04/10/12 第7回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会議事録          第7回雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会 1 日時 :平成16年10月12日(火)15:00〜 2 場所 :厚生労働省職業安定局第一会議室 3 出席者:委員  (公益委員) 松本座長           (雇用主代表)奥田委員、才賀委員、下永吉委員、林委員           (労働者代表)池口委員、池田委員、寺澤委員       事務局 大石職業安定局次長、吉永建設・港湾対策室長           小宅補佐、森下補佐、下出補佐       オブザーバー           職業能力開発局育成支援課 杉澤補佐           国土交通省総合政策局建設振興課労働資材対策室 藤田補佐 4 議題 :新たな建設労働対策の検討について 5 議事 : ○森下補佐  定刻になりましたので、ただいまから第7回労働政策審議会建設労働専門委員会を開 催いたします。出欠状況ですが、白木委員、冨田委員、笹田委員が所用のため欠席され ています。それでは議事に入りたいと存じますので、椎谷座長、議事の進行をお願いし ます。 ○椎谷座長  前回の会議は9月13日に開かれました。事務局から「建設業をめぐる状況」等につい て説明をいただいた後、委員の皆様に、新たな建設労働対策のあり方等について、言わ ばフリートーキングということで全般的なご議論を行っていただいたところです。本日 は、前回会合における委員のご指摘、ご議論の内容等を踏まえ、新たな建設労働対策の あり方等について、さらに議論を深めていきたいと考えています。  その前に、前回も委員の方から「こういう資料はないのか」というご指摘もありまし たし、事務局から新たに資料等が出されているので、まずそれの説明をお願いいたしま す。 ○下出補佐  本日配付している資料について説明させていただきます。本日はお手元に1番から6 番までの資料を配付しています。順を追って説明させていただきます。  ただいま座長からお話があったように、前回の議論の中で、池田委員から「中小企業 の実態について、データ的に何か示すものはないのか」というお話がありました。ま た、林委員から「労働者の労働時間や平均年齢といったことについて、何かデータ等は ないでしょうか」というお話がありました。その辺のことを含めて、現在の建設産業の 受注動向など景気観を含めて、最近の動向ということでご説明させていただきます。  まず資料1の1番で、「建設業の最近の動向」です。日銀短観が、先月9月に、建設 業の業況、雇用情勢について発表がありました。上の1番の業況判断ですが、全産業で 見ると、いちばん上の青いラインですが、昨年12月から上昇傾向にあって、9月に至っ ては、良い傾向のほうにプラス2ポイントという、最近の情勢を反映しているような数 値になっています。先行きとしては横ばい傾向でゼロぐらいになっています。果たして 建設業はということになると、全般的に大企業は昨年12月から上昇傾向で、全産業の傾 向と同じような形になっています。相変わらず9月でもマイナス13ポイントという値で すが、上昇傾向にあることが見えています。  しかしながら、中堅企業、中小企業という緑と赤のラインですが、3月程度まで持ち 直してきたところですが、また下落しております。9月においては、両方ともマイナス 32ポイントという、甚だ悪い傾向という情勢になっています。また、中小企業において は、特に12月の見込みでももっと下がって、年末に向けてまだまだ情勢は悪くなるだろ うという結果が出ています。  2番目の雇用判断です。これはプラスからマイナスにいくのが改善しているというこ とです。雇用情勢としては不足感がなくなり、全産業としてはよくなっています。建設 業を見ると、これも大企業においては、全産業と非常に傾向が似通っていて、だんだん と過剰感が解消されているという状況です。中小・中堅企業も同じような動き方をして いて、これもよくなったり悪くなったりですが、過剰感が依然として強いまま9月を迎 えています。12月の見込みとしても横ばい傾向で続いています。こういう雇用の過剰感 を見ても、中小・中堅企業はまだなかなか厳しいものがあるという情勢になっていま す。  続いて、最近の建設産業の受注高をデータとして拾ってみました。3頁の表をご覧く ださい。これは国土交通省の受注動態統計調査からいただいています。平成14年4月頃 から最近7月までの建設業の受注高のデータを挙げています。受注高の合計は、対前年 度比で、本年5月からプラスで、最近7月時点では1.7%のプラスに転じています。  しかしながらこの内訳を見ると、公共機関からの受注高は相変わらず低くなってい て、平成14年度12月以降はずっとマイナスです。しかし、民間からの受注高は平成15年 2月以降はプラスに転じています。本年7月では、対前年度比で14.4%プラスで、そち らで見ると、民間の受注動向がかなり好調であるというところです。5頁をご覧くださ い。これは地域別に分けていますが、このグラフ全体を見ても、上が公共機関の発注事 業、下が民間からの発注事業ですが、完全に民間の受注のほうが多くなっている傾向が 見てとれます。  同じペーパーですが、地域的にどうなのかということでこのデータを使っています が、全般的に九州、中部以西については順調な受注高を示しています。4頁を見るとそ の傾向がよくわかります。対前年度比の四半期ごとのデータです。ちょうどグラフの真 ん中が北陸と中部の境目ですが、これを西側にいくと全て上昇に向かっている傾向にあ ります。片や北海道、東北地方は低迷している情勢が表われています。全国計にあるよ うに、全体としては四半期ごとのこのデータで見る限りは、かなりマイナスも少なくな って、だんだんと上昇にあるという状況です。  6頁をご覧ください。資本金階層別に受注高を比較しています。この中で緑、オレン ジの3憶円以上の資本金を持つ大企業については、昨年第IV四半期以降はプラスに転じ ている状況です。しかしながら、1,000万円未満の中小企業においては、好調なときあ り不調なときありと、四半期ごとで見ているデータですが季節的な変動などがかなりあ って、不安定な受注動向にあると言えるのではないかと思います。  7頁の倒産件数です。これはよく使われている表なので見られているかと思います が、倒産件数は平成12年度をピークに減少傾向にあります。このときは全体で5,928件、 およそ6,000件の倒産件数がありました。その中で平成12年、平成13年、平成14年とほ ぼ横ばいの傾向で、平成15年に至って若干倒産が減りました。減ったと言っても、年間 で5,000件です。  問題は、その中で資本金百万円以上五千万円未満の中小・中堅企業の倒産件数が、各 年度も同じなのですが、80%以上となっています。およそ8割のエリアで倒産があると いうことで、やはり不況の波が中小・中堅にかなり厳しく当たっているということで す。しかし、この中で一億円以上の大企業の部分を見ると、平成12年の19から、平成15 年の45というように、徐々に増えています。これは1つの推測ですが、不良債権処理に 伴って、かなり大手の方々も倒産しているという状況にあるかと思います。  8頁は建設業就労者の個別のデータです。賃金についてのデータを見てみます。(1) として、「きまって支給する現金給与額」とあります。これは1985年のデータを掲載し ていますが、全体として徐々に増加傾向にあります。1995年からは横ばい傾向にあるか と思います。この中では、1,000人以上の大企業では、まだ若干の増加傾向にあります。 しかしながら、100人未満の中小企業では、この10年間以上ほとんど横ばいとなってい て、この辺の給与の格差があります。  なおかつ、このグラフの2003年を見ていただくと、100人未満と1,000人以上では、 月々15万円程度の格差がついています。これは全体の平均ですので、職種別に見るとま た違うのかもしれませんが、ザッと見てみるとかなりの格差があるというような情勢が 見てとれます。  (2)として、「技能労働者の職種別賃金」で、技能労働者について取り上げてみまし た。これは平成11年からのデータです。ここに出てくる技能職種は代表で、その他にも あります。それをトータルした技能職種の計でいくと、平成11年からは約600円弱程度 の下がり方で、そう大きくはないわけです。しかし、職種を各々見ていくと、大工、型 枠工、鉄筋工については、約1万円以上の低下傾向にあって、職種によって給与の低下 が激しく見えるという情勢がわかります。  9頁は労働時間についてデータを取りました。常用労働者の年間総労働時間です。こ れについては全産業、製造業、建設業という比較をしています。いちばん上のピンクが 建設業です。調査産業計、いちばん下の菱形ですが、これから比べても実労働時間がか なり多い状況です。直近の平成15年度では2,042時間で、まだ2,000時間を超えているよ うな情勢です。1,800時間を目標としている労働時間ですが、全産業としてはかなりそ れに近付いているということですが、建設産業については平成6年度あたりから横ばい 傾向のままですので、なかなかそのレベルに近付いていっていないという状況です。  2番目で、「建設業の事業所規模別の労働時間数」です。平均の月間総実労働時間数 で見ています。特筆されるのは、いちばん上の緑のラインが100人未満で、黄色のライ ンが30人未満です。100人未満の企業だと、常に月間の労働時間が、他の中堅・大企業 に比べてかなり多いという情勢です。平成2年度あたりは建設投資のピークでしたので 徐々に下がってきてはいるのですが、事業所規模別で見ると、こういう情勢になってい ます。平成14年から平成15年にかけては若干上向いています。これは景気の上向きなの か、労働者が一層減っているためなのかは定かではありませんが、このような情勢にな っています。  10頁は労働者の平均年齢についてデータを出しました。1番は産業別労働者の平均年 齢です。全産業、建設業、製造業で比較しています。いちばん上にあるのが建設就業者 です。全産業がいちばん下で、平成15年で40.3歳です。建設就業者は42歳で、約2歳ぐ らいの開きのある高年齢状態ということです。このグラフ全体を見ると、昭和55年から 平成15年にかけて、全ての産業で高年齢化が生じているわけですが、昭和55年の建設産 業と全産業の比較でいくと、2歳以上の大きな開きですが、だんだん年を経るごとにそ の差が縮小してきています。つまり高年齢化と言いながら、他産業も高年齢化して、建 設業のほうに近付いてきているという情勢です。  2番目は事業所規模別の平均年齢です。企業規模全体がブルーのラインです。企業規 模100人未満が三角オレンジでいちばん上です。100人未満の企業における平均年齢は、 ここでいう100人から1,000人の間というのは、最近ではいちばん低年齢になっています が、その企業規模と比較すると、中小企業の高年齢化は相変わらず高いものがあるとい う情勢です。以上、前回に指摘を受けた中で、主に企業全体の受注動向、それを中小企 業、大企業と比較をしながら、あるデータを見たところです。ご指摘の意見で、これが 十分尽きているかわかりませんが、何かの参考になればと思っています。  続いて2番目に移ります。「新規産業分野への進出事例」ということで、今回の検討 テーマの1つですが、新規成長分野への進出の支援ということもあります。そんな中 で、最近建設業からどのような分野へ進出しているのかを、一例として皆様にご紹介し ておこうということで、事例を集めてみました。  まず1頁の「一次産業関連」です。一次産業については、特区を使いながら、農業者 以外が農地を使うということで全国的にも出ているわけですが、一例としては、北海道 において、農業コントラクタ事業というのがあります。要するに農作業の請負契約作業 ということです。大型機械や人手を使いながら、牧場の収穫作業、堆肥の集積、家畜糞 尿の処理といったものをやる中で、従業員を最大限に利用し、建設機械も使いながら経 営しているという状況です。  2番目ですが、余剰労働力を有効に活用していくために、農業を生産から販売まで一 貫してやりたいということでやっています。その中でいろいろな知恵として、製材所か ら出た樹皮などを使って堆肥にして、それを有機土譲にして、有機野菜を無農薬で作る ということで、成功している事例です。  3番目は、重機サービス会社で、建設の大型機械を使用することを得意とする分野 で、農業従事の高齢化、後継者不足を背景に農業の生産法人を設立して営業していま す。こういった中で、高齢の農作業をやっていた方、やめた方、そういった方を雇用す るという、地域のためになる雇用の受け皿という面にも役立っています。  4番目としては、造園業をやっていた方が大規模の畜産経営に参入するということで す。造園業の中での草の刈取りや、剪定くずを利用したり、そういったものをリサイク ルし、畜産経営に役立てていくというものです。リサイクルということで、環境問題に も貢献するということで営業に役立っているということです。  5つ目は、青森県において、地元の青森ヒバの魅力を活かすために、芳香剤や化粧品 を開発したということです。その開発において工場を建設することで、地域の雇用もそ の工場で吸収できるというような取組です。  2頁で「環境・リサイクル関連」です。1つ目として、植物バイオやバイオマスエネ ルギーの研究を行うと。これは「ササユリ」という新潟県の一地域の花が、だんだん減 っているということで、このササユリを大量に増やしたいということから発展し、バイ オマスエネルギーを自動車燃料として使えないかという調査研究にも手を出していま す。  2番目として、スギ・ヒノキの樹皮をリサイクルできないか。この製品の特殊性であ る、抗菌性、弾力性、保水性を利用して、グラウンドや屋上緑化の土木資材をつくるこ とで、リサイクルにも寄与するということです。  3番目は、北海道ですが、地域の建設業者で7社程度が連携をして、その7社が共同 して、地質汚染や浄化に対して研究を行って、ガソリンスタンドの地質汚染はないのか という、「ガソリンスタンド健康診断システム」をやっています。  4番目、長野県においては、建設汚泥を何とか有効利用できないのかということで、 固化処理を行って、現場での処分、埋め戻し材としてリサイクルしています。この汚泥 リサイクルプラントを作る製造業、そういったものを使って農地をつくり上げる建設 業、それを使って有機農業を行う農業が三位一体になるメリットがあります。  5番目、家庭から出るゴミを焼却したときに生じる焼却灰溶融スラグを使って、コン クリート平板を作り、それを開発して販売することもやっています。  3頁で「建設業関連」です。これは建設業の得意分野のリフォームショップです。こ ういったものをやっていこうとしていますが、1番目では、通常の住宅リフォームでは かなり他社も出てきているということで、ガーデン・外構を中心としたリフォームをす るということで、新たなターゲットとして女性を狙って成功しているという事例です。  次の福祉住環境は、高齢者や障害者のためのリフォームです。こういったものを行う ために、自分たち自身が「福祉環境コーディネーター」という資格を取ります。こうい った資格を取ることによって、介護保険の中でどういうふうに増改築していくのかとい うことで、的確なノウハウを提供できるということで進めているところです。  その他、マンションです。マンションのいろいろな修繕、老朽化したマンションも多 数出てきているので、そういったものを修繕していくということで、新しい分野を見つ けたということです。  これもリニューアルと関係してくるのですが、次の「福祉関連」という業種について も進出しています。1番は完全に社会福祉法人を設立して、居宅・訪問介護事業から始 めて、特別養護老人ホームまで開設してしまったというものです。なかなか研究熱心に やっていて、県からも奨励されているところです。また、それにプラス付加価値を付け た2番目ですが、そういう介護事業に高齢者のための「よろず生活サービス」という、 高齢者のためのお役に立つということで、草取りや屋根の雪下ろしなど、手の届かない ところについて何でもやるということを、サービス業として建設業は取り組んでいると いうことです。  次の頁で、介護用の住宅補修、福祉用具の販売・レンタルです。これも同じくリフォ ーム、住宅改修に併せて福祉用具も販売・レンタルしようということで、また一層手を 広げてやっています。ここでも書いていますが、住宅改修をする際にケアマネージャー がその理由をつくらなければなりません。このケアマネージャーというのは、家屋の構 造などに詳しくないものですから、そういったためのアドバイスなどができることで、 非常に役に立っているということです。  「その他」として、面白いところでいろいろと集めました。北海道で、建築屋です が、住宅着工もかなり少なくなってきているということで、多角化を念頭にしながら も、理念としてサイドビジネスにしたい、過当競争になりにくいものを選びたい、その ときどきの流行りに終わらないというようなことで検討した結果、たまたま自分の土地 を掘ったら温泉が出てきたと。かなり当たって、近くでもう1本井戸を掘ったらまた出 てきたということです。これは十勝の会社なのですが、あそこはどこを掘ってもお湯が 出てくるのですが、なかなか当たったという事業です。  2番目ですが、京都においてはシネマコンプレックス、映画館をつくろうと。つくる だけではなく、京都市内の学生のいろいろな映像研究の場にしていくために、「映像文 化発信空間づくり」も一緒に目指していこうという、地域のための取組もやっていま す。  医療看護ソフト、精密機器の製造ですが、これは社長本人の意思が強く働いています が、IT産業、ソフト開発、それに加えて精密機器も実際につくってしまおうというこ とで、建築ロボット、IT、精密機械を組み合わせたユビキタス社会に貢献していきた いということです。  あとは、介護・清掃・警備事業への進出ということで、清掃会社をまず立ち上げて、 それから福祉部門、次には警備事業もやろうと。最初はなかなか苦労したわけですが、 現在は順調に売上げを伸ばしているということです。あとは変わったところで、自ら総 菜専門店をやろうと。総菜専門店をやる中で、パートタイムの主婦を使って、家庭らし い「お母さんの味」を提供することを売りにして、かなり営業収益が上がったというよ うな事業です。以上、ほんの一例ですが、全国津々浦々、いろいろな新分野への取組を しているところです。  5頁ですが、これまで新分野へ進出した取組事例の中で、私ども厚生労働省のほうで 助成金を支援しているわけですが、主に3つ挙げています。いちばん上の「新規創業の 場合」は、地域雇用受皿事業特別奨励金というのがあります。これは地域に貢献する事 業の法人を設立したら、それに対する助成をするということです。地域に貢献する事業 というのは、例えば住宅サービス事業や高齢者のケアサービス事業も入るので、大体の ものが地域の貢献事業になっているわけですが、そういった事業に対して奨励金を与え たということです。中でも、ディ・ショートスティサービス、清掃代行、ホームヘル プ、小規模のリフォーム事業、シックハウス症候群を防止するようなリフォーム、こう いったリフォーム事業、こういった法人を立ち上げた際の新規経費を助成した例です。  2番目ですが、新規成長分野に進出する際の雇入助成として、建設業以外の分野に進 出した際に、いまは名称は変わっていますが、中小企業雇用創出人材確保助成金という ものを出しています。これは雇い入れた労働者の賃金を助成するという事例です。これ については、建設廃材など木質系材料とセラミック混合の炭の製品化・販売、情報通信 システム、IT産業、製品の梱包・発送業務、鉄骨の販売業、産業廃棄物の処理業とい ったものをやるに際して、労働者を雇い入れるものに対して助成金を支給した例です。  3番目は、建設業に関連の新規事業に進出した場合です。その場合、その就労者に対 して教育訓練が必要であるので、訓練に要した経費、労働者に払った賃金の一部に相当 する額を支援するというものです。これは私ども建設・港湾対策室で所掌しているので すが、新規・成長分野進出教育訓練助成金というものもあって、以下のようなリフォー ム事業がかなりを占めています。あとは環境関連事業で、これは太陽光の発電機などを 設置する事業といったことで、訓練助成金を利用していただいた事例です。以上が新分 野に関する事例の紹介ですが、何らかの参考になればと思っています。  続いて3番目です。雇用改善の改善指標についてご説明させていただきます。私ども は、いま建設雇用改善計画(第六次)に基づいていろいろな施策を進めているところで す。これは平成13年度から平成17年度までの5年間ということで、建設労働者の雇用の 近代化、職業能力を高めること、労働環境の整備を図ることをテーマにして、5カ年計 画を組んでいます。  いまもう4年目になるところなのですが、このような計画の中で考えられている施策 ですが、2頁のIIIをご覧ください。こういった目標に向かって、どういったことをや るかです。つまり、「雇用の改善等を図るために講じようとする施策に関する基本的事 項」といったものが、この施策の基本になるわけですが、この雇用改善計画自体がどの ように改善が進んでいるのかといった進捗状況を、どう評価していくのかということが 必要だということで、この基本的事項の項目に沿って、その指標化を図って評価をする という取組をやっています。  そのテーマがIIIの中に入っています。1「魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整 備」。2「職業能力開発の推進」。3「若年労働者等の確保及び建設業に対する理解 の促進」。4「高年齢労働者及び女性労働者の活用」。このようなテーマに沿って、 中で具体的な統計資料等も用意できるようなもので指標をつくって、雇用改善の進捗度 合いを見てみようと。この取組自体についても、4頁の5の(7)ですが、この計画に おいて、「雇用改善指標を活用したきめ細かな雇用改善の推進」をしようということ で、いまお話したようなことを取組としてやっています。  5頁以降はその説明がありますが、この指標の取りまとめに当たっては、今日は欠席 していますが、冨田先生を座長とする検討委員会でいろいろと考えられて、このデータ をつくっています。平成14年度からこれをやっていますので、データについて若干アッ プデートする部分があります。その辺はこの改善計画も来年度いっぱいですので、再来 年度の改定に向けてはまたこの辺の取組をいたしますが、現状のあるデータについて若 干ご説明させていただきます。  5頁をご覧ください。指標として考えているのが5、6頁です。過去といまを比べて 建設業自体がどう変わっているのか、それを全産業と比較した場合にどうなっているの か、製造業と比較した場合にどうなっているのかという、大きく3つの分野に分けて、 各々をこの指標によって判定しています。判定する対象としては、おおむね5〜10年前 と、最近時点とはどう変わっているかということです。  指標を簡単に説明いたします。5頁にあるように、「魅力ある労働環境づくりに向け た基盤整備」という項目の中で、「賃金」としては、30歳から39歳がいちばん給与的に 安定する時期ではないかということで、30歳から39歳の女性、男性、学卒別にデータを 取っています。それから、「不安定な雇用形態の安定」ということで、常用化の率や月 給化の率を比較しています。次に「時短」で、労働時間の問題です。総労働時間はどう だろうかということです。「休暇取得」で、完全週休2日制は取れているのか、年次有 給休暇の取得率等について、指標を設定しました。「労働災害防止」は、安全管理者の 選任状況や、企業規模別ですが、労働災害の発生率、度数率、強度率といったもので比 較しています。  次の頁で「社会保険の加入促進」ということで、厚生年金の加入状況や、雇用保険、 日雇労働者の日雇労働者被保険者というものの比較です。「退職金制度の整備」という ことで、退職金制度が導入されているのかです。「その他の福利厚生」、これはちょっ と特殊ですが、女性が対象ですが、育児休業規定や介護休業規定があるのかないのか。 「雇用管理体制等の整備」で、雇用管理者の選任や、雇入通知書が交付されているのか という情勢です。これは建設業独自ですので、建設業内だけの比較になります。  それから「職業能力開発の推進」ということで、職業能力開発計画、訓練の実施状況 などです。これは建設業だけで見ると、これは2000年のデータしかないので、他の製造 業などの比較にしかできないのですが、そういったものです。「若年労働者の確保」と いうことでは、中卒、高卒者の離職率や、充足状況です。「高年齢労働者及び女性労働 者の活用」の項目では、定年制の導入、女性労働者の占める割合といったものを比較し ています。  これを端的にグラフで見たほうがいいのかと思うのですが、7頁をご覧ください。 「進捗度」とありますが、建設業自体が、5〜10年前から最近時点にかけてどう変わっ ているのかということを示しています。最近時点を1としているので、この点線が5〜 10年前です。内側に点線があるのは、現在が非常によくなっているものです。外側に点 線があるのは、現在のほうが悪いという読み取り方をしていただければよろしいです。  ここでいくと、「その他の福利厚生」「社会保険加入促進」「時短」「休暇取得」が 改善傾向にあります。しかし「雇用管理体制等の整備等」がちょっと劣ってきていると いう情勢です。  下のグラフは上の表をまとめて、これを全部1つにして、「魅力ある労働環境づくり に向けた基盤整備」、その他2つの「若年労働者の確保」「高年齢労働者及び女性労働 者の活用」、この3つにおいて比較した図です。同じく、これは高年齢労働者及び女性 労働者の活用に関しては、若干悪くなっているように見ていただければいいと思いま す。  同じようにして、これを全産業と製造業とで比較しているので、10頁をご覧くださ い。全産業を1とした場合です。これより内側にあるもの、建設業はあまり改善が進ん でいないと見ていただければいいと思います。上の表でいくと、労働災害や退職金制度 はいいのですが、休暇や福利厚生についてはよくない情勢です。下の表は、総じて全産 業に比べれば建設業は全て内側にあって、もう少し改善が必要と言えます。  それを13頁の製造業との比較で見ると、これも全産業と同じような傾向にあります。 雑駁なグラフですので、細かく見ればまた違うのですが、このような情勢にあるという ことです。このようなことが雇用改善をどのように改善しているか、その進捗度を表す 1つの手法なのかと思っています。  4番目の「雇用改善助成金」です。ただいまの雇用改善計画を推進していく中で、私 どもとしても雇用改善助成金を活用して、雇用改善を支援していくことになっていま す。その中で諸種の助成金があります。この助成金は平成15年度はどのようなものがあ って、どのように改廃されているかをご説明させていただきます。平成15年度の助成金 としては、教育訓練の助成金ということで、1種、2種、3種、4種とあります。1種 は認定訓練の助成金です。2種は技能実習の助成金です。3種は訓練法人の助成金で す。4種は訓練をさせた場合の賃金の助成金です。  次の頁で、雇用管理研修の助成金が1種、2種とあります。1種が経費、2種が賃金 です。福利厚生の助成金ということで、作業員の宿舎、食堂、休憩室、健康診断などの 助成金です。それから、雇用改善推進事業助成金ということで、実際に雇用改善を行う 上で、雇用管理上の課題に対応するために事業を実施する経費の一部を助成するという ものです。平成15年度はこういう体系で行っていました。  平成16年度は、私どもでトータルプランというものも始めることになりまして、そう いったものを受けて、助成金も若干組み替えました。1頁をご覧ください。●が付いて いるものが改変したものです。共同訓練というものはそれを受給する上でのいろいろな 条件もあって、受給が非常に少なく、一旦廃止するということでやめています。下の 欄、第4種の再就職援助措置というのも、新しいトータルプランに伴う需給調整の支援 金をするために廃止しています。2頁です。福利厚生助成金のうち、リフレッシュカー と全天候型仮設屋根とあります。これはやる事業主の方々も非常に少なくなっているの で、廃止にしようということでやめています。  新規として、2頁のいちばん下の右側にあるように、無料職業紹介事業を実施してい く場合に、その諸経費を助成しようという、需給調整の絡みの助成金を新設していま す。3頁で、建設業の労働移動支援助成金ということで、平成15年度は建設業の労働移 動支援金を設定したわけですが、なかなかそれを使っていただける方が少なかったの で、平成16年度はトータルプランの新設とともに、建設業労働移動円滑化支援助成金と して、建設業労働移動支援定着促進給付金を若干講習期間を下げた中で、使いやすいよ うに改善しています。それから、労働移動支援能力開発給付金として、先ほどの再就職 支援の措置の代わりに、離職を余儀なくされた労働者に講習等を実施する場合の経費、 講習を受けさせた場合の賃金の助成といったものを新設しています。  先ほど飛ばした、雇用改善推進事業助成金というものが1種、2種、3種とあったわ けですが、これを改変しています。5頁をご覧ください。今回の検討テーマの1つに、 「技能労働者の育成・確保の促進」というのがあります。技能労働者の育成・確保の取 組をする上で、昨今ですと、中小企業者の方ですと、実際企業経営も苦しいという中 で、十分な教育訓練ができないといったことがあります。そういったことを踏まえて、 共同化・広域化といったものの取組について周知徹底を図る、そういった取組を重点項 目に据えるということで、それに合わせて1種、3種を統合して、1つの目標団体に対 する助成をしようということで、新たに1種、2種の2つに区分して、この助成金を改 変しています。  先ほど言ったように、共同化・広域化、教育訓練を周知徹底する場合については、そ れを重点項目とし、助成率も通常の2分の1を3分の2に引き上げるというような改善 をしています。この辺については今後の検討ですが、共同化・広域化というテーマに沿 って、例えば訓練法人などに対する助成措置を上げる必要もあるのか、あるいはいま野 丁場等に限っていますが、それを町場の職種にも拡大するかなど、そういった取組が必 要になるかもしれません。  5番目です。これは前回池田委員から「ワンストップサービスセンターとはどういう ものか」というお話があって、今回国土交通省が主体となって、新規成長分野への連携 の取組といった中で、「ワンストップサービスセンターによる新分野進出の総合的な支 援」を行うということで、いま検討を進めているところです。  これの目的ですが、黄色のいちばん上の枠にあるように、いわゆるワンストップサー ビスセンターのことですが、中小・中堅建設業者の新分野への取組を円滑にするため に、建設業者に関連するサービスを1カ所でまとめて受けられるといったものを、都道 府県ごとに設置して、これを国土交通省、厚生労働省、経済産業省などが、連携して支 援をするということです。  事業のイメージとして、国土交通省は、いちばん左側にあるように、新分野進出に係 る情報提供業務や以下のようなことです。厚生労働省では、社会保険労務士など、労務 関係の専門家による雇用対策の活用促進のための相談援助などです。経済産業省では、 中小企業の経営問題解決を支援するための専門家の派遣や、セミナーの実施です。これ を都道府県の建設業団体のほうに設置し、トータルしてサービスを受けられるようにし ていってはどうだろうかというような取組です。  この取組に関しては、来年度の予算化に向けていま検討している最中です。できるだ け1カ所でこういう指導、助言、情報なりを得られれば、新分野進出への取組が積極的 に進むのではないかということです。 ○森下補佐  引き続きまして、資料6です。これは、現行の制度の中で労働力の需給調整のための 仕組みとしてどのようなものがあるかを整理したものです。  1頁目、まずは職業紹介です。定義としては、求人及び求職の申込みを受け、求人者 と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすることです。この職業紹介には、有料のも のと無料のものの2種類があります。したがって、その取扱職業の範囲が若干異なって おります。それが2の(1)です。有料職業紹介のほうは、港湾運送業務、建設業務以 外の職業については可能です。すなわち、港湾運送業務と建設業務については禁止され ているということです。その中で、特に建設業務ですが、詳細に申しますと土木、建 築、その他の工作物の建築、保存・修理、変更・破壊、もしくは解体作業、すなわち現 場において直接作業に従事することを指しています。一方、無料の職業紹介については 特段の制限はありません。したがって、建設業務についても可能になっております。  職業紹介に関する「許可・届出制」に関することが3番目です。(1)にありますよ うに、有料職業紹介については許可制をとっておりまして、新規のもので3年、更新の もので5年となっています。一方、無料職業紹介のほうも原則許可制にしておりまし て、有効期間は5年としております。ただし、これには例外が1つついておりまして、 (3)にありますように、学校等が学生や生徒を対象にして行うもの、あるいは農協等 特別の法律に基づいて設置された法人が構成員を対象として行うものについては届出で よいという措置がとられています。現在の状況としましては、いま有料職業紹介事業を 行っている事業所数は約7,000、無料職業紹介を行っているのは約500超となっておりま す。  4番目は手数料です。(1)の1が原則で、求人者から徴収する手数料は不要です。 ただし、2に書いてありますように、1を超える手数料を徴収する場合は厚生労働大臣 に届出が必要であるという仕組みです。一方、求職者から徴収する手数料がどうなって いるかですが、1は原則として徴収は禁止となっております。(2)求職の受付手数料も 徴収は禁止です。  紹介に係る労働者保護あるいは需給調整の円滑化のためにどのようなルールが敷かれ ているかです。(1)は、紹介事業者等による個人情報を適正に管理しなさい、あるい は保持している秘密についてはちゃんと厳守してください、といった規範が設けられて おります。(2)は、労働条件の文書を明確に提示しなさい。賃金や労働時間等の基本 的な条件については文書によって明示をしなければならないということです。(3)は 適格紹介。(4)は、職業紹介の責任者を選任しなければならない。(5)は、適切に 対処するための指針を厚生労働大臣が定めて公表しなさいといったことが掲げられてい ます。  6は、職業紹介に関して相談あるいは援助、指導監督についてどのような仕組みがあ るかですが、紹介に関する違法事案に対しては、求職者が申告することができる仕組み をとっております。その公共職業安定所によって、求職者に対して相談・援助を行うこ とができる仕組みも併せて設けております。また、(2)にありますように、違法事案 に対しては、各都道府県の労働局によって指導・助言、改善命令が行われることになっ ております。以上が紹介です。  4頁目以降は派遣です。まず、派遣の定義です。これは労働者派遣法に定義されてい るものですが、「労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受け て、当該他人のために労働に従事させることをいう」ということです。下の図を参考に ご覧いただきたいと思います。派遣元と労働者の間では雇用関係が成立します。一方、 派遣先と派遣労働者の間は指揮命令関係にあります。雇用関係と指揮命令関係が分離す るなど特別な形態をとるものです。  2番目ですが、派遣の適用除外業務の範囲が定められておりまして、港湾運送業務、 建設業務、警備業務につきましては派遣事業を行うことができないとなっています。若 干付言させていただきますと、建設業務にはどんなものが入っているかですが、先ほど 職業紹介のところでご説明しましたように、工事現場において直接作業に従事するもの と定義されています。ホワイトカラーは主任技術者や管理技術者を設置しなければなら ないと規定されており、そうした者は的確な資格あるいは技術力を有する、あるいは現 場に常駐して、請負事業者と直接的な雇用関係があるといったことが、建設業法の趣旨 としてありますので、主任技術者や管理技術者については派遣の対象とならないという ことです。すなわち、建設業法の世界等ではなじまないといったことが規定されている わけです。  3番目は、許可・届出制です。特定労働者派遣事業は常用雇用労働者のみで派遣労働 者を構成する場合がありますが、これについては届出制です。常用以外の者も含む場合 は、一般労働派遣事業として許可制を設けております。現状としましては、一般労働者 派遣事業は約1万事業所、特定労働者派遣事業は1万4,000程度となっています。  4番目は派遣契約ですが、派遣の内容等については、派遣元と派遣先の間で確定させ なければならないことが書かれております。5頁の上の(2)につきまして、「特定行 為の禁止」というものがあります。派遣契約の締結に際しては、派遣先が面接や履歴書 の送付を受ける、すなわち派遣労働者を特定することを目的とする行為は、一切禁止を されているということです。  5の「派遣受入期間の制限」ですが、(1)にあるように、派遣を受け入れることが できる期間は最長3年です。(2)ですが、派遣受入期間の制限がない業務も一方で定 められています。  6の「雇用期間の申込み義務」といった規定も定められています。6頁の上の(1)、 (2)に規定しているような状況や場合においては、派遣先は労働者に対して雇用契約の 申込みが義務づけられることが規定されています。派遣受入期間の制限がある業務につ いては、それを超えて労働者を使用しようとする場合が挙げられております。  7番目に「紹介予定派遣」があります。これは労働者派遣のうち、派遣元が派遣労働 者、あるいは派遣先に対して職業紹介を行うことを予定しているものです。派遣の期間 を経ますと、直接雇用に移行していくことを念頭に行うものです。この場合、(2)に ありますように、派遣先は面接や履歴書の送付要請など、いわゆる先ほど申しました派 遣労働者を特定することを目的とする行為も行うことができるわけです。  8番目、「派遣元事業主の講ずべき措置」としましては、個人情報の保護、あるいは 就業機会、教育訓練の機会の確保などが挙げられております。9番目では、派遣元が講 ずべき措置と並んで、派遣先に対しても講ずべき措置が設けられています。(1)〜 (5)に掲げてある事項について、派遣先は一定の措置を講じなければならないという ことです。  10番目は、「労働基準法の適用に関する特例」です。一定の規定については、派遣先 の使用者を労働基準法等における使用者とみなすといった特例もあります。例えば、安 全衛生に関しては、設備の設置や管理は派遣先が負うわけですが、従業員の健康診断な どは派遣元が担うといった一定の役割分担があるわけです。派遣については以上です。  8頁目ですが、派遣等の関連で出向についても簡単にご紹介しておきたいと思いま す。出向については、在籍型出向と移籍型出向があります。1の在籍型出向は、図に掲 げてありますように、出向元と労働者、あるいは出向先と労働者、いずれの間にも雇用 関係が存在するものです。形態としてはいろいろ多様なものがありますが、雇用主とし ての責任はイにありますとおり、取り決めによって出向元と出向先が負うことになって おります。一方、2の移籍出向型は、出向元との雇用関係は終了、あるいは切れており まして、出向先事業主との間にのみ雇用契約関係が存在するということで、当然のこと ながら雇用主としての責任は出向先のみが負うことになっています。  派遣と出向との関係ですが、移籍型については1に書いてありますように、労働者派 遣には該当しません。9頁のイにありますが、在籍型出向は労働者派遣に該当するもの ではないということですが、場合によっては労働者供給事業、これは労働職業安定法に よって禁止されている労働者供給事業ですが、それに該当することがあり得るので注意 が必要です。  ウに書いてありますように、労働者を離職させるのでなく、関係会社において雇用機 会を確保する、あるいは経営指導や技術指導の実施、職業能力開発の一環として行う。 企業グループ内の人事交流の一環として行うといった目的で行われている場合には、そ れが業として行われていると判断し得るものは少ないと考えております。こういった形 で、出向と派遣の概念が整理されているわけです。  10頁目ですが、派遣制度と関連して港湾労働者派遣制度というものがあります。労働 者派遣法については、港湾運送の業務、船内作業やはしけ作業、沿岸作業、いかだ作業 などがありますが、こういった業務は労働者派遣事業の適用除外となっています。ただ し、(2)にありますように、平成12年に港湾労働法を改正しまして、厚生労働大臣の 許可を受けて行う場合に限り港湾労働者を派遣することができる制度を導入しておりま す。  2でその概要を述べておりますが、港湾事業主が自己の常時雇用する労働者(常用労 働者)を他の事業主の指揮命令下に置いて業務に従事させる制度です。下の図のとおり です。派遣元と派遣先の間をあっせんする者として、港湾労働者雇用安定センターとい う国が法律に基づいて指定した機関が、その中に介在して間をつないでいます。また、 その労働者は常時雇用する常用労働者です。  3で「制度の概要」を掲げております。先ほど申しましたように、まずは厚生労働大 臣の許可が必要です。港湾労働法の世界で適用しておりますので、その適用対象港湾に 限られております。適用対象港湾は、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門の6大港 に限定されています。それから、常時雇用する港湾労働者に限られていること。なお、 これは留意点なのですが、専ら労働者派遣を行う事業の実施を認めるものではないとい うことです。許可の有効期間は、新規が3年、更新で5年となっております。さらに港 湾労働者派遣事業の特色として、11頁ですが、派遣料金が適正なレベルに設定されてお りますし、派遣日数についても月7日という上限が課せられています。制度の対象者 は、派遣される労働者のうち事業主が常時雇用している者です。(4)にありますよう に、国が法律に基づき指定した港湾労働者雇用安定センターが情報収集あるいはあっせ んを行っています。  12頁ですが、派遣と似たような概念として「請負」があります。請負は民法上の概念 でして、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に 対しこれに報酬を与えることをいう」ということで、下の図のように労働者と請負業者 との間に雇用関係・指揮命令関係が成立するわけです。したがって、労働者と注文主の 間には指揮命令関係はありません。請負の概要は図のとおりでして、雇用業者が雇用主 で、請負業者が労働者に対して指揮命令権を持っています。  3の(1)ですが、取扱業務は紹介業務や派遣といった分野と違って、範囲について 限定はありません。しかしながら、(2)にありますように、労働関係法令や業法は遵 守しなければなりません。(3)では、請負と派遣の違いについて基準がありまして、 それを紹介しています。1自己の雇用する労働者の労働力を直接利用するものであるこ と。2請け負った業務を自己の業務として相手方から独立して処理するものであるこ と。大きくこの2つからなっております。1については1)、2)、3)のような規範 が定められております。2についても、自己の業務として相手方から独立して処理しな ければいけません。すなわち、資金面や機械や設備などを自分の責任でやっていただく ことが必要であるということです。  14頁は、需給調整を直接の目的とした仕組みではありませんが、関連する仕組みとし て紹介します。ジョイント・ベンチャーですが、これも民法上の概念で、数社が共同し て業務を処理するために結成された民法上の組合が、請負の形式により業務を処理する ものです。概要にありますように、契約形態としては、ジョイント・ベンチャーが注文 主との間で請負契約を締結します。2は指揮命令者で、この場合、自己の雇用する労働 者が他のジョイント・ベンチャーの構成事業主の労働者の指揮命令を受けたとしても、 ここは重要なポイントですが、「自己のために」労働に従事させたものであり、派遣の ように「他人のために」労働に従事させたものではないと整理できるわけです。ここで 労働者派遣には該当しないという整理が可能かと思います。3の責任につきましては、 ジョイント・ベンチャーの構成員が連帯して責任を負います。  3の(1)ですが、ジョイント・ベンチャーについては、取扱業務の範囲に限定はあ りません。ただし、労働関係法令や業法は遵守しなければなりません。ただ、このジョ イント・ベンチャーにも派遣と似たような面がありますので、そこを区別する規範が定 められております。すなわち、15頁に書いてある条件をすべて満たさなければいけな い。満たさない場合には、派遣に該当する可能性があるということです。例えば、1の 構成員が連帯して責任を負うこと、2の不法行為に対する連帯責任、4の利益分配を受 けることなどについて規範がありまして、これを全部守らなければ派遣のほうに該当す る可能性があります。  最後に16頁、労働組合等による労働者供給事業です。一般に職業安定法においては、 労働者供給事業は禁止されていますが、許可を受けた労働組合によって実施することが 可能です。概要は大きく2とおりあるかと思いますが、図にありますように、労働者と 供給元の間で支配従属関係、労働者と供給先の間で雇用関係を結ぶ場合、あるいは右の 図のように供給元と労働者の間で雇用関係、労働者と供給先の間で雇用関係といった場 合が代表的なパターンとして考えられるのではないかということです。  3の(1)ですが、供給事業を行うためには、労働組合は大臣の許可を取ることが必 要です。許可の要件は、(2)の組合の資格要件で、これはそもそも労働組合法に定め る主要件を満たさなければなりません。2に事業運営に関する要件があります。これは 大きく3つありまして、1つは、法の精神に従って運営できる組織と能力を備えている こと。2つ目は、組合運営が民主的に行われていること。3つ目は、組合等の行う事業 は無料で行っていくこと。こういったことが要件として課されていて、この要件をクリ アした所だけが労働者供給事業を行うことができるという体系になっております。長く なりましたが、資料説明は以上です。よろしくお願いします。 ○椎谷座長  どうもありがとうございました。大変盛りだくさんの内容ではございましたが、ただ いままでの事務局の説明についての質疑、あるいはこれまでの議論にさらに何かご意見 があれば、どうぞ自由にご発言をいただきたいと思います。 ○池田委員  いまご説明を受けまして、特に私がお願いしました建設業の最近の動向については参 考になりました。本当にありがとうございました。  少し角度を変えて分析をしてみたいと思います。建設業従事者と建設作業者を全建総 連の組織部で調査をいたしました。国勢調査があったのが2000年です。そのときの建設 業の従事者は626万です。建設作業者をそこから1%抽出させていただきました。そう しますと、建設作業者は277万6,500人です。この建設作業者というのは、町場、野丁 場、全丁場を含めたものです。これは、私たち全建総連が組織できる対象者です。拡大 対象者でもあります。全建総連はいま70万ですから、まだ全体277万の30%の組織率を いっておりませんが、建設労働組合の中ではナンバーワンだと見ているわけです。  このような人たちが新たな建設労働対策の検討の範疇ではないかと、私はいまのとこ ろ思っております。なぜかと言うと、まだ事務局から新たな建設労働対策のものが出て おりませんから、そこは推測に過ぎないわけです。このような人たちが戦後どういう中 に置かれていたのか、そういう人たちが、今後新たな建設労働対策にどのようになされ ていくのか、私は大変心配をしているところです。こういう人たちは日雇労働者、日雇 建設労働者が圧倒的です。それを分析しますと、建設の賃金労働者が1つ入ります。2 つ目には、あるときには請け負う、あるときには労働者になって働く一人親方。3つ目 は小さな零細業者、人を使う人です。日本国憲法が施行されて、このような人たちにつ いて第25条には「健康で文化的な生活を営むことができる」と書いてあります。それを 保障しているのが、日本国憲法第28条の「団結権」「団体交渉権」「争議権」となって おります。労働三法ができましたが、労働保護法によって保護を受けていない人が圧倒 的です。ですから、自分たちは賃金の問題1つ取っても、自ら労働組合、全建総連を立 ち上げて、昭和36年8月10日に東京日比谷野外音楽堂で、当時は7万5,000人しかおり ませんでしたが、4,000人の仲間が集まって協定賃金を発表したのです。1,500円でし た。そのとき、労働界では総評と言われましたが、建設職員・労働者も賃金運動に立ち 上がったとマスコミを賑わせました。そして、私たちは運動をしました。電信柱に1,500 円のビラをベタベタ貼り付けて、全国でやりました。  4年後には2,000円の実賃金を獲得できました。実は、昭和35年にはお米10kg870円で した。ところが、我々が一生懸命朝早くから夜遅くまで働いても、600、700、800円で した。ですから、870円の10kgのお米が買えませんでした。ところが、4年後に調査し ましたら、なんと2,000円になったのです。そのときのお米10kgは1,125円でしたから、 おつりがきました。このような運動をして、我々は賃金あるいは単価の問題を改善し、 自分たちの仕事と暮らしを守ってきているわけです。  労災保険もそうです。昭和22年に我々の先輩たちが一生懸命運動して、一人親方の特 別加入の労災保険が、労働基準局の局長の通達によって使えるようになったのです。我 々は運動しました。昭和40年にやっと法制化になりました。また、健康保険の問題も、 日雇健康保険から建設国保になるまですごい運動をして、いまの問題になってきまし た。建設業法第42条、43条がありますが、先ほどから出ておりますように、やはり元請 責任の形で我々は運動して獲得してきました。あらゆるものを運動によって獲得してき たのです。そのような、本当に労働保護法から守られない層が約270万から280万いま す。そういう人を対象にした新たな建設労働対策という形になれば、私は大変心配して おります。したがって、次回に具体的な案が提案されると思いますが、いまでも大変な 状況です。次回はそういうことを十分に考慮したうえで、これ以上混乱を持ち込まない ような建設労働対策の案を出していただければと思っているわけです。以上です。 ○椎谷座長  何かございますか。 ○吉永室長  私ども厚生労働行政の施策の中で、広い意味での労働者の概念と雇用保護法が適用に なる部分について、どうしてもギャップが出てきてしまいます。その中で池田委員の所 属している全建総連が取組をされてきたことに、非常に敬意を表します。私どもでさま ざまな制度を導入する場合には、雇用労働者を中心としたものになってしまいます。そ の中で一人親方あるいは不安定の方の問題をどうするのかということは非常に重要なテ ーマだと思っています。  建設・港湾対策室が建設という名前を被せたうえで存在するのも、まさにそのような 方々をどうするのか、少しでも建設の雇用改善をすることで、先ほど事務局からの説明 にあったような建設雇用改善計画等5カ年計画を作って改善してきたところです。若干 ではありますが改善していますが、なお改善の余地は非常に大きいと思っています。現 在、具体的にどのような案をこの審議会に示せるかを併せて検討していますが、その辺 りも念頭に置いたうえで可能な対応をしたいと思い、それに向けて現在調整中ですの で、いろいろな意見をいただければと考えています。よろしくお願いいたします。 ○林委員  建設雇用改善計画の次回の案にこだわりたいのですが、ちょっと過去を振り返って、 私がお願いした資料3は私だけではなく冨田先生も少しこだわっておられたと思います が、雇用改善計画を作っても一体どの施策が効果があるのかないのかが見えないという ことで、この六次の最後の文章に「施策の進捗状況を見直す」ということを入れたと思 います。今回雇用改善の推進状況の資料を出していただいて非常にありがたいのです が、1つは、資料3の3頁目、(2)の「労働者の自発的な職業能力開発促進」、これ は私も進め方が難しいという話はしていたのですが、この計画の1つの目玉商品でし た。今回提出された資料による比べ方、「5〜10年前」と最近の状態を比べるという方 法では新しく出された改善方策については、比較のしようがなくなります。さっきもお っしゃいましたが、第6次の雇用改善計画も既に4年経っていますので、新しい施策に ついても4年間にどのような進展が見られたのかを知りたいと思います。  それから、もう1つは私どもの実感とかなり違うのは、資料3の7頁の「労働災害防 止」です。資料ではこの4年間においてあまり変化がないようになっていますが、労働 災害防止については相当実績があがっています。ここ5年間で死亡者数は800人台から 500人台に減っていますし、休業災害件数は4万人台から3万人台に減っています。マ クロでみて、かなり減少しています。5頁の各指標は100人以上あるいは30〜99人と分 けて分析するなど工夫されていると思いますが、労働災害の防止については、ここ5年 間では相当成果があがっているのではないかと思われますので、私の実感とは若干違っ ております。  ということで資料を出していただいたことは評価いたしますが、先ほど申し上げまし たが、自発的な職業能力開発が4年間で目覚しく変わったようなところがありました ら、教えていただけますでしょうか。 ○吉永室長  改善計画の進捗状況についてのお尋ねですが、正直に申しまして、この資料につきま しては当初準備していたものではなかったのです。データが非常に古いです。いずれに しても来年度には改善計画の更新をしなければなりませんので、その段階で最新のデー タを出し、さまざまなご議論をいただければと考えています。特に労働災害防止につい ては、比較のデータが1999年のものですので、現状との関係でいいますとなかなか的確 な比較にはなっていないのではないかと考えています。また自発的な職業能力開発の促 進については、建設業以外の全産業で見た場合に、この分野での取組が最近急速に進展 しています。その反映が建設業でどうなっているのかは、直ちに示せるデータがなく大 変恐縮ですが、いずれにしましても、全産業で自発的な職業能力の開発が1つの大きな 課題となっていますので、それが当然建設業にも波及しているかと思っています。 ○椎谷座長  私が聞くのはおかしいのですが、技術的なことで、例えばいまの進捗状況を書いた表 の合計というのは、単純に足して項目の数で割ったもので、ウエイトは付けていないの でしょうか。 ○下出補佐  ウエイトは付けていません。 ○椎谷座長  それから能力開発基本調査は、いつごろ分かるのですか。 ○下出補佐  これは2000年の次が何年かはまだ分かりません。 ○椎谷座長  何年かに一遍ですね。 ○下出補佐  はい、そうです。 ○椎谷座長  ありがとうございました。 ○奥田委員  ちょっと事実認識をしてもらいたいのですが、いろいろ制度を使い、助成金にこだわ っているのではないですが、何例かありましたけれども、あれは1年間なのか5年間な のか。資料2の5頁にいろいろな取組事例として助成金を使った例がありますが、これ は平成15年度1年間に発生したものなのでしょうか。 ○下出補佐  これは平成15年度までの時点で。 ○奥田委員  平成15年度までですか。 ○下出補佐  ただ、助成金自体はまだ継続しています。 ○奥田委員  奨励金を受けた事例が7件ありますが、これは何年から何年の間なのか、それとも平 成15年度だけなのかは分かりますか。 ○下出補佐  これは助成金ができてから平成15年12月までぐらいのデータです。 ○奥田委員  制度ができてからですか。 ○下出補佐  はい。この受け皿は補正でできた事業ですから、平成14年度でしたよね。 ○奥田委員  平成14年の4月から平成15年12月。 ○下出補佐  ほぼ2年度ぐらい。これは代表事例ですが。 ○椎谷座長  ほかにご意見はございますか。 ○寺澤委員  少し具体性がない議論になるかもしれませんが、いわゆる事業主の新分野進出の対策 が今回の検討課題の中の1つです。前回いただいた資料の中で、各省庁が横断的に建設 業の新分野進出を促進するための連絡会を設置したというお話で、特に地方の雇用問題 を解決するためにはやはり新しい雇用の受け皿をどのように作っていくかというところ がかなり大きいと思います。それはむしろ経済政策あるいは産業政策の分野なのかもし れませんが、そのような大きな流れを受けた中で労働対策的ないろいろな施策に出てく ると思います。そのような意味でこの省庁連絡の中での議論では、いま具体的にどのよ うなものが出てきているというお話はないのでしょうか。 ○吉永室長  現在検討して形になっているものは、先ほど説明しました資料5のワンストップサー ビスセンターの具体的な運営をどうするかということです。実は私ども厚生労働省の労 務関係については、具体的に申しますと、今年度から全建にお願いして、各都道府県の 協会に相談員を配置し対応していただくことにしています。また経済産業省は現在既存 の中小企業ベンチャー総合支援センターの中で、来年度は特に建設業に対して非常に充 実した対応をしようということです。併せて国土交通省も特に経営診断業務を中心とし た事業を同じく全建あるいは都道府県協会に委託する形で、都道府県の建設協会に窓口 を設け、ワンストップで資料5にあるようなさまざまな情報提供から実際の新分野進出 に至るあらゆる相談に応じることができるような体制にしようと考えています。  もう1点、いま指摘があったように地域レベルでどのような形でということもありま すが、私ども地方で連携して実施しているところですが、国土交通省が中心となり地域 においてもいろいろな連絡会を設けるということで、中央のみならず地方レベルにおい ても連携をとりながら対策を強化していきたいと考えています。 ○寺澤委員  例えば農業の関係で、今日の事例を見ましても、かなり農業を意識していろいろと考 えている事業主さんがいらっしゃるわけですよね。日本の国のいろいろな政策を考えた ときに、高齢化が進んでいる中でこの日本の農業をきちんと改革し、一定の競争力のあ るものにして、なおかつもう少し自給率を確保するような議論があるわけです。まさに 地方の構造改革に向けた議論で、それはどんな感じなのかと思っているわけです。是非 そのあたりはしっかり連携をとっていただいて、規制緩和も含めてもう少し農業に我々 の産業が入っていけるような環境が必要ではないかと思います。現在いくつかベンチャ ーでやっているところがあるわけですから、そういうところの問題点などをしっかり整 理していただいて、きちんと推進されていくことが大事だと思っています。 ○吉永室長  農業などについても、各省連絡会議などで協力してやるべきではないかという指摘が ありました。実は申し遅れましたが、先ほどワンストップサービスセンターで国交省、 経産省、厚生労働省が協力していると申し上げましたが、これ以外にも各省庁でどのよ うなことができるか、現実には農水省あるいは環境省にも参加していただいて、発展産 業にある農業分野、あるいは環境分野であればリサイクルの関係の分野に、建設業の方 が進出するに当たって、どのような対策が可能かを議論しているところです。なかなか 建設業の方だけに特化した対策は難しい面もあるように聞いていますが、ご指摘のよう に、また先ほどの事例にもありますとおり、農業分野に進出している事例もあります し、1つの典型ケースになるのではないかと考えています。そういう意味で、このよう な情報も可能な限りワンストップセンターなどでも提供できるように相談し、農業分野 への進出によって建設業あるいは建設労働者の方々が事業を継続し、また雇用が安定す るような形にできればと考えています。 ○下吉永委員  私は全国建設業協会のものですが、協会には約3万の企業が参加していまして、その 8、9割は中小企業です。ただいまお役所から説明いただきました厳しい数字は、その まま当てはまる状況です。  資料にありますように、公共投資が減少している中で中小・中堅の建設業者の状況 は、著しく差がついて業界は二極化の状況に入ってきているのではないかと思っていま す。ちなみに平成11年から平成15年までの参加企業の倒産件数は1,635件で、今年の1 月から6月までの半年でもう165件に上がっています。そうした中で私たちは何とかし なければいけないということで、協会に建設業再編再生新分野進出ワークグループを作 り、事例集や進出の方法あるいは手法等を取りまとめ、ブロック会議等を開きながら勉 強会をしているところです。  一方では、長期的に見ると、少子高齢化によって労働力人口は、非常に不足を来すこ とに直面する可能性が高いわけですが、今後は有能な基幹労働者の人材不足の時代がや ってくることから、私どもは協会の中に人材確保対策委員会を設置し行動を開始したと ころです。今回、8、9回の専門委員会では、具体的な対策についての話に入っていく と思います。ただ業界にとりましては国土交通省も厚生労働省も同じ役所で関係ありま せん。また将来においても安定局も基準局も能開局も関係ありません。だから施策を出 される場合は縦割りではなく横断的な分かりやすい施策を検討する姿勢で、次回からの 検討委員会に臨んでいただきたいと思います。 ○椎谷座長  何かありますか。 ○吉永室長  1点、中小の建設業者の厳しい状況についての指摘がありました。また今後予想され る少子高齢化の中で技能労働者の確保の必要性も併せて指摘がありました。このあたり は、まさしく私どもの持っている問題意識と同様のものと考えています。またさまざま な委員会の中で検討されているということですので、そのあたりを私どもと連携させて いただいて、より効果的な対策が打てるようにと考えています。  厚生労働省と他の省庁または省内での縦割りについても指摘がありましたが、省内に おいてもいろいろな施策を打っている中で、違う方向を向いてしまっては効果も薄れま す。また現在、国土交通省から藤田補佐にも参加していただいてこの審議会を進めてい ます。こういう中で各省と連携し、省内各局と連携しながら、効果的な対策が打てるよ うに努力していきたいと考えています。 ○池田委員  下永吉委員から出た問題は全建総連も同じです。やはり新たな建設労働対策の中で後 継者問題はどうしても避けて通れません。先ほどからデータが出ていますが、例えば平 均年齢1つ取っても、建設業では42.9歳とか43歳が最高だといっていますが、全建総連 は70万人で、平均年齢を取ると50.4歳です。60歳以上の方は70万のうちの20%です。そ うすると70万×0.2で14万人が10年経ったらやめます。では新しい10代から30代の人が どのぐらい入っているのかを調査しますと、非常に少ないです。きつい、きたない、危 険なだけではなく、給料は少ない、結婚ができない、子供が産めない、休暇がないとい ったように、3Kどころではなく7K、8Kですよね。ですから例えば先ほど言いまし た魅力ある環境整備という中で、やはりこのようなものをきちんと入れて後継者、技術 ・技能を継承していく人たちをどのようにつくったらいいのか。きっと建設・港湾の前 の室長の時に、認定職業訓練校の総轄をしていますよね。私のほうで調査をしました が、認定職業訓練校は673校ぐらいありますが、休校の所が圧倒的です。バブルのとき は結構ものすごい勢いでしたが、いまは全建総連だけで120校あります。しかし、休校 あるいは廃校になるところがもう出てきつつあります。それは何といっても、先ほど言 いました3Kという魅力のない職場だということです。  魅力ある職場にするためにはどうしたらいいかというと、今日、前建設省の藤田さん がいらしていますが、「3Kから3Cへ」というポスターを1つ作っただけです。具体 的な対策が1つも取れないうちにどんどんきているわけです。したがって、建設・港湾 が国土交通省と連携してもいいですが、きちんとした後継者対策を打ち出さないと本当 に大変な事態になる。10年経ったら技能労働者が絶対的に不足することは間違いありま せんので、それを継承していくためのシステム作りがどうしても必要だと思います。今 日は時間がありませんのでなぜかということは言いませんが、とにかく認定職業訓練校 は構造的に変革している。大変な事態になっているという点を、まずお知らせし報告 し、そして吉永室長から若干のコメントをいただければありがたいです。 ○吉永室長  少子高齢化は非常に大きな問題だと思っています。全体の労働力人口が数年のうちに 減少に転ずるだろうと見通していますし、また学者の中には今年がピークではないかと 言う方もいらっしゃいますので、全産業的に大きな問題だと思っています。特に池田委 員のおっしゃるように、建設業はまさに待った無しの状況になっています。10年後には 現在の技能労働者の方がかなりいなくなってしまいます。そうすると、建設労働は日本 の中では非常な基幹産業ですので、そこで必要な労働力が確保できないという事態も懸 念されますので、そこに向けて取り組んでいかなければならないと思います。  訓練校についても大規模の野丁場の訓練校では、比較的堅調に推移しているところも あると認識していますが、特に町場の関係の訓練校は非常に厳しいとも認識していま す。私も1点拝見しましたが、そこは非常に施設も充実していて訓練実績もあるようで すが、特に地方の小さいところでは非常に厳しい。こういうことでは、今後必要になる 労働力の確保が難しいのではないかと考えています。  私どもも助成金を中心としたさまざまな対策を煮詰めていますが、なかなかこれとい って決め手になるものもありませんし、どのような形で支援すれば更に有効な訓練がで きるのかという辺りが手詰りの状況ですので、生の声を聞かせていただいてより効果的 な対策を打てるようにしたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。 ○才賀委員  いま池田委員から厳しいお話がありましたが、我々専門個人業者は戦後間違いなく傾 向的にそのように進んできているのですが、最終的にその当時の建設業者の末端で働い ている労働者は知恵も汗も能力もありました。それがオリンピック時代から機械化と共 に段々能力が低下してきたのと同時に、労働者の方々が親子関係から単独が目に見えて 多くなってきています。そしていまこの時期に企業を経営してやっていくだけの馬力も ない。一次下請も苦しい時期ですから、二次に移行する。二次で持ち切れないので一人 親方。それでは一人親方がどうかというと、保険も入れない、何もできない、工務もで きないということの中で問題が出ていると私は思っています。それをどうすればいいか は前回もお話したように、一人親方を助ける法律ではなく、やはりいまの健全な経営基 盤の中でピラミッドをきちんと立て直すことが必要だと思います。それと同時に我々は いま技能の問題については、全国で自分のところで職業訓練校を持っているところはほ とんどありません。全部閉めました。それと同時に、いま富士訓練校が年間に3万人ぐ らいを何とか集めて1つだけ頑張っているのが現状ですが、これから3年後、5年後ま で継続してやっていけるのかという心配もあります。  我々の商売は親の背中を見て子供が育ちますので、「親父がいいから俺もやってやろ う」という後継者の問題についても、「親父があれだけ苦労しているからいまやっても しょうがない」と2、3歩引くのもあるのです。ですから、いまの構造改善の中で不 良、不適格業者の排除ではなく、ある程度のゼネコンとサブコンをきちんと分けて法律 を改正し、今後5年、10年先に向けて建設業界をどうするのかという大所高所に立って ものを考えていかないと、最終的に、末端労働者はどうするという底辺の問題も大変で しょうけれども、ある程度のところで前向きに改革していかないと追い付いていかない と私は思います。  生意気なことを言って大変申しわけないのですが、やはりどこかで切り替えていかな いとどうにもならない時期にきているのかなと思います。 ○椎谷座長  よろしゅうございますか。まだまだいろいろご議論はあるかと思いますし、議論を始 めるとなかなか果てしなくなる可能性もあります。お話にありましたように、事は労働 力の面で考えて、これからの新しい建設労働対策を考えようということではあるのです が、基本はやはり建設業そのものがどうなるのかが前提にあると思いますし、そのため には使用者側あるいは労働者側の両方が、これで実態に合ったものになるかどうかをよ く検討いただくことが必要だろうと思います。本日の議論はここまでにしまして、事務 局でうまく整理していただいて次回に繋げたいと思いますが、引き続き検討を続けると いうことで、本日はこの辺で議論をとどめたいと思います。  それでは最後に議事録の署名委員を指名させていただきます。雇用主代表の才賀委 員、及び労働者代表の寺澤委員にお願いいたします。  次回の日程について事務局から何かありましたらお願いします。 ○森下補佐  次回の日程につきましては、11月上旬を目途に考えていますが、委員の皆様と調整さ せていただいたうえでご連絡したいと考えています。よろしくお願いいたします。以上 です。 ○椎谷座長  11月上旬を目途に委員間の調整を図るということですので、よろしくお願いします。  それでは、本日はこれで閉会いたします。ご協力ありがとうございました。               照会先:職業安定局 建設・港湾対策室 建設労働係                   TEL 03-5253-1111(内線5804)