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第2章  ネットワークによる臓器あっせん業務の状況の検証結果

(注)  枠内は、ネットワークから聴取した事項及びネットワークから提出された資料等により、本検証会議として認識している事実経過の概要である。

1. 初動体制並びに家族への脳死判定等の説明及び承諾
 平成15年9月7日15:15頃、自宅で倒れ、16:01、提供病院に搬送される。入院時、意識レベルGCS13、血圧180/73、心拍数55/分、失語症、右片麻痺を認める。嘔吐を繰り返しMRI検査施行できず、グリセオール投与、保存的治療にて経過観察となる。
 9月9日、意識レベルが徐々に低下し、GCS 8。
 9月10日、CT撮影にて左脳の広範囲に脳梗塞を認める。午後、著明な血圧低下を認め、昇圧剤の投与を開始。GCS 3、呼吸停止、瞳孔散大。家族より意思表示カードの提示あり。
 9月11日2:30、病院は臨床的に脳死と診断。家族がコーディネーターの説明を聞く意思があることを確認し、同日3:01、病院は東日本支部に連絡。
 同日5:35にネットワークのコーディネーター2名が病院に到着。遅れて都道府県コーディネーター1名が病院に到着し、院内体制等を確認するとともに、医学的情報を収集し一次評価等を行っている。
 同日6:45に、ネットワークのコーディネーター2名および都道府県コーディネーター1名が家族(患者の妻、長男、長女、姉、義兄、弟、義妹)に面談し、医療ソーシャルワーカー同席の下、脳死判定、臓器提供の内容、手続き等につき文書を用いて説明。その際、家族構成等を十分に確認している。
 同日7:37に患者の妻が代表して脳死判定承諾書、および臓器摘出承諾書に署名捺印。家族の総意であることを確認し、コーディネーターがこれらを受理している。

【評価】
 コーディネーターは、病院から家族への臓器提供に関する説明依頼を受けた後、院内体制等の確認や一次評価等を迅速かつ適切に行っている。
 家族への説明についても、コーディネーターは、脳死判定、臓器提供等の内容、手続きを記載した文書を手渡してその内容を説明し、家族から承諾書を受理している等、コーディネーターの家族への説明等は適正に行われたものと評価できる。


2. ドナーの医学的検査及びレシピエントの選択等
 9月11日9:32より、心臓、肺、肝臓のレシピエント候補者の選定を開始。膵臓と腎臓についてはHLAの検査後、同日15:37よりレシピエント候補者の選定を開始している。また、法的脳死判定が終了した後、同日20:08より各臓器別にレシピエント候補者の意思確認が開始された。
 心臓については、第1候補者はドナーが高齢であること、高血圧の既往があること、左室肥大を認めることから移植実施施設側が心臓の移植を辞退。第2候補者は、ドナーが高齢であること、著明な求心性肥大を認めること、候補者がステータス2で比較的状態が安定していることを理由に移植実施施設側が心臓の移植を辞退し、心臓の移植が見送られることになった。
 肺については、第1候補者の移植実施施設側が両肺の移植を受諾。第2候補者、第3候補者、第4候補者は、候補者の症状が改善しているため移植実施施設側が両肺の移植を辞退。第5候補者の移植実施施設側が片肺の移植を受諾。第6候補者の移植実施施設側が両肺の移植を受諾し、順位通り第1候補者に両肺の移植が実施されている。
 肝臓については、第1候補者は本人に移植の意思がなく移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第2候補者は既に生体肝移植を実施しており移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第3候補者は本人に移植の意思がなく移植実施施設側が肝臓の移植を辞退。第4候補者の移植実施施設側が肝臓の移植を受諾し、第4候補者に肝臓の移植が実施されている。
 膵臓については、適合患者不在のため、移植が見送られることとなった。
 左右の腎臓については、第1候補者、第2候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾。第3候補者は、移植に対する不安があり本人に移植の意思がないことを理由に移植実施施設側が腎臓の移植を辞退。第4候補者の移植実施施設側が腎臓の移植を受諾し、順位通り第1候補者と第2候補者に左右の腎臓の移植が実施されている。
 小腸については、登録患者不在のため、移植が見送られることとなった。
 また、感染症検査やHLAの検査等については、ネットワーク本部において適宜検査を検査施設に依頼し、特に問題はないことが確認されている。

【評価】
 今回の事例においては、適正にレシピエントの選択手続きが行われたものと評価できる。
 ドナーの医学的検査等は適正に行われている。


3. 脳死判定終了後の家族への説明、摘出手術の支援等
 9月11日19:35に脳死判定を終了し、主治医は脳死判定の結果を家族に説明。その後、ネットワークのコーディネーターより、情報公開の内容等について家族の確認を得ている。
 また、同日、ネットワークのコーディネーターより家族に対して、心臓移植については医学的理由にて、膵臓移植については適合患者不在にて、小腸移植については登録患者不在にて移植が見送られることとなった旨を報告している。

【評価】
 法的脳死判定終了後の家族への説明等に特に問題はなかった。


4. 臓器の搬送
 9月11日にコーディネーターによる臓器搬送の準備が開始され、参考資料2のとおり搬送が行われた。

【評価】
 臓器の搬送は適正に行われた。


5. 臓器摘出後の家族への支援
 臓器摘出手術終了後、コーディネーターは手術が終了した旨を家族に報告し、病院関係者等とともにご遺体をお見送りしている。
 9月13日、すべての移植手術が無事に終了し、移植後の経過は全員良好であることを妻へ電話にて報告。ほっとされた様子であった。
 9月16日、妻よりネットワークのコーディネーターへ電話。特に問題なく葬儀を終えたとのこと。後日、厚生労働大臣の感謝状を持参し焼香ならびに移植後の経過報告に伺いたいことを伝え、快諾いただく。
 10月2日、ネットワークのコーディネーター1名と組織移植コーディネーター1名、膵島移植事務局の医師がご自宅を訪問。妻と長女に面会し、厚生労働大臣の感謝状ならびに組織移植の感謝状を手渡す。移植を受けた方は順調に経過され、元気になりつつあることを報告すると喜んでおられる様子であった。今後も継続してレシピエントの状況を伝えてほしいと要望される。家族は、ようやく一段落して、生活が落ち着いたと話される。
 11月19日、肝臓移植を受けたレシピエントが退院され、その母親よりサンクスレターを預かっていることを妻へ電話にて報告し、同日ご自宅に郵送する。妻は無事退院できてよかったと喜ばれていた。
 前記した連絡、報告以外にレシピエントの退院状況や近況報告等、ネットワークのコーディネーターが適宜対応と報告等を行っている。

【評価】
 コーディネーターにより、ご遺体のお見送り、家族への報告やサンクスレターの送付等適切な対応がとられている。


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