戻る

厚生労働省における科学技術政策の現状と厚生労働科学研究費


1. 我が国の科学技術に関する基本政策

(1) 現状(図表1、2)

科学技術基本計画に基づき推進している。
(現在第2期<平成13年3月閣議決定>平成13〜17計画年度)
政府の科学技術に関する研究開発・施策等を総合科学技術会議が評価し、資源配分に反映させている。

図表1
第2期科学技術基本計画
(平成13年4月〜18年3月)

(1)
基本理念
(2) 重点施策
- 科学技術の戦略的重点化
(1)ライフサイエンス分野(2)情報通信分野(3)環境分野
(4)ナノテクノロジー・材料分野(5)エネルギー分野
(6)製造技術分野(7)社会基盤分野(8)フロンティア分野
- 優れた成果創出・活用のための科学技術システム改革
(1) 研究開発システムの改革
(2) 産業技術力の強化と産学官連携の仕組みの改革
(3) 地域における科学技術振興のための環境整備
(4) 優れた科学技術関係人材の養成とそのための科学技術に関する教育の改革
(5) 科学技術活動についての社会とのチャンネルの構築
(6) 科学技術に関する倫理と社会的責任
(7) 科学技術振興のための基盤の整備
- 科学技術活動の国際化の推進
(3)科学技術基本計画を実行するに当たっての総合科学技術会議の使命

図表2
我が国の科学技術政策に関する体制

我が国の科学技術政策に関する体制の図


  (2) 政府全体の予算(図表3、4)

平成16年度予算の政府研究開発投資額は3兆6,255億円である。
(うち3,606億円が競争的研究資金)
ライフサイエンスは4つの戦略的重点分野の1つで、分野別研究費全体の約1/5(4,362億円)を占める

図表3
政府科学技術関係経費〔平成16年度当初3兆6,255億円〕※
※うち、約1兆5千億円は大学等の経費

政府科学技術関係経費〔平成16年度当初3兆6,255億円〕のグラフ

図表4
ライフサイエンス分野〔4,362億円〕

ライフサイエンス分野〔4,362億円〕のグラフ


2. 厚生労働省の科学技術政策と厚生労働科学研究の位置づけ

(1) 基本的考え方

厚生労働省の任務は、「国民生活の向上を図り、並びに経済の発展に寄与するため、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ること(厚生労働省設置法第三条)」であり、上記の任務のための研究及び開発に関する政策を実施している(厚生労働省設置法第四条の三)。
このような趣旨から、厚生労働省の科学技術関係経費は、国民の保健医療福祉等に関連する行政施策の推進・技術水準向上に資するための予算であり、基本的コンセプトは“Science to Practice“である。
具体的には、厚生労働科学研究費補助金、がん助成金等研究委託事業、国立試験研究機関・国立高度医療センター等経費の3つの事業がその柱である。(図表5)

(2) 予算
厚生労働省における科学技術関係経費は約1,290億円(平成16年当初)。内訳は、厚生労働科学研究費補助金約422億円、がん助成金等研究委託事業約43億円、及び国立試験研究機関、国立高度医療センター等経費約825億円より成る。
ライフサイエンス分野における政府の研究開発投資額としては、文部科学省に次ぐ規模。
厚生労働省における科学技術関係経費の特徴は、競争的研究資金が経費全体の約3割(379億円)を占めること。

図表5
厚生労働省における科学技術関係経費
[平成16年度当初約1,290億円]


厚生労働省における科学技術関係経費
 │
 ├
 │
 │
 ├
 │
 │
 │
 │
 └
1. 厚生労働科学研究費補助金[約422億円]
国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関連する行政施策の推進・技術水準向上に資する研究への補助金制度
2. がん研究助成金等研究委託事業
(例:がん研究助成金):がん政策医療ネットワークを構成する全国の国立病院・療養所、がん専門医療施設等の共同による、臨床研究等への助成事業
3. 国立試験研究機関、国立高度医療センター等経費
(例1:感染症研究所):感染症その他の特定疾患及び食品衛生に関する研究等の実施機関の運営経費等
(例2:国立がんセンター):がんその他の悪性新生物に関する、診断及び治療、調査及び研究並びに技術者の研修の実施センターの運営経費等


3. 厚生労働科学研究費の現状

(1) 基本的考え方

厚生労働科学研究費は昭和26年度の創設以来、諸々の制度整備を経て現在のシステムに至っている。
現行の厚生労働科学研究費補助金取扱規定【平成10年4月9日厚生省告示第130号】による定義は「厚生労働科学研究の振興を促し、もって国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関し、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ること」とされる。
このような政策指向の研究助成制度の趣旨を踏まえ、次のような制度上の特徴を持つ。
(1) 研究計画の審査並びに成果評価においては、国民の健康・安全に直結するエビデンス、政策展開への連接、保健医療情報の解析、予防医療・先端医療の応用・普及、生活上の高度な安全・安心の確保等が重視される。
(2) 課題に直結する成果を得るべく研究課題をあらかじめ設定して公募する。
(課題固定・デザイン競争型)

(2) 実績等(図表6、7)

政府の方針(第一期科学技術基本計画及び第二期科学技術基本計画)に基づく、競争的資金拡充により、予算規模は平成8年と比較して3.5倍に拡充。実施課題数も2.0倍、1課題あたりの研究経費も1.7倍に増加した。(平成15年度実績で、総数1,454件の研究事業に対し助成、1課題あたり2,867万円、約2万人の研究者に助成。)
4分野18事業で実施(平成16年度)。
主任研究者の所属先は、大学が54%、国立試験研究機関・国立高度医療センターが23%、関係機関が7%、その他が16%であった。
補助金の執行においては、第3者評価に基づく審査・配分方式の構築と透明性確保策の徹底、不正経理の再発防止への取り組み等、適正化を推進している。

図表6
厚生労働科学研究費予算と採択課題数

厚生労働科学研究費予算と採択課題数のグラフ

図表7
厚生労働科学研究費補助金の事業概要(4分野18事業)

行政政策研究分野

厚生労働施策に直結する研究分野
(資料収集、統計処理・議論が主体で行政政策の基礎資料となる研究)
行政政策研究
厚生労働科学特別研究
厚生科学基盤研究分野

臨床に直結する成果が期待できる基盤研究に対する補助を行う研究分野
(医薬品・医療機器産業を振興し、先端科学技術の発達を臨床応用する研究)
先端的基盤開発
臨床応用基盤
疾病・障害対策研究分野

個別の疾病・障害領域に関する治療や対策を研究対象とする研究分野
(具体的にQOLの向上に役立つ研究)
長寿科学総合、子ども家庭総合、第3次対がん総合戦略、循環器疾患等総合、障害関連、エイズ・肝炎・新興再興感染症、免疫アレルギー疾患予防・治療、こころの健康科学、難治性疾患克服
健康安全確保総合研究分野

健康安全・医療安全の確保に関連する研究分野
(健康危機管理、食品安全・医薬品等の規制に係る研究)
創薬等ヒューマンサイエンス総合
医療技術評価総合
労働安全衛生総合
食品医薬品等リスク分析
健康科学総合


4. 最近の厚生労働省に関連する科学技術関係政策

(1) 平成17年度の科学技術に関する資源配分の重点事項(図表8)

平成17年度の政府の科学技術政策に関する重点事項は「基盤研究の推進」「経済活性化」「安心・安全社会の実現」「科学技術システム改革」である。(総合科学技術会議)
上記をふまえ厚生労働省では、「安心・安全で質の高い健康生活を実現する先端科学技術の実用化」を基本に、「健康安心の推進」「健康安全の確保」「先端医療の実現」を平成17年度の科学技術関係施策の重点事項としている。

図表8
平成17年度科学技術関係施策についてー厚生労働省ー

平成17年度の科学技術分野の重点事項(総合科学技術会議)
我が国の研究基盤となる研究開発の着実な推進
+
我が国の経済を発展させ国際競争力を確保する科学技術活動の推進
+
安心・安全な生活を実現する科学技術活動の推進
+
科学技術システムの改革等
図


  (2) 健康フロンティア(図表9)

健康フロンティは、国民の「健康寿命(健康で自立して暮らすことができる期間)」を伸ばすことを目標に置き、「生活習慣病対策の推進」と「介護予防の推進」の2つのアプローチにより展開する政策である。
健康フロンティ政策の柱には、「働き盛りの健康安全プラン」、「女性のがん緊急対策」、「介護予防10ヵ年戦略」、および「健康寿命を伸ばす科学技術の振興」がある。

図表9
健康フロンティア戦略の策定へ
(平成17年度〜平成26年度)

我が国は超高齢化社会への道
10年後の平成27年(2015年)には、高齢者数が3300万人と予測
「明るく活力ある社会」を構築と「健康寿命」の延伸へ
糖尿病・がん等の
疾病の罹患と死亡を減らす
数値目標の設定
要介護になることを防ぐ
働き盛り層
生活習慣病と心の健康
女性層
女性のがん
高齢者層
介護予防



健康寿命を延ばす科学技術の振興
先端科学技術の導入と生活習慣病・介護予防研究の推進
(参考)
健康フロンティア戦略は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」
(平成16年6月4日閣議決定)に盛り込まれた。


トップへ
戻る