○化学予防の適応となる者
1. | 喀痰結核菌塗抹陽性患者と最近概ね6ヶ月以内に接触があり、感染を受けたと判定された者。 |
2. | 胸部X線上明らかな陳旧性結核の所見(胸膜癒着像や石灰化のみの者を除く)がある者であって、ツベルクリン反応が強い陽性で、結核の化学療法を受けたことがない者。 |
3. | 医学的な結核発病リスク要因を持った者においては、それぞれの要因のツベルクリン反応に対する影響を勘案し、以下の条件を持っており、しかも結核の化学療法を受けたことがない者。 |
3.1 | HIV感染者およびその他の著しい免疫抑制状態の者:ツベルクリン反応の結果にかかわらず胸部X線上結核感染の証拠となる所見のある者(胸膜癒着像や石灰化のみの者も含む)、ツベルクリン反応陽性で感染性結核患者との接触があり結核感染を受けた可能性が大きい者、ツベルクリン反応陰性でも最近感染性結核患者と濃厚に接触した者。 |
3.2 | 免疫抑制作用のある薬剤を使用している者(具体例は註1のとおり):ツベルクリン反応陽性の者、あるいは胸部X線上結核感染の証拠となる所見のある者(胸膜癒着像や石灰化のみの者も含む)、あるいはその他結核感染を受けた可能性が大きい者(例えば年齢が60歳以上の者など)で、医師が必要と判断した者。これらの薬剤による治療は、化学予防が終了した後に導入することが望ましいが、対象疾患の状態によっては化学予防と並行して導入することもやむを得ない。また問題とする薬剤によって適応は弾カ的に考えるべきである。 |
3.3 | 結核の発病リスクは高いが著しい免疫抑制状態ではない者(具体例は註2のとおり):ツベルクリン反応が強い陽性で胸部X線上結核感染の証拠となる所見のある者(胸膜癒着像や石灰化のみの者を除く)。 |
註1: | 副腎皮質ステロイド薬については、1日に10mg以上のプレドニゾロンと同等量の投与を1ヶ月以上予定している場合、同時あるいは可及的早期にイソニアジドの投与を開始する。TNFα阻害剤についてはイソニアジド3週間投与の後開始を考慮する。その他としてはシクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、メトトレキサート、メルカプトプリン、アザチオプリン、ミゾリピン、抗リンパ球抗体、OKT3など。 |
註2: | 糖尿病、塵肺、白血病、ホジキン病、頭頸部癌、重症の腎疾患(透析中の患者を含む)、低栄養(標準体重より10%以上の低体重)、胃切除後、空腸回腸バイパス (参考:American Thoracic Society, Diagnostic Standards and Classification of Tuberculosis in Adults and Children. Am J Respir Critical Care Med 2000;161:1376-1395.Table7) |
[注意]
(1) | ここで「化学療法を受けたことがない者」における化学療法とは正規の抗結核薬の組み合わせを用いて必要十分な期間なされた治療(化学予防を含む)をいう。また化学療法を受けたのが1975年以前の者については「受けたことがある者」として扱うが、より慎重に扱うこととする。 |
(2) | 高齢者では胸部X線上明らかな陳旧性結核の所見がある者であっても、ツベルクリン反応が強い陽性を示さないことがあり、この場合ツベルクリン反応の解釈はより弾カ的に行う。たとえば「強い陽性」の代わりに「陽性」とするなど。 |
日本結核病学会予防委員会による 「さらに積極的な化学予防の実施について」 の 背景
日本における結核は、中高年者中心であって、しかも医学的弱者に偏在する傾向がますます強くなっている。このような中で、抗リウマチ薬として使用されるようになった抗TNFα薬使用時の結核の多発が注目され、早急に注意を喚起し、結核予防策を具体的にたてる必要性も生じた。
1. | 提言のポイント |
(1) | 発病高危険群の増加への対応 |
(2) | 接触者検診における対象者の範囲、特に年齢制限の廃止 |
(3) | 治療方法の選択肢の増加 |
2. | これまでの問題点
|