抗がん剤併用療法に関する検討会ワーキンググループからの報告について(報告書案)
【WGでの検討内容について】(資料3)
・ | 前回の検討会以降2回のワーキンググループを開催し、第2バッチの16候補品目について報告書の作成作業を行った。 |
・ | ワーキンググループにおいて、報告書の内容等の検討を行い、整備状況から見て5つの療法の報告書について本日の検討会に上程することとした。 |
【小児固形腫瘍 シスプラチン】(資料4−1)
○ | 国立病院機構九州がんセンターの永利義久参考人より以下のような説明があった。 |
・ | 小児悪性固形腫瘍(横紋筋肉腫、神経芽種、肝芽腫その他肝原発悪性腫瘍、腎芽腫など)への効能拡大及び用法・用量追加について報告書を作成。 |
・ | 公知の取扱いについては、疾患毎の海外公表論文、教科書、peer-review journalに掲載された総説、メタ・アナリシス、診療ガイドラインに示されたエビデンスにより、有効性、安全性及び投与量について医学・薬学上公知と判断した。 |
・ | 横紋筋肉腫については、標準療法であるVAC療法(ビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミド)とVAC療法にドキソルビシン、シスプラチンを組み込んだ場合及びVAC療法にドキソルビシン、シスプラチン、エトポシドを組み込んだ場合を比較して、何れにおいても同等の治療成績が得られた。 |
・ | 髄芽腫については、多くの臨床試験(半数程度)において、シスプラチンが組み込まれており、重要な薬剤の一つと考えられる。 |
・ | 小児悪性固形腫瘍に対し、現在、承認が得られている薬剤はごく限られており、現行の承認薬剤のみでは、十分な治療成績を得ることは困難である。 |
・ | 国内における使用状況については、無作為化比較試験はなく、症例報告等のみである。 |
・ | 安全性については、少なからず治療関連死が存在すること、また、腎障害、聴力障害をおこしうることがあるため、がん化学療法に十分な知識と経験を有する小児科医が使用するか、その様な医師の指導下において使用するべきである。 |
・ | (質問)用法・用量の記載について、現行の承認用法・用量のF法、G法との違いが分かるような記載にしていただきたい。→(回答)審査の段階で記載内容については整理する。 |
・ | (質問)国内では症例報告のみで、臨床試験の論文が公表されていないが、小児悪性固形腫瘍に対して適応が無かったことが理由か。→(回答)海外で報告済であり、新規性に乏しいため論文として報告されていない。 |
・ | (質問)小児に対するシスプラチンの薬物動態のデータはないのか。→(回答)現在のところない。 |
・ | (質問)日本人に対する投与量を設定した根拠は。→(回答)神経芽腫日本人小児に対し投与した量を根拠に設定した。(論文23,論文24) |
【小児固形腫瘍 カルボプラチン】(資料4−2)
○ | 日本大学医学部附属板橋病院の陳基明参考人より以下のような説明があった。 |
・ | 小児悪性固形腫瘍(神経芽種、ユーイング肉腫、網膜芽腫、肝芽腫、ウイルムス腫瘍、中枢神経系肺細胞腫)への効能拡大及びICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド)療法とビンクリスチン、エトポシド、カルボプラチン併用療法におけるカルボプラチンの用法・用量追加について報告書を作成。 |
・ | 公知の取扱いについては、疾患毎の海外公表論文、教科書、peer-review journalに掲載された総説、メタ・アナリシス、診療ガイドラインに示されたエビデンスにより、有効性、安全性及び投与量について医学・薬学上公知と判断した。 |
・ | カルボプラチンは、ほとんど全ての小児悪性固形腫瘍に対し、第一、第二選択の併用療法に含まれる重要な薬剤である。 |
・ | カルボプラチンは、シスプラチンと比較して治療効果は同等で、腎毒性、聴力障害の頻度は低く、治療による蓄積毒性等でシスプラチンの継続投与が困難な患者に対しても使用が可能である。 |
・ | 安全性については、腎障害、聴力障害をおこしうることがあるため、がん化学療法に十分な知識と経験を有する小児科医が使用するか、その様な医師の指導下において使用するべきである。特に、再発例、難治例では、シスプラチン等腎障害性の薬剤が大量に投与されていることもあり、このような症例に対しカルボプラチンを使用する際には、投与量、投与期間について特に留意する必要がある。 |
・ | 投与量の妥当性については、米国のPediatric Oncology Group(POG)及びChildren Cancer study Group(CCG)の論文より妥当であると判断できる。 |
・ | (質問)カルボプラチンの投与量についてはAUCで規定されていることが多いが、体表面積(mg/m2)で規定した根拠は。→(回答)海外の論文等において体表面積(mg/m2)換算で報告されている。AUC設定と体表面積(mg/m2)設定に大きな違いはないと考えられる。 |
・ | (質問)前治療でシスプラチンが使用されている場合、腎障害の発生頻度が高くなることが考えられるので、何らかの注意喚起が必要ではないか。→(回答)腎機能の状況を見ながら投与量の調整を行うよう報告書に追記する。 |
・ | (質問)薬事法上の承認が得られると、広く使用されるようになるので、投与量に幅を持たせた方が良いのではないか。→(回答)投与量については、米国のPOG及びCCGの論文を根拠に設定した。また、投与量の設定については、医師の裁量できちんと判断して使用すべきと考える。 |
・ | (質問)ICE療法及びビンクリスチン、エトポシド、カルボプラチン併用療法におけるカルボプラチンの投与量について報告書が作成されているので、カルボプラチン以外の薬剤についても検討する必要があるのではないか。→(回答)カルボプラチン以外の薬剤については、今までの検討会で審議されており、それらで対応可能である。 |
【ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、横紋筋肉腫、ウイルムス腫瘍とその他腎原発悪性腫瘍 アクチノマイシンD】(資料4−3)
○ | 国立がんセンター中央病院の牧本敦参考人より以下のような説明があった。 |
・ | ユーイング肉腫、横紋筋肉腫への効能拡大及びユーイング肉腫、横紋筋肉腫、腎芽腫、その他の腎悪性腫瘍への用法・用量(1回投与法)追加について報告書を作成。 |
・ | 公知の取扱いについては、疾患毎の海外公表論文、教科書、peer-review journalに掲載された総説、メタ・アナリシス、診療ガイドラインに示されたエビデンスにより、有効性、安全性及び投与量について医学・薬学上公知と判断した。 |
・ | 横紋筋肉腫については、VAC療法(ビンクリスチン、アクチノマイシンD、シクロホスファミド)が標準療法として位置づけられている。 |
・ | 安全性については、肝中心静脈閉鎖症(VOD)の報告があり、治療関連死も少なからず存在するため、がん化学療法に十分な知識と経験を有する小児科医が使用するか、その様な医師の指導下において使用するべきである。 |
・ | 投与量の妥当性については、ウイルムス腫瘍において現行の0.015mg/kg/d×5日間と0.045mg/kg/d×1日間を比べて成績はほぼ同程度と結果が出ている。また、入院期間の短縮及び医療費の軽減の観点からも、妥当であると判断できる。 |
【乳癌 EC(エピルビシン、シクロホスファミド)療法、CEF(シクロホスファミド、エピルビシン、5−フルオロウラシル)療法】(資料4−4−1、資料4−4−2)
○ | 国立がんセンター中央病院の藤原康弘参考人より以下のような説明があった。 |
・ | エピルビシン、シクロホスファミドの乳癌に対する用法・用量の追加について報告書を作成。 |
・ | 疾患毎の海外公表論文、教科書、peer-review journalに掲載された総説、メタ・アナリシス、診療ガイドラインに示されたエビデンスにより有効性、安全性及び投与量について医学・薬学上公知であると判断した。 |
・ | カナダの臨床試験グループであるNCIC−CTGにより、従来のCMF(シクロホスファミド、メソトレキセート、5−フルオロウラシル)療法よりCEF療法の方が5年無再発生存率において有意に優れていることが示されている。 |
・ | 国内において、CEF療法(エピルビシン100 mg/m2群)の安全性の検討が行われ、海外での有害事象の頻度及び重篤度に相違は見られなかった。 |
・ | 安全性については、化学療法に熟知した医師が、主な有害事象である骨髄抑制、粘膜炎、悪心・嘔吐及び心毒性、二次性白血病などの晩期毒性にも十分に注意して治療を行うのであれば担保できると考えられる。 |
・ | 投与量の妥当性については、CEF療法のエピルビシン50 mg/m2群と100mg/m2群との第III相無作為化比較試験において、100mg/m2群が有意に優れていた。 |
・ | 報告書は、エピルビシンのエビデンスを中心に作成されているため、乳癌の術後化学療法におけるシクロホスファミドの投与量の妥当性について、補足説明があった。(資料4−4−2) |
・ | (質問)エピルビシンについて、転移性乳癌治療に使用する際は必ずしも100 mg/m2を使用しないので、初期治療で使用する際の投与量と異なることについて注意を喚起する必要があるのではないか。→(回答)転移性乳癌治療に関するエビデンスについて、ワーキンググループにて再度検討する。 |
【悪性腫瘍薬(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐) デキサメタゾン(内服)、リン酸デキサメタゾン(注射)】(資料4−5)
○ | 国立がんセンター中央病院の藤原康弘参考人より以下のような説明があった。 |
・ | デキサメタゾンの悪性腫瘍薬(シスプラチンなど)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)に対する適応拡大及び用法・用量の追加について報告書を作成。 |
・ | 有効性、安全性及び投与量について医学・薬学上公知であるかについては、疾患毎の海外公表論文、教科書、peer-review journalに掲載された総説、メタ・アナリシス、診療ガイドラインにより判断した。 |
・ | 国内においても、無作為化比較試験が報告されており、一般臨床の場で広く使用されている。 |
・ | 投与量の妥当性については、デキサメタゾン4mg、8mg、12mg、20mgを投与する無作為化比較試験が行われ、20mg投与が最も優れていた。 |
・ | また、シスプラチン以外の抗がん剤投与に対するデキサメタゾンの投与量を決定するため、デキサメタゾン24mg、8mg、初回に8mg投与し6時間毎に4mgを4回投与する3群間(全例でオンダンセトロン8mg、デキサメサゾン4mgを1日2回 2日目〜5日目の投与がおこなわれた。)で無作為化比較試験が行われ、それぞれの群間において差が認められなかったことより、シスプラチン以外の抗がん剤に対しては8mgの投与が推奨される。 |
【まとめ】
・ | 本日上程された5候補品目については本検討会の了承が得られた。 |
・ | 本検討会での意見を踏まえ、事務局及びワーキンググループで再度修正を行い、修正後の報告書については、座長に一任とする。 |
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