審議会議事録  厚生労働省ホームページ

第12回目安制度のあり方に関する全員協議会議事録


1 日時 平成16年11月26日(金)15:30〜16:10

2 場所 厚生労働省専用第17会議室

3 出席者
 【委員】 (公益委員)  今野 浩一郎
 岡部 晃三
 勝   悦子
 中窪 裕也
 古郡 鞆子
 渡辺   章

(労働者側委員)  弥富 洋子
 加藤   昇
 中野 治理
 山口 登守
 横山 陽子

(使用者側委員)  池田 朝彦
 内海 房子
 川本 裕康
 杉山 幸一
 東條 初惠
 原川 耕治

 配付資料

資料 中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告案
 (1〜6ページ(PDF:457KB)  7〜13ページ(PDF:488KB)

 議事内容

○渡辺会長
 ただ今から、「第12回中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会」を開催いたします。本日は、目安制度のあり方に関する全員協議会報告案について、労使各側でご検討いただいた結果をそれぞれご披露いただき、ご審議をいただきたいと思います。
 お手元の資料に即し、「表示方法及びランク区分のあり方について」、労働者側から検討結果のご披露をお願いいたします。

○加藤委員
 ランク制度については、ランクごとに引上げ額を示すという表示方法を含め、現行の枠組みを当面維持することとなっておりますが、一方で、地域別最低賃金についての表示単位期間が、時間額単独表示方式に移行した影響などから、今後、ランク制度が本来持っている役割が引き続き発揮できるかどうか懸念される面もあります。したがいまして、5年後の見直しに当たっては、目安制度が十分に機能発揮するようなランク制度の評価、表示方法の抜本的なあり方などについても改めて検討することが必要になるのではないかという課題認識を持っております。
 そうした課題認識の上で、本報告案について了承したいと思います。なお、報告案に示された新しいランク区分については、各ランクへの振り分けに当たって、3つの要素を総合勘案した結果としての取りまとめである、という受け止めをさせていただき、これについても報告案を了解したいと思っております。

○渡辺会長
 ありがとうございました。次に、使用者側からお願いいたします。

○杉山委員
 私どもも基本的にランク設定の必要性という点については、必ずしも全体で同一意見ということではないのですが、当面ということでいきますと、このランク制度を維持することが適当と思います。また、5年後の見直しについても触れられておりますし、最低賃金制度のあり方に関する研究会も設置されていることから、課題は将来に残して、当面はこれでいくという点については、問題がないということです。
 各ランクの振り分けですが、個々の指標をみるとおかしいという意見も一部にありますが、全体を足してプラス・マイナスし平均されるのだという観点で、過去のやり方を引き継いでいくということで了解します。したがって、この数値そのものについての課題は残っていると思いますが、今回、これで振り分けられた結果、結果的に上がる県ばかりということになりましたが、これもこれでやむを得ないと思います。

○渡辺会長
 ありがとうございました。労働者側、使用者側、各側とも公益委員案を了承していただきましたので、1の「表示方法及びランク区分のあり方について」は、お示ししてあります原文のままということにさせていただきます。
 次の「賃金改定状況調査等参考資料のあり方について」、労働者側から検討結果のご披露をお願いします。

○加藤委員
 報告案を了承したいと思います。特段のコメントはありません。

○渡辺会長
 次に、使用者側、お願いします。

○杉山委員
 新しいやり方でやむを得ないと考えております。

○渡辺会長
 この件についても、労使各側とも、公益委員案を了承していただきましたので、「賃金改定状況調査等参考資料のあり方について」は、原文でお示ししたとおりとさせていただきます。
 次に3つ目の議題であります「改定審議のあり方」についてです。前回労働者側から意見が出され、修正案を検討することとされていました。この件について、その後の経緯を含め事務局からご説明をお願いいたします。

○前田賃金時間課長
 前回全員協議会において、この改定審議のあり方について労働者側から、「行政コストの観点からも」という表現に違和感がある、この報告書に載せるのはふさわしくないのではないかといったご意見があり、前回の審議の中で、「しかしながら」の前に「一方」という形で、労働者側の意見を入れるような修文を検討してはどうか、ということになっておりました。事務局としては会長ともご相談し、修文を検討したところです。ところが、3の「改定審議のあり方」については、次の4の「金額水準について」と若干文章の構成が異なっており、「しかしながら」以下がそれまでの意見に対する反論ということになっており、かつ、ここについて協議会としての結論という形の構造になっております。
 したがって、この中に「一方」という形で労働者側の主張を入れることについては、結局、この結論部分と重複してしまうため、適当な修文が困難な面があるということ、また、全体の文章の流れというか、趣旨が若干変わってしまうような印象にもなるということで、修文が難しいということです。そういった観点から、今一度ご検討いただきたいと考えております。

○渡辺会長
 ただ今の事務局の説明について、ご意見がありましたらお願いします。

○加藤委員
 ただ今の提案の趣旨については理解いたしますが、1点要望させていただきたいと思っております。
 前回、私どもが申し上げた趣旨と同様ではありますが、この協議会は最低賃金行政に関わるものであり、中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告に「行政コストの観点からも」という表現が入ることには、ちょっと違和感があると申し上げますか、適切ではないと思っております。当然のことながら協議会における労使の各委員のご意見は、お互いに尊重されるべきものとの立場に変わりはありません。
 そうした観点で考えますと、仮にこの文言がなくても、3頁下12行から下6行目までの趣旨が十分に伝わるのではないかと思われますので、労働者側としては、「行政コストの観点からも」の11文字について、改めて削除のご検討をお願いできないかというのが私どもの意見です。

○渡辺会長
 ただ今、ご意見が出ましたが、「しかしながら」の前の数行は使用者側の意見を要約をしたということでもありますので、ただ今の意見について、使用者側で、ご意見がありましたらお願いします。

○原川委員
 ただ今、削除というご意見でしたが、結論から言えば、私としては到底受け入れられないものです。これまで何回か「改定審議のあり方」について議論し、最低賃金行政は非常に重要なものであるということは私も同感です。一方、最低賃金制度は国の政策の1つでもあります。そのような中、最少の行政コストで最大の効果を上げることは当然求められるべきものであります。行政コスト的な面をタブーにすることはいかがなものでしょうか。
 何回も申し上げておりますが、最近の賃金決定構造が変化をしてきていることを考えますと、必ずしも毎年改定審議を行うことについて、その年の大きな変化が認められれば当然考えるべきでしょうが、ある一定の変化内に収まるような場合には、これを2年に1回行うことでも支障は少ないのではないでしょうか。地方でもこういった意見は根強いものがあります。そういうことが可能であれば結果として行政コストの削減にもつながると申し上げているわけです。
 前回、改定審議に要する行政コストの額が分からない、金額を提示せよなどとするご意見もありましたが、はっきり言って、金額はどのくらいかは分かりません。しかし、毎年膨大なエネルギーと費用を要していることは中央最低賃金審議会委員の我々でも容易に想像できることでもあり、中央最低賃金審議会と47県の地方最低賃金審議会において改定審議を行うということになれば、行政コストが掛かっているのは当然であろうかと思います。金額を示さなければ根拠がないと言われるのでしたら、逆に、それを否定するような根拠を示していただきたいと考える次第です。
 使用者側の総括意見は、後ほど杉山委員から発表します。

○山口委員
 今の発言を聞いて、いつも思うのですが、賃金決定機構の変化と実態上の賃上げの結果は明らかに違っていると思います。我々が懸念するのは、確かに、今、成果主義なり、能力主義が大企業を中心に導入されております。ましてや定期昇給制度があると、ベア要求という観点からは本来の賃金水準の変化が見えづらい。一般的に、最低賃金が対象としている事業所に賃金決定のルールがない。こうした中小企業を中心に何とかしなければいけないというときに、今までのように平均賃上げ方式で、1つの数字で全体が見渡せる状況であればいいのですが、それがなくなりつつある中では、より重要になってきていると我々は認識しています。今、原川委員が言われたことで、行政コストの観点は、結果としてそれがなくなればいいと思う。削除する理由としては、必要なものがなくなっていくような印象を与える文言は良くないのではないかと主張しているわけです。そういう点では、原川委員が言われたような結果としてという観点なり、賃金決定構造の変化という意味からは、どうも承服しかねます。

○杉山委員
 この改定審議のあり方についての全体の報告案は、前段に私どもが述べた意見が出ており、結論で「しかしながら」ということになります。この点について私どもの実情を申し上げますと、「しかしながら」では困る。2年に1回提示をする時代になっているのではないかという意見です。これは原川委員がたまたま主張されたので、あたかも中小企業だけにあるような印象がありますが、そうではなく大企業の中にもあります。事実、2年に1度しか労使交渉をしないというところもあります。
 要は、低成長時代になった現在において、そういう経済の中における賃金決定というのは、ごくわずかなものを毎年論議するのではなく、あるまとまった単位、アメリカの場合は3年の単位でやるのが多いようですが、そういう単位で論議をするべきではないか。なぜ2年に1回かということになると、これはエネルギーの問題、コストの問題です。やはり、無駄なことは節約したほうがいいのではないかというところで、コストの問題が出てきます。
 そうではなくて、非常に低いということは、逆にある意味ではきつすぎる内容でもあります。やはり行政コストという理由が出てこざるを得ない文章構成になっておるのではないかと私どもは考えております。私どもは結論として、毎年改正審議を行うという点についてはこれでいいと思う。しかし、私どもの中に強い意見があるということを何とか書いていただいたということで了解した。

○渡辺会長
 この報告のそれぞれの問題について、全員協議会としては何度か議論をして大詰めにきている段階でもあります。何とか最終的に、委員の皆様のご了解のもと、5年に1回の報告を出すという段階ですので、私の方からも労働者側の方々にお願いしたいことがあります。それは前段の行政コストの観点を入れた意見は、今ほどの杉山委員の発言のとおり、後段の「しかしながら」以下の部分において、「今後の最低賃金制のあり方について」の昭和52年答申を踏襲し、毎年中央最低賃金審議会が目安を示すことが適当であると結論付けているという構成になっています。
 したがいまして、「しかしながら」以下の部分が全員協議会の結論であるということは、その結論に至る過程で、使用者側から行政コストの観点も含めた意見が出たということで、報告書としては原文のままで了承していただけないかと考えますが、いかがでしょうか。

○加藤委員
 会長からご提案がありましたが、私どもも報告案をまとめる段階にきていることは十分認識しております。ただ、誤解のないように一言だけ言っておきますと、要するに文章の組立てが、使用者側の意見を記述し、それを踏まえた形で文章が構成されていることについては十分理解をしているつもりです。私どもがこだわったのは、「行政コスト」という言葉は結構重い言葉でありますし、それなりに十分な議論が必要な言葉だと思っております。使用者側の意見として整理をしている3頁下12行目から下6行目までを削除してくれ、と言っているわけではないのです。それほど重い言葉なので、仮に「行政コストの観点からも」という箇所がなくても十分にその内容が伝わるのではないかという思いで提案をさせていただいたのですが、会長からのご指摘でもありますので、もしお許しをいただければ、私どもは、事前に打合せなどをしてまいりました関係もありますので、短時間で結構ですので、労働者側に打合せをする時間をいただけないでしょうか。

○渡辺会長
 労働者側が集まって打合せをしたいとのことですから、しばらくの間中断ということにします。

(中断)

○加藤委員
 労働者側で打合せをしました。次回、12月に報告取りまとめを予定している関係上、今回、取りまとめに向け、一定程度の方向性を示すことが必要であると思っており、そうした観点から了解したいと思います。先ほども申し上げましたとおり、「行政コスト」という言葉は非常に重い言葉で、この言葉の与える影響、最低賃金行政に与える影響というのは、場合によっては大きく計り知れないと思っております。地方最低賃金審議会も含めて、報告書に載ったからといって、この言葉が一人歩きして、いたずらに混乱を起こさないようご配慮をお願いしたい。そうした上で、原案については了解したい。

○渡辺会長
 ただ今の加藤委員からご意見のありましたとおりですので、3の「改定審議のあり方」については、報告案は原文のままということにさせていただきます。
 それでは、4の「金額水準について」ご意見がありましたらお願いします。

○加藤委員
 最初に私から簡単に申し上げて、ほかの委員から意見等があれば、ご発言をお願いします。結論から申し上げますと、報告案を了承したい。
 その上で要望を申し上げますと、我々も報告書に記載されているように各種資料に基づいて、最低賃金の機能が適切に発揮されるように審議することが大切だと考えております。そうした観点から、今後毎年の目安審議に当たっては、労働者側のかねてからの主張でもありますとおり、適正な最低賃金の水準について十分審議が尽くされることが重要だと考えております。

○中野委員
 私の方も要望ですが、何点か申し上げたいと思います。水準決定に当たって、支払能力が最低賃金決定の主要な要素になっているのは、寡聞ながら先進国の中では日本だけではないかと思っています。また、最低賃金法における支払能力の考え方というのは、適用対象となる地域や産業において、正常な経営をしていく場合に通常の事業に期待することのできる賃金経費の負担能力と理解しております。したがって、個々の企業の支払能力のことではないと思います。
 しかしながら、目安審議の中では、個々の企業も含めたとされるような議論もあり、なかなか支払能力の対象が明確になった議論がなされていないように感じております。また、生計費についても、日本では若年単身者を対象にした生計費で考えておりますが、外国では、例えばアメリカの場合では、3人世帯の貧困層において最低賃金制度を考えるようになっており、違いがあります。さらに、毎年の賃金改定というのは、毎年の賃金に基づいて適正に行われてきたと思っていますが、目安制度が運用され始めて20年余りたちますが、毎年適正だったと思っていたものが積み重なることによって、多少の誤差が積もり積もっていくことにより、最低賃金水準の実効性を疑わせる事態に立ち至っているのではないかと思います。
 したがって、来年以降の目安審議においては、これらの観点を十分にお考えいただいて審議に努めていただくようにお願いをしたいと思います。

○渡辺会長
 ほかにありませんか。 要望として述べられた意見はありましたが、この報告案自体についての修正はないようですので、原案のままとさせていただきますが、よろしいでしょうか。

(了承)

○渡辺会長
 全員協議会報告案について、全体として原文のとおりとする、とさせていただきたいと思います。特に委員の皆様からこの際ということで、ご意見はありますでしょうか。 特にないようですので、本日はこれで終わりたいと思います。 次回の全員協議会においては、本日いただきましたご議論を踏まえ、事務局に最終的な報告書としての体裁を整えていただき、全員協議会報告を取りまとめる、ということにしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

(了承)

○渡辺会長
 ありがとうございました。それでは、次回の全員協議会について確認をさせていただきます。12月15日(水)午前10時から厚生労働省専用第21会議室において開催します。議題は、全員協議会報告の取りまとめです。なお、報告が取りまとめられれば、全員協議会終了後に、中央最低賃金審議会に報告をするという手順になります。
 これで第12回目安制度のあり方に関する全員協議会を終わります。本日の署名は、中野委員と池田委員にお願いいたします。どうもありがとうございました。




(照会先)
 厚生労働省労働基準局賃金時間課指導係(内線5532)


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