04/10/21 労働政策審議会安全衛生分科会第13回議事録            第13回労働政策審議会安全衛生分科会 1 日時  平成16年10月21日(木)10:00〜12:00 2 場所  経済産業省別館1020会議室 3 出席者  (委員)公益代表  櫻井委員、今田委員、北山委員、内藤委員、和田委員      労働者代表 仲田委員、中桐委員、高橋委員、眞部委員      使用者代表 加藤委員、金子委員、小島委員、讃井委員、中田委員  (事務局)     青木労働基準局長、小田安全衛生部長、中沖計画課長、            寺岡安全課長、阿部労働衛生課長、古川化学物質対策課長、            川島国際室長、高橋建設安全対策室長、中村環境改善室長、            角元化学物質評価室長 4 議事録 ○櫻井分科会長  ただいまから「第13回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催します。今日は名古屋 委員、平野委員、鈴木委員、徳永委員、芳野委員、伊藤委員、山崎委員は所用のため欠 席です。この結果、労働政策審議会令第9条に規定する定足数を満たしておりますの で、当分科会は成立しております。  今日の議事に移ります。今日の議題は前回に引き続き「今後の労働安全衛生対策」に ついてです。資料に沿って審議を進めますが、前回は検討項目を5つに分けたうちの1 と5についてある程度議論しましたので、今日は2の(1)「一体的な安全衛生管理の構 築について」から始めたいと思います。事務局から説明をお願いします。 ○計画課長  資料No.2−1に基づき説明します。「検討の視点」です。検討会の報告書では、分 社化が進む中で、事業を同一の場所で実施し密接な経営上の関係がある等、一定の条件 下において、ある企業グループ内の安全管理者等が、他の事業場における管理を併せて 実施することができる仕組みを必要と提言しています。労働安全衛生規則第4条の第1 項第2号において、安全衛生管理者の選任に当たって、専属性の要件があり、その事業 場に雇用される従業員であることが要件になっています。今回はこの要件を緩和するこ とによる対応が可能ではないかということで、緩和する場合の要件についてご議論いた だければと考えています。  例えば対象となる事業場が同一の場所にあることは必要ではないか、これが1点目で す。  報告書では、密接な経営上の関係にあることを求めていますが、具体的にどのような 内容が考えられるかについてご議論いただければと思います。視点においては、分社化 された親子事業場である場合を挙げていますが、子会社の要件として、例えば連結会計 制度における子会社とすることも考えられます。このほか親会社、子会社の申請により 監督署長が認めた場合であること等についても、要件とすることを検討しています。な お、わかりやすいように3頁に「兼務の考え方」ということで、非常にラフな図です が、試案の形で整理しています。今回の考えは、1つの事業場が分社化により分かれた 場合について認めようというもので、1つの試案で資料を出しています。専属性の要件 については、いわば現場の実態を知悉している必要があるという意味ですが、事業場の 一部を分社化して分離した場合には、もともと1つの事業場でしたので、現場の事業場 をよく知っていることに欠けることはないわけです。分社化された小規模の子会社では 安全衛生管理について、十分な知識を持つ者を必ずしも確保できない場合もあります が、こういう形で人材を確保して、水準の確保も可能になってくるのではないかという ことです。なお、これは衛生管理者についても、規則の第7条において専属要件が設け られており、安全管理者と同様の仕組みが必要と考えられますので、これについてもご 議論いただきたいと考えております。  次に視点(2)です。報告書では、外部の有用な人材を活用する視点から、有害な業 務がない業種について、事業場に直接雇用されていない者であっても、一定の条件の 下、衛生管理者が選任できるような仕組みが必要と提言しています。例えば有害業務が 少ないことから、第二種の衛生管理者の選任が認められている業種に、このような仕組 みを導入してはどうかと考えております。導入に当たっては、どのような条件を満たせ ばよいと考えるかについてご議論をお願いしたいと思います。例えば、その事業場に常 にいるという意味で、常勤であることはまず第1に必要と考えていますが、常勤であれ ば労働者派遣、あるいは準委任のような形を認めてもよいと考えられるのではないかと いうことです。  なお、このほか外部の者を選任した場合に、円滑に業務を行わせるため、留意事項な どを通達で明示していくことも必要であると考えております。例えば衛生管理者として 行う具体的業務、また必要な権限の付与等を契約書で明記していくこと。あるいは事業 者がその事業場の健康の問題、あるいは衛生の問題について十分な情報提供を衛生管理 者に行う。こういうことを留意事項として明示することではどうかと考えています。説 明は以上です。 ○櫻井分科会長  ただいまの説明についてご意見、ご質問があればどうぞお願いします。 ○加藤委員  分社化した子会社の50人、100人未満の所では、なかなか衛生管理者の試験もうからな いです。それから安全管理に弱いところがあろうかと思いますので、こういう考え方で 進めていくのは非常にいいことだと思います。ただ心配事も2、3あります。例えば安 全管理にしろ衛生管理にしろ、ある仕事についての安全管理だけを見ているのではな く、やはり仕事そのものをどう回していくかの中の一部として、安全衛生管理があると いう部分を考えると、親会社が指導するにしても、その面だけを見て安全だというのは なかなか難しいだろうと思います。そういう意味で常に仕事が見られる全体のような権 限、責任というものをある程度付与していかないと、災害の防止という突っ込んだとこ ろまでいけないのではないかという不安が1点あるかなと思います。やはりPDCAを 回すという意味では職場などにできるだけ入り込んでいくことが非常に重要ですから、 その辺で是非両者の関係がうまくいけるような仕組みも作っていかないと、形だけにな り名義貸しだけになってしまっては何の意味もありませんので、その辺も是非お願いし たいと思っています。  併せてアウトソーシングですが、これもいまと同じように、長い間衛生管理者を経験 された方をうまく活用していくという意味でも、これは大変いいことかなとも思ってい ます。できれば二種だけではなく、やはり一種にも広げていっていただき、常駐という 意味ではそこの中の仕事は理解しやすいだろうと思いますので、そういう所にも将来い けると非常にいいのかなと思っています。是非検討いただければと思います。 ○計画課長  具体的にこれは省令で要件を考えるので、その時点においては適正な運用がなされ る、特に親事業場と子事業場の間できちんとした連携がなされるように、権限が付与さ れるように、そこは要件で書くか、あるいは通達できちんと明示するかを考えていきた い、検討していきたいと考えています。  第二種に限定せずにいいのではないかというご意見ですが、ご存じのとおり衛生管理 業務のうち、有害業務に関わるものは製造工程、作業方法などそれぞれの事業場固有の ものと密接に関係しているわけで、適切な衛生管理を行うためには、相当程度その事業 場について知悉していることが必要であろうということです。そういう意味で実は専属 の要件があるわけです。したがって有害業務を含むような部分までの衛生管理業務を必 ずしも事業場について知悉していない外部の方が担うということは、場合によっては衛 生水準の低下の危険性もあるわけです。一方、有害業務を含まない衛生管理業務につい ては、健康診断に関わる業務など各事業場に非常に共通したものが多いわけです。必ず しも内部の者でなくても、適切な管理を行うことが可能なわけで、先ほど加藤委員から ご指摘がありましたような、衛生管理業務を非常に長く行うというのは、ベテランの方 を使うことで、かえって衛生管理について幅広い知識、経験を有する方が、業務を担う こともできるということで、水準の向上にもつながるのかなと考えています。こうした 観点から今回は二種に限らせていただいたということです。 ○仲田委員  質問ですが、「密接な経営上の関係」ということで、1つには分社化ということが挙 げられていますが、これはイメージとしては多分申請が百パーセント親子みたいなもの ならいいではないかということだと思いますが、これがどのくらいまで検討の中で広げ られるのかなということもあったのではないかと思います。ある面ここに限定している ように感じますが、その辺の経緯を教えていただければと思います。 ○計画課長  今回、検討会の報告書が作られたときの議論ですが、従来1つの事業場として運営さ れてきた。それがたまたま分社化により分かれた場合は、1つでやってきたわけですか ら、当然親事業場も分社化された部分は非常によくわかっている。前と同じような形で 管理することがむしろいいのではないか。というのは、分かれてしまうと小さな所では 人材が確保できない。それよりはむしろノウハウを持った方がいる大きな親会社にやっ ていただくほうがいいのかなという観点から、導入したわけです。  では実際にはどのような基準かというご指摘ですが、分社化された後の関係を考えた ときに、ここで試案として出しているのは、分社化された親子事業場であることと同時 に、連結会計制度における親子会社であることを書いてあります。これはやはり経営上 密接な関係があり、親が子についてある程度責任を持っている。そういう部分があれば 安全管理についても同時にやっていただくのがいいのではないか。会計上も別になって しまうと、全く別々の方向に進んでしまって、それぞれ利害が反するような場合に、調 整がつかなくなるかもしれないという懸念もありましたので、やはり一定程度密接な関 係があり、それぞれが足並を揃えて進んでいける方向にある所に認めるのがいいのでは ないかということで、今回こういう要件を考えております。 ○仲田委員  私もどれがいちばんいいのかはよくわからないのですが、実態的に考えると1つの事 業場の中で、いろいろな企業が組織形態なり、分社をしたり、提携したりして、従来は 1つの社でやっていた仕事を百パーセント子会社もいれば、あまり仕事のない所も同じ 方向に向かってやるという形があるので、その辺を一体的に見るという視点は必要なの かなという気もしていました。ただやはりそこは法的にはあまり広げることはなかなか 難しいということで。 ○計画課長  やはりどこかで切っていただかないといけない。そのときに現在、法制度上は持ち株 基準、支配力基準を原点にした連結会計制度がありますので、これを提案化させていた だいたということです。 ○櫻井分科会長  ほかにありますか。 ○中桐委員  提案されている内容で賛成したいのですが、先ほど加藤委員から質問がありました が、それぞれ安全管理者、衛生管理者、マネジメント・システムを回していくことにな るとしても、やはりそういうものを学習し、活動する時間の確保も必要だろうと思いま す。そういうことも今後検討していかないとなかなか大変な作業に、活動になるかなと いうことが心配されます。2番目で、派遣労働者、準委任を認めたらどうかですが、こ れについてほかにあるか、もう少しご説明いただけますか。 ○計画課長  形として何があるかを考えましたが、いちばん重要なのは、外からやって来た場合 に、受け入れた側の事業者と、派遣なりを受けた衛生管理者との間に、きちんとした関 係がなければいけないという点がやはりポイントです。派遣であれば指揮命令系統がは っきりしているので、その事業者の指揮命令に基づいてきちんと事業場内のことができ ます。また準委任ですと当然契約が前提となり契約の中で与えられる権限等がはっきり 書かれるので、やはりこれもきちんとした事業者の指示の下にやることができます。や はり関係性が明確でなければいけないだろうということで、今回例示としてこの2点を 挙げたわけです。もちろんこれ以外にも考えられるかもしれませんが、取りあえず検討 した中では、これ以外のものはなかなか関係性が薄いので難しいのかなという感じもし ています。 ○中桐委員  いまのご説明でよくわかりました。前回の法改正時も含め、私どもも派遣労働者問題 の安全衛生関係について、常用の労働者と同等の扱いも含めいろいろ議論してきまし た。これについては賛成したいと思います。 ○内藤委員  労働者側委員からご質問があった点等について、加えてご質問および確認をさせてい ただきたい点があります。まずこの方向性としては、大変理解ができることですので、 その方向で進めていただきたいと思いました。  まず論点1、「検討の視点」で、今回は例えば支配力、あるいは持ち株基準等から会 計上の連結制度を基準として、かなり限定された形でお考えになると理解しましたが、 この点については法律学から申し上げると、1つには、例えば重層的な下請関係であっ た鹿島建設事件等の最高裁判決等があるように、おそらくはそういういわゆる下請関 係、請負関係だけでなく、現代社会では1つの事業場の中にさまざまな形での雇用関 係、先ほど使用者側委員からアウトソーシングの話も出てきましたが、大変契約関係が 複雑になっていると理解しています。その場合に、今回はある意味で限定的な形で、ど うしても労働安全衛生規則等の改正が入りますので、条文上明らかにしなければならな い部分があるとは思います。将来的な方向としてかなりそういう柔軟な対応が、複雑化 する雇用関係に対して対応できるような形をお考えになっていらっしゃるかどうか、こ れは確認および質問をしたい点です。  2点目としては、「検討の視点」の第2の部分、いまお話を伺ったかぎりでは、まず 第二種衛生管理者に拡大と言いますか、フレキシビリティーを入れることに賛成です。 ただ少し不安でしたのが、ただいま労働者委員がおっしゃったように、いわゆる派遣業 法で課長のご説明では、契約関係がしっかりしていて、派遣元あるいは派遣先の責任を 契約書上明らかにできるというお話でしたが、日本の場合では、一般労働者派遣と言い ましょうか、非常にある意味では必要なときだけ限定的に契約期間を設けるようなスタ イルが一般的ですので、これは常用雇用である派遣労働者に限るのか、あるいは、そう いう意味合いでどうしても一般的には契約関係はあれども、派遣労働者の雇用の安定度 という意味では、多少不安定感が付きまとうと聞いております。  その辺り、つまり失礼な言い方をしますと、非常にドラスティックな一例を挙げま す。例えば、場合により、衛生管理者等との関係で、非常に問題点があるではないか と、使用者や派遣先に対して指摘をした場合に、雇用関係に何か影響が出るのではない かという不安感がよしんば付きまとうとすると、これは問題ではないかと感じました。 その辺り、派遣業法等との関係において、どのような議論をなさったか。あるいはどの ような補填を考えていらっしゃるかという点、この2点、今回の検討の視点に関しては 質問いたします。 ○計画課長  まず将来的な方向性。これはご存じのとおり、罰則にかかわる分ですので、やはり基 準をはっきりさせる必要がある点が1つあります。ではこの制度がどう定着して、どう 運用されていくのか。要はこれをやることにより、安全衛生水準が向上するかどうかを 見ていく必要があると考えております。これが本当に効果があるのならば、将来的に拡 大する方向も考えられるわけです。そういう場合にはこの場に報告、検討をお願いして 拡大していくことは当然あり得ると考えております。  派遣の関係は、先ほど、まず常勤でなければいけないということを申し上げました。 これはその事業場にずっといて、かつコロコロ変わってもらっては困ると考えておりま す。したがって要件としてどう書くかまだ検討中ですが、ある程度長期間そこで働くこ とを前提にしたいと考えております。そういう要件を通達に書くことにより、発言をし たことで替えられることがないようにと考えていきたいと思っています。 ○内藤委員  いまのお話はよく理解しましたが、派遣業法のほうがネガティブリスト化されて拡大 したときに、いまほとんどの業種で派遣を導入できるので、導入をした際にある意味で は長期にわたり、例えば1年以内の労働契約期間を次々と更新する形でずっと使うこと に対して、ある一面ネガティブと言うか、それだけ長期にわたり雇用するならば、常勤 化しようという形のご提言がありました。これは失礼な言い方になってはいけません が、「常勤であれば」ということで、「常勤に見合う派遣労働者」という概念が、いま 派遣業法との関係で少しある一面矛盾、それを含まないだろうか。つまり常勤化されて しまうならば、むしろもう派遣ではない。あるいは派遣業法ではそれに対して別意な扱 いをするのではないかと思いましたので、その辺りの調整をどのようになさっているか という話です。 ○計画課長  「常勤」という言葉を不用意に使い大変恐縮でした。我々が常勤と書いたのも、要す るに1人で何カ所も衛生管理者として見る、そういう派遣を避けたいという意味で常勤 としました。したがって全く先生がおっしゃるとおりです。そうではなく、その事業場 だけきちんとずっと1カ所だけ見てくださいと。しかも長期間見てくださいという意味 で使っただけです。したがって常勤という言葉を使うのは非常に不適切だったと思いま す。これは言葉を直したいと考えています。 ○内藤委員  ありがとうございます。その辺り是非お願いします。一方で、労働安全衛生として は、長期的な視点である使用者、あるいはある事業場を見てくださる方をお願いしたい と思うのですが、他方、派遣という非常に不安定な雇用形態を導入すると、矛盾点も出 てくるので、その辺りの対策、検討をお願いしたいと思います。 ○計画課長  関係当局ともよく話をしてまいりたいと思います。 ○加藤委員  ここのテーマが安全管理の構築ということで、安全管理体制をどうやっていくかが書 いてあるわけです。前回の議論の中でも、安全管理者の教育が出てきていて、それは非 常にいいことだと思いますが、こういうよその会社まで見ていこうということになって いくと、専門的な要素と申しますか、レベルもかなり要るような気もしてくるのです。 そういう意味では海外、例えば欧米などに比べて、そういう人たちの専門性というか、 それは非常に低いような気もしております。確かにコンサルタントの制度はあります が、安全にしても人間工学的なスペシャリストにしても、そういう制度がなくて、ある 意味では中途半端だと思います。いろいろな資格は確かにたくさんあるのですが、一度 こういう機会に将来に向けて、たくさん作ってきた資格を1つに合わせながら、どうい う人たちを養成していったらいいのかを是非ご検討いただけるといいなと思っておりま すので、よろしくお願いしたいと思います。 ○計画課長  わかりました。長期的な視点で考えていきたいと思っております。 ○櫻井分科会長  衛生管理者についても同様の仕組みが必要と考えられるがどうか、という質問がここ では視点としてありますが、よろしいですね。 ○加藤委員  はい、問題ないです。 ○櫻井分科会長  ほかにございますか。それでは次に進みます。2−2「元方事業者による安全衛生管 理の構築について」です。事務局から説明をお願いします。 ○計画課長  資料No.2−2に従い説明します。報告書では元方事業者と請負事業者の労働者が、 同一の場所において作業を行う場合には、元方と請負との連絡調整の労働災害を防止す るための対策を講じることが必要だというような趣旨の提言があるわけです。こうした 対策を講じることが必要な業種としてどのようなものがあるか、まずこの点についてご 議論いただければと考えています。例えば労働災害が頻発している製造業では必要では ないかと考えております。  次に、義務付ける内容、措置の内容です。請負人の混在作業の災害発生事例を検討し たところ、そのうち作業間の連絡調整が行われていれば、防止できたものが非常に多か ったことから、今回作業間の連絡調整等としてはどうかと考えております。連絡調整の ほかに具体的にどういう措置を講ずることが必要であるかについてもご議論いただけれ ばと思っています。例えば災害事例を見てくると、合図の不統一等による事例が見られ たので、合図の統一等を入れてはどうかも考えております。  なお資料6頁、現在、安全衛生法30条において、特定元方事業者、建設、造船につい ては一定の措置が明記されています。特定元方の講ずべき措置として書いてあります。 (2)の「作業間の連絡調整」以外にもいくつかの措置はあるわけです。ただこういう措 置については、毎日、日々現場の状態あるいは作業、下請業者が変わるという建設業な りの独特な業態に着目した措置で、今回対象となる製造業等とは異なるところがありま す。実はこうした措置が行われなかったことにより、災害が発生したと考えられる事例 がほとんど見られなかったこともありますので、今回の措置の内容としては含めない方 向で考えております。  最後になりますが、今回の義務については、この法第30条に並ぶ規定ですので、罰則 付きとする方向で考えたいということです。以上です。 ○櫻井分科会長  ただいまの説明について、ご意見、ご質問はいかがでしょうか。 ○中桐委員  先に質問させていただきたいのですが、製造業に限りという部分について、できるだ け広くという気持はあるのですが、現実的にはこうかなと思います。1点、例えば、請 負の労働ということでコンピュータを使う作業がありますが、ここではたぶん入らない という提案でした。それに対しては確かに家内労働法など別の方法もあるのでしょう が、そちらの安全管理といったものについては、今後どのようにされていくのでしょう か。  連絡調整が合理的ではないかという提案ですが、私どもはもともとより多くの情報、 情報に限らず造船業、建設事業場などで行っているようなものにすべきではないかと思 っております。確かに、パトロールをするなどといった業務が、必要もないのに書いて あるのもおかしなことですし、いちばん必要な事項ということであれば、連絡調整では ないか。これについては賛成をしたいと思います。 ○安全課長  今回の連絡調整については4頁をご覧ください。平成8年と平成13年を比べても、請 負を使っている企業の数が非常に増えてきていることから、企業の実態の変化というも のが背景にあります。それを反映して、構内の下請労働者が被災するケースが非常に多 くなってきており、その被災率は元請の2倍ぐらいになっています。災害事例をいろい ろ当たってみたのですが、1つの建屋の中で元請と下請が、また、下請同士が混在した ことによって起きる事故というものが結構目立っております。今後このような状態は続 くと考えられますので、そのような事故を防いでいくことが必要なのではないかと理解 しております。  混在したときに危険が生ずる、その危険をどう防止するかということにつきまして は、前例として建設業や造船業があるわけですが、中桐委員からも話がありましたよう に、製造業と建設業とでは混在の仕方が少し違います。建設業の場合、日々入ってくる 下請業者が変わったり、労働者も変わったりします。建物を建てたり、壊したりという 作業ですから、現場そのものが日々変化します。製造業の場合は、下請業者が日々入れ 替わるということも非常に少ないですし、労働者も割と固定的です。日々、仕事が変わ るということも非常に少なく、連絡調整をきちっとやれば、いま起きているような災害 は防げるのではないかということから、混在したときの危険を防止するための対策の1 つとして連絡調整があると考えております。  コンピュータを用いた作業において請負ということは結構あるわけですが、その中で の問題は、混在したことによって生ずるという危険とは少し違うので、別途違う視点で 捉えていかなければいけないのではないかと思います。 ○加藤委員  少し細かい話になるかもしれませんが、親会社が元方になる場合と発注者になる場 合、例えば、専門的な業者に発注する場合は元方に任せてしまい、発注者だけになるこ とがあると思います。どのようなケースで線が引けるのかということもある程度明確に していただきたいということが1点あります。作業の連絡調整について、例えば、相互 に物の受け渡しがある、設備の機器を貸与するなどといったことも含めて、どのような ことを言われているのか、ある程度明確にしておいたほうがやりやすい、間違いがない のではないかと思っていますので、その辺をどう考えればいいか教えていただきたいと 思います。 ○安全課長  後段の連絡調整につきましては、前例の建設業に係る法令の中身をそのまま引っ張っ てきています。災害の事例を見ると、例えば、物の運搬を共通のフロアでやっているケ ース、つまりフォークリフトが動いていたり、手押しで人が物を運搬しているなど、い ろいろな業者の労働者が入り混じっているような場合、フォークリフトが動く所と人が 運搬車で運搬する所とをきちっと分離することも1つかもしれません。非定常的な修理 や点検については、例えば、下請の人が修理しているときに、電源を入れて感電をし た、クレーンの修理をしていたら、違う下請の人が動かして被災したなどの事故がある ため、監視人を置く、仕事の段取りをきちっと調整するなど、そのようなことがメイン になるのではないかと思います。  連絡調整につきましては、建設業の場合もその内容を明確に法律に書いていないわけ ですが、いま述べたようなことを例示的に通達等で明確にしていきたいと思います。元 方事業者として協力会社に一部の仕事を請け負わせている場合に、元方と下請、下請同 士が混在しているという場合の危険を防止するという観点で、この事項については考え ております。大規模な修理工事などを外注する場合については、別途手当する必要があ ると考えています。 ○櫻井分科会長  「合図の統一等」ということが1つだけ例として出ていますが、この辺りに何か追加 すべきことはありませんか。 ○計画課長  例示として、合図に似ていますが、現場における標識の統一のようなものも考えられ ると思います。 ○櫻井分科会長  それも連絡調整の中に入るのでしょうか。 ○安全課長  建設業の場合は別立てです。 ○加藤委員  製造業は建設業と違い、ある期間限定ということもあると思いますが、それ以外に、 おそらく常態化していく可能性がある作業もあると思うのです。そのような意味では、 可能であれば、元方でのいろいろなルールや規則に請負業者もならってもらい、ある領 域の中では一体化していくことが、間違いが起こることが少ないのではないかと思って おります。 ○安全課長  そのルールの1つが連絡調整や合図の統一で、例えば、クレーンを運転するときの合 図は、元請であろうと、どんな下請であろうと、同じ合図でいくなど、そのようなルー ルを決めることが必要であると考えています。実態上はやっていただいている部分も結 構あると承知しております。 ○加藤委員  経験から、業者がいろいろな会社に入っている場合、私どもの会社はこのようなルー ルであるとか、別の会社はこのようなルールであるといった社内ルールは結構あって、 そこに勘違いが出るようですので、その辺をどのようにしていくかということもあると 思います。相手があまり規模が大きくない場合、同じ人がいろいろな会社に行く場合も あり得るので、その辺をうまく調整していくことが必要だと思っております。 ○櫻井分科会長  他になければ先に進みます。資料No.2−(3)、「施設・設備の管理権原に関する安全 衛生対策について」、事務局から説明をお願いいたします。 ○計画課長  報告書においては、危険・有害性の高い設備の保守等の作業を外注する場合、注文者 が請負事業者に災害発生防止措置をとるため必要な危険・有害性に関する情報を提供す る仕組みが必要という提言でした。これに対して、どのような設備について情報の提供 が必要と考えられるかについて、まずご議論をお願いしたいと考えております。  例えば、実際に情報提供が行われなかったことによる災害が発生した爆発・火災、あ るいは急性障害のおそれのある物質といったものを取り扱う設備はどうかと考えており ます。それと併せて、どのような情報が提供されることが必要かについても議論してい ただきたいと考えております。例えば、取り扱っている物質の危険性・有害性、作業上 の注意事項、安全衛生に関する措置で注文者が講じたものなどの情報が該当するのでは ないかと考えております。  資料5頁で私どもの1つの試案、仕組みの考え方を示しています。危険・有害情報の 流れとしては、発注者から元請へ、さらに下請に流れていくという形です。対象とする 設備については、引火性の物、可燃性のガス、あるいは大量漏えいし、急性的障害を引 き起こす物質を製造、取り扱う設備、対象とする仕事については、改修・清掃等で分解 あるいは内部の立入りがあるもの、情報の内容は取り扱う化学物質等の危険性・有害 性、作業についての注意事項、注文者が講じた措置等というのが考え方としてあるので はないかということです。このような情報提供の義務は、最近の重大災害の事例を踏ま え規定するものですので、罰則を付ける方向で考えていってはどうかと思います。 ○櫻井分科会長  ただいまの説明に対して、質問等があればお願いいたします。 ○加藤委員  発注者の責任問題が大きく出ていると思うのですが、注文を受けた側も有害性などの データをある程度要求していくようなシステム、上から下に流れる図が出ていますが、 それだけではなく、請負側の弱さはあるかもしれませんが、発注者側に資料の提供を求 めていくといった両側のシステムがあってもいいのではないかと思います。そのほうが 確実になるのではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。 ○建設安全対策室長  建設業界といろいろ意見交換する中で、今回の改正は化学設備等の危険・有害性に関 する情報の提供なので、プラントメーカーなど非常に詳しい業界もあるのですが、建設 業界としては化学物質についてかなりのノウハウを持っている所は意外に少ないので、 何を求めたらいいかということがよくわからないケースも多いわけです。ですから、一 義的には義務をかけるのであれば、いちばんノウハウのある発注者が危険有害性情報を きちんと出さないと、発注者の持っているものは果たしてどのような範囲のものかとい うことは請負業者側からはわからないし、企業秘密だと言われて拒否されても困りま す。そのような意味で、指導ベースで、元請や下請が発注者に情報を聞くということを 入れてもいいとは思いますが、義務付けとなると、どの範囲の情報を聞いたらいいのか もよくわからない、そのようなことから今回の事故も起きているわけですので、おっし ゃる趣旨は何らかの形で反映したいと思いますが、義務付けとなるとちょっと無理があ るのではないかと思います。建設業界からはそのような意見をいただいております。 ○加藤委員  1つ心配していることは、大規模な化学メーカーのように、プラントそのものの内容 を非常に細かくしている所は別として、小規模なプラントをある製造ラインの中の一部 として使っているような場合、メーカーが作ったものをそのまま取り入れて使っている ような場合、発注する側がどこまで根本的に理解しているか、難しい面も多少あるので はないかということです。場合によっては、買ってきた元のメーカーが保守点検するよ うなときに、発注者側よりもそこのほうが詳しいのではないかということも考えられま す。法的にその両方を分けて規定することは難しいと思いますが、必ずしも発注者がす べてというのは難しいところがあるのではないかと感じました。 ○建設安全対策室長  発注者より下というより、発注者より上のほうに情報をもらうようにということで す。発注者がわからない情報は、それを作ったメーカーなどに聞くということを義務付 けるということは検討の余地があると思いますが、元請、下請が発注者に聞くというこ とはちょっと無理があると思います。メーカーに聞くということでは包括基準などの話 もありますが、メーカーにもっと責任を負わせるべきだということは、1つ今後の検討 課題だと思っております。 ○計画課長  実際の指導ベースの中で、わからなければメーカーに聞くということを指導していく ことは当然考えられますので、運用については考えたいと思います。 ○中桐委員  先ほどの項目で聞くべきだったかもしれませんが、保守点検作業でも常時そこに外注 する部分もあると思います。その際のリスクアセスメントというのは誰が行い、元方や 発注者がしているのであれば、その情報はきちっと伝達するなど、その辺はどのような ことを考えられているのですか。 ○安全課長  保守点検ですか。 ○中桐委員  保守点検に限らず、設備のリスクアセスメントをどこがやるのかということです。伝 達する情報の中に、そのようなものが入っているのかどうかについて伺いたいのです。 ○安全課長  前回も議論していただいたリスクアセスメントについては、それぞれの事業者が責任 を持ってやるというのが労働安全衛生法の基本的な考え方です。事業者が、その使用す る労働者を保護するための対策の1つであり、他のいろいろな対策と同じようにリスク アセスメントもそれぞれの事業者がやっていただくということになります。ただ、例え ば、元請と下請があって、元請がやった部分については下請の事業者が同じことをやる 必要はないので、それぞれの役割分担の中で実態上やっていただくということになりま す。建設業の場合もそれぞれの事業者に責任がありますが、実態上、元請が結構やられ ているのではないかと思います。 ○加藤委員  いまの質問に関して、私が最初に質問したのもそこに通じるところなのですが、リス クアセスメントというのは、事業者責任がそこでも発生するわけですから、仕事として 請け負った側が現場でやるべきことだと思うのです。そのような意味では、課長が言わ れたように、発注者側がやったものについてはそれをうまくもらえばいいと思うのです が、すべて発注者側だけの責任になることに問題はないか。前回の議論のリスクアセス メントの考え方からすれば、請け負った側もある程度やるべき話で、その場合、どのよ うな情報を発注者に求めていけばいいかということも、ある程度求めていくような制度 をつくってもいいのではないかと思ったのが最初の質問です。 ○建設安全対策室長  リスクアセスメントは当然それぞれの事業者に実施する義務があるのですが、リスク アセスメントをやるために必要な場合は情報提供をしてくださいということであって、 発注者にリスクアセスメントを義務付けているわけではありません。そこは請け負った 元請のプラントメーカーも当然リスクアセスメントをやりますし、そのとき、自分たち が持っている情報だけでは足りないわけですから、発注者がいちばんよく知っている情 報をいただく。その下請で入ってくる業者が何社もあるわけですから、そこに対しては 同じような情報を全部下に伝えていき、それぞれが請け負った作業のリスクアセスメン トをする際にはその情報を参考にしていくという仕組みになると思います。 ○讃井委員  いままで議論してきた個別の項目ではなくて、次の議論に移るに当たっての質問で す。今般の制度改正、議論においては、いくつかの研究会の報告から出てきた提言を基 に議論しているわけですが、それを貫く基本的なスタンスをどのように考えていくの か、そこが非常に重要ではないかと思います。それぞれの報告書の中には基本的な視点 ということで前段に書かれているわけですが、いろいろな問題を考えるに当たり、今後 の労働安全衛生対策の在り方に係る検討会の報告書で提示されているような基本的な考 え方を、すべてに適用して考えていくのかどうか。  もう少し具体的に述べると、報告書の中で、いま働き方や企業の在り方などが変わっ てきているので、それに有効に対応できるような労働安全衛生システムをつくっていく べきであるということが前提になって、事業場の個別の特性に応じた労働安全衛生対 策、事業主の自主的な安全衛生対策の促進、支援をする、さらに、労働者の役割、人間 力を深める、中小への支援といった考え方が必要であることが示されていると思いま す。この辺はコアの部分、重要ではないかと思いますが、このような前提に立って、次 の過重労働・メンタルヘルス、その後の項目についても考えていくということでよろし いのでしょうか。その辺の考えを聞かせていただきたいと思います。 ○計画課長  労働安全衛生の今後の対策の在り方の検討会では、いわば、全体として今後の安全衛 生対策をどう考えていくかということを思想的に整理していただいたので、これは当然 前提になると考えております。実際に自主的な部分がどうかと言えば、マネジメントシ ステムやリスクアセスメントなどの部分に出てくるわけですし、人間力という観点から 言えば、安全管理者についてもっと教育を充実させればいいのではないかということも あるわけですので、そのような部分に応じて全体としてはできている。過重労働・メン タルなどはどうなのかという話がありますが、これは讃井委員が最初に言われたよう な、雇用の流動化など、企業内の変化もあり、そういったものの中での過労死、うつ病 の増加という状況がありますので、当然、状況認識は共通だと考えております。 ○讃井委員  基本的なコンセプト、スタンスというのは、どのように考えていらっしゃるのでしょ うか。 ○計画課長  基本的なコンセプトとして、社会、経済情勢が非常に変わってきて、企業の中も変わ っていますし、労働者の働き方も変わってきている。そうした中でどのような問題が出 てきているかということを振り返ってみると、安全面では、日本を代表するような企業 でも爆発事故が起こった。これは日本経団連の指摘にあるように、たぶん人材力といっ たものが1つの要因ではないかと考えておりますし、働き方の変化が個人の健康問題に も当然結び付いているので、いわば、社会情勢、企業の中における状況、労働者の働き 方が変わった中において、従来、安全衛生法が予想していなかったものが出てきた。こ れについてどうしたらいいかを、今回、安全の部分であれば危険・有害性の調査という 形、過重労働・メンタルヘルスの部分については新しいものが出てくる。従来、予想し なかったものが、経済情勢、社会情勢が変わり、企業の中の状況が変わった中で、新た な問題として出てきたので、これに対して見過ごすことができないものがあれば、新た な対策の検討をお願いしたいというのが1つの柱です。 ○櫻井分科会長  質問がやや抽象的だと思います。 ○中桐委員  関連して、今回提起されている内容は、政府の第10次労災防止計画にほとんどが入っ ています。リスクアセスメント、マネジメントシステム、メンタルヘルス、過重労働と いったものがすべて入っているわけで、それを推進していく上で、初年度にあのような 事故が起きてしまい、そこでは企業の社会的責任も問われました。行政としての責任も あったでしょうし、企業の責任も問われたわけです。昨年の安全衛生大会では奥田会長 の緊急の通達があったり、特別決議があったりと、大変緊迫した中で行われましたが、 そのような中で、10次防を達成していくために、5年間のうちに実行しなければいけな いことをこの際きちっとやりましょうということで、今回、全体的な安全衛生法の見直 し、点検をしていると理解しています。併せて、マネジメントシステムですからIL O、ISOといった世界的な水準の規制も見ながら、それに合わせようという努力もし ていると思います。そのようなモチベーション、動機で始まったと理解してよろしいの でしょうか。 ○計画課長  この分科会において、大変長い時間をかけて議論していただき、第10次災防計画をつ くったわけです。その中で、このような点については検討すべき点はかなりあったの で、当然、これは我々の宿題だと思っておりました。その中で、宿題の検討を迫る状況 も出てきたということで、委員が言われるように、早急に回答を出す必要があることか ら始めたわけです。 ○櫻井分科会長  他になければ次に進みます。今日の予定としては最後になりますが、「過重労働・メ ンタルヘルス対策について」です。これは3の(1)が過重労働、3の(2)がメンタルヘル スになっておりますが、相互に関係しておりますので、まとめて議論していただきたい と思います。事務局より説明をお願いいたします。 ○労働衛生課長  資料No.2−4に基づき説明いたします。「過重労働による健康障害防止対策」です が、過重労働・メンタルヘルスの報告書の内容を前々回お話いたしました。報告書の中 で、月100時間又は2ないし6か月間に月平均80時間を超える時間外労働を行った場合 に、労働者による医師の面接を法律により事業者に義務付けていったらどうか、あるい は事後措置の実施を義務付けるべきではないか。その際、労働者に対しては、現行の安 衛法の健康診断のように、面接指導を受けることを義務付けるべきかどうかという点に ついてまずご議論をいただきたいと考えております。  次に、これは100時間、もしくは2〜6か月間に80時間というふうにかなり数字を切 っているわけですが、仮にここに達しない場合でも、基本的には労働者の健康保持を考 えると、労働者自身が健康に不安を感じた場合、あるいは職場その他で周囲の人たちが 健康に問題がありといった場合であって、さらに産業医が必要だと認めた場合に面接指 導が必要であるとされています。これについても法律によって、事業者に対してこちら のほうは努力義務を課す。それらの面接を受ける基準については衛生委員会で審議する 項目として考えていったらどうか、ということについてご意見を伺いたいと思います。  この場合は、面接指導が産業医に集中する可能性もなきにしもあらずなわけです。さ らには、事業場外の専門医を全部含めた上で、事業場内で面接指導を希望しない場合 は、外部の医師の面接を受けて、その結果を提出できるような仕組みを考えてはどうか ということです。  こういう仕組み、法律である程度努力義務あるいは義務付けをされることになると、 当然衛生委員会の中で、このような過重労働による健康障害防止対策を審議することに してはどうかについてご議論いただきたいと思います。こうなると、ここにおいて面接 指導を行う産業医の職責が非常に広がり、かつ重要になることになりますので、過重労 働による健康障害防止対策を産業医の職務として、きちんと位置付けて追加してはどう かということです。  月45時間を超える時間外労働を行った場合については、現在、総合対策で指導されて いるわけですが、(2)のとおり、法律によって事業者に努力義務、それから80時間、 100時間というところで義務化すると、各事業場で労使が協議した上で基準を策定する 部分も入ってきますので、この45時間についてはある程度柔軟に対応できるように見直 しを行ってはいかがでしょうかということですので、これについてのご意見を伺いたい と思います。  メンタルについてですが、前回の報告書において、長時間労働を行った者には面接を 受けることになりますが、この面接時に医師によるメンタルヘルス面のチェックをすべ きとされていますが、面接指導を、そのような機会として位置付けていってはどうか、 ということについてご議論いただきたいということです。  事業場内での面接を労働者が希望しない場合は、外部での医療機関、あるいは医師の 面接を受けて、その結果を提出することで代えられることにしてはいかがかということ です。報告書の中では、メンタルに関しては、情報として微妙な部分がかなり出てくる ということで、このような仕組みをきちんと付けておくべきではないかということで す。  メンタルについては労働者が面接を受けて、ただそこで指導されればそれで済むとい う話ではありませんで、管理・監督者、上司、職場の同僚、家庭まで全部含めて相談体 制の整備、介入の仕組みが非常に重要になってまいりますから、これらについては法律 で位置付けた指針を示していったらどうか。また、そういうことがないと、地域・職域 を統括し、職場の上司、周りの人たち、家族の者全部による介入の仕組みをある程度示 さないと、メンタルに対するケアが円滑にうまくいかないのではないかということで す。私どもは、指針を示すなどの方法を考えておりますが、これについてご議論いただ きたいと思います。  先ほどと同じように、メンタルヘルス対策を衛生委員会の審議事項に追加してはどう か。産業医の職務としてのメンタルヘルス対策もきちんと位置付けるべきではなかろう かと考えております。健康というとWHOの定義で、身体の健康、精神の健康、社会的 に健康であることという条件があるわけです。通常、健康と申しますと当然メンタルも 入ることになるわけです。この度、メンタルヘルスを産業医の活動の中にきちんと位置 付けていったらどうか、ということで項目が多いですけれども、ご議論いただきたいと 思います。 ○櫻井分科会長  全体について説明していただきましたが、あえて順番を指定することはいたしません ので、ご意見、ご質問がありましたらお願いいたします。 ○讃井委員  3の(1)の検討の視点の(1)で、月100時間又は2ないし6か月間に月平均80時間を 超える時間外労働を行った場合の面接指導については、2年ちょっと前ぐらいに通達と いうことで、既に施策は講じられているわけです。これを、法律において義務付けるよ うにする根拠といいますか、変更の理由について教えてください。 ○労働衛生課長  基本的には実効性の問題だろうと思います。いままでは通達でやってきたわけです が、それによってこういうことを制度化というか、事業場の中でシステム化してくれて いる所が増えてきたとは言いながら、やはり100時間、80時間というところは、医学的 にこれを超えると虚血性心疾患や脳血管障害が増えますので、この実効性を担保するた めに、法律によって義務化すれば、現実問題として着実にそういう疾患が減るだろうと いうことで、こちらは今後施策の強化になるわけですが、良い方向での強化だと考えて いますので、義務付けでやっていきたいと思っております。 ○讃井委員  現状では、実効性がなかなかないということなのですが、それを法律にすればより有 効だというようなデータがあるのでしょうか。 ○主任中央労働衛生専門官  この検討会の際に、専門家による調査研究が行われた部分があります。主に大企業の 方が中心だと思いますが、産業医を対象としたアンケート調査をしております。その中 で約6割の事業場で、この総合対策は実施されていたという結果が出ています。  ただ、これはあくまでも専属産業医を中心にしておりますので、実施率は実態よりは 高いのではないか、平均よりは高いのではないかと理解しておりますが、そういう所で も6割ということです。当然ながら非専属であるとか中小ということになると、実施率 はもっと低いのではないか。そういうこともあり、確実に実行してもらうことを高める べきではないかと考えております。 ○讃井委員  実効が上がらなかった分析はしているのですか。 ○主任中央労働衛生専門官  上がらなかったというか、まだ総合対策について事業者側の理解が足らないような部 分もあるのではないか、というアンケートの結果も出ております。 ○讃井委員  それは、法律にすれば理解が高まることになるのでしょうか。疑問を感じるのは、こ れはすべての労働者に対して適用されるということです。労働時間の管理にもかかわっ てくるところがあろうかと思うのですが、管理・監督者やみなし労働が適用されている 方々と、一般労働者と労働時間の管理は若干違うかと思うのです。これは一律に適用す るということで、すべての人に対して、時間外労働を把握することが必要になってくる わけです。そうなってくると、労働時間管理のほうの施策との整合性がどうなっている のかに疑問があります。  過重労働による心身の健康を阻害することがあってはならないわけで、これは非常に 重要な問題だと思うのです。時間とリニアで結び付けることがどうなのかということが あります。もちろん、いろいろ専門家の検討の結果100時間、あるいは80時間という数 字が出てきていると思います。過重労働になるかどうかというのは、働き方や職場の環 境などいろいろな要因があろうかと思います。  ただ、そういうのを数字化するのはなかなか難しいので、やはり目安としては労働時 間でということになっていくのかと思いますが、必ず1対1対応で結び付いている要因 ではないものについて通達ということであればまだしも、法律にすることについてはい かがなものかという気がするのですが、その辺も併せてお伺いします。 ○労働衛生課長  100時間という限度の話ですが、時間外労働については労基法第36条第2項で、時間 外労働の協定の限度基準を示してあって、この基準に遵守を求めていることになるわけ です。100時間というところで、安衛法による義務化について罰則等は考えていません。 100時間以上の労働というのは、これから考えていかなければいけないという話です。 これを、100時間という時間切りのほうで禁止していきますと、上限を超えた時間外労 働は一切できなくなる。合理的なこちらのほうが経済的活動を阻害することになるとい うことですので、罰則による禁止は相当慎重にならなければならないと思っています。  時間外労働については、衛生委員会の活用と、労働者と事業主との間で、少なくとも 自分たちできちんと把握して管理することは必要だろうと思うわけです。100時間を超 えた場合、データにより健康に何らかの影響が出てくるのは明らかです。明らかなとこ ろに関して、これをきちんとチェックすることを義務化するのは、健康の確保から見れ ば、いまの潮流の中では当然だろうと考えます。これらの事業場の100時間超えの労働 者の率を見ると、いまのところほんの数パーセント前後ですので、これを義務化しても 実態としてこれ自体はそんなに過重な義務付けになるとは考えていません。 ○金子委員  私は、100時間の時間外労働をなくすべきだというのは大賛成です。ただ、それが健 康と絡めるかどうかはまた別の話だと思うのです。健康上の問題以前に、私は2番の、 自分が健康に不安だったら、医師に面接指導を受けるというのは当たり前だと思いま す。時間が何時間であれ、健康に不安があったら自分で医師の面接を受ける。それは、 産業医であれ、外の医師であれ受けていただいて、ちゃんと提出すればいいと思いま す。提出されたものを拒んだり無視してはいけないというのは当然あっていいと思いま す。  最初は、働く方がどのぐらい疲れているか、どのぐらい具合が悪いか、というところ に置いてもいいような気がするのです。セルフケアとか、自分の健康管理というところ でやっていただきたいと思います。私も、過重労働の総合対策の産業医の部分の指針を 書かせていただきました。うちの会社でやっていくに当たり、まだ2年というのは完全 に実施するには時間が足りないです。時間管理をして、社員の意識を高めて、管理・監 督者にも、働く人にもこういうことがなぜ必要なのかという説明をして、気持よくその システムを動かすには、私の会社は早めに始めたと思っていますが、まだまだ十分な期 間ではないです。45時間をいきなりなくされると、私は折角みんなに周知したのに、い まここで45時間がなくなるというのはどうなってしまうのでしょうという感じもありま す。いま6割に達しているのであれば、もうちょっとで8割に達するのではないかとい うことで、いままでの総合対策の周知徹底や教育の強化というのもあるのかと思いま す。  特に、労災の過労死の認定の申請は上がっていますが、認定はプラトーに達したよう な形ですので、総合対策の指針の効果が出てきているような気もしますので、もう少し 気長に見ていただけたらどうかというのが現場からの気持です。 ○和田委員  医学的な面からコメントさせていただきます。時間で割り切ってしまうというのは、 確かに問題があると思います。そのほかにいろいろなことを考えると、なかなかうまく 整理できないということがあると思います。確かに、100時間以上の時間外労働の者に 対して、明確に疫学的な調査によるリスクは確実にある、という報告がほとんど出てい るわけです。100時間以上は非常にリスクが高いので、それをなんとかしなければいけ ないというのが我々の考え方であったということです。  45時間から80時間の者に対しては、明確な有機リスクがあるというデータはあまりな いです。少し血圧が高くなるというようなデータは少しあるので、それは無視できない だろう。したがって、100時間以上の場合は、是非厳重に対処してほしい、これは明ら かにリスクがある。45時間から80時間の間というのは、ある程度努力義務ぐらいできち んとやっていただければいいのではないかということです。  45時間未満の者に対しては全くリスクがあるというデータはありません。したがっ て、その辺のところの45時間から80時間に関しては、もう少し柔軟に考えても医学的に はおかしくないという考え方です。今回の提案における義務、努力義務、それから45時 間を緩和するというのは、医学的に見ておかしなものではないと考えております。 ○金子委員  メンタルヘルス面のチェックというときに、何を意味しているのか曖昧な気がしま す。心の病気にもいろいろありますし、最近ではわがままと線を引くのが難しいような 状況もたくさんありますので、メンタルヘルス面のチェックと、職場での業務のアサイ メントとの整合性という辺りで、そこに行きたくないとか、出張したくないという気持 との折合いを産業医が付けていくというのは非常に難しいと思います。産業医は伺うこ とができて、それをどこまで会社にオープンにできるかという辺りも難しいのかと思い ます。  3番の家族の気づきという辺りも、プライベートの家庭の問題とかいろいろあります ので、プライバシーの問題や休日の問題などに関して、会社がどこまで口を出して、清 く正しく美しい生活をしなくてはいけない、という指導まで会社がするのかというと、 かなり難しいと思います。現実に心の病気がある方は、家庭にもいろいろ問題があっ て、家でも会社でもにっちもさっちもいかない方が多いので、そこのところまで会社が 踏み込む必要があるのだろうか、という辺りは難しいかと思うのですがどうでしょう か。 ○労働衛生課長  過重労働は時間でやって、物理的にチェックしてくださいというのは、やり方として はわりと単純です。ところが、メンタルヘルスをどうやってうまく動かしていくのかと いうのは極めて難しいだろうと思います。ただ、いままでいろいろな検討会での議論、 いろいろなデータを見ましても、メンタルということになると、先ほども申し上げまし たように、会社だけの問題ではありません。  会社に産業医制度があって、その中である程度健康管理をずっとやっているというと きに、家族や地域も全部含めても構いませんが、そこがメンタルをチェックして、ケア をするきっかけ、あるいはその入口としての機能を果たすというのはかなりできるので はないかと思っています。  産業医に、面接でチェックされました、相談がありました、その後の処置は全部産業 医がやってくださいということでは、おそらく産業医の先生方も回らないと思います。 その後、産業医の人たちが、どのような資源を使って、その人たちに適正なケアをして いくのかということができるようなシステムをこれから作っていったらどうかというこ とで、ここに出ているように「法律に基づく指針で示すなどが必要」というガイドライ ンを、外部の専門家である精神科の先生や心療内科の先生、心理職のスタッフも全部入 れて、どのようなかかわり方が最もいいのかを、今後法律の施行までに十分検討し、か つそのためのシステムを国が私どもの予算措置等を通じて整えた上で行っていきたいと 考えております。 ○金子委員  いまのお話だと、健康診断の中に、メンタルのチェックも入れるような感覚ですか。 ○労働衛生課長  基本的に面接というときには、心身の状態を診ます。身体はどうかという話と、精神 的に何かないだろうかということを診ます。そのときに、何か精神的な問題があるとす れば、それはいろいろなケースが考えられると思います。心身症の場合もあれば、神経 症の場合もあれば、うつ病の場合もあるといったときに、その後どのようなケアをやっ ていくのがいちばんいいのかという話になります。 ○金子委員  ほかにも、統合失調症やパーソナリティリソーダーなどがあります。 ○労働衛生課長  当然です。ですから、そこは産業医だけでは後のケアまではできないだろうと思いま す。だけれども、どういうケアのルートに乗せていくのかというキーマンのような働き はできるのではないかと思っているのですがいかがでしょうか。 ○金子委員  それで、働く方に不利にならなければいいと思います。それがいちばんの心配なので す。いまの私の意見は、経営者側ではなくて、産業医として働く方が、それで会社がそ こまでみることに問題がないと感じているかどうかです。個性の範囲もありますし、心 配症の方もいるでしょう。家庭の養育歴でいろいろ偏りのある方もいます。 ○労働衛生課長  会社がそこまで全部みていく、という考え方でこれができているのではないと思いま す。 ○金子委員  そうです。ただ、医師としては話をしてしまうと気づいてしまいます。 ○労働衛生課長  気づきますけれども、少なくともそれに気づかない状況でそのまま放っておいた、メ ンタルで問題がありましたということは、事業場の事業活動の中で、何らかの不利益な パターンが出てくる可能性もあるわけです。それは、労働者自身の健康の問題です。 ○金子委員  もともと脆弱な方もいますので、その辺を全部産業医の判断というと、かなり基準が 難しいような気がします。 ○労働衛生課長  もちろんです。産業医の先生方や、会社・事業場の産業保健スタッフを支える外の人 たちとのルートを作ることが必要だろうということです。 ○金子委員  それは、いま4つのケアで事業場外のケアというのがあります。 ○労働衛生課長  そうです。そこにもう少し具体的なやり方をこれから提示する必要があるだろうと思 っています。  例えば、精神科医が産業医としてきちんと入ってくれると、メンタルをやるためには いいわけです。でも、精神科の先生方にはそこまで余裕がないと思います。もう1つ は、産業医の先生方に、精神科やメンタルについての研修や勉強をしていただくという のも方法です。ところがケアに移っていくときには、精神であれば職場復帰や地域復帰 に関しても、医師だけでできることではなくて、そこには心理職もいれば、保健師やい ろいろな職種を動員してやっていくのは当然ですので、そういうところでつないでいく ルートを、産業保健の分野といかにしてこれからうまくつくっていくのかということ が、ここでいう提言がうまく実現できていくのか、実効性の問題が非常に重要になると 思います。 ○金子委員  前提として、いまカウンセリングは医療保険でカバーされていませんし、カウンセラ ーの資格はかなりプライベートないろいろなレベルがありますので、まずその辺を整理 してから、会社が安心して利用できるようなシステムを作っていただきたいと思いま す。 ○労働衛生課長  そうなのです。そこで、こういう指針で示すことはいかがでしょうか、という考え方 を私どもは提示させていただいているわけです。これから専門家周辺の心理職その他も 全部入れて、どのようなやり方をしたらうまくいくのかを十分検討した上で、それに則 ったシステム作りをある程度きちんと描いた上で、これを執行に移していく必要がある と思っています。そのための来年度予算を一応確保してあります。 ○櫻井分科会長  長時間労働を行っている労働者は、メンタルヘルスの面でのリスクを負っている集団 ですので、面接時にそういう話になるのは自然の動きだと思います。 ○金子委員  自然にそういう話になるのですけれども、実際に私どもで100時間オーバーの方と面接 をしたときに、「大丈夫です。放っておいてください」と本人が言っても、そのままに しておくと翌月に具合が悪くなる方もいます。本人の自覚の責任、正直に言う責任も一 緒にないとうまくいかない仕組みです。 ○中桐委員  先ほどの100時間の議論は私どもの組織の中でもいろいろ議論がありました。100時間 というのは労働基準法違反であるし、36協定にも違反しているはずですので、そういう ものを認めてしまうことでいいのかという意見がありました。これは、かなり形式的、 原則的な意見だと思います。  もう一方で出てきた意見は、そうは言っても実際にそういうものが横行していて、安 全衛生対策は建前をやっているだけではなくて、実際に防止しなければいけない立場か らすれば、100時間というものがあるということの上に立って、それを管理していくと いうことの発想の転換は大変評価に値するという意見もたくさんありました。  私どももまだ最終的に決めてはおりませんが、これは是非実施していただきたいと思 います。ただ、100時間まで事業者は働かせてもいいのだというようなメッセージでは 困りますし、そうではない形で健康管理をきちんとやるのだということでやっていただ ければと思います。  メンタルヘルスのセルフケアの問題がありましたが、これはILOでも決まっており ますし、作業関連疾患でもありますので自己責任ではないと思います。自己管理を求め られているのだと思います。もちろん家庭の問題などがあったりして、それが労働を通 じてさらに増悪していったという方々で、うつ病を発症している方に、いろいろあれし ろこれしろということができるはずがありませんので、まず現実からスタートしていた だきたいということが1番です。  これが決まっていけば、産業医の皆さんにはたくさんの仕事が出てまいります。大企 業の皆さんにはそういったスタッフも揃っていますし、外部の学者の方々もやっていま す。中小事業場になりますとそれがほとんどありません。頼りになるのは、地域産業保 健センターぐらいしかないわけですが、そちらもまだまだ十分な体制とはいえません。 カウンセリングも健康診断も実施していないわけですので、そういう所を強化していか ないと、中小職場の方々もリスクが高いですし、夜勤の方もそうだと言われております が、そういう方々を救えない。50人未満の所で、全体の6割以上の方々が働いているわ けです。そういう方々の中でも、たくさんのうつ病が発症しているわけですので、そう いう方を救うためにどうするかということでは、地域のサポート体制をきちんとつくっ ていかないと駄目なのではないか。  産業医の先生方もいますが数が少ない、大企業にしかいないということも含めて保健 師や、もっと広ければ地域医療の保健所の保健師という方々も、職域の医療ではありま すがメンタルヘルスに参加してもらうような仕組みをつくり、特に相談体制については 地域でやらなければできないことではないかと思います。  過重労働、メンタルヘルスとは異なりますが、先ほど議論してきた安全衛生の管理の 問題、指導の問題についても、中小事業者が相談に行ける範囲というのは、やはり労基 署の管内であるような単位だと思うのです。ですから、精神センターがいちばんだと思 いますが、そういう所に安全のほうのマネジメントシステムのことについても多少助言 ができるような方がいる、という体制は枠組としてはあるわけですけれども、スタッフ がいないということです。そういう強化をしていただければ、日本のいまの現状、特に 中小企業の現状は変わっていくのではないかと思いますが、そのような形で是非進めて いただきたいと思います。 ○労働衛生課長  いまのご意見は、やってくださいということと、実効性を上げるためには中小の問題 があるというご指摘だったと思います。確かに中小の事業場については、現在でも産業 医の専任化というところで非常に問題があるわけです。これから、これらの実施に当た っては地域産業保健センターを相当強化していく必要があると考えております。いま は、精神科や心療内科のメンタルをやる先生方が、ほとんど産業保健のほうに顔を向け てくれない現実がありますので、いま専門医の団体等ともいろいろ話合いをさせていた だいております。地域産業保健センターにも、そちらの先生方に今後は参加していただ きまして、メンタルを含めた面接や相談体制を充実するような策について検討し、かつ それは予算の裏付けをもって実効性あるものにするつもりで現在いろいろやっておりま す。それも含めて、今後新たな検討、ガイドライン作成、システムを作る作業にこれと 並行して入ってまいりたいと思っておりますので、具体的なご意見をいただきたいと思 います。 ○金子委員  提案ですが、職場で診るメンタルヘルスというときに、うつ病と適応障害のように疾 患を限定していただくと、現場も対応がしやすいですし、チェックリストが使えて、ナ ースにも保健指導のときにチェックができたりします。心の病気全部というと、診断す るのは専門家でないと難しいわけですから、うつ病と適応障害とか、過重労働と深く関 係のある疾患に、過労死のように限定していただくと現実的にはシステムが作りやすい と思います。その辺をご検討いただきたいと思います。 ○労働衛生課長  実効性を担保するために、専門家を集めて検討会をやりたいと思っています。 ○金子委員  非専門家もできるように見ていただきたいと思います。 ○労働衛生課長  また、先生のご意見を伺いたいと思います。 ○内藤委員  私が何か申し上げるのは、屋上屋かもしれませんが、法学部で学んでいる者の1人と して、いま産業医の先生方等が、技術的側面から、そして専門的知識からおっしゃった プライマリーの部分ではなく、ある意味で労災等が起こってしまった後をどう考える か、という視点を持つ者として発言させていただきます。  1つは、非常に著名なケースであった「電通事件」の高裁判決と最高裁判決の相違の 中に現れました。先ほど産業医の先生方等から、本人の健康管理に対する責任はいかが であろうかというお話がありました。もちろん一般論として、私もそれは決して反対す るものではありません。しかし有り体に申しますと、この手の過重労働に関する過労 死、あるいは過労自殺等の事案を、事後的に抽象的に拝見しております。自分自身で管 理できるような状況下であれば、それは起こらないのだと思うのです。  これは、一般的な見方をしてはいけないのでしょうが、ある意味では弱い立場である 労働者側が、そして先ほどのお話にもありましたように、裁量労働等の時間管理を自分 自身でするフレキシビリティが増している中で、自分自身の健康管理をして、これ以上 はとても働けないということは、組織の中ではなかなか言い難いのだと思うのです。  そう考えると、労務管理的な側面から、むしろこれは罰則と裏腹という形でかなり厳 しい処分を付けられることに対してはさまざまな意見、あるいはネガティブな考え方も あるかもしれませんので、その辺りは広い形で管理していただくようなことができない と難しいだろうと思います。私自身は、いま課長などがおっしゃいましたように、相関 関係が非常に高いと言われている労働時間のほうから多少なりと管理をしていただきた いということが1つです。  もう1つは前回いただきました報告書の中に盛り込まれていたことではありますが、 この問題で多少労働相談的なことを伺って思いますのは、有り体に申しますと、自分自 身がメンタルな面でメンタル・ディジーズにかかっていることを公表したくない。そう いったことから、「検討の視点」の(3)に外部の医師の面接等を受けて云々というこ とがありますが、その情報の管理の部分と、そのコントロールを是非とも形成していた だきたいということです。これは私自身それほどよく知っているわけではありませんの で、間違った情報を提供するといけませんが、聞くところによると、アメリカではメン タルヘルスのみならずハラスメント等の苦情処理を、最高経営責任者の直属という形 で、かなりの権限を与えてコントロールしていると聞いています。いますぐそれを作っ ていただきたいとはとても申せません。ただ、できましたらその情報の管理と、そのフ ィードバックの体制のほうも考えていただけますと、将来的課題ですが非常に役立つの ではないかと考えました。 ○労働衛生課長  最初の、自分で管理できないケースであるという話ですが、長時間過重労働につい て、安衛法から罰則等をかけることになると、法律ですので一律にかかるであろうとい うことがあります。好きでやっている人も結構いるのだということ、若いときにさんざ んやって疲れたら休むという人たちもいるということで、労働の多様性についての問題 も出てくるので罰則はちょっと無理ではなかろうかということです。現在のところ義務 化はいたしますけれども、罰則は付けませんということを考えております。  情報管理については、非常に大きな問題になるだろうと思います。次のところで、安 衛法の情報についての検討会報告等の内容をご議論いただきたいと思っています。これ は、非常に重要な問題になると思います。基本的には、情報を把握されたくない労働者 の問題と、義務としてこれは受けなければならないとすると、そこの情報を把握しなけ ればならない事業主との関係が出てまいります。  そこのところは、どこで情報を処理し、どこでその情報の管理を担保しておくのか、 ということは衛生委員会等で、労使両方の了解の下にきちんと決めておくべきだという こと。その情報の利用に当たっては、本人の了承、同意を必ず取るべきだという原則は あるわけですが、実際のケースについてはこれを逸脱するような場合も出てくるかと思 います。メンタルで、ケアをしながら職場に復帰することになると、職場のどこまでそ の情報を持っていくのかということも当然あり得ると思います。それに対する指針は、 これからお示ししなければならないと思っております。そちらでは、具体的な事例やケ ースその他も全部挙げて、専門家によって検討した上でお示しすることになろうかと思 っております。 ○櫻井分科会長  いずれにしても、労働者の健康情報の保護については、次回の検討課題になっており ます。 ○加藤委員  「検討の視点」の中で「過重労働」という言葉を使っているのですけれども、100時 間あるいは80時間というのを過重労働の定義と見ていいのですか。 ○労働衛生課長  こちらだと、そういうことになります。 ○主任中央労働衛生専門官  定義といいますか、2ないし6か月で平均80時間、100時間以上を面接指導の対象と するということですから、基本的にはそれを含めたもう少し広い概念になると思いま す。 ○加藤委員  (2)とメンタルヘルスの(2)のところと似たようなところかと思うのですが、 100時間などの大きな数字はこうだと思うのです。それ以外のところについて、これだ と「時間外労働が上記の場合より短く」というのはゼロまで入ってくるということです ね。 ○労働衛生課長  基本的にはそういうことです。 ○加藤委員  そういう場合に、「医師による面接指導が必要とされていること」については云々と 書いてあります。現状でも、こういったところについては、こういう法律でやれという 努力義務とは書いてありますが、書くべきかどうかというのはどんなものでしょうか。  それをもって(3)では「その結果については提出しなさい」という言い方をしてい ます。これだと、一般の病気も含めてすべて健康に障害がある場合はみんな入ってくる わけです。例えば、労働者が「体調が悪いから外部の病院で受けたい」というときに は、離業させて時間中に会社が責任をもって行かせることになるわけですか。 ○主任中央労働衛生専門官  ここの部分については、基本的には努力義務ということで書いておりますけれども、 その基準については各事業場において検討していただいて、その基準でやっていただく ということです。その範囲として我がほうが考えておりますのは、過重労働もしくはメ ンタルヘルス関係ということです。企業によっては、それ以外のものも要因として入れ るということであれば、それを妨げる意図はありません。 ○加藤委員  先ほどの先生の話ではないですけれども、メンタルヘルスの範囲はものすごく広いで す。ですから、内科系の疾患でもかなりがそれではないかと言われている中で、こうい うものが出てくるというのは、かなりストレス性の疾患は幅が広いです。それで病院へ 自由に行ってもいい、というふうな書き方にも取れるところがあると、これは非常に問 題ではないかという気がするのです。これは、基本的に離業してということです。それ で、企業で責任を持ちなさいとは読み取れないです。 ○労働衛生課長  それは、面接をしなさいということなわけです。もう1つは、100時間、80時間とい う時間切りがなければ、そういう機会を設けるように努力しなさいという内容ですの で、それで必ず外部へ行かなければならない、ということにはならないのではないかと 思います。 ○加藤委員  例えば、そういう基準を労使で作ったとしても、それをやりたくないという人も当然 いると思います。 ○労働衛生課長  当然いると思います。 ○加藤委員  逆に言うと、今度は企業側から「基準があるからちゃんと提出しなさい、病院に行き なさい」という言い方もあり得る、これは問題にならないでしょうか。 ○労働衛生課長  それは、現状の安衛法に基づく健康診断そのものがそういう構造になっていますの で、そういうようなところもあります。 ○主任中央労働衛生専門官  義務部分についてはあります。 ○労働衛生課長  義務部分についてはありますが、こちらは努力義務ですので、そこまではいかないだ ろうと思います。100時間、80時間について義務化されれば、そういうことはできます。 ○加藤委員  それはよく理解できます。こういう基準を作って、PDCAを回しながら一種の安全 衛生マネジメントだと思うのです。そこのところをきちんとやって、企業が責任を持っ て基準を作ってくる部分については問題ないと思うのです。メンタルの問題というの は、必ずしも企業の中で基準ができるとは限りません。 ○労働衛生課長  そうです。 ○加藤委員  そういったものは、過重労働と同じように、外で面接を受ける仕組みを作れという以 上は、努力義務だとはいえ、ここのところまで法制化すべきかということには疑問を感 じます。かなり中に入り込んでいってしまう部分と、企業にとっては大変な負担になる 部分があるかと思います。  結果については提出しなさいということですので、いままででも休んで病院へ行って いる方、あるいは相談を受けている方というのは結構多いと思うのです。そういったも のは、そういうことでいいのではないか。会社の中に、精神科の先生なり、産業医の先 生がいて、相談を受けたい人が来るのはいまでも同じだと思うのです。今度は外部にま で付けて、それをやっていきましょうというのはどんなものかと思うのです。 ○労働衛生課長  メンタルについては、会社の中で100時間と80時間の過重労働の場合には、そのとき にメンタルも診てくださいということはよしと。それ以下の場合で、全くメンタル対策 として労働者が自分から相談に行きたいというときに、それを拒むようなこと、あるい はそれができないという状況はなくしてください、ということなのだということです。 ○加藤委員  それならいいです。 ○労働衛生課長  それはいやですよと言ったときに、外部に行くのは労働者の自由で、そこに行かせな さいという事業主に義務をかけているということではないわけです。 ○加藤委員  行かせなさいとは言っていないということですか。 ○労働衛生課長  そういうことです。 ○金子委員  この場合の過重労働は、先ほどの心筋梗塞、脳梗塞、不整脈の3つが対象疾患であ る、という理解でいいのですか。過労死の対象疾患に関するものだけをここで言ってい るのですか、それとも健康全部ですか。ストレス性の胃潰瘍や肝炎など全部、疲れてい たらというふうに拡大していくのですか。健康診断で会社が入手していいデータにかか わる、高脂血症、糖尿病というのは、和田先生の過労死のリスクファクターになる疾患 ですね。その疾患も、内科的にこれ全部というわけではないですね。 ○和田委員  過労死・過重労働による健康障害というときに、しかも検討会で対象にしたのは、先 生がいまおっしゃった3つの疾患に限るわけです。そのほかの疾患でも、いまは心身医 学となっていて、すべての病気は心身だというような人もいるぐらいで、ストレスによ るものということになっています。それは別の事例として扱うという立場をとっている つもりです。したがって、もし過重労働で胃潰瘍になったという場合は、この範疇では ないけれども、それは一般の健康保険、産業保健として対処していくという考え方で す。 ○今田委員  11頁の図は、本文の1頁の「検討の視点」の(1)と(2)が対応していて、義務と 努力義務という形になっている図だと思うのです。本文では、いちばん最後の「事後措 置の実施」というのは(1)にあって(2)には書かれていないのですが、これは同じ 枠組で最後の事後措置まで、義務の場合も努力義務の場合も、こういう枠組で展開され ると理解してよろしいのでしょうか。本文のほうはそうではないので、図のほうが正し いのでしょうか。 ○労働衛生課長  はい、そうです。基本的に産業医は勧告権を持っていますし、事業主はその勧告に基 づいて相応の対策をとるというシステムになっています。当然事後措置が何らかの異常 があれば入るということで、こちらのチャートでは、そちらのほうまでお示ししており ます。 ○今田委員  文章のほうは、言わずもがなということですか。 ○労働衛生課長  はい、そうです。 ○加藤委員  過重労働の(4)のところで「過重労働による健康障害防止策を産業医の職務として 追加してはどうか」というのも、ある一部ではいいと思うのですが、書き方によってこ れは産業医の責任だ、というふうにならないようにしないといけないと思います。労働 時間ですから、基本は労務管理だと思うのです。その辺を忘れられてしまうと、健康管 理担当部署の責任になってしまって、本来は上司であるか人事であるかというところだ と思いますので、書き方を限定しないと、勘違いして肝心なところが逃げてしまうとい う不安を立場としては持っております。 ○労働衛生課長  産業医の職務では追加は大事だと思いますが、その責任の問題は基本的に事業主のほ うに入るだろうということです。 ○主任中央労働衛生専門官  産業医の職務として、法律上は労働者の健康管理、その他の事項をこなさなければな らないということですので、あくまでも健康管理にかかわってということにはなると思 います。 ○金子委員  もう一度確認しますが、外部の先生にも勧告をすることを認めるということですか。 中の産業医との面接を従業員がいやだと言ったときに、外部医師の面接指導・結果提出 ですね。あくまで勧告できるのは産業医だけですね。 ○主任中央労働衛生専門官  勧告まではそうです。ただ、その意見を聞いてもらえるということです。 ○金子委員  意見を聞いて、産業医がその意見を受け取って、産業医が勧告するということです ね。 ○労働衛生課長  はい。 ○櫻井分科会長  意見が出尽くしたということではないと思いますが、時間の範囲内でさまざまなご意 見をいただきました。本日の議論は、以上をもって終了いたします。次回は、労働者の 健康情報の保護などについてご議論いただきます。ただ、過重労働・メンタルヘルス対 策については、当初11月10日に議論する予定だったのを本日議論していただいたことも ありますし、欠席の委員も多いので、必要があれば次回の冒頭でご発言をいただこうと 思っております。次回は、11月10日の13時から開催する予定になっておりますのでよろ しくお願いいたします。  議事録署名人として、中桐委員と金子委員にお願いいたします。本日は、お忙しい中 をありがとうございました。               照会先:労働基準局安全衛生部計画課(内線5476)                        03−5253−1111(代表)