平成16年11月22日
一般用医薬品の販売におけるリスクと販売活動の規制についての考え方
一橋大学 松本恒雄
1 |
一般用医薬品のリスク
医薬品特有の問題として |
健康回復に役立たないことから生じる健康リスク
別の症状を顕在化させないリスク
依存性のリスク |
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2 |
医薬品の製造における安全性
輸入業者、発売元は製造者としての責任
製品欠陥の3つのタイプ |
開発・製造メーカーの対応 |
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GLP、GCPほか |
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GMP |
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添附文書・ラベル表示 |
副作用(狭義の)
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正しく用いてもなお生じるリスク
責任問題ではなく、機構による副作用被害救済の問題
医療用医薬品の場合は医師の処方が適切かの問題はある |
開発危険
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製品上市時点での科学技術の知見によっては、欠陥があることを認識することができなかった場合
PMSとの関係
製造物責任法上の「欠陥」にはあたらないもの |
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3 |
医薬品の販売(特に小売)における安全性
製造物責任の問題ではない
販売業者の責任原因
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管理面での品質悪化
添附文書なし販売
アドバイスの誤り
どのようなアドバイスの義務があるのか
これは販売業者の義務か、薬剤師の義務か
不適切な製品の推奨
販売した製品についての情報提供の誤り
販売時点での情報提供
→ |
質問に対して誤った情報の提供 |
→ |
提供すべき情報の不提供
どのような内容の情報提供義務があるのか?
薬事法上は、販売業者に情報提供の努力義務のみ |
販売後の情報提供 |
販売業者としての責任と薬剤師として専門家責任との関係
薬事法上の「実地に管理」からどのような義務が生じるのか
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4 |
経済活動の行政による規制の分類
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需給調整の観点からの競争制限的規制
参入規制、設備規制、輸入規制、価格規制
免許、許可、認可、届出 |
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社会的見地からの規制
安全、健康、環境、高齢者・障害者 |
(3) |
自由な競争を確保するための規制・公正な市場を形成するための規制 |
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インフラストラクチャー
独禁法規制
ディスクロージャ(開示規制) |
(1)と(2)の区別は相対的、運用により相互に代替可能
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業界振興行政と規制行政が未分離であることから生じる |
消費者保護は従来(2)として位置づけられてきたが、最近は(3)の視点も |
5 |
時期による行政による規制の分類
事前規制(参入規制)から事後規制(行為規制)へのトレンド |
6 |
規制と消費者利益
消費者の利益・権利
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(1) |
安全・健康・衛生・環境 |
(2) |
選択(品質と価格) |
(3) |
公正な取引条件・取引環境 |
(4) |
苦情処理・被害救済 |
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消費者問題はなぜおこるか
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情報の量と質の格差 |
主として(2)の問題 |
交渉力格差 |
主として(3)の問題 |
生身の人間であることからくる被害回復不可能性 |
主として(1)の問題 |
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(2)(3)の利益は、自由で公正な競争が実現することによって達成される
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消費者政策と競争政策の同質性
ここでの消費者のための規制は、社会的規制ではなく、競争のための規制
正確な商品情報が適切に提供されることは競争を促進し、消費者の利益 |
(1)の利益は、競争に還元できない |
7 |
消費者利益確保のための規制のあり方
取引に係わる利益((2)(3))
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自由で公正な競争を促進するための規制
独占禁止法、景品表示法その他の表示規制
事前の透明性のある基準・ルール設定
事後チェック機能の強化
食品におけるトレーサビリティ
リコール制度の強化
違反に対する制裁
罰金額の引き上げ
事業者名の公表 |
安全に係わる利益((1))
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事前規制がなお必要
リスクアセスメントに基づくリスクマネジメントとしての規制 |
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