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船員保険制度の在り方検討会 資料3
平成16年11月29日

仮に船員保険制度の各部門を一般制度に統合するとした場合の論点


論点 これまでの主な意見
〔総論〕  
被保険者数の減少に伴い、保険料収入が減少するなど、厳しい財政状況に直面していることにかんがみ、船員保険制度の今後の在り方をどう考えるか
被保険者数減少の主たる原因は、海運・水産業における国際競争力維持のための外国人船員による日本人船員代替政策および国際協定締結に伴う漁船の減船政策の実施によるものであることから、被保険者数減少に伴う船員保険制度の諸問題はこうした企業経営あるいは国際問題への対応過程で生じていることに留意すべき(被保険者側)

まず、保険者の責任として、船員保険への未加入者、保険料の徴収不足、不適正給付を一掃することが必要(被保険者側)

財政悪化への対応策としては、一般管理部門のコスト削減や保有資産の見直し等が第一に追求されるべきであり、このような策を何ら講ぜずして、保険料率の引き上げや保険給付の引き下げ等による安易な制度の見直しを行うことには反対(船主側)

財政上の問題を解決するために、各部門をそれぞれの一般制度に統合することも一つの選択肢であるが、総合保険制度の特色を生かしながらその存続を図る方策を講じることも考えうる(被保険者側)

船員保険が総合保険制度であることは保険料を一元的に徴収することを可能としているが、仮に一般制度と統合した場合、保険料徴収が陸上労働者以上に多元化することも想定され、それに伴う収納率への影響や船舶所有者の保険料徴収・納付事務に伴う負担増が懸念される(被保険者側)

船員保険事業の運営状況を広く開示し、透明性を確保するべきである(船主側)

船員保険制度の今後の在り方の検討については、拙速を避け、十分に裏付けがなされた資料の分析に基づき慎重に検討を行うべきである(船主側)
〔職務上疾病・年金部門〕  
仮に一般制度に統合するとした場合の財政問題
職務上年金部門の積立不足は、船主債務の一部を将来に繰り延べることで一時的な負担軽減が継続的に図られてきた一方で、リストラにより被保険者数が減少し続けてきたことが原因である(被保険者側)
 ・ 労災制度と船員保険制度の職務上年金部門の間には積立方式の相違があり、労災制度に統合する場合は、統合の時点において存在する受給者への将来にわたる給付との関係で、相当な水準の積立金を保持しているか、又は保険料率を大幅に引き上げることが必要となるおそれがある

 ・ 労災制度においては、「業種」ごとに保険料率を設定しているため、他の「業種」との間で財政的な融通がないとすれば、統合により財政問題の改善のための船舶所有者の負担が軽減されるわけではないのではないか

 ・ そもそも「船員」が労災制度において独立の「業種」として取り扱われるかどうか
 
仮に一般制度に統合するとした場合の、船員保険制度における独自・上乗せ給付の取扱い(船員法・ILO条約との関係)

 ・ 仮に独自・上乗せ給付の切り下げを行った場合、日本が批准しているILO第147号条約に抵触するおそれがあるのではないか

 ・ 独自・上乗せ給付は、船員法に基づく船舶所有者の災害補償責任を危険分散している面があるため、仮に独自・上乗せ給付を切り下げるとすれば、船員法の改正が必要

 ・ 現行の労災法では特定の「業種」について独自・上乗せ給付を行っている例はない
船員法、ILO条約との関係で、単純な給付の切り下げは困難(被保険者側)

厳しい労働・船内環境による肉体的負荷を長期にわたり伴う、乗船中に療養の給付を受けることが困難である、離家庭性を余儀なくされる等の「船員の特殊性」は、職務上部門の給付においても、職務外疾病部門の給付においても反映されるべきである。仮に統合により一般制度並の給付に揃えるのであるならば、船員の特殊性との均衡を図るため保険料負担は相当程度軽減されるべき(被保険者側)
〔失業部門〕  
仮に一般制度に統合するとした場合の、給付対象者の範囲(現行制度では、短時間労働者、高齢労働者等の取扱いが両制度の間で異なっている)
船保失業部門は船員雇用政策の政策手段の一つであるから、政策手段の変更が政策目的のあり方を左右するような議論の逆転は適切ではない。船員雇用促進事業については船員労働の特殊性を踏まえた船員雇用政策の一つであり、仮に一般制度へ統合する場合であっても、船員労働の特殊性を踏まえた実効的な政策を確保すべき(被保険者側)
 ・ 高齢者に対する失業給付については60歳までに退職するのが一般的であるとの前提に立った給付設計となっており、仮に雇用保険制度に統合した場合には、船員の退職年齢等を考慮すると受給者の減少や給付水準の低下となるのではないか
 

仮に一般制度に統合すれば、被保険者期間の海陸通算が実現することをどう考えるか
被保険者期間の海陸通算は、一般制度に統合するしないにかかわらず、早急に実施すべき。二国間の社会保障協定が推進されている状況がある中で、国内問題である制度間財政調整の仕組みや被保険者記録の管理事務の創設にあたり、具体的にどのような問題点があるのか解明がなされていない(被保険者側)
〔職務外疾病部門〕  
仮に一般制度に統合するとした場合の、適用除外等の範囲(現行制度では、日雇労働者、短期雇用者等の取扱いが両制度の間で異なっている)
 
仮に一般制度に統合するとした場合の、船員保険制度における上乗せ給付の取扱い
一般制度並びの給付に揃えたとしても直ちにILO条約に抵触するものではないとの考え方は、ILO条約における実質的同等性の確保を危うくするものである(被保険者側)
 ・ 仮に上乗せ給付を切り下げるとした場合、ILO第56号条約等の個別の条項が求める給付水準との関係では問題を生じないが、全体としての「実質的同等」に与える影響については議論がありうる
厳しい労働・船内環境による肉体的負荷を長期にわたり伴う、乗船中に療養の給付を受けることが困難である、離家庭性を余儀なくされる等の「船員の特殊性」は、職務上部門の給付においても、職務外疾病部門の給付においても反映されるべきである。仮に統合により一般制度並の給付に揃えるのであるならば、船員の特殊性との均衡を図るため保険料負担は相当程度軽減されるべき(被保険者側)
仮に一般制度に統合すれば、保険料負担が軽減することをどう考えるか
職務外疾病部門の給付費に対する国庫負担は、政府管掌健康保険と比較して公平でない(被保険者側)

政管健保については現在制度改革の途上にあり、保険料負担の今後のあり方については不透明であることから、一般制度への統合によって保険料負担が軽減されるかどうかは不確かである(被保険者側)
〔福祉事業部門〕  
一般制度に統合した場合の福祉事業の問題点等について
船員福祉施設のあり方については、船員福祉等の後退につながらないよう慎重に対応すべき。その他、新たな検討会の場で、あらためて意見開陳したい(被保険者側)
財政悪化に対する対応策の一つとして、福祉事業の見直しが行われるべきであり、船員保養施設のあり方および委託事業など福祉事業全般について、今日的意義に照らした事業内容の評価および費用対効果の観点からの検討を踏まえた上で、必要に応じた見直しが行われるべきである(船主側)


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