04/10/21 第2回がん医療水準均てん化の推進に関する検討会の議事録                          (照会先)                          健康局総務課生活習慣病対策室                          奥田、中山   内線2397,2339           がん医療水準均てん化の推進に関する検討会                  第2回議事録          日時 平成16年10月21日(木)9時58分〜12時06分          場所 厚生労働省9階省議室 1.開会  大臣官房参事官  おはようございます。定刻となりましたので第2回の「がん医療水準均てん化の推進 に関する検討会」を開会させていただきたいと存じます。  皆様方には昨日の台風の影響が残る中、お集まりいただきまして誠にありがとうござ います。まだ、その影響を受けまして飛行機が飛ばない地域もございまして欠席を余儀 なくされた方もございますが、誠にありがとうございます。  本日は大臣が、ぜひ、参加して皆様にご挨拶を申し上げたいという強いお気持ちをお 持ちでございました。前大臣のお考えを引き継くというご趣旨のご発言をご用意されて いたようでございますが、そのご挨拶の要旨をお手元にお配りさせていただきました。 これによりまして大臣のだ挨拶に代えさせていただければと存じます。  また、健康局長、国会用務で本日は出席できません。お許しいただきたいと思いま す。  委員の皆様におかれましては北島政樹様がご都合により欠席との連絡を受けておりま す。併せて四国の高嶋成光様も台風のために飛行機が本日も飛ばないということで欠席 の連絡を受けております。  なお、本日は参考人として国立がんセンターがん予防検診研究センターの祖父江様に もお越しいただいております。ご紹介申し上げます。  それでは以降、議事の進行を垣添座長、よろしくお願い申し上げます。  垣添座長  皆さん、おはようございます。国立がんセンターの垣添です。本日はご挨拶にありま したように台風の中を、一部の委員には大変遠路からお集まりいただきまして誠にあり がとうございます。  ただいまから第2回の検討会に入りたいと思います。前回、各委員からご意見をいた だきましてフリーディスカッションをいたしましたが、まず、前半、その整理をいたし まして、後半、主にがん登録の話を本日はご議論いただきたいと思います。  大変タイトなスケジュールで結論を出していかなければいけませんので、これから 先、2回目以降、1回毎の検討会が大変重要なものになると思いますので、それぞれき ちんとした結論を出しながら先に進んでまいりたいと思いますので、どうぞご協力の 程、よろしくお願い申し上げます。座らせていただきます。  まず、事務局から資料の確認をお願い申し上げます。  大臣官房参事官  それでは資料の確認をさせていただきます。お手元には資料1、主要検討課題につい ての論点整理(案)、資料2、がん登録説明資料、併せて参考資料が6点、がん医療水 準均てん化の推進に関する検討会開催要綱、参考資料2、人口動態統計の都道府県別特 性、参考資料3、悪性腫瘍の死亡率の地域差、参考資料4、大阪府がん登録を用いた分 析、参考資料5、全国がんセンター協議会加盟施設の分析、参考資料6、地域がん診療 拠点病院、院内がん登録標準項目2003年度版、以上、6点を用意してございます。併せ てさきほど申し上げました大臣のご挨拶1枚でございます。よろしくお願いします。  垣添座長  ありがとうございました。特に過不足等ございませんでしょうか。 2.議事  (1)主要検討課題についての論点整理(案)について  垣添座長  それでは本日は第1回の議論を踏まえまして事務局で整理していただきました論点整 理(案)にしたがって進めてまいりたいと思いますが、特にがん医療における地域格差 についてを中心議題として進めてまいりたいと思います。  まず、最初に前回の主要検討課題についての論点整理(案)について事務局からその ご説明をお願いしたいと思います。  健康局生活習慣病対策室室長補佐  では、事務局の方から資料1について説明させていただきます。以降、座って失礼さ せていただます。  では、お手元の資料1をご覧ください。主要検討課題についての論点整理(案)とい うペーパーでございます。これは前回、委員の皆様からご指摘をいただきました点を主 要論点について整理したペーパーでございます。大きく構成がI、II、IIIというふうに 分かれております。  Iは地域格差の主に定義、考え方についての資料です。IIにつきましてはがん医療に おける地域格差の現状と課題ということで、この部分がかなりこの資料のメインになっ てくるところでございますが、がん専門医や情報の提供、普及に関する話ですとか、医 療機関の連携の話が順次、出ております。大きなIIIでございますけれども、この現状 と課題にそれぞれ対応する形で提言ということでいくつかご発言をいただいた事項につ きまして整理したと、そういうフォーマットでございます。  では、順次説明させせていただきます。まず、大きなIのがん医療における地域格差 についてという1頁目をご覧ください。1.がん医療における地域格差とは?(概念の 整理)というふうなことでがん医療の格差を考える上で国という概念、地域ブロックに おける格差、都道府県間の格差、二次医療圏の格差、医療機関間の格差、これを通常は 施設間格差と呼ばれているとは思いますけれども、こういった格差が存在するであろう ということと、それぞれの格差の中で今回、この検討会では都道府県の格差を中心に議 論を進めてはどうかといった趣旨のことがあったかと思います。また、同時に二次医療 圏における格差ということで圏内における状況という趣旨の指摘もあったかと思いま す。  こうした現在、見られる格差と言いますものは、医療水準の高低ですとか、医療情報 の多寡というものが網羅的に関与しまして格差を生じているというふうに考えられると 思います。こうした状況を裏付けるデータとしては5年生存率か死亡率といった指標が 現在のところ提出されているところでございます。  では、2.がん医療におけに地域格差の評価の現状というところをご覧ください。こ このセクションにつきましては、いくつか参考資料を添付させていただいております。 参考資料の3から5でございます。併せてご覧いただければと思います。  まず、(1)の都道府県格差のデータに着目した場合、死亡率を用いたものと5年生存 率を指標として評価を行ったものがございます。都道府県の格差の場合、死亡率を用い て出したものが参考資料の3でございます。ちょっと見ていただけますでしょうか。主 にグラフと後半の方にそれぞれのデータをつけてございます。最大値から最小値の間を 上4分の1、下4分の1という中央値も含めましてデータとして示させていただいてお ります。  続いて(2)の今度は5年生存率から見た場合の都道府県格差でございます。地域がん 登録に基づく分析例ということで、こちらは参考資料の4に示させていただいておりま す。いくつかございますデータの中から都道府県という単位で見た場合、こうしたデー タがあるという例示でございます。  続いて2頁をご覧ください。次は都道府県格差以外の格差ということで、施設間格差 のデータを取り上げさせていただきました。施設間格差につきましては5年生存率を一 般的には用いるというふうに言われていると思いますけれども、大阪府のがん登録のデ ータを用いた分析例ということで、こちらも同様に参考資料の4でございます。  もうひとつ、全国がんセンター協議会加盟施設の分析例ということで、こちらについ ては参考資料5の方に示させていただいております。具体的な数値ですとか、それぞれ の病院の実際の値を示したデータが参考資料5の方にございます。  続いて3.がん医療における地域格差の評価の課題でございます。がんの地域格差に つきましては必ずしもデータが充分ではないという状況はございますけれども、がん登 録の普及やその詳細の程度につきましてひとつの課題として提示させていただいており ます。 丸の2つめのところですけれども、均てん化方策を展開した場合の情報インフ ラ、これは院内がん登録、地域がん登録があると思いますけれども、こうした整備を進 める必要があるといった論点でございます。  3つめの丸のところが5年生存率、もしくは死亡率を用いた場合、これに対応する短 期的な成果を測る上での感度の良いアウトカム指標を設定していってはいかがかとい う、そういった論点でございます。  大きなIIをご覧ください。がん医療における地域格差の現状と課題でございます。ま ず、ひとつめの現状と課題として示させていただきましたのが、がん専門医等について でございます。がん専門医等が不足しているというふうに言われておりますが、これは 専門医の数、地域分布、認定要件等の影響を受けるというふうに言われておりますけれ ども、全般的な事項といたしましてがん医療を提供できる人材が不足している。特に臨 床腫瘍医、放射線治療医、診断医、病理医。3頁をご覧ください。コメディカルスタッ フとしまして放射線治療のスタッフ、オンコロジーナースといった例が挙げられたかと 思います。  地方の総合病院でがん治療を実施している場合に、がん治療のみに専念できない。こ れはその他の疾患ですとか、その他の治療によることでございますけれども、そういっ た集学的な治療がなかなか困難であるということでございます。同時に緩和ケアやセカ ンドオピニオンの取り扱いといったことも大きな課題として挙げられております。  最後の丸のところに、地方において地方中核がんセンター以外の中核医療機関におい てがん医療を行っているという場合に、例えば化学療法ですとか、緩和医療ということ における格差という指摘がございました。個別事項としましてさきほど申し上げた臨床 腫瘍医、放射線に関する専門医、病理の専門医、その他、専門医等ということでござい ます。  こうした専門医に関する課題を(2)というふうな形で示させていただきましたが、我 が国に多いがん、肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん、こうした症例数の多い がん患者に対して適切に対応できる専門医等の育成を行っていくのはいかがかという点 でございます。地方の病院に余裕がなければ研修に送り出すことができない。これは地 方の要因として挙げられておりました。  3頁の下でございますが、2.がん診療情報の提供・普及についてでございます。ま ず、(1)に情報についての現状ということで医療関係者に対しては診療ガイドラインが 必ずしもまだ充分に普及していないという現状があろうかと思います。  4頁をご覧ください。同時に一般の方々に対してもがん医療に関する最新情報がなか なか伝わりにくいという現状があろうかと思います。こうした現状に対しまして課題と して今後、検討していく事項としまして標準的な診療技術、これをあまねく提供・普及 することが大事ではないかということ、(ア)でございますけれども、ガイドラインの 普及については学会の役割が重要ではないか。一般の方々に対しては標準的ながん診療 情報を提供していくということであろうかと思います。  3の施設・設備の整備についてでございますけれども、がん治療に関わる最新の医療 機器というものはまだまだ充分とは言えないところもあるという点でございます。  4.地域のがん医療における医療機関の連携についてという点でございますが、現状 といたしまして地域において教育・診療のコアとなっている特定機能病院が基本的に含 まれていないという点があろうかと思います。  丸の2つめですけれども、全国がんセンター協議会、こうした協議会の場においてま だまだ病院と診療所の連携、病院と病院の連携は充分ではないといった指摘でございま す。都市部におきましても専門的ながん医療を提供する医療機関の連携が充分ではない という点でございます。  (2)医療機関連携の課題として次の5頁をご覧ください。現在、ございます全国がん センター協議会、がん政策医療ネットワーク、地域がん診療拠点病院、こうした病院間 の効果的な連携のあり方を再検討する必要があるという点でございます。2つめの点が 医療機関のそれぞれの専門性をネットワークすれば現実的な対応ができる場合があると いう点でございます。3つのポイントが退院後の患者さんのフォローにつきまして地域 の医療機関のネットワーク形成が非常に大事であるという点でございます。  こうした課題に対しまして大きなIIIのところで提言をいただいております。順次、 専門医については全般的な事項といたしまして人材交流については短期的に教育効果を あげる上で重要だという点と、交流の方法としては地方に出る場合、地域の中核がんセ ンターにおいて研修を受け入れるという、これは今、ある国立がんセンターなどで受け る教育だけではなくその他の多くのリソースが現実的には存在するのではないかという 点でございます。研修を受け入れて教育を行う方が効果的・効率的であるということで ございます。  個別事項としまして(1)ですけれども、人材交流方策について、特に大臣からも指摘 がございました人材の補充方策についてでございます。こうした補充方策につきまして は特定機能病院にも協力を求めていってはいかがかという点でございます。  6頁をご覧ください。(イ)指導体制の強化について。受け入れ病院における教育を 受ける側だけでなく指導者の位置づけ・配置が必要であるという点でございます。(2) 学会の取組ですが、人材育成・診療体制の強化に係わる学会の役割、これはセミナーな ど、学会が中心で行っているものですとか、コメディカルに対する教育として学会の果 たす役割は重要であるという点でございます。(イ)のところで学会の取組に対する支 援という発言もございました。  2の地域格差の是正に向けた診療情報の提供・普及についてということで、まず、医 療関係者に対してはガイドラインの普及、ガイドラインに基づくクリニカルパスの普及 という点がございます。医療関係者及び一般に対しては診療情報の提供ということで、 これは情報公開に耐え得るデータに基づいて治療成績などについて情報公開をしていく ことが重要であるという点でございます。  3のところですけれども、施設・整備につきましても医療機器の整備に対する配慮が 必要であるというところでございます。  4のところで質が高く効率的ながん医療の提供を目指した三次医療圏、国、二次医療 圏の役割を踏まえたネットワーク体制の整備ということでございます。(1)の役割分担 でございますけれども、ここは機能分化というところで集中的な専門的な治療を担当す るところと、より地域に密着した診療を行うという、いわゆる機能分化をしていくこと が必要ではないかということでございます。(2)でこうしたネットワークの整備の方策 についてという点がございました。  5のところが、今度、評価の充実に向けてなのですけれども、均てん化の評価に必要 なことについてはがん登録、国の支援について、例えば住民基本台帳を使っていくとい ったような情報リソースの活用についてのご発言がございました。がん登録を支えるコ メディカルの充実が必要であるということでございます。(2)でございますけれども、 地域格差の分析方法について短期的、もしくは長期的なアウトカム指標という点でござ います。  最後に長期的な視点からの提言ということで大学における臨床腫瘍学講座の設置が必 要ということです。  こちらの資料の中で丸印がついているところが委員からのご意見を要約させていただ いたところで、括弧内は事務局で整理したものでございます。資料については以上でご ざいます。  垣添座長  ありがとうございました。前回、各委員からご発言いただいたことを事務局で整理い ただきましたが、基本的に地域格差というものの定義と現状と課題、3番目に地域格差 の是正に向けてということで整理をいただきました。  ただいまひと通りご説明いただきましたので、前回の議論はよく思い出していただけ たかと思いますが、何かご質問等ありましたらお受けしたいと思いますが、いかがでし ょうか。はい。どうぞ、津熊委員。  津熊委員  簡潔にまとめていただいていると思うのですけれども、1頁目のがん医療における地 域格差、ここでは府県単位を中心に考えていこうということが書かれていまして、この 中でがんの5年生存率及び死亡率といった指標をもとに評価を行うのが適当ではないか とありますけれども、ここに罹患という指標を加えられなかったのには何か意味がある のでしょうか。  と言いますのは、例えば神経芽細胞腫等の発生動向を見ましても、この場合生存率が ぐんと良くなった、死亡率もやや下がったといったトレンドが観察されていますが、そ ういった現象にはマススクリーニングによるオーバーダイアグノーシスが強く関連して いるということが言われています。国の対策としても方針転換になりました。他にもい くつか例を挙げることが可能ですが、今後、がんの診断技法というものが進めば進むほ ど、反面、オーバーダイグノーシスと言われるようなものも見つかってくる可能性があ ります。  ですから、やはりここは死亡率、生存率だけでなく、罹患率の把握を蔑ろにするとが ん対策の評価が片手落ちになるということを指摘させていただきます。  垣添座長  ありがとうございました。その場合、罹患率を、私も重要な指標と思いますが、それ を出すためにはやはり地域がん登録が必要であるということになりますね。それが唯一 の方法であるということでしょうね。  ご承知のように第3次対がん10か年総合戦略が今年の4月からスタートしましたが、 そのキャッチフレーズが「がんの罹患率と死亡率の激減を目指して」ということがあり ますので、やはり指標の中に罹患率ということをやはり含めておいた方がよろしいかと 思います。他に。はい、どうぞ、西條委員。  西條委員  前回の議論で一般的にはクリニカルプラクティス、実地医療をどう向上させるかとい うことについての議論がなされていると思うのでありますけれども、良い実地医療なく して良い臨床試験がないということもまた逆に、良い臨床試験なくして良い実地医療は ないということも真なりなのですね。  したがって、この臨床研究、臨床試験というようなものがある程度、重要視されてい ないと医者にとってはなかなか診療のインセンティブというところが働いてこないとい うところがあります。したがって、そこのところをちょっと考慮される必要がある。  それが非常にアンリアリスティックに聞こえるかもわかりませんけれども、例えばJ COGに入っておられる人たちの数を見てみますと、消化器内科だと150人呼吸器内科 などでも150名、血液内科でもやはり100名ぐらいいるわけですから、かなり均てん化し つつあるというところでありますので、その臨床試験と診療がよくカップリングしてい ることが重要というような観点でちょっと文章を考えていただければありがたいと思い ます。  垣添座長  診療の中身に関わることですけれども、臨床試験できちんとしたデータを出していく ことによって、それが全国に広まっていくということで結果的に治療成績が上がってい くということをやはり触れておいた方がいいというご発言ですが、ありがとうございま した。他にどうぞ。野村委員。  野村委員  今の整理の中でがんの診断、この部分が少し弱いのではないかなという感じがします ので忘れないでいただきたいと思います。  もうひとつは、外科領域はこれは均てん化されているというふうになっていますが、 各臓器に関して考えてみれば、これは均てん化は充分されているとは言えないのです。 その点はやはり心してどうやって全国に普及させるかということを考えなければいけな いと思います。  垣添座長  診断のことを触れるべきであるというのは診断が正しくなければそれ以後、すべてが 狂ってしまうという、そういう意味ですか。  野村委員  そういうことです。診断医を養成するということもこれは大切であるということで す。  垣添座長  放射線診断医に関しては触れてはありますけれども、もう少し全般的に触れてほしい という話です。他にいかがでしょうか。どうぞ。  山田委員  一番最後になりますが、地域格差の評価の充実に向けてというところで長期的な観点 からの提言ということで臨床腫瘍学講座の設置が挙げられているのですが、実は放射線 腫瘍学についてもきちんと大学でされている施設というのは少ないのですね。もし、追 加ができるのであればここにやはり放射線腫瘍学講座についても加えていただければ幸 いです。  垣添座長  それもご指摘のとおりかと思いますが。その他、いかがでしょうか。どうぞ。  千村委員  今までのご指摘と少し視点が違うのですけれども、今、ここにお示しをいただいてい るようなさまざまな今後のいろいろなポイントについて対応していくことを考えます と、例えば都道府県であるとか、市町村であるとか、行政に携わっている立場から見ま すと、いろいろ最近、財政が厳しいという点もございまして、あるいは専門性の問題か ら言ってもでき得る限り、いろいろなところで広く普及ができるような、例えば財政的 な負担があまりないようなことに対する配慮ですとか、あるいは方法論として幅広く普 及できるような考え方ですとか、そういった点についてもご配慮をいただけるとありが たいかなというふうに思っております。  垣添座長  ありがとうございました。その他、いかがでしょうか。それでは参考資料として津熊 先生の方から大阪府がん登録の話が出ておりますけれども、5分ぐらいで簡単にご説明 いただけますか。難しいお願いで恐縮ですが。  津熊委員  それではごく簡単に見ていただくことにいたします。1枚目めくっていただきます と、地域がん登録に基づく地域差、施設差の分析という表題のページがございます。現 在、府県レベルで生存率の計測がそれなりに信頼度を持って比較することが可能なの は、中程にあります、山形、福井、大阪、新潟、宮城、鳥取、長崎の7県でございまし て、非常に限られているということがまず1点でございます。  2頁めくっていただきますと、表1としてその結果を示しています。地域がん登録に 基づく5年相対生存率で、診断年が1993年から96年の数値でございます。多くの部位に ついて計測をし、基礎表を作成しておりますが、ここでは代表例といたしまして胃、大 腸、肺、乳房、それに化学療法や放射線治療など集学的治療が必要になることの多い卵 巣、精巣、白血病、といった部位を取り上げました。  胃、大腸、肺といったところで、詳細は省きますが、府県レベルで見まして10ポイン ト以上の5年生存率の差があります。その差の一部は進行度の違いによって説明できる しかし、進行度の違いを考慮いたしましても府県により差が残るということを示した資 料です。  大阪府の中で二次医療圏毎に見た場合の差というものが表2でございますが、府県レ ベルで申し上げたことと似た現象がございます。  表3では、大阪府の10のがん診療拠点病院で治療が実施されたケースについて、大阪 府がん登録資料に基づく5年生存率を計算しました。これも当然、診断時の進行度によ り差がございますので、施設別・進行度別に並べています。いくつか特徴がございま す。胃とか大腸といったメジャーながんで、しかも、外科的に切除可能な「限局」にと どまるものではあまり施設差がないのですけれども、大腸の「領域」でありますとか、 あるいは難治がんといわれる肝臓がんや肺がんでは「限局」と言えどもかなり施設間で 差があります。特に肺がん等は扱う患者数にも地域がん診療拠点病院と言えどもかなり 差があるということを指摘できます。  乳腺につきましては5年生存率ではあまり大きな差が見られません。乳がんの特徴を 考えますと、5年ではまだ短かく10年生存率等を見る必要があるかもしれません。  表4は今の拠点病院で達成されている生存率と地域レベルの生存率の差がどういった ところにあるか比較したものです。ポイントを申し上げますと、例えば大腸がんでは 「限局」だとか「遠隔」の場合には両者間でほとんど差がないのですけれども、「領域 」すなわち、所属リンパ節や周辺臓器・領域にまで広がったがんでは10ポイント以上の 差があります。一方、肺がんでは「限局」といったところで70%と53%という大きな差 があります。  概してがんが局所に限られていて外科的に切除が充分可能であり、また、その手法も 確立しているといったものでは拠点病院と府全体との差は目立たないのでありますけれ ども、そういうところからやや進んでいたり高度な診療手技が必要ながんでは差が出て くるということかと思います。  参考までにアメリカの地域がん登録に基づく生存率の成績、米国SEERの成績も出 させていただき、全がん協の一施設であります大阪府立成人病センターの成績も挙げさ せていただきました。こういったところを横に並べることによりまして技術移転の必要 な領域、あるいは均てん化の達成状況、こういったところが評価可能になると思ってお ります。以上でございます。  垣添座長  ありがとうございました。具体的なところで地域がん登録がきちんと進んでいる、大 阪府がん登録の臓器毎の違い、あるいはがん診療拠点病院と一般病院との違い等を具体 的にご説明いただきましたけれども、論点整理の上でもう1、2、ご意見がありました らお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。  丸木委員  今のご説明の中で確かに地域格差というのはわかるのですが、進行度、考慮していな いのでその差がもうちょっとそれを標準化したら出てくるというのはわかるのですけれ ども、例えばこの最後の表4の中の肺がんなどで米国の方が生存率が低いというのは何 かこれは理由があるのでしょうか。48.9と、例えば拠点病院で70.6、限局に限って言っ た数字なのですけれども。  津熊委員  米国の成績はポピュレーションベースの成績ですので基本的には大阪府全体の成績と 同じ進行度同士は横に比べることになります。こういうふうに見ますと肺の場合、ポピ ュレーションベースではあまり変わらないと言えます。  丸木委員  なるほど。そうすると例えば細かい議論をして恐縮なのですけれども、限局に限って 言っても、その差を生むものというのはいったい治療法というか、そういう集学的なあ れが行われていないという、技術とか、何かそういうのが関係しているというふうに考 えたらいいのでしょうか。  津熊委員  この生存率の差を分析する意図は、当然、治療技術の差を吟味する点にあるわけです が、しかし、一方でどこまできちんと転移とか病巣の広がりを診断していたかという、 ことにも関係します。レベルの高い施設ではより精密に転移の状況を把握します。ピュ アな「限局」の生解をみている。そしてより詳細な「転移」例を観察するということに なります。ステージマイグレーションと言われる現象ですけれども、診断と治療の両者 を兼ね合わせながら考えないといけないものですから、ステージ別の生存率だけで果た してどこに問題があるのか単純には判断できないと思います。  丸木委員  わかりました。  垣添座長  他にいかがでしょうか。どうぞ。  山田委員  今の問題なのですが、拠点病院全体と大阪府というように観察数が増えるとやはり差 がありますよね。これは当然で、根本的な問題というのは登録の問題というか、公表さ れていないデータが入ってくるとどんどん成績が下がるという傾向があると思うのです よね。だから、公表されているて、生存率が出ているようなきちんとした施設では非常 にいいデータが出ているのですが、公表されていないところが含まれてくると生存率が 落ちるということはそれ自体もう施設差がかなりあるということを意味しているのでは ないかという気がします。  ちょっと気がついたのは、地域格差ということの他にやはり臓器別にも、例えば優れ た病院であっても臓器別に差があるのだということはやはり問題かなというふうに、こ の表からは指摘できるのではないかと思います。  垣添座長  ありがとうございました。どうぞ、千村委員。  千村委員  今のいくつかのご指摘を伺いまして、ここで今、示されていますのが地域格差の評 価、2番に地域格差の評価の現状でございますが、ここで意図されているのは今後、5 年生存率を基本にして地域格差を比較をしていくような方向に持っていこうというお考 えを持っておられるというふうに理解をすればいいのでしょうか。  もし、そうだとすると、例えば今、各県で5年生存率を例えば医療機関毎にかなり正 確に出せるようなところというのは非常に少ないわけで、具体的に評価が地域間格差と いうのを評価できるようになるまでにはまだ時間がかかるのではないかというふうなこ とも考えられると思うのですが、その辺のところはどんなようにお考えになっておられ るのでしょうか。事務局に対するご質問かもしれませんが。  垣添座長  さきほどの前回議論、取りまとめの中に死亡率と5年生存率という話がありましたけ れども、それに加えて今の議論で罹患率も加えてほしいという話がありました。ただ し、例えば今、ご指摘のように5年生存率で考えるとなかなかすぐにはデータが出てこ ないということで、この10年でものを考えようとするときに均てん化がどんなふうに進 んだかということ、なかなか評価できないということがあります。従ってもっと短期的 な指標が必要なのではないかということも確かご発言いただいてまとめられていると思 います。  しかし、具体的にどんな指標があるかということに関してはもう少し議論が必要では ないかなというふうに思います。どうぞ、野村委員。  野村委員  こういう統計、5年生存率、相対生存率の計算がなされたときに私共が注意しなけれ ばいけないのは、両方の施設を比較するときの信頼度の問題なのです。それがどのぐら いの信頼度があってこれが評価されるかということで見ていかないといけない。こっち が多いからこっちが凄く優れていると必ずしも言えないということです。この辺のとこ ろは注意しないといけないことです。  垣添座長  それは例えば病気の診断から。  野村委員  ステージの診断とか、そういったものが全部入ってきて出てきていますし、ただ、単 に施設だけ比較したのではその比較した意味があるのかどうかというところから見てい かないとこういう表というのは難しいだろうと思います。  垣添座長  わかりました。後委員。  後委員  私も同じようなことを思っておりまして、こういうふうに数字を出していくことにな りますとやはり2つの病院のどっちに行こうかと患者さん方、迷って高い方の数字の方 に行けばいいのかなと直観的にお思いになるかと思いますけれども、実はこういう数字 を出す、その数字の信頼さとか、確かさというのはなかなか本当に比較して高い方に行 けばいいというほど、精密に厳密になるものではないという現実はありますので、こう いう数字を出していくときは必ず一方でそういう単純な比較ということではないのだと いうようなことも同時にやはり周知して、誤解のないようにしていく必要があるという ふうに思います。  垣添座長  ありがとうございました。それでは一応、前回の議論の論点整理をいただきましたの で、それに加えて罹患率の問題だとか、あるいは臨床試験の重要性、あるいはがん診断 の正確性、あるいは臨床腫瘍学だけではなく放射線腫瘍学の長期的な重要性といったこ とを、その他、いくつかご意見をいただきましたので、それを含めて論点整理としてま とめさせていただきたいと思います。  (2)がん医療における地域格差について。  垣添座長  続きまして本日、議題の議事の(2)に挙がっておりますがん医療における地域格差につ いて進みたいと思いますが、議論の参考にしていただくために最初に国立がんセンター の祖父江参考人からがん登録に関するプレゼンテーションをお願いしたいと思います。  祖父江参考人  国立がんセンターがん予防検診研究センター情報研究部の祖父江と申します。本日は こういう機会を与えていただきましてどうもありがとうございます。  国立がんセンターは実はがん登録、今日、がん登録に関して説明をさせていただきま すけれども、このがん登録という機能に関してはこれまで必ずしも充分な取り組みがで きたとは言えません。がん予防検診研究センターというものが昨年度、発足しまして情 報研究部がその中に設立されました。今後は国レベルのがんサーベイランス、こうした ものの中枢的な機能を国立がんセンターで果たしていきたいというような意気込みでお ります。  本日、資料2、がん登録説明資料という横長のA4の資料ですけれども、これに基づ いて説明させていただきます。では、頁をめくっていただきまして、まずはごく簡単に がん登録の仕組みについてご説明させていただきます。  がん登録の中に院内がん登録、地域がん登録、この2つがあります。院内がん登録と いうのは真ん中のA病院のところに書いておりますように、ある特定の病院に関してそ の特定の病院の患者さんをすべて登録するという機能であります。一方、地域がん登録 というのは通常、一府県、都道府県を単位としてやることが多いですけれども、その都 道府県の中で発生したがん患者さんをすべて把握して登録をするという機能でありま す。  左側に歩いておられる人がいますけれども、この患者さんがあるA病院に行ったとし ます。そうしますとがんの診断を受け、院内がん登録に登録をされ、こういうような病 院の全体としての機能で登録されたものをひとつの病院としてまとめて地域がん登録中 央登録室の方に報告をするというのが理想的なものなのですけれども、同じ患者さんが 例えばB病院という別の病院に行ったとします。この病院ではがんの診断をされて院内 がん登録というのがあまり機能しておらず、主治医の方が直接、届出票を記入をして、 それを病院でまとめて報告をされると。こういうようなやり方が実は日本で大多数を占 めています。  地域がん登録側ではこのように複数の病院から得た報告をまとめていくわけですけれ ども、これが同一の人の情報なのか、同一の人であったらそれが同じがんの情報なのか ということを逐一照合していく、このプロセスが非常に大切になります。同一人物と判 定するためには個人情報、氏名、生年月日、性、住所等を把握する必要があり、それに 基づいて同一人物か、否かということを判断します。  日本には個人固有の番号というのがありませんので、この過程は非常に工夫を要しま す。仮に個人同一人物だと判断された場合でも、その情報が同じがんなのか、あるいは 違うがんなのかということを重複がん、多重がんの判断ルールというものを決めまして 地域がん登録の方ではそれを判断いたします。1腫瘍1レコードと言いますか、1腫瘍 として登録をし、それらについてさらに予後調査というものをしていきます。これにつ いては市町村役場、保健所、人口動態死亡テープによる患者さん本人に直接コンタクト をしないというような形でのフォローアップを通常いたします。  頁をめくっていただきましてがん登録の機能になりますけれども、院内がん登録は自 施設で診療したがん患者さんの全てを把握すると。その把握した全ての患者さんをさら に生存状況を追跡をすると。これには基本的には最終外来の来院日ですとか、あるいは 主治医を通じての電話、あるいは手紙での調査というようなことで直接コンタクトをし ながら追跡をするというのが基本であります。こういう作業に基づいて得られたデータ で施設の全登録患者の生存率を計測するということが院内がん登録の主目的になりま す。この5年生存率、生存率を性、年齢別、部位別、進行度別に算出するということで 比較検討するということになります。  一方、地域がん登録の方は地域におけるがん罹患者と言いますか、罹患数を全て把握 いたします。地域における住民数を分母とすることで割り算をしましてがん罹患率を計 測できます。これが地域がん登録によって唯一、行われる機能であります。登録された 患者さんを全て生存状況を追跡するというのは同じなのですけれども、この場合、直接 患者さんにコンタクトをするというわけではなくて、住民基本台帳、あるいは人口動態 統計などの既存の資料を利用して追跡をしていくということになります。その結果、地 域の全罹患者の生存率を計測すると。代表性のある生存率を計測することができ、これ を地区別、性年齢別、部位別、進行度別に算出をして比較検討を行うということが地域 がん登録の機能で基本的な機能であります。  頁をめくっていただきまして、がん医療における均てん化を評価する際の指標として はやはり5年生存率というのが一番堅い指標になるというふうに思うのですけれども、 そういうものを国立がんセンターにおける5年生存率、あるいは全がん協加盟施設にお ける5年生存率、さまざまなレベルの施設において計測をする。院内がん登録を通じて 行うということになります。それによって施設間格差の評価ということができます。  一方で、地域がん登録における5年生存率の計測によって全住民、地域をカバーす る、代表するような5年生存率を計測し、地域間の格差を比較すると、評価するという ことができますし、この両者をまた比較することで施設と地域との格差の評価というこ ともできていきます。もし、この格差が5年生存率に格差があるということになりまし たら、その原因を究明し、詳細な臨床情報をオンサイトでまた追加の調査をするという ようなことをして、原因を究明し、解消し、均てん化の促進をし、ひいては生存率を引 き上げるということで向上してがん死亡の減少を目指すということがこの均てん化評価 の最終的な目標であるというふうに思います。  現在、50万から60万の年間がんの罹患者数がカウントされていますけれども、推定さ れていますけれども、生存率を10%アップするということで5万人、6万人の方を救命 することができるということで、これは非常にインパクトの大きな取り組みだというふ うに思います。  ただ、この5年生存率、こういう格差の評価を正しく行うための資料が現在、どれだ け得られているかと言いますとかなり厳しいものがあります。さきほど津熊先生がおっ しゃられた地域がん登録の5年生存率にしても7府県程度のものに限られていますし、 拠点病院における5年生存率を比較可能性のある形で計測しているものは今のところあ りません。全がん協加盟施設においては岡本班の取り組みによって中央で5年生存率は 計測されていますけれども、それが唯一、施設間の格差をきちんと評価できる全国的な もののデータであるというふうに思います。こういう基本的なデータをがん登録で計測 し、計画を立案し、均てん化の対策を実行し評価していくという上でがん登録というの が非常に基本的な大切なインフラであるということをご指摘したいと思います。  頁をめくっていただきまして、一方、アメリカではどんな取り組みになっているかと いうとを参考にご説明します。米国と書いていますけれども、これはアメリカン・カレ ッジ・オブ・サージョンズというところのCOCと言っていますけれども、コミッショ ン・オン・キャンサーというところががん治療施設というのを承認する、認定をすると いうプログラムを行っています。承認が3年に1回、かなり厳しい、直接審査をして、 サイトビジットをして審査をするような過程を経ます。  その中に8条件あるわけですけれども、この中に院内がん登録というのが3番目に含 まれています。院内がん登録を行う際に必ずサーティファイド・チューマー・レジスタ ラーという人を雇用して専門にあたらせるようにという仕組みになっています。日本語 で言うと認定腫瘍登録士というような感じでありましょうか。そういう方がアメリカで は4千人おられて、腫瘍登録協会というようなものを設立されて資格認定にあたってい ます。このようなCTRの方も技術的なバックグラウンドに基づいて院内がん登録を運 用するということがこういうがん治療専門施設の承認を得る必須の要件になっていると いうことがアメリカではずっと行われております。  頁をめくっていただきまして、あと、我が国における院内がん登録、あるいは地域が ん登録の均てん化の評価を行う上での問題点と、あるいはそれの解析というものも表に まとめますけれども、まず、院内がん登録におきましてはその機能そのものがあまり働 いていない病院がまだ多くあるという点があります。病院としての症例を登録できてい ない、各診療科のデータの寄せ集めになってしまっている、あるいは外来のみで治療を される患者さんが登録から漏れてしまっている。このような現実があります。  このような現実になっている大きな要因としては、登録業務を医師が篤志的な努力で 行っているという現実がありまして、その根本的な解決策には実務者の確保、腫瘍登録 士と言われてるような専門的な技量を持った人の確保が必須であるというふうに思いま す。ポストの確保、質の確保といったことが必要になり、それを支える財源の確保とい ったこともこれも必要なことだと思います。  2番目に標準的な方法が浸透していないという点があります。実はがん診療拠点病院 におきましては院内がん登録の標準的な行い方、定義について昨年度、その前のメディ カルフロンティアの山口班、山口先生、横におられますが、そこの研究班で標準的な定 義を決めまして、2003年の12月に生活習慣病対策室を通じてこれでやってくださいとい う形でがん診療拠点病院の方にはお願いをいたしております。  ただ、それがあまり浸透していないということもありますし、生存率を計算する場合 にこの自施設の症例の定義をどうするのか、あるいは必要だということがまだ不一致と 言いますか、完全には標準化されていません。必要な臨床情報の記載漏れというような ものもありまして、全がん協の資料の中で恥ずかしながら国立がんセンターからの情 報、データでは進行度のデータが提出できていません。こういったことも今後、改善し ていく必要があると思います。  また、その標準的な定義を提示はしていますけれども、それの理解不足といったこと もあって、これを解決していくためにはまずは標準方式について決定をする中央的な組 織が必要になるかと思います。どんどん標準定義というものも更新をしていく必要があ りますので、それを更新をし、今の時代ですとコンピューターの上でのシステムという ものに対応する必要がありますので、システム仕様の更新というようなこともこういう 中央のところで決定していく必要があるかと思います。  標準方式を普及させる仕組みというものも必須でありまして、現在、国立がんセンタ ーでも年2回程、がん登録実務者研修会というのをやっておりますけれども、年1回の コースが20人ぐらいの定員でなかなか全国普及というまでには至りません。標準方式の 基盤となるような体制としてはカルテの記載自体をこれを標準化するということも必要 かと思います。カルテに書いてないことは腫瘍登録士の人たちはアブストラクトできま せん。また、電子カルテの対応ということも必要かと思います。  院内がん登録の3番目としてはつい追跡不能例というのが多いという問題点もありま す。特に新規の登録開始施設においてこのような問題が見られます。これは1の腫瘍登 録士の確保ということとも関連しますけれども、予後調査を担当する実務者の確保とい うものが必須であるというようなことであります。あと、地域がん登録からの情報の利 用、住民票情報の円滑利用ということもあります。  一方で地域がん登録の方の問題点としては、実は最大の問題は地域全体の症例の把握 が不完全である。登録の精度が日本は国際的に見てあまり高くはありません。これを改 善するのには法的な整備ですとか、財政の支援ですとか、ということが必要なこととと もに、院内がん登録を整備するということが地域がん登録の精度向上の根本的な解決策 につながるという双方的なことが言えるかと思います。  地域がん登録の2点目としては追跡調査が過大な過剰な負担となっています。大阪府 の例でも地域がん登録側でこうした追跡調査をすることで非常に比較性のよい生存率を 算出はできるのですけれども、何せがんの罹患者数が数万というふうに上りますので、 生存率と言いますか、予後の調査を行うということがかなり負担になります。既存の資 料としての人口動態統計、あるいは住民票の情報ということを円滑に利用できると、こ の作業がかなり軽減されるかというふうに思います。もちろん個人情報保護というよう な観点から安全管理というものは必要であって、そのことは充分に配慮すべきなのです けれども、こうした作業の負担軽減ということで関係者の中での円滑な利用、活用とい うものをぜひ、実現させていただきたいというふうに思います。  米国ですと死亡情報に関してはナショナル・デス・インデックスというものがあっ て、ソーシャル・スキュアティ・ナンバーがあればその人の生存状況というものはほと んどの人が確認できるということがあります。府県を移動するというようなことで府県 単位の地域がん登録が非常に追跡が難しいというような状態にある中で、全国規模のナ ショナル・デス・インデックス、人口動態統計を用いた死亡の把握というようなことが できると非常にありがたいというふうに思います。これは住民票においても住基ネット の利用というようなことで、相当円滑の利用が進むのではないかというふうに期待でき ます。  次の頁ですけれども、最後に「評価なくして対策なし、登録なくして評価なし」と、 これは久道先生が長年言い続けているお言葉であります。翻って我が国でこのことが実 現できているかというとかなり反省をさせられるところがあります。部分部分での対策 はできていると思うのですけれども、それを統合する形での対策をすべてまとめる統合 本部と言いますか、対策本部と言いますか、そういう機能が欠落と言いますか、弱いの ではないかと。そこのところに結びつける、その機能が弱いがためにがん登録というよ うな中枢神経にあたる機能の欠落があまり目立たないと言いますか、意義が薄いような 錯覚に追い込まれているような気もいたします。今後、その統合対策本部なるブレイン のところ、中枢神経にあたるがん登録の機能のところ、こういうものを短期的に改善す る、構築することによって対がん10年のがん罹患の激減、がん死亡の激減というものを 実現させていけたらというふうに思います。以上です。  垣添座長  ありがとうございました。この均てん化の評価、成果を評価していく上でがんの実 態、つまり院内がん登録、あるいは地域がん登録の重要性は皆さん、多分、認識は一致 すると思いますが、実際問題として院内がん登録、地域がん登録、どんなふうに進んで いるか、あるいは日本の現状、あるいは今後の課題等を祖父江参考人から説明をいただ きましたが、何かこの発表に関してご質問等がありましたら、まず、お聞きしたいと思 います。後委員。  後委員  祖父江先生にこれは確認なのですけれども、我が国のがん登録の国際的な水準という ことに関しまして国際がん研究機関が、IARCが出している5つの大陸ですね。5大 陸のがんの罹患状況に関する200ドルぐらいする非常に分厚い書籍がありますけれども、 我が国では30か所以上のがん登録がある中で、そういった国際的に作られたものの中で どのぐらいの数が質が高い登録だというふうに評価をされているかと。あるいは大阪な どではどういうふうに評価されているかというところを教えていただきたいのです。  祖父江参考人  実際に地域がん登録が行われている府県は34市道府県になりますけれども、その中で 後先生、ご指摘があったようにIARCの出しています5大陸のがん罹患という本、デ ータブックなのですけれども、そこに掲載されているのはボリューム8、一番最近のも ので確か7(※正しくは6)施設だったというふうに思います。  載っているのはいいのですけれども、その中で精度に関して要注意、注意を要すると いうふうな意味でのアスタリスクがついているのが6(※正しくは5)か所で、それが ついていないのは広島市だけです。ですから、質の面で国際的な水準から見ると非常に 遅れていると言いますか、昔はまだ日本のがん登録というのは非常に先進的だったの が、だんだんとアメリカ、あるいは韓国というような後進国が取り組みが進んでいる中 で何となく置き去りになっているという状態だというふうに思います。  千村委員  今のプレゼンテーションの中で地域がん診療拠点病院に対して院内がん登録の標準的 な方式について情報提供されているようなお話があったのですが、これから例えば院内 がん登録を普及していくようなことを考えた場合に、既に地域がん診療拠点病院になっ ているところだけではなくて、その他の医療機関で興味を持つところができるだけフリ ーに見られるような形で情報提供していただくとか、あるいは研修などについても幅広 く興味を持つところから参加できるような周知の方法をとっていただくとか、というこ とをしていただくともう少し関心が広がるのかなというふうに今、思ったのですが。  祖父江参考人  そのことは充分認識しておりまして、その拠点病院だけでこの標準方式をしても数が 限られています。もっと拠点病院を核にして一般の病院といいますか、もっと広い病院 のところでも標準的な標準項目を使用していただきたいというふうに思っておりまし て、がんセンターの一応、我が部の中ではあるのですけれども、WEBの中にこの拠点 病院の標準項目について常に参照できるページを設けています。メーリングリストも興 味のある方には参加していただいて、常時、情報を提供する仕組みを作っています。  垣添座長  今のことと関連して参考資料6の地域がん診療拠点病院、院内がん登録標準項目とい うものをごく簡単にご説明いただけませんか。つまり、既に87病院が指定されています が、そこでは一応、このフォーマットに従って院内がん登録をやってくださいというこ とになっているわけですが。  祖父江参考人  参考資料6ですけれども、地域がん診療拠点病院の院内がん登録登録標準項目2003年 度版と書いてあります。これは2003年の12月に全拠点病院の方に生活習慣病対策室の室 長名で配付していただいています。  頁をめくっていただきまして、まず、院内がん登録でどんな項目を登録するのかとい うことを大まかに説明しています。基本情報、診断情報、頁をめくっていきまして腫瘍 検査、初回治療情報、予後情報、そういったものを登録していただくというふうになっ ています。  4頁目からが全国集計提出用のフォーマットということで、これは施設データが4頁 目ですけれども、個票のデータとしては6頁目からが個票データです。さきほどの院内 がん登録の個別の項目のうちで、それからいくつか抽出をし、個人情報を抜いた形で提 出をしていただくというのがこの集計用提出フォーマットの内容であります。  いくつか、ですから、簡略化されている部分がありますけれども、そのような形で提 出していただき、全体をプールした上で標準的な方法によって5年生存率を計測したい と。それによってまたお返しすることで比較性の高い5年生存率をそれぞれの施設から 報告していただけるのではないかというようなことを考えてこのようなことをやってお ります。  垣添座長  はい。どうぞ、内田委員。  内田委員  前回、私、DCOのことについて、要するにがんの登録の精度がいかに低いものかと いうことをお話したと思うのですけれども、そういうふうな低い精度のがん登録に基づ いていろいろなことを考えてもこれは大した進歩は得られないと思います。やはりがん 登録の精度をどう上げていくかということが非常に重要なことで、岡山県でもさきほど 出された資料の右側の地域がん登録中央登録室というところですね。ここが肝心なので すよ。ここがきちんとしてなかったら本当に精度の高い登録はできないのです。それは 我々の岡山県でもずっと1994年ぐらいからここは非常に力を入れてがん登録をしていま したけれども、やはり病院によってはそれが特定機能病院でありながら精度が低いと。 DCOが100%などというところが出てくるわけです。そういうものを基準にして話を しても始まらないのですよ。だから、いかにこのがん登録の精度を上げるかということ が今、一番大事なことだと思うのですね。  それに基づいて話をしないと大阪などはきちんとやっておられると思いますけれど も、それでも大阪全域になるとずっと下がってしまうということは、協力しない病院が 出てくるわけです。ですから、私は地域差というのは都市間で考えるべきだということ を言われましたけれども、私はきちんと登録をしている、少なくとも院内登録がきちん とできているような病院を中心に本当に地域格差があるのかどうかということを考えて いかないと、全部ひっくるめてしまってどうだというふうな比較をしても、これは始ま らないのですよ。その辺、前回、私はその発言をしましたけれども、取り上げられなか ったのですが、がん登録の精度というものをもう一度、きちんと考え直す必要があると 思いますが、いかがでしょうか。  祖父江参考人  もうおっしゃるとおりなのですけれども、現状の精度において各府県がん登録がどの ようなことになっているのかということをこの7月、8月に調査させていただきまし た。今まで把握されていたものとだいたい同様の結果ではあったのですけれども、DC Oというものが日本の中では20%を超える、あるいは30%を超えるところが非常に多い ということであります。そういうところのデータを集めて解析をしても確かに先生、お っしゃるとおりにその正しい判断はできないということで、限られた10ぐらいのところ ではありますけれども、精度の高い比較的日本の中では精度の高い地域がん登録のデー タを用いて、そこをできるだけ国際的なレベルに引き上げていこうということを短期的 な目標というふうにしています。そのデータに基づいてまずは日本のモニタリングをし ていきたいというふうに思っております。  垣添座長  ありがとうございました。内田委員のご指摘は全くそのとおりだと思います。さきほ ど論点整理の中にきちんと言葉が盛られていなかったのはお詫びいたしますが、それは 必ず含めさせていただきます。きちんとしたがん登録、精度の高いがん登録がなければ こういう均てん化の作業を進めても何も結果が出てこないというのはご指摘のとおりだ と思います。ですから、敢えてこの2回目にこのがん登録のことを取り上げたわけであ りますが、今の祖父江参考人の発表に対して質問がなければ議論に入りたいと思いま す。質問ですか。はい。どうぞ。まず、山口委員、それから西條委員。  山口(晃)委員  がん登録の問題ですけれども、私どもの地方ですと拠点病院が現状ではゼロというの もありますが、非常に登録の数が少ないというのがあるのですね。その登録をすること による何らかの利益というものがそれぞれの病院、あるいは診療所にないというところ が一番の問題点で、それが登録数がより上がらないということになると思うのですけれ どもね。一番基本的なことだけれども、どういうようにして登録者数を増やすかという ようなところではいかがでしょうか。  祖父江参考人  まずは、ですから、院内がん登録を整備する、そのことに関してはその施設で独自に 治療成績を評価できるということである程度はインセンティブはあると思うのですけれ ども。ただ、専門にあたる人がいない。あるいは財政的に難しいというようなことがあ って、そこのところをサポートすることで院内がん登録を整備すれば、それを地域がん 登録の方に報告していただくということでかなり地域がん登録の精度も上がるのではな いかというふうに思います。  インセンティブがないという点に関しては今、地域がん登録に関してやはり法的な基 盤が弱いというところもあります。健康増進法の中に一応、国、地方公共団体は生活習 慣病の実態を把握する努力をするようにというふうに書かれてはいますけれども、ま だ、義務的な届け出ではありません。このあたりを義務的な届け出というふうにすれば かなり精度も飛躍的に向上するのではないかと思いますけれども、ここのところはやは り国民的な議論が必要かなというふうに思います。  垣添座長  山口委員のご指摘は前回、1回目の議論のときでも何人かの方からご指摘をいただい たとおりで、何らかのインセンティブが働かないと院内がん登録が進まないのではない かと。ひとつは義務的な問題がありますが、もうひとつはやはり登録をする医師が非常 に多忙であるということでやりたくても日々の診療に手一杯でやれないといった実態が あるということで、それで敢えて資料の説明の中では腫瘍登録士などの必要性というこ とが訴えられたのではないかというふうに思います。はい。西條委員。  西條委員  簡単な質問なのですけれども、2枚目のこの図表で見ますと例えば患者さんがAとい う病院に行って、また、別のBという病院に行って治療はBという病院で受けたとしま すね。Aという病院でもがん登録で登録するわけですから、その患者さんの5年生存率 はA病院でも出てくるわけですね。したがってAとBと両方でその患者さんが登録され て、両病院で数字として出てくるというようなふうに解釈していいのですか。  祖父江参考人  そこのところの取り組みはまだ標準的なものはありません。自施設の症例をどうやっ て定義するのかについて、これ、標準的なものを決めないと、先生、おっしゃられるよ うに施設間の格差の評価ということが正確にはできないということになります。  西條委員  もう1点、さきほどの内田先生のご質問と多少関係するのですけれども、大阪の津熊 先生のご発表を見て数字だけザッと見たら、まあ、そんなに地域間格差がないなという 感じがします。ザッと見ましてね。ということは出てきている数字がどれぐらい信頼性 のあるものかということが問題になってくるのですね。あまり信頼性のないものであれ ば、5%ぐらいだったらそんなに大きな差ではないなという感じになりますよね。しか し、臨床試験のようにもの凄く厳密なものであれば、5%の差でも1万人あればもの凄 く大きな差になります。  それが例えば大阪のこの登録、地域の登録ではどれぐらいの信頼性があるというよう に考えていいのですか。例えば5%の差は差と考えるのか。それは均てん化されたとい うことはどれだけ縮まったら均てん化されたと考えられるのかというようなことについ ていかがでしょうか。  津熊委員  感覚的な直観的な答えしかできませんけれども、胃がんや大腸がんのような生存率が だいたい5〜6割程度というものであれば10ポイント程度の差は問題にすべきではない かと。それより小さいとやはりいろいろなことが関係しますので、私たちもあまり問題 にできないのではないかと考えています。ですから、そのあたりではないでしょうか。 部位によりますので、臓器のがんの特性によります。胃がんや大腸がんの全体で言えば そんなところということではないでしょうか。  垣添座長  ありがとうございました。他にご質問ありましょうか。どうぞ。先に山田委員、それ から土屋委員。  山田委員  表の3頁にあるように、これをやるとがん死亡の減少ということにつながるというご 発表だったので私も非常に結構だと思うのですが、ただ、問題なのはこのデータが公表 されたときにがんの治療をやめてくるという施設が出てこないかということが危惧され るところです。いいデータを出した施設にかなり患者さんが偏って、その結果がんの治 療が非常に遅れるということで、結果的に死亡率の低下にならない可能性もあるという ような点はいかがでしょうか。  祖父江参考人  均てん化とともに集中化をどうバランスとるかということだと思うのですけれども、 それが各臓器によっても違いますし、患者さんの分布によっても違いますし、医療資源 の配置によっても違うでしょうから、そのあたりをきちんとデータに基づいてこの地域 はこうだ、これが最適なものであるというようなことを決定していくような道筋が立て られたらというふうに思いますけれども。  山田委員  御発表のときにがんの治療をやっているところをエンカレッジするような形での工夫 が必要ではないかなと思いますので、よろしくお願いします。  垣添座長  ありがとうございました。続けて土屋委員。  土屋委員  この院内がん登録は先生の病院に受診した患者さんについての登録ということになり ますね。同様の医療機関のデータを集約したものを地域がん登録と称しているわけです けれども、実際は先生のところで診断したもの以外のもの、が実際にあるという現実を 踏まえますと、実際に登録されていない患者さんがいるのではないかということが考え られるわけですね。  ですから院内登録として、それは厳密にできたとしても、そのデータだけを集約した ものが地域のがん登録と言えるかどうか。少なくとも地域がこうであるということは一 部のデータをもって地域のがん登録であるという具合に解釈されるということはありま せんか。  祖父江参考人  これ、ちょっと説明不足なのですけれども、対象とする県の全医療機関を対象として がん登録事業を行うということになっておりますので、何もA病院、B病院だけで行う わけではありません。ただ、大都会ですと県を跨いで受診される、他府県での受診状況 がどうしても欠落するというようなこともありますので、その意味では広域的な医療圏 でのがん登録を共同して行う方が漏れは少ないというふうになると思います。  病院だけではなくて検診機関のデータも利用するというようなことは実は東北の方の がん登録ではもう既に行われていることでありまして、検診をやって見つかったがん患 者さんをちゃんとがん登録の方に登録届け出するというようなことは活用されていま す。  土屋委員  発見されたその時点で、まず第一報を登録するということが、これが一番漏れなくほ ぼ全数を把握できるというスタートになると思うのですけれど。  祖父江参考人  あらゆるデータを利用して漏れのない登録を行うというのが原則だと思います。確か に病理のレポートですとか、ああいうものも含めて利用してできるだけ把握率を高くす るというようなことは必要になるかと思います。ご指摘、ありがとうございます。  垣添座長  ありがとうございました。原田委員。  原田委員  確認なのですけれども、この地域の登録数をどう形で、例えば行政中心、これからの 答弁になると思いますけれども、あるいはその土地の中枢の病院に置くのか、今もセン ター化して全部データがいきますと、ある意味では重複する可能性もありますので、そ ういうことをどういうふうにお考えになっておられるのか。  祖父江参考人  実はネットワークの方の絡みにもなるかと思いますけれども、今、地域がん登録とし て行われているところの中央登録室の活動状況を見ますとやはり医療関係者がすぐ側に いる地域がん登録中央登録室というのは割とクオリティが保たれる。行政機関に純粋に いってしまっているような地域がん登録の中央登録室はちょっと質が担保できかねると ころがあるというような傾向があるかと思います。  垣添座長  まだいろいろご質問おありかとは思いますけれども、時間の関係もありますので一 応、祖父江参考人の発表に対する質問はここで打ち切らせていただきます。今のお話に 関連することで岡本委員から参考資料の5に沿って全がん協の状況をご説明いただけま すでしょうか。  岡本委員  資料は参考資料の5というところでございます。全がん協では古くから院内がん登録 の充実を目指そうということで動いておりまして、この表1にあります資料は平成12年 の報告でございますけれども、こういう形で各施設から表形式でデータをいただいて、 こういうふうにまとめて実名を公表して報告書を出していた時代がございました。平成 12年までやっております。  ここを見ていただきますと問題になりますのが、消息判明率がほとんど100%に近い ということなのですけれども、ここら辺がちょっと非常に信じ難いところがあります し、調査の起点というのがいろいろ治療開始日であったり、入院日であったり、診断日 であったりということで非常にばらついているということが見てとれると思います。  こういう表形式ではちょっと内情がわからないということで1985年ぐらいから個別デ ータを集めようということで集めて対策を立ててまいりました。2頁目でございますけ れども、これは1996年のデータをいただいたものを内容をちょっとこういうふうに出さ せていただきました。  さきほど祖父江先生の方からお話がございましたけれども、例えば国立がんセンター を例に出して失礼なのですけれども、ちょうど真ん中あたりにありますけれども、届け 出件数2,486件いただいているのですけれども、実は組織診断のところがちょっとない というところ、進行度が入っていないというふうにどうもこれは院内がん登録が充実し ていないのではないかということ、予測されるわけです。その他の地域でもこういうふ うに多々問題がございますし、特定部位しか出せないというところがございますので、 これは院内がん登録が充実していれば特定部位しか出せないということはあり得ないの ではないかといふうに考えるのですが、こういう形になっております。  問題になりますのが、一番右側にあります未追跡ですけれども、これは例えば5年目 以降の生死の確認ができているかどうかを調べますとやはりさきほどは100%近い追跡 率だということでございましたけれども、実際のデータをいただきますと5%ぐらいは どうも未追跡に終わっているということでございます。  こういうデータ、個別データを集めまして生存率を出しておりますけれども、個別デ ータを集めだしてからは施設名は公表はやめようという申合せになりまして、表3のよ うな形で出しております。これは表3は胃がんだけをまとめさせていただいたのです が、データは1996年でございます。19施設からいただいていまして実測生存率のいいと ころから並べております。単純に並べております。一番いいところは73%で一番低い19 番目で43.3%、実に30%の差がございます。  これをA群、E群というふうに分けました。例えばA群と言いますのはがんセンター 群でございます。B群が表4で書いておりますけれども、総合病院を併設したがんセン ター、C群が成人病センター、総合病院を併設した成人病センター、総合病院群という ような形にしてみますと、多少、表3で見ますと有意差がそんなに大きくはないという ことがおわかりになるかと思います。  表4をついでに説明させていただきますと、これは統計的に処理をしましてがんセン ター群を1.000としまして、生存率が高い、低いかを交絡因子をまとめて表にしたもの でございます。そうしますと何もしない場合には成人病センター群が非常に良いという 結果でございますけれども、1.000以上であればちょっと悪く、1.000いかがでしょう か。でありますとがんセンター群と比較して良いというふうに判断していただければと 思います。補正を性別、年齢、検診由来、臨床病期というふうに入れていきますと有意 差が変わってくるわけです。こういうことはこれは完璧に補正をすることはとても無理 なのではないかというふうな形だと思います。特に胃がんの場合は地域の差がそんなに ないだろうというふうに臨床の先生方、おっしゃいますので、真ん中あたりにあります 性と年齢の臨床病期。検診由来は臨床病期と相関がございますので、性、年齢、臨床病 期というところをやりますと一応、全がん協では差がないというふうに取れるわけです けれども、こういう形の評価をして今後、いければというふうに、こういう形でやって います。  ただ、問題点はさきほどの院内がん登録でございますけれども、やはり祖父江先生が おっしゃいましたようにやはり各病院で登録をやっている実務者がいらっしゃらないと いうこととか、もちろん財源がもう非常に問題だと思います。お金がかかることをどこ もやらないということです。さきほどからドクターが登録をお願いするということにな りましたけれども、これから電子カルテになっていきますと今、お忙しいドクターがま すます忙しいということで診療録の登録士とともに医療情報士みたいな、例えばパソコ ンに入力するようなそういう昔で言う医療秘書のような方がこれから重要になってくる のではないかと思っています。そのためにはまた財源の確保も必要かと思っておりま す。余分なことを追加しましたけれども、以上でございます。  垣添座長  ありがとうございました。さきほどの津熊委員のご説明、今の岡本委員のご説明を加 えて、祖父江参考人から全体、がん登録、院内がん登録、地域がん登録のご説明をいた だきましたが、この後、約35分ぐらいありますので全体、精度の高いがん登録をいかに 進めていくか。それをもってこの均てん化の指標をどう確立していくかという観点から ご発言をいただければと思いますが。どうぞ。  山口(直)委員  今、祖父江先生や岡本先生のお話を伺ってがん登録をより充実していくのは非常に大 事だなということは、私もがん登録を充実すべきというふうにずっと言い続けていた一 人として今さらながら大事だなというふうに思うわけですが、一方、今回、この均てん 化に向けた委員会が開催されるというふうなことについて、これは長年に渡って行うイ ンフラ整備、がん登録ももちろんインフラ整備だと思うのですが、インフラ整備の重要 性を再認識して、それで終わるのか、前厚生労働大臣のお声がかりで始まったというこ とを考えると何らかのプロジェクトみたいな形で進める可能性があるのかというふうな ことは私は非常に強く感じているところであります。  プロジェクト方式と言いますのは、例えば「健康日本21」のように、ある期限を設 定して到達目標を決めて、それに向けて何らかの実現のための方策を考えていくという ふうな可能性がないのかどうかですね。メディカルフロンティアのときも生存率の劇的 な改善を目指してというふうなことで多少、数値目標的なことが出たという経緯がある と思うのですが、今回、そういうふうなインフラ整備というのは本当に長年かけて結果 はあとからついてくるのだというふうなものだと思うのですが、もちろんそれは非常に 大事だと思うのですが、プロジェクト方式で何か目標を決めて、それに向けて何か動く ような可能性があるのかどうかですね。  そのためにはもちろん予算化がないと、「健康日本21」というのは非常に大々的に 始まってもう何年も経っていますが、予算化というところで問題があったのでなかなか 実現が困難だというふうな状況もあると思いますので、予算化があってプロジェクト方 式でいけるのかどうかというふうなあたりですね。その辺の議論があってほしいなと私 はつくづく思うのですが、その辺はいかがでしょうか。  垣添座長  大変重要なご発言かと思いますが、このことに関連して他の委員からご発言がありま したらお受けしたいと思います。つまり院内がん登録、あるいは地域がん登録の例えば 重要性はもう皆さん、よく承知しておられますが、実態はかなり貧しい状況にあると。 これを何とかしないと先に進まない。それを単に院内がん登録を進めましょうという掛 け声だけでは絶対に進まないということはよくおわかりいただけると思います。それを どう例えばがん登録に関して言えば進めていくかというインフラ整備の話につながるか と思いますが。どうぞ。  丸木委員  私も全く同意見でありますが、例えばここに腫瘍登録士の確保、お医者さんが忙しく てそういうふうな専門の人が必要であるというのは今日のお話を聞けば皆さん、そうだ ろうと言うと思うのですよね。では、現実に例えばがんセンターなり、そういうところ ではこういう人たちが日本ではおるのかどうなのか。そうではなくてドクターが兼務し てやっているのか。もしくは診療録管理士がやっているのか。そういう実態についてち ょっとわかったらお教えいただきたいのですけれども。  祖父江参考人  今、現に院内がん登録というのをきちんと運用している病院がどれだけあるのかと言 うと、かなり限られているというふうに思います。腫瘍登録士という人はやはり専門知 識が必要なので短期的に養成するというのは非常に難しいのですけれども、臨床情報管 理士の方々はやはりカルテに関して相当精通されておりますので、がんに関しての専門 知識を短期的に習得していただくことでかなり臨床情報管理士の方をベースにそういう 人たちを育成していくのが現実的な対応ではないかというふうに思います。現在、です から、腫瘍登録士という人が何人おるかというと非常に限られた数だと思います。  丸木委員  そうするとそれのインセンティブをつけるためには、いわゆるここで言うような診療 報酬上のあれをつければいいと、こういうご意見ですか。  祖父江参考人  まず、それが、だから、基本にありますけれども、それと同時にやはり人材の育成に 関して教育システムとか、標準的なティーチングスタッフとか、マテリアルとかという ことも充実させていく必要があるように思いますけれども。  丸木委員  なるほど。そうすると診療拠点病院では一応、そういうスタンダードができているわ けですよね。こういう標準方式をしているわけですよね。まず、そこからということな のでしょうか。具体的にではどういうふうな形でこれを普及させていけばいいかという ので、もしも。  祖父江参考人  まず、だから、先鞭をつけるのはやはり拠点病院が中心になり、そこを核にして他の 病院にも広げていくという道筋だと思います。  垣添座長  これは人材の育成の問題と医療機関におけるそういう専門家のポジションの確保の問 題と実際にその人たちを採用して働いてもらうお金の問題、その3つが関わるかと思い ますが。他にご意見ありましょうか。  さきほど5年生存率ではすぐに結果が出てこないということで短期的な指標のことが ちょっと話題に上がりましたけれども、これに関して何か専門の方から何かこういう指 標があるのではないかというようなご提案がありますか。あるいは学問的にそれは非常 に難しいという話ですか。どうぞ、岡本委員。  岡本委員  院内がん登録のデータを扱ったときに感じたのですけれども、来院患者さんが病院に よって随分違うのですね。それを一緒くたにして生存率を出していいのかどうかという 問題ですので、やはり例えば難治性のがんをよくやるところはやはり生存率が悪いのは 当然でございますので、そういったがん患者さんの分布とか、特にステージの分布、手 術割合みたいなこと、外来の治療に来られた方とか、セカンドオピニオンで外来で来ら れる方たちを今後、どうするかというのも問題ですけれども、そういった割合が非常に 生存率と関係しますので、ぜひ、そこら辺も短期指標の中に入れるべきではないかと。  前回、山口先生がおっしゃいました、例えば術後3か月以内の死亡とか、そういうこ とも指標に入れていくということと、平均在院日数というようなことも考えられるので はないかと思っています。短期指標については私はそう思っています。  垣添座長  ありがとうございます。他にご意見ありますか。どうぞ、山口委員。  山口(直)委員  さきほどの私の発言とも関係するのですが、短期指標と前回、私、申し上げましたの は、そういう期限限定で何かしらの成果を測るというふうなことを考えますと5年生存 率は感度がちょっと悪すぎる。何年もしないと成果が上がってこない。今、測られてい る5年生存率は5年前の患者さんの医療の評価ですので、そういう意味ではプロジェク ト方式で何かおやりになるのだったら短期的な指標も加えないとあまりにも精度が悪す ぎる。精度ではないですね。感度が悪いというふうに思います。  そうではなくてもうなだらかな20年、30年経ってどうかというふうなことをご覧にな るのだったらもちろん5年生存率がベストだと思うのですね。その辺が短期性、短期的 な指標を考慮するか、5年生存率みたいな安定した指標で見ていくかの分かれ目だとい うふうに思います。  垣添座長  一応、これが第3次の対がん10か年総合戦略と連動して考えますとやはり10年という 期限があります。しかし体制が整備されるのにやはり数年はかかると。そのデータが出 てくるのが一番早くても5年ぐらい。10年後にある程度、均てん化の成果が見えるよう な形にもっていかないといけないということになります。  それでも今、5年生存率でいくとなかなか難しいという話があるでしょうけれども、 一応、それを目標にして作業を進めていくということが必要になろうかと思います。そ れと同時にやはり短期的な指標もやはり同時に進めていくという両面作戦が必要なので はないかなと私は考えておりますが。どうぞ、野村委員。  野村委員  既にがん政策医療ネット、ここにおいては各施設の診療評価表というのをトライアル で出していますね。ですから、そういったものを参考にして短期の評価というものを見 ていく。同時にこういったしっかりした地域登録、こういったものを進めていくという ことがいいのではないかなと思います。  垣添座長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。どうぞ。  丸木委員  さっきの質問のお話で、短期評価というのはもうちょっと具体的にどういうものを評 価するのか、教えていただけますでしょうか。そのネットでやっているというのは。  野村委員  これは生活習慣病対策室の方の方がよくわかっているのだろうと思うのですが、例え ば代表的ながんを挙げて、ステージIIIの人たちが何名ぐらい、そこに入院されて治療さ れて、その後、治療結果がどうだったとか、あるいは短期的に見るにはそこでの死亡率 はどうだったとか、というようなところ、短期評価に必要なリスト、項目これが短期評 価に値するだろうというものを出して、それについてやっているのです。ですから、そ の項目が本当にいいのかどうかということから判断してやっていけばよい指標が出るの ではないかな思います。  内田委員  さきほどの登録のことにまた戻りますが、結局、中央登録室ですね。各県の中央登録 室にドクターが関与しているかどうかということがやはり精度に関係をするという話が ありましたですね。やはりそういう点ではやはり各県の医師会のがんの登録についても っと関与して、そこが中心になって登録をきちんとやるというふうにしないと行政任せ ではこれはいい登録は行われないと思いますが、土屋先生、今日、来ておられるのでそ の辺、いかがですか。  土屋委員  おっしゃるとおりで、私がさきほど院内のがん登録は特定のきちんとした医療機関で それが立派にできたにしても、それらを集めたものが必ずしも地域のがん登録とは言え ないのではないかと。私どもは日常、結構、そういうものに遭遇しているのですけれど も、さきほどの祖父江先生のような考え方までいかないにしても、それに準じるような 考えでの認識が極めて希薄です。  先生方が我々に地域の前医療機関の医師たちがそういう考えを持てるように教育して 啓蒙、啓発してもらうということが大事なのではないかなと。そのような考えでまとめ たものがきちんと登録されて、初めて地域のがん登録と言えるのであって、現場の状況 を考えますと、特定の医療機関の院内がん登録を集めたものをもって地域のがん登録と は言えない。  掛かりつけ医と一口で言いますけれども、意外に多くの医療機関がこういうものを現 実には関わっているにも拘わらず、その役目をきちんと果たしていない。ここにお出で の先生方の医療機関がいかに立派にやっているかということに添えて、我々を教育する ことも先生方のお仕事の一端であるという具合にお考えいただけるとありがたいと思い ます。  垣添座長  地域がん登録の中央登録室の重要性というのはご指摘のとおりですが、これに関して もう少しご発言いただきたいと思いますが、どうぞ、野村委員。  野村委員  さきほどの短期評価の件なのですけれども、ちょっと資料を持ってきましたので、さ きほど曖昧な回答でしたので答えさせていただきます。臨床評価指標というものであり まして、その中に入っている臓器は胃がん、乳がん、大腸がん、子宮がん、肺がん、肝 細胞がん等々が入っております。  胃がんで例を申しますと、まず、胃がんの全患者数を出していただくと。胃がんの治 療関連死亡者数、死亡率、これを出していただくと。胃がんのステージIII切除例の5 年生存率。胃がんのEMR施行例、実施件数。こういったもの。それについて乳がんで あれば乳がんの特徴的なものを提出していただくというような試行でありますが、これ は案として今、出ております。  垣添座長  今のがん政策医療ネットワークで使っている短期指標の例ということでお話をいただ きましたが、もう一度、戻りまして中央登録室の機能に関してもう少しご発言いただけ ればと思います。どうぞ、津熊委員。  津熊委員  私どもも大阪府がん登録の中央登録室を担当しておるのですけれども中央登録室にき ちんとした専門家がいて、かつ病理、疫学の関係者と常に、あるいは臨床の先生方とコ ンタクトもしながら仕事ができることは必須だと思っておりますが、得てして地域がん 登録の精度が低いのは中央登録室の努力不足ではないかとか、そういう形で受け取られ なくもない状況がございます。私どもは中央登録室のレベルを上げることはもちろんで ありますけれども、制度的な仕組み、一番の問題は法律により届け出を義務化するとい うことがあるかもしれませんし、それに至るまでの人的、財政的な支援というのはやは り国、行政レベルで考えていただきたいということがひとつでございます。  関連してもうひとつ。さきほど5年生存率、あるいは短期指標ということが出まし た。5年生存率はこれまでは5年経った方でないと生存率が計測していないというのは 私ども、お見せいたしました資料も、そうなのでありますけれども、しかし、予後調査 を毎年、実施することができますれば、もう少し最近の医療状況を反映した5年生存率 を出すことは可能であります。  ピリオッド・アナリシスという手法を言われるわけですけれども、しかし、そのこと をするためにもがん登録で把握した患者さんの予後調査を効率良くできるはずでありま して、そのことにつきましても前回、発言させていただいたところであります。短期指 標も重要だと思いますけれども、やはりゴールド・スタンダードとしての5年生存率を きちんと測定していくと。そういう指標を出さないと国際比較もできないということで はないかというふうに思います。  短期指標についてもう1点、申し上げます。そういう指標も院内がん登録を基に出せ るような仕組みにしておかないと、今、野村先生から伺った指標だと得てして診療科か ら計算され出てくることもなきにしもあらずではないかと危惧いたします。病院、施設 として公式な統計をとって出せるような仕組み、これはやはり院内がん登録だと思うの ですけれども、そういう仕組みを作り、そこで短期指標も算出するし、5年生存率の成 績も出せるようにするということが基本ではないでしょうか。  垣添座長  ご指摘のとおりで院内がん登録がちゃんと整備されないと、ご指摘のようなデータが 出てこない。さきほど岡本委員からご発表いただいた全がん協の中で恥ずかしながら国 立がんセンターのデータが大きく欠落しておりますけれども、これは国立がんセンター の病院で働いている臓器グループはステージ別の正確なデータは持っているのですが、 それが院内がん登録の形で情報が吸い上げられていないということですね。  それは今、急遽、体制を整備しておりまして、きちんと正確なデータが院内がん登録 として整備されるような形を大変遅まきですが、現在やっております。こういったこと がすべてのやはり、例えば地域がん診療拠点病院、あるいは均てん化に関わる医療機関 で行われなければいけないという話だと思います。どうぞ、野村委員。  野村委員  さきほど私が説明すればよかったのですが、今の議長の話のとおり、外科系の臓器が ん登録、これはきっちりされているのです。ところが内科系の中ではいろいろな臓器が んが治療されている。それがきちんと整理されていないということで、全体を通じます とこういデータが出てこないということなのです。ですから、院内がん登録をきちんと して全体図を出せるという形にしなければいけないだろうと思います。  私、誤解を招くといけないのでちょっと発言させていただきますけれども、さきほ ど、短期指標のことを話しましたけれども、これは院内がん登録、地域がん登録、これ は必須なものでありまして、短期指標というのは成果をみるための短期評価の必要性の 上でやっていくということで進めなければいけないだろうと思います。それが全体の地 域がん登録、院内がん登録に関して、特に地域がん登録についてはこれは事業として進 めなければいけないだろうと思います。どこかに中心を置いて、国の事業としてやって いく必要があるのではないか。そうしないとこれは進んでいかないだろうと考えており ます。  垣添座長  府県別に地域がん登録の中央登録室ですか、そういうものが仮に整備されたとして、 そこに情報が集まってきたときに我が国の全体の情報を取りまとめるという上では、そ れぞれの地域がん登録の全体のデータを集める必要があると思いますが、それに関して どんなふうに考えればよろしいでしょうか。どうぞ、後委員。  後委員  私も地域のデータを我が国としてひとつのデータにまとめて、できれば年に1回ぐら い会見でもしてグラフとかも作って、今年はこういう状況になりましたというのを全国 の人にお知らせするようなことはできたらいいのではないかと思うわけですけれども、 そのためにはあまり集めた情報、集めるところがあまり学術的に偏っていてもいけない し、医療機関の評価のようなことで比較だけに偏ってもいけないし、あるいは北海道か ら沖縄までどこかに抜けが出るようなことでもいけなくて、地域的な偏りがあってもい けないし、さらに対策まで考えるようなところでないといけないということを考えると やはり国立の施設が相応しいし、ナショナルセンターのようなところが相応しいという ふうに私は思います。  垣添座長  ありがとうございました。他にご意見ありましょうか。どうぞ、参事官。  大臣官房参事官  お話がある意味で施設間の格差を明示して、その均てん化を図っていくことががん医 療全体の均てん化につながるという、そういう方向へ向かっているような気がいたしま す。確かにそれもメディカルフロンティアの流れの中で極めて重要な施策であり、それ を具体化するためには院内がん登録、また、地域がん登録の重要性というのは、これは 当然のことだと思います。  しかしながら、今回のこのがん医療の均てん化に関して第1回目の大臣のご挨拶でも お触れになったことでありますが、都道府県の間にがんの治療、その他に大きな格差が ある。また、いい施設へ行けない、そういう地域の人たちの悲痛な気持ちもあると。こ ういうようなところをどのようにして少しでも均てん化を図っていただくかということ を一番大きな問題点として掲げられたのではなかろうかと思います。  そういう意味で本日、参考資料のひとつとして参考資料の3に用意させていただきま した都道府県の悪性腫瘍の死亡率の地域差というものが現状を認識していただくための ひとつのデータでございますけれども、それについてちょっと簡単に触れさせていただ きたいのですが、いかがでしょうか。  垣添座長  どうぞお願いします。  大臣官房参事官  はい。参考資料3の1頁目は悪性腫瘍の死亡率、肺がん、男性の死亡率の分布という ものでございます。年齢別に5本の線が引かれていると思いますが、この5本の線とい うものは47都道府県、東京都23区全域、12の指定都市、併せて60のデータでございま す。また、肺がんの年齢別というような細かいデータを比較するために平成10年から平 成11年、12年の死亡数を積算して、その平均値で死亡率を比較したものであります。  一番下の赤はこの60の地域の中で最も死亡率が低い、そういうところがどこであった か、その数値であります。2番目の青い線は下4分値と書いてございますが、60の4分 の1、15、すなわち下から15番目の都道府県、もしくは政令指定都市の数値でありま す。それぞれの年齢のところでの低さを言っていますので、左側の60-69歳の点と70-79 歳の点、その点は別の都道府県ということは当然のことでございます。  黄色は真ん中の数値であります。赤はその次のピンク色は上4分値と書いてあります が、これは高い方から15番目、すなわち死亡率の悪さで言いますと45番目の地域であり ます。一番上は一番悪い地域で60番目ということになります。  肺がんのこれを見ていただくと、例えば70-80歳のところですと一番下の真ん中の青 いところと上から2番目のピンク色のところ、そして一番上というのを比較しますと、 上の方の開きは15の都道府県が入った開きです。黄色をはさんで真ん中の赤と青の間の 開きは30の都道府県が入った開きです。その下の青と一番下の最低値との間は15の都道 府県が入った数値でありますが、15都道府県及び指定都市が入った数値でありますが、 このように真ん中の30の都道府県というのはだいたい同じような数値を持っています。  さきほど、津熊委員がおっしゃった、だいたい10%ぐらいかなという点で見ますと、 中央値である黄色の死亡率の10%ぐらいのところにだいたい30の県が入っていると、こ ういうふうに見ていただきますと、上の方にある15の都道府県が少なくともこの30ぐら いのところに入ってほしいというのがある意味での国民の期待感であります。  もちろん一番下の最高の死亡率のところまで達する、失礼、最低の死亡率に達すると ころまでいく、あるいはこの最低の死亡率をさらに下げていくということができること であれば、これはさらなる勝利だと思われます。  当面の目標としてはやはりこの上の方にある15、あるいは20でも25でもよろしいので すが、それを少しでも低くしていくようにするためにはどのような施策が必要なのかと いうことを明示していただくことがある意味で大変重要なことではなかろうかと思いま す。  ちなみにここではさきほど開きがありそうだと言われた、成績が悪そうだと言われた 肺がんと大腸がん、肝がんについて、胃がんも間に入っていますが、成績を入れてあり ますが、特に肝がんなどはその悪い方の15というものの開きが極めて大きいということ をグラフの上から見てとれるのではなかろかと思います。  頁を12番目の表を見ていただきたいと思いますが、肺の悪性腫瘍で上は男性、下は女 性となっております。例えば60-69歳のところを見ていただきますと一番悪いのは鳥取 ということで和歌山、大阪市と続いております。平均値というか、全国値はこに書いて あります130.1、これに比べて大阪ではそれよりも28ポイント低い、成績が悪いわけで あります。ちなみにここに掲げてあります鳥取、大阪市、山形、長崎、下の大阪府とい うものはさきほど来、出ております地域がん登録の中で国際的に一応、認められた地域 がん登録を行っている地域です。  国際的には認められておりませんが、がん登録をそれなりにやっていただいているの は青森、北海道、名古屋市、岩手、岡山、地域がん登録を行っているところが多く、こ の15の幅の広いところに入っている、成績の悪いところにあるということもまた疑いの ない事実でございます。  こうした都道府県、具体的に名前を挙げてあるわけですが、こういうものをどのよう にがん登録をこれから進めて、さらに5年生存率を上げていくということの重要性もさ ることながら、それだけではやはりこの地域のがんの死亡率を下げることはできないの だということで、前回、議論にございましたやはり研修の問題、この地域の先生方をど のようにして国立がんセンター、あるいはそれに準ずる施設で研修を充分にしていただ くかということがある意味で重要な施策なのではなかろうかというところまで前回、お 話が進んだのではなかろうかと考えております。以上です。  垣添座長  ありがとうございました。今、資料のご説明をいただいたように道府県における大き な地域格差というものがあるのを非常に具体的にご指摘いただきました。本日は確かに がん登録の話に終始しておりますが、今後の予定としてやはり今、ご指摘の人材育成と か、人材の交流の話、あるいは施設間のネットワークの話、今、ご指摘の道府県による 死亡率の格差とかというものをどうやって縮めていくかという議論をさらに進めていた だく予定でおります。その一番基になるがん登録の話を本日、ご議論いただいたという つもりではおりましたけれども、今、瀬上委員からご指摘の点に関して何かご発言いた だくこと、ありましたらこの場でお受けしたいと思いますが。どうぞ。  丸木委員  ちょっと私、誤解してはいけないと思って確認するのですけれども、この地域がん登 録とか、そういうのに熱心なところが生存率が悪いというふうなデータという読み方を していいのですか。これは。  大臣官房参事官  そういう読み方だけは決してなさらないでいただきたいと思います。がん登録の重要 性というのは極めて高いということはもちろんのことですが、必ずしもそれを全面的に 進めることで均てん化を図るというところには結論は結びつかないのだと。将来的に治 療率、生存率を高める、施設間のどういう治療法がいいのかというような視点に立った ときにより良い治療法等の選択には極めて重要なツールであるということはもちろんで ありますけれども、必ずしもそのことだけが均てん化を進めることにはならない。地域 全体として私ども、やはり考えさせていただきたいと思っております。  ちなみにさきほど話題になりました地域がん登録の中で、今度は参考資料の5番、全 国がんセンターの岡本先生の提出された資料の中で頁の1番でありますが、この千葉県 がんセンターというのがございます。消息判明率が73.72%とこの中で悪いということ になっておりますが、この地域は県医師会ががん登録の全体の事務を行って、そこで全 施設のがんを集約しておられます。まとめているのはがんセンターでまとめています。  6,700の症例数のうち、この時期ですと私の記憶では4,700人前後が千葉県内で消息が 判明しております。200人が築地の国立がんセンターのデータを照合することによって 消息が判明しています。消息が判明したのはその4,900ケースで、残り、1,800人は千葉 県内ではないところで亡くなっておられます。ほとんど東京都で亡くなっておられます が、国立がんセンター以外の施設で、その施設からのデータというのは全然千葉県内に 戻ってきません。  よって消息判明率73%ということで、地域がん登録を単純に進めてもこれもよくない ということで、さきほど来の全国をつなげていくということも必要だということがござ いますが、そういう意味での重要性というのは今後の大きな課題であります。がん登録 の重要性は充分に認識しておりますけれども、がん登録を行っているところが成績が悪 いということでは決してありません。  丸木委員  よくわかりました。ただ、やはり施設間格差というのはやはり患者の側からすれば今 の一番最大の関心事であろうかと思いますので、やはり院内がん登録というのはやはり 整備をするというのは僕は基本的に理解しているのですが、そういう理解でよろしいの でしょうか。  垣添座長  ありがとうございました。本日の結論はまさにそこに至るかと思います。あと何回、 この検討会、開けるかわかりませんけれども、1回目にフリーディスカッションをして いただいて問題点を指摘していただいた。今日、前半に整理いただきましたように意見 の取りまとめをして、この流れに沿ってさらに進めて参りたいと思います均てん化の評 価をしていく上で院内がん登録、地域がん登録の重要性を本日、取り上げて議論してい ただきました。  フォーマットに関してはさきほど祖父江参考人から現在、地域がん診療拠点病院で使 われているものを明示させていただきましたけれども、こういったひとつの統一フォー マットで今後、全国的に展開していただく必要があるのではないかと。院内がん登録の 精度を高める上ではやはり腫瘍登録士といった何らかの人的な、あるいは財政的な配慮 が必要があるということも繰り返しご指摘いただいていますので、これも報告書の中に ぜひ、盛り込んでいきたいと思います。  どのぐらいの段階、レベル、時期に均てん化の評価をしていくかという、つまりロー ドマップと言いましょうか、タイムスケジュールと言いましょうか、そういったことも 考えていかないといけませんので、5年生存率を当面目標にしてまいりますけれども、 並行してもうちょっと短期の指標も検討していく必要があろうかと考えます。  あと、地域がん登録中央管理室の整備というものもやはり地域がん登録を進めていく 上で非常に重要であるというご指摘も度々、いただきました。これもそのとおりだと思 いますし、そこに集まったデータをやはり日本全体として把握する上ではやはりどこか に一元化しなければいけないということで、幸いに国立がんセンターにがん予防・検診 研究センターを作っていただきましたので、そういうところに例えばデータを集約させ ていただければきちんとしたものをとりまとめ、全国に、あるいは行政にお配りするこ とができるというふうに考えています。 3.閉会  垣添座長  本日はがん登録に関して一応、ご議論をいただきましたけれども、そろそろ時間がま いりましたので、ここで一応、打ち切らせていただきたいと思います。今後の予定等に つきまして事務局からご説明いただければと思いますが。  大臣官房参事官  はい。次回は11月30日火曜日、午前10時から12時までということでお時間を調整させ ていただきたいと思います。議題につきましては本日、ただいま、座長からご指摘いた だいた件及びがん専門医等の育成についてご議論いただければと考えているところでご ざいます。開催場所については改めてご連絡を申し上げます。  大臣官房参事官  それから、本日、内田委員から若干、ご指摘がございましたが、論点整理に関しては 先生方のご意見を最大漏らさず記入する、それをまとめて事務局の方でまとめて何人か のご意見をまとめてそれぞれここに掲げた丸のところに記入させていただいたつもりで はございましたが、そのまとめ方の趣旨が若干、悪かったのかもしれません。ご意見は 反映させていただいたつもりでした。次回も本日、いただいたご意見を反映させていた だく形でまとめながらこの中に記載させていただきたいと思いますが、それでよろしゅ うございましょうか。議事録は別途、用意してございます。  垣添座長  よろしいですね。はい。それでご了解ください。よろしくお願いします。それでは本 日はこれで閉じさせていただきます。長時間のご議論、ありがとうございました。                   (終了)