04/10/15 第6回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会議事録     第6回医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会                    議事録 1.日時  平成16年10月15日(金)16:30〜17:30 2.場所  厚生労働省専用第18〜20会議室 3.出席委員 位田委員、垣添委員(委員長)、具嶋委員、栗山委員、武田委員、        廣橋委員、福嶋委員、堀部委員、柳川委員、吉倉委員        (事務局)        松谷技術総括審議官、上田厚生科学課長、安達研究開発振興課長、        高山研究企画官 他 4.議題  (1)臨床研究における個人情報保護に係る諸課題への対応について  (2)その他 5.配布資料  資料1:個人情報保護に関して検討すべき事項について(案)  資料2:個人情報保護法施行に伴う「臨床研究に関する倫理指針」の改正について      (案)  資料3:「臨床研究に関する倫理指針」に係る主な見直し事項について  参考資料1:診療情報の提供等に関する指針 6.議事 ○高山研究企画官  定刻になりましたので、始めたいと思います。お忙しい中お集まりいただきまして、 誠にありがとうございます。当委員会については、これまで経済産業省、文部科学省の 委員会と合同で、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直しについて 進めてまいったところです。第1回目の厚生労働省の委員会の席でもご紹介いたしまし たが、医学研究分野における指針については、ヒトゲノム・遺伝子解析研究のほかに、 「遺伝子治療臨床研究に関する倫理指針」「疫学研究に関する倫理指針」「臨床研究に 関する倫理指針」があります。これらの3指針についても、来年4月1日からの個人情 報保護法の全面施行を踏まえ、検討を行う必要があります。本日は3時間にわたる長時 間になりますが、よろしくお願いします。  まず最初の1時間は「臨床研究に関する倫理指針」の検討を、続いて「遺伝子治療臨 床研究に関する倫理指針」と「疫学研究に関する倫理指針」の検討を、お願いしたいと 考えております。また遺伝子治療臨床研究と疫学研究については、文部科学省と共管に なっていることから、あとの2時間は文部科学省の委員会と合同で開催したいと思いま す。  本日の委員の出席関係ですが、あらかじめ宇都木委員、大山委員、菅委員、橋本委員 からは欠席とのご連絡をいただいております。まず事務局より今後の進め方について説 明いたします。本日及び来週の2回の委員会においては、ゲノム指針以外の3指針につ いても、個人情報保護に基づく必要な見直しについて、今回はあくまでも個人情報保護 法との関係からご議論いただき、ゲノム指針と同様に、必要な措置等を盛り込みたいと 考えております。今週、来週と非常にタイトなスケジュールで、先生方には大変申し訳 ございませんが、何卒よろしくお願いします。なお、これらの指針の見直しについて も、委員会でご議論いただいたものを受け、パブリック・コメントにかけることとした いと考えております。それでは垣添先生、よろしくお願いします。 ○垣添委員長  皆さん、こんにちは。お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうござい ます。久しぶりに快晴になりましたが、大変切迫したタイムスケジュールの中で、たく さんご検討いただかなくてはいけませんので、座長として私の心の中は、決して爽やか に晴れてはおりませんが、そんなことを言ってはおられません。本日もどうかよろしく お願い申し上げます。まずは事務局から、本日の資料の確認をお願いします。 ○事務局  まず臨床研究指針のみをご討議いただくということで、配付資料として臨床研究指針 のみの関係の資料をお配りしておりますので、その確認をお願いします。議事次第にあ りますように、配付資料としては資料1「個人情報保護に関して検討すべき事項につい て(案)」、資料2「個人情報保護法施行に伴う『臨床研究に関する倫理指針』の改正 について(案)」、資料3「『臨床研究に関する倫理指針』に係る主な見直し事項につ いて」、参考資料「診療情報の提供等に関する指針」をお配りしております。併せて本 日委員の方々のお手元に、机上配付資料1「個人情報保護法と臨床研究に関する倫理指 針対照表」、机上配付資料2「臨床研究に関する倫理指針(素案)」、机上配付資料3 「医学系研究における法・指針の適用範囲イメージ」、机上配付資料4「『ヒトゲノム ・遺伝子解析研究に関する倫理指針』の対照表(案)」もお配りしております。計8つ の資料をお配りしておりますので、お手元にない場合は事務局までご一報いただければ と思います。 ○垣添委員長  それでは本日の議題に入ります。冒頭に事務局から説明がありましたとおり、本日の 最初の1時間は、臨床研究に関する倫理指針についてご検討いただきます。その後、文 部科学省との合同で、遺伝子治療臨床研究と疫学研究に関する倫理指針の検討をするこ とになります。初めに資料1、資料2、資料3に沿って、今回の改正の基本的な考え方 と臨床研究倫理指針の適用範囲について、事務局から資料の中身の説明をお願いしま す。 ○安達研究開発振興課長  医学研究関係の4指針の中で、臨床研究の倫理指針は研究開発振興課で所管しており ますので、ご説明いたします。まず最初に、本指針については個人情報保護法関係3法 はもとより、医療関係事業者に対する取扱いのガイドライン、あるいはゲノム指針等の 検討状況も踏まえながら検討する必要があるところから、見直し案についてのご説明が 今回となりましたことを、心からお詫び申し上げます。では資料2を基に、ご説明した いと思います。  まず「経緯」です。臨床研究に関する倫理指針は平成15年7月30日に、厚生労働省告 知として策定したものです。策定に当たっては高久先生を座長とする厚生科学審議会の 科学技術部会の専門委員会での、半年以上にわたるご審議を経て策定いたしました。こ の内容については3行目にありますように、研究者等が遵守すべき事項を定め、臨床研 究の適正な推進を図ることを目的としております。一方、いわゆる個人情報保護関連3 法が、来年4月1日から全面施行される予定で、臨床研究など、医学系研究における個 人情報の取扱いについては、特に適切に取扱いを確保すべき分野として位置づけられて おり、その在り方を検討する必要があるのは、ご案内のとおりです。  机上配付資料3として、ポンチ絵を1枚用意しておりますが、網掛けをした所が個人 情報保護法の適用範囲です。このうち、私どもの臨床研究に関する倫理指針と密接な関 連を持ちます診断治療、いわゆる医療行為の部分については、個人情報保護法の適用範 囲ということで、別途医政局のほうで「医療・介護関係事業者における個人情報の適切 な取扱いのためのガイドライン」を策定中です。一方、薬事法に基づく治験等を除く医 学研究については、臨床研究に関する倫理指針、ピンク色の部分がカバーすることにな っております。ただし指針の中で、その他の指針あるいは法律等がある場合は、そちら を優先するということで、ゲノム指針、疫学指針、さらには遺伝子治療臨床研究に関す る指針等に係る部分は、本臨床研究に関する倫理指針の対象外となっております。  資料2の2.「基本的考え方」ですが、今回この改正を行うに当たっての基本的な考 え方についてご説明いたします。まず(1)です。個人情報保護法においては学術研究 の用に供する個人情報については、適用除外とされておりますが、臨床研究において取 り扱う情報は、同時に医療情報でもあります。医療というのは国民から高いレベルでの 個人情報の保護が求められている分野の一つです。このため「学問の自由」にも配慮し つつ、個人情報保護関連3法及び別途検討が進められている「医療・介護関係事業者に おける個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」も踏まえ、必要な見直しを検討 する必要があると考えております。  また(2)にありますように、いわゆるゲノム指針など、他の医学研究関連指針との 整合性に配慮することも当然です。  個人情報保護関連3法あるいは個人情報保護法と倫理指針の整理については、(3) にあります。臨床研究というのは国の研究機関、大学法人、民間研究機関等さまざまな 機関で実施されております。それぞれの研究機関は個人情報の取扱いに当たって、当該 法律又は条例を遵守する必要があります。このため本指針においては、少なくとも個人 情報保護法の趣旨を踏まえているかについての整理を行い、それぞれの研究機関等は当 然本指針のほかに、該当する法律又は条例の規定に従うことにしたいと考えておりま す。このことを資料1に示したところですが、資料1の記述についての説明は省略させ ていただきます。  (4)ですが、今回の見直しにおいては、個人情報保護に直接関連する部分のみを見 直しの対象としております。  このような基本的な考え方を踏まえ、3.の「主な改正点」としては、前文において 個人情報保護法等との適用関係を記述したり、研究者等が開示、訂正、削除等の権限を 有するものを「保有する個人情報」と定義し、これらの開示等について、個人情報保護 法と同等の責務を規定します。あるいは利用制限、適正取得、通知、正確性の確保等に ついて、研究責任者及び研究者等の責務等を規定します。さらに安全管理措置、苦情処 理等に係る臨床研究機関の長の責務を規定する、という改正を行おうと考えておりま す。 ○垣添委員長  事務局からは特に資料2で、臨床研究に関する倫理指針の見直しのポイントを説明い ただき、机上配付資料3で、他の指針あるいはガイドラインとの関係を整理していただ きました。引き続き事務局から、今回の見直しの具体的な内容について、資料3と机上 配付資料1及び2で、説明いただけますか。時間が本当に限られていますので、ゲノム 指針の検討で議論された部分は、なるべく簡略にして説明いただければと思います。 ○事務局  机上配付資料1は「個人情報保護法等と臨床研究に関する倫理指針対照表」というこ とで、いちばん左側に個人情報保護法の条文、その隣に臨床研究に関する倫理指針の現 行上の関連する規定、真ん中に改正案の素案を書いておりますので、そこを重点的にご 覧いただければと思います。いちばん右側が参考で、医療・介護関係事業者における個 人情報の適切な取扱いのガイドラインの素案、ならびにゲノム指針についての考え方 を、簡単に記述しております。机上配付資料2は「臨床研究に関する倫理指針(素案) 」です。これは全体の流れとして赤ならびに見え消しで書いておりますので、資料3の 「主な見直し事項について」を説明しつつ、併せて机上配付資料1をご覧いただきなが ら、ご説明したいと思います。  資料3ですが、右肩に(凡例)としてゲノム指針と異なるものについては○、ゲノム 指針と同様のものについては●というように分けております。ゲノム指針と同様のもの については、簡単にご説明したいと思います。ただ机上配付資料1の改正案の部分で は、ゲノム指針と異なる内容となっているものは、同じく○の状態になっております が、同様の考え方に基づいているもの、改正案の部分が網掛けの状態になっております ので、併せてご覧ください。  (1)の「個人情報保護法などと臨床研究に関する倫理指針の関係について整理する 」というのは、ゲノム指針と同様の考え方をしておりますので、法律第8条を踏まえ、 倫理指針の前文において整理しております。机上配付資料の中では4頁に書いておりま す。そもそもあった前文の後に、こういう形で個人情報保護法に関する法律を踏まえた ものを書き足すということで整理しております。  (2)の「『個人情報』及び『保有する個人情報』について定義をする」は、○です から、ゲノム指針とは異なるものとなっております。机上配付資料の1頁をご覧くださ い。改正案の3「用語の定義」で、個人情報のうち保有する個人情報をそれぞれ定義し ております。臨床指針においては、従前より臨床研究において取り扱う試料及び診療情 報の中に、特段生存するということを分けず、死者にかかわるものも含まれておりまし たので、個人情報の定義は個人情報保護法における定義とは異なり「生存する」という 文言を削除しております。併せて、個人情報のうち研究者等が開示、訂正、削除等の権 限を有するものを「保有する個人情報」として定義しております。  (3)では、「代理人」についての定義をしております。机上配付資料の3頁です。 これは個人情報の政令ですが、臨床指針において、被験者以外の者で開示等の求めを行 うことができる者の「代理人」として、個人情報保護法と同様の整理としております。  (4)では、個人情報を行う主体を整理しております。法律の中では第15条からです が、机上配付資料では6頁から整理しております。個人情報保護法で求められている個 人情報取扱業者に対する権利義務については、臨床研究の場合、臨床研究の研究単位が 一般の会社法人等と異なり、研究グループ単位で遂行されるという特殊性を考慮し、研 究機関の長、研究責任者、研究者等の責務に分けて整理しております。  具体的には、組織的、物理的手当が必要となる、安全管理措置及び苦情・問い合わせ に対する体制整備については、研究機関の長の責務と規定しました。この安全管理措置 については、机上配付資料1の10頁に、苦情・問い合わせについては20頁に規定してお ります。研究グループ単位で行うべき事項(開示、訂正、利用停止等)については、研 究責任者の責務と規定しました。机上配付資料1についてご案内いたしますと、開示に ついては16頁、訂正については17頁、利用停止についても同じく17頁に規定しておりま す。研究者個人のレベルで対応する必要のあるものについては、研究者等の責務とし て、6頁のカラムの中ほどから縷々規定しております。  (5)はゲノム指針と同じ考え方という整理をしたもので、データ内容の正確性の確 保に係る規定を追加しております。これは10頁に書いております。  (6)の「安全管理措置に係る規定を追加する」というのは、先ほども若干申し上げ ましたように、安全管理措置に係る規定については、もうすでに臨床指針において規定 されておりましたが、個人情報の観点から重要であるため、さらに詳細に規定すること としました。個人情報保護法の第20条を踏まえ、研究機関の長の責務として、机上配付 資料の10頁に書いてありますように、必要な組織的、人的、物理的及び技術的安全管理 措置を講じなければならないということを追加しております。併せて研究責任者及び研 究者等の責務として、所要の規定を追加したところです。  加えて、個人情報保護法第21条を踏まえ、研究責任者の責務として、研究者等に対す る必要かつ適切な監督を行わなければならないことを追加しております。机上配付資料 で申し上げますと、10頁に規定しております。また委託者の監督については、個人情報 保護法第22条を踏まえ、研究責任者の責務として、研究を委託する場合は、委託された 個人情報の安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行 わなければならないということを追加して規定しております。これは机上配付資料の11 頁に書いております。  (7)では、第三者提供に係る規定を追加いたしました。これは法律の第23条に規定 している第三者提供に係る規定です。臨床研究の倫理指針においては、すでに規定され ていたところですが、個人情報保護の観点からも重要であると考え、入念的に、個人情 報保護法第23条を踏まえ、研究者等の責務として、あらかじめ被験者の同意を得ないで 第三者提供をしてはならないということを追加しております。これは机上配付資料の12 頁に書いております。  (8)では、保有する個人情報に関する事項の公表に係る規定を追加いたしました。 保有する個人情報について、個人情報保護法第24条を踏まえ、研究責任者の責務とし て、所要の事項について被験者の知り得る状態に置かなければならないということを規 定しております。これは机上配付資料では14頁に書いております。  (9)は開示に係る規定です。これはゲノム指針と同様という考え方で、研究責任者 の責務として、被験者及び代理人から、保有する個人情報の開示を求められたときは、 被験者等に対し、遅滞なく開示しなければならないということを規定しております。臨 床研究倫理指針の場合は、「診療情報の提供等に関する指針」を援用する部分について も規定しております。  (10)で、訂正及び利用停止に係る規定を追加した点については、ゲノム指針と同様 の考え方としております。具体的な形としては、研究責任者の責務として、個人情報の 訂正、利用停止、第三者への提供の停止を求められた場合で、それらの求めが適正であ ると認められるときは、その措置を行わなければならないということを規定しておりま す。  (11)の「理由の説明に係る規定を追加する」という部分は、法律第28条を踏まえ、 研究責任者の責務として、その理由を説明するように努めなければならないということ を規定しております。机上配付資料では18頁に規定しております。  (12)もゲノム指針と同様の考え方ということで、開示等の求めに応じる手続き及び 手数料に係る規定を追加しております。机上配付資料では19頁に、研究責任者の責務と して、被験者又は代理人に対し、開示等の求めに対し、その対象となる保有する個人情 報を特定するに足る事項の提示を求めることができますが、この場合には所要の措置を 取らなければならないということを規定しております。併せて個人情報保護法第30条を 踏まえ、研究責任者の責務として、保有する個人情報の開示を求められたときなどに は、手数料を徴収することができるということを規定しております。机上配付資料では 20頁に規定しております。  (13)の「苦情処理の窓口の設置について補足する」という点についても、ゲノム指 針と同じように、研究機関の長の責務として、苦情処理の窓口の設置について補足して おります。臨床研究倫理指針においては、すでに細則で規定されておりますが、円滑な 苦情処理が行われるように、研究機関の長の責務として規定したところです。併せて研 究者等の責務として、個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなけ ればならないということを規定しております。これらは机上配付資料の20頁に規定して おります。  最後に、(14)の改正点は、ゲノムとは別の形になっておりますが、単に施行期日と 見直し規定の部分を改正しております。改正前の臨床指針においては、見直しの時期を 施行後5年としておりましたが、改定いたしましたので明示的に、平成20年7月30日と なるように記述しております。また施行期日を個人情報保護法などが施行される平成17 年4月1日として、必要な経過措置を臨床指針中の2の「適用範囲」の細則に設けたと ころです。 ○垣添委員長  資料3と、机上配付資料1、2に沿ってご説明いただきましたが、資料3の●はゲノ ム指針と同様ということですので、これはここにあるとおりで、主に○の点を資料3に 沿って、一括してご質問、ご発言がありましたらお受けしたいと思います。保有する個 人情報の定義、代理人の定義、個人情報保護を行う主体の整理、第三者提供に関する規 定、保有する個人情報に関する事項の公表に関する規定、あとはゲノム指針と同じで、 最後に施行期日、見直し規定等ということですが、いかがでしょうか。吉倉委員、(2 )の「生存する」という文言を削除したことはよろしいですね。 ○吉倉委員  「保有する個人情報」というカテゴリーをつくったのは、情報公開にまつわる所だけ ですか。 ○垣添委員長  「個人情報」と「保有する個人情報」の違いというのは、どこかに書いてありました よね。 ○吉倉委員  そこはいいのですが、「保有する個人情報」という文言を使うのは、開示の所だけで すか。ほかに14頁にあると、先ほどおっしゃったのですが。 ○安達研究開発振興課長  開示、訂正、利用の停止、第三者提供等、実際に何らかの開示等を求められた場合に ついて対応するところは、ほぼ「保有する個人情報」になっております。補足いたしま すと、個人情報保護法の中でも開示等の対象になるのは個人データですが、個人情報保 護法の規定が、これとほぼ同様の内容の表現方法になっております。 ○吉倉委員  保有する個人情報というのは、個人情報保護法の中に定義されているという意味です か。 ○安達研究開発振興課長  個人情報保護法では、保有個人データというのがあります。 ○事務局  それは第2条の5です。読み上げますと、「この法律において『保有個人データ』と は、個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び 第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データであって、その存否 が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるもの又 は一年以内の政令で定める期間以内に消去することとなるもの以外のものをいう」とな っています。簡単に言いますと、個人情報取扱事業者が開示、内容の訂正、追加又は削 除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人 データで、一部を除外するものです。 ○吉倉委員  要するに、これは今の法律の定義と同一と考えてよろしいのですか。 ○事務局  ほぼ同様の規定として考えております。 ○堀部委員  一般の法は、「個人情報」と「個人データ」というようには分けていないものですか ら、そのあたりを一緒にして。また「保有個人データ」あるいは「保有個人情報」と言 うと、法律そのものになるので、ここではそこを区別するために「保有する」というよ うに変えて、この指針独自のものとしたのではないかと思うのですが、そういう理解で よろしいのですね。法律との関係で言えば、こういう工夫をしないとならないという一 つの現れではないかと思います。その意味では一般の情報公開とは違いますが、開示、 訂正、削除等の所で、事項又は代理する者の情報について公開を求める、そういう趣旨 のものだということでよろしいのではないでしょうか。 ○垣添委員長  ほかにいかがでしょうか。 ○柳川委員  1頁の(4)です。こういう研究はグループ単位で行われることが多く、いろいろな 面で研究責任者の責務ということが規定されていますね。機関長の責務については、複 数の機関が一緒になって仕事をする場合が多いのですが、そのときに例えば安全管理措 置や苦情・問い合わせに対する体制整備について、責任者が所属する機関だけでなく、 すべての機関が同じように責任を持ちなさいということですか。 ○安達研究開発振興課長  ご指摘のとおりです。ただ、ちょっと分かりづらいのは、臨床指針における私どもの 研究責任者の定義は、個々の機関におけるという定義になっております。一般的な概念 で言いますと、むしろ分担研究者が、それぞれの機関におけるトップが、研究責任者と いう規定になっておりますので、柳川委員のご指摘のように、グループでやっている場 合であっても、それぞれの研究機関ごとにきちんとやらなければいけないという趣旨の 規定です。 ○事務局  補足的に説明いたします。研究責任者の定義ですが、机上配付資料2の3頁をご覧く ださい。(4)に「研究責任者」というのがあります。読み上げますと、「個々の臨床 研究機関において、臨床研究を実施するとともに、その臨床研究に係る業務を統括する 者をいう」となっております。いま課長から説明させていただいたとおり、個々の臨床 研究機関において、分担研究者的に研究をしている者を研究責任者という形で定義して おりますので、いまの委員のご指摘のような形になっております。 ○福嶋委員  ゲノム指針の所で、多施設共同研究についてのルールというのが、かなり明確に記載 されるようになるということが、いま案として出されておりますが、やはり臨床研究に おける倫理指針においても、多施設共同研究が円滑に進むような取組みというのが、あ って然るべきだと思います。ですから個人情報保護の観点から、それぞれの施設で必要 だというのはもっともですが、どこまで要求されるのかということになると、もうちょ っと整理して考えておかないといけないと思います。 ○垣添委員長  この規定からは共同研究の場合が、十分読み取れないというご心配ですね。 ○福嶋委員  はい。 ○垣添委員長  この点に関して、何かご意見はおありでしょうか。 ○事務局  もともとの臨床研究の指針においては、共同臨床研究機関という定義を置いており、 共同で研究すること自体を想定して出来るようにしております。ただし先ほども申しま したように、研究責任者はそれぞれの機関で研究者等でまとめて、それぞれが責任を持 って機関ごとに分担する部分と、研究チームとしてやる部分を想定しながらつくられて いるものです。そこはすでにそうされておりますので、今回についてもそう大きく動か すことなく、今のところは動いているというように認識しております。 ○吉倉委員  今のところが、ちょっとひっくり返ったような話ですが、開業医などは結構個人で臨 床研究をおやりになることがありますね。その辺は今度の改正でどうですか。このよう に書いてくると、どういう具合に適用するかというのが、ちょっとよく分からないので す。 ○安達研究開発振興課長  そのような場合、この指針上は研究者でもあり、研究責任者でもあり、研究機関の長 でもありということで、すべて1人がやるということになるかと思います。 ○垣添委員長  武田委員は一般の医療機関のお立場で、委員として加わっていただいておりますが、 こういう臨床研究に加わる場合、何か問題をお感じになりますか。 ○武田委員  やはり倫理委員会にかけてやるわけですが、いまご説明があったように、1人でやる ということはありません。2,000人ぐらいおりますので、その中でやっていきます。 ○垣添委員長  そのようにやっていくので、特に不都合な点はないというようにお感じですか。 ○武田委員  ないです。 ○垣添委員長  分かりました。ほかにいかがですか。 ○福嶋委員  よく分からないのですが、ゲノム指針で倫理審査にかかるときは、主たる研究施設の 倫理委員会での倫理審査をきちんとやって、共同研究施設の分担研究者の所では、迅速 審査でいいのではないかという案ですよね。それぞれの分担研究施設での個人情報の取 扱いという意味に関して、個人情報保護法との絡みで言うと、今回の臨床研究の指針と ゲノム指針とは、同等と理解してよろしいのでしょうか。 ○安達研究開発振興課長  そもそもゲノム指針のほうでは、個人情報の取扱いについて規定しておられます。そ れには遺伝情報という特殊性があるかと思います。私どもは保有する個人情報というこ とで、実際の開示等の権限を持っている者という縛りをかけております。ただご指摘の グループ内でのいわゆる研究責任者と言いますか、主任研究者と分担研究者の関係につ いては、現在の臨床研究倫理指針においても、分担研究者であってもその研究機関の長 の許可を得て行うということを規定しております。その意味では同等の規定というよう に考えております。 ○福嶋委員  そうしますと、やはり統一性をとるために、臨床研究に関する倫理指針のほうでも、 迅速審査の条項があったほうが、統一性がとれて分かりやすいのではないかと思うので す。 ○事務局  倫理審査委員会の設置については、「臨床研究機関が小規模であること等により、当 該臨床研究機関内に倫理審査委員会を設置できない場合には、共同臨床研究機関、公益 法人、学校等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することをもって、これに代え ることができる」という規定をすでに設けておりますので、明示的に「迅速審査」とい う言葉はありませんが、共同の臨床研究機関などで代わりにやっていただくことができ るということになっておりますから、ある意味では迅速審査という形をご理解いただけ るかと思います。 ○福嶋委員  大学病院同士の共同研究というのが、どんどん増えてきていて、うちには倫理委員会 があるのに、承認を得なければいけないのかというところなのです。小規模の所であれ ば、いまの条文でいいと思うのですが、大規模の機関同士で、ただ主たる研究者がい て、あとは分担研究者が。倫理委員会があったら、すべて通さなければいけないという ルールですと、研究が進まないということになるのです。ですから、そういうことも視 野に入れると、ゲノム指針で記載されることになる条文があったほうがいいと思いま す。 ○安達研究開発振興課長  確かに委員のご指摘のような迅速審査については、実際の現場では、いろいろと工夫 してやっているかと思うのですが、臨床研究倫理指針の中でも入念的に明記するかどう かについては、今後の課題とさせていただきたいと思っております。この臨床研究倫理 指針については、別途課長通知でいろいろなQ&Aも示しておりますので、そこで対応 するか、あるいは告示として対応する場合は、高久座長を委員長とする別の専門委員会 で検討したものですので、個人情報に直接かかわらない部分については、そこでの議論 が必要かと思っておりますから、今後の宿題にさせていただきたいと思います。 ○垣添委員長  ほかにいかがでしょうか。 ○吉倉委員  2頁の「適用範囲」の(2)に、「この指針は、日本国内において実施される臨床研 究を対象とするが、日本国外において実施される臨床研究も対象とし、これに携わる」 云々となっていますね。新しくなる前は、多分それでよかったと思いますが、今回これ が入ったことによって、ここの所はどうなるのか。遺伝子のほうはたしか別個にしてい ましたよね。この辺はこれでうまくいくのですか。ちょっと心配なのです。このまま日 本国外において、これがそのまま適用できるのか。その辺はどうでしょうか。 ○垣添委員長  ゲノム指針のほうはここに書いてあるのと、ちょっと違うようですね。 ○吉倉委員  ゲノム指針はちょっと違います。 ○事務局  今回のゲノム指針は、そういう改正がありました。我々の整理といたしましては、こ のゲノム指針の改正自体、本当の中身に関しては高久委員会にかけなければならないと 思っております。個人情報保護法と関係する部分のみを事務的に変更すべきというの が、我々の基本方針ですので、そこのところを考えますと先ほどと同じように、高久先 生の委員会と議論すべき事項として、ここも整理すべきだと思っております。 ○安達研究開発振興課長  紋切型に言うと今のとおりです。確かに個人情報保護法にもかかわる部分ですので。 ただ規定を見ますと、むしろ私どもの考え方を踏まえたものとほぼ同様に、ゲノム指針 を変えられたのかなと考えております。次回までに少し勉強させていただいて、ここの 部分についてゲノム指針との整合性をより取る必要があるかどうか、検討したいと思い ます。 ○垣添委員長  海外との共同研究の場合の中身が、ちょっと違っていたような気がしますので、少し ご研究ください。 ○位田委員  2点あります。第1点目は、いまの海外との共同研究についてです。ゲノムの海外と の共同研究については、3省合同で議論しましたから、ある程度理解できるのですが、 臨床研究については臨床研究そのものに関連して、ヒトゲノム研究以外で何か問題はな いのかという点は、議論していないのです。ですから今ここでヒトゲノム研究と整合性 を取って一緒に変えるというのは、ちょっと難しいのではないかと思っています。  ここで今議論しているのは、直接の個人遺伝情報という意味で、個人情報にかかわる 部分だけを、とりあえず変えようということだと思うのです。海外共同研究の場合、確 かに個人遺伝情報にもかかわりますが、ある意味ではヒトゲノム研究の倫理指針のとき に使われていた言葉のように、臨床指針の中身の変更と研究の進展に当たるので、それ についてはやはりそれなりの議論をして、もし整合性を取るのであれば、そのようにす るということだろうと思います。というのはヒトゲノム研究と、臨床研究と、遺伝子治 療の研究とが、完全に横並びになっている部分と、そうでない部分とがありますから、 それはそこそこちゃんと議論してから決めないといけないのではないかと思います。  第2点目は、先ほど吉倉委員が提起された問題です。保有する個人情報については、 研究責任者の責務として、開示や訂正をやるというのは、よく了解いたしました。た だ、これもまたゲノム研究との対照ですが、ゲノム研究では最終的には研究機関の長が 責任を持って、それぞれの研究責任者もしくは研究者に対して権限を下ろし、その研究 責任者がいろいろやるというように、ピラミッド型になっていたのです。今回の素案は 一応そういうことを考えながら、多施設共同研究であっても主な研究責任者のいる研究 機関の長が、最終的な責任を取るというようになっていた。  しかし現実にAさんという研究責任者が保有する個人情報については、訂正、開示等 をやって、また別の施設では、これも一応全体としては研究分担制度であっても、研究 責任者という位置づけですから、その機関の長であるBさんがやっていることについて は、やはりその機関の長がちゃんと安全対策もやれよという指示は出しておかないとい けない。そういうように理解してよろしいのですか。そうすると多施設でやる場合、上 の長は一人ひとりがやっていることは、必ずしもよく分かってはいないと思いますが、 一応知っていることにして、最後は責任を取るというように考えてよろしいのですか。 責務としてはそれぞれの研究責任者が訂正、開示等をやるわけですけれど。 ○安達研究開発振興課長  個々の機関ごとで申し上げますと、その中での研究責任者が行います。その権限は、 直接にはやはり研究責任者が持っているのだろうと考えております。実際の臨床研究の 場合、グループ研究が多く、開示等を行う場合、個々の研究機関ごとに完結してしまう ことは。もちろん一つ一つは完結するのですが、さらにもう1段。被験者のほうからす ると、どこかの研究機関へ行ったら、「うちのことは知っているけれど、ほかは知らな い」と言うのでは不親切だろうということです。むしろ開示の手続きのところで、その 研究の中であれば、「ほかのところはここへ行きなさいよ」と言うことができるような 仕組みにするには、やはり個々の研究機関の研究責任者にきちんと権限を与えて、対応 できるようにしたほうがいいのではないかと考えております。委員がご指摘の点につい ては、多分そうだろうと思います。 ○位田委員  形式上は別々で、それぞれの所が安全管理措置をちゃんとやっておかなければいけな いけれど、というように理解すればいいのですね。 ○安達研究開発振興課長  はい。 ○吉倉委員  先ほど国外の話をしたのは、このままだと国外における臨床研究がかなり難しくなる のではないかという心配が、片方にあったからです。たしかこれを付けたときはほとん ど出来上がった段階で、「日本国外においても」というのを加えた記憶があるのです。 WHOと国際倫理委員会が共同で出している、国際臨床研究に関するガイドラインの中 には、例えば途上国でやる臨床研究については、先進国でできるものはやってはいけな いとか、いろいろなエシカルな問題がありますから、この辺のところはもう少し広く、 国際機関のそういうパブリケーションを頭に入れた文章にしたほうが、私はいいのでは ないかという気がしているのです。前のときはこれを入れても、あまり問題はなかった のですが、今度は少し工夫したほうがいいと思います。 ○垣添委員長  これもまた高久委員会にかかわりますか。 ○安達研究開発振興課長  実際の具体的な案文を考えて、その結果、個人情報保護以外にも大きく影響するとい うことならば、やはり高久委員会のほうかなと。少し案文を考えて、またご相談させて いただきたいと思います。 ○福嶋委員  別の話題になりますが、前文の第4パラグラフの後半についてです。臨床研究に関す る倫理指針が出されたときには、「臨床研究には極めて多様な形態があることに配慮し て、この指針においては基本的な原則を示すにとどめており、研究責任者が臨床研究計 画を立案し、その適否について倫理審査委員会が判断するに当たっては、この原則を踏 まえつつ、個々の臨床研究計画の内容等に応じて適切に行うことが求められる」という ように、非常に緩やかなイメージがあったのですが、これが個人情報保護法の基に定め られるガイドラインという位置づけになりますと、何々せねばならない、こうでなけれ ばいけないというように、厳格になって様相が変わってきたように思うのです。そうす るとこの前文の意味づけとして、各施設の倫理委員会の自由度と言いますか、どこまで 行っていいのか、これをパッと見た方は判断に困ることが起きるのではないかと思うの です。その点はいかがでしょうか。 ○安達研究開発振興課長  今回、個人情報保護法にかかわる部分については、そもそも法の中でも除外ではあり ますが、それぞれの分野ごとに必要なことを、きちんと規定しなければいけないので、 その趣旨を踏まえて、ちょっときつい言い方にはなっておりますが、やはり遵守すべき ものは遵守し、努力すべき部分は努力すべきという表現にならざるを得ないのではない かと考えております。委員のご懸念もありますので、実際の運用に関しては課長通知、 Q&A等で、なるべく丁寧に解説するように努めたいと考えております。 ○垣添委員長  まだまだご発言はあると思いますが、誠に残念ながら、そろそろ時間がまいりまし た。 ○安達研究開発振興課長  1点だけ説明し忘れたようですので。 ○事務局  個人情報の定義の所ですが、資料3の(2)の「『個人情報』及び『保有する個人情 報』について定義をする」という所で説明し忘れたので、いま説明させていただきま す。改正案の1頁の「個人情報とは」という所で、ゲノム指針で取り扱う情報の場合 は、「容易に」という文言を削除しておりますが、私どもの臨床研究に関する倫理指針 においては、取り扱う情報は一般の個人情報と同様の取扱いと考えられますので、個人 情報保護法と同様に、「容易に」が入った形の定義としております。読み上げますと、 「『個人情報』とは、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日 その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合 することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む )をいう」という形で、「容易に」という言葉が入った形の定義にしております。 ○垣添委員長  ゲノム情報はより厳密な取扱いをということで、「容易に」が削除されていることの 追加説明です。よろしければ、これで本日の議論を閉じさせていただきます。特に机上 配付資料2の修正案等について、追加のご意見その他がありましたら、10月18日までに 事務局までご連絡いただければと思います。来週、再度この委員会が開催されることに なりますので、10月18日という日程をよろしくお願いします。ご検討いただいた臨床指 針の見直し案については、本日ご発言いただいたご意見を踏まえ、事務局で修文いたし ます。また、いくつか宿題もありましたので、次回10月22日に再度検討したいと思いま す。                                 ―――了――― 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:鹿沼(内線3804)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171