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第10回多様就業型ワークシェアリング制度導入実務検討会議議事要旨


日時平成16年11月19日(金)10:00〜12:00
場所厚生労働省共用第8会議室(6階)
出席者今野座長、荻野、小澤、北浦、田村、成瀬、山極の各参集者
議事
 地域におけるワークシェアリングの取組状況について(ヒアリング)
 ・兵庫県
 ・福岡県
 その他

議事要旨:
 兵庫県担当者からの説明後、意見交換
労使によるワークシェアリング導入モデル事業についての説明の概要
平成15年度事業として、連合兵庫と兵庫県経営者協会が、それぞれの視点で3事例ずつモデル事業所を選定した(「労組モデル」と「企業モデル」)。組合側は使用者側との交渉過程と合意形成の検証を、経営者側はコストや生産性の検証をすることで、労使双方が利益を享受することが可能なことを実証することを目的に実施した。
労組モデルの事例
A労働組合:夜勤体制(二直体制)導入による所定外労働の短縮と、60歳代前半の従業員に在職老齢年金との組合せで設定した水準の給与を保障することによって高齢者の継続雇用を実現した。(所定外労働短縮型、高齢者雇用促進型)
B労働組合:1ヵ月当たりの労働日数削減により所定内労働を削減し、雇用の維持を図った。(緊急避難型)
C労働組合:高齢者の有する熟練技能を若年者等へ継承させるため、フルタイムとハーフタイムの多様な勤務形態による高齢者再雇用制度を導入した。(高齢者雇用促進型)
企業モデルの事例
小売業M社:増加傾向にある定年退職者の継続雇用の機会確保を行い、かつ、恒常的な所定外労働を解消するため、従来1人で行っていた業務を2人で行う仕組みを導入した。(所定外労働短縮型、高齢者雇用促進型)
電気機器製造業L社:繁閑に応じた変形労働時間制の導入等による雇用の維持を目的に、所定内労働時間の短縮を行った。(緊急避難型)
情報処理サービス業K社:定時操業による所定外労働の廃止、全従業員をパートタイマーにして月間労働時間の上限を168時間とする自由出勤制度を導入することにより、労働時間と能力に中立な処遇、生産性向上を実現した。正社員は月給制から時間給にして一律5%の賃上げを行った。(所定外労働短縮型、フル・パート転換型)
ワークシェアリング導入に伴う労使の具体的メリットについて
高齢者雇用促進型では、労働者側は、年金支給開始年齢引き上げによる所得の空白期間を補完する就業機会の確保、フルタイムではない働き方による余暇時間の確保などが挙げられる。使用者側は、高齢者が有する熟練技能の若年労働者への円滑な継承、熟練技能者を確保できることによる生産性の向上などが挙げられる。
フル・パート転換型では、労働者側は、超過勤務がなく自由出勤制であることで、仕事と家庭の両立が可能になることなどが挙げられる。使用者側は、仕事と家庭の両立が図りやすいため、特に女性の優秀な人材の継続的確保が可能になることや労働者の疲労が軽減され生産性が向上することなどが挙げられる。

企業モデルK社の自由出勤制度について

 データ入力を担当する社員のみならず、監督業務や技術的業務に携わっている社員も自由出勤制度の対象となっている。全社員70人という中規模の会社であり、進行管理をする社員も、同時にデータ入力業務に携わっている。進行管理については2人の社員が担当しているが、ITによりシステム化しており、その2人が一度に休んでも、業務の優先順位がデータ入力業務に携わる社員各自の端末に記録されており、引き継いだ社員がまず何をすべきか分かるようになっており、引き継ぎロスの解消に繋がっている。
 また、給与を基本的に全て時間給に置き換えたため、能力によってある程度差がつくようになっている。従来の正社員とパートタイマーの賃金で逆転現象が起きている例もあるようである。その中で所定外労働を発生させないようにし、先々の受注量等も見込んで勤務体制を組んでいくことで、生産性のコスト管理をしやすくしている。

平成16年度のモデル事業について

 世代間ワークシェアリング導入モデル事業に取り組んでいる。壮年層の長時間残業を解消し、高齢者や若年者の雇用に結びつけることにより、高齢者から若年者への技術継承も図るというのが理想である。団塊の世代の退職がピークに達する2007年に向かい、年給支給年齢の引き上げに対応することも視野に入れ、魅力あるワークシェアリングの形を目指している。



 福岡県担当者からの説明後、意見交換
短縮勤務が選択できる正社員制度導入アドバイザー派遣事業についての説明の概要
平成14年度に実施した「多様就業型ワークシェアリングに関するアンケート調査」を通じて、従業者・事業所共に、多様就業型ワークシェアリングに対する理解が進んでいないことが分かった。ワークシェアリングに関する情報提供へのニーズに応えるために、平成15年度より専門家によるアドバイザーの派遣を実施している。
短縮勤務制度の導入を検討している企業や、導入のための研究や勉強会等を開催している事業主団体等へのアドバイザーの派遣を行っている(平成15年度は5社、平成16年度は現在のところ2社)。
アドバイザー派遣の具体例
サービス業A社:再雇用高齢者の短縮勤務制度導入の目的で派遣申請があり、就業規則のチェックとアドバイス、労働基準法の改正点の説明等を行った。
運輸業B社:育児・介護休業法絡みの短時間就労システム構築についての派遣要請があり、短縮勤務を導入する際の法規制、社会保険の影響についてアドバイスを行った。
金融・保険業C社:育児・介護のための短縮勤務を導入する際の法規制、社会保険の影響についてアドバイスの要請があり、具体的に就業規則の中身や賃金体系の見直し、モデル規定の提示などについて詳細なアドバイスを実施した。
平成15年度はアドバイスにとどまり、具体的に短縮勤務制度の導入に至った企業はないが、アドバイザーの派遣により会社の方向性を決める上で参考になったという声や、翌年度も引き続きアドバイスを受けたいなどの声もあり、一定の成果を得ている。
アドバイスを通じて、各種助成金制度があることを知らないという企業が多いことが分かった。今後は助成金のPRと併せて「多様就業型ワークシェアリング」のメリット等についての周知に努める予定。
福岡県では、平成15年度より「子育て応援宣言」をする企業を募集しており、本人の希望による勤務時間短縮やフレックスタイムの導入を掲げる企業など、現在35社が登録している。仕事と家庭の両立の観点からは、企業も短縮勤務の観点を持ちつつあるのではないか。

平成14年度実施のアンケート調査の結果、その特徴について

 男女別で、ワークシェアリング制度導入の希望などについて差が出ている。女性は、20代から40代前半までが、育児・介護を理由にワークシェアリング制度導入の希望が高い。男性は、50代以降が、高齢になっても働きやすい、自由な時間が増えるという理由で希望が強くなっている。

アドバイザー派遣の目的を「事業主の次世代育成行動計画への多様な働き方の視点導入」としている企業があるが、その内容について

 次世代育成法ができたが、事業主が策定しなければならない行動計画について、労働組合から、法律の内容、組合としての対応の仕方について相談したいとの要望があり、具体的には、どのように行動計画を策定していけばよいか、労働組合として行動計画策定に向けた組合員の意向をどのように集約していったらよいかなど、アドバイス、意見交換を行っていく予定である。

子育て応援宣言について

 子育て応援宣言登録企業の例としては、中小の企業でも短時間勤務を実施しているところがある。ただし、現実には職場風土の問題もあり、制度があれば必ず使えるというわけでもなく、これから行政として制度が活用されるように重点を置いていくべき問題であると考える。制度が無くても運用で短時間勤務を実施しているような企業に、アドバイザー派遣制度を紹介したりもしている。



3.事務局より、次回の日程については調整後、連絡する旨説明。



照会先:
 雇用均等・児童家庭局 短時間・在宅労働課 企画法規係
 電話03−5253−1111(内線7876)


多様就業型ワークシェアリング制度導入実務検討会議開催要綱


 趣旨
 多様な働き方を推進する多様就業型ワークシェアリングに取り組んでいくためには、企業の活力や経営効率・生産性を高め、雇用機会を拡大し、労働者がその能力を十分発揮できるようにし、多様な働き方が労使双方にとって適切な選択肢として位置付けられる必要がある。しかしながら、例えば短時間正社員制度を導入しようとすると、社会保険料をはじめとする人件費コストの増大への対応、業務の円滑な引継や分担の方法、その他解決すべき問題点が多く、企業においても導入になかなか踏み出せない現状にある。
 そこで、本検討会議では、多様就業型ワークシェアリングの業界、企業での普及促進を図るため、制度導入に当たって生じうる問題点及びそれに対する解決策をできるだけ具体的に提示し、当該企業における制度導入検討の際の参考に資することとする。

 構成等
(1)本検討会議は、雇用均等・児童家庭局長が企業の労務管理に詳しい学識経験者、実務者等の参集を求めて開催する。
(2)本検討会議には、必要に応じ、関係者の出席を求めることができる。
(3)座長は、構成員が互選し、座長代理は座長が指名する。

 検討事項
 本検討会議では、以下の事項について検討を行う。
(1)多様就業型ワークシェアリングを企業に導入する場合の選択肢の検討
(2)(1)で得られた各選択肢について、制度導入に当たって生じうる問題点のピックアップ
(3)(2)の問題点に対する解決策の検討(利用しうる既存の助成金の精査を含む)
(4)その他、多様就業型ワークシェアリングの導入を後押しすると考えられる事項の検討

 運営
 本検討会議の庶務は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課にて行う。


(参考)

多様就業型ワークシェアリング制度導入実務検討会議参集者名簿


平成16年10月1日現在
  氏名 役職
今野 浩一郎 学習院大学経済学部経営学科教授
  荻野 勝彦 トヨタ自動車(株)人事部企画室主担当員
  小澤 明子 日本サービス・流通労働組合連合中央執行委員
  北浦 正行 社会経済生産性本部社会労働部長
  武石 恵美子 ニッセイ基礎研究所上席主任研究員
  田村 雅宣 日本労働組合総連合会総合労働局中小労働対策局長兼労働条件局長
  土田 道夫 同志社大学法学部教授
  成瀬  豊 全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会書記次長
  茂出木 幸二 日本経済団体連合会組織協力本部本部長
  山極 清子 (株)資生堂CSR部次長
(敬称略・50音順、○は座長)


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