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参考資料5

災害度係数について


 メリット制は、事業主の災害防止努力の結果を評価して保険率(料)を増減させる制度であることから、事業主の災害防止努力の結果を保険数理的に評価できる範囲でメリット制を適用している。
 現行は、メリット制の対象として、継続事業において年平均1件以上の災害が予想される事業を念頭においており、そのような事業場についての「労働者数」と「労災保険率」との関係式を設定している。

 まず、継続事業について保険料と保険給付額は、それぞれ、
  保険料=(労働者数)×(平均賃金)×(事務費・非業務災害を除く保険率) … (1)
  保険給付額=(労働者数)×(被災率)×(平均給付額) … (2)
と表すことができる。保険の収支均衡の原則から、保険料と保険給付額が等しい、つまり(1)=(2)とすると、
  被災率={(平均賃金)/(平均給付額)}×(事務費・非業務災害を除く保険率) … (3)
という式が得られる。また、被災者数は
  被災者数= (労働者数)×(被災率)
と表せるため、これと(3)式を用いて、1年間の被災者数が1(人)以上となるという前提より、
  被災者数=(労働者数)×{(平均賃金)/(平均給付額)}×(事務費・非業務災害を除く保険率)≧1 … (4)
が得られ、この(4)式を変形すると、以下の関係式が導かれる。
  (労働者数) × (非業務災害を除く保険率)
{(平均給付額)/(平均賃金)}×(非業務災害を除く保険率)/(事務費・非業務災害を除く保険率)
 ここで、最近の給付状況等から、
  平均給付額=861,687円
  平均賃金=2,990,881円
  (非業務災害を除く保険率)/(事務費・非業務災害を除く保険率)=1.42
であるため、
  (労働者数)×(非業務災害を除く保険率)≧ 0.409 ≒ 0.4 … (5)
という、労働者数と保険率の関係式が導かれる。この0.4を災害度係数と呼んでおり、現在、この関係式によって業種別のメリット制の適用範囲を定めている。

 ところで、上記の「年に平均1件の災害が予想される事業」を考えた場合、事業によっては1年間に災害が0件のところもあり、1件、2件(又はそれ以上)のところもあり得るが、統計の理論からは、年に災害1件以上の事業割合は約63%、同時に災害が0件の事業割合は約37%と予想される。それを3年間でみた場合は、3年間で災害が1件以上発生する事業割合は約95%と予想され、偶然、無災害である事業割合は約5%に過ぎない。このため、メリット制においては3年間の災害防止努力の成果を評価することとしているところであり、また、この条件において(5)式を満たす労働者数の事業場は、災害防止努力の結果がほぼ適切に評価されうる規模であるとみなしている。


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