04/10/18 国際協力事業評価検討会(第1回水道分野)議事録 1 日時 平成16年10月18日(月)10:00〜12:00 2 場所 厚労省専用第17会議室 3 出席者 【会員】  金近忠彦会員(横浜市)             北脇秀敏会員(東洋大学大学院)             国包章一会員(国立保健医療科学院)             眞柄泰基会員(北海道大学創成科学研究機構)             村元修一会員(日本水道協会)             山田淳会員 (立命館大学理工学部)             山根亮太郎会員(日本水道工業団体連合会)       【専門会員】筒井誠二専門会員(厚生労働省健康局)             服部司専門会員(外務省)             榊原隆専門会員(国土交通省)             安達一専門会員代理(永石)(国際協力機構)             土谷武専門会員(国際協力銀行)             野崎慎仁郎専門会員(国際厚生事業団)       【事務局】 村木国際課長、中澤国際企画室長、福田国際協力室長、             吉川専門官、今井補佐、釜石補佐、朝尾補佐、細川専門官、             北村専門官 4 議事 ○吉川専門官  定刻になりましたので、「国際協力事業評価検討会(第1回水道分野)」を開催しま す。最初に村木国際課長からご挨拶申し上げます。 ○村木国際課長  会員の皆様には常日ごろから、私ども厚生労働省に大変ご指導、ご協力をいただき、 この場をお借りして改めて御礼申し上げます。また、大変お忙しい中をこの検討会への 参加をご快諾いただき、今日第1回目の会議にご出席いただいたことを改めて御礼申し 上げます。  私ども厚生労働省の国際協力分野、特に旧厚生省と労働省が一緒になり非常に幅広く なりました。この上水道分野はもとより、保健医療、社会福祉、あるいは能力開発、雇 用創出等、言ってみれば人々の生活基盤全体に及んでいます。日本の最近のODAの新 しいコンセプトである「人間の安全保障」ということから考えると、まさにその基盤を なすものだと考えています。これからまた一生懸命進めていきたいと思っています。  その一環として「国際協力事業評価検討会」を開催いたしました。ここで私どものや っている国際協力事業をきちんと評価して、その上でこれからのあり方、戦略を立てて いこうということでご検討をお願いしています。  いままで、先にスタートしているのは2分野あります。保健医療分野、労働分野につ いて検討を進めています。それぞれの分野でその分野の性格、状況に応じた検討を進め ていただいておりまして、この水道分野についてものちほど私どもで素案をご提示し、 どのように進めていくかご議論をお願いしたいと思います。  皆様方にご議論いただくのですが、この際、私が個人的に考えていることを2点ほど 申し上げたいと思います。今後の検討の参考にしていただければと考えます。1つはこ の検討会のテーマになっている評価ということです。もちろん、評価をして終わりにな っては意味がないわけで、その評価をどうやって活かしていくかということを考えてい きたいと思っています。活用のアイデアが2つあります。1つは世の中で事業を進める 上でのプラン・ドゥー・シー・アクションという進め方です。評価というのはまさにシ ーの部分に当たるわけで、これを踏まえてさらに私どもの事業をどう見直し、より良い ものにしていくか。あるいは、どういうプライオリティーをつけていくか、どういう進 め方をしていくのか、何が課題となっているのかについてさらにいろいろな助言を頂戴 したいと思っています。  もう1つの評価の活かし方として、説明責任、アカウンタビリティということがあり ます。ご承知のように、最近、政策すべてについて説明責任ということが非常に強く意 識をされています。このODAについても全くその例外ではなくて、むしろなかなか国 民の目に見えない部分、説明責任ということをより大事にしていく必要があろうと思っ ています。その点で何を目的にして、どういう事業ができたかをきちんと評価し、それ を説明していくということは非常に大事なことであろうと思っています。以上が評価に ついてです。  もう1つ、全くつたない考えですが、この水道分野についてはこれまでも会員の皆様 方のご協力を頂戴し、いくつかの提言が出、さらに今年、水道ビジョンもまとまってい ます。国際の分野についても、将来の方向性がある程度示されているわけです。その中 で屋上屋を架そうという意図ではありませんで、むしろこれまでの提言ビジョンをもと にして、それをどう具体化していくか。何が課題になっているのか、何を解決しなけれ ばならないのかということをもう少し突っ込んで検討していく場としても、この場でい ろいろお知恵をお借りしたいと思っています。  以上、これは私の考えですが、さらに皆様方の公正なご議論、いろいろなアイデアを 頂戴するという意味で大変重要な検討会だと認識をし、事務局を務めていきたいと思っ ています。どうか、よろしくお願いいたします。 ○吉川専門官  ありがとうございました。続いて本日の出席者ですが、まず会員の皆様からご着席の 順にご紹介いたします。まず、横浜市水道事業管理者の金近局長です。本日、のちほど 横浜市の取り組みについてご紹介いただきます。国立保健医療科学院水道工学部の国包 部長です。先ほど話題になりました、「水道分野のODA方針検討報告書」というもの がありますが、こちらの取りまとめにあたって委員長としてお務めいただきました。ま た、永年、JICWELSの水道部会事業でご協力をいただいています。  続いて、東洋大学大学院国際地域学研究科の北脇教授です。北脇先生にもODA方針 検討会の検討にご参加いただいています。また、北脇先生は下水道分野のグローバル化 研究会で主査を務めておられ、ほかにも10以上、関係の各省庁が民活関係で行っている プロジェクト、研究会などにご参加いただいているということで、そういったインプッ トも是非お願いしたいと思っています。  北海道大学創成科学研究機構の特任教授でいらっしゃる眞柄先生です。眞柄先生はず っと、JICWELSの水道部会事業で部会長として長年ご提言をいただいてきまし た。また、平成14年にまとめられたJICAの水分野援助研究会の報告でも、水供給分 野の章を担当されてまとめられたと伺っています。水道ビジョンのほうでも、ビジョン をまとめる部会長として活躍されていると伺っています。  立命館大学理工学部の山田教授です。山田先生にも長年、JICWELSの水道部会 で委員としてご活躍いただいています。また、個々のプロジェクト・フォーメーション の事業などで大学院生をお連れになってご参加いただき、アクティブにご助言をいただ いています。  社団法人日本水道工業団体連合会海外委員長の山根様でいらっしゃいます。山根先生 は水団連ということで、企業連合会の海外委員長として海外進出のワーキンググループ などを数年前に立ち上げて、研究されたというように水団連の方から伺っています。あ と、JBICなどでもご活躍されたご経験があると伺いました。是非、そのようなご経 験からもご意見をお伺いできればと思います。  続いて、社団法人日本水道協会研修国際部の村元部長です。村元部長にはやはり、J ICWELSの水道部会で部会の委員としてご活躍いただいているほか、日本水道協会 はずっとJICAの水道集団研修の受入れ機関ということで、アクティブに研修の実施 を行っています。また、「日本水道協会シニア専門家登録制度」というものがあり、こ れが我が省が専門家をJICAにご推薦するときに非常に有力なツールとなっています が、こちらの事務局をやっていただいています。  続いて、専門会員の皆様をご紹介いたします。まず、厚生労働省健康局水道課の筒井 課長補佐です。続いて、外務省経済協力局開発計画課の服部課長補佐です。国土交通省 都市・地域整備局下水道部下水道企画課の榊原下水道技術開発官です。独立行政法人国 際協力機構地球環境部の足立第3グループ長、専門会員でいらっしゃいますが、本日ご 欠席のため、代理で永石第2チーム長においでいただきました。国際協力銀行開発セク ター部の土谷参事役です。社団法人国際厚生事業団事業部の野崎部長です。本日、オブ ザーバーとして、横浜市水道局総務部人材開発課の江夏係長におこしいただいていま す。  事務局をご紹介申し上げます。先ほどご挨拶させていただいた村木国際課長です。そ の左隣、中澤国際企画室長です。福田国際協力室長です。釜石補佐です。今井補佐で す。朝尾補佐です。北村専門官です。細川専門官です。吉村協力企画係長です。協力企 画係の安原です。それから派遣・研修係の小峰係長です。私は国際協力専門官をしてお ります吉川と申します。よろしくお願いします。  配付資料の確認をさせていただきます。まず「議事次第」ですが、表紙をめくります と出席者の一覧表、本日の座席表をお付けしています。次に資料1、「国際協力事業評 価検討会の設置について」、資料2「国際協力事業評価検討会(水道分野)の運営につ いて(案)」、資料3「国際協力事業評価検討会(水道分野)の進め方について(案) 」、資料4「厚生労働省水道分野国際協力事業の概要実績」、資料5「水道ODA方針 検討会等で指摘された主な課題と現況」、資料6「水道分野国際協力の戦略分析例」、 資料7「水道分野国際協力の階層系図」、資料8「効果的な都市水道分野ODAのロジ ックモデル・イメージ」、資料9「政策評価に係るアウトプットイメージ」ということ で「検討会アウトプットイメージ」というタイトルにしています。資料10「人材確保・ 育成に関する検討事項(案)」、資料11「ケーススタディ:総合援助手法の検討(案) 」、資料12「横浜市水道局の国際協力の取り組み」、それから参考資料集として「国際 協力事業評価検討会(第1回水道分野)参考資料集」となります。  「水道分野のODA方針検討会報告書」の冊子、その続きとして水道分野の国別援助 の方向、それからODA方針検討会報告書に対し、民間企業の方から1件コメントをい ただいていますので、そのコメントを参考にお配りしています。配付資料については以 上ですが、何か不足等はございますでしょうか。また、各会員と専門会員の皆様には別 の封筒があり、当方からの委嘱状が入っていますのでご確認ください。よろしいでしょ うか。  次に、座長を事務局から提案させていただき、皆様のご了解をいただきたいと思いま す。事務局としては眞柄先生に座長をお願いしたいと考えています。会員の皆様、いか がでしょうか。                  (異議なし) ○吉川専門官  ありがとうございました。それでは眞柄先生、座長として以後の進行をよろしくお願 いいたします。 ○眞柄座長  皆様方のご了承をいただき、国際協力事業評価検討会の座長を務めさせていただくこ と、大変光栄に思っています。振り返ってみると、1972年ごろから水道分野のODAに 関係しております。いま、創成科学研究機構特任教授になっています。国家公務員とし ての役は一応終わっていますので、そういう意味では私自身、今回の検討会で次の世代 の方に水道分野のODAをどう活性化していくかという指針をまとめるお役目をさせて いただくのは大変に光栄だと思っています。よろしくお願いいたします。  議事の最初ですが、進め方のうち、検討会の運営について事務局からお願いいたしま す。 ○吉川専門官  資料2をご参照いただきたいと思います。「国際協力事業評価検討会(水道分野)の 運営について(案)」ということで、資料2をまとめています。まず、この検討会の位 置づけですが、資料1も並行してご覧ください。資料1のほうは全分野共通で使ってい ます。検討会の設置の趣旨、期待される成果、本分野の活用と組織と事務運営について の資料です。こちらの趣旨にありますとおり、この「国際協力事業評価検討会」は国際 課長が主催する有識者検討会であり、国際協力室長が運営にあたることになっていま す。本検討会の提言は、今後の水道分野における厚生労働省国際協力施策に反映させる べきものと捉えています。  2番目として、検討会から期待されるアウトプット、その活用、検討事項、必要情 報、スケジュールでございます。こちらは資料3に基づき、のちほど議題で詳しくご検 討いただければと考えています。こちらは検討会会員の合意に基づき、第2回以降も変 更があり得るものとしたいと思っています。  3番目に検討会会員、座長、専門会員についてですが、検討会会員と専門会員は資料 1の裏面に掲載したとおりとさせていただきたいと思っています。座長は会員の中から 1名、先ほどご選任いただいたところです。専門会員は国際協力事業を実施している他 省庁、援助機関、国際課以外の部局の担当者、それから委託事務実施機関等でありま す。それらを所掌する国際協力事業について専門的視点から検討会に参加するものとす る。指名された方が出席できない場合、代理出席者を立てていただくことができる。  4番目にオブザーバー、傍聴希望者、資料の公開についてですが、会員または専門会 員の求めに応じ、事務局によってオブザーバーの参加を認めることができるものとした いと思います。本日もご出席いただいています。オブザーバーの方は基本的に議論への 参加は想定していませんが、座長からの要請に応じて発言していただきたいと思いま す。  会議の開催についてですが、こちらは公知しておりません。傍聴希望があった場合、 座長に相談の上、事務局で傍聴を認めることができるものとしたいと思います。それか ら会議の配付資料ですが、ホームページ等で公開するということはいまのところ予定し ていません。ただ求めに応じて、例えば情報公開請求等がありましたら、公開されるも のということでご了解いただきたいと思います。  5.検討会の開催方式ですが、まず合同検討会の開催というものを今年度1回予定し ています。他分野の検討会と併せて検討を行うということがあります。検討会の場所は 基本的に厚生労働省内の会議室を予定しています。  次に議事録の公表ですが、本日、会合に速記者に入っていただいていますが、速記者 を入れて議事録を作成いたします。議事録は会員、専門会員の皆様のご確認をいただい た上、厚生労働省のホームページに掲載して公開いたします。ただし、プライバシーに 関する事項がもしご議論の中で出てくるようでしたら、ご相談の上非公開とさせていた だきたいと思います。  7.作業部会の設置ですが、本会合での多数決により、本会合のほかに作業部会を設 置することができるものとしています。作業部会は座長にご相談の上、検討会会員また は専門会員1名以上のご参加を得て選任させていただきたいと思います。オブザーバー の参加も積極的に受け入れていきたいと思います。作業部会の設置案についてはのちほ ど、「国際協力事業評価検討会の進め方(案)」でご議論させていただきたいと思いま す。スケジュールについても、今回の会合の合意に基づき大まかな方針の検討をしたい と思います。  国際協力事業評価検討会の運営について、以上、事務局のご提案をご説明いたしまし た。会員の皆様のご議論をいただければと思います。 ○眞柄座長  ありがとうございました。いまご説明いただいた資料2の関連のところについて、何 かご意見やご質問がありましたらどうぞお願いします。  特にご意見もないようですので、この検討会の役割、あるいは運営の方法についてご 了解をいただいたということとしたいと思います。そのような約束の上に基づいて、早 速ですが資料3についてご説明ください。お願いします。 ○吉川専門官  資料3の1頁から2頁に基づき、「水道分野検討会の目的」についてご説明したいと 思います。資料3は、2.議事の(1)の2)と4)の話、両方混ざってしまっていま すので、まず目的について先にご説明させていただきたいと思います。  分野共通の検討目的というのは、資料3の1枚目の下のボックスに表していますが、 体系的客観的な評価方法等の可能性検討、評価結果を政策立案、実施に移していく体制 のあり方について検討する。詳しくは資料1に記載しているとおりです。  水道分野部会についてですが、まず専門家の立場からの全体的レビューという形で、 平成14年10月に国際厚生事業団に委託して、本日おられる会員の皆様にもご協力いただ いて、水道分野のODA全般について世界の現状と対応、我が国のODAの枠組みと実 績のレビューを行っています。これからの政策についての提言についても取りまとめて いただきました。さらに、昨年度には国別の実績に対応した今後の方針も取りまとめて いただいています。  同じ平成14年11月、JICAでも「水分野援助研究会報告書」というものを出されて います。飲料水供給を含めた水分野全般について、現状のレビュー、我が国の実績の整 理と今後に向けた提言がまとめられています。さらに個別のプロジェクトの評価という 点では、昨今外務省や実施機関での取り組みが非常に充実してきており、ホームページ で容易にアクセスできるようになっています。水道の専門家の視点での検討ということ で、私どもが行った取り組みとしても平成11年度から13年度にかけて、ネパールの水道 ODAを題材に国際厚生事業団のほうでPDMの項目等について整理をいただいた経緯 があります。  また、本年6月に健康局水道課で「水道ビジョン」が取りまとめられました。今後の 大きな課題の1つとして国際が位置づけられました。今後行う検討は、これらの成果の 上に立って厚生労働省が何をすべきか。また、厚生労働省の立場から関係機関に何を提 言すべきかという視点を軸に進めたいと考えています。その観点でご助言をいただけれ ば幸いと思っています。  主たる検討の対象ですが、基本的には厚生労働省が行う途上国に対する国際協力施策 ということです。ODA大綱にもあるとおり、我が国の経済社会との関連に配慮しつ つ、我が国の重要な施策との連携を図るということがODA全般に方針として位置づけ られています。  その観点で当初から関係機関、例えば協議の場としてはこの検討会は協議の場という ことではなくて、厚生労働省の方針をまとめるという場になります。ほかに関係省庁、 関係機関に提言をしていく場として関係省庁の連絡会議、各機関の運営協議会、方針を 作るような法令協議の場などを持っています。そういった機会をとらえて、関係機関に 働きかけていくべき部分も当然あるものと考えています。そういった観点で、本分野に ついて、国内で行われている事業を幅広く議論の対象に含め、関係機関との協議等の場 に活用していきたいと思っています。  全分野共通の検討目的とこれまでの状況を踏まえまして、この水道分野検討会の活用 の目的と方向性は主に2点考えています。資料3の2頁目、下のボックスに「活用の方 向性」ということで取りまとめました。まず、1つが厚生労働省の施策の政策評価を行 い、当省が水道分野の国際協力について行っている事務事業を先ほどご説明した動きの 中で、これからどういう部分に事務を集中していくべきか、あるいは効率化すべき部分 があるか。そういった観点で見直すこと。  もう1つ、本来は政策評価等を完了させてから行うのがプラン・ドゥー・シー・アク ションの本筋かもしれないのですが、過去の提言や水道ビジョン等で繰り返し指摘され た緊急課題というものもあります。その中でも当省がいま行う必要性が高いものについ て、作業部会を設けて施策の具体化に向けた検討、より深い議論を行って今後の事務事 業の改善、国内関係機関への働きかけ、国際会議での政策提案に向けた基礎として活用 してまいりたいと考えています。  それでは、具体的な作業部会を設置すべき分野はどこかという話については、議事 (1)の4)でご審議をお願いしたいと考えています。事務局からは以上です。 ○眞柄座長  ありがとうございました。いまご説明をいただいた点について、ご質問やご意見があ りましたら忌憚なくお出しください。 ○北脇会員  実はこう見ただけでも、いろいろなところがいろいろな検討をやっています。その結 果、何かモノが動いたのかどうか、これが最終的な評価指標になると思います。是非、 この検討会はモノが動く、日本の税金を使っているODAの効果が見えるように眞柄座 長にご指導をお願いしたいと思います。 ○眞柄座長  わかりました。ほかにありませんか。予定ではもっとディスカッションが出るはずな のですが、どうしましょうか。  座長がしゃべるのはあまりよくないかもしれませんが、これまではどちらかというと JICAベースなり、あるいはOECFのベースでやっているときには、厚生労働省の 意思がJICAなり何なり、実施機関で動いているものとあまりつながっていなかった ような気がします。特に今日、永石チーム長が来ていらっしゃいますがJICAも変わ って、いままでは東京でいろいろな政策を決めていたものが、伺うところによるとそれ ぞれの国に出ている事務所の意向がどんどん強くなる方向に変えられている。そういう ことを伺うと、いままでは東京の中でいろいろなことが決まっていたものが、今度は現 地の事務所と厚生労働省の水道分野とどういうラインができるか、情報ラインが1つ長 くなっているような感じがします。その辺も今後の仕事を進める上で考えておくべきこ とかなと思っています。JICAからもいろいろなお知恵を出していただけるとありが たいと思います。よろしくお願いします。 ○永石  座長がコメントされたとおり、JICAは10月から8事務所で在外主管ということで やっています。おそらく来年の4月、もしくは遅くとも10月ぐらいからは30事務所で在 外主管化ということをやります。いま座長がおっしゃられたように、いままでは本部と 厚生労働省とのパイプでやっていたものが、もちろん本部はそこにからみますが、在外 主管のほうでも例えば人材など、情報にアクセスできるような状況にしていくことが有 効なのではないかと思っています。そういったことも、この検討会の場で検討できれば いいのではないかと思っています。 ○眞柄座長  ありがとうございました。それでは、次に移りたいと思います。次に「都市間協力の 事例」、横浜の事例が資料として準備されているようですのでよろしくお願いします。 ○金近会員  資料12をご参照願います。横浜市の事例ということで何点かにわたって出ています。 1の国際協力の背景から現在行っている事業まで、この1枚のペーパーにまとめていま す。これに沿ってご説明をさせていただきます。  まず、「横浜市の国際協力の背景」ですが、ご存じのように横浜は150年前に開港し ました。それ以来、国際都市ということを都市の政策の柱にしてずっとやってきていま す。市長も変わったり、いろいろあるのですが、基本的に国際都市として生きていくと いうのが横浜市民のコンセンサスでもあるということだろうと思います。  特に港湾ということなので、港をはじめとしていろいろ国際的なインフラもある。外 国人が暮らしやすいような教育、医療、最後はお墓まで、いろいろなインフラがあると いうことも1つの特徴かと思います。  そういう中で、水道については横浜水道創設のときのH.S.Palmer氏の貢献ということ から始まりまして、いろいろな意味で国際協力によって成り立ってきたという面があり ます。今後は途上国を支援する側に回っていかなければいけない、ということを使命と して感じているということがまず国際貢献、(1)のところです。  人材育成ですが、水道界全体がそうなのですが、横浜市の職員も高齢化を迎えてい て、大量の職員が今後退職の時期を迎えるという事情があります。横浜の場合で言う と、平成19年から21年までの3、4年間で大体500人ぐらいが退職します。500人という 数字は、横浜は大体人が多いから人数が多いのですが、2,500人の5分の1、25%から 20%ぐらいが退職をするということになります。ピーク時では年140人が退職いたしま す。  そのようなことで、やはり技術の継承が大きな課題になっています。そのために人材 開発課という課を設けて技術の継承を行う。それと同時に、人材開発課が国際協力の担 当の課でもあります。このような国際協力をやることにより、1つは職員の技術能力の 向上というか、いろいろな意味でのプレゼンテーション技術などにも役立つということ があります。  横浜市の1つの特徴として、歴史は古いし、人も多いということで直営でいろいろな 事業をやってきたという結果でもあります。直営でいろいろなことを全部やってきたこ とが技術・技能の集積につながっていて、例えば水道メーターの検針、あるいは漏水調 査といったようなものをよそでは大体民間委託化し、技術者、あるいは技能者というも のがあまりいないということがあります。ただ、横浜には幸か不幸か、たくさんの人が そのような技術を継承してきているということがあります。それが先ほど言ったよう に、今後一斉に退職をしていく事情にあるということです。それをどのように継承して いくか、また活用していくかという課題があります。  先ほども触れた都市の政策ということですが、横浜の場合、特に姉妹港も姉妹都市と は別にございます。そういうところで、いろいろな集客や集荷競争を港湾都市としてや っています。そのような、貿易の相手国との経済的な結びつきが国際競争をやる上で非 常に役に立つ。そういう意味で企業誘致だけでなく、いろいろな意味での国際交流を積 極的にやっています。  もう1つ、シティネットというものがあります。あとで詳しいことはご説明します が、アジア・太平洋地域での都市間協力のネットワークというものを持っていて、それ を活用しての国際的な貢献をやっています。  環境や人口、食料等の課題に取り組む国際機関ということで、ITTO(国際熱帯木 材機関)やFAOなどを誘致し、いま横浜に本部が立地しています。そういうことを通 して、それをまた都市としても支援しています。そのようなことで、いろいろ国際協力 を都市としても進めていて、水道局もその中の一環としてお手伝いをしています。  「国際協力の内容」ですが、ここにあるように、最初に国際協力を大々的にやり始め たのは昭和48年、水道事業の拡張事業が一段落をしたころかなと思います。この時期に 専門家派遣に踏み切っています。  それから、JICAから依頼されるいろいろな長期派遣の専門家、タイやケニア等へ 14名の派遣を行ってきたのが最初のころです。その後、平成15年までに専門家派遣、あ るいは調査団員の派遣等で104名を派遣してきています。  次の研修生受入れ、これは横浜水道局独自の海外研修生受入事業を水道創設100周年 の昭和62年から始め、タイ、インドネシア等、4か国からの研修生を受け入れていま す。これがいちばん最初ということですが、その後、先ほど言ったシティネット会員都 市からの研修生の公募、17か年で14か国、109名の受入れの実施をしました。これらは 横浜市が独自に受け入れている研修生ですが、そのほか、JICA等の研修生受入れを 含めると、全体で1,000名を超える研修生を既に受入事業として実施をしてきています。  その下のところ、アジア・太平洋都市間協力ネットワーク、通称シティネットと呼ん でいますが、その概要が書いてあります。これは1987年に設立された、主に途上国を中 心とするアジアの都市なのですが、これらからなる都市・団体を会員とする非営利の国 際組織です。一応、国連の特殊諮問機関としての資格を有しています。19か国、103会 員ということで、63都市、40団体が加盟。団体というのは地域団体、NPO、NGO等 でございます。横浜市が会長都市になっていて、市長が会長になっています。事務局も 横浜にあります。目的として特に途上国等の都市問題、交通問題やごみ問題などいろい ろありますが、そういうものを解決するということで会員間の相互理解及び技術移転を 促進していくことを目的としています。  このような事業を推進するために、横浜市では水道局の中に国際協力委員会とその下 部機関として国際協力専門委員会というものを設けています。国際協力委員会というの は1つのボードみたいなものなのですが、私が委員長を務め、局の審議委員9名からな る組織です。いろいろな国際事業について、いま問題になっている計画、評価というよ うなことをやっていこうというものです。  その下部機関、専門委員会のほうですが、これは職員を中心に60名で組織していま す。国際協力をやりたい職員、あるいはいままでに経験のある職員というものを中心に して構成しています。  この専門委員会で研修生の受入れが決まると、そのプログラム等を検討して実行して いく。専門職員60名が、研修の講師としても対応していく。一応語学のできる、英語だ けではなしに、それぞれの語学力のある人をメンバーにしています。  4.「現在の主要協力事業」ですが、いろいろな国際機関との協力でやっていくこと を明言しています。  1つはJICA、平成14年に「JICA横浜センター」というものが開設されていま す。横浜の都心部、みなとみらい地区に立地しているのですが、ここと連携しながらや っていくということ、また、自治体国際化協会との連携、それから先ほど言ったシティ ネットとの連携事業を中心にして協力事業をやってきています。  次に途上国で問題になっている技術的な問題、最近は技術的な漏水の問題等々のほか に、やはり経営面での協力をお願いしたいというのが非常に多いのです。したがって技 術だけではなく、事務面での協力というものも必要なのですが、相手国の人材育成を積 極的に推進していくということであります。  職員の相手機関への派遣ということと研修生の受入れにより、そういうことを中心に 研修プログラムを作成し、実施することを中心に行っています。  その次の○のところ、JICAの草の根事業、これについては特にNGO、あるいは 自治体、大学等がいままでに培ってきた経験や技術を活用して途上国、あるいは地域の 発展に役立つような協力をJICAと共同でやろうというものです。本市水道局ではJ ICAの3つあるメニューのうち、「地域提案型」というものがあるのですが、地域提 案型の事業で人材の派遣、研修生の受入れといったことを中心にやろうかと考えていま す。横浜市では対象都市として、ベトナムのフエ市およびホーチミン市を中心に行って います。3年間の協力事業となります。両都市から職員を各2名受け入れ、こちらのほ うからも2名を派遣する。継続的にやることによって、一定の成果を生み出していこう ということです。3年間ですからなかなか難しいのですが、一定の成果が出るまでやろ うということで考えています。  自治体国際化協会の事業ですが、「自治体国際協力促進事業」のモデル事業としてい ま実施しています。対象都市は先ほど言ったシティネットの会員都市から公募して、偶 然なのですがこれもベトナムの首都ハノイ市に決定しています。研修生の受入れを毎年 2名、職員の派遣については初年度と最終年度ということにしています。草の根と同じ ように、ベトナムの水道事業について協力していくということをやっています。基本的 に、これらの都市では大体は漏水に関する技術有収率の向上の問題、経営面での収支の 改善の問題といったようなことが主なテーマになっています。  ベトナムは非常に親日的ということもありますし、経済発展が著しいということで、 アジアの都市の中では中国に次いで非常に成長が見込まれるということもあります。私 どもの技術がベトナムのそれぞれの各都市の水道の整備・発展に役立てばということで 今日こうしてやってきています。  以上、横浜市水道局の国際協力の現在の取り組みです。ご参考になればと思い、紹介 させていただきました。 ○眞柄座長  ありがとうございました。いまご紹介があった横浜市の取り組みについて、ご質問が ありましたらお出しください。 ○山根会員  地方の自治体として、こういうことに積極的に取り組まれていることは大変ありがた いなと思います。良い方向に進むと思います。  これがどんどん進んでいけばいいと思うのですが、問題は費用負担がどうなっている かという点が、皆さん大変関心があるかと思います。航空運賃、滞在費、問題はその辺 かと思います。研修生受入れについて、このあたりはどうなっているのでしょうか。 ○金近会員  例えば草の根事業で言うと、基本的に派遣についてはJICAになりますし、向こう から受け入れる職員の費用についてもJICAが負担しています。こちらでいろいろ研 修したり、事務的な経費もかかりますが、こういうものは私どもが全部負担していま す。したがって、基本的な費用負担はJICAとなっています。  自治体国際化協会の事業も同様です。そういう意味では人間を割くというようなこ と、都市内でのいろいろな経費がかかりますが、そういうものぐらいで、基本的なフレ ームについてはそれぞれの機関でやっていただいているという実態です。 ○山根会員  100年記念で独自な研修をされていらっしゃいますが、こちらはどうですか。 ○金近会員  先ほどの独自事業でやっている、あるいはシティネットでやっているとか、こういう ものは全部私どもでございます。私ども横浜市が独自事業でやっているものは横浜市な のですが、相手国との負担関係で言うと、シティネット関係の事業では旅費については 相手国。滞在費については、こちらで持っているという実態になっています。全部丸ご と、丸抱えではなく、シティネットの場合はできるだけ平等な、対等な都市間協力ネッ トワークが考え方になっています。一方的に与えるだけ、あるいは教えられるだけとい う関係ではなく、お互いに「学ぼう」というような都市間協力ネットワークという趣旨 になっています。できるだけ、自分で持てる費用を持つという考え方になっていると思 います。 ○北脇会員  途上国でも不安定な国、安定している国、いろいろあると思います。おそらく、イラ クなどの不安定な所は国の仕事だと思うのですが、安定している国とずっとお付き合い をして、いろいろな指導をしたり技術協力をしたりというのはやはり自治体がいちばん 大事なプレーヤーだと思います。ただし、自治体というのは市民がいて、市民が自分の 税金をウォッチしているわけです。  そうすると、こういった国際協力を一生懸命やるというのはやはり市長のご判断と か、外に対する宣伝効果が大事だと思います。我々が途上国に行って、常に市長と話を する。「あなたがこのプロジェクトをやれば市民はあなたを好きになって投票してくれ る」と言うと、一生懸命やってくれるわけです。おそらく水道事業も、国際協力も、市 長または市民に対するインセンティブのようなものが非常に大事だと思います。環境省 などは自治体の表彰制度などを持っておられますが、国際課ではいかがですか。国際協 力を一生懸命やった自治体を表彰して、日本中に知らせる。そうすると、応援団も増え て同じような国際協力、横浜のように日本を代表するような都市でなくても、何らかの 草の根の形で入っていきたいという自治体が増えると思います。そういうインセンティ ブについて、国際課ではいかがでしょうか。 ○吉川専門官  現時点では何も持ち合わせておりません。シティネットの最近のイベント等に出たと きも、あのとき確か国連大学の学長が、表彰といった制度が極めてインセンティブとし て大事なのだということを強調されていました。確かに、特に国レベルでは少しそうい う話が少ないかなと思います。  JICAでは確か、自治体の表彰制度みたいなものがあって、長年研修員を受け入れ てきた札幌市が昨年表彰を受けられています。このようなJICA以外のスキームも含 めた、包括的な取り組みをされているところを表彰するという制度がなかなかないとい うのが実情です。以上です。 ○金近会員  横浜の市長が海外に行く。あるいは議員、市会議員などが海外に行くと、それに対し て納税者としてのチェックがあって、評価がどうかとか厳しく問われる時代になってい ます。  いちばん厳しいのはマスコミでしょうか。市民はまだそれほど厳しくないというの は、横浜ではよく言われているのですが、先ほど言ったように開国・開港によって開か れたとして、国際貿易をやらないと食べていけない。350万の人口が全部、東京のベッ ドタウンだけでは食べていけない。やはり、いろいろな意味で国際事業をやっていかな ければいけないということが市民の間で言われています。港関係、国際関係で食べてい る人が大体3割など、いろいろ経済効果を分析したものがあるのですが、大体3割ぐら いは国際経済に頼っている。国際経済と言うと全部になってしまいますが、港関係や国 際関係だけで直接食べているのがそれぐらいいると言われています。  国際協力などについては、必要だという認識が市民の間には非常にあります。ただ、 やはり短期的に見ても、何らかの成果を挙げていかなければいけないということは言わ れている。シティネット事業なども当時創設したときのものまで、本来は国がやるべき ものではないかとか、いろいろな議論が議会でもされました。いまでもシティネットの 事業について、議会でそういう質問があったりします。そういうことで、やはり成果を 上げなければいけないということは言われています。  水道はその中で先ほど言ったような、いま途上国が求めている直営的な技術、漏水を どうやって防止するかというような直接的な技術の提供があります。そういうものにつ いても、横浜にとって直接どのように効果があるのかが言われています。我々も「長い 目で見てくれ」とか、いろいろなことを言うのですが、その辺、同じように評価が問わ れる時代で、説明をどうやっていくかという点が我々も頭の痛い問題です。 ○山田会員  横浜からのお話を聞いて若干感じることがあります。私もアジアを中心に、都市水道 から地方、あるいは村落水道をかなり見てきて、いろいろ感じるところがあります。  まず、この会の評価というところからいくと非常に難しいのですが、これをおやりに なって、相手国にどのような効果があったのか。あるいは、人材がその後どういうよう に活躍しているのか。どこまで評価されているのかという点、直接的な質問になると思 います。経験として、JICAの環境部門の研修を引き受けてやっているのですが、折 角長期間日本で研修をしても、その国へ帰るとまた全然立場が違っている。例えば私の 付き合った連中でも、ベトナムから今度はヨーロッパへ留学する。自分の新しい発展の 可能性を見つけるということですが、果たしてその国の中に我々がやったことが定着す るのかなという気がします。  特に、水道部門は割に評価しやすい分野だと思います。その評価項目の中で「自立発 展性」というものがあります。我々が提供した向こうのプロジェクトがうまくいったと いう例はたくさんあると思うのですが、そこからどのぐらい相手国が学んでそれを活用 したのか。そのような、波及効果も十分評価されていない。相手国が逆に、どのように 我々が提供したものを評価しているのか。こういうことも必要だと思います。  どこの国もいろいろなドナーが入り乱れて入っていますので、ほかのドナーとの関係 でどういう効果があったのか。こういうことも評価していかなければいけないと思いま す。特に流通分野と政策分野の両方あって、それなりの人材派遣をされていると思いま す。水道の場合、どうしても水道分野だけのエキスパートが派遣される。それではその 国で水道をどう位置づけるか、あるいは水道と下水道をどう連携するか、全体の地域の 発展にどう寄与するか。そのような、ちょっと広い視野から考えられる人材があまりう まく派遣されていないのではないかという感じも持っています。横浜市からのご発言の 内容をかなり超越していますが、まずは評価をどうしておられるかが直接的な質問で す。以上です。 ○眞柄座長  どうもありがとうございました。多分、そういうことをこの会でディスカッションす るのが目的だろうと思います。いますぐ金近会員から回答をいただかなくても、そうい う点を議論するということだと思います。大学でも文科省の奨学金で留学生をたくさん 受けて、毎年何人か帰しているわけです。例えば、「彼らは帰って何をやっているのか 」とやはり評価を問われるのです。大学でもそうですし、国の人材育成関係もその意味 では同じレベルだなという感じを持っています。  これは本当に個人的なコメントですが、人材育成の分野もちょっとバブルなのです。 例えばOECFにおいて、水道分野で集団で研修に来た人の中で、アジアの大都市の水 道局長がゴロゴロしている。大学でもいまから20年ぐらい前に来た留学生が、例えば中 国の市政工程院の院長をやっておられる。昔の留学生や研修生が結構偉くなっている。 おそらく、数が少なかったのでしょう。あとをずっとフォローアップができたせいもあ るだろうと思うのですが、最近ちょっといい加減になっているのですね。そういう意味 では研修生なり留学生でもそうですが、もちろんインフレという評価も悪いのですが、 来た人をフォローアップする仕組を、JICAのほうで在外主管という形を取られるよ うになったのですが、そういうフォローアップ体制をせっかく現地主義でやるのでした ら、その現地ときちんとフォローをしてもらうのがこれから大事なのかなと思います。  もう一つは、厚生労働省として議論をしなければならないのは、確かに水道分野を議 論するのかもしれませんが、4月にCSDで吉川専門官と行ったときに、ユニセフから 来た専門家が、水道、飲み水、トイレの整備を進めることによって、消化器系感染症が ずっと下がっていったという、30年以上のデータを見せてくれたのです。厚生労働省と してほかの医療の分野なり、公衆衛生の分野とリンクするということも、少し考えてい かなければならないだろうなとは思っています。  いずれ話題になることだと思いますが、例えばバングラディッシュ、インド、中国の ヒ素の問題をやったときに、良い水を提供するようになったら、ヒ素の障害を受けてい る患者が減るという、介入疫学的な仕事もやはり展開していかないといけない。ただ、 水道はベーシック・ヒューマン・ニーズでよいが、トイレはベーシック・ヒューマン・ ニーズだけではやはり駄目なので、そういう連携ということも少し横浜市のお話を聞い て感じましたので補足いたします。  具体的に今後の検討会の進め方について、事務局からご紹介ください。 ○吉川専門官  資料3の3頁以降をご覧ください。3頁の下の段から「開催スケジュール(案)」、 「検討の進め方(案)」ということでまとめてあります。先ほどご審議いただきました とおり、本検討会では「厚生労働省の施策の政策評価と過去の提言」、「水道ビジョン 等で繰り返し指摘された課題で当省が行う必要性、意義が高いものについて、施策の具 体化に向けて検討をする」、その2点を目的に進めてまいりたいと思っています。  具体的にはこの検討会本体では見ていただいたとおり、開催回数がかなり限られてき ていますが、これは予算の関係がありまして、今年度内は1回だけで、あと分野合同が もう1回で限界なのですが、この検討会本体では政策評価の部分を中心にご議論をいた だければと思っています。作業部会で優先的な課題に係る施策の具体化についての検討 を行う。そして、成果を検討会に報告してその政策評価などに活かしていく形を考えて います。  作業部会は、JICWELSの水道部会事業と連携して行うことを想定しています。 まず今年度に1つ、その目処が立ったところで来年度に2つ目をという形を考えていま す。本日はその作業部会を設置すべき優先課題の分野について、事務局の案のとおりで よろしいかを中心に忌憚のないご意見、ご検討をいただければと思います。  事務局案の説明です。資料3の5頁が「厚生労働省の政策目的」ということで、本年 6月に健康局水道課が取りまとめた水道ビジョンから、国際関係の記述をピックアップ しました。国際的な動きに調和しつつ、国際競争力を蓄え、我が国の技術や経験を基 に、途上国はもとより諸外国の給水環境の改善に貢献。また、海外の諸機関とより強固 な国際的なネットワークを形成するとともに、WHOやIWAなどの国際機関等を通じ て各国への知見の提供や情報交換等を積極的に行い、国際社会における中核的な役割を 果たし続ける、といった大きな目的を掲げていますが、全体を取り巻く水道分野の目的 は「世界のトップランナーを目指してチャレンジし続ける水道」ということで、これが 水道ビジョンの内容となります。  厚生労働省全体の国際分野の目標は、資料の6の冒頭に基本目標と水道ビジョンの目 標を対比して並べてみています。「国際化時代にふさわしい厚生労働行政の推進」とい うことで、省全体の目標がセットされています。実はこの厚生労働省の国際協力につい て、水道分野に特化した目標はいまはないのですが、基本的な路線としては、この中で 水道分野の特性を加味して考えていく、ということになろうかと考えています。  続いて厚生労働省の国際協力事業の概要です。資料3の4頁の「政策評価の目的」と あるボックスですが、「厚生労働省における水道分野国際協力」ということで、5つの ポイントにまとめています。1つ目が自治体水道局職員を中心とする専門家の発掘・推 薦、2つ目が派遣専門官の支援、3つ目で途上国からの研修員の受入れ、研修の企画な ど、4つ目で官民連携による水道分野の優良なODA、それからOOFも視野に入れて いるのですが、案件形成について途上国への技術移転を行うということで、プロジェク ト・フォーメーション事業をやっています。5つ目で国際機関(WHO、WSSCC等 )を通じた貢献といったことを、これまで行ってまいりました。  これを国内政策、経済協力の種類とこれを取り巻く業務ということで、並べ直したの が資料3の6頁の上のボックス、「厚生労働省の事務事業領域」とあるものです。大き く分けて協力政策、経済協力、それからその支援・補完業務ということで、経済協力の うちで水道分野ODAの90%以上を占めるのは、やはり無償資金協力、有償資金協力の 部分になってくるかと思うのですが、そういった部分については当初からの働きかけ は、基本的に官民連携による案件形成を推進する部分が中心になりまして、残りの技術 協力の部分、それから多国間協力の部分、それを支える人材の発掘等の体制を、主に中 心にやってきています。  資料3の7頁目、「過去の提言等」です。古くは昭和59年3月の生活環境審議会の答 申で、「高普及時代を迎えた水道のあり方」ということで、「今後開発途上国に対する 技術協力等を進めることは、我が国の責務と考えられる。水道分野における技術協力の 推進にあたり、水道事業等の協力を得て、また、民間活力の導入を図りつつ、国が主導 的な役割を果たす必要がある」と答申をされたのが最初で、その後、あまりこの路線か ら変わらずに審議会の答申などを繰り返しいただいています。ここ3年ほどを見ます と、ODA大綱が改定され、水道分野のODA方針検討会の報告が取りまとめられ、J ICAでも研究会の報告が取りまとめられ、また、個々のプロジェクトの評価等もいろ いろな提言を行ってきています。  そちらの提言については、とりあえず目についたものをピックアップしたものを資料 5で取りまとめています。あまり上手な分け方になっていないかと思うのですが、各最 近行われた提言を類型分けしまして、全体的な指摘、これが非常に多いのですが、ソフ ト面や自立発展性の重視などの指摘と国際的協調の必要性に関する指摘、分野統合型の アプローチ、国内での連携、住民参加、水質問題、民営化、評価手法、専門家人選、後 方支援、我が国の経験の活用、情報発信の充実という形で少しカテゴリーを分けまし て、その後、進捗のあったところ、あるいは関係する現在の状況を現況欄に補足してい ます。  資料3の7頁目、「最近の動向」ということで下のボックスにまとめています。ま ず、来年ですが、ミレニアム開発目標の中間レビューが、おそらく9月ごろに国際会議 となると思うのですが、予定されています。国内でも年内にODAの中期政策を改定予 定の状況です。一方、最近の顕著な特徴として、国家財政・地方財政の逼迫ということ で、特にODAの予算要求については、相当厳しい環境がここ数年続いています。  新ODA大綱に基づき、眞柄座長からもご指摘のあったとおり、在外主導の動きが具 体化していまして、いろいろなプロジェクトに実際に大きな影響を及ぼしつつあるな、 という実感をしているところです。新ODA大綱に基づいてJICAや、JBICで、 それぞれに国内の知見を活用する新スキームを導入されていて、自治体の皆さんから直 接JICAとかJBIC、あるいは大学の先生方、公益法人からも直接JICAやJB ICと連携しての事業ができるスキームだとか、海外に行って実情を見るような機会な どが豊富に提供されるようになった。これは国が参加できないようなスキームになって いるのですが、逆にその辺の情報は是非自治体の皆さんとかと、これからネットワーク を作って、こちらに情報が入ってくるようにしないといけないと、強く感じている状況 です。  技術協力案件の選定、決定から派遣専門家選定に至る流れが、JICAが独法化され たということで、大きく変化しました。見た目ではそれほど変わっていないではないか ということになろうかと思うのですが、実際、担当としてやっていますと、案件の選定 までが国の責務、そこから先の人選についてはすべて実施機関であるJICAの責務と いうことで整理された。この影響は非常に大きいなと我々は感じています。  それに応じて意見書とか、人選委員会といった制度が新たに導入されました。私ども が相手にしているのが地方自治体の皆様なものですから、例えば人選委員会にかけると いっても、次のステップをどうしていったらいいのかとか、果たして人選委員会という 制度に事業体のほうが対応したスキームになっているのかといった辺りが図りきれなく て、いまはまだ水道分野では人選委員会にまでかかったという事例はないのですが、こ れからはおそらくこれに応じていかざるを得ないだろうという中で、少しあり方、対応 を考えていかなければならないだろう。  また、業務実施契約簡易型だとか、民活型技プロといった制度が相次いで導入されて いて、水道分野でも民活型技プロを考えたいという提案が、いくつかのプロジェクトの 中で行われています。民活型技プロというものに対して、我々サイドも馴染みがない し、その中で官民連携をどのように行っていけるのかというのは、正直、非常に検討が 出遅れてしまっているというのがいまの担当としての実感で、ここを是非、検討してい かなければいけないと感じています。  水道事業体のほうでは、金近会員からもご説明がありましたとおり、近々、団塊の世 代が大量退職をする時代ということで、今まで事業体を中心に派遣をお願いしていたも のも、あと5年もすると回らなくなってくるのではないかという危機感を感じておりま す。  資料6は、優先課題の分野を決める参考資料、頭の整理ということで事務方で議論を しながら策定したものです。1枚目に施策目標の確認、今やっている事務事業内容の整 理とか、施策ニーズ、なぜそのサービスが求められているのかといった分析です。外部 環境、特に国際的な動向と国内の動向が、それぞれ水道分野ODAにとって追い風なの か、それともマイナス要因なのかという分析、そして水道分野の内部の持っている強み と弱みの分析、それを踏まえてSWOT分析を試行的に行いまして、この中にそれぞれ 積極的な強みと機会を活かして、どのような戦略をとっていくべきなのか。強みで脅威 を回避するための差別化戦略というのは何なのか。弱みで機会を逃がさないための施策 とは何が必要か。そして、脅威と弱みからくる最悪な事態を回避するためには何をすれ ばいいか、といったことをボックスで並べて、ここに水道ビジョンで指摘された各施策 ・課題を事務局なりに位置づけてみて、さらにほかに付加的に議論の中で出てきた事項 を追加しています。  それを踏まえて考えられる施策の方向性と目的、課題として、資料6の最後に優先課 題を何にするかの研討の参考資料ということでまとめました。それぞれ積極的攻勢だと か、差別化戦略ということで位置づけていますが、やはり過去から繰り返し検討が必要 とされてきた人材発掘・育成、水道ビジョンの中でも国際協力人材バンクを設けるよう にということが指摘されていますが、これについては先ほど申し上げた人選の決定方式 の変化に緊急に対応しなければならない必要性もありますので、この問題について1つ 作業部会を設けて検討したいと思います。  もう一つ、連携による融合・総合援助手法の検討です。これも昔から繰り返し提言を いただいてきたところですが、最近、在外主導の国別援助方針の策定だとかいった動き がある中で、現地からも個別の案件の形成よりも、プログラム的に水道として何をすべ きかという提言が欲しいという意見を時々耳にするようになりました。そういった提言 にもつなげていくためにトピックを限定して、援助プログラムの検討をやってみてもい いのではないか。ただ、ここで提言した内容は、あくまでも厚生労働省からの提案とい うことなので、私どもに具体的に動かせる資金リソース、人的リソースがそのままある わけではありませんから、その実現に向けては長いステップを踏んでいくということに どうしてもなります。こういった提案を取りまとめれば、将来の国際会議での政策提言 ・情報発信にも活用していけると考えているので、この点についても作業部会を設けて 検討をしていきたいと考えています。  資料7は、全体像の中での厚生労働省のポジショニングをということで、水道分野の 国際協力がどういう構成になっていて、それぞれにどのような主体が主なアクターとし て活動をしているかを一覧にしたものです。資料8は、水道ODA方針検討会の記述 と、本年4月に総務省がODAについて政策評価表を出しているのですが、その中でO DAのロジックモデル・イメージが示されています。そのODAのロジックモデル・イ メージに水道分野ODA方針検討会の提言を掛け合わせて、事務局なりに頭の整理をし てみたものです。  資料の5から8までと、水道ビジョンの施策課題を総合して、事務局として作業部会 を設置する分野として先ほど申し上げたとおり、人材確保・育成についての作業部会。 総合援助手法分野では、事務局としては例えば無収水対策あるいは、少しワードを変え て有効率の向上といったことになろうかと思いますが、そういったものを切り口にいろ いろなスキームを組み合わせた総合援助手法を検討する作業部会、この2点を作業部会 の設置分野ということで考えてはどうかと思っています。作業部会での具体的な検討や 進め方、いま事務局が考えている検討事項は、資料10と11にまとめてみましたが、これ は実際に作業部会を立ち上げた上で、部会メンバーのご意見を聞きながら、確定させて まいりたいと思っています。  もう一つこの検討会本体のアウトプットのほう、政策評価ですが、これは本日の議論 も踏まえながら次回以降に評価項目をまず何にするか、手法をどうするかというところ も含めて、事務局で叩き台を作成して、ご審議をいただくことを考えています。そのア ウトプットのイメージとして資料9に、これは厚生労働省の政策評価の中の総合評価書 のフォーマットをそのまま活用しているのですが、それを総合評価書の案として、ま た、モニタリング指標も合わせて検討ができればと思い、後ろにイメージまでにという ことで付けています。  その他、できるだけ資料を支える客観的データを用意しようと思いまして、参考資料 に手持ちの各種データを取りまとめましたが、説明については割愛させていただきま す。  資料を作り過ぎて駆け足の説明になってしまい恐縮です。こうした検討の流れを図示 したのが資料3の4頁目の上の図になります。まず、政策目的の確認、そして施策目標 の確認をした上で、いろいろな分析を経て、施策目標を実現するための事務事業領域や 課題のリストアップをしていく。併せてロジックモデルとか過去の提言・課題の対応状 況などを精査して、まず今日、優先分野の特定を行う。この同じ検討は今後の現行の事 務事業の必要性や効率性、有効性を分析していく上でも活用できると思っていますの で、今後ともブラッシュアップを重ねて、議論の中心としていければと考えています。 こうしたものを通じて現行事業の見直しを含む政策評価の取りまとめと、施策目標の実 現に向けた具体的な計画の立案の2点をやっていければと思っています。  本日の検討会では作業部会を設置すべき優先課題の分野について、事務局の案のとお りでよろしいかという点を中心に、全体的な今後の進め方、ご提言を含めて、忌憚のな いご意見、ご検討をいただければと考えています。事務局からは以上です。 ○眞柄座長  ありがとうございました。確認ですが、地方公務員の派遣法というのは、まだ生きて いるのですか。 ○吉川専門官  生きていると思うのですが。 ○永石  ちょっと自信がないのですが。 ○眞柄座長  今までJICAは国の機関だからよかったのですが、独法になってもJICAの専門 家が出て行くときは、それは生きているわけですか。 ○吉川専門官  派遣法に基づいて契約を締結しています。 ○眞柄座長  人選委員会というのがあるのですか。 ○吉川専門官  大体11月から12月にかけて、技術協力の案件がざっと各省に協議されまして、そして 案件を採択する、しないを決めるのですが、その案件を採択するしないの段階で、省庁 から人材リソースの情報があるときは、意見書というのを出すのです。JICAにも人 材リソースの情報があると、両方が人材リソースを持っているとなったときに、最初は 協議でどちらの人材リソースを使うか検討をするのですが、どうしても協議では決着し なかった場合には、人選委員会を設置して、そこでお互いにノミネーションするという プロセスで決めていくことになっています。 ○眞柄座長  必ずしも関係省庁推薦が採択されるわけではないということですね。 ○吉川専門官  そういう場合も。 ○永石  最近、設置された制度なので、いまのところまだ人選委員会をやったことはないで す。 ○吉川専門官  意見書を出したのですが、結局こちらがおりました。 ○永石  言い方は変ですが、どちらかがおりているケースがあるということなのですか。 ○眞柄座長  吉川専門官からご紹介のあった諸々のことを踏まえて、どんなことでも結構ですから ご意見をいただきたいと思います。 ○北脇会員  いろいろ盛りだくさんのことがあって、大変だと思うのですが、一つ付け加えたほう がいいような視点を考えてみます。途上国には不安定な国と安定した国があると申し上 げたのですが、実は「不安定の弧」というのが最近言われているようで、北朝鮮から南 アジアを回って、イラクだとか北アフリカ、あの辺が非常に不安定な国で、何が起こる か分からない。  そういうときに、例えば医療の分野ですと緊急的に入って医療協力をやる。しかし、 人間の安全保障の観点から言えば、怪我人を治した後は、今度水なのです。ごみでもな く下水よりも、むしろ水供給、それからトイレ造りもあるのですが、そういう緊急的な ものに備える方法、これは検討だけでもいいのですが、例えばアンドロ、UNHCRだ とかいろいろ国連機関でもそういうことをやっている。UNHCRは難民が発生したと きは、水供給、トイレをどうするかというマニュアルまできっちり出来ているわけで す。我々もそういう有事の際の水道分野の援助の仕方。何日以内に飛んで行って、すぐ 直すというわけではありませんが、そういう対応方法はとっておいたほうがいいと思う のです。最近、眞柄座長がイラクの話で、水道分野のことでだいぶ御冠だったようです が、そういう時に対応できないのです。  これは環境省にも申し上げたのですが、戦略というのは目に見えない形で、水面下で 検討するものである。日本がどういう形で対応するのか、そういうことを今のうちから 考えて、緊急な時にどうやるか。それの一つは国際協力という観点、特に「不安定な弧 」に対する日本の責任としては、必要になるのではないかなと思いました。 ○国包会員  今のお話とは全然違うことで、若干、後もどりをするような話になるかもしれません が、作業グループの設置ということでお話が出ていました人材確保とか育成について少 し話をさせていただきます。横浜市の金近会員からいろいろご報告がございました。横 浜市は水道分野の国際協力という面から見れば優等生だろうと思うのです。ほかにもず いぶん頑張っていただいている所は多いのですが、それでも横浜市ほどではないと思っ ています。  今後、人材確保・育成ということで、検討を別の場で具体的に進めるのだということ ですが、あえて一言申し上げさせていただきたいのは、個人としてのこうした国際経験 それ自体意味もあるわけですが、横浜市なら横浜市として、組織として、例えばこうい ったことを通じてどれぐらいメリットがあるか。こういったことをできれは定量的に評 価するようなことを考えていかないと、単に人材確保ということだけになりますと、適 当に研修をやっておいて、それも場合によっては定年を過ぎられてからシルバーボラン ティアで出てもらえばいいという話になりかねないと思うのです。  そういったシニアの方はシニアの方でもちろん専門家なりとして有用ではあるのです が、それ以上に年齢から言えば40代ぐらいでしょうか、働き盛りの方が国際的に活躍し ていただければ、それはそれで非常にメリットが大きいと思うのです。少なくとも対外 的にはメリットが大きいと思います。また、組織としても跳ね返ってくる部分が大きい のではないかと思うのです。私どももそうは言いながら、何をポイントに、どういうよ うに評価をすればいいのかというのは、今まだ何とも申し上げられないところなので す。  そういったことに関連して是非、実情をご理解いただきたいのは、水道の分野では、 国とかいわゆる中央官庁なりから人が十分に国際協力に割ければいいのですが、水道事 業体にどうしても国際協力の仕事を頼らざるを得ない部分があります。この話を先に申 し上げるべきだったのですが、水道事業体が、自分たちのメリットになるのだから、こ ういったことを積極的に組織としてやっていくのだというように動いていただかないこ とには、水道分野の国際協力はうまくいかないのではないかと思っています。現実問題 としては非常に有能な方が続けて何回も外国に出ておられると、もうあいつはこれで十 分だから別な人に行かせようとかいう話もあったりします。これはこれでまた、厄介な 問題なのです。自治体として取り組んでいただくのがメリットがあるのかという辺り を、是非この作業グループで検討をしていただければと思います。 ○山根会員  意見というよりも確認です。検討事項として結局のところ、人材育成をどうするかと いうこと、良いプロジェクトを探すにはどうすればいいかと、この2つになるというの は、そういうことかなと思うのです。前半の人材育成について、現状どういう問題があ るからどうしようというと、もう一つ分かりにくい面があります。  いまの説明ではJICAのシステムが変わったから、それに対応するようにするため にはどうすればいいかというのが、ちょっと表に出てきていますが、そもそも現状、数 がどうなのか。数、これ実績値だけ見ると、実績に比べて水道ビジョンの数は非常に小 さいですから、数が問題になっているのかなという気もしないでもない。では、数はい るのだけれども質が問題なのだということなのかなとも思うのですが、この質について も下のほうで長期専門家の将来について憂いていて、現状についてどうだというところ がもう一つ出ていない。その辺のところをあまり出すとそれはそれで、いろいろ支障が あるから出しにくいのかも分かりませんが、そのポイントをどうするのだということが 分かっていると、なおいいなと思います。私のいまの理解でよろしいのかどうか、量よ り質なのだと、だけど質のところも言いにくい問題があるよという話なのかどうかで す。 ○吉川専門官  お答えになるかどうかですが、まず水道ビジョンの人材派遣の目標値、10年間で400 人。これは一体何なのかを水道課の皆さんとも議論をしたのですが、まずこれは基本的 には、いま派遣しているレベルをそのまま維持するという線で、路線を引いています。 いま派遣している数を維持するだけでも、過去10年間は結構大きな技術協力プロジェク トとかがあって、それでかなりの数が派遣されてきた経過があるのです。今後はそうい う話ではなくなってくる。特に現地中心ということで、少数精鋭で現地のコンサルタン トとかも含めてリソースを活用してという方針にどんどん向かっているので、この目標 を単純に達成するというだけでも大変なことかなというのが担当の実感です。  さらにここで生じている新しい問題で、この400人という目標は、果たして官なのか 民なのかを水道課と議論をしました。ここは水道全体の事業のレベルアップにつながる なら、官でも民でもいいのだというのが水道課と私どもの結論なのです。では、民とい うのはどこの範囲までだとか、一体どこまでを水道として図るのかとか、その辺はまだ 全然議論ができていません。いずれにしても400という数字については、ちょっと曖昧 な部分を残しながら、今までどおりのベースでなんとか技術協力を続けていって、行っ た方々からの日本の水道へのプラスのリスポンスを期待することを続けていきたいと思 います。  現在、直面している問題の一つには、先ほど申し上げたような制度の変化があるので すが、その制度の変化の中でもう一つ大きな問題として浮かび上がってきているのが、 官民どこまで、どのように具体的に分担するのかという部分です。それから民のリソー スがどこまであって、官のリソースがどこまであるというのを、厚生労働省が正確に把 握することが現在できていないという部分。  民のほうもポツポツと水道のコンサルタントの皆様のご意見を個別に伺うところで は、これから技術協力プロジェクトみたいなもの、専門家派遣みたいなものを民にお願 いするという流れが出来ているけれども、派遣する意思があるかということで聞くと、 今の費用では優秀な人材を出すに足るようなメリットがないということを、はっきり言 われる水道コンサルタントがいくつかあるのです。もちろん網羅的に伺ったことはない ので、それが業界の全体の意見なのかは分かりませんが、これから民活型技プロみたい なものが大々的に始まろうとしている中で、そういう足元の状況を押えておかないと、 どこまで民に期待していいのかが分からない。  いま結構、役務コンサルタントの皆さんなどは、水道事業体をOBとして退職され て、その方々が人材派遣会社みたいな開発コンサルタントに登録されて、派遣されて来 られているという例をよく見ます。リソースとしては多分、民にかなり事業体のOBが 流れているのかなというのは感じるのですが、組織としてのノウハウを持って、全体的 な視野が持てるような経験豊かなコンサルタントとなると、中心となるようなアクター は、わりとドル箱になるので、外には出していただきにくいのが現状なのかなという気 もします。  いずれにしてもそういう現状を一度、民にも是非アンケート調査なり、作業部会に参 加いただくなりして、状況、意見をお聞かせいただきたいと思います。官のほうも横浜 市では積極的にやっていただいていますが、全部が全部そういう状況ではないという か、温度差が大きいというのが実感なので、この機会にいろいろな事業体の全部に集ま っていただくことはおそらく難しいと思うのですが、アンケート調査といったツールを 使ってご意見を承っていければと思っています。 ○永石  もう一つ、途上国の状況も大きく変わってきているのではないかなというのがあるの です。昔は水道の場合、面的な広がり、要するに水道の普及率という所に焦点を当てた プロジェクト、若しくは専門家のハード面でのニーズが大きかったと思うのです。ここ 最近は、水道の運営・維持管理などもそうなのですが、その中には無収水対策とかいっ たところも、プロジェクトとか専門家に求められるものとして大きくなってきている。 最近はそれに加えて経営面の協力のニーズが増えてきているということで、水道のプロ ジェクト一つとってみても、単に面的なものだけではなくて、そういったソフトの分 野。ソフトの分野でも更に経営面の分野が増えてきているということで、非常に多様化 している状況なのです。そういう意味でも、日本にあるリソースというのは何なのか、 どういうリソースがあるのかというところを、整理する必要があるのではないかと考え ています。 ○眞柄座長  人材関係のことについて言えば、今までのスキームで専門家を派遣するということと は別に、何か新しい仕組みはないのだろうか。評価のところも、山田会員も言われたの ですが、事業体にとってのプラス、マイナスよりも、もう少し大きく、国全体の水道と して人材派遣なり、人材育成のプロジェクトをどう評価するかという視点を入れてほし いというのが一つです。  連携による云々というもう一つの作業部会ですが、これはWHOのガイドラインを作 るのを国包会員と一緒にジュネーブの本部の人たちとやっているのですが、ガイドライ ンが出来ても開発途上国の人が、その国の水質基準を作るというところまでいかない と、あのガイドラインは生きないのです。正直なことを言うと、今度の改正したガイド ラインは、工業先進国向きのガイドラインなのです。あれを途上国の、例えばバンコク のような大都市の水道向けの国の基準と、タイの農村部の小規模や、あるいは井戸水道 のような所の基準と、2本立てにしないと経済的には成立しない。そういうことをどう 支援するかという部分が私は抜けていると思うのです。  いまWHOと厚生労働省と大変良い関係にあって、国際機関のWHOとしてうまくい っているのだけれども、そういう開発途上国で施設を造る、無償はいいのだけれども、 例えばいまプノンペンで山本敬子さんが、カンボジアの水道の水質基準を作っている。 けれどもカンポジアの人たちにはない、JICAにも仕組みがない。今どうしているか というと、カンボジアの水道水を横浜で測っていただいて、そのカンポジアの水質を見 て、カンボジアの水道の水質基準にしなければならない項目を選んでいるわけです。無 収水量、有収水量も結構なのですが、厚生労働省としては質の面について新しい事業が あるかなということは、是非、作業部会の中で考えていただきたいと思います。  それはなぜかというと、山田会員も関係をしておられるのですが、OECFで中国で いろいろな所で水道を造ったのです。いまの中国は水道水の蛇口から飲めなくてもいい ことになっている。ところが昨年、国家重点政策で2010年から直飲水道ということにな ったのです。2010年からは直接飲める水道水にする。そのために中国政府は都市向けの 水質基準、これは建設部、衛生部は地方水道用の水質基準と2本立てに作ったわけで す。彼らはそれに向けていま、どんどん努力をしているのです。これから開発途上国の 都市では中国と同じように、都市は直接飲める水道が目標になると思うのです。そのた めには有収水量、無収水量のことも当然関係しますが、質をどう決めるかの事業は、こ れから日本にとって大事だし、それは民でやるというよりも官で、国包会員のところが 中心になってやっていただく仕事かなと思いますので、そういう視点も加えていただき たいと思います。 ○国包会員  最後に眞柄座長からお話がありましたことに関しては、確かにごもっともだと思いま すし、国によってはいまの時点でそういったことが、これからの更なる発展の重要なポ イントになる部分だろうと思っています。  実は私ども保健医療科学院の方でWSSCCのO&Mネットワークグループのコーデ ィネーター役をやらせていただいています。それと、眞柄座長からもご紹介いただいた WHOのガイドラインの作成等にも係わっています。そういったことでWHOのガイド ラインの議論の中でも、といいますか作業の中でも、WSSCCの活動とWHOの飲料 水の水質確保の活動とつなぐべき立場に私がいま立たせていただいています。そういっ たことから、途上国の水道水質なりの確保については、特に東南アジアを重点的にと思 っているのですが、今後は私どもが頑張ってやって参りたいと考えています。そういっ た中で、このケーススタディとも大いに関連があると思うのですが、眞柄座長からご指 摘のあったようなことも是非議論をし、私どもとして進めていきたいと思っています。 ○眞柄座長  皆様方のご意見を伺うと、2つの作業部会を発足させる必要性はあるということだと 思うのですが、どなたが部会長を引き受けていただけるかということになるのです。自 ら名乗り出られるか、それとも吉川専門官から、この部会はこの会員にということの案 でもあれば出していただきたいと思います。 ○吉川専門官  案といいましても。 ○眞柄座長  では、勝手に指名をしてよければ、「人材開発関係人選選定方式」は、水道界のシル バー登録制度もやっておられるので、村元会員にお願いしてよろしいですか。 ○村元会員  私はその任にありますでしょうか。ほかにいらっしゃらなければ。 ○眞柄座長  水道事業体にアンケートを出したり何なりするので、そういう意味では日本水道協会 さんのご協力をいただくのがやりやすいのではないか。いまも専門家のリソースが水道 事業体になっているので、村元会員に部会長としてご協力をいただければと思います。 「連携による融合・総合援助手法」のところですが、国包会員が保健医療科学院はそう いうものの役割を負っていると言われたので、国包会員に、こちらのほうは部会長をお 願いしたいのですが、よろしいですか。 ○国包会員  はい。 ○眞柄座長  そういうことで、お2人にお願いをしまして、リーダーシップをとって進めていただ きたいと思いますのでよろしくお願いします。大体約束の時間になったのですが、山田 会員何かございますか。 ○山田会員  もう十分皆さんが言われましたので。 ○眞柄座長  金近会員、最後に何かございますか。 ○金近会員  特にはございません。 ○眞柄座長  先ほど部会が決まりましたので、今後のスケジュールなどを、ご紹介をいただければ と思います。 ○吉川専門官  本日はご審議ありがとうございました。事務局から今後の進め方について提案いたし ましたことに、いろいろご意見をいただきましたこと感謝申し上げます。今日のご意見 を踏まえて、これから進めていきたいと存じます。今年度のスケジュールですが、次 回、水道部会事業と合同の形で作業部会を1つ立ち上げて、村元会員とご一緒に作業部 会のほうを考えてまいりたいと思います。  あと民のリソースという話もあります。今まで官の関係の人材・発掘は、国包会員に 多大なお世話をいただいていたところですので、山根会員、国包会員にもアドバイスを いただきながら、作業部会のメンバーの選定等に事務局で入らせていただければと思い ます。今年度はそういう形で作業部会を1つ立ち上げて実施するのと、あと、年度末に 全分野合同の検討会を予定していますので、そこに今回の資料をブラッシュアップしま して、進捗報告の形で提出することを考えています。こちらの進捗報告のための作業に ついては、大変恐縮ですがメールなどのベースで、会員の方のアドバイスをいただきな がら進めさせていただければと思います。来年度、できれば第一四半期に次回の検討会 を開催して、そこでは事務局で政策評価の叩き台など作成しましてご検討をいただけれ ばと考えています。また、年度半ばに検討会を2回ほど開催して、作業部会の成果等々 を含めて、全体を取りまとめていきたいと思います。  検討会の開催以外にも、会員の方々から随時電子メール等を通じて、ご意見・ご提言 等をいただければ大変幸いに存じます。次回の開催、全分野合同検討会の開催について は、おそらく3月ごろ、年度末になるかと思うのですが、これはほかの分野との関係も ありますので、追って日程調整をさせていただくということでご了承いただければと思 います。また、議事録につきましては、速記録が出来次第、皆様にお送りしてご確認を いただきます。会員の方々に必要な修正をしていただいた上で、最終確認の後、厚生労 働省ホームページを通じて公表させていただきたいと存じます。事務局からは以上で す。 ○眞柄座長  連携の部会のところで、山田会員も私も北脇会員も大学の人間なのです。大学の人間 も結局は一本釣りなのです。大学もいろいろな意味で最近国との連携だとか産業界との 連携とかがテーマ、あるいは役割になってきたので、この作業の中で大学をどうやって 活用するかを連携のところのテーマに是非入れていただきたいと思っていますので、よ ろしくお願いいたします。北大の歯学部が今度JICAと連携でバングラの歯科医師の 養成プロジェクトを始めることになって、それがうちの歯学研究科全体とJICAと、 もちろん相手もいるわけですが、そういうことも行われるようになってきています。水 道に関係する大学がいくつかありますが、どうやって活用するかを是非お考えいただき たいと思います。  今後のスケジュールについては、先ほどご紹介がありましたので、次回については会 員の方々と調整をして決めさせていただきたいと思います。最後に何かございますか。 ○福田室長  会員の皆様方、本日は大変お忙しい中どうもありがとうございました。冒頭で課長の 挨拶にありましたように、水道を初めとして保健医療、そして労働関係、社会福祉と関 係をしているわけですが、実際に仕事をしていますと、それぞれの分野で、ある意味で はそれぞれの問題点は違うようです。ただ、いろいろ議論をしていきますと、逆に本質 的な部分は結構共通しているのかなと一方では思っているところです。  今日の議論でいろいろ出ましたが、水道については吉川からも説明がありましたが、 従来いろいろ地道に検討をしていただいているところがあります。JICAだけではな くJBICを中心とする有償の関係とも、非常に係わりが深いという特色をもっていま す。協力の人材としては早くから自治体との連携をとってきているということがありま す。今日もお話の中に出ましたが、協力の中身で質的なと言いますか、技術的なものと 併せて最近は経営管理面、財政面を強く要望されているところがあります。  ある意味ではいろいろな特色を水道面は持っていますので、会員の方々、今日はたく さんの吉川の作りました資料を是非お持ち帰りいただきまして、これからワーキンググ ループなどがどんどん進むと思いますが、メールなどでやりとりをさせていただく中 で、水道分野の検討はほかの分野にも非常に影響があると思いますし、私ども大変期待 をしておりますので、引き続きご協力をよろしくお願い申し上げます。この場を借りま してお礼のご挨拶とさせていただきます。 ○眞柄座長  ペーパーでくださるよりも電子ファイルでいただくと、我々活用しやすいので、よろ しくお願いいたします。どうもありがとうございました。 (了) (照会先)  厚生労働省国際課国際協力室   国際協力専門官 吉川   協力企画係長  吉村   03-5253-1111(内線7305)