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船員保険制度の在り方検討会 資料1−1
平成16年11月29日

ILO条約と船員法及び船員保険法の関係


【国際労働基準(ILO条約)】
   ILO条約は、労働者に関する労働条件を保護するための国際労働基準であり、船員に関しては陸上労働者とは別に条約が定められている。
 例えば、
海員の疾病、傷痍又は死亡に於ける船舶所有者の責任に関する条約(第55号)
海員の為の疾病保険に関する条約(第56号)
商船における最低基準に関する条約(第147号)
船員のための社会保障に関する条約(第165号) 等


【社会保障に関する条約について】
   社会保障に関する条約のうち、第55号条約及び第56号条約については批准していないが、我が国が批准している第147号条約(商船における最低基準に関する条約)の第2条において、
第2条 この条約を批准する加盟国は次のことを約束する。
 (a)  自国の領域において登録される船舶に関し次の事項について定めた法令を制定すること及び附属書に掲げる条約を実施する義務を負っていない場合には当該法令が附属書に掲げる条約又は条約の条と実質的に同等であることを確認すること。
  とされている。
 この条約の附属書に掲げる条約として、
 ・  ILO第55号条約(海員の疾病、傷痍又は死亡の場合に於ける船舶所有者の責任に関する条約)
 ・  ILO第56号条約(海員の為の疾病保険に関する条約)

が挙げられており国内法令が当該条約と実質的に同等であることが確認されなければならない。


【実質的同等性の説明】
   ILO憲章第22条に基づく報告のなかで、上記の社会保障に関する条約については、「各条約又は条約の特定の条項と国内法令との間に細部において差異があるものの、全体としては同等であり、実質的同等は確保されているといえる」と報告されているところ。(別添参照)


【ILO第55号条約、船員法、船員保険法の関係】

条約 船員法 船員保険法
医療及び生活の維持
 疾病又は負傷に対し、治癒または永久的性質となるまでの間、医療の費用を支弁すること(第4条1)
 この船舶所有者の責任は、国内法令により負傷又は発病の日から16週をくだらない期間に制限できる(第4条第2項)
療養補償
職務上 負傷又は疾病治癒まで
(第89条第1項)
職務外 下船後3箇月の範囲内
(第89条第2項)
療養の給付(第28条)
・職務上  負傷又は疾病の治癒まで10割給付
・職務外  負傷又は疾病の治癒まで7割給付
(ただし、下船後3箇月の範囲内において職務上の疾病等と同様の給付
医療及び生活の維持の内容
医療並びに適当且充分なる薬剤及び治療材料の供給(第3条(a))
食糧及び宿泊(第3条(b))
療養の範囲(第90条)
 診察、薬剤又は治療材料の支給、治療及び治療に必要な自宅以外の場所への収容(食糧の支給を含む。)等
療養の給付の範囲(第28条)
 診察、薬剤又は治療材料の支給、治療及び自宅以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給等
休業補償
職務上、職務外に関わらず疾病又は傷病により労務不能となった場合
船内にいる間は給料を全額支払うこと(第5条第1項(a))
被扶養者を有する場合は治癒又は障害が永久的性質のものとなるまでの間給料の全額又は一部を支払うこと。ただし、国内法令により16週をくだらない期間に限定できる(第5条第1項(b)、第2項)
傷病手当(第91条第1項)
職務上の疾病又は負傷に限り支給
4箇月の範囲内は標準報酬月額相当額を支給
4箇月後治癒まで標準報酬月額の6割を支給

予後手当(第91条第2項)
 負傷又は疾病が治癒後標準報酬月額の6割を支給
傷病手当金(第30条)
職務上疾病又は負傷の場合4箇月の範囲内において標準報酬日額相当額を支給、4箇月後職務に服することができるまで標準報酬日額の6割を支給(第2項第1号)
職務上疾病又は負傷の場合治癒後1箇月標準報酬日額の6割を支給(第2項第2号)
職務外疾病又は負傷の場合労務に服することができるまで(3年を限度)標準報酬日額の6割を支給(第2項第3号)
葬祭料
 海員が船内において死亡した場合または船舶所有者の責任において医療及び生活維持を受ける権利を有する者が死亡した場合は埋葬費を支払うこと(第7条)
葬祭料(第94条)
 船員が職務上死亡した場合標準報酬の月額の2箇月分に相当する金額を支払う
葬祭料(第50条ノ9)
 職務上、職務外に関わらず被保険者が死亡した場合に支給


【ILO第56号条約、船員法、船員保険法の関係】

条約 船員法 船員保険法
適用対象者(第1条第1項)
 海洋航行又は海上漁業に従事する船舶に使用せらるる一切の者は、強制疾病保険制度に依り保険せらるべきものとす。





船員第1条では総トン数5トン
未満の船舶、湖・川又は港のみ
を航行する船舶、総トン数30
トン未満の漁船等は除かれて
いる。





被保険者(第17条)
 船員法第1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者
疾病の為労働不能と為り且給料の支払を停止せられたる被保険者は、26週又は180日の労働不能期間、現金給付を受くる権利を有する。(第2条第1項)
数日の待期を条件とすることができる。(第2条第2項)
 
傷病手当金(職務外 第30条)
受給した日から3年までを限度に標準報酬日額の6割を支給
(第30条第2項第3号、第31条)
待期期間 なし
 保険給付を受くる権利は、最後の雇入契約の終了後一定期間中に発生する疾病に付ても存続すること。(第7条)




・雇入契約の終了後も船舶所有者
と雇用関係がある場合は、船員法
第1条の予備船員に該当。(第1条、
第2条第2項)




船員法第1条の船員は保険給付の対象。(第17条)

船員法第1条の船員に該当しない場合は他の公的医療保険が強制適用される。


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