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新たな障害保健福祉施策と介護保険との関係整理




平成16年11月12日
厚生労働省障害保健福祉部


I 障害者施策と介護保険との現在の関係


  対象者の関係(現状)

図

 身体障害者療護施設、重症心身障害児施設等、障害程度が重度で入所期間が長期になる者が通常入所する施設等の利用者は、介護保険の適用除外で保険料免除(地域生活等において、介護保険に基づくサービスを受ける可能性がないという理由)。

(参考:介護保険創設時の対象者範囲設定の考え方)
 ○ 被保険者
介護保険制度は、老化に伴う介護ニーズに応えることを目的とすること。
老化に伴う介護ニーズは高齢期のみならず中高年期にも生じ得ること。
40歳以降になると一般に老親の介護が必要となり、家族の立場から介護保険による社会的支援という利益を受ける可能性が高まること。

 ○ 受給者
第1号被保険者(65歳以上)については、高齢者であることから、その原因を問わず要介護は一般的に対象とする。
第2号被保険者(40歳〜64歳)については、老化に伴う介護という観点から具体的な対象範囲を定める。




  給付対象サービスの関係(現状)

 介護保険による給付を利用できる者(事実上65歳以上の者)が利用可能なサービスについては、障害者は、他の高齢者等とは異なり、既存の高齢者サービス(特別養護老人ホーム等)では障害者の特性に合ったサービスを受けることが難しいため、事実上、共通サービス(ホームヘルプサービス等)に給付が限定される。

(共通部分のイメージ(現状))

図




  両制度を利用する障害者の給付イメージ

図


II 関係整理の基本的視点


  障害者の介護保険制度における公平の確保
 〜年齢・障害を超えたユニバーサルな保健福祉体系へ〜
 介護保険の被保険者として保険料を負担する障害者の公平の確保の観点から、当該障害者が利用可能な共通サービスの範囲を、実質的に高齢者サービスと同等程度に拡大する必要性があるのではないか。


  総合的な自立支援システムの持続的な発展の確保
 〜効果的・持続的な障害保健福祉体系へ〜
 障害保健福祉施策の見直しとを併せて介護保険との関係を見直すことにより、総合的な自立支援システムに財源を重点的・効果的に投入し、就労促進等による障害者の自己実現・社会貢献を持続的に支援する仕組みを確立できるのではないか。


  両制度を併用する際の整合性、効率性の確保
 〜重層的・効率的な障害保健福祉体系へ〜
 障害者が必要量の障害保健福祉サービスを確保するため、介護保険を利用する場合と利用しない場合において、手続きや利用者負担総額に整合性を欠いたり、事務処理が非効率にならないようにすることが必要ではないか。


III  整理すべき論点


  基本的考え方

 現行と同様、新法に介護保険による給付との調整規定を設ける。

身体障害者福祉法第17条の9)
 居宅生活支援費及び特例居宅生活支援費の支給は、当該身体上の障害の状態につき、介護保険法の規定によりこれらの給付に相当する給付を受けることができるときは、その限度において、行わないものとする。

知的障害者福祉法第15条の10)
 居宅生活支援費及び特例居宅生活支援費の支給は、当該知的障害の状態につき、介護保険法の規定によりこれらの給付に相当する給付を受けることができるときは、その限度において、行わないものとする。

精神障害者居宅生活支援事業の実施について(平成14年障害保健福祉部長通知))
10 他事業との一体的効率運営
 市町村は、この事業と身体障害者ホームヘルプサービス事業、障害児・知的障害者ホームヘルプサービス事業、母子家庭、寡婦及び父子家庭介護人派遣事業との一体的効率的運営を図るとともに、他の在宅福祉サービスとの十分な調整を行い、また他の精神障害者福祉に関する諸事業等との連携を図り実施するものとする。

精神保健福祉法第32条の4において準用された第30条の2)
 (精神通院公費)を受ける精神障害者が、(中略)介護保険法(平成9年法律第123号)の規定により医療に関する給付を受けることができる者であるときは、都道府県は、その限度において、同項の規定による負担をすることを要しない。

 介護保険による給付との調整対象となる個別の給付の整理は下位法令等で規定。



  介護保険の対象となる受給者、サービス

1)両制度で共通する利用可能なサービスの範囲(法律上の整理、下位法令等の整理)

(1) 障害者介護給付
「介護」という点で共通部分が多いが、法律上、どのように整理するか。
具体的な整理の際にどのような視点が考えられるか。
既存の介護サービスと類似性が高いもの
類似性はあるが極めて高額となるもの
現時点では、障害者の特性の要素が大きいもの

(2) 障害者自立支援給付
「リハビリ」という点で共通部分があるが、法律上、どのように整理するか。
具体的な整理の際にどのような視点が考えられるか。
訓練(リハビリ)的な面で類似性が高いもの
就労移行支援など、青壮年層に特有のもの

(3) 施設体系の見直しと調整対象サービスとの関係
 介護保険の適用除外となっている身体障害者療護施設、重症心身障害児施設等の入所者についても、障害者施設体系の再編等により、日中に地域サービスを活用することが可能となるが、当該サービスが介護保険適用であれば、当該施設の入所者を介護保険の適用除外とする理由がなくなる。

2)介護保険の受給者範囲の変更に係る影響

(1) 介護保険における検討事項等
 第2号被保険者(40歳〜64歳)に係る「老化に伴う介護ニーズ」の制限
 被保険者・受給者の対象年齢の範囲(40歳未満)

(2) 障害保健福祉施策における意義
 第2号被保険者として介護保険料を負担しつつも、障害に起因する要介護状態について給付が受けられない障害者の公平の確保。
 要介護状態にある高次脳機能障害、難病等、いわゆる「制度の谷間」への対応が 可能。



  両制度を併用する場合の整合性等の確保

1)障害者本人に係る問題
(1) 「介護」等に係る尺度の整合性の確保
平成21年度の施行を目指して、支援の必要度等からの尺度として、介護保険の要介護認定基準を、障害保健福祉分野の障害者介護給付の共通尺度として活用可能なように、一定の見直しを行う。
当面は、介護的側面については、現行の要介護認定基準を基本に障害種別の特性を踏まえた尺度を組み合わせる。

(2) 利用者負担の取り扱い
 両制度を利用した場合には、それぞれ定率負担が生じるが、障害者保健福祉サービスの利用者の負担上限に係る計算方法をどのように考えるべきか。
世帯に与える負担という点を重視して、合算して計算すべきという考え方
利用額に応じた負担という点を重視して、別に計算すべきという考え方

図


2)市町村、サービス提供者に係る問題
支給決定手続等の整合性の確保
 両制度を利用した場合には、障害保健福祉サービスの支給決定と介護保険の要介護認定を受ける必要があるが、別紙のような手続きの流れについてどのように考えるか。

市町村、サービス提供者等の事務負担の軽減
 効率化のため、請求書の様式について障害保健福祉サービスと介護保険共用のものとする等の取り組みについて、どのように考えるか。
 障害保健福祉サービスと介護保険で、サービス提供者の指定について重複することが多くなると考えられるが、みなし指定等の効率的な仕組みについて、どのように考えるか。


サービスの給付決定手続き(介護保険を併用する場合)


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