床腫瘍専門医にとって必要な基礎的、臨床的知識と倫理的臨床試験のあり方を教育し、わが国における薬物療法を中心としたがん診療の質的向上
教科書の刊行 「臨床腫瘍学」
年次総会の工夫
 −教育シンポジウムを充実させ卒後教育の一環とする。
 −ASCO-JSMO 合同シンポジウムによるグローバル化した臨床腫瘍学の教育
 −一般応募演題に対してはディスカッサントがレビューし教育
臨床腫瘍学の実地教育


4.がん治療領域における専門医制度への展望


がん治療領域における専門医制度における問題点
国民の要望
 −がんの診断・治療を受けるための優れた一般医
 −高度な医療知識と技術を持った専門医
がん治療領域の問題点
 −統合的なシステムが存在しない
 −専門医制度への対応の遅れ
 −がんによる死亡は全死亡の1/3を超えている。
 ・国民の健康、福祉を考える上で非常に重要
 ・最上の治療手段を提供することは現在の国、医師の緊急の課題
 −がん治療における専門医制度への対応には温度差がある。
 ・学会の利害
 ・癌治療学会と臨床腫瘍学会は独自に認定する専門医を2005年に認定予定
 >異なる基準による認定医の存在が国民に混乱を招く恐れ


がん治療領域における専門医制度への展望
「国民に対し最良の医療を提供するのは医師の使命であり、緊急の課題である。」
 −がん治療関連全学会の共通認識
 −がん治療領域における統合性を持った専門医制度の確立
 −専門医制度は第一に患者のためのものであって、決して医師、学会の利益のために存在するものでないことを強く認識すべき
専門医制度はどのように構築されるべきか?
 −「日本専門医認定制機構」への整合性
 ・他領域の専門医制度との調和
 「(仮)癌治療専門医認定機構」を作る必要がある。
 ・がん治療領域の横断的かつ統合的専門医制度
 ・構成にはがん治療関連各学会の構成員が加えられるべき
 ・国の学術会議(癌専門委員会)とは別
 ・民間の法人格が望ましい。
 ・癌治療専門医制度の推進に特化した団体(WGで検討)


日本学術会議
癌・老化研究連絡委員会 癌専門委員会

委員長鶴尾 隆 東京大学分子細胞生物学研究所 教授

委員(幹事)前原 喜彦 九州大学大学院医学系研究院 教授

委員今井 浩三 札幌医科大学医学部 教授

委員上田 龍三 名古屋市立大学医学部 教授

委員広橋 説雄 国立がんセンター研究所 所長

委員宮園 浩平 東京大学大学院医学系研究科 教授

委員門田 守人 大阪大学大学院病態制御外科 教授


トップへ
戻る