04/10/15 第5回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会の議事録          第5回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会                       日時 平成16年10月15日(金)                          13:00〜                       場所 厚生労働省専用第17会議室                  ┌――――――――――――――――――――┐                  |(照会先)               |                  |厚生労働省職業能力開発局        |                  |総務課企画・法規係           |                  |TEL:                |                  |03−5253−1111(内線5313)|                  |03−3502−6783(夜間直通)  |                  |FAX:                |                  |03−3502−2630        |                  └――――――――――――――――――――┘ ○諏訪座長  ただいまから第5回の研究会を開催させていただきます。本日の議題は前回の会議に 引き続いて、企業からヒアリングをさせていただくということです。そこで本日は、さ まざまな人材認定制度を設けて主体性を尊重した人材育成を行っているNEC労連の梅 本洋一郎様と、フリーター等の若年者を社員として登用する等の取組みを行っている株 式会社フルキャストの久保裕様のお二方にお越しいただいてお話を伺う予定となってい ます。  それではこの順番でお話を伺っていきたいと思いますが、まず事務局のほうから梅本 様のプロフィール等を簡単に紹介していただいて、そのあと、梅本様にご説明をお願い したいと思います。では事務局からお願いします。 ○総務課長補佐(佐々木)  NEC労働組合連合会・日本電気労働組合中央書記長の梅本様についてご紹介させて いただきます。  梅本様は、1990年に日本電気株式会社に入社されて人事部に配属となっております。 1993年に日本電気労働組合本社支部の非専従執行委員に就任され、翌年の1994年に同組 織の専従執行委員に就任されております。その後、2000年に日本電気労働組合中央執行 委員に、2004年から現職の中央書記長に就任されております。簡単ですが以上です。 ○諏訪座長  大体25分ぐらいを目途にお話をいただければと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○梅本氏(NEC労連)  ご紹介いただきましたNEC労連・日本電気労働組合の梅本と申します。どうぞよろ しくお願いいたします。本日お話するのはNECの人材育成の制度ということですが、 正直なところ、先ほどのプロフィールでもご紹介がありましたように、私は入社してか ら3年ぐらいしか会社の中におらず、その後組合の仕事ばかりやっておりますので、ど こまで細かくお話できるかどうか、はなはだ心もとないところではありますが、資料に 沿って説明をさせていただきたいと思います。  会社の概要という資料を設けておりませんので大変恐縮ですが、NECは地方自治体 あるいは国のレベル、あるいは普通の企業様、個人様に向けた情報システム、あるいは ネットワーク関係のサービスといったところを中心に事業を進めさせていただいており ます。  まず組織ということで1枚つけさせていただいております。ビジネスユニットという 形でたくさん設定しておりますが、担当するサービス分野等に応じて、国内ビジネスユ ニットからパーソナルの分野まで、それぞれ組織を設けております。後ほど少し出てま いりますが、それぞれのビジネスユニットの中に人材育成に関する委員会というのが設 けられ、それぞれのビジネスユニットにふさわしい、求められる教育の体系等々につい て設定しているというところです。  私どもの人材開発の基本的な考え方は、理念ということでスライドの5頁目に記載し ております。言葉で申し上げると、一番上に書いてありますとおり「自立と協働の精 神、先取と変化の勇気」という形でまとめられると思います。それぞれ入社をしてから 経営幹部になっていくに従って、自立・協働・先取という形でそれぞれ求められる資質 なり、行動の適性といったものが示されております。それぞれ必要な人材像、あるいは キャリアパスといったものを組織としても明示した上で、人材育成の大方針というとこ ろで言いますと、従来、どちらかと言えば企業が個人に負っていたと言いますか、悪い 言葉で言うと丸抱えで、入社から定年まで過ごしていたというところを越えて、個人個 人がプロフェッショナルとしての技量を持ち、会社がそういった人達の集団になってい く、会社と個人の協働で組織をつくっていく。社長は「輝く個人」と言っております が、そういった者の集団にしていきたいというのが大きな理念ということです。  次の頁は人材開発の体制ということです。まず全社的には、社長がトップにおります HRM(Human Resource Management)推進委員会というのがあります。ここが全体の 方針を定めており、細かい人材開発の体制、具体的な人材育成の方針等々については、 全社的な部分については全社の人材開発推進会議というのが設けられていまして、これ は大体2カ月に1回ぐらいの頻度で会議を行っております。その中でそれぞれの課題に 向けたプロジェクト、あるいはプロフェッショナル認定の運営を行っております。  先ほど申し上げたそれぞれのビジネスユニットの中では、実際にそれぞれの業務に応 じて必要なスキルなり資格、あるいは受けるべき研修といったものを定める人材開発推 進会議が設定されておりますし、あるいはグループ各社においてもそれぞれの人材開発 委員会というのがあって、人材開発に向けた行動計画なりを定めております。こういっ た中で「輝く個人と燃える組織」を実現していくという方針を定めているといったとこ ろです。  人材開発の体系ということでスライドの7頁ですが、「人材計画」あるいは「人材活 用」については大きくはHRM推進委員会が全社的な方針という形で定めて、その中で 人材開発をどうしていくのかということで少し記載しております。人材開発の体系とい うことでまず1つ大きくあるのが資格の制度です。この資格制度には大きく「プロフェ ッショナル認定制度」と「技量認定制度」の2つがあります。プロフェッショナル認定 制度はNECの社内での資格の認定制度ですが、社内で勝手にこの認定をするというこ とではなくて、お客様からも高い技量を認定されるというのが1つの要件になっていま すし、それぞれプロフェッショナルとして必要とされるスキル、あるいはその処遇が明 示をされているというような形で認定を行っております。技量認定制度はそれぞれ社内 の業務に応じて必要とされるスキル、技量が明示をされ、処遇の関係で言うと、上の資 格、等級に上がっていくときに、この技量認定を取っていることが要件の1つになって いたりという制度です。プロフェッショナル認定はどちらかと言うと主にSE、情報処 理系の技術者に対してですが、いまはネットワーク系の技術者にも順次展開していると ころです。技量認定についてはスタッフも含めて全社的な制度という形になっておりま す。  もう1つあるのが研修制度です。これは職種別に細かいメニューが用意されていた り、あるいは全社としての、例えば主任研修とか課長候補者研修とか、そういう共通研 修という形で体系ができております。その資格制度あるいは研修制度を支える基盤とい う形でSIESという人材育成の情報管理システム、教育体制、機関などを設定してい るということです。当然、人材開発という観点で言うと評価あるいは処遇との関係も密 接です。  8頁目は人材開発のプロセスということです。これはあまり目新しいものではありま せんが、求めるべき人材像を定義して、それに向けた育成、どのように人材開発をして いくのかという実際の資格制度なり研修といったものを設け、実際にそれを受講し、そ れを認定あるいは評価するといったサイクルの中で、輝く個人という形で一人ひとりの 技量、スキル、ノウハウといったものを高めていただくという形で回していく。いちば ん根本になる「求める人材像」というのがやはり全社としても重要になってくるので、 HRM委員会等で設定していくというような形になっております。  9頁目は先ほどちょっと申し上げたSIES、日本電気として持っている人材開発支 援のシステムの紹介です。先ほど申し上げた育成のサイクルとして、一人ひとりが自分 のキャリア、あるいはスキルの向上に向けた計画をシステム上で立案する。その実績を 登録していくことにより、マネージメントの立場からすれば、部門の中にどういったス キルを持った人間がいるのかの管理にもつながる。組織として人材戦略を立案する部門 に集約されていくことにより、組織としてはこれぐらい、この職場の中ではこれぐら い、こういったスキルを保有している人材が欲しいということが明示され、それがまた 一人ひとりの目標にブレークダウンされ、一人ひとりが自分自身のキャリアあるいは能 力向上の計画をつくる。こういった育成のサイクルになりますが、これをシステム的に サポートするのがSIESというものです。  10頁目がその機能の概要ですが、個人からすれば、例えば自分はこれまでどのような 研修を受けてきたのか、今後どのような研修を受けるのか。今後受ける研修について は、社内の研修のメニューがこの画面から閲覧できるようになっていますし、申込みも そのSIESのシステムを通じて行う。上司からすれば、部下が現在保有しているスキ ルを一覧できる形になりますし、本人に将来保有してもらいたい資格なりスキルを上司 として考える、あるいは部門として今どういった人材が何人要るのかといったところ も、すべてWebの中でシステムを構築していて、基本的にはこのSIESというシス テムの上で人材開発の一連のサイクルが回るという、こういうようなシステムを組み上 げております。  11頁はNECの研修の体系で、緑色の所は全社共通の研修です。入社したところで新 入社員教育があって、1つは、キャリアを中心とした進路についての研修。あるいは経 営力という観点で言うと、先ほど申し上げた主任研修とか課長研修とか、ある程度対象 を絞ったような形で行う研修。あるいは一般的にはコンピテンシーという呼び方のほう が通っているのではないかと思いますが、それぞれのレベルに応じて求められる行動様 式といったものをNECではプラクティスと呼んでおり、その研修。こういったものが 共通軸としてあり、そのほかにビジネスユニットごとに求められる、営業あるいはSE など、それぞれのプロフェッショナル的な研修といったものもあります。12頁にその内 容を細かく紹介しておりますのでご覧いただければと思います。  13頁は先ほど申し上げたコンピテンシーによる評価・育成、人事処遇制度の内容で す。従来から一部、その成果や業績を重視する処遇制度を入れてきておりますが、私ど もは2000年の秋に人事処遇制度の見直しをして、さらにそれを徹底するという意味で、 プラクティスファイルに基づく人事処遇制度を導入しております。先ほども少し申し上 げましたが、プラクティスというのは実際に成果につながりやすい行動として、社内の いわゆるハイパフォーマーと呼ばれている方々の行動様式を調査分析することによって これを類型化して、それを一般に公開するという形で実際に評価、あるいは育成につな げていくといった仕組みです。求められる行動あるいは必要となるスキルを明確に示す という形で、実際にその成果が得られるような行動がとれているのか、表に見える行動 という形での評価の軸、あるいはスキル(資格、語学)というところで、それを評価の 尺度にするといった仕組みを設けています。  一方、人事制度として会社の中にいろいろな資格等級があるわけですが、それぞれ等 級に応じたプラクティスを示しています。当然その等級に応じたプラクティスの達成度 合いによって評価もされるわけですが、逆に下位の等級の方からすれば、上位の等級の プラクティスが明示されていることによって、自分自身としての能力向上の目標が、あ らかじめ明示されているといったような仕組みになっております。機能ということで、 その辺を下にまとめてあります。あらかじめプラクティスを明示することによって意識 なり行動を変える、それを評価、育成の尺度という形で用いていくといったところで す。  このプラクティスについて15頁に記載しております。ここに記載しているのはプラッ トフォームプラクティスということで、これは全社共通のプラクティスです。大きく7 項目、企業倫理から責任感・率先ということで記載していますが、それぞれ資格等級に 応じて、それぞれの項目において求められる行動のレベルが違っていて、それぞれの等 級に応じた設定を行っております。このプラットフォームプラクティスは全社共通なの ですが、実はビジネスユニットあるいはその下の事業部ごとに、プロフェッショナルプ ラクティスというものも設けております。その数は全社でいま300から400ぐらいあるの ではないかと思いますが、実際にビジネスの場で求められる行動ということで言うと、 やはり職場によっても異なってきますので、全社共通のものをプラットフォーム、それ ぞれの職場、実態に合わせたものをプロフェッショナルプラクティスという形で設定し ております。  主任以下組合員については2000年からそういった制度を導入しました。管理職以上に ついては、私は組合という立場ですから、あまり細かく知っているというわけではない のですが、2002年度から「役割グレード制度」という形の制度が入りました。求められ る役割の大きさやポジションによって管理職層をいくつかのグレードに分けて、それで 本人が、仕事が変わってポジションが変わったというところで、また処遇を変えていく というような仕組みです。あらかじめ会社として求める役割なり行動といったものを明 示するという意味では、基本的な理念は全社共通ですが、管理職ということもあって、 個人の業績によって処遇の幅が相当大きく振れてくる仕組みです。  17頁目以降が「プロフェッショナル認定制度(NCP)」で、最初に簡単に触れさせ ていただきましたが、これはあくまでも社内の制度です。社内としてプロフェッショナ ル認定を行っていく。最初はコンサル系に行ってきたのですが、それを順次営業あるい はネットワーク系のSEにも展開しております。これについてはお客様にも認められる 高い能力、スキルについて、社内においても厳しく認定され、また、2、3年ごとに認 定し直しています。一回プロフェッショナル認定を受ければずっとそれが継続するとい うものではなく、期間をおいて改めて認定するという形を取っています。どういった能 力が求められるのか、NCPを受けるためにはどういう研修を受けなければいけないの か、あらかじめ明示させていただいた上で、自主的にチャレンジしてもらうことになり ます。合格された方については、いろいろ程度はありますが、最高水準で言えば、役員 並みの水準の報酬が約束されます。当然、仕事の出来映えによって相当大きく振れると ころですが、従来の会社の処遇のシステムからは少し独立したような、そういった報酬 の体系を持っているというものです。  19頁にトップメッセージということで、この仕組みを入れる際の社長からのメッセー ジを記載しております。目的としては、高い専門性を持つ人材を育てていきたい、輝く 個人を育てる。結果としてそれがお客様への価値の提供にもつながるというような仕組 みです。特徴としては、先ほども少し申し上げましたが、勤続年数や社内の職歴とは完 全に切り離して資格を認定し、それに相応の報酬を支払っていくというような仕組みで す。あとは、プロフェッショナル認定の所に記載してある内容ですので、ご覧いただけ ればと思います。  21頁はプロフェッショナル認定制度の資格体系ですが、プロフェッショナル認定は、 現行の組合員レベルから管理職レベルぐらいのレベルでアソシエイトからスペシャリス ト、特に現在の社内の資格とはリンクはしていませんが、当然お客様から求められる能 力なりノウハウといったものは、ある程度勤続なり経験に負うところが多いものですか ら、プロフェッショナル、上席のあたりになるとやはり部内部長級とか事業部長級、現 実的にはそういった方々が多くなっております。ただし受験資格に主任であるとか課長 であるとかといったことが定められているということではありません。SE系、サービ ス系から営業系で体系化されていますが、将来的にはやはり全社的にこのプロフェッシ ョナル認定が行えるという仕組みにしていきたいと思っています。  22頁目は「ビジネスリーダーの育成」ですが、ここはお読みいただければ結構かと思 います。教育の体系の中にも出てきておりましたが、将来のビジネスリーダーの育成を 目的として、Carreer Acceleration Poolという形で、選抜制の専門教育を行っている というものです。  24頁目からが「ライフタイム・キャリアサポート」という仕組みの紹介です。これは 今、会社としても力を入れているところですし、組合としても組合員のキャリア形成の 支援という観点で力を入れているところです。いろいろと事業構造改革が社内でも進み ますし、人材の流動化が企業内、あるいは企業の枠を越えて進んでいく中で、従来から 一つの会社に入って、ずっと同じ部門で働き続けるという環境も簡単には維持できなく なっています。一人ひとりのキャリアを考えていただく機会をもっと設けていかなけれ ばいけないということで、2002年ぐらいからライフタイム・キャリアサポートという仕 組みをとり入れてきております。その主な内容については25頁に記載しております。  まずキャリアアドバイスということで、首都圏それぞれの事業場に専門のキャリアア ドバイザーという職務を、人事部とは別に独立した組織として置いて、従業員が自分の 社内、あるいは社外でのキャリア形成に向けたアドバイスをいつでも受けられるという 体制を設けております。また、節目の研修ということで、30歳・40歳・50歳、それぞれ のタイミングで研修を実施しています。30歳では自分の行動特性を知る研修、40歳では 市場価値、自分の持っているスキルがいま市場の中ではどれぐらい求められているもの なのか。お金に換えてということではなくて、市場の中でいま自分がこれまで積み上げ てきたキャリアなり能力が、どれぐらい通用するのか、といったような気づきを与え る。50歳では、定年も見えてくるというところもありますので、これまでのキャリアの 棚卸、セカンドライフに向けた人生設計、マネープランといったところでの研修を行っ ております。さらに、社内での人材の流動化、自分で求めるキャリア形成といったとこ ろで言いますと、人材公募を設けていますし、役割グレード制度、管理職以上について は自ら手を挙げて違う部門に移動することができるポジションエントリー制度、あるい は自分が持っているスキルなりこれまでのキャリアを社内に公開することによって、他 の部門からの異動オファーを待つというレジュメの公開といったような仕組みも設けて おります。  こういった形で一人ひとりがキャリアを主体的に作っていく環境を整備していくとい った環境を整えております。また組合の活動としても、会社に対してこういった研修の 内容を充実させていくという働きかけを行うと同時に、今年の春闘あたりから、ライフ タイム・キャリアサポートからもう少し進んでワークライフ・バランス、自分の生き方 なりキャリア開発と仕事の調和を会社の中でどのように求めていくのか、どうバランス を取っていくのかという観点での取組みも始めました。  以上、ざっとした説明になってしまって申し訳ありませんが、NECの人材開発の取 組みということで説明させていただきました。 ○諏訪座長  それではご質問があればお願いします。 ○廣石委員  プロフェッショナル認定制度は、プロフェッショナルを認定できる仕事から導入した もののように拝察するわけですが、それ以外の全社的なものとして技量認定制度という のがあると承りました。この技量認定制度が大体どういうものなのか簡単にお話いただ いて、今までの職能資格制度とはどう違うのか、ちょっと解説いただければと思いま す。 ○梅本氏  技量認定制度というのは、社内で設定した教育の程度ということでの認定もあります し、逆に例えば簿記とかそういった公的な資格も含めて、その方が持っている技量なり スキルがどうなのかというところを認定し、社内で設けられている等級が昇格するとき に必要な要件という形で組み込まれているという関係になっています。プロフェッショ ナル認定は先ほどご指摘もありましたように、どちらかと言うと入れやすい業務から導 入したというところがあります。情報処理という関係で言えば社外、一般的にもいろい ろな資格認定の仕組みもありますが、今ネットワーク系というのが、本当にそのスキル をノウハウという形で明示できるのかと言うと、なかなか難しいといった中でなんとか 展開していきたい。営業系についてはパイロット的に試行中です。  職能資格という意味では私どもは従来から仕事給、資格給という制度を持っていまし て、それを2000年に廃止をしてプラクティスという形で設けてきたわけですが、従来持 っていた資格制度というのは、一般的な簿記何級とか、ああいった資格というニュアン スではなくて、NECの中では、職務遂行能力を中心に勤続年数などによって決められ ていたものです。それから人事制度を改定し、職務遂行能力というよりプラクティスと いう行動様式や保有するスキルをもとにした処遇制度に変えてきました。その中での技 量認定という形に、だんだん置き換わってきているというイメージかなと思っていま す。 ○廣石委員  そうしますと御社では職能資格制度みたいな、社内資格制度と言うのでしょうか、そ ういった社員を格付けする資格制度が別にあって、そのベースは現在プラットフォーム プラクティスのような、プラクティスによって格付けられたグレードシステムが組合員 にも存在し、そのグレードのアップについてこの技量認定制度を使うこともある、とい う理解でよろしいですか。 ○梅本氏  そういうことになります。 ○廣石委員  そうすると例えば技量認定制度、どのように認定するかという具体的な話になるわけ ですが、例えば人事部門だとどのようなところがポイントになってこの技量を認定する のか、ちょっとお話いただけますか。 ○梅本氏  私はこれが導入される前に組合に出てしまったので細かくは知らないのですが、例え ば社内で、そのプラクティスに応じて求められるネゴシエーションの能力とか、コーチ ングとかリスク管理とか、その教育の体系の中でいろいろとプラクティス向上の研修が 設けられていまして、おそらく人事などで言うと、目標管理なりコーチング、対話、そ ういったところが技量認定の中に入ってくるし、労務管理とか、そういった資格も当然 出てくるだろうとは思います。 ○廣石委員  わかりました。 ○上西委員  プロフェッショナルプラクティスが300から400ほどあるというお話ですが、これはど なたかが作って、改正されていくと思うのですが、そういうのはどういう風にメンテナ ンスされているのかお伺いできますか。 ○梅本氏  プロフェッショナルプラクティスはそれぞれビジネスユニットの人事部門が中心にな って作っておりますが、具体的な行動計画は、ビジネスユニットの中にあるいくつかの 事業部の計画部門で作成して、それをビジネスユニットの人事部門で取りまとめている という形になっております。当然、市場の変化は早いものですから、求められる行動が ずっと同じというわけではないということで、年に1回定例の見直しの時期を設けてお ります。このプロフェッショナルプラクティスについても全社に公開をしていて、自分 とは全く関係のないビジネスユニットのプラクティスファイルもすべて、誰もが見るこ とができる形になっております。 ○上西委員  例えば1つの仕事の単位の中で、プロフェッショナルプラクティスについていくつも レベルがあってということですね。 ○梅本氏  はい、そうです。 ○上西委員  大体いくつぐらいのレベルがあるのですか。 ○梅本氏  レベルという意味では、先ほどの処遇制度の中で細かくお話できればよかったのです が、私ども人事処遇制度として大きく、求められる仕事の進め方に応じて、社内を4つ の職群に分けております。A職群からD職群と呼称しておりますが、A職群は事務ある いは研究や開発を含めた技術の職場で、どちらかと言うと、自分の裁量で仕事を進めて いく、より成果が問われるといった職群の方々。B職群も同じく事務技術系ではあるの ですが、本人の裁量というところに重きをおくというよりは、過去からの経験なり業務 の積み重ねといったところで成果を出していくといった職群。C職群は製造の現場、技 能とか検査といったところで、D職群は本当に個別な、薬剤師とか運転手といったとこ ろです。A職群についてはその等級を大きく3段階に分けており、BC職群については 等級を6つないし7つに分けています。  プロフェッショナルプラクティスというのはA職群、B職群、C職群、またそれぞれ の職場ごとに定義されていまして、A職群は3階層に分かれ、BC職群については6、 7階層に分かれている。そのプラクティスファイルに記載された行動が、日常から行え ているのかどうかという判定を年に1回、それは上司と部下の面談の中で、その1年間 の行動の様式を確認して、翌年度、昇格をするのかしないのか、あるいは人事考課とい う形で評価につなげていく、といったサイクルになっております。 ○黒澤委員  資格制度がプロフェッショナルなりいろいろあると思うのですが、それらはどの程度 の範囲で適用されているのか、つまりグループ企業内を含めてなのかどうかということ と、電機連合など業界内でそういった技能水準というか、基準みたいなものの適用とい うか、その可能性についてはどのようにお考えになっているのかということが1点目。 もう1つは、自己啓発への支援ということで考えると、先ほど、リフレッシュ休暇につ いては今回は立ち消えになったということでしたが、そのほかにどのような制度がある のか教えてください。 ○梅本氏  グループ各社への展開ということについては、今お答えできる材料を持ち合わせては いないのですが、ひょっとしたら展開しているかもしれないと思うのは、グループ会社 の中でもSE系、コンサル系の業務を担当している会社もありますので、そちらについ ては場合によると展開しているかもしれません、そういう余地はあると思います。ただ 基本的には、この制度はNECの中の制度と思っていますので、グループの中にあまね く展開している状況ではないということは事実だと思います。一部には展開している可 能性があるかと思います。(→一部グループ内の技術系分身会社に展開していることを 確認しました。)  電機連合として、共通の軸で技量の認定ができる余地があるのかということで言う と、なくはないと思うのですが、まだそこまで論議が至っていないというのが実態で、 いま電機連合として、この能力開発等々で行っている動きは、これはもうすでに先生方 ご存じかもしれませんが、電機連合に「電機産業職業アカデミー」というのがあって、 この中で、大手企業はそれぞれの中でもできるが、そうでもない方々に対しても門戸を 広く開けていきましょうという形でやっています。今はそれぐらいかと思います。ただ 一部、国においてITスキルの標準化という動きがあり、会社から、それにNECも加 わっているというようにも聞いています。ですから、電機業界の中ではそういった標準 化をする余地は十分あるのではないかと思ってはいます。  2点目のご質問にあった「キャリア開発のための休暇」、これは事前に私どものほう にお越しいただいたときに、「とれなかった」というお話で差し上げたのですが、資料 の中に書かせていただいた「リフレッシュ休暇」というのは、研修とかを受けるとか、 そういったニュアンスからできたものではありません。従来、永年勤続表彰という、勤 続10年、20年、30年というところで休暇があったり、あるいは副賞として旅行券があっ たりという仕組みを持っていたのですが、それを、これまで何年勤めたかというのも非 常に大切なところではあるが、これからはキャリア開発という形で方針を変えていこう ということで、このライフタイム・キャリアサポートの30歳・40歳・50歳研修のほうに シフトしてきました。そういう中で、従来の永年勤続のときに勤続10年、20年、30年で 休暇があったものだから、それをなくすのもどうかということで、このリフレッシュ休 暇というのを残してはいます。ただ、これはどういうものに使っていただいても結構な のですが、せっかく、30歳・40歳・50歳のところで「気づき研修」をやっているので、 例えばそういうときに自分で「こういう趣味を生かそう」とか、「こういった資格を取 りたい」とか「こういう勉強をしたい」といったようなものに使っていただくことも考 えてみてください、というのがここで言うリフレッシュ休暇の趣旨です。  今年の春闘の中で取れなかったという「自己研鑽のための休暇」というのは、基本的 にキャリア開発といったところについては、ご本人の主体的な動機で一定の期間やって いただくということがベースになります。ただ日常の業務との関係の中で言えば、「ど うしても休みがなかなか取りにくい」といったところで、制度として能力開発のための 休暇の仕組みがあればいいということで論議したのです。引き続き論議はしていきたい と思っているのですが、半年間休んで取らなければいけない資格は例えばどういったも のがあるのか、あるいは本当にニーズがあるのかというところからもう一度調べ直さな ければいけないというところがあって、今は、この能力開発のためだけに使う休暇、あ るいは休職といったところについては、継続論議中ということで、まだ特には進んでい ません。 ○北浦委員  2つありまして、1つはキャリアパスのことです。5頁です。要するに、大きく技術 者と経営管理者層に分けているのですが、アソシエイトから出発してスペシャリストと いう所に引っ張っていて、そこからチームリーダーとの入れ替わりとか、こうなってい ます。つまり、すべて従業員のスタートがアソシエイトで、まずスペシャリストになる ことを志向させて、何かのスペシャリストになったところで、チームリーダーなり管理 群のほうへ行くという、そういう理解でいいのかということと、その後のパスの中で技 術群の中には、スペシャリストから一直線に上がっていくようなキャリアがあって、同 時にこの管理群が平行していますが、ここの間のジグザグはどの程度想定されているの か。つまり逆に言うとスペシャリストからチームリーダーになったら、あとは管理群だ けで上がっていくというようなこともあって。そうするとそこは従来型のいわゆる経営 管理層と、技術専門職層との分かれかなという感じがちょっとしました。つまり、早く からすみ分けたのかなという感じもしたので、その辺のパスの考え方が1点です。  もう1つは、そのパスの中にあるプロフェッショナルという存在は、先ほどの議論に ありましたプロフェッショナル認定の、これはすべての職群を網羅していないで一部の 職種しかありませんが、それを想定していることなのかどうか。そうだとすれば、将来 的にもっと広げたときは、プロフェッショナル認定をした者はここになるんだという位 置づけなのか、ここはそれとは違う意味で使っていて、あくまで認定制度は認定なのか ということです。  補足的にそのプロフェッショナル認定について、8頁のサイクルの中の評価プロセス の所にプロフェッショナルSEというのが出ています。これは認定プロセスではなくて 評価プロセスになって、むしろ報酬マターのほうになってきている。先ほどの話でかな り高い報酬をあげるということなので、つまり報酬の評価という感じで私は受け止めた のです。そうすると、逆に言うと洗い替えがあるのかどうか。つまり、一度高い評価を してしまった場合、その格付けを下げるということがあるのかどうか。報酬だと当然そ れはあり得るわけですが、認定した技量ということでいくと、いわゆるバックはない と、こういう議論になっていってしまうのですが、その辺がどうか。その2つですがよ ろしくお願いします。 ○梅本氏  これも私がお答えすることで、間違ったことを言ってしまうと申し訳ないのですが、 基本的に、プロフェッショナルとビジネスリーダーというところで言うと、実態として 今はジグザグと言いますか、行き来は当然あります。皆さんいろいろとスキルをお持ち で、どちらかしかないということではないのですが、例えばその本人として志向するの はどちらの部類なのかというところは、やはりある程度意識していただくというところ で、上に一直線に上がっていくようなイメージになっていると思います。しかし現実的 にはご本人の意向なり、あるいは、どうしても組織としての要請があって、プロフェッ ショナルからビジネスリーダーになっていただく方もいらっしゃいます。  アソシエイトからスペシャリストになったりということで言うと、入社をして、そこ でまず自分を高める努力をしていただいた上で、ある一定の水準になったところで一 度、自分としてどちらのほうに行くのかということを考えていただきたい、というよう な現れかと思っています。入社の入り口のときに、ビジネスリーダーあるいはプロフェ ッショナルということで、どちらを志向するのかという採用の形は、今のところ採って いません。基本的には、まず入社していただいて、配属されたところで、まずはそこで の専門性を磨く、まずはそこからだというようなイメージかと思っています。  5頁でいう上席プロフェッショナルとプロフェッショナルというのは、先ほどのNC Pの制度としてのものです。これはゆくゆくは、全社的に展開できればいいなとは思っ ています。  サイクルの所でのお話がありましたが、プロフェッショナルの評価ということで報酬 マターなのかと。技量認定制度のほうは、直接その技量をとって報酬につながるという ものではなくて、それが資格等級の昇格の要件になったり、結果としてつながるところ でもあります。一方、プロフェッショナルSE、プロフェッショナル認定制度というと ころで言うと、基本的な報酬という水準を、あらかじめ本人と会社の間で契約を結びま すという形になっています。やはりビジネスですから実際に成果が出る、出ないという ところで言えば、報酬は期待される成果が達成できれば高い報酬になるし、駄目であれ ば最低これぐらいといったところで、最初に定めたところまで下がってしまうというこ とになります。お客様から求められるスキルなり能力というものが、ずっと一定ではな いので、本人は最先端のものを求め続けていかなければいけない、あるときにそのプロ フェッショナル認定を受けて安住をしてしまって、お客様のニーズに合致できなくなっ たということになってしまえば、そこでまた認定から外れてしまうということになる。 そういった理解だと思います。 ○北浦委員  要するに、身分的には変わらないかもしれないけれども、個別契約に近づくのです ね。 ○梅本氏  どちらかと言うとそういうイメージです。 ○山川委員  先ほど、NCPの中に人材像定義とスキルセット定義というのがあるというお話でし たが、人材像定義というのはどのようなものか、もし具体例があったらお聞かせいただ きたいということと、プラクティスファイルと人材像定義等とは違うと理解してよろし いのか。その際にはプラクティスファイルというのは、評価の仕様ということですか ら、人事考課等において用いられるのかどうかという点。あとは確認ですが、役割グレ ードにおける役割の定義と言いますか、それも示すということなので、それはまた別の ものかという点についてお伺いできればと思います。 ○梅本氏  NCPの人材定義の所で、具体的にわかる材料を今持っていませんので、その点は申 し訳ありませんが、お答えができないという感じになります。  もう1つは、プラクティスは人事考課に使われるのかということだったと思います が、プラクティスファイルは人事考課に使われております。それぞれ等級に応じてプラ クティスファイルが示されて、その行動が常にできている、できていないといったとこ ろと、完全にそれだけではなくて、実際に出した成果なり業績を加味して、最終的に人 事考課を決定していますが、プラクティスも1つの要素ということになっております。  もう1つ、役割グレードの、役割とプラクティスということで言うと、役割というの はもう少し実際の業務に即したような、その人が実際に持っているミッションといった ようなところが中心になるかと思いますが、プラクティスという形で言うと、行動の様 式と言いますか、そういったところで若干ニュアンスが違っていると思っています。 ○廣石委員  こういったシステムについて、労働組合としてどのような判断をされているのか。先 ほどのお話で、個人の支援をするというところでは、大筋としてはよろしい、基本的に は一致しているのかなと拝察しますが、労働組合の目から見た問題点、こういったとこ ろはこうすべきであるというようなことがあったら教えてください。今の質問にもあり ましたが、単純に考えて、プラクティスファイルがあって、プロフェッショナル認定の 基準があって、技量認定もあってということですね。そうすると組合員としてあるいは 従業員として、まず自分のキャリアを考えたときに、何を第一の目標にすればいいのか ということになると、かなり概念が混乱し、自分は何をしたらいいのか、かえって迷っ てしまうのではないかなどという懸念を、外部の者からすると受けるわけですが、その 辺を教えていただければと思います。 ○梅本氏  基本的な方向というか、会社としてもそのキャリアの形成には非常に意を払ってもら っていると思いますし、私どもとしても求めてきたところからすると、人事上のシステ ムとして整備がされていたりというところからすると、その基本的な方向自体について 組合から、違うとか、ああだこうだと言っているような状況ではありません。それぞれ のキャリア研修の内容については、もう少し内容をわかりやすくとかいう話はします が、基本の方針について今組合と会社で違っているというようなことはありません。  組合としてこれから会社とどういう話をしていくかということで言えば、今その職場 で組合員が、キャリアというのをいろいろ考えてもらっているとは思うのですが、なか なか具体的に自分でイメージできない。と言いますのは、どうしても昨今の事業の環境 からすると、目先の業務をこなすのに手一杯で、立ち止まってキャリアを考えるという 機会をなかなか設けられないのではないか。そのために30歳・40歳・50歳、せめて節目 節目で何かやろうということで環境も作ってきているのですが、私どものほうから会社 に今後働きかけていくとすれば、そういった研修を、もう少し受けやすくする仕組みを なんとかしてつくっていけないのか。基本的には業務が優先ということになるわけです が、その業務優先ということばかりで日々頑張っている中で、ご本人が本当に幸せなの だろうかというところを、会社とも話をしていきたいですし、まずはご本人にもそのあ たりをゆっくり考えていただくというきっかけを作っていきたいなと、今思っていると ころです。 ○総務課長(妹尾)  廣石委員のお尋ねにも関係するのですが、こういう研修制度を運用する際に組合とし ては、何か具体的な関与はされるのですか。こういう制度を作れとか、もっと研修を増 やしてほしいと、会社側に要望されるということは伺ったのですが、実際の運営にあた って組合が、例えば制度を導入するときにはちゃんと組合の了解が取られるような仕組 みになっているとか、あるいはそれぞれの資格なり、それぞれの個々の制度の個別への 適用にあたって組合が関与するなどということがあるかどうか。 ○梅本氏  このような研修自体を新たに設定するといったときに、私どもで承認するなどといっ たことは現実的にはありません。先ほどのプラクティスファイルの話や、永年勤続に替 わるライフタイム・キャリアサポートのいろいろな研修をやっていくといったところ で、端的に言えば、プラクティスファイルに基づく人事処遇制度という形になっている ので、従来の人事処遇制度を大きく見直すという意味では、組合としても議決をした上 で導入をしてきました。ただ、日常の研修に組合が立ち会うとか、事務局といった形で 立ち会う研修、従来50歳の研修で、「セカンドライフを考えましょう」のようなものは 会社と組合と厚生年金基金といった所で一緒にやっていたりもしましたが、基本は会社 が運営をしているという理解でいいと思います。 ○諏訪座長  私もいろいろと聞きたいことがあるのですが、時間になりましたので、梅本様に対す るヒアリングはここで一旦打ち切らせていただきます。引き続き、株式会社フルキャス トの久保様に対するヒアリングを行いたいと思います。基本的には同じ要領で説明をお 願いいたします。その際、事前に委員から出ている質問等にも触れていただければと思 います。最初に、久保様のプロフィールを事務局からお願いいたします。 ○総務課長補佐(佐々木)  株式会社フルキャスト執行役員グループ戦略本部長久保裕様についてご紹介いたしま す。久保様は1993年株式会社三菱総合研究所に入社されました。2000年8月に同社を退 社後、イー・サムスン株式会社に入社され、10月からインターピア株式会社取締役を兼 任されております。2001年3月、インターピア株式会社顧問に就任され、翌月より2002 年2月まで株式会社ゲームオン代表取締役に就任されております。2002年4月から株式 会社フルキャストに入社され、経営企画部長に就任されております。10月からは執行役 員に就任されております。2003年4月から経営戦略本部長、翌月からはスリープロ株式 会社取締役を兼任されております。2003年10月から株式会社フルキャスト経営戦略担当 の執行役員に就任されております。2004年10月より現職であるグループ戦略本部長に就 任されております。以上です。 ○久保氏  今日はこのような委員会でお話をさせていただく機会をいただきまして、お礼を申し 上げます。経歴にもあったように、もともとはシンク・タンクでリサーチ&コンサルタ ントをやり、その後イー・サムスンという会社に移りました。韓国のサムスングループ が日本でベンチャーキャピタルのようなインキュベータをやっており、リサーチ&コン サルタントをしているときにベンチャー関係のコンサルティング等もやっていた関係 で、VCで仕事をさせていただき、インキュベータという形で各ベンチャー企業の立ち 上げの経験をいたしました。その後、株式会社フルキャストで経営企画をやらせていた だいているという経緯になります。  NECの梅本さんからは、会社としてかなりしっかりとした人事制度の中でのキャリ アプランのお話がありましたが、私どもは人材ビジネスで働く方々、特に若年層を中心 にビジネスをしていますので、その中でどのような取組みをしているのかを中心にお話 したいと思います。  最初に、当社はどのようなことをやっているのかについてお話いたします。1頁目は 当社の概要です。設立はいまから12〜13年前、今期で13期目になります。ここでいちば ん目を引くことは、「登録スタッフ数」で、現状の10月は95万人ぐらいの登録スタッフ がおります。アルバイトをしたい若い人達が登録をし、その人達に仕事を紹介するビジ ネスが中心になっています。端的に言うと、当社のビジネスの一番の根幹にあるもの は、仕事と人を結び付けるマッチングビジネスということになります。通常、クライア ントという言い方をしたときに、顧客は企業を指しますが、当社では2つあります。1 つはクライアントと呼ばれる企業ですが、もう1つはスタッフ、働いていただく方々が 私どものお客様です。その方々と企業を結び付ける仕事が人材ビジネスと考えていま す。現在、グループとしてフルキャスト以外に、関連法人その他は数が増えて9社あり ますが、これについては後ほど説明いたします。グループの従業員数は約1,650名、拠 点数はフルキャスト単体で200拠点を超えてきており、急激に拠点数を増やしておりま す。拠点とは一体何かについても後ほど説明いたします。  2頁目は当社についてですが、もともとフルキャストは若年層にアルバイトを紹介す る事業からスタートいたしました。お給料は日払いでお支払いし、登録をした方々から 明日仕事がしたいという連絡をいただくと、エントリーしてもらい、働いた後、その日 のうちに事務所に来てもらってお給料を払う、1回1回日払いのモデルです。つまり、 スポット事業という形で、(株)フルキャスト、(株)アパユアーズ、(株)アミュー ズキャストという会社で派遣・請負業を行っております。オフィス系の事業では、一般 事務が中心である(株)フルキャストオフィスサポート、今年の10月に設立した(株) フルキャストテレマーケティングではコールセンター事業を始めたところです。先般、 派遣法の改正で工場への派遣の解禁もありましたが、それも含めて請負・派遣両方を (株)フルキャストファクトリー、(株)フルキャストセントラルとしてやらせていた だいております。  フルキャストセントラルという会社は、トヨタ系のセントラル自動車、大昌工業との 合弁会社になります。フルキャストセントラルでは自動車系の製造を中心に、フルキャ ストファクトリーは一般の工場系、つまり電子部品、食品といったファクトリーの事業 をしています。フルキャストテクノロジーという会社は、技術者の派遣になります。他 は一般で言うブルーカラーの部分ですが、テクノロジーに関してはホワイトカラーが中 心です。技術者は当社の社員となり、特定技術者派遣という形で、プロジェクト単位で 技術者を派遣する、中心のクライアントはキャノン、ソニー、NECといった所で、製 造技術の開発系の技術者を派遣しているモデルになります。当初、フルキャストのスポ ット事業からスタートしテクノロジー事業までとどんどん領域を広げている企業だと言 えます。  ちょっと特殊な事業ですが、その他事業としてフルキャストスポーツがあります。規 模は非常に小さいのですが、スポーツ選手のエージェント事業をしております。例え ば、サッカーの日本代表選手である名古屋グランパスのゴールキーパー楢崎選手のマネ ジメント、特に若者が当社に登録してくることもあって、スポーツ選手と接する機会が あり、ブランディングの意味を含めてやっています。最近はスポーツをベースにして キャリアアップ、キャリアの展開などを計画していますが、この話も後ほど説明いたし ます。  フルキャストファイナンスは10月1日に新規企業として立ち上がったのですが、フル キャスト自身には登録者としてフリーターや学生がおり、その方々に対してカードを発 行し、カード事業をしていくという考え方です。フリーターの方々は与信等の問題でカ ードが発行できなかったりすることがあり、彼らを福利厚生的にサポートしていくこと からスタートしたビジネスです。このように、人材を中心としたものと、そこに付随し てビジネスで発展してきた会社と言えます。今、フルキャストがメインにしているスポ ット事業とは何か、フルキャストは具体的にどのような仕事をしているのかという点は 次頁になります。  ここに「物流内作業」「イベント」「セールスプロモーション」「アミューズメント 」とあります。物流の倉庫内作業は、ある意味で単純作業、簡単な作業です。例えば、 物が積んである所にピッキングをし、さらに回してパッキングをする、それを繰り返す という、作業としては単純なものが多くなります。イベントはもぎり、コンサート会場 の設営や場内整理などになります。クライアントが長期ではなく、そのときだけ人を非 常に必要とするケースが出てくるのです。1日単位という部分でいくと、その日に本当 に欲しいというときは前日の3時までのオーダーであれば、現時点では百人単位であっ ても応えることができます。  セールスプロモーションですが、最近街頭でよく見かけるIP電話のキャンペーンや英 会話スクールのキャンペーンでティッシュを配っていたり、そのための販売促進の人員 を私どもでアテンドさせていただいているというものです。アミューズメントは、ゲー ムセンターやアミューズメントパークなど、イベント施設での清掃の業務や構内整理と いう部分になります。このように変動の激しい、例えば週末は非常に人が必要だが平日 は必要でない、今の時期の物流であれば、冬物の出荷、年末のクリスマス商戦に合わせ てという場合、平常ならば必要はないが、その時期だけは人が非常に必要になるときの サポートをしているわけです。つまり、潜在的に市場があった部分が顕在化してきたと いうビジネスのモデルでスタートしています。  ビジネスのモデル的なところをお話すると、私自身がシンク・タンク出身ということ で、すぐビジネスモデルに置き換えて考えてしまうところがありますが、日払いや1日 単位のビジネスモデルというものは昔からあったわけです。ある部分で言うと、アンダ ーグラウンドのイメージもあり、実際にそのようなところは非常に多い世界だったと思 うのです。いろいろな人達を呼んで来て、その人達をその場所に連れて行く、この辺は 昔のモデルで、集める人達というのは、例えが適切でないかもしれませんが、ハンティ ング、狩りのモデルなのです。ある人達を連れて来て、そのまま抱えていろいろな所の 仕事に就かせることをやっていた人達がいたわけですが、当社の場合はきちんと登録を してもらい、面接をし、その人達の特性を理解します。  その上で、どのような仕事が向いているのかを含めて、そこをデータベースに登録を し、仕事のエントリーをしてもらう、そこでその人達を仕事にマッチングさせるので す。ある部分で言うと、牧畜のモデル、酪農のモデルです。広い意味で枠を抱え、その 中でさまざまな特性を持った人、例えば若者ならば若くて力もあるので重いものが持て る、体が頑強である、牛ならばお乳がよく出る、力が強い、つまり、その人達の希望や 特性に合わせて仕事をマッチングさせる。それをテータベースに登録していることで、 モデルが全く違うものだと認識しているのです。  最近の展開としては、そこに教育等を加え、研修等をし、付加価値を付け、さらにク ライアントに提供する。働く人達にもスキルアップをしてもらっています。ここは稲作 型というか、育てて、それを出していくという意味で、今までフラットにあるところか ら、そこに手を加えたり、希望に合わせて適正に配置していく。そのような意味では進 化してきているモデルなのではないかという認識を持っています。それ故に市場も拡大 してきているのではないかと思います。  4頁目のお客様のところですが、当社の強みの中には「前日オーダーにも対応」とい うことがあります。コストの削減やスタッフの労務管理、リアルタイムにオーダーがで きるといった点がメリットになります。5頁目のハイクオリティソリューションは、付 加価値が変わってきているという意味で、先ほど構内整理で単純作業という話をしまし たが、作業そのものは単純であっても、例えば物流管理士など、その場所でキャリアや ノウハウを得たスタッフのレベルが上がるのです。そうすると動線がおかしいとか、こ この配置を変えたほうがいいのではないかなど、そのような教育を受けた人にフィール ドコーディネーター、フィールドマネージャーという責任あるポジションに就いてもら います。  現時点ではピースレート、1個出荷したらいくらという形で、クライアントとビジネ スの契約を結んでいます。どちらかというと、1回いくらでドンというより変動性にな ってきますから、クライアントも出荷量に応じて価格が下げられるというメリットがあ ります。当社としても、能力のある人達をうまくコーディネートすることで、人数が少 なくても仕事の効率化が図れる、利減りをシェアしようという形のモデルです。ファク トリー系の事業で、新たにこのビジネスモデルを組み立てていくことで変わってきてい ることになります。コアになっているのは、実際に働いているスタッフです。  6頁目、先ほどもお話に出ておりましたが、フルキャストという会社自身は、スタッ フとして若年層を抱えているということで、現在非常にフリーター比率が多くなってき ております。今後の労働人口を考えていったとき、若年層はどんどん減ってくる。その 人達が働かなくなってくるということでは非常に問題がありますが、当社ではその人達 をうまく活用し、逆に働けるように、本当に社会できちっと働いてもらえるようにしよ うという取組みをいくつか行っております。フリーターと呼ばれる人達にはどのような 層があるのかについて、当社の中でもヒアリングをしたり、現実的に感じているところ を述べ、話を繋げていきたいと思います。  次頁は「フリーターの現状」で、「夢追求型」「やむをえず型」「モラトリアム型」 の3つの種類を挙げております。夢追求型は当社の中でも2〜3割程度、現時点で目的 を持ってフリーターをしている人達です。当社でスポーツ事業を行っているのも1つの 理由ですが、プロのスポーツ選手になりたい、プロのダンサーになりたい、演劇、芸能 人になりたいという人もいます。もう少し違った形では、士業と呼ばれる弁護士、会計 士といった資格を取る者、その場合は昼間勉強しなければならないが、家から通える人 ばかりではないのでお金もある程度必要になってくる、そのような人達の好きな時間に 好きな形で仕事をしたいというニーズに応えているわけです。  やむをえず型は、仕事を自分から辞めるというケースもあるし、会社の都合によって 退職し、次の仕事に就くまでの間、短期的に仕事をしたいというケースもあります。  モラトリアム型は一番問題だと思いますが、仕事に就くのはどうしようかと考えてい る人達です。モラトリアム型でも遊びたいし、お金も欲しいから、少しならば仕事に就 いてみようということで働く人達もいます。逆に、最近はニート(NEET)という言 葉も出ていますが、社会に出ていくことが不安であったり、学生のときに不登校だった 人が、その後、社会に出るのが大変ということで、ちょっとずつ働いて、その中で社会 に馴染んでいくケースは意外にあるのです。1日働いてみて、結構自分はできると思 い、次の日、また次の日と働ける、友達もできる、仲間もできるということになり、そ こから普通に就職するというケースもあります。その場合は親御さんに喜ばれ、お礼を 言われるケースもあります。ビジネスとして喜ばれるというのは、ある部分嬉しいこと でもあります。  現在のフルキャストのスタッフは8頁に出ていますが、18歳から大体40歳まで、黄色 の部分は男性、赤色は女性になります。18歳以上というのは、当社での登録は高校卒業 後ということからです。学校でアルバイトが禁止されているなどといったことを考慮し て、スタッフは18歳以上となります。見ていただくとわかりますが、20〜25歳という若 年層がピークで、26〜30歳となると減っていきますが、意図して採っていないというこ とではありません。登録を希望しても受付してもらえない、紹介をしないケースはある かという質問があったのですが、登録時に断わるということは基本的にありません。た だ、18歳以上ということでやっていますので、それ以下の人達は外していますし、外国 人の方々に関してはお断わりしています。これは就労ビザか就学ビザかが不明確なケー スが多いからで、現状は日本人に限らせていただいております。  登録をしても仕事がないというケースは極力ないようにしていますが、仕事のマッチ ングができないケースは出てきます。クライアントからの若くて荷物が持てて、運んで くれる人というニーズに対して、ちょっと荷物は持てそうもない40代の男性が行って は、クライアントが望んでいないというケースになってしまうので、そのような人に は、逆に、こんな仕事がありますがいかがですかという紹介をさせていただいておりま す。例えば、パッキングや力を使わない仕事を考えながら、その部分をうまくマッチン グさせています。  システムにおいては、AIのような形でキャリアを積んでいく、例えば構内作業や引 越等を何度もやっているという人達は、それだけキャリアが積まれていますから、その ような人達に対しては、クラスター制度によって、アシスター、サブリーダー、リーダ ー、サブチーフ、チーフという形で、回数だけではなく、そこにあるスキルを見ていき ます。スキルにおいても、クライアントと当社のコーディネートとの両方からの評価、 面接をする、実は非常に単純なところからやっているのです。キャリアと言えるのかど うかわかりませんが、「おはようございます」「お疲れ様でした」といった挨拶ができ るかどうかから始まり、だんだん上がっていくわけです。  サブリーダー、チーフになってくると、一緒に行ったメンバーをきちっとサポートす ることができるか、うまく指示することができるかといったことを評価されて、クラス ターという形で上がっていきます。日払いで働いているから給与が上がっていかない、 キャリアが上がっていかないということではモチベーションが保てないことになります から、このような形で階層を付けて、ちゃんとしたスキルを身につけた人に対しては昇 級してもらうことになっています。また、サブチーフ、チーフまで上がってくると、当 社に対するロイヤリティが高くなり、フリーターが当社の社員になるケースも非常に多 いです。  コーディネートをしていくことについて、ブルーカラーの人は非常に多いのですが、 先ほど挨拶が大切だという話をしましたが、実は起きてくることすらできないケースも 多いのです。これに対しては、「起きましたか」というモーニングコールから始めま す。次に、「家を出ました」という確認、最後は「現場に着きました」と3回確認をす るのです。起きましたと言ってもそのまま二度寝をしてしまう人がいるので、きちんと 仕事場に着くまで管理をします。  実際は現場の近くの駅に集まって皆で行くのですが、迷ってしまって遅れる人、連絡 をしても集合場所に集まらない人などがいます。そのような人達に対しては、お客様に 対しては許されないことであると、後で非常に怒ります。朝、拠点で何人かのスタッフ が予備のスタッフとして待っていて、行けなくなったとか連絡が取れなくなったという ことがあったときに、その人達を送り込み、クライアントのニーズに対応するわけで す。  10頁について、実際には1つのパターンだけではなく、スタッフとしてもいろいろな 仕事をやってみたいということで、さまざまなところにチャレンジができるというメリ ットがあります。また、昨年から福利厚生事業を始めました。仕事のエントリーをした り、面接の予約をしたりするのは携帯やパソコン両方からアクセス出来るのですが、今 携帯からのエントリー率が高いです。彼らは携帯を使っていろいろな情報を得たり、メ ールを送ったりするので、非常にパケット通信費がかかります。福利厚生のサービスの 一部には、そのパケット代削減サービスもあります。このサービス利用は無料です。そ れから住宅情報、旅行情報等、ある意味では他社との差別化を図り、スタッフに対する 福利厚生を充実させています。先ほど述べたように、スタッフもクライアントですか ら、その満足度を高めることに努めています。  11頁の正社員の登用についてですが、フルキャストのスタッフは95万人、このスタッ フからフルキャストのメンバーになってもらうことも多いです。スタッフとして働いて いると、毎日や何日かに一遍、働いた分のお給料を拠点に取りに来るのです。「君も今 日来ていたのか」ということで、スタッフ同士や支店の人間と一緒に遊びに行くなどと いうケースもあり、支店のコーディネーターや支払いをしてくれる人達と仲良くなり、 「僕もこの仕事に就いてみようかな。今度はスタッフをコーディネートする側に回って みようかな」という感覚になる。キャリアとして当社のスタッフ、内勤と呼ばれている アルバイトになると業務を覚えていき、社員となりその後様々な業務に対応出来る様に なり支店長になって、さらには本社の機能を担う営業の中心になっていくケースがあり ます。正確な人数は把握していませんが、おそらく2〜3割はスタッフ出身であると思 います。この間、経理の部長になった人間も元々はスタッフでしたし、システムの室長 をやっている人間も元スタッフで、本当にスタッフが多いのです。  もう一方では、物流の現場で技能が上がってきた人達は、フィールドコーディネータ ーとして契約社員となり、これについてもスタッフから社員になるケースが非常に多い のです。質問にあったものをいくつか補足すると、クラスター制度によるレベル別とい うのは、登録のときにはしていません。基本的に登録時は皆一緒です。そこから面接を したり、お客様とコーディネーターの両者からの評価によって上がっていく形になりま す。  実働日数は年8〜10日、これは1人当たりの平均で、1回、2回で辞めてしまう人達 もおります。テンポラリーで夏休みだけやる、冬休みだけ1週間集中してやるという人 達も多いのです。やむをえず型の人達がある期間だけ、就職と就職の間だけ働くという ケースもかなりの人数がいますので、平均すると8〜10日となりますが、実際は長く働 いている人もいます。年間で30日、60日という人達も多いのです。ただ、ピークの山 が、全体層でいくと10日前後がいちばん多いわけです。  3番目の質問ですが、短期のアルバイトを何度も行う場合、登録スタッフとして毎回 電話をかけなければいけないかというと、そうではなく今モバイルやPCでエントリー し、その際に連絡が来たり、仕事情報が流れたりする。単純なエントリーで出来るの で、労力そのものはあまりないから、何回か働こうということになるわけです。受入企 業にとって、毎回どのような人が来るかわからないという不安感はありますが、チーフ やサブリーダーの人達をご希望によりコーディネートすることも出来ます。単純作業を する人間は入れ替わっていきますが、そのような人達はある程度固定されますから、ク ライアントとしては心配や不安にはならないと思います。ただ、初回に関しては、どん な人が来るのだろうという不安を感じるケースはあります。  現時点で行っているグループとしてのキャリアプランについては、回覧していただけ ればと思います。これはフルキャストセントラル、自動車の会社ですが、写真なのでお 渡しすることは控えさせていただきました。セントラル自動車という製造メーカーにお いて当社がラインを借り受け、安全衛生教育、基礎知識の座学や工具・機械の実習など をセントラル自動車のOBの方々が行っています。そこでフリーターを含むスタッフの 方々を教育し、製造技術者へという形で、キャリアプランが立てられています。ケース によってですが、初心者の場合は数週間単位で行い、経験者の場合は3、4日という短 い単位で確認をするといった研修を行い、スキルをチェックした上で、クライアントに 人材をアテンドいたします。  フルキャストファクトリーでは企業の研修施設を利用した技能研修を計画中です。最 近、メーカーでは旋盤工、溶接工の技能学校のようなものを実際に持っている所が非常 に多いのですが、あまりニーズがない。何人も採る時代から変遷してきて、そのような 所の先生たちも余ってきているので、当社から行って、スキルをランク付けし、その人 達をうまくアテンドしていくことを計画しています。実際に研修所等を見学させていた だくところまで話が進んでいます。  フルキャストテクノロジーではエンジニアの部分を海外の研修施設、すでにアメリカ のサンノゼや上海には研修施設を持っているので、そこで3ヶ月から10ヶ月とプログラ ミングの技術を学んでもらいます。これは就職する前段階として受講してもらうので す。なぜサンノゼや上海かと言うと、プログラムなどの場合はすべて英語で行われるた めです。現実的には物価が安いので、生活も非常に楽であることから、コスト等を考え てのことでもあります。さらに、日本にいるよりも、環境が整った海外でやったほうが 集中して勉強ができる。最後には資格を取ってもらい、資格を取った人達は当社の社員 としてクライアントへ派遣するというモデルで、これはLSIの技術者等も含めて今始 めております。  フルキャストスポーツのセカンドキャリアプランについてですが、今スポーツ選手の 息は短く、若い内に終わっているということがあります。その人達が次に何をするかと いうことで、一例としてスポーツジムのインストラクターというお話をさせていただい ております。知名度のある人、経験者であるということは、ジムにとってもブランド力 の向上になるし、元々体を鍛えている人達ですから、教える技術さえあれば、インスト ラクターになれるわけです。キャリア的にもインストラクターからジムを経営しようと いうところまで見えてくる。最近はあるコンビニと話をしているのですが、店長として 欲しいというケースもあります。スポーツをやっている人達は労を惜しまず頑張るし、 明るい人達が多いので、そこの研修プログラムを学んでもらう。是非、そのような人材 が欲しいという話も出てきていますので、今後、フルキャストスポーツはそのような展 開をしていこうと考えています。訓練をして職業能力を開発するというよりも、キャリ アプランとして、彼らを今いるところから次のステージへ進めることができるかという 取組みも始めております。  最後に当社のモットー、経営理念は、「一人でも多くの人に輝ける場所を」というこ とです。人材の材を材料の材から、財産の財になるように進めていきたいと考えていま す。以上です。どうもありがとうございました。 ○諏訪座長  大変興味深い話を、短時間に要領よく説明していただきました。限られた時間です が、質問があればお願いいたします。 ○上西委員  長く働いている人もいるということですが、その場合も年間30〜60日であると伺いま した。普通のフリーターがコンビニやガソリンスタンドで働く場合に比べ、やはり短い と思います。それはなぜなのかを聞かせてください。 ○久保氏  ある程度目的型であったり、仕事をする期間が空いたりするのです。1週間働いたら 3日休みたいなど、自分の自由な時間がほしいという感覚を持っている人達が多いので す。自分の目的があったり、何か他にやりたいことがあったりというケースで、自由に 時間が使いたいという意図が一番大きいと思います。特に、バンドマンやミュージシャ ンをしている人達は結構働いていますが、1週間働いた後、練習があったりツアーがあ ったりで1カ月空いたりする。延べると30〜60日ですが、集中すると1カ月丸々働いた りするケースもあります。その辺は働き方の自由度、単純に平均した数字で見ることが できないのではないかと思います。 ○山川委員  グループ内でかなり違いがあるのではないかと思いますが、例えば自動車組立研修等 ではある程度長期的に働くことになるのではないかと思います。その場合、新聞で拝見 したのですが、転籍させてというか、転籍を受け入れて派遣するというパターンが、セ ントラルやファクトリーでは多いかどうかというのが1点です。  もう1点はごく抽象的な聞き方になりますが短期の在籍の場合、一般的な教育訓練投 資をしても、その回収がなかなかうまくいかないからしないということが多いと思いま す。このビジネスモデルは、そこを何とか乗り切っているということでしょうか。 ○久保氏  1点目について、基本的には再登録をしてもらうことになります。中長期になります から、所属が変わります。フルキャストからフルキャストファクトリー、フルキャスト セントラル所属のスタッフになるので、所属する企業が全く変わることになります。面 接も含めて再登録をしてもらうのです。実際には、やりたい仕事に手を挙げると、支店 も別になりますから、そこで紹介をし、再登録していただくことになります。ただ、半 分以上は、フルキャストから移るケースよりも、最初からそこを希望して来る人が多い と思います。おもしろい話ですが、セントラルなどの場合は、ずっと働いているという のではなく、就労する人達は北海道や沖縄出身が多く、採用拠点としているわけです。 実際に働いているのは、トヨタであれば愛知や東京近郊ですが、3カ月ぐらい働き、ま た戻って3カ月ぐらい休み、お金がなくなるともう1回というケース。ファクトリー系 のものは寮があって、その期間はお金を貯めて、またという就労の仕方をしている人も 多いのは事実です。それを希望しているのにNGと言うわけにはいかない。逆に、私ど もとしては、人が足りないケースが非常に多いので、もっと働いてくださいとお願いす る、派遣の形であれば全く問題はないので、そのような形でお願いしますと促しても、 辞めますと言われて困ってしまうケースもあるのです。不思議ですが、また数カ月する と戻って来てくれる、回遊魚のような部分があったりするのです。 ○山川委員  初期登録の人も半分くらいいるということですが、その中で、転籍者は必ずしも多く ないということですか。 ○久保氏  そうです。年齢層が明らかに違っています。フルキャストは20代前半から25歳までが 中心だったのですが、ファクトリー系になると、年齢層が少しずれて、25〜30代になり ます。長期的に働いて、場合によっては、その会社の社員になっていくケースもありま すが、登録者数を見てもわかるように、25歳と30歳ぐらいで1つの山が来るみたいで す。結婚したい、彼女がいるなどということから、定職にきちんと就こうという体勢に 変わってくる。それならば長期で働きたいというケースに変わってくるので、年齢層に ずれが出てくるのではないかと思います。  2番目の質問について、短期のものはキャリア構成で難しいのではないかと言われま したが、確かにおっしゃるとおりです。ですから、初期の研修は非常に簡単なものにな ります。初期研修では挨拶ができるか、危険な行為をしてはいけないこと、お客様に対 する態度、例えばガムを噛みながら話をしてはいけないなどということがあります。風 貌などは問わないのです。クライアントは茶髪やピアスを嫌がるのではないかと思われ るかもしれませんが、確かに、対面接客する場合は風貌がきちんとした人材を求めます が、構内作業をする場合は風貌は関係ないのです。バンドをやっていたりする人はピア スをしていたり、金髪であったりしますが、逆に、仕事はきちんとしてくれるし、礼儀 正しいところもあります。礼節をわきまえて、きちんと仕事をしてくれれば構わないと いうところと上手くマッチングさせていることはあると思います。初期の研修はOJT で、仕事の回数はきちっとデータベースに、つまり、どの企業で、どのような仕事を、 何回やったかということとクライアントの評価を履歴で残しているので、数回から数十 回になってきたとしても、その人のキャリア構成ができ、面接をして次のステップに行 くことが可能になるわけです。ある部分、IT技術が実態ベースの面で生きているので はないかと思います。 ○北浦委員  1回登録すると、登録はパーマネントなのですか。 ○久保氏  パーマネントになります。 ○北浦委員  パーマネントだから累計だということですね。 ○久保氏  おっしゃるとおりです。 ○北浦委員  年代別に見ると分布があるから、当然、ある年代になったら全然違うわけですが、そ の登録のメンテナンスのようなことはしないのですか。 ○久保氏  実質、アクティブで動いているという部分でいくと、登録を削除してほしいという話 もくるので、メンテナンスで削除しています。 ○北浦委員  それは申し入れがあった場合ですか。 ○久保氏  そうです。そうでない場合は登録者として残します。20代で働き、30代でもう1回来 たりするために持っている方もいます。登録そのものは生きています。 ○北浦委員  囲い込みの戦略としてはこのようなものがあることは当たり前ですが、それは全部他 のもので担保している、例えば、先ほどカードビジネスのことがありましたが、カード のメンバーにするといったこととリンクしているわけですか。 ○久保氏  まだカード事業は始めていないのですが、今後そのような形で、実質的には考えてい ます。 ○北浦委員  それを前提にした上で、先ほどの経営戦略の中で出ていたのですが、人員ではなく受 注量でいくというのがありましたね。 ○久保氏  ハイクオリティソリューションです。 ○北浦委員  その関係でいくと、新聞記事では、どちらかというと軽作業については請負から派遣 へという流れで出ていますが、こちらの話は、請負のほうが戦略的にはむしろメリット があるという考え方です。現実的には新聞記事とやや矛盾する気がするのですが、どち らなのでしょうか。 ○久保氏  クライアントから仕事を受けること自体は、派遣の形態でやることも可能ですし、請 負でもできます。ただ、今まで1人でやるとか、人数が少ないところには出せなかった のです。それが派遣になってできるというメリット。ハイクオリティソリューションに 関しては、基本的には請負型でノウハウをうまく使いながらやりたいという考え方はあ ります。ただ、クライアントとの契約で、派遣で対応することも十分にできるので、こ こは柔軟に対応できるようになっています。 ○北浦委員  ケースによるということですか。 ○久保氏  そうです。 ○北浦委員  ここからが本題ですが、そうなると、現場でのノウハウを集積させていくためには、 請負型のほうが集積しやすいだろうと思います。そこに持っていくポイントはコーディ ネーター、現場マネージャーだと思うのです。たぶん、そこにノウハウが集約されてい て、それがずっと繋がっていくのだと思いますが、コーディネーターやマネージャーに 対しての研修はしていないのですか。 ○久保氏  それはしています。先ほど述べましたが、物流管理士に近いという部分があるので、 物流関連の一般の知識等を教えたり、集まってケーススタディを結構しています。実態 ベースで、自分たちが経験知としてあったもの、その中で情報を共有し合うことによっ て自分たちのノウハウを貯めていっている。当社はスタッフから上がって、そのクラス になると契約社員になってもらっていますから、そこで新しいノウハウを作り出してい ます。物流のケースにおいては、システムの話でクライアントに提案をしてくる企業が 多いとのことですが、当社の場合、システムよりも人をうまく使うことのほうが効率的 であると考えています。  ハイクオリティソリューションを提供するときには、数カ月普通に入らせてもらいま す。その上で、フィールドコーディネーターを入れ、過去の事例等も照らし合わせディ スカッションをし、このケースに替えるということで現場を変えていくというやり方を します。キャリア構成と言うよりはOJTの積み重ね、組み合わせてノウハウを熟成し ているというところです。作業そのものは特殊な技術が必要だということではないの で、ノウハウを共有するということでの初期研修、社員になる段階での勉強会などで訓 練をしているということになります。 ○黒澤委員  部門によって全然違うと思いますが、例えば、フルキャストオフィスサポートではア ルパームという制度があるとのことですが、ある時期に登録した就業実績のある100人 のうち、1年後、2年後を見た場合、大体どのくらいがフルキャストのスタッフになる のか、あるいは他の企業に就職するという感触を持たれていますか。 ○久保氏  具体的な数値は感覚値になってしまうと思いますが、非常に母体の数が大きいので、 自社社員になっていくパーセンテージは数パーセント、1割にはならないと思います。 相手側の社員になってしまうケースも1割程度ぐらいのところだと思います。後の8割 はフローで動いている感じがあります。アルパームでおもしろいのは、猶予期間を持っ て、それから社員になっていくというパターンのときによく出てくるケースは、クライ アントが嫌だというのではなく、スタッフの方が、逆にここは遠慮したいと、比較的働 くほうが選択するケースが多いようです。この企業の雰囲気が嫌だとか、こんな問題点 があるから遠慮したいなどということでリタイアする。クライアントからその人は勘弁 してほしいと言われるケースはあまりないと思います。企業が嫌がるケースが多いとい う認識ではないかと思いますが、実際やってみるとそうではないのです。 ○諏訪座長  まだお聞きしたいことがありますが、予定時間になりましたので、久保様に対するヒ アリングも以上で終了させていただきます。梅本様、久保様、大変貴重なお時間を拝借 し、それ以上に貴重なお話をしていただきまして、どうもありがとうございました。  次回以降ですが、すでにヒアリングを3回行いましたので、これらをまとめ、どのよ うな方向で今後の職業能力開発の在り方を考えるかの議論を委員の方々にお願いしたい と思います。事務局より日程等のご案内をお願いいたします。 ○総務課長補佐(佐々木)  次回の会議は11月に開催することを予定しております。日程は後ほどご連絡させてい ただければと思います。ヒアリングはこれまで3回行いましたが、ヒアリング前にいく つかの企業にインタビューさせていただき、委員の皆様にお配りするのであればという ことで了解を得て概要をまとめております。席に配付させていただいておりますのでご 参照ください。 次回以降、今後の職業能力開発について具体的に議論をしていただくことになります が、進め方については座長にご相談しながら行っていきたいと思っておりますので、よ ろしくお願いいたします。  大変恐縮ですが、日程調整のペーパーを配付してありますので、ご記入いただき、お 帰りの際にお渡しいただければと思いますし、後ほど送付いただいても結構です。 ○諏訪座長  以上で第5回研究会を閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございま した。