04/10/07 労働政策審議会雇用均等分科会第37回議事録            第37回労働政策審議会 雇用均等分科会 1 日時: 平成16年10月7日(木)14:00〜16:00 2 場所: 厚生労働省 専用第21会議室 3 出席者:    労側委員:片岡委員、篠原委員、佐藤(孝)委員、吉宮委員    使側委員:川本委員、吉川委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員    公益委員:若菜会長、今田委員、佐藤(博)委員、奥山委員、樋口委員、横溝委員 ○若菜分科会長  ただいまから、第37回「労働政策審議会雇用均等分科会」を開催いたします。本日 は、岡本委員は欠席で、吉川委員は遅れてまいります。事務局に異動がありましたので ご挨拶をいただきます。 ○田畑均等業務指導室長  雇用均等政策課均等業務指導室に参りました田畑です。よろしくお願いいたします。 ○若菜分科会長  雇用均等分科会に置かれております、家内労働部会の臨時委員の指名を行います。労 働政策審議会令第7条第2項の規定により、家内労働部会に所属すべき臨時委員につい ては、雇用均等分科会長が指名することになっております。家内労働部会に所属してお ります、労働政策審議会臨時委員のうち、勝尾委員と柴田委員が辞任され、その後任と して加藤委員と矢ケ部委員が任命されました。つきまして、労働政策審議令に基づき、 加藤委員と矢ケ部委員を、家内労働部会の臨時委員にご就任いただきます。  議事に入ります。本日の議題は、「男女雇用機会均等対策について」と、「次世代育 成支援対策について(報告)」です。議題1の「男女雇用機会均等対策について」の説 明をお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  最初に、資料の確認をさせていただきます。資料No.1「我が国が批准した条約(男 女均等関係)の実施状況に係るコメント等」、資料No.2「女性労働に関する主な裁判 例」、資料No.3「セクシュアルハラスメントに係る女性労働者の相談とその後の状況 」、資料No.4「女性の坑内労働に係る専門家会合(仮称)及び母性保護に係る専門家 会合(仮称)の開催について」、資料No.5「次世代育成支援対策について」です。資 料No.4、資料No.5は後ほどご説明いたします。資料No.1から資料No.3を一括してご 説明させていただきます。いずれも、前回の均等分科会でご要望があったものです。  資料No.1は、ILOから条約の実施状況について提出した報告書を検討した委員会 が示したコメントで、最新のものを用意いたしました。(1)と(2)が国連の関係 で、(3)はILOの関係です。これらの検討を行った委員会の設置根拠などについて は、資料No.1の21頁から22頁に参考として、どのような性格のものかについて簡単に 記しておりますので後ほどご参照ください。  1頁は、「女子差別撤廃委員会の最終コメント(女子差別撤廃条約)」です。女子差 別撤廃条約と申しますのは、あらゆる分野における女性に対する差別の撤廃を目的とし て、国連で採択した条約です。昨年夏に、日本の報告書についての審査が行われ、報告 が出されております。当分科会に関係するところをピックアップしてご紹介いたしま す。本論になる関係についてのみですが、委員会の最終コメントが3頁です。下のほう に肯定的側面があり、パラグラフ352において、均等法の改正のこと、育児・介護休業 法の改正などについて記載があります。  4頁の中ほどから、主要関心事項及び勧告が始まります。ここで関係するのは358と 359のパラグラフです。358のパラグラフにおいては、「直接及び間接差別を含む・・・ 差別の定義が国内法に取り込まれることを勧告する」などという記述があります。359 のパラグラフについては、固定的な役割分担意識についての問題が指摘されておりま す。労働市場における女性の状況についての懸念も指摘されております。  6頁の下のところのパラグラフ369とパラグラフ370で、均等の関係について指摘があ ります。職種の違いやコース別雇用管理に表れるような水平的・垂直的な雇用分離から 生じている男女間の賃金格差の存在、政府のガイドラインの中での間接差別についての 認識の不足に懸念を有する。パート、派遣の中での女性の割合が高く、賃金が一般の労 働者に比べて低いことに対する懸念、仕事と家庭の両立の問題についても指摘がありま す。  パラグラフ370においては、締約国が均等法に関連するガイドラインを改正すること。 男女の事実上の機会均等の実現を促進する努力を要請する。水平的・垂直的な職務分離 を撤廃するための取組み、職業と家庭の両立の施策の強化について指摘がなされており ます。  8頁は、国連が採択した国際人権A規約ついての日本の報告に基づく見解です。国際 人権規約第3条において、男女の同等の権利が定められております。第7条において、 労働条件について、男女同一の報酬の規定がなされております。これは、2001年に報告 ・検討がなされ、最終見解がその後出されております。  9頁からは、主な懸念される問題として指摘事項が続きます。10頁のパラグラフ15・ 16・17・18が当分科会に関係が深いところではないかと存じます。パラグラフ15では、 議会、公務部門などを含め、また民間部門における、専門的及び政策決定地位における 女性差別、男女の間に依然存在する事実上の不平等についての懸念の表明がなされてお ります。  パラグラフ16では、セクシュアルハラスメントを含む暴力の問題についての懸念。パ ラグラフ17では、同一価値の労働に対する賃金に事実上の不平等が依然として存在する こと。多くの企業で、主として専門的な要職に昇進する機会がほとんどあるいは全くな い事務員として女性を雇う慣行が続いていることについての懸念の指摘などがありま す。パラグラフ18では、雇用・職業についての差別待遇に関するILO111号条約を含 めて、日本が批准していないことについての懸念の指摘がなされております。  12頁以降は、提言及び勧告が続いています。13頁のパラグラフ42・43・44に当分科会 に関係の深い記載があります。パラグラフ42においては、雇用、労働条件、賃金そして 議会、公務部門、行政府における男女平等の問題について指摘があります。パラグラフ 43では、セクシュアルハラスメントを含んだ詳細な情報・統計データの提供についての 勧告があります。  パラグラフ44においては、均等法についてもメンションがありますが、そうしたもの により、職業的進路により異なる雇用管理に関するガイドラインのような関連の行政、 あるいは政策を積極的に実施するように、そして同一価値労働に対する賃金についての 格差問題について、引き続き取り組むよう勧告がなされております。パラグラフ45で は、111号条約を含んで、105号条約、169号条約の批准の勧奨の指摘がされております。  17頁は、男女同一賃金について定めたILO100号条約について、ILOの条約勧告 適用専門家委員会が2002年に提出した意見です。この委員会の中では、かなり多くの指 摘がありますが、まずお断り申し上げますのが、原文を雇用均等政策課で訳出をいたし ましたが、原文において若干誤りがあります。大きなものについては後ほど触れます。 全体的に、個別案件についての言及が多いわけですが、さまざまな形で情報提供が求め られております。  18頁のパラグラフ3の後ろのほうに、賃金について、パートも含めたデータの提供に ついて要請されております。パラグラフ4では、厚生労働省で設置いたしました、男女 間賃金格差の研究会についてのメンションがなされた上で、その状況、検討結果等の情 報提供について期待しているという記載があります。  パラグラフ5とパラグラフ6では、個別の案件について指摘がなされております。19 頁の中ほどから下にあるパラグラフ7では、パートタイム労働についての問題が指摘さ れております。この中で大きい数字の誤りを指摘いたします。19頁の下から15行目ほど のところに「93%」という数字があります。パートタイム労働者の中に占める女性の割 合ということで、この意見の中では「93%」という数字が挙げられておりますが、実際 は「67.9%」のようです。原文では「93%」となっておりますので、この資料にはその まま記載しております。パラグラフ7では、パート対策についての情報提供を求めた形 になっております。  20頁のパラグラフ8では、コース別雇用管理について指摘されております。コース別 雇用管理に関するガイドラインの適用、監視がどのようになされているか、という情報 提供の要請がされております。  パラグラフ9では、救済措置について書かれております。均等法、個別労働紛争関係 の法律に基づいて置かれた紛争調整委員会に持ち込まれた、性による賃金差別の事案に ついての情報提供が求められております。ここでも1点間違いがあります。20頁の下か ら3行目に労基法が引用されており、「労働基準法第2条」となっておりますが、これ は賃金についての条文でして「第4条」の誤りかと存じます。資料No.1については以 上です。  資料No.2は、「女性労働に関する主な裁判例」です。比較的最近の裁判例を3類型 に分けて整理し、21の裁判例を取り上げております。3種類のタイプをそれぞれ分類し てまとめて整理しております。最初の塊として「昇進、昇格、賃金等の関係」です、13 頁からは「妊娠・出産等の問題」です、18頁からは「セクシュアルハラスメントの関係 」の裁判例を整理分類してお示ししております。  並べ方として、上級審判決を先に持ってきて、あとは時系列にという形で整理をして おります。主要なものを取り上げているものの、かなり長い判決が多いわけです。わか りやすくするということで、1頁以内に収めて要約している関係上、裁判の判決の中で 取り上げたすべての論点を取り上げているものではない、ということについてお断りを 申し上げます。また裁判については、確定判決ばかりを述べているものではありません で、中には係争中のもの、判決が出た後和解が成立したものがありますことをお含みお きいただければと存じます。  最初は、専ら賃金の問題について5つの裁判例を整理しております。1番は「岩手銀 行事件」で、家族手当についての問題が取り上げられております。平成4年1月に仙台 高裁で判決が出され確定しております。家族手当の支給要件として、世帯主要件を課し ていたところ、配偶者に一定額以上の収入がある場合には、夫のみとする要件でなされ ておりました。これが、女性に対する差別である、ということで争われた事案です。  判決の要旨を追っていただきますと、この会社における家族手当が、労基法上の賃金 に当たることを認めた上で、女子行員については、実際に子を扶養するなどしていて も、夫に収入があると家族手当等の支給をしないということは、男女の性別のみによる 賃金の差別的取扱いとして、労基法第4条違反として、民法第90条により無効であると いう判断を下しております。  2番目は「日産自動車事件」です。世帯主要件で、家族手当の支給が男女差別として 争われたものです。先の裁判例と違い、要件自体は男女同一のものが適用されておりま した。この事案において世帯主というのは、住民票上の世帯主ではなく、現実的・実質 的に親族を扶養している者という形になっており、加えて共働き夫婦の場合は、いずれ か収入額が多いほうという取扱いでした。したがって、基準自体は男女同一といいます か、性中立的な基準でした。  結論から申しますと、違法ではないという判決が下されております。判決の要旨とし て、同様に家族手当について、労基法上の賃金に当たるという認定をまずしておりま す。その上で、支給対象者を1人に絞ることについてどう考えるかを、ここでは判断し ております。いくつかの理由から、これについてはやむを得ないという判断を下してお ります。  この会社で採用していた、家族手当の支給方式は、扶養家族の数が増加するに従って 金額が増えていく。だけれども、第1被扶養者と第2・第3被扶養者では、手当の額が 違うということをもって、仮に共働き夫婦に分割申請を認めると、同じ扶養家族数であ った場合に、共働き夫婦に多額の家族手当を支給しなければならないことになって公平 を欠く、ということをまず述べております。また、支給事務が煩雑になることについて も指摘をした上で、1人に絞ることはやむを得ないという判断をしております。  次に述べているのが、1人に絞る基準についてです。家族手当を、実質的意味の世帯 主に支給する運用は不合理なものとはいえないと判断しております。その上で、さらに 述べているのが、この規程よりも優れた規程や運用はあり得るけれども、不当なもので ない以上は、これは会社の裁量に属すべきものという形で、労基法第4条違反を認めて いないものです。  3頁は「三陽物産事件」です。これは、基本給の一部である本人給について、世帯主 要件、勤務地限定か無限定かという要件を課したものです。平成6年に東京地裁で判決 が下され、その後、高裁で和解が成立しております。この事案においては、基本給の一 部である本人給、この支給については、まず年齢に応じて支給される。しかしながら、 世帯主でない場合、独身の世帯主の場合は、年齢を据え置き、26歳時点での年齢給がそ のまま適用される制度を採っておりました。  これは後ほど追加されておりますが、勤務地限定の要件が追加され、男性については 全員勤務地域無限定とし、実年齢による本人給を支給し続ける。女性については、26歳 相当に据え置いたままであるというものです。  判決の要旨は、2つの視点から整理がなされております。まず世帯主、非世帯主の基 準の効力です。Y社では、世帯主・非世帯主の基準を設けながら、実際には男子従業員 については、女子従業員とは扱いを異にし、一貫して非世帯主であっても、実年齢に応 じた本人給を支給し続けているということがありました。ほかにも理由があり、まず世 帯主要件については、労基法第4条の男女同一賃金の原則に反し無効としております。  勤務地限定・無限定の基準の効力について、一般論として、広域配転義務の存否によ って賃金に差異を設けることはそれなりの合理性を認めた上で、いくつかの理由でこれ は問題だとしております。この会社において、男子は勤務地無限定、女子については勤 務地限定と記入した確認票を送付していたということがあります。男子従業員について は、すべて営業職、又はその可能性があるものとして、勤務地域無限定だと会社は主張 したわけですが、実際のところ必ずしも営業職に就くとはいえず、実際に営業職に就い ても広域配転の割合が微々たるものであったということで、これは真に広域配転の可能 性がある故に実年齢による本人給を支給する趣旨ではないと判断を下し、これは差別で あり、同一賃金の原則に反し無効という判決を下ております。  4頁は「内山工業事件」です。男女別に賃金表の適用を異にしており、職務の差がそ の原因だと会社側は主張したものの、それが否定された事案です。平成13年5月に岡山 地裁で判決が下され、現在控訴係争中です。  判決の要旨は、Y社においてI表II表と2種類の賃金表があります。I表は男子、II表 は女子に適用する、という形で作成、運用されており、実際に女性に適用されるII表 は、男性よりも低く設定されておりました。格差があるということで、この判決におい ては、格差が存在する場合に、それが不合理な差別であることが推認され、使用者側か ら合理的理由に基づくものということを示す、具体的かつ客観的な事実を立証できない 限り、それは性差別、不合理な差別であると推認するのが相当であるとしております。  その上で、Y社の主張するI表に適用されるAの職務と、II表に適用されるBの職務 が区別されていて、男女の職域が分配されていると主張したことについても、実際のと ころ男子と女子の職務内容の相違によるものではないと、この主張を否定しておりま す。その格差が過大であって、使用者に賃金決定の裁量があるとしても、裁量を逸脱し たものだということで不合理だという判断を下し、原告側の訴えを認めた判決をしてお ります。  5頁は「京ガス事件」です。平成13年9月に京都地裁で判決が下され、控訴係争中の 事案です。同期入社の、同年齢の男性と比較して、女性であることを理由として差別が されたということで、差額賃金の支払いなどを求めたものです。  この事案においては、男性に比べて女性の賃金は75%弱という格差の存在を認めた上 で、証拠を総合すると、それぞれの担っている職務の価値に格別の差はないと認めるの が相当として差別であるという判断を下したものです。  6頁以降は、「配置・昇進・昇格、賃金」ということで、賃金について争ったものも 含まれておりますが、要素としては昇進・昇格が入り込んでいる事案です。全体的にコ ース別雇用管理について争ったものが多いのですが、最初の「芝信用金庫事件」はそう ではない事案です。平成12年に東京高裁で判決が下され、平成14年に最高裁で和解が成 立しております。  訴えとしては、女性であることを理由として、同期入社の男性職員と比較をして、昇 進・昇格で著しい差別的待遇を受けたとして、Y社に対して課長職の資格及び課長の職 位にあることの確認と、差額賃金の支払いなどを求めたものです。  判決の要旨ですが、この会社において行っている人事制度の中で、昇格試験について は特に問題はないという判断を下した上で、人事考課については、男性職員に対しての み優遇していたと推認せざるを得ないとしております。そうした不利な扱いがあったた めに、そうでなければ昇格することができたと認められる時期に昇格することができな かったと推認するのが相当であると判断しております。  その上で、昇格と賃金の関係について縷々述べております。この会社においては、職 能資格制度を採用していて、その昇格の有無が賃金の多寡を直接左右するものだ。加え て、この会社における職能資格制度においては、資格の付与と職位につけることが分離 されている。したがって、資格の付与における差別は、賃金の差別と同様に観念するこ とができると判断し、労基法第13条の規定に反して無効ということで、類推適用によっ て課長職の地位に昇格したのと同一の法的効果を求める権利を有すると判断を下してお ります。  7頁以降は、しばらくコース別雇用管理制度の下での事案が続きます。「商工組合中 央金庫事件」もコース別雇用管理です。ただ、この事案については同じコース、いわゆ る総合職の中での、男女間の昇格差別が争われた事案です。原告Xは、もともと事務職 で採用されたものの、会社がコース別人事を導入した際に、総合職を選択した。しか し、同期の高卒の男性と比べて差別されたとして訴えたものです。  判決の要旨は、Y社の人事制度自体は、男女別労務管理制度とまではいえないと判断 をし、またY社の人事考課について、総合的な裁量的判断を行うことができるとしつつ も、この人事考課が専ら性による差別に基づいて行われたような場合は、裁量権の濫用 である。したがって違法だ、と言わざるを得ないと基本的な考え方を述べております。  その上で、この事案では個別に各年度の人事考課について判断を下しており、ここで は争点となった2つのディメンションについて取り上げております。平成4年度の人事 考課については、いくつも細かいことが述べられておりますが、同期・同学歴の男性職 員のうちの83%が原告よりも上位の資格にいることなどを取り上げ、男女差別であると いうことで違法の裁量権の濫用があったとしております。しかしながら、仮にこうした 違法な裁量権の濫用がなかった場合において、原告が主張するように昇格ができたのか どうかについては十分な判断材料がないということで、昇格できなかったことが男女差 別であるとまではいえないとしております。  もう1つ取り上げられておりますのは、平成5年7月に原告が受けた発令行為です。 窓口補助の発令を受けた。ところが、当時総合職の男性職員で、窓口補助の発令を受け た者はいないことから見て、これは不当な差別的取扱いだということで、人事権の濫用 をしたものと判断しております。  加えて、原告Xが行っている地位確認請求については、会社側の昇格決定の意思表示 がなければ、昇格の効果は生じないという指摘をしております。最終的にこの事案で は、平成4年度の違法な人事考課と違法な窓口補助の発令により、原告が負った経済的 精神的な損害についての不法行為責任を認めた形になっております。  8頁は「住友電気工業事件」です。これも、コース別雇用管理制度の下での事案で、 平成12年7月に大阪地裁で判決が下され、その後、大阪高裁で和解が成立しておりま す。この事案は先ほどとは違い、コース別雇用管理で置かれたコースが違うということ で判断された事案ですが、同時期入社同学歴の男性職員との間で、昇給、昇進等で不利 な処遇を受けた、ということで訴えを起こたものです。  判決の要旨で、1点目として述べているのは、会社が事務職で採用した男女間につい て、これは顕著な男女間格差が認められるということを認めた上で、その格差が生じた 背景について述べております。高卒男子事務職は全社採用、高卒女子事務職は事業所採 用として採用された。その違いは、幹部候補要員として採用したかどうかという社員と しての位置づけの違いだと整理し、両者間に採用区分、職種の違いが存在する以上、直 ちに男女差別の労務管理の結果ということはできないとしております。  職種区分の合理性についても述べており、合理性を有しないというXらの主張を否定 しております。さらに述べているのが、Y社が採った高卒女子を定型的補助的業務に従 事する社員として位置づけたことであります。これについては、憲法第14条の趣旨に反 すると指摘しつつも、Xらが採用された昭和40年当時の社会状況の下では、公序良俗違 反とまですることはできないとしております。  原告Xらが主張した、社会意識の変化などを理由として会社側には是正義務が生じ た、高卒女子事務職に専門職への職種転換審査を実施する義務が生じたとした、予備的 請求についての考え方ですが、3点の理由をもってこれも否定をしております。  1点目として、そもそも全社採用と事業所採用では異なっている。採用後に、性別の 違いを理由として異なる処遇を受けた場合とは違うという点です。2点目は、男女別の 採用方法は、当時としては公序良俗に反するものとは言えない。仮にY社が、その後も 男女別の採用方法を採り続けたら、いずれかの時点で違法になるものの、その時点での 会社が課せられる是正義務は、その時点で男女別の採用を改めていくということにすぎ ないと指摘しております。3点目は、原告Xらが主張する是正義務の内容は、結果の平 等を求めているのに等しいということで否定しております。しかしながらこの事案につ いては、大阪高裁で和解が成立しております。  9頁は「住友化学工業事件」です。これもコース別雇用管理の下での事案です。平成 13年3月に大阪地裁で判決が下され、平成16年に大阪高裁で和解が成立しております。 先ほどとかなり類似の事案です。判決の要旨を見ますと、会社側は、社員の採用を1種 ないし4種採用試験等で区分して実施し、2種採用の原告Xら高卒女子と、3種採用の 高卒男子との間では著しい格差があることを認めております。  著しい格差が生じている背景として、両者が事業所採用か全社採用か、という採用方 法の違いによって区分されているということ、入社試験も違うものであったということ を指摘した上で、採用後の社内の位置づけが違っているということであり、こうしたこ とによって生じた賃金格差を直ちに男女差別の労務管理の結果ということはできないと しております。原告らが指摘した転勤の話、職務区分が不明確であることについても否 定しております。  そして企業の採用について、企業には採用の自由がある。だけれども、不合理な採用 区分の設定は違法になることもあるべきということを指摘した上で、被告会社において は、男女を問わず専門的な職種に転換する機会が保障されていた。女子社員の位置づけ は必ずしも固定的なものではなく3種採用、即ち高卒男子と同様の採用の処遇を受ける 機会は保障されていたことを指摘しております。  加えて、Xらが採用された昭和40年前後ごろの時点の状況を引用し、会社として最も 効率の良い労務管理を行わざるをえないということを認めた上で、高卒女子を定型業務 である一般職務のみに従事する社員として採用し、その後現在までの制度改定の中で位 置づけを承継する処遇をしたことは違法とはいえないとしております。また、予備的請 求についても理由がないとして否定しております。  10頁は「野村證券事件」です。実は1つ間を置き、12頁で取り上げた「兼松事件」と かなり似通った事案です。職種転換試験の内容が異なっており、そのため判断が分かれ ているというのが特徴的な事案です。  「野村證券事件」については、平成14年2月に東京地裁で判決が下され、現在控訴係 争中です。事案としては、入社後13年次には、男性社員は課長代理の職に就いているの に、原告Xら女性は昇格をしていないということで、これは差別であるとして地位確認 請求、差額賃金等の支払いを求めたものです。  判決の要旨は、Y社の採った男女別のコース別の採用、処遇については、憲法第14条 の趣旨に反するものとしております。ただ、Xらが入社した当時の状況について引用 し、旧均等法のような法律もなかった、企業には、採用について広範な自由がある、当 時、女性が全国的な転勤を行うことは考え難かった、このようなことを指摘した上で、 効率的な労務管理を行うために、男女のコース別の採用、処遇が不合理な差別として公 序に反するとまで言うことはできないとしております。  しかしながら、平成11年4月からは改正均等法も施行され、差別取扱い禁止が使用者 の法的な義務になったとして、この時点以降については、均等法第6条違反で公序に反 し、それまでに採用した社員について男女のコース別の処遇を維持することは違法であ り無効であるとしております。  その上で会社が主張した職種転換制度について述べていて、これについては2つの観 点から違法性を阻却するほどの内容ではないと否定しております。1点目は、このコー ス転換制度が、一般職と総合職の転換に互換性がないということです。2点目は、上司 の推薦を必要として、一定の試験に合格した者のみの転換を認めていると言っていま す。特別の条件を、女性についてのみ課しているということで、男女の違いがこうした 職種転換制度の存在によっても正当化されることはないとして、会社については損害賠 償の義務があると判決を下しております。  12頁の「兼松事件」についても、考え方としてかなり似通った判旨となっておりま す。2つ目のパラグラフで、男女別の処遇について直ちに不合理であるとは言えず、公 序に反するとまでは言えないということを指摘した上で、やはり同様に、平成11年4月 以降については、男女をコース別に採用、処遇することは均等法に違反すると同時に、 公序に反するものとして違法であると指摘しております。  その上で、この会社において、いわゆる総合職のことを一般職と呼称し、一般職のこ とを事務職と呼称しているわけですが、その転換制度について述べております。下から 2つ目のパラグラフで、会社が採用している新転換制度においては、従来は必要であっ た「本部長の推薦」が不要となった結果、本人が希望し、一定の資格要件を満たせば試 験が受けられることになった。なおかつ、その内容も合理的であるとしつつ、女性のみ に資格要件の具備を求めることを不当と主張する原告側の主張に対し、職掌があって、 それに伴って積む知識・経験が異なった者についての転換をする以上は、一定の資格要 件の具備を求めるのもやむを得ないとして、賃金格差が違法であるとの主張には理由が ないとして退けております。しかしながら、これは控訴係争中の事案です。  11頁は「昭和シェル石油事件」です。これは、コース別雇用管理の下での事案ではあ りません。職能資格制度における男女の昇格賃金差別を認めた事案で、原告Xが、同学 歴の男性との格差を巡って争った事案です。Y社における賃金格差の状況について、2 つの側面から指摘しております。Y社において、原告Xが比較の対象として採った、同 学歴・同年齢の男性社員との間で著しい格差が存在する。加えて、この会社の中におけ る女性社員と男性社員との間でも著しい格差が存在しているという、いわば三段論法の ような形で、男女間格差を生じたことについて、合理的な理由が認められない限り、X についての格差は性の違いによるものと推認するのが相当としております。  この格差に合理的な理由があるのかどうかについて、業務内容等から検討を加えてお ります。Xと男性社員との格差については、業務、職務遂行状況で説明ができないとし ております。Y社における男女間の格差についても合理的な理由は存在しないとして、 Y社においては、Xが女性であることのみを理由として、賃金に関し、男性と差別的な 取扱いをしたものと認めるのが相当としております。  会社側は、改正前の均等法というのが、いわゆる均等取扱いが、配置・昇進について は努力義務規定であったということ。その背景には社会事情があったことを指摘し、違 法性の判断に当たっては、こうした社会的状況を考慮すべきという主張をしておりま す。しかしながら、裁判所が下した判決においては、まず会社の中で職務内容が、女性 とさほど異ならない男性も多数存在するものの、やはり賃金等において格差があること から見て、従事する職の配置に由来するものとは認められないということ。さらには、 男女別の昇格基準により、昇格の運用管理を行っていることを指摘した上で、会社側の 主張を退けています。  13頁以下は、妊娠・出産等の関係の事案を取上げております。まず平成元年12月に判 決が下された「日本シェーリング事件」です。「賃上げは稼働率80%以上のものとする 」といった賃上げの協定の中で、その算定の根拠に、ここに並べられているように年休 も産休も含んで、このような期間による欠務を欠勤として算入する扱いがなされた結 果、賃上げの対象にならなかったということで、損害賠償の請求を求めた事案です。  判決の要旨は、最初のパラグラフで指摘をしておりますのは、基本的に出勤率要件自 体は違法ではないとしておりますが、併せて労基法や労組法上の権利に基づくもの以外 の不就労を基礎として稼働率を算定するものであれば違法性はないとしております。  その次からがポイントだと思いますが、この制度において、労基法や労組法上の権利 に基づく不就労を含めて稼働率を算定するものである場合において、当該制度がその権 利を行使したことによって経済的利益を得られないこととすることにより、実質的に権 利の行使を抑制し、法律が権利を保障した趣旨を実質的に失わせるときには無効と解す るのが相当であるとしております。本件事案については、この経済的不利益が大きいと し、公序に反して無効という判断を下しております。  14頁の「東朋学園事件」もほぼ同様です。平成15年に最高裁判決が下されておりま す。ここで違うのは、先ほどは賃上げでしたが、賞与の支給要件として、出勤率90%と したものです。やはり、産休の期間、勤務時間短縮措置による時間を欠勤日数に算入し たものです。同旨ですので省略させていただきます。  15頁は「住友生命保険事件」です。これは既婚者であること、そして産休等を理由と する不利な処遇を巡って争ったものです。平成13年6月に大阪地裁で判決が下され、そ の後、大阪高裁で和解が成立しております。ここにおいては、既婚女性が差別を受けた ということで、地位確認と差額賃金等の支払いを求めたものです。  判決の要旨は、Y社における昇格については、Y社によって昇格決定がなされなけれ ばならないところ、本件では昇格決定がないことなどを縷々述べ、また原告側が指摘し ている未婚女性職員についての標準的な基準を適用し、本来であればそうあったはずと いうことについての考え方については、そもそも同期入社の女性の未婚者の資格が広く 分布していることなども取り上げつつ、その考え方を否定し、Xらの地位確認請求には 理由がないとしております。  次に、既婚女性についての考え方です。Y社において、既婚女性が勤務を続けること を快く思わないというようなことをしたとすれば、これは管理職従業員のみならず、Y 社によって負担すべきものだ、ということをまず言っております。その上で査定につい ての考え方ですが、既婚女性であることのみをもって、一律に低査定を行うことは違法 な行為であるとしております。個々の既婚女性について、実際に労働の質、量が低下し た場合に、これをマイナスに評価することは妨げられないものも、一般的に既婚女性だ からといって、低く処遇することは合理性がないとしております。  次に取り上げているのは、産休等についての不利益取扱いです。産休期間等で労働が なされないことをもって、労働の質あるいは量が低いということは、法律上の権利を行 使したことをもって不利益に扱うことにほかならないとしております。労基法は、そう した不就労に欠務がないものと同等に処遇することまで求めているものではないけれど も、一律にその権利を行使したことのみをもって、低い評価をすることは許されないと しております。  16頁は、妊娠を理由とした雇止めの事案です。それについて、解雇法理の類推適用に より無効だと判決を下したものです。詳細は割愛させていただきます。  17頁は「今川学園木の実幼稚園事件」です。これは、幼稚園の教諭が入籍をしないで 妊娠・流産したことについて、これが園児の父母に知れわたったことなどによって信用 失墜だということで解雇したものです。その解雇が、妊娠を理由としたものであるとい うことで、解雇を不当とした事案です。  18頁以降は、セクシュアルハラスメントの関係を取り上げております。セクシュアル ハラスメントの裁判例は地裁レベルで大変多いわけですが、ここでは使用者責任による ものを4つ取り上げております。「福岡セクシュアルハラスメント事件」は大変有名な 事案ですが、均等法に規定が盛られる前、いわゆる環境型セクシュアルハラスメントに ついて、会社の不法行為責任を認めた事案ですが省略させていただきます。  19頁は「大分セクシュアルハラスメント事件」です。平成14年11月に大分地裁で判決 が下されております。セクシュアルハラスメントの結果、原告が反抗的な態度をとっ た。そうしたことが、就業規則にある事由である「能率又は勤務状態が著しく不良で、 就業に適さないと認めたとき」云々の下で解雇事由に当たるということで解雇したとこ ろ、不法行為としてこれを訴えた原告に対して、その訴えが認められた事案です。そも そも会社側に原因があったので、原告Xが反抗的な態度に出たことは仕方がない面があ るということで、これが就業規則の解雇事由に該当するとはいえないということで、会 社側の行為について否定したものです。  20頁は「東京セクシュアルハラスメント事件」です。平成15年8月に東京地裁で判決 が下されて確定しております。これは、派遣社員に対するセクシュアルハラスメントに ついて、派遣先会社が使用者責任を認められた事案です。  21頁は「名古屋セクシュアルハラスメント事件」です。平成16年4月に名古屋地裁で 判決が下され、控訴係争中です。この事案においては、就業環境、上司・同僚のセクシ ュアルハラスメントを訴えて、同じ職場で働きたくないと申し立てた女性社員に対し、 会社側が、名古屋から大阪へ配転を命じたところ、原告Xはその配転に応じず、欠勤を したことをもって行われた懲戒解雇が有効かどうかを争われた事案です。名古屋地裁判 決では有効とされましたが、現在係争中です。  判決の要旨の最初のパラグラフですが、考え方として従業員が労働の提供を行わない こと。これについては、就業規則にその旨の定めがあれば、懲戒解雇事由にも該当する と解されるとしております。しかしながら、職場におけるセクシュアルハラスメントの 事実が存在して、会社側が採った回復措置の内容・有無などを勘案してみたところ、職 場での就労に性的な危険性を伴うと客観的に判断される場合には、労働者は就労を拒絶 することができる、その結果の債務不履行の責任を負わず、配置転換の合理性を基礎づ ける事情や、懲戒解雇等の理由となることとならない、としております。その判断の基 礎となるのが、セクシュアルハラスメント被害の内容・程度であるということで、考え 方としてこのようなことを述べております。  その上で、本件事案についての判断ですが、原告Xが主張したセクシュアルハラスメ ント行為の存在が認められないとした上で、会社が採った措置をいくつかここに並べて おりますが、これについては必要十分なものと評価することが相当であるということ で、配転命令は有効だと判断を下しております。加えて、解雇も有効だという判決で す。資料No.2については以上です。  次は、「セクシュアルハラスメントに係る女性労働者の相談とその後の状況」です。 前回、被害に遭った人がどのように救済されているのかという資料が欲しいという話が ありました。実際に就業継続できているのかどうか、心的ショックが大きかったり、2 次被害に遭う場合もあるのではないかということです。  均等室へ状況を聞いてみたところ、全体的に辞めてしまってから、均等室に相談に来 る方が大変多いという状況です。ここでは10の事例を取り上げております。継続就業で きているケースもありますので、それも含めております。  3つのパターンで整理しておりますが、比較的重篤な事例について取り上げておりま す。1頁の事例1は、相談に来られたものの、最終的に離職をしてしまったケースで す。セクシュアルハラスメントを受けて、仕事を休んでいた。その上司に対し、セクシ ュアルハラスメントを受けたことを伝えたところ、休むのは本人の意欲の問題だという ことで、辞めてもらうしかないと言われ、会社の対応に納得できないとして指導を求め てきたものです。  均等室の対応としては、会社に事情聴取を行ったところ、辞めるように求めたことは ないと否定しました。会社として、セクシュアルハラスメントの防止対策は講じていな かったことが判明したので、そこについての指導を行いました。  相談に来た女性は、大変精神的なダメージが大きく、均等室に配置したカウンセラー が面談をしながらプロセスを踏んでいった経過があります。会社の対応としては、当然 ですがセクシュアルハラスメントの防止措置をその後講じたわけです。会社から女性労 働者に対して連絡を取り、話合いの機会を設けたのですが、既に就業継続の意思を失っ ていた相談者は、結局のところ労働局に慰謝料等の請求を求めるあっせんを求めてきた ので、解決金として一定の金銭を払うことで合意をした事案です。  いろいろな事案を取り上げておりますが、3頁の事例4についても、セクシュアルハ ラスメントを受けた女性が均等室に相談してきたものです。その女性は相談に来た女性 の直属の上司からセクシュアルハラスメントを受けたということで、その上の部長に対 して相談をしました。そして被害者の女性A、加害者たる直属の上司B、部長Cの3人 で話合いの場をもちました。加害者Bはその場で女性労働者Aに対して謝罪しました が、部長Cから特段コメントがなかったという状況の下で、その後加害者Bの態度が一 変して辛く当たるようになりました。退職について考えるようになって、部長Cに相談 したものの、謝罪は済んでいるということで取り上げてもらえませんでした。なおか つ、部長Cは部の職員全員に、相談者Aは退職することとなったという話をしたという ことです。  均等室で対応したわけですが、この会社はセクシュアルハラスメントの措置について は比較的なされていて、管理職は職場の状況をチェックし、定期的に報告させる形にも なっていました。セクシュアルハラスメントの苦情相談窓口についても、会社と組合の 双方に設置をし、文書で周知もなされていました。  会社の対応は、均等室の指導を受け、もう一度この事案を再確認して対策を検討した 結果、就業規則に則って直属の上司Bに注意処分をし、再発防止対策として研修を実施 し、再度会社の方針について説明を行っております。相談者Aは退職の決意をしており ましたが、会社に慰留をされ、希望に沿って異動した上で勤務の継続ができるようにな りました。  7頁の事例9は、派遣労働者の事例ですが、後ほどご覧ください。事例10は契約社員 の事例です。一旦は、職場の秩序を乱したとして契約の更新をしないと告げられたわけ ですが、均等室と相談をしたことが契機になり、会社に対する指導ができ、最終的に契 約労働者Aの契約の更新がなった事案です。資料のご説明は以上です。 ○若菜分科会長  ただいまの説明について、ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。 ○吉宮委員  前回私どもが求めた、国連等の勧告の内容、セクシュアルハラスメントについて詳細 にいただきましてありがとうございます。裁判例の中で、「住友電気工業事件」につい ては、大阪高裁で和解をしたわけですが、その和解内容について課長は全く触れません でした。和解内容は、示唆に富んだ内容を裁判長が示していることを配信させてくださ い。  大阪地裁のほうは均等法以前の話で均等法もなかったから、公序良俗に反しないとな っています。この時期に採用された方々の裁判では全部そうなっています。大阪高裁の 裁判長の和解勧告は、「男女差別の根絶を目指す運動の中で一歩一歩」均等の制定等々 は「前進してきたものであり、すべての女性がその成果を享受する権利を有するもの」 であり、過去の社会意識を前提とする差別の残滓を容認することは社会の進歩に背を向 ける結果となることに留意しなければならない。そして、現在においては直接的な差別 のみならず、間接的な差別に対しても十分な配慮が求められている」となっています。  私どもは、これから検討していく場合に、この辺を十分留意すると同時に、もう1つ 行政に対しても和解の中でいろいろしているわけです。雇用管理区分についてですが、 あの争いは専門職と事務職はコース別に異なるということで、そこに着目した判断を下 しております。  それに対して、「厚生労働大臣は、雇用管理区分が異なる場合であっても、それが実 質的に性別による雇用管理となっていないかについても十分な注意を払い、これらの施 策をさらに推進するとともに、改正均等法が機会均等調停委員会による調停について、 事業者の同意要件を削除した趣旨にもかんがみ、同調停の積極的かつ適正な運用に努め る」。  大阪での均等調停委員会は、なじまぬということで門前払いというか退けたわけです が、ここでいわれる、雇用管理区分が異なった場合でも、性別による雇用管理になって いないかどうかを判断しなさいというように、現行の指針に対する裁判長の考え方が示 されております。私は専門家ではありませんから、実際の判決と和解というのは、どう いう法律上の地位を持つのかわかりませんけれども、私どもとしては法律上しっかりし たものと受け止めて、当分科会でもその辺に留意してやるべきではないかということが あります。その辺を、資料説明の中で補足させていただきます。 ○川本委員  和解の内容の説明がありましたが、私も専門ではありませんが、裁判の判決そのもの は客観的にどういう判断要素を見て決めたかという判決を下すものであります。和解勧 告については、当事者間の和解を促すような考え方として示されていくということで、 そこの両者の考え方には隔りがあった対応だろうと思っております。  いま言われた「住友電気工業事件」の場合は新聞で取り上げられて和解内容が出てい ましたが、一般的にはあまり和解内容は出てこない場合が多いかと思いますし、和解の 中身そのものを見て材料とするというのは、あまり適切ではないのではないかと思いま した。 ○吉宮委員  ここの女子差別撤廃委員会の勧告内容、それからILOの考え方も、日本の代表的な コース別雇用管理などを例に挙げていますが、同一管理でなければ男女の比較はできな いということが差別を解消できない原因ではないかと指摘されているわけです。先ほど の和解もそうですが、どうもその辺が均等法の男女平等を確保するための課題ではない かと指摘されている。判決文と和解は違うのだという指摘もありますが、我々が当分科 会で議論する場合は、それは十分流れとして受け止めて議論しなければいけないと思い ます。国連の勧告に対して政府はどう答えるかということもあるわけですから、それも 是非お願いしたいと思います。  2つ目に、先ほどの均等室のセクハラの相談例についていくつかお聞きしたいと思い ます。事例1は一般的なものだと思いますが、相談内容に、セクハラを受けて精神的な ショックで仕事を休むとあります。この仕事を休んでいる場合の労働条件の扱いという のは、欠勤になるのでしょうか。事実が判明すれば、それは明らかに事業主の責任です から、業務上という扱いを受けると思いますが、その辺の考え方と、事実認定した後 に、その後も仕事ができないという状況の中で、業務上災害というのはどう扱われるの か。現行の労災の問題を含めて、どんな事例があるのかを考えるべきではないかと思い ます。均等室ではどのようになっているのか、相談内容も含めて、もしあれば紹介して いただきたいと思います。  紹介された中で、会社が慰留して、本人が仕事を続けるように措置を講じたところも ありますが、本人に就労意思がないということが判明して、金銭和解というものもあ る。私は、できる限りセクシュアルハラスメントで事実認定をした場合は、雇用保障と して継続できるような環境を事業主がつくるというのが事業主に課せられた責務だと思 うのです。文面上は「意思がなく」ということになっていますが、ご本人との関係をど う理解しているのでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  1点目は、事例1を引用しての、欠勤をしたときのものの考え方というお尋ねだった と思います。精神的なショックで仕事を休むという場合、当初は年次有給休暇を使って 休むことが多いのではないかと思います。その期間が非常に長かった場合は、もし会社 のほうに病気休暇のようなものがあれば、それを使うということもあるのではないかと 思います。これはケース・バイ・ケースで、あらかじめこうだということにはならない のではないかと思います。非常に軽度で、少し病院に行ってすぐ復帰できるような場合 は、年休だけで済ませてしまうケースも考え方としてあり得るのではないかと思いま す。ただ、長期に及ぶ場合はどうかということになると、それでは済まないことがある のではないか。だからといって、年休を使えばいいということを言っているわけではあ りません。たぶんケース・バイ・ケースなのではないかというのが1点目です。  2点目ですが、セクシュアルハラスメントで深刻な事態に陥って、例えばうつ病など に陥るケースも少なからずあると認識しています。結論から言いますと、業務上災害と の関係では、特にセクハラが原因である場合をあらかじめ労災の対象から除外している ということではありません。精神障害等の労災認定の基準に合致すれば労災の対象とな り得るものではないかと理解しています。労災の認定に当たっては、個々の事案につい て業務の内容等を具体的に調査して、業務と疾病等との間に客観的に相当因果関係があ るか否かということを判断して、判断が下されるものではないかと思っています。た だ、現在具体的にセクシュアルハラスメントについて労災認定された事例があるかどう かは、わからない状態です。  大きな2つ目のご質問ですが、おっしゃるとおり、セクシュアルハラスメントに遭っ た被害者が、不本意に就業意欲を喪失して就業継続ができないという例が、現実問題あ るわけです。実は、先ほどの裁判例の紹介の中でも、損害賠償は求めつつも、いわゆる 雇用契約上の地位確認請求をしていない事例、例えば19番目に挙げた大分セクシュアル ハラスメント事件のように、裁判を起こす場合でも雇用継続は求めないような事例もあ るわけです。会社で働き続けることができないほどのダメージを受けた方が裁判を起こ す場合は、そんなことも出てきているわけです。  冒頭に申しあげましたが、今回、継続就業ができているかということを気にしながら 聞いてみたところ、やはり辞めてしまってから来る例が相当あるということでした。  今回かなり詳細にこの事例を紹介したのも、早いうちであれば何とか就業継続につな がる可能性が高まるということを知ってもらいたかったからです。そういうことを広く 知ってもらえればありがたいと思います。その上で、会社側の責任ということもおっし ゃっていましたが、セクシュアルハラスメントの防止の配慮義務の中で、事業主側には 方針の明確化と周知、相談対応の設定、実際に起こった場合の事後の適切かつ迅速な対 応ということを定めていますが、重要なのは前2者で、防止のところをいかに徹底して もらうかということではないかと思います。それによって後に起こり得る不幸な事態を 招かなくて済む。そこをどう徹底していくかということが重要なのではないかと思いま す。 ○片岡委員  最後のセクシュアルハラスメントのやり取りに続いて、いま課長がおっしゃったよう に、こういった事例を出してもらうと現実が見えてくるという意味で、資料を出してい ただいたことに改めてお礼申し上げます。私は、起こったらどうするかではなく、起こ らないようにする予防に対して、現状の規定の問題なり、この間のこうした事例を踏ま えて、そこをもっと強調するという方向をきちんと出していくということが非常に重要 だと思いました。これは文章で書かれているので、見えない部分もあると思いますが、 どう読んでも、被害者の救済を中心に置いているとは思えない。前回も言ったような、 むしろ加害者中心の状況が事後の対応としても見られる。配慮義務が1つの限界となっ ていないかとも思います。  今日の事例は前回からのつながりで出してもらったわけですが、私が見聞きしている セクシュアルハラスメントの問題の中には、1回会社を辞めてしまうと働く場所を見付 けることが困難だというもう一方の事情もあります。セクシュアルハラスメント自体 は、軽微だから我慢すればいいということではないと思うのです。しかし、やはり我慢 をしているということも見聞きする。そういう意味で、起こらないようにするための効 力というものを考えていく必要があると改めて思いました。契約社員やアルバイトな ど、立場の弱い人に向けられる1つの攻撃のような形になっているということが、この 事例からも浮かび上がってきます。そういう人たちを均等に処遇するということをきち んと原則としていくということが、そういう点からも重要だと思います。  「女性労働判例」を出してもらったので、感想を1点申し上げたいと思います。今回 の資料では、地裁判決から、まだ抗争中のものや和解という日時が示されているのです が、いくつかの裁判を追ってみると、訴えてから解決まで相当な年数を用しています。 これを見る限りでもそういうものがたくさんありますので、裁判で白黒をつけざるを得 ない状況になっている人について、どうすればもっと事前の救済ができるのかと思うの です。現在の均等法では差別救済がなかなか迅速に行われないという点をどう考えてい くのか。均等法で性差別を扱うという意味では、迅速な救済が行われることが望ましい と思います。裁判では、差別を受けたということを証明するのに、訴えた側に相当困難 な状況があることも聞きます。そういったことも考え合わせますと、迅速な解決に向け た差別救済ということを、今回の均等法改正議論の中で是非とも議題として取り上げて いく必要があると思います。あとは、先ほど吉宮委員がおっしゃったことと同感という ことで、省略したいと思います。 ○横溝委員  先ほど和解と判決についてのいろいろな議論がありましたが、ご存じのように、判決 には地裁判決、高裁判決、最高裁判決とありまして、最高裁判決は下級審の判断を拘束 する、だから最高裁判決と異なった下級審の判決は上告理由になるという構造がありま す。いま紹介していただいたものは地裁、下級審の判決が多かったのですが、それも個 別の事例に関する一つ一つの判断で、それが一般的にほかの事件まで拘束するわけでは ありません。でも、判決というものは主文および理由からなっていて、主文に至った理 由を綿密に書かなければ理由不備になります。そういうことで、社会全体に対するメル クマールという意味合いは非常に大きい。しかも判決は公にされるものですから、それ はそれで非常に意味のあるもので、我々も参考にしなければならないと思います。  でも、一つ一つの和解というのは当事者の歩み寄りによる合意ですから、和解の内容 は公表しないでほしいということもある。医療過誤などで、いくら払ったかというのは 公表しないということが新聞に書いてあることがありますよね。そういうことで、当事 者の歩み寄りによる合意ですから、限度があるわけです。ただし、高裁も地裁も和解を 進めるにはそれなりの法的根拠に基づいて和解を進めるわけです。法律に違反した和解 などはあり得ない。そういう意味では、和解に至ったいろいろな状況を参考にするの は、我々としては大事なことだと思います。やはり判決と和解ではおのずから限界があ る。ただし、そこに至った過程とか考え方というのは、我々の立場としては男女平等、 均等に関して大いに斟酌して、取り入れなければいけないと思います。  先ほど判決がいろいろ紹介されて、雇用均等法ができた以後と以前で判断が分かれて いるという話がありました。私が言うのも変なのですが、そもそも司法とか法律という のは後追いで遅れているのです。民法でも刑法でも、世の中が動いてから法律ができる というのが普通なのです。ただし、労働の分野や環境の分野というのは、どちらかとい えば法律が引っ張っているのです。後追いではなくて、むしろ法律が牽引になってい る。これを見て、まさに労働の分野を均等法の改正が引っ張っている、男女平等のため に法律が引っ張っていると改めて思いました。ですから、この分科会で均等に向けての どういう内容の法改正を目指して提言するかというのがいかに重要であるかということ を、改めて思いました。  もう1つ、ハラスメントのいろいろな相談例というのは意外と継続(就業)が多かっ たなと思いました。皆さんもっと辞めてしまっているのではないか。意外に継続が多い と思いましたが、水面下にはもっと厳しいものがあるのではないか。ここには各労働局 におけるいい例が出ていて、本当はもっと悲惨なものがあるのではないかという感想を 持ちました。でも、継続できるというのは結構なことだと思います。 ○若菜分科会長  別に資料へのご質問がなければ、第1の議題が雇用均等対策ですので、これについて ご意見があれば、どうぞ。 ○吉宮委員  前回配られた資料で、今回の局長から依頼された検討をする契機は平成9年の労働委 員会の決議が1つありますよ、ということがありました。それを受けて、平成12年に、 男女雇用機会均等対策基本方針が定められています。附帯決議は衆参それぞれ似通って いる内容なのですが、それを見ますと、1番目の性差別禁止法の次に目指すこととし て、間接差別についても引き続き検討することについては対策方針も入っていますよ ね。具体的施策の中に、間接差別についてはコンセンサスの形成のために十分なことを やりながら検討を行う、男女双方についても幅広い検討を行うと。2番目の、時間外休 日労働のあり方について検討せよというのは、前回樋口委員からもいろいろ言われまし たが、これはどういう検討をされたかは対策方針に入っていない。別の局の話だからと いうことなのかもしれませんが、ちょっとそこはお聞きしたいと思います。  3・の家族責任に伴う時間外・休日労働についての配慮等に伴う指導措置は、その後 講じられた激変緩和措置とは違うのでしょうか。4は時間外労働で、5は時間外労働の 問題で、短縮を総合的に推進すること。これも重要なテーマですね。私が言いたいのは 9番目です。附帯決議に「労働基準法の趣旨に則り、男女の賃金格差をもたらしている 原因を分析し、速やかな改善方法の検討を行うこと」とあります。この「改善方法の検 討を行うこと」というのは、研究会に伴うガイドラインを作ったということで、それで もう終わりと理解していいのでしょうか。  もう1つ、「セクシュアルハラスメントの実効確保に向けた行政指導を強化すること 」とありますが、これは附帯決議にある各項目でその後どういう措置を講じたのか。そ れがわかると、我々がこの分科会で何を検討すべきなのかということが出てくると思う のです。7の「法の実効性を高めるために助言、指導・勧告についての明確な基準を定 めるとともに、調停制度については法の趣旨が十分生かせるよう積極的な活用を図るこ と」というのは、もう終わったのか、課題が残っているのか。対策方針では見えてこな いものですから、そこも含めてお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  まず労働時間の関係については、均等法の後、基準法の改正がなされた中で、時間外 についての基準というのはもっと強化した形で定められ、時間数も定められました。多 分それで対応したということになるのではないかと思っています。当時はまだ、時短法 が平成12年度末で切れるという時期で、その後5年間の延長が平成13年1月に始まる国 会で提出され、いま5年延長がなされて、時短対策が引き続きとられているということ がありまして、まだ1,800時間の達成に向けて鋭意努力しているということではないか と思います。  次に、調停制度の関係です。今日は特に紹介しませんでしたが、前の均等法の時代は 一方申請で調停を開始することはできなくて、もう片方の同意がなければ調停を開始で きませんでした。そういうこともあって、調停を開始できなかった率が結構高かったわ けですが、前回の均等分科会で示しましたとおり、その後調停が不開始になった率とい うのはゼロです。そういう意味では、調停制度の活用が図られる形になっていると思い ます。ただ、調停の件数は年間平均2件程度しか増えていませんで、そもそも申請が思 ったほど伸びていないという状況はあります。一方、その前の措置というわけではあり ませんが、第13条に基づいて労働局長の指導・助言を求めてくる件数が非常に増えてき ていまして、トラブルについて、調停というのではなくて、その前の労働局長に対する 援助を求めるというのが非常に活用されるようになってきているのではないかと考えて います。  セクシュアルハラスメントについての実効確保に向けた行政指導強化ということにつ いて言えば、均等法の中にもセクシュアルハラスメント配慮義務の規定ができまして、 具体的に事業主に何をしてもらうことが必要かという指針は、研究会を開いたあとに本 審議会に諮って定めました。それに基づいて具体的な行政指導を展開しています。企業 の中で、どうやれば事前にいろいろな情報が入ってくるか。例えば、いきなり外に訴え てしまう前に、できるだけ早く危険信号を察知して、防止対策を講じるためにどうした らいいかということで、ノウハウを提供するようなセミナーも、21世紀職業財団などを 通じて実施していますし、相談に当たる担当の方が使えるようなマニュアルも開発し、 その普及も図っています。そうやって、セクシュアルハラスメントの対策を全体的に、 さまざまな形で行っています。  賃金格差については、この規定があったものですから、男女間賃金格差についての研 究会を開催して、まずその分析を行いました。その上で、いま何が男女間の賃金格差の 大きな原因になっているかということを詳細に検討したところ、いちばん大きかったの が職階差、すなわち上位の職に就いている女性の割合が男性に比べて少ないというこ と、2番目が勤続年数の男女差でした。3番目は年齢でしたが、大きく分けてこの2つ の理由で説明がついて、そのために格差が生じているという状況がわかったわけです。 その他、賃金制度の運用の問題、評価の運用の問題などさまざまな問題が挙がってき て、それらの研究会の報告を受けた形で、その後、賃金格差のガイドラインを策定しま した。  労使にアンケートをとった結果、労働側からも賃金格差に取り組むことについて非常 に前向きな回答が得られましたし、会社のほうとしても問題意識として捉えていまし た。そういう状況を受けて、労使が自主的に取り組む場合のガイドラインを作成し、パ ンフレットなどを用意して、その普及に努めています。それから、賃金格差レポートを 毎年作成して、ハンディなものでそうした取組みに役立てていただこうとしています。  いずれにしても、賃金格差の解消に向けて非常に重要なのは職階差の話だろうと認識 しています。そのためにはポジティブ・アクションですし、勤続年数の男女差について は職業家庭両立施策の充実ということになるわけで、これだけ1つやればいいというも のではないのだと思いますが、そういうことを念頭に施策を展開しています。 ○吉宮委員  前回配られた雇用管理基本調査や21世紀職業財団のデータなどを見ました。その3頁 に「配置、昇進」というのがあって、「部門、配置状況別企業割合」というのがありま した。これを見ても、男女ともに配置されている職場はありますが、研究・開発では3 割程度が男性のみの配置、営業職も4割近くまで同様と、相変わらず男性のみというと ころがありますし、管理職相当職も、部長相当職等では1割もいっていない。これは1 人でも管理職がいればカウントしていて、たぶん事業主が答えているのだと思います。 一方、勤続年数も、平成2年から15年まで、女性は8年でずっと推移している。  管理職について事業主側は、女性はやる気がないのだなどと答えている。一方、女性 の側の、どのポストまで昇進したいかという新入社員の意識を見ると、事業主とのギャ ップを感じるのです。現在の職場の満足度を見ても、女性は男性に比べて不満度が高 い。男女の地位の平等感についても、男性のほうが優遇されていると思っている。個人 が答えていることと事業主の皆さんが回答したことに、どうもずれを感じるのです。た ぶん両方とも実態だと思うのです。先ほど施策を講じてきたと言われましたが、ILO 等からも指摘されているように、相変わらず改善が見えていない点がある。私どもとし ても、今後仕組みとして何が必要かという議論も必要なので、そこは是非考えてもらい たいと思います。  賃金に反映する職階の問題とか勤続年数の問題についても、使用者側の皆さんから は、女性は勤続年数が短い、女子保護規定で時間外とか深夜労働が禁止されているから 使いにくい、だから緩和してくれと盛んに言われた。前回の改正でそれを緩和したわけ ですが、その後もなかなか大きな前進が見られないのはなぜなのか。やはり女性は男性 に比べて就労意欲が弱いのか。仕事の与え方など日々の女性に対する対応の仕方で結果 としてやる気を失うということになっているのか。その辺を検討して対応しないとまず いのではないかと思うのです。  救済問題ですが、廃案になった人権擁護法案の中に、性別、セクシュアルハラスメン トも人権侵害に当たるという認定をした上で、その救済を人権擁護委員会が行う、労働 関係は労働局が持っている機能で行うということがありました。均等調停委員会と違っ て、人権擁護法案に伴う救済は、人権侵害の差別認定をするときに、行政が集めた資料 で本裁判のときに行政が応援するという仕組みになっていたと思います。あれは政府が 提案しようとした法案ですが、人権擁護法案は今の均等調停委員会の仕組みより前進的 なものを持っていました。その辺の関係はどう理解したらいいのでしょうか。もう廃案 になったから終わりだということなのでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  1点目がちょっとわからなかったのですが、とりあえず人権擁護法案の関係について お答えします。先月の新聞記事に、人権擁護法案を次期臨時国会には提案する予定はな いという記事が載っていて、確認したところ、次の臨時国会ではないとのことでした。 でも、この法案はこれ以後ないのかというと、必ずしもそうではなくて、この人権擁護 法案については今後可能性は残っていると理解しています。人権擁護法案は、労働関係 特別人権侵害に当たる場合の救済の措置について、かなりさまざまなものを盛り込んで いて、訴訟援助ということも入っていますので、仮にこの廃案になった法案が国会に提 出されて可決成立した場合には、紛争調整委員会も含めて機能が相当膨らむと思いま す。 ○樋口委員  先ほど、賃金格差が男女間で存在する理由として、職階とか勤続年数が違うという研 究がなされているというお話がありました。そういったときには、一般労働者あるいは 正社員についての賃金格差の議論が主にされてきたと思うのですが、ILOの勧告の18 頁に、正社員だけで行うということが日本の問題点として指摘されています。例えば18 頁の11行目では、「賃金構造基本統計調査」が、女性の比率が高いパートタイム労働者 と臨時職員を除外して正社員のみを対象としている点に鑑み、今後はきちんと臨時職員 やパートタイマーまで含めてデータを出せ、という勧告をしています。この点は、研究 会ではどのような検討がなされてきたのでしょうか。賃金格差は男女間で縮小している という数字が出されますが、これは一般労働者、正社員についてだけです。片方ではパ ート労働者がどんどん増えていて、もうすでに女性の過半数になっている。その中で、 どこまでそれを考慮に入れた研究がなされてきたのか。今後の均等法の話とも関連して くると思いますので、どうしているのか教えていただけますか。 ○石井雇用均等政策課長  男女間賃金格差に関する研究会の立上げのときに、どこを研究会の検討の対象とする かということを議論したところ、まずは正社員の中での男女間の賃金格差が問題だか ら、そこについて要因分析をし、対応策を考えようということになりました。そういう ことで進んできた関係上、結論においても、いわゆる正社員の中での賃金格差の問題が 取り上げられた形になっています。ただ、いわゆる正社員と非正社員の賃金の格差は問 題ないというつもりで除外しているわけではなくて、そこまで入れるとかなり複雑にな ってしまうということで、まずはそこについてまともに議論したものがないから、そこ の研究を行おうと整理されたと承知しています。ILOの関係についても、さまざまな 賃金データを出しています。ここについては、パートについてのデータも含めて提出す るようにということでしたので、その後、提出しています。 ○樋口委員  ここに平均時給の差が出ていますが、パートあるいは臨時職員も含めての平均賃金の 格差は、結果として縮小しているのでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  いま手元に資料を持ち合わせていませんが、縮小はしていないのではないかと思って います。正社員については、前回の資料にお示ししたとおり、これは正社員であるとお 断りした上で報告していますが、ここは徐々に縮小してきておりますが、パートと一般 社員との格差がかなり大きいということがありますので、それを合わせたもので見ます と、縮小はしていないのではないかと思います。いま手元に数字を持ち合わせていませ んので、確たることは差し控えさせていただきたいと思います。 ○若菜分科会長  時間の関係もありますので、資料4についての説明をお願いして、ご意見を賜りたい と思います。 ○石井雇用均等政策課長  資料4は「女性の坑内労働に係る専門家会合(仮称)及び母性保護に係る専門家会合 (仮称)の開催について」です。趣旨のところに書いてありますが、本年6月、全国規 模の規制改革要望の中で、女性の坑内労働についての規制の見直しについての要望がな されています。また、母性保護については、平成9年の均等法改正の際に今後の検討課 題とされた事項が残っています。これらはいずれも安全衛生にかかる問題ですので、医 学的な検討も必要なのではないかと思います。前回の均等法改正の際に母性保護につい て医学的検討を行った経過もありますので、均等分科会での検討を円滑に行うために は、同様の対応が必要なのではないかと思っています。時期としては、それぞれ専門家 の会合を立ち上げて、全4回程度を予定して、平成17年の夏ごろまでに取りまとめを行 って、その上で均等分科会にもフィードバックしたいと考えています。  それぞれに簡単に関連する資料を付けていますので、ご紹介します。参考1は、女子 差別撤廃条約の雇用に関して規定している11条の抜粋です。その3項に、「保護法令 は、科学上及び技術上の知識に基づき定期的に検討するものとし、」とあります。保護 法令についての科学的あるいは技術上の定期的検討ということが締約国たる日本にかか っているわけです。参考2は、坑内労働の関係です。今年6月に東京都から、女性技術 職員がシールド工事などでトンネル工事に入れないということで、監督業務に従事でき るように、それから目的として女性の雇用機会均等と職域拡大を図るためとして、規制 緩和要望が出されています。こうした要望が出されましたので、政府としてどうするか という対応を決めなければいけないという事情にあります。  関連する規定として、4頁に労基法第64条の2に坑内労働の禁止についての規定があ ります。そして、臨時の必要のために坑内で行われる業務で一定の省令で定める業務に 従事する場合については適用が除外されるということですので、その省令についても示 しています。坑内労働はILO条約との関係がありますので、5頁に、「鉱山の坑内作 業における女子の使用に関する条約」の抜粋を付けています。この第2条において、 「女子は年齢のいかんを問わず、鉱山における坑内の作業に使用してはならない」とい う規定があります。しかし、第3条において、国内法令の定めるところにより、特に臨 時などの制限なく、禁止の対象から除外することができるとされています。ここに記載 されているように(a)から(d)に該当する場合には制限の対象から除外されうる形 になっています。  6頁は母性保護の関係です。前回の均等法改正の際に専門家会議が立ち上げられまし たが、そこが平成8年10月にまとめた報告書の抜粋です。この中で(1)「重量物取扱 業務」と(2)「有害物の発散する場所」における業務について、重量物取扱業務につ いては「これらの規定の必要性について今後の課題として引き続き検討することが必要 である」と記載されていますし、有害物の発散する場所における業務については「今後 とも新たな医学的知見を踏まえ継続的に検討していくことが必要」とされています。そ の関係の規定を、7頁と8頁に付けています。 ○若菜分科会長  ありがとうございました。ただいまの説明についてご質問、ご意見がありましたら、 どうぞ。特にありませんか。それでは、本件については事務局案のとおり進めさせてい ただきます。次の議題は、次世代育成支援対策です。報告をお願いします。 ○度山少子化対策企画室長  次世代育成対策の最近の動きについて、資料5に沿ってご説明します。1頁目は「最 近の少子化をめぐる動向について」ということで、最近の大きな動きを1枚にまとめて います。「少子化」という言葉が定着して10年余の歳月が流れました。この間にさまざ まな政策努力も行われてきたわけですが、子供と家庭をめぐる状況が改善したという状 況ではありません。昨年の合計特殊出生率は1.29と、過去最低を更新したとか、さまざ まなことがあります。厳密な議論のあとでやや情緒的な表現になって恐縮ですが、一生 懸命種を蒔き、苗を植えて、水をやって、潤いのある環境をということで努力してきて いるわけです。しかし、それを上回るスピードで気候の乾燥化が続いていて、どんどん 社会から潤いがなくなっている。そういった状況にたとえられるのではないかと思いま す。昨今の児童虐待事件の増加が、それを典型的に象徴していると思います。  さまざまな取組みをしている中で、個別の取組みもありますが、この対策をどう進め ていくか、枠組みをどう作っていくかという動きもあります。昨年、少子化社会対策基 本法という法律と、次世代育成対策推進法という法律が成立しました。基本法は、少子 化社会への対策に政府を挙げて取り組んでいこうという基本法で、今年の6月には、具 体的な基本指針である少子化社会対策大綱が閣議決定されています。次世代育成支援対 策推進法は、10年間の時限立法として設けられました。人口減少社会に入るわけです が、人口が転換するという期を捉えて、この時期に計画的・集中的に各種の取組みを行 っていこうということで、この法律においては、地方公共団体、事業主に行動計画の策 定をお願いしています。  このような枠組みをもって進めていこうというわけですが、少子化社会対策大綱の具 体的な実施計画や各種の取組みを支援する、行動計画に身を入れるという意味合いで、 今年度末に期限のくる「新エンゼルプラン」に替わる新しいプラン「新新エンゼルプラ ン」を今年末に策定したいと考えています。  2頁は、「新エンゼルプランの進捗状況」ということで、平成16年の目標値を掲げて 取り組んできた各種施策の実施状況をまとめてあります。各種事業がどういう達成状況 であるか、どのような条件を各都道府県で作ったかという内容ですが、これによってど の程度少子化社会に対応できるようになったか、潤いに満ちた環境が整ったかというこ とについては、そのようなことが実感できるようなものにはまだなっていないのではな いかというご批判もあります。そういったことも考えながら、新しいプランの策定を進 めていきたいと思っています。  3頁目に、「待期児童ゼロ作戦」とあります。これは「新エンゼルプラン」に基づい て、特に保育所の待期児童をなくしていこうということで、平成14年度から進めている 取組みです。本年4月の時点での待期児童は5年ぶりに減少して、わずかに減少したと いうことですが、待期児童ゼロになるためには、まだまだ多くの政策努力を要するとい う状況です。  次の頁は、今年6月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」の概要です。少子化の 危機感がまだ十分に社会で共有されていないという現状に鑑みて、少子化の流れを変え るための取組みを各主体と協力をとりながら進めていこうということです。次の頁は、 「3つの視点」「4つの重点課題」「重点課題に取り組むための28の行動」という構造 になっています。次の社会を支える新しい世代ということで、ライフステージで考える と、子供が自立した若者に成長する、その自立への希望と力というのが1つ目の視点で す。それから、子供を生み育てていくことに対する不安、障壁の除去が第2のステージ ということです。子供を生み育てるということについて社会全体で応援していく、新た な支え合いと連帯で支えていくということで、これに沿った形で重点課題を整理して、 個別の行動ということで、重点課題に取り組むための28の行動という構造になっていま す。  次の頁は、「次世代育成支援対策推進法」です。これも、昨年法律が成立して以来、 平成17年度から本格的にスタートするということで、まず法律が成立してから行動計画 の策定指針を作って、お示ししています。これは全市町村と都道府県に義務づけていま すので、行動計画の策定が進められているところです。行動計画を策定するに当たって は、特に地方公共団体は、地域の支え合い、連帯、各種の子育て支援に必要なサービス をどのように確保・提供していくのかということが主な内容になっていくわけです。こ の点については、十分なニーズ調査をする、地域で活動に携わっている方の意見を十分 聞いて策定するということで進めていただいています。  右が、事業主等の行動計画です。301人以上の大企業には行動計画の策定を義務づけ、 それ以下の規模の中小企業については同様の努力義務を課しているということです。国 や地方公共団体等の公的なセクターに関しては、特定事業主行動計画を策定し、一般事 業主の行動計画の策定を引っ張るような意味合いを持たせています。次の頁に、一般事 業主の方に行動計画を作ってもらうためのPRのリーフレット、後ろのほうには、さま ざまな届け出の書類等々を付けてあります。17、18頁にある次世代育成支援対策推進セ ンターは、一般事業主行動計画の策定・実施に関して相談等の業務を行うセンターで、 各種の経営者協会や中小企業団体を指定しています。現在82団体を指定しています。  19頁、20頁以降は、「国民的な広がりのある新たな取組の推進について」ということ で、今年9月の、少子化への対応を推進する国民会議の決定の文書を付けています。こ の会議は、少子化へのさまざまな対策を国民運動的に展開していこうということで、い ろいろな皆さんにご協力いただいて進めている取組みです。基本法ができたり、推進法 に基づいて行動計画を策定していくという新しい枠組みができたということで、この取 組みについてもバージョンアップをして進めていこうということになりました。一歩進 んだ取組みということで、9月3日に決定しましたので、ご紹介させていただきまし た。 ○若菜分科会長  ありがとうございました。ただいまのご説明について、ご質問等ありますか。 ○吉宮委員  一般事業主の行動計画で301人以上は義務づけられていますが、各都道府県の労働局 は、当該県の義務づけられた企業数を把握しているのでしょうか。それから、次世代育 成支援対策推進センターは経済団体ということになっていますが、例えば三重には亀山 商工会議所がありますし、大阪の堺、東大阪、兵庫の尼崎、姫路など、県レベルでない 団体も入っています。これは、手を挙げたところをやっているのですか。それとも行政 側からお願いしているのですか。 ○麻田職業家庭両立課長  最初の質問ですが、当然把握しています。いままでに法律の内容の説明会を開催した り、大企業が少ないところでは均等室のほうから個別指導に出向いています。  次世代推進センターの指定ですが、法律上特に都道府県単位ということが決まってい るわけではありませんので、法律の趣旨に沿った団体を国が指定するという建て前で す。実際上は、やりたい団体に手を挙げてもらって、こちらから指定しているというこ とです。 ○吉宮委員  把握しているということは、進捗状況も把握されているということですか。 ○麻田職業家庭両立課所長  個別の企業において策定のための準備がどのぐらい進んでいるのかということまで は、数量的に把握できていません。現在のところは、法律の内容の周知ということを第 1に考えています。 ○前田委員  数字的なことなのですが、資料の「待期児童ゼロ作戦の推進について」に「50人以上 の待期児童が存在する95市町村」と書いてあります。待期児童が多いのは首都圏だと聞 くような気がするのですが、東京都などの首都圏はこの中に入っているのですか。 ○度山少子化対策企画室長  これは市町村の単位で押さえています。正確に言うと東京都は特別区ですから、市区 町村ということで、50人以上の待期児童がいる東京の特別区もこの中に入っていたと思 います。50人以上待期児童が存在する市町村が95あって、この95の市町村で2万4,000 人の待期児童の8割を占めているのです。待期児童というのは特定の市町村に固まって 存在しているということで、待期児童を減らす取組みのプッシュをする方策として、こ れは昨年の児童福祉法の改正によって決められたことなのですが、ちょうど次世代育成 支援の行動計画を作ってもらっていますので、特にこの市町村に関しては、保育の中で 待期児童をどう解消していくのかということをきちんと計画に織り込んでいただくとい う、待期児童解消のための計画を特別にお願いしているということです。 ○若菜分科会長  ほかにありますか。特になければ、本日はこれで終わらせていただきたいと思いま す。署名委員は佐藤委員と渡邊委員にお願いします。最後に事務局から、次回の予定に ついての連絡をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  次回の開催については、日時、場所ともに調整中です。決まり次第ご連絡させていた だきたいと思います。 ○若菜分科会長  それでは、本日はご苦労さまでした。これで終了します。 照会先:雇用均等・児童家庭局 雇用均等政策課 法規係 (内線:7836)