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付加退職金制度に関し検討が必要と考えられる点について(案)


1. 簿価会計基準について

 現在、付加退職金額を算定するための給付経理の損益計算は、簿価を基準として行われている(中小企業退職金共済法施行規則第17条第2項)。
 しかし、これについて以下の問題点がある。

(1)  機構の業務の煩雑化
 勤労者退職金共済機構(以下「機構」という。)の独法化に伴い、決算については企業会計原則に基づき行うことになったため、付加退職金額を算定するための損益計算のみ簿価で計算することは機構の業務を煩雑化することとなっている。
〈企業会計原則〉 企業会計の実務の中で発達し一般に公正妥当と認められた会計処理の原則であり、時価を基本として処理している。

(2)  決算との整合性
 機構の決算における剰余金(時価)と付加退職金額算定の基礎となる利益の見込額(簿価)とを比較した場合に、時価と簿価の相違から、簿価上は黒字であるが、時価上は赤字、あるいはその逆といった適切ではない事態が生じる場合がある。

 これらの点を改善するために、付加退職金のための損益計算においても時価会計により算定することについて検討する必要があるのではないか。

2. 付加退職金と累積欠損金の解消について

 現在、損益計算における利益の見込額の2分の1を付加退職金に、2分の1を累積欠損金の解消に充てている(中小企業退職金共済法施行規則第17条第1項)。

 中小企業退職金共済制度は、法律に基づき安全・確実に中小企業の従業員に退職金を支給できる簡便な制度である。
 しかし、累積欠損金の存在は次のような問題点を生じさせる。
 (1)  現在加入している者に将来の給付に対する不安を与えうる。
 (2)  新規加入を考える企業に対し、加入を阻害する要因となりうる。
 ・ 将来の給付への不安
 ・ 過去の累積欠損金の解消のための負担しなければならないことの不公平感
 (3)  今後運用環境が好転しても、予定運用利回りを上げることが困難となりうる。

 したがって、累積欠損金を早期に解消することが重要であり、これらを踏まえて、〈a〉計画的な累積欠損金の解消の考え方、〈b〉単年度剰余金の配分の考え方について検討が必要なのではないか。
 なお、同様の問題は、現在累積欠損金が存在する林業退職金共済においても当てはまるのではないか。



中小企業退職金共済法施行規則(昭和三十四年労働省令第二十三号)

(法第十条第四項の算定した額)
十七条 法第十条第四項の当該年度の前年度の運用収入のうち同条第二項第三号ロに定める額の支払に充てるべき部分の額として算定した額は、当該年度の前年度の独立行政法人勤労者退職金共済機構の業務運営並びに財務及び会計に関する省令(平成十五年厚生労働省令第百五十二号)第十二条第二項の一般の中小企業退職金共済事業等勘定の給付経理の損益計算における利益の見込額の二分の一とする。
 前項の損益計算は、独立行政法人勤労者退職金共済機構の業務運営並びに財務及び会計に関する省令第十条の規定にかかわらず、簿価を基準として行うものとする。

中小企業退職金共済法(昭和三十四年法律第百六十号)

(退職金)
十条 (略)
 退職金の額は、次の各号に掲げる掛金納付月数の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
 二十三月以下 被共済者に係る納付された掛金の総額を下回る額として、掛金月額及び掛金納付月数に応じ政令で定める額(退職が死亡による場合にあつては、被共済者に係る納付された掛金の総額に相当する額として、掛金月額及び掛金納付月数に応じ政令で定める額)
 二十四月以上四十二月以下 被共済者に係る納付された掛金の総額に相当する額として、掛金月額及び掛金納付月数に応じ政令で定める額
 四十三月以上 次のイ及びロに定める額を合算して得た額
 被共済者に係る納付された掛金の総額を上回る額として、掛金月額及び掛金納付月数に応じ政令で定める額
 計算月(その月分の掛金の納付があつた場合に掛金納付月数が四十三月又は四十三月に十二月の整数倍の月数を加えた月数となる月をいう。以下この号及び第四項において同じ。)に被共済者が退職したものとみなしてイの規定を適用した場合に得られる額(第四項において「仮定退職金額」という。)に、それぞれ当該計算月の属する年度(四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)に係る支給率を乗じて得た額 (その額に一円未満の端数があるときは、これを一円に切り上げるものとする。)を合算して得た額
 (略)
 第二項第三号ロの支給率は、厚生労働大臣が、各年度ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、当該年度の前年度 の運用収入のうち同号ロに定める額の支払に充てるべき部分の額として算定した額を当該年度に計算月を有することとなる被共済者の仮定退職金額の総額で除して得た率を基準として、当該年度以降の運用収入の見込額その他の事情を勘案して、当該年度の前年度末までに、労働政策審議会の意見を聴いて定めるものとする。

独立行政法人勤労者退職金共済機構の業務運営並びに財務及び会計に関する省令(平成十五年厚生労働省令第百五十二号)

(企業会計原則等)
十条 機構の会計については、この省令の定めるところによるものとし、この省令に定めのないものについては、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。



特別会計の見直しについて
−フォローアップ−
(抄)

平成16年11月19日
財政制度等審議会

2. 具体的提言

(5) 財務の健全性

 特別会計が公益に資する事業を行っているにせよ、国民の負担で連年の赤字体質を放置するようなことは認められない。したがって、累積欠損のあるような特別会計は、事業内容の見直しを含め、実効性ある収支改善策を速やかに講じる必要がある。このような措置は目標年次とあわせて公表し、達成状況が明らかとなるようにすべきである。
 また、特別会計から運営費交付金を交付している独立行政法人において累積赤字があるなど財務の健全性が毀損している場合には、当該法人が中期計画の中で適切な収支改善策を確実に遂行するよう、所管省庁がチェック機能を働かせる必要がある10

10審議の過程で、労働保険特別会計から運営費交付金が出されている(独)勤労者退職金共済機構が一例として指摘された。


平成15年度末決算の実績について(付加退職金関連)

(単位:億円)
  平成15年度
年度末数値
〔簿価会計〕
平成15年度
〔2月時点の推計〕
〔簿価会計〕
差額 平成15年度
決算数値
〔時価会計〕
(A) (B) (A)-(B)  
掛金収入等 3,483 3,429 54 3,483
運用収入等 512 455 57 1,026
退職金支出等 3,928 4,039 -111 3,928
責任準備金等純増
(付加退職金配分前)
-139 -299 161 -139
当期利益金
(付加退職金配分前)
206 144 62 720
付加退職金額 72 72 0 72
当期利益金
(付加退職金配分後)
134 72 62 648


(参考)  平成15年10月1日から平成16年3月31日の運用資産の時価変動額

(単位:億円)
  時価変動額
国内債券 85
国内株式 390
外国債券 -46
外国株式 116
短期資産 38
合計 582


付加退職金支給率状況

年度 支給率
平成4年度 0.01309
平成5年度 0.00150
平成6年度
平成7年度
平成8年度
平成9年度
平成10年度
平成11年度
平成12年度
平成13年度
平成14年度
平成15年度
平成16年度 0.00233


一般の中小企業退職金共済事業における予定運用利回り、平均運用利回り
及び収支状況の推移

年度 予定
運用利回り
平均
運用利回り
当期
損益金
(累積剰余金)
(累積欠損金)
平成3年度 6.60% 5.50% 5.86% 436億円 488億円
平成4年度 6.60% 5.50% 5.86% △238億円 250億円
平成5年度 6.60% 5.50% 5.46% △250億円 △0億円
平成6年度 6.60% 5.50% 4.78% △427億円 △427億円
平成7年度 6.60% 5.50% 4.55% △516億円 △943億円
平成8年度 4.50% 3.84% △196億円 △1139億円
平成9年度 4.50% 3.53% △296億円 △1435億円
平成10年度 4.50% 3.23% △396億円 △1831億円
平成11年度 3.00% 3.08% 9億円 △1822億円
平成12年度 3.00% 2.33% △207億円 △2029億円
平成13年度 3.00% 1.77% △372億円 △2401億円
平成14年度 1.00%(11月〜) 1.60% △170億円 △2571億円
平成15年度
前期
1.00% 1.68% 103億円 △2468億円
平成15年度
後期
1.00% 5.37% 545億円 △2684億円
(注)・ 下線については予定運用利回りの改正を行ったもの。
平成15年10月以降は、独立行政法人会計基準を適用。
平成2年法改正においては、施行日前における掛金月額部分について、6.60%の利回りを適用。
平成7年法改正以降は、新法施行日前も含めて新たな予定運用利回りを適用。


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