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通勤災害保護制度の見直し等について(論点)


 複数就業者の事業場間の移動を通勤災害保護制度の対象とすることについて

 複数就業者の事業場間の移動を通勤災害保護制度の対象とすることについてどう考えるか

 現行の労災保険制度においては、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することを通勤として保護している。これは、住居は労働者の就業のための拠点であり、当該拠点と就業の場所との往復は
(1) 労働者が労務の提供を行うために不可欠な行為であること
(2) 通勤途上災害は、社会全体の立場からみると、産業の発展、通勤の遠距離化等のためにある程度不可避的に生ずる社会的な危険であり、社会的な保護制度によって対処すべき性格のものであること
との考え方によるものである。

 労災保険制度の在り方に関する研究会においては、複数就業者の  事業場間の移動は、
(1) 労働者が第二の事業場へ労務を提供するために不可欠な行為であること
(2) 通常第一の事業場から第二の事業場へ直接向かう場合には、私的行為が介在しないこと
(3) 複数就業者が増加している中で、複数就業者の事業場間の移動はある程度不可避的に生ずる社会的危険であると評価できること
から、通勤災害保護制度の対象とすることが適当であるとされている。

(保護の対象とすることとした場合)
 各企業における兼業禁止規定との関係をどう考えるか

 労災保険制度の在り方に関する研究会においては、第一の事業場又は第二の事業場の就業規則等で兼業禁止が定められている場合について、
(1) 民事上の問題を公的保険である労災保険の保険給付に当たって考慮することには疑問があること
(2) 兼業禁止の効力についての裁判所による最終的な判断が確定するまでには相当な期間を要する場合があり、その判断を待っていたのでは、被災労働者や遺族の迅速な保護に支障をきたすおそれがあること
から、特段異なった取扱いを行うことは適当ではないとされている。



 単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動を通勤災害保護制度の対象とすることについて

 単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動を通勤災害保護制度の対象とすることについてどう考えるか

 現行の労災保険制度においては、労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することを通勤として保護している。これは、住居は労働者の就業のための拠点であり、当該拠点と就業の場所との往復は
(1) 労働者が労務の提供を行うために不可欠な行為であること
(2) 通勤途上災害は、社会全体の立場からみると、産業の発展、通勤の遠距離化等のためにある程度不可避的に生ずる社会的な危険であり、社会的な保護制度によって対処すべき性格のものであること
との考え方によるものである。

 労災保険制度の在り方に関する研究会においては、単身赴任者が赴任先住居と帰省先住居との間を移動することは、
(1) 勤務先において労務を提供するため赴任先住居に居住していること及び労働者の家族が帰省先住居に居住していることからすれば必然的に行わざるをえない移動であると考えられるが、事業主と労働者の双方の事情から、単身赴任という形態を選択することは不可避であると考えられ、赴任先住居と帰省先住居間の移動はある程度不可避的に生ずる社会的な危険であるという評価ができること
(2) 赴任先住居と帰省先住居との間の移動は一定の反復継続性があると考えられ、認定も容易であると考えられることから、業務との関連を有するものについて通勤災害保護制度の対象とすることが適当であるとされている。

(保護の対象とすることとした場合)
 保護の対象となる単身赴任者の範囲をどう考えるか

 一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)や所得税法(昭和40年法律第33号)において、単身赴任者は「配偶者と別居することとなつた職員」等と定義されている。一方、従来から通勤として保護されている就業の場所と帰省先住居との間の移動(直行直帰型)においては、「家庭生活の維持という観点から自宅を本人の生活の本拠地とみなし得る合理的な理由のある独身者」についても対象としている。

 どの範囲の移動について保護の対象とすべきか(現行の通勤災害保護制度が、就業に関する住居と就業の場所との間の往復を保護していることとの関係)

 労災保険制度の在り方に関する研究会においては、
(1) 赴任先住居から帰省先住居への移動については、勤務日当日又はその翌日に移動が行われることが大半であり、業務終了時間等により当日の移動ができない場合もあること等から、勤務日当日又はその翌日に行われる移動を原則として通勤災害保護制度の対象とすることが適当である
(2) 帰省先住居から赴任先住居への移動については、勤務日当日又はその前日に移動が行われることが大半であり、勤務日の前日に赴任先住居に戻り翌日の勤務に備えるという行為には合理性があると考えられること等から、勤務日当日又はその前日に行われる移動を原則として通勤災害保護制度の対象とすることが適当である
(3) 急な天候の変化により交通機関が運行停止になるといった外的要因等により上記の日に移動ができない場合には、例外的な取扱いを検討することが必要である
とされている。



 複数就業者に係る給付基礎日額について

 複数就業者に係る給付基礎日額についてどう考えるか

 労災保険制度の在り方に関する研究会においては、複数就業者に係る給付基礎日額について、労災保険制度の目的は、労働者が被災したことにより喪失した稼得能力を填補することにあり、このような目的からは、労災保険給付額の算定は、被災労働者の稼得能力をできる限り給付に的確に反映させることが適当であると考えられることから、業務災害の場合と通勤災害の場合とを問わず、複数の事業場から支払われていた賃金を合算した額を基礎として定めることが適当であるとされている。


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