戻る

ライフサイエンス分野の動向と文部科学省の取組み



平成16年11月26日
文部科学省研究振興局
ライフサイエンス課長
佐伯 浩治



我が国の科学技術関係予算の推移

(単位:億円)
年度
項目
平成14年度 平成15年度 平成16年度
政府全体の
科学技術関係経費
35,444
(対前年度+2.2%)
35,974
(+1.5%)
36,255
(+0.8%)
うち一般会計中の
科学技術関係費
18,529 18,852 29,663
うち特別会計中の
科学技術関係費
16,915 17,122 6,592
(参考:国の一般歳出予算) (47.5兆円) (47.6兆円) (47.6兆円)

注)1. 各年度とも当初予算額。
2. 平成16年度については、従来の国立学校特別会計(15年度限りで廃止、一般会計へ移行)における科学技術関係予算に相当する金額を含む。



我が国のライフサイエンス関係予算

平成16年度における政府全体のライフサイエンス分野関係予算は総計4,362億円(4,270億円)
  うち文部科学省は2,048億円(1,916億円
 (競争的資金、独立行政法人分を含む)

内閣府推計値<平成16年3月>
平成16年度ライフサイエンス関係予算(総額4,362億円)のグラフ
平成16年度ライフサイエンス関係予算(総額4,362億円)



我が国のライフサイエンス政策

科学技術基本計画(総合科学技術会議 平成13年4月)
  重点4分野の設定(ライフサイエンス、情報通信、環境、材料・ナノテクノロジー)
ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について (科学技術・学術審議会 平成14年6月)
  ゲノム科学、脳、発生・再生など重要研究領域の研究開発計画
バイオテクノロジー戦略大綱(BT戦略会議 平成14年12月)
「生きる」、「食べる」、「暮らす」の向上
  研究開発の圧倒的充実、産業化プロセスの抜本的強化、国民理解の徹底的浸透
  基礎研究の充実
  日本が強みを持つ分野に重点的に投資
 テーラーメイド医療、再生医療、タンパク質構造・機能解析、脳研究等
第3次対がん10ヵ年総合戦略(平成15年7月)
  がんの本態解明の推進、トランスレーショナルリサーチの推進等



ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について


科学技術・学術審議会
 平成14年6月策定


推進方策の策定の背景
 ・ ヒトゲノム解読の進展
 ・ 脳、がん、免疫、再生等の研究の進展

文部科学省における研究開発実施計画



ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について
(平成14年6月)
ゲノム配列解読の進展
現状
脳、がん、再生、免疫等
の研究進展
1.ライフサイエンス分野の研究開発の基本的考え方
ライフサイエンスの意義と重要性
生命の仕組みの解明への挑戦
医療、環境、食料等の分野における画期的な技術開発の創出
新しい発見や研究成果を積極的に発信し、生命活動の意義や重要性を広く伝達
ライフサイエンスを取り巻く状況と研究進展の状況
ヒトゲノム解読の進展は、各種疾患の根本的治療、個人個人の差に基づく医療の実現に貢献
生物現象は、特定の層のみの研究からでは、全体は解明されないことが判明
我が国の研究開発の活動の主な特徴
ゲノム科学や脳機能解明、発生分野等は世界的レベル
基盤的技術開発、応用開発研究、臨床研究は十分でない
研究環境は、海外の優れた研究者をひきつけるほどの魅力を有していない
研究成果の産業化・実用化は、国家的・社会的要請に対応した研究開発の出口として重要
適切な知的財産権の設定、研究実施面における社会的・倫理的配慮が必要
2.個別研究開発計画及びその推進方策
領域毎の重要研究開発課題
生物系研究領域(自由発想型研究・発掘型研究の推進)
ゲノム研究領域(比較ゲノム、タンパク質、医学医療応用等の推進)
発生・再生研究領域(発生遺伝子、幹細胞研究、再生研究等の推進)
脳研究領域(脳を知る・守る・創る・育むの研究推進)
がん研究領域(がんの総合的解明、診断・治療・予防の研究推進)
免疫・アレルギー・感染症その他疾患研究領域
(免疫系の総合的理解、遺伝・環境要因の解明、感染症の統合的解明、老化メカニズム等の研究推進)
植物・環境・食料研究領域(環境ストレス耐性、耐病性解明、植物機能の高度利用研究、微生物による環境浄化研究の推進)
研究開発基盤強化及び環境整備
バイオリソースの整備(体系的なリソース開発供給等の推進)
新領域創生・先端技術の開発(異分野の融合、研究教育センターの創設等の推進:バイオインフォマティクス、システム生物学等)
研究開発基盤の整備(研究・教育体制の充実、人材の育成確保、競争的資金の整備充実)
背景
学術審議会「大学等におけるバイオサイエンス研究の推進について」(H12.2)
科学技術会議「ライフサイエンスに関する研究開発基本計画」(H9.8)
科学技術基本計画(H13.3)ライフサイエンスは、特に、重点を置き優先的に研究開発資源を配分する分野の一つ
総合科学技術会議「分野別推進戦略」(H13.9)



研究推進の基本的・戦略的目標の図



ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について
ー重要領域及び課題ー


生物系研究領域
  自由発想型研究・発掘型研究
ゲノム研究領域
  比較ゲノム、タンパク質、ネットワーク、SNPs、医学医療応用等
発生・再生研究領域
  発生遺伝子、幹細胞研究、再生研究、医学医療応用等
脳研究領域
  脳を知る・守る・創る・育むの研究推進
がん研究領域
  がんの総合的解明、診断・治療・予防の研究推進
免疫・アレルギー・感染症その他疾患研究領域
  免疫系の総合的理解、遺伝・環境要因の解明、感染症の統合的解明、老化メカニズム等
植物・環境・食料研究領域
  環境ストレス耐性、耐病性解明、植物機能の高度利用研究、微生物による環境浄化研究の推進



ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について
ー研究開発基盤強化および環境整備ー


バイオリソースの整備
  体系的なリソース開発供給等の推進
新領域創生・先端技術の開発
  異分野の融合、研究教育センターの創設等の推進:バイオインフォマティクス、システム生物学等
研究開発基盤の整備
  研究・教育体制の充実、人材の育成確保、競争的資金の整備充実



文部科学省の取り組みの基本的考え方

文部科学省の取り組みの基本的考え方の図



文科省ライフサイエンス関係予算内訳
平成16年3月時点の推計

平成16年度予算額 2,048億円(競争的資金、独立行政法人分を含む)


文部科学省ライフサイエンス予算の内訳

文部科学省ライフサイエンス予算の内訳のグラフ



戦略的研究分野と文部科学省の取組

ゲノム科学研究
  ゲノムネットワーク研究の戦略的推進(平成16年度新規施策)
  個人の遺伝情報に応じた医療(テーラーメイド医療)
  ゲノム科学総合研究センター(理研)、遺伝子多型研究センター(理研)等
タンパク質研究
  タンパク質構造・機能解析(「タンパク3000プロジェクト」)
  ゲノム科学総合研究センター(理研)等
発生・再生研究
  再生医療の実現化
  発生・再生科学総合研究センター(理研)等
脳研究
  脳科学総合研究センター(理研)、「脳と教育」(JST)
免疫・アレルギー研究
  免疫・アレルギー科学総合研究センター(理研)等
がん研究
  「第三次対がん10か年総合戦略」の推進
(本態解明、トランスレーショナルリサーチ(平成16年度新規施策)、重粒子線治療等)
植物科学研究
  植物科学研究センター(理研)等
バイオインフォマティクス研究
  バイオインフォマティクス推進センター(JST)等



ゲノムネットワーク研究の戦略的推進

平成16年度予算 3,000百万円
図
■ゲノム機能情報の解析
集中的な解析
 平成16年度 1,000百万円(運営費交付金中の推計額)
大規模な解析施設を有する理化学研究所において、プロモーター領域、転写因子間相互作用などの、ヒトゲノム機能情報を集中的に解析。
課題指定による解析
理化学研究所でカバーできない重要な解析、プロジェクト共通リソースの整備などを推進委員会の決定に基づき実施。
公募による解析
集中的又は課題指定による解析を、さらに強化・補完する解析を公募し、実績や優れた技術を持つグループの力をプロジェクトに結集する。
■次世代ゲノム解析技術の開発
現在の技術を遥かに凌駕するような解析技術の開発を行い、短期間で実用化を目指し、公募により選定。成果はゲノム機能情報の解析等に還元。
■個別生命機能解析
個別の生命現象に焦点を当てたネットワーク解析を実施する。公募により研究課題を採択。
■ヒトゲノムネットワークプラットフォーム
ゲノム機能情報や既存のゲノム情報を遺伝研において有機的に統合し、個別生命現象の研究に活用する。



ゲノムネットワークプロジェクト事業図



今後の推進方策について

基礎研究とニーズ対応型研究とのバランス
研究開発拠点の整備とそれを核とした展開
感染症等の社会的重要度の高い課題への対応
人材の育成
関連する知的基盤の整備
成果の展開
産・学・官の連携(柔軟な研究協力 etc)
国民理解の促進



重点4分野(ライフサイエンス分野)の研究開発の更なる推進
平成17年度概算要求額:1,078 億円
平成16年度予算額:814億円
ライフサイエンス研究推進の
基本的考え方
生命の仕組みの統合的理解を目指すとともに、その成果を社会・経済の発展に向け積極的に活用

各国におけるポストゲノム研究の進展など、国際競争を意識した戦略的な研究開発の推進



新興・再興感染症への対応等、安心・安全な生活を実現する研究開発の推進

ライフサイエンス研究にブレークスルーをもたらす革新的な新技術の開発

 (参考)
我が国のライフサイエンス関係予算は、米国NIH予算の約1/7(我が国が約4300億円に対し、米国は約3兆円)
「平成17年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」
(H16.5)〔総合科学技術会議〕
「第3次対がん10か年総合戦略」
(H15.7)〔文科省・厚労省〕
「バイオテクノロジー戦略大綱」
(H14.12)〔BT戦略会議〕
「ライフサイエンスに関する研究開発の推進方策について」
(H14.6)〔文科省〕
平成17年度 重点化施策
(新規施策)
社会のニーズを踏まえたライフサイエンス分野の研究開発
ライフサイエンス分野のうち、特に社会的に緊急の対応が求められる課題について公募により研究開発を実施。
図
┌┐
継続施策
└┘
ゲノム科学等の成果を活用した医療の高度化に資する研究開発の推進
◆ゲノムネットワーク研究の戦略的推進 ◆タンパク3000プロジェクト
◆個人の遺伝情報に応じた医療の実現プロジェクト ◆再生医療の実現化プロジェクト
◆革新的ながん治療法の開発にむけた研究の推進(がんトランスレーショナルリサーチの推進)
◆細胞・生体機能シミュレーションプロジェクト
ライフサイエンス研究に必要不可欠な研究基盤の整備
◆ナショナルバイオリソースプロジェクト
中核機関における先導的な研究開発の推進
◆脳科学研究 ◆ゲノム科学研究 ◆遺伝子多型研究 ◆免疫・アレルギー研究
◆植物科学研究 ◆発生・再生研究 ◆バイオインフォマティクス研究
◆重粒子線がん治療研究 等
基礎研究の推進及び人材の養成
◆科学研究費補助金、科学技術振興調整費等の競争的資金を活用した基礎研究・人材養成の推進



新興・再興感染症研究拠点形成プログラム
−社会のニーズを踏まえたライフサイエンス分野の研究開発−

安心安全な社会の構築を目指して
<人の存在を脅かす問題からの安全安心のための重点課題>

感染症対策に資する予測,診断,治療に係る研究開発

昨今の感染症対応では、大学の研究能力が重要な役割
(例)・ SARSの早期診断法、治療法の開発(東大、長崎大、東京医科歯科大)
鳥インフルエンザの野鳥由来ウィルスのゲノム解析(鳥取大)
鳥インフルエンザの病原性(他の動物への感染等)の解析(北大)

多様な感染症に対応するためには、層の厚い人材養成が必要

全世界的には死亡者の約30%が感染症が原因。西ナイル熱(米国)、狂犬病(ロシア、中国)など、我が国に対する新たな脅威の可能性が近隣諸国にも存在

感染症研究に関する基本的な考え方
新興・再興感染症対策に向けた研究の推進

医学、獣医学等の領域を超えた融合的研究の推進

国内に医学・獣医学等の連携による新興・再興感染症の研究拠点を  整備し、人獣共通感染症等について研究を進め、人材養成を推進

アジアを中心とした国際的な研究ネットワークを展開

競争的資金を積極的に活用し、幅広い分野  で、層の厚い人材養成を目指した研究を推進
具体的な研究対象の例
・SARS ・鳥インフルエンザ
・BSE ・西ナイル熱
・エボラ出血熱 等
感染症研究の拠点形成(案)
感染症研究の拠点形成(案)の図



分子イメージング研究体制の図


トップへ
戻る