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資料1

食品の表示に関する共同会議報告書No.5

わかりやすい表示方法について
報告書
(案)


平成16年○月○日

食品の表示に関する共同会議







厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会
表示部会食品表示調査会 及び
農林水産省農林物資規格調査会表示小委員会
の共同開催








〜目次〜

1. 表示方法をめぐる現状と課題
(1) 表示方法の概要
(2) 表示方法をめぐる課題

2. 表示方法の見直し方向(総論)
(1) 表示様式の弾力化
(2) 表示の文字の大きさの統一

3. 表示位置
(1) 名称、内容量
(2) 賞味(消費)期限、保存方法
(3) 製造者等

4. 原材料名の表示見直し
(1) 原材料表示の基本ルール
(2) 原材料表示見直しの基本的考え方
(3) 商品の特性を的確に伝えるための原材料表示の充実
(4) 弁当の原材料表示の見直し
(1) 弁当の表示をめぐる問題
(2) 弁当の原材料表示の見直し
(5) 原材料表示の運用改善
(1) 原材料の記載にあたっての問題点
(2) 中間加工原料の記載方法の原則
(3) 同種の原材料をまとめた表示
(4) 原材料の記載順について
(5) 原材料の記載範囲について



1.表示方法をめぐる現状と課題
 (1) 表示方法の概要
    加工食品の表示方法については、食衛法、JAS法により規定されており、JAS法の加工食品品質表示基準においては、容器包装に所定の様式に従って一括して表示することが定められている(図1:一括表示)。

図1 一括表示様式(主要項目のみ)
図1 一括表示様式(主要項目のみ)

    また、生鮮食品については、JAS法に基づき名称、原産地を表示することとなっているが、表示方法については容器包装のほか、製品に近接した場所への掲示、またはその他見やすい場所に表示することとなっている。

 (2) 表示方法をめぐる課題
    JAS法では、加工食品について義務表示事項を枠内に一括して表示する一括表示が原則であり、その様式が厳密に定められている。これにより、消費者は一括表示を見れば、法律に規定された義務表示事項に関する情報を知ることができることになっており、全ての加工食品に表示が義務付けられる中で、統一的な表示方法として秩序を保つのに大きな役割を果たしてきた。
 しかしながら、多様な加工食品が存在し、表示を実施する事業者も多様化する中で、スーパーマーケット等の店頭で見られるいわゆるプライスラベル(図2)による表示が普及するなど、従来の一括表示に規定された表示方法のみでは、消費者への情報提供の観点から必ずしも十分に対応できない状況が明らかとなってきた。

図2 プライスラベルの例
図2 プライスラベルの例

    また、国内外の食品以外も含めた諸制度の中で、表示様式まで厳密に規定しているのはJAS法だけとなっている。以上の状況を踏まえれば、JAS法の一括表示の基本的考え方は維持しつつ、表示様式を弾力化し、情報提供に多様性をもたせることも必要と考えられる。とりわけ、一括表示の中で最大のスペースを占める原材料表示については、原材料に加え食品添加物、遺伝子組換え、アレルギー物質を含む旨、原料原産地についても記載され非常に多くの情報を含んでいることから、わかりやすく適切な表示方法を検討する必要がある。この際、今後きたるべき高齢化社会を踏まえ、大きく、見やすい表示であることと、必要な情報を過不足なく提供できることの両面から、将来的には商品へのラベルのみならず、表示事項の一部についてICタグ等の電子情報技術を活用した情報提供も視野に入れて検討を進める必要がある。


2.表示方法の見直し方向(総論)
 (1) 表示様式の弾力化
    表示方法を考える上で重要な点は、わかりやすく、誤認を与えないこと、表示事項が簡潔に理解しやすく表示されているかという点である。
 この点から、一括表示様式を厳密に規定している点について見た場合、他の食品と比較しやすいというメリットはある。一方、容器包装された全ての加工食品に表示が義務付けられた今日にあっては、
(1) 基本的義務表示事項は消費者になじんでいること、
(2) さまざまな容器包装形態がある中で、一律の表示様式ではかえってわかりにくい場合があったり、消費者から求められる表示内容の記載が制限される場合もあること、
(3) 諸外国の食品表示制度や、国内の食品以外の各種表示制度においてもこのように厳密な様式を定めた例はほとんどないこと
等から、表示様式を厳密に規定した現行の品質表示基準を見直し、より弾力性を持たせた規制とすべきである。
[提案1]
 具体的には、加工食品品質表示基準第4条第2項で「別記様式により表示しなければならない」と規定されている点を改め、別記様式を一つの表示例として示すのにとどめることによって、必要に応じ様式に規定されていないお客様相談のための電話番号を記載したり、容器包装や商品の形態に合わせた表示様式の工夫を可能とする。
 ただし、表示すべき事項が商品のさまざまな面にばらばらに表示される等によって消費者にとってわかりにくい表示とならないよう、十分に留意すべきである。また、コーデックス(Codex、FAO/WHO合同食品規格委員会)の包装食品の表示に関する一般規格において、「名称と内容量が目立つ位置に、かつ同じ視野に入る必要がある」と規定されている点にも留意が必要である。
 なお、現在スーパーマーケット等の店頭で普及しているプライスラベルについては、義務的表示事項が過不足なく記載されているのであれば、JAS法に基づく一括表示として扱うべきである。

 (2) 表示の文字の大きさの統一
   (資料2参照)


3.表示位置
 (1) 名称、内容量
  
[提案2]
 名称と内容量については、国際基準等をふまえ、以下の考え方に沿って表示場所を決めることができるものとする。
(1) 商品の主要面に、名称と内容量が加工食品品質表示基準第4条第1項に規定する方法に従って表示されている場合には、別途一括表示にこれらを重ねて表示する必要はない。
(2) ただし、商品名からは一般的名称がわからなかったり別の類似の食品を想起させる場合、又は個別の品質表示基準等で名称の表示が規定されている場合には、別途一括表示に一般的名称又は個別品質表示基準等で規定されている名称の記載が必要である。
(3) 表示の事項名である「名称」「内容量」の文字について、省略しても消費者が名称、内容量の表示がなされていると十分理解可能な場合は、(2)の場合を除き、事項名の省略を可能とする。

図3 名称と内容量の主要表示面への記載と一括表示の記載省略
図3 名称と内容量の主要表示面への記載と一括表示の記載省略

 (2) 賞味(消費)期限、保存方法
    賞味期限(消費期限)については、現行の加工食品品質表示基準においても、一括表示に記載することが困難な場合は、一括表示の賞味期限欄に記載箇所を表示すれば、一括表示外に記載することが可能となっている。また、この場合、保存方法についても、賞味期限の記載箇所に近接して記載することが可能となっている。
 このため、多くの食品で印字等による賞味期限の記載が行われているが、記載箇所の表示が具体的でなかったり、項目名を書かずにロット番号などと一緒に印字されている等により、消費者からは「賞味期限がどこに書いてあるかわかりにくい商品がある」等の指摘がある。
 このため、賞味期限の記載にあたっては、記載箇所を「キャップに記載」「この欄の上部に記載」等と具体的に示すとともに、印字の色を背景と対照とすること、消えにくい印字とすること、ロット番号その他の情報とは明確に識別できるようにすること等について、事業者に対し改めて徹底する必要がある。

 (3) 製造者等
    JAS法では、「製造業者等の氏名又は名称及び住所」(製造者等)を一括表示内に記載することとされている。製造者等は、JAS法上表示内容に責任を持つ者であり、この表示責任者が特定されるためにも、「製造者」等の事項名を付して、他の表示事項と近接して表示されることが望ましい。この際、名称、住所に加え、電話番号や会社の問い合わせ窓口などを併記することも、消費者による商品情報確認を容易にする手段として有益である。


4.原材料名の表示見直し
 (1) 原材料表示の基本ルール
    原材料表示は、JAS法の加工食品品質表示基準に基づき、「原材料名」という事項名を記載した上で、使用した原材料を全て重量順に表示するのが原則となっている。この際、食品添加物は、(食品添加物以外の)原材料と分けて記載することとされており、食品添加物以外の原材料−食品添加物の順に記載されるのが通例である。
 また、原材料名欄には、アレルギー物質を含む旨の表示、遺伝子組換え食品の表示、原料原産地表示が混在しており、その食品の特性を知るための最大の情報源となっている。

 (2) 原材料表示見直しの基本的考え方
    上記のように、原材料表示は、食品の特性を表現する重要なツールで、いわばその商品の特性を消費者に的確に提供しながら、誤認を招かないような形で適正に行われるべきである。こうした観点から、原材料表示については、義務表示と任意表示を組み合わせながら今後とも充実することが必要である。
 一方、原材料表示は加工食品の一括表示の中で最も複雑であり、表示内容も多いことから、「表示全体のわかりにくさ」の大きな要因ともなっている。特に、多くの原材料を使用する商品や複数の加工食品の組み合わせからなる商品においては、原材料表示が膨大な量となり、消費者にとってわかりやすいとは言い難いものもある。このため、現行で規定された義務表示方法について、表示の目的を明確化した上で商品実態に即して現実的に見直し、必要に応じ簡素化を図ることが必要である。
 また、加工食品の原材料や製法は多種多様であり、中間原料や多様な形態の原材料が使用される。このため、原材料表示の基本ルールである(1)使用した原材料を全て表示する、(2)原材料に占める重量の割合の多い順に表示する、という2点を遵守して適正に表示するために、個別の品質表示基準や業界の取り決め等で原材料の表示方法を定めた一部の食品以外では、個々の事業者が工夫して表示を行っている。その結果、同種の食品であっても個別の事業者ごとに原材料の記載順や表記方法がまちまちである等の状況が生じている。こうした点についても、運用改善が必要である。

 (3) 商品の特性を的確に伝えるための原材料表示の充実
    加工食品の原材料は、その商品の特性を付与する上で加工技術と並んで重要な位置を占めており、消費者にとっても商品選択の材料となることから、特色ある原材料を使用した旨の強調表示が行われている。この際、消費者の誤認を防ぐ観点から、その使用割合が100%の場合を除き、当該原材料の使用割合を併記することが義務付けられている(加工食品品質表示基準第5条)。
[提案3]
 現行の運用上では、当該規定の適用が明確化されている原材料としては、(1)特定の原産地のもの、(2)有機農産物・有機農産物加工食品、(3)(非)遺伝子組換えの3種類に限定されているが、表示の充実を図る観点から、強調表示されている原材料については、上記3種類のみならず、原則として特色ある原材料に該当する原材料として、当該規定を適用することを明確化すべきである。


(特色ある原材料に該当する例)
品種名(とちおとめ使用、コシヒカリ使用 等)
種類(紫いも使用、抹茶入り、海洋深層水使用、黒糖使用 等)
ブランド名(松阪牛使用、越前かに入り 等)
商品名(○○の塩使用 等)
製造方法(炭火焼き地鶏肉使用 等)
原料加工食品の製造地(北海道で製造されたバターを使用しています 等)
農薬等を節減した農産物(特別栽培茶使用、農薬不使用にんじん入り、農薬節減米使用おにぎり 等)
等級等(本醸造しょう油入り、エキストラバージンオリーブ油使用 等)

 この際、現行の運用上、使用割合をパーセントで表示することが一般的であるが、加工食品の特性上原材料の使用割合は変動することも多い点を考慮し、「○%以上使用」「○割使用」等概数で表示できることを可能とするとともに、100%使用の場合に十分分別して取り扱った上でも避けられない混入に関しては許容されることを明確化することによって、当該規定の活用を促進すべきである。

(例)・ 「A県産○○50%以上使用」(使用割合は時々に変動するが、最低ラインとして50%を保証)
「A県産8割入り」(80%以上を保証)
「○○100%使用」(十分分別して管理した上でのコンタミネーションは許容) 等

 また、表示する割合については、(1)特色のある原材料が、製品全体に占める割合、(2)特色のある原材料が、同種の原材料に占める割合のいずれかを記載することとされているが、いずれを表示するかについては、消費者に誤認を与えないことを旨として適切に判断されるべきである。

(例) 植物油脂製品の原材料にオリーブ油を10%(うちとしてエキストラバージンオリーブ油90%、ピュアオリーブ油10%)使用した場合
(1)エキストラバージンオリーブ油9%使用(製品全体に占める割合)
又は
(2)エキストラバージンオリーブ油90%使用(同種の原材料に占める割合)
この場合、(2)の表示方法では、消費者に商品全体の90%を占めると受けられかねないため、(1)の表示方法とすべき。

 なお、原料原産地表示制度が本格的に導入されたことに伴い、特定の原産地のものを強調する場合、強調する産地だけでなく、全ての産地を使用した割合の多い順に表示する場合は、原産地ごとの使用割合は省略可能となることから、今後、本規定を活用した原料の原産地に関する情報提供が促進されることが期待される。

(例) 原料○○として国産70%、A国20%、B国10%を混合使用した場合
原材料名 ○○(国産70%使用)・・・国産のみを強調表示する場合、割合表示が必要。
原材料名 ○○(国産、A国、B国)・・使用した産地全てを表示する場合、原料原産地表示として扱い、割合表示は不要。

 (4) 弁当の原材料表示の見直し
  
(1) 弁当の表示をめぐる問題
 弁当(惣菜盛り合わせを含む。以下同じ。)の表示については、その商品特性上、以下のような問題がある。
ア. 一般に、構成原材料の内容を外部から確認して購入する商品である。
内容物の確認が容易である反面、表示を貼付するスペースが限定される。このため、原材料表示をはじめ一部の表示(又は一括表示全体)を切り離して商品の裏側に添付する場合も多い。
イ. 製造後極めて短時間で消費される。
家庭での保存は念頭になく、店頭で必要な表示事項の確認ができることが重要。
ウ. 複数のおかずを組み合わせており、その組み合わせは日々変化する。
あらかじめ容器包装に印刷するのではなく、プライスラベルを活用した表示が一般的である。また、個々のおかずの重量や構成原材料は同じ商品名であっても製品ごとに微妙に異なるなど、原材料を重量順に正確に表示することは困難な面がある。
エ. 複合原材料の個々の原材料の記載は省略される場合が多く、表示内容が中途半端である。
複合原材料の個々の原材料の記載を省略することによって、原材料名に記載される原材料は実態上外部から確認できるおかず類の名称の列記に留まっており、個々のおかずの内容に関する情報が表示からは読みとれない。
オ. 店舗内で製造販売される場合も多い。
弁当の専門製造業者ではないスーパーマーケットや食肉小売店等で製造される弁当については、上記ア〜エの問題に加え、
その日安く仕入れた食材やおすすめの食材などを活用しており、専門の食品製造事業者のように同一製品を大量に製造するわけではないこと
表示内容をチェックする担当者がいない場合も多いこと などの問題を抱えている。(なお、現状では、店舗内で製造した加工食品は、JAS法の表示対象から除外している。)

 以上のような問題をふまえ、弁当の表示方法について検討を行った。

(2) 弁当の原材料表示の見直し
 弁当は、購入時に構成原材料の内容を外部から確認して購入する食品であり、商品特性上、店頭で商品を裏返して表示内容を確認することが困難な食品である。
 一方で、弁当の原材料表示は、その商品特性上非常に複雑であり、法律で定められた表示事項を遵守しながら商品の内容を確認できる位置、大きさでラベルを添付するために、各事業者が表示の分割・裏面添付、ラベルサイズの拡大、ラベル貼り付け方法の工夫等を行っている。
 こうした、相反する問題をクリアするためには、原材料表示の目的を明確化し、必要な表示事項を厳選するとともに、事業者の表示実行可能性を踏まえて、適切な表示位置等についても検討する必要がある。

ア. 弁当の原材料表示の目的
 弁当の原材料表示については、一般消費者の商品選択の観点からは、外部からおかずを確認して購入する場合が通常であり、見ればわかるおかず名をあえて記載する必要性は薄いものと考えられる一方、アレルギー物質のように、健康被害防止のために必要な情報については、見やすい位置に正確に表示すべきとの指摘がある。さらに使用した食品添加物等、外見からはわからない情報については、きちんと表示してほしいとの意見がある。
 このため、弁当の原材料表示は、健康被害防止のために必要な情報を正確に伝達することを基本としつつ、商品選択の観点から必要な表示事項と方法を検討すべきである。

イ. 弁当の原材料表示の改善方向
[提案4]
 上記目的に照らして、包装外部から内容物を確認できる弁当に限っては、優良誤認の生じない範囲で、外部から確認でき、かつ中身がわかる複合原材料(おかず類)について、記載を簡素化することを検討すべきである。
 具体的には、おかず類を一括して「おかず」と記載する方法(図4例1)、おかず類のうちメインとなるおかず3種のみを記載し、その他は「付け合わせ」「その他」と記載する方法(図4例2)などが考えられるが、実際の表示方法については、今後消費者、関係事業者等の意見も聞きながら、さらに検討すべきである。
 なお、アレルギー物質を含まれるか否かの表示については、正確に、欠落することのないよう、見やすい位置に示されるべきである。
 また、例えば、

個々のおかずに使われた原材料について、別途裏面に記載する
個々のおかずに含まれるアレルギー物質の有無について、一覧表で示す等の情報提供方法についても、合わせて検討すべきである(図4例3)

図4 弁当の原材料表示の見直し例
     (例1)「おかず」とまとめて記載
原材料名 ご飯、野菜かき揚げ、鶏唐揚げ、
煮物(里芋、人参、ごぼう、その他)、焼鮭、
スパゲッティ、エビフライ、ポテトサラダ、
メンチカツ、大根刻み漬け、付け合わせ

(原材料の一部に小麦、卵、大豆、牛肉を
含む)調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、
グリシン、着色料(カラメル、カロチノイド、
赤102、赤106、紅花黄)、香料、膨張剤、
甘味料(甘草)、保存料(ソルビン酸K)
原材料名 ご飯、おかず、(原材料の一部に小麦、卵、大豆、牛肉、さけ、えび、鶏肉を含む)(・・・以下添加物は同左)
 
 (例2)上位3位までを記載
原材料名 ご飯、野菜かき揚げ、鶏唐揚げ、煮物(里芋、人参、ごぼう、その他)、その他付け合わせ、(原材料の一部に小麦、卵、大豆、牛肉、さけ、えびを含む)(・・・以下添加物)
(例3)アレルギー物質に関する情報提供を別途記載
図  
[アレルギー物質を含む原材料名]
野菜かき揚げ(小麦粉、大豆油、粉末卵白)
鶏唐揚げ(鶏肉、小麦粉、大豆油)
煮物(しょうゆ(大豆、小麦))
焼鮭
スパゲッティ(小麦粉、卵)
エビフライ(エビ、小麦粉、パン粉、卵)
ポテトサラダ(マヨネーズ)
メンチカツ(牛肉、粉状植物性蛋白(大豆)、大豆油、小麦粉、パン粉、鶏卵、ビーフエキス)
大根刻み漬け(しょうゆ(小麦、大豆))





このほか、おかず名とアレルギー物質を記載したシール添付、
アレルギー物質に関する一覧表添付、販売店にレシピを備え
付け等の方法などが考えられるが、具体的な方法は事業者が
消費者の意見を聞きながら工夫すべきである。





  
 このような原材料表示の簡素化と、本報告書で示された表示方法の見直しを組み合わせることによって、事業者は、基本的には商品の内容を確認でき、かつ必要な表示事項を満たしたラベルを商品の表面に添付することを心がけるべきである。
 しかしながら、このような見直しの組み合わせによっても、必要な表示事項を表面に表示できない場合に限っては、アレルギー物質を含む旨の表示を除き、事業者の判断によって、原材料名その他の一括表示事項を切り離して裏面に表示することも容認すべきである。この場合、消費者が店頭で裏面の表示を確認することができるよう、事業者は必要な処置を講ずべきである。

 (5) 原材料表示の運用改善
  
(1) 原材料の記載にあたっての問題点
 加工食品の原材料や製法は多種多様であり、中間原料や多様な形態の原材料が使用される。かつては、加工食品は生鮮原料から一貫して製造される場合も多くあったが、製造工程の多様化、分業化等が進み、中間加工原料を使用して製造することが一般的になってきている。また、原料の下処理等手間暇のかかる工程を海外に委ね、国内では輸入した中間加工原料を組み立てたり、調味するだけの食品も増えている。
 加工食品の原材料表示にあたっては、(1)使用した全ての原材料を記載、(2)原材料に占める重量割合の多い順に記載、という2つの基本ルールがある。食品事業者は、これを遵守するために、原材料表示を行うに先立って、原料調達先から当該原材料のレシピを入手し、中間加工原料については更に遡った当初の原材料まで分解して、添加物、アレルギー物質、遺伝子組換え原料等の使用の有無を確認した上で個々の原材料の記載方法と記載順を決定している。
 この際、記載方法と記載順に関して、以下のような問題が生じている。

(1) 記載方法
ア.  一般的名称で表示することとされているが、中間加工原料を使用した場合等の一般的名称をどうするか、
イ.  同じ原材料を複数の中間加工原料に使用した場合、それぞれ別々に記載するか、合算して記載するか、
ウ.  複合原材料(2種類以上の原材料からなる原材料)の原材料の記載方法をどうするか 等
(2) 記載順
ア.  乾燥原料、エキスを抽出する原料、揚げ油、水を加えた場合など、重量順の判断に困る場合がある、
イ.  複数の同種原材料をまとめて記載する際に、重量順が不明確になる 等
こうした問題を念頭に、原材料表示の運用改善の検討を行った。

(2) 中間加工原料の記載方法の原則
[提案5]
 加工食品の原材料は、最終製品を製造する事業者が使用する状態の原材料を、一般的名称(原材料名:)で記載することを基本とする。
 また、当該原材料が一般に理解しにくい名称の場合、複合原材料の個々の原材料を括弧書きで記載。この際、個々の原材料のうち複合原材料に占める重量順が3位かつ重量割合が5%以下の場合には「その他」と記載可能(原材料名:A(a、b、その他))。
 当該原材料が、製品を構成する主要な原材料以外の原材料であって、製品中の複数の複合原材料を構成する原材料となっている等、原材料をばらして合算して記載した方が合理的と判断される場合に限り、複合原材料をばらして表示することも可能(原材料名:a、b、・・・)。ただし、この場合問われた時に使用した複合原材料を回答できる必要がある。

図
例:冷凍パン種を使用し、最終製造者が焼いた食パン→「冷凍パン種(小麦粉、砂糖、植物油脂、卵、・・)

  
(3) 同種の原材料をまとめた表示
(提案6)
 同種の原材料をまとめて表示した方が、消費者にとってわかりやすい表示方法となる場合には、同種の原材料をまとめて記載することを可能とする。
 この際、まとめて記載した原材料の重量順がわかりにくくなるおそれがあるため、まとめて記載することによって消費者に誤認を与えるおそれがある場合には、一般原則に従ってまとめずに記載すべきである。

(まとめて記載すべき場合の例)
例1:複数の加工食品を組み合わせた食品であって、通常は別々に販売される可能性のない場合
 消費者にとっては、外見上または商品名等から複数種類の原材料を組み立てたことが明らかな商品については、まとめて表示した方がわかりやすいことから、これを活用した記載方法を原則とすることとする。
例: 納豆の原材料名:
[納豆]大豆、納豆菌
[添付たれ]植物性たん白分解物、砂糖、しょうゆ、食塩、醸造酢、昆布エキス、調味料(アミノ酸等)、アルコール、ビタミンB
[添付からし]からし、食塩、醸造酢、酸味料、着色料(うこん)、増粘多糖類、香料、ビタミンC

例2:複数の加工食品を組み合わせた食品ではないが、まとめて表示すべき場合
 消費者が同種の原材料(例:野菜、食肉、魚介類等)と認識する原材料であって、複数種類の原材料を混合使用しているため、同種の原材料をまとめて記載した方が消費者にとってわかりやすい場合がある。
例: パスタソースの原材料名:
原材料名:トマト、トマトペースト、たまねぎ、にんじん、にんにく、砂糖、セロリ、植物油脂、食塩、パセリ、でん粉、香辛料、調味料(アミノ酸等)、酸味料、(原材料の一部に大豆を含む)
  野菜をまとめて記載
原材料名:野菜(トマト、たまねぎ、にんじん、にんにく、セロリ、パセリ)トマトペースト、砂糖、植物油脂、食塩、でん粉、香辛料、調味料(アミノ酸等)、酸味料、(原材料の一部に大豆を含む)

 この場合、(2)で整理された中間加工原料表示の記載の原則に従い、「野菜」とまとめて記載するのは、原材料として生又は冷凍の野菜を使用したものに限られ、トマトペーストについては、「野菜」のまとめ表示には含めないこととすべきである。
 また、「野菜」のうち一部のみを抽出してまとめて記載したり、野菜の一部を「その他」と記載することは適当でない。

(4) 原材料の記載順について
 加工食品品質表示基準では、使用した原材料を原材料に占める重量割合の多い順に記載することとされているが、商品によっては、
ア.  揚げ油のように使用した原材料が最終製品に占める量が一定でなかったり、ハーブのようにエキス分を抽出して廃棄してしまうような場合、
イ.  濃縮原料や乾燥原料を使用するため、使用した原材料の重量を単純に比較することが適当でない場合
など、重量割合の多い順に記載することが厳密には困難な場合がある。
 原材料を重量割合順に記載する目的は、使用した原材料の多寡を記載順から適切に判別できるようにするためであるが、コンマ数%レベルの使用量の違いを厳格に記載順に求める必要はなく、商品名やイメージから予想される使用量と大幅に異なること等による誤認や不利益を防止することが重要である。
[提案7]
 このため、原材料の記載順については、基本的には配合時の原材料に占める割合をもとに決定することとするが、配合時と最終製品中に含まれる当該原材料(由来成分)との差が大きい場合には、消費者に誤認を与えることのないよう留意する必要がある。
 例えば、上記アの場合は、吸収される油やエキスの量を事業者自身の試験結果等から推測することによって、当該製品中に含まれると想定される重量順に記載できる。
 また、上記イの場合は、濃縮又は乾燥した形で使用されるが、製造の時点で還元される原材料は、濃縮又は乾燥前の状態に換算した重量順で記載できる。
等のルールに従って、記載順を合理的に決定することができることとすべきである。
 このほか、商品特性を考慮して原材料の記載順を決めている例が一部の個別品質表示基準にみられるが、将来的には重量順に記載するよう基準を見直すべきである。

(5) 原材料の記載範囲について
 食品添加物以外の原材料について、使用した全ての原材料を記載することとされているが、通常そのものを食さないもの(柏もちの「柏の葉」等)や、使用量がわずかであり、一般に最終製品の品質に影響を及ぼさないと判断される添加物製剤中の食品材料(「ブドウ糖」等)など、記載を省略しても問題ないと判断されるものもある。
[提案8]
 このため、食品添加物以外の原材料について、上記のように最終製品の品質に影響を及ぼさない等一定の要件を満たす場合に限っては、記載を省略できることを明示すべきである。
 なお、添加された水分については、我が国ではほとんど表示されていないが、国際基準や欧米諸国では表示される場合が一般的であることをふまえ、記載した方がその商品の特性がわかりやすいと考えられる場合は記載すべきである。

−以上−


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