04/10/07 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会（胸部臓器部会）第４回議事録


　　　 胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会（第４回胸部臓器部会）議事録


１　日時　　平成１６年１０月７日（木）１４：３０～１６：４５

２　場所　　厚生労働省専用第１７会議室１６階

３　出席者　医学専門家：奥平博一、奥平雅彦、笠貫宏、木村清延、斉藤芳晃、
　　　　　　髙本眞一、西村重敬、人見滋樹、横山哲朗（５０音順）
　　　　　　厚生労働省：菊入閲雄、渡辺輝生、神保裕臣、菊池泰文　他


４　議事内容

○職認官（菊池）
　お三方の先生はまだお見えになっていないのですが、いずれもご出席の予定で、お二
方からわずかに遅れるという連絡をいただいております。お一方は、勤務先は予定どお
り出発されているという状況ですから、始めさせていただきたいと思います。

○横山座長
　先生方、お忙しいところご苦労さまです。第４回の胸部部会を開きます。討議に入る
前に、事務局から提出資料の確認をお願いします。

○障害係
　資料１「第４回胸部臓器分野専門検討会の主な検討事項」、資料２「労災保険制度の
体系と給付内容の概要」、資料３「胸部臓器分野の障害認定に関する専門検討会報告書
（たたき台）」、以上です。

○横山座長
　先生方、よろしいですか。本日の課題は、前回までにご議論いただいたペースメーカ
の問題について、事務局がまとめた資料で、ご議論、ご確認をいただきます。次に、心
筋梗塞についての討論をいただくことにします。大動脈解離は、部会開催のご案内に入
れてありますが、時間があったらということにしたいと思います。あまりこの辺で議論
が長引くと、あとの討論をする時間がなくなってくるといけませんので、ご協力をお願
いいたします。まず、ペースメーカの問題について、事務局からご説明をお願いしま
す。

○職認官
　ペースメーカについては、最初にテーマに挙げてご検討、ご議論いただきましたの
で、まとまってきたのではないかと思っています。笠貫先生からご指導いただきなが
ら、文章としては前回から変えたところがありますので、ご確認いただくという意味
で、改めて読み上げさせていただきます。

○障害係
　資料13頁４「植え込み型心臓ペースメーカ等を植え込んだ場合の取り扱い」読上げ。

○職認官
　事務局としてはこのようにまとめたという状態ですが、なおご指摘等いただければと
思います。

○横山座長
　先生方、何かご指摘の点はありますか。笠貫先生のご指導によって、これを事務局で
まとめてくれたそうなので、ご意見があればおっしゃっていただければと思います。

○髙本先生
　最後の「電池やリードを取り換える必要がある場合には、再発として取り扱うことが
適当である」というのは、リードを換えるのは再発でもいいかもしれませんが、電池を
換えるときに再発というのはどうなのでしょうか。２、３日、入院しなくてはいけませ
んが。

○横山座長
　これはどうでしょうか。

○笠貫先生
　電池、リードともに、トラブルで起こる場合と、電池消耗で自然の経過であれする場
合と、両方あると思うのです。そういう意味では、非常に早い時期で起こる場合もある
し、あるいは６年、７年、10年という非常に長い場合もあるということで、新たに「再
発」という言葉が医学的には、なじまないことであるのですが、いずれにしろ、そこで
障害補償から一時、最初の発症のときに戻った体制にして、また落ち着いたら休業補償
に変わるということで考えて、治ゆと同じことだと思うのですが、「再発」という言葉
の使い方で理解していただければ、これで受け入れられるかと思ったのです。

○横山座長
　「再発」という言葉を使うと、いまのようなご質問が出てくると思うので、「再発の
」を取って「電池等の交換のための取り扱い」ということで、「ペースメーカと同様に
取り扱う場合に準ずることが適当である」という表現にしてしまえば、いまのようなご
質問は出てこないのではないかと思います。先生方はやはり「再発」という言葉にかな
り拘ってしまわれるのではないかと思うので、なるべく「再発」という言葉は誤解を招
かないような表現にしておいたほうがいいのではないかという気がするのです。

○職認官
　いわゆる病気の再発ではないというのは我々もそういう理解で、これはまさに取り扱
いというか、もっと具体的に申しますと、交換のための手術なり入院費用なりを患者に
自己負担していただくわけにはいきません。ものすごく具体的な話ですが、交換には当
然そういう費用が必要なわけですから、それも含めて労災保険で対応させていただくの
が適当であると考えております。そのためには、制度上どういう形にするかというと、
療養補償の対象にする必要がありますということです。かなり噛み砕いた言い方で申し
ましたが。

○笠貫先生
　今回４頁からの「治ゆ」という言葉で、心筋梗塞を例として、いわゆる治ゆという説
明がかなり具体的に入っていたことと、５頁で労災上は、再度療養補償および休業補償
が行われることをいわゆる「再発」というと定義すると、どこかで割り切らないと言葉
の定義でいつもグルグル回るのです。それで、４頁から５頁の所で、こういう認識だと
いうことを再確認できたら、そこのところから脱却できるかと思って、４頁、５頁は私
にもわかりやすく説明していただいたかと思うのです。

○課長補佐（渡辺）
　いま菊池のほうから申し上げたとおり、労災保険の療養費で措置を賄うという意思表
示という意味で、ここで「再発」という言葉を使っています。ですから、もし「再発」
という言葉がしっくりこないのであれば、あえて「再発」という言葉を使わずに、「労
災保険の療養として扱う」などの言葉でも全く差し支えありませんので、そのような表
現にさせていただいたほうがいいと思います。

○横山座長
　よろしければ、そういうほうがわかりやすいと思うのです。なるべくわかりやすく表
現していただいたほうがいいと思います。

○課長補佐
　ちなみに、リードの交換、電池の交換というのは、どの程度の療養期間になります
か。どちらも開いて手術対応になるわけですよね。ですから、入院ということは間違い
ないですよね。

○笠貫先生
　最初が１カ月、３カ月、６カ月ですが、電池消耗で電池を換えた場合には６カ月にな
りますし、リードだけということはあまりないです。いずれにしても再発というか、植
え換えたときと初回とを変えると複雑になってしまいますから、基本的には同じでいい
のではないかと思うのです。

○奥平（雅）先生
　入院の期間はどのぐらいですか。

○笠貫先生
　入院期間そのものは、せいぜい２週間弱だと思います。

○課長補佐
　電池交換の場合でも、やはり２週間ぐらい入院期間が必要ですか。

○笠貫先生
　２週間はかからないと思うのですが、やはり１週間から２週間というぐらいの感覚で
す。

○課長補佐
　退院すると、大体すぐ仕事に戻れるのでしょうか。

○笠貫先生
　１回目と違いますから、基本的には戻れると思います。

○横山座長
　これは単なる表現の問題なのですが、13頁の（３）の３つ目のパラグラフについて、
例えば「体外に装着し、脱着も容易な補装具等については、補装具等をはずした状態で
の残存障害の程度を評価している」となっているのですが、これは「評価する」ではま
ずいのですか。

○笠貫先生
　これは事務局のほうで迷ったのですが、現在そうしているということにしていたので
す。

○職認官
　体外に装着する補装具の取り扱いは、ここでご検討いただく話ではなくて、例えばと
いうことで、障害の評価の仕方として、機器等をいろいろな形で付けることがあります
が、ものによっては、そういうものはないものとして障害の程度を評価すべきものも一
方ではあるのですが、ペースメーカの場合には当然、装着した状態での障害を評価すべ
きだということの比較対象として、１つ挙げただけなのです。

○横山座長
　それはわかるのですが、文章として「評価している」という現在進行中の表現が果た
していいかどうか。なぜそんなことを言うかというと、「したがって、以下では、ペー
スメーカを植え込んだ状態での運動等の制限の内容について検討する」ということで、
これは「検討する」となっています。ご検討いただくことにして、ほかに何かあります
か。

○奥平（雅）先生
　「体外に装着して脱着が容易な補装具」というのは、今後どんどん改良されていくと
思うのです。良くなっていくと、装着したときの機能障害は非常に軽くなる。普通に生
活できるようになるということになると、基本的にこの考え方でいいのかどうかという
疑問を持ったのです。これはいまここで検討すべきことではないかもしれませんが、装
着器具はだんだんに改良されて、良くなることは間違いないと思うのです。そうする
と、外したときの残存障害の程度によって、残存障害を評価するということでいいのか
疑問に思いました。またあとでご検討いただければと思います。

○笠貫先生
　ペースメーカでも、身体障害者福祉法の場合にはペースメーカがなかった状態の障害
の程度で、常に評価しているわけです。ですから、身体障害者福祉法では１級になるの
ですが、これはむしろ植え込みで安定したものということで、このように判断すること
にしているのですが、逆に言うと「例えば」の所を、体内に植え込み、長期にわたって
使用できない補装具については、「ペースメーカのように体内に植え込んだり長期にわ
たって継続的に使えるもの、ではない場合には、補装具がない状態での残存障害の程度
を評価する」というように、逆に書くことはできると思うのです。そうすれば先生にご
指摘いただいた、これからの進歩でいま体外で簡単に外せるものが、体外であっても装
着できて、体の一部のように動けるときが来たときには、これ自身もペースメーカと同
じようになるかもしれない。いまの時点はそうではないということで、書くならそうい
う表現にすれば、いまの先生のご指摘は活かされるかと思うのですが、それはまずいで
すか。「例えば」の所ですから。

○職認官
　ご指摘の趣旨に合うように調整させていただきます。

○横山座長
　よろしくお願いいたします。

○西村先生
　13頁の（４）の「ペースメーカを植え込んだ場合の運動等の制限」の所で、アからウ
までありますが、例えば不整脈の種類、ペースメーカのモードによっては、６カ月後の
調整を終わった状態でも、健常者に比べると運動耐容能の低下は、どうしても認められ
る場合があって、２つの条件によっては運動耐容能低下がより強く見られることもあり
ます。評価の面について、これは主に姿勢、電磁波の影響、電気的刺激を受けたときの
不快感ということが書いてあるのですが、運動耐容能の低下を、例えば（５）のイでは
「原疾患について考慮する」ということにあるように、どう位置づけるのかということ
が１つです。「各原疾患」というと、いま検討している原疾患はそんなにないですね。
例えば各原疾患の障害等級で、心臓疾患の程度を細かく分けているわけではないです
ね。

○職認官
　「各」というのがおかしいということですか

○西村先生
　ここは何をイメージされているのか。実際、「各原疾患」というと、心臓に限ると具
体的にどういうことを確認したいのです。

○職認官
　１点目は、私どもの認識不足なのかもしれませんが、運動耐容能が落ちる場合もある
のですか。

○西村先生
　健常者に比べると、ペースメーカを入れたとしても、安静時には症状はみられないが
肉体労働をされている方は、従来のように出来ないという訴えが出る可能性は十分にあ
ると思います。

○職認官
　それはペースメーカを入れたことによるのではなくて。

○西村先生
　入れたとしても、ペースメーカは本来の心臓と同等の機能は持ち得ないわけですか
ら、健常者と比べると、機能的な障害はどうしても出てくると。

○職認官
　なるほど、例えば必要な運動の程度に応じて心拍数が増えるとか、そういう機能が十
分ではないのでということでしょうか。

○西村先生
　そうですね。

○笠貫先生
　生理的ペースメーカというので、いま運動するとハートビートが増えるなど、かなり
生理的に近い状態にはなっているのです。ただ、完全に生理的かというと制限はあるの
で、いまのように「いまの生理的ペースメーカは運動耐容能に近いですよ」という謳い
文句であったとしても、その病気が発症する前の生理的な心臓の動きに対しては若干落
ちることもある、ということで言ったら、運動耐容能が低下して、労働に制限が必要な
こともあるという項目を入れましょうか。それは可能性としてはあると思います。一方
では「動いてもいいですよ」と言いながら、どうしても電気刺激で動かすので、そのこ
とで非常に症状が強く出たり、運動耐容能が落ちるという人が完全にいないかという
と、否定はできませんから、西村先生がご指摘のように取り換えていただいたほうがい
いかもしれません。

○西村先生
　あくまで患者の主観的な訴えですので、その判断がまた難しいですね。ペースメーカ
を入れているという先入観があったときに、「従来に比べると」という訴え方はしばし
ばみられます。これは難しいところなのです。先ほど笠貫先生がおっしゃったように、
機器がどんどん良くなっていますから、こういう問題を考える例が限定されてくるとは
思いますが、従来はよくあったことです。

○笠貫先生
　そういうことも含めて９級ということですから、一応そういうことを入れておいてい
ただいたほうがクレームは出にくいかもしれません。原疾患の所は、心筋症などは入ら
ないのですか。

○西村先生
　原疾患というと、心筋症は「虚血性疾患等」ですから。

○笠貫先生
　この前、不整脈の判定基準には心筋症など、全部入れたと思います。

○西村先生
　ありますか。では、そちらで「各原疾患」と。

○笠貫先生
　という感じかと思います。

○奥平（雅）先生
　いまの件ですが、私は心筋症は入らないと思っています。というのは、心筋症は器質
的な疾患ですよね。器質的な疾患による不整脈は、基準局長通達では不整脈死に該当し
ないというのが明記してあります。

○笠貫先生
　ただ、「心臓突然死」という項目で、基礎疾患がどういうもので突然死を起こすかと
いうと、８、９割は心室細動です、10～20％は心室静止で起こります。それの原疾患と
しては、全く基礎疾患のない原発性の不整脈と心筋梗塞、それ以外に心筋症などという
のを入れたと思うのです。判定基準の「心臓突然死」の項目の中に、原疾患というもの
を挙げて、そこで心筋症が入っていたと思うのです。そうすると、先生のご指摘と相反
することになってしまうのです。

○奥平（雅）先生
　要するに、基本は業務上疾病か否かですよね。ですから、心筋症は現在のところ業務
上疾病に該当しないということもあるのです。ただ、心筋症であっても、将来、業務上
の過重負荷が非常にかかった場合に発症すれば、業務上疾病として認められることがあ
るかもしれません。突然死が拡大解釈されることがないようにということで、「ＩＣＤ
10のＩの46および46の１に相当するものである」ということが明記してあるのです。心
筋症はこの中に該当しません。

○笠貫先生
　ＩＣＤ10の場合は、原因基礎疾患としてのあれは患者の疾患以外のものは入れないと
は書いていなかったのではないですか。逆に言うと、ＩＣＤ10には心臓突然死と記載さ
れたと。ですから、基礎疾患というのでなくて、この場合には突然死が起こる。突然死
の原因には心筋梗塞があるし、基礎疾患のない場合もあるし、それに心筋症というと、
心筋症は軽いものから重いものまでいっぱいあります。とにかくいま働いている人たち
は健常人だと考えたときに、そこで突然死が起こった場合には、就業している健康人だ
と考えたら、基礎疾患として何を持っていたとしてもそこで働いていて、今回起こった
のは突然死です。

○奥平（雅）先生
　突然死なのですが、死亡診断書で突然死の原因が、心筋症であるとされていれば、死
因分類では心筋症とされるので、ＩＤＣ10のＩの46から外れてしまう。

○笠貫先生
　「突然死と記載されたもの」となった場合には、それは原因は問わないのではないで
すか。突然死に対して労災が使われるかどうかということですね。

○奥平（雅）先生
　そうすると、突然死は何でもかんでも業務上の疾病として認めるということになるも
のですから、心筋梗塞、狭心症ともう１つ、昭和36年と昭和63年の局長通達では一次性
心停止として扱われていたものが、この突然死に相当するのですね。

○笠貫先生
　もう１つ、不整脈による心臓性突然死も入っていて、それは杉本先生のときに変えら
れたのです。そのときにも、基礎疾患としてはいろいろなものが入っている。

○奥平（雅）先生
　私もその委員会に入っておりましたので、少し説明しますと、不整脈の原因を器質的
な疾患によるもの、代謝性の疾患によるもの、その他原因が明らかでないものという３
つの大きな群に分けてあります。3番目の原因が明らかでないものが平成8年、労働基準
局長通達として出す不整脈死に相当するのだということが、不整脈の分類表の下に注釈
として書いてあるのです。

○笠貫先生
　そうすると、この解説書はちょっと違ってしまうかもしれません。そこの議論は私も
よくわからないのですが、私は「心臓突然死」が病名であって、その原因は問わない。
ベースとして何もなくても、あるいは心筋梗塞があっても、ほかの病気があったとして
も、そこに就業に伴う過重負荷が加わって突然死まで至ったということでいけば、突然
死を捉える限りは就業していたという現状があるなら、それは何の病気でもいいのでは
ないかというのが私の考えです。そうしないと、就業している人たちの突然死が心筋梗
塞かほかの病気が何もない者以外は、突然死に対して労災が使われないということにな
ってしまう。

○奥平（雅）先生
　平成８年の基準局長通達がまさにそうだと思っているのです。

○笠貫先生
　どのようにお考えになるかは労災のほうだと思うのですが、私はそのように理解して
いました。

○奥平（雅）先生
　いろいろな病気で突然死があると思うのですが、この場合にこの心停止はＩＣＤ10
で、従来にいう一次性心停止、不整脈死に相当するものが、ここしにか該当しないだろ
うということで、心停止（心臓性突然死を含む）（これらはＩＣＤ－１０のＩ－４６、
Ｉ－４６．１に相当）に入れられたのです。

○笠貫先生
　ただ、一次性心停止は、アメリカでは虚血性心疾患に含まれているのです。一次性心
停止と不整脈による突然死というのは別々に分けられていたのですが、それは分けよう
がないので、突然死ということで一緒のカテゴリーにして、その中に基礎疾患としてい
ろいろなものがあります。そこに冠動脈虚血性心疾患を入れたのです。それで、基礎疾
患のないもの、あるいは基礎疾患があるものというように分けたと思うのです。そうい
う意味でいくと、「虚血性心疾患等」にはなっているのですが。

○奥平（雅）先生
　「等」は、解離性大動脈瘤が入っているので「等」になっている、と私は理解してい
るのです。

○笠貫先生
　そうすると、解離性大動脈瘤だけを特別に扱うものは何かというと、解離性大動脈瘤
自身にも、もともと高血圧があるとか、動脈硬化があるなどというものがあるわけです
ね。そこで過重負荷が加わって、解離性大動脈瘤を起こしたというのと同じように、労
災が就業しているということで健常人だと考えると、いろいろな疾患を持っている人が
いるわけです。そうすると、心停止というのは、不整脈や突然死も入れるとすると、不
整脈による突然死は基礎疾患のない心臓性突然死だけを労災にするというのは、医学的
になじまない話なのです。

○奥平（雅）先生
　そうですか。でも、杉本先生が座長をなさった不整脈死の検討委員会では、そのよう
に明記してあるのです。

○医療監察官（神保）
　業務上になるかどうかという意味で言えば、先生がおっしゃるように、心筋症がある
というだけで駄目だということには、旧の基準でもしていませんし、平成12年以降につ
いても、心筋症を有していても、重い過重負荷があって不整脈が生じれば、これは業務
上のものです。ただ、それをもって心筋症が業務上の疾病かというと、そうはならない
ということです。

○笠貫先生
　わかりました。心筋症そのものが業務上の疾患ではないのですが、突然死となった場
合には、その突然死はどんな原因であろうと労災対象になると。

○医療監察官
　なります。

○笠貫先生
　そこについては問題ないわけですね。そうすると、もともとある疾患が労災の対象に
ならないのだとすると、例えば各原疾患についての障害等級を検討すると。中でという
のは、心筋症はこの中に入らない。むしろ原疾患は虚血性心疾患に限られる。

○西村先生
　本当にそれだけでいいのかどうか。

○医療監察官
　はい、そういうことになります。

○笠貫先生
　よく理解できました。

○奥平（雅）先生
　業務上の過重負荷があったときには、いかなる疾患であっても業務上疾病になる可能
性は出てくるかもしれませんが、この通達で扱った場合にはそうではなかったというこ
とです。

○笠貫先生
　わかりました。突然死と不整脈についてはいいのですが、原疾患についての障害等級
を検討する中でというのは、虚血性心疾患だけだというように考えてよろしいわけです
か。解離性大動脈瘤はないでしょうから。

○西村先生
　普通はないですよね。

○横山座長
　先生方、お願いしておきますが、折角、大勢の先生が集まってくださっているので、
一部の２、３人の先生だけで議論するのではなくて、全体で議論をしていただきたい。
それから、速記をとっていますので、速記がとりやすいようにご発言をお願いいたしま
す。ほかに何かご発言はありませんか。いまの問題については笠貫先生にまとめていた
だいて、事務局にメモをお渡し願うということでお願いしたいと思います。ペースメー
カについて、ほかに何かご発言はありますか。ないようでしたら、これで一応ペースメ
ーカの議論を終了させていただきたいと思いますが、よろしいですか。お帰りになっ
て、またこの記録をご覧いただいてお気付きの点がありましたら、メモで結構ですから
事務局にご連絡をお願いできればと存じます。
　除細動器の取り扱いについて、事務局からご説明をお願いします。

○職認官
　除細動器は、一度ご指摘などをいただいたのですが、報告書のたたき台としてお出し
するのは初めてですので、これについても読み上げさせていただきます。

○障害係
　14頁（６）「除細動器を植え込んだ場合の障害の等級」読上げ。

○笠貫先生
　これも先ほどの最後の再発の所は除かせていただいて、「交換の取り扱いについては
ペースメーカと同様に取り扱う」とさせていただくようにお願いします。

○職認官
　「原疾患」の所も併せて。

○笠貫先生
　原疾患もそうです。

○横山座長
　私が気になった所は、（５）のアの終わりで、「第９級に該当するものとすることが
適当である」ということで、「する」、「する」というのが重なっていますので、文章
として「ものとする」というのは取ってもいいのではないでしょうか。これは単なる流
れの問題なのです。それから（６）のア以下、何カ所か出てくるのですが、「植え込む
」というのは、「え」は要るのですか。

○笠貫先生
　両方、確かになし。

○横山座長
　お扱いになるとき、外科の先生などはどうでしょうか。

○笠貫先生
　「植込み型除細動器」のときは「え」を入れないですね。ただ。

○髙本先生
　動詞でやる場合は、「え」を付けることが多いのではないかと思います。

○笠貫先生
　「植込み型」というと「え」が入らなくて、「植え込み」というと「え」が入ると、
何となくそういうイメージで使っています。髙本先生、そんなところでよろしいです
か。

○髙本先生
　そんなものですね。

○横山座長
　それから、「作動する」という言葉があるのですが、「作動」というのは「作働」で
はないのでしょうか。これは確かめていただけばいいと思います。それから、「座位」
というのがあるのですが、我々は「座位」というと「坐」という字を使っていると思う
のです。これも時間の制限がありますので、もしこの場でご議論がなければ、次に進み
たいと思います。あとからあそこはおかしいという所がありましたら、事務局に文章で
お送りいただければと思います。ほかに何かご意見はありませんか。これはもう１回、
表現その他でご検討願って、次回もう１回出していただければと思います。ただ、あと
でまたご相談しなければいけないのですが、討議の進行を考えて、日程調整が大変難し
いらしいので、呼吸器と循環器と別々にしたほうがいいのではないかという話がありま
す。次回にご提出というのは、循環器のグループの会議のときに提出していただくとい
うことでいいのですか。

○職認官
　今回でとりあえず終了というのは、ペースメーカについてご検討願いますという議題
は作りませんが、報告書全体については、特に字句修正、事実関係の照らし合せでちょ
っと違う所があったような修正は、最後まで点検・確認はさせていただこうと思ってい
ますので、そういう趣旨のご指摘はいつということに限らずいただくべきだと思ってお
ります。報告書のたたき台は、常に共通にお配りするかまだ決めておりませんが、やぶ
さかではありませんので、そこは柔軟に対応させていただきたいと思います。

○横山座長
　よろしくお願いします。次に心筋梗塞に入りますが、これも事務局からご説明をお願
いします。

○職認官
　４頁の資料についてですが、前回、前々回と、労災保険制度の仕組みについてしっく
りこないというご意見が続いており、私の説明の至らなさで恐縮です。再度、仕組みを
説明して、かつある程度具体的に、こういう場合にはこうなるという所も織り込みなが
ら説明させていただくと、単なる仕組みを説明するよりもよりご理解いただきやすくな
るのではないか。その上で、心筋梗塞の場合の具体的な治ゆの基準なりをご検討いただ
くと、議論しやすくなるのではないかということで、今日は２枚の資料を用意しまし
た。したがって、これは検討というよりは、事務局からの説明を再度させていただくと
いうものです。
　全体の仕組みですが、治ゆに限らない、全体像を改めて承知おきいただきたいという
ことで、まず、１の病気が起こった場合、心筋梗塞が業務に起因して発症した場合は、
療養補償、休業補償という２種類の保険給付がなされます。療養補償は治療費ですが、
休業補償は休んだ分の補償で、どういう場合にそれがなされるかというと、入院してい
れば絶対、休業が必要だというのは誰が考えても当然ですが、入院していることが条件
ではありません。療養しているために休業が必要である場合ということなのですが、治
療が続いている場合は、ずっと休業になるかというと、これはこれでそうではありませ
ん。いろいろな病気に共通のことですが、症状、あるいは状態がほとんど安定に近い、
ただ、月に１遍、あるいは２週間に１遍、通院をしている場合に、休業の範囲がどの程
度認められるか、こうしたときに、１カ月のうちに休業が何日認められるかというと、
必ずしもまるまる30日とは限りません。休業の必要性の程度は、療養のために休業する
必要があるかどうかという観点から判断される問題です。
　休業補償の内容ですが、仮に病気を発症された方の年収が600万円で、そのうちボー
ナスが150万、月給として年間で合計450万もらっているとすると、休業補償は１日休む
と１万円弱になります。この場合、例えば療養のために休業の必要があると認められる
期間が２カ月間で、２カ月間丸々休むことになった場合には、おおむね60万円ぐらいと
いう計算になります。これは休業補償として、お金が支払われます。当然、治療費、療
養費はまた別です。その後は概ね症状が安定してきて、治療も頻度が少なくていいよう
になって、休業の必要性も必ずしも全期間、全日ではなくなってくることもあるでしょ
う。それはケース・バイ・ケースになります。これが１番目の「発症した場合」です。
　２番目は「治ゆ」の話で、従前から治ゆについてのご議論、ご意見をいただいていま
すが、本来は治ゆそのものに意味があるわけではなくて、障害補償を行うためには、治
ゆの状態になっていることが必要であるという意味で、治ゆをご議論いただいているわ
けです。改めて書いておきましたが、治ゆの定義は、完治とは異なるということです。
「治療効果が期待できない」とありますが、治療効果というのは、薬を飲んでいても必
ずしもそれは治療とは限らないということがあり、例えば、心筋梗塞の場合、抗不整脈
剤等の薬を継続して服用しているというだけであれば、治療効果は期待できない状態に
なっていることが十分あり得るということです。
　症状の安定ですが、「一方」ということで、例えば発作が起きますと。発作というの
もいろいろなレベルがあるのかもしれませんが、いわゆる発作が起きるような場合に
は、一般的には症状が安定しているとは判断できずに、療養が行われることになるので
はないかと考えています。
　次に、障害補償の具体的な内容、どの程度の給付がなされるかということですが、こ
れも年収600万円の方のケースで計算したとすればということで、等級もまだ全然決め
ておりません、あくまで仮にという話ですが、11級の場合、約400万円弱、９級はそれ
より高い等級になるのですが、その場合一時金で700万円弱、７級以上が年金というこ
とになりますが、最初に一時金が一定程度出て、プラス、毎年年金が210万円ほど出ま
す。仮に先ほどのような再発というか、療養を経てもう１回治ゆになった場合でも、一
時金については障害の程度が変わらなければ最初に出たきりで、もう１回出ることはあ
りません。
　※で書いておきましたが、障害補償においては、発作等により死に至る可能性がある
ことは、障害の程度（障害等級）を判断する要素ではなくて、そのことは下記５のとお
り、実際に発作等により死亡した場合には、遺族補償が行われることになっていますの
で、そういう意味では障害等級の判定において、将来死に至る可能性がある。したがっ
て、そういうものを高く評価しようとすると、評価が二重になるということからしても
適当でないと整理をされているところです。
　「なお」書きなのですが、以上の点についてご理解はいただいたとしても、なお裸で
「治ゆ」という言葉が出てきたときに、一般には誤解がなされる危険性が大きいという
指摘は多くの先生方からいただいています。やはり、これは用語法を、事務局としても
考えましょうということで、「労災保険制度における治ゆ」、あるいは「労災保険法上
の治ゆ」、バリエーションはありますがそういった言葉づかいを誤解の恐れがありそう
なところほど、繰返して多少くどくなることを恐れずに使おう、報告書の中ではそうい
う用語法をしていこうということでこれから考えています。
　３番目ですが、こいったん「治ゆ」となっても再度発作等と書いてありますが発作に
限りません、療養が必要な状態になった場合には、療養補償が再度行われます。１度治
ゆになったらもうずっと放置されるということでは全くなくて、最初の療養の対象とな
っていた疾病がぶり返しましたということであれば、改めて療養補償がなされます。そ
の場合に、休業が必要であれば当然休業補償も必要な範囲で伴ってきます。
　４番目ですが、少し具体的な例を考えてみます。症状が安定してきて、月１回程度の
通院をしながら、差し支えない範囲で職場に復帰している場合にはどのような保険給付
がなされるでしょうかという話です。２通り考えられるのではないかということで例示
しました。療養を続けている場合については、当然療養補償、治療費は全額払われま
す。月１回かかった治療費は全部支支給されます。ただ、休業なのですが、復帰してい
る程度、あるいは休業の必要性の程度によるので一概には申し上げられないのですが、
もし仮にかなり状態としては安定しているということで、病院に行く日以外はほぼ完全
に働けていますという場合であれば、休業の必要性があると認められるのは通院をして
いるときだけとなり、通院するのにまるまる１日かかるという場合には１日分になりま
すが、仮に午前中だけ病院を回ってくれば済みますという場合、休業は半日分になると
いうこともあり得ます。いずれにしても、療養のために必要な範囲でのみ休業補償がな
されるということです。
　一方、症状が安定して結局治ゆとなりましたということになると、残った障害の程度
に応じて障害補償がなされることになります。こうなれば療養補償、休業補償はなされ
ません。ただ以前にも申し上げたように、療養補償ではありませんが、月１回程度の診
察、検査、薬剤支給等の費用については、「アフターケア」制度によって必要な分はほ
ぼ支給されます。
　アフターケア制度では一応原則としては３年と書いてあり、等級も原則としては９級
以上などと書いてありますが、3年を超えて、あるいはより低い等級での支給も可能で
すので、病院にかかる分は治ゆになってもご心配いただく必要はほとんどない。このよ
うな形になります。
　最後の５番目ですが、心筋梗塞が再度発症したり、それに起因する不整脈発作により
死亡した場合には遺族補償が出なされます。この辺、少しずつ繰返しになっている部分
がありますが、これはいったん治ゆになったときでも再発して、そのまま亡くなってし
まいましたという場合には業務による死亡ということになります。これは療養補償を継
続していて、最後に亡くなってしまった場合と全く同一の補償内容になります。金額に
ついては、そこに書いたとおりのものが例としては給付されることになります。
　以上、再度の説明で恐縮ですが、制度について改めてご説明をいたしました。心筋梗
塞は例にしているのだけで、心筋梗塞の場合に具体的にどうなるのかという議論は、こ
れから報告書の中の検討としてお願いしたいと思いますがこのペーパーでご説明した範
囲内で、またはいまご説明申し上げた内容の範囲内で何かご質問があればお願いしたい
と思います。

○横山座長
　ありがとうございました。どなたかご質問、ご意見等はあるでしょうか。

○西村委員
　５頁の４で２つの場合が例として挙げてあります。私の知る範囲で、虚血性心疾患で
アフターケア制度を利用している人はほとんどいないのが現状です。そうすると、より
レベルの高い補償制度を考えた場合に上のほうがいいのか、下のほうがいいのか。考え
方としてはただオプションを増やすだけではなくて、本当は治ゆを増やしたほうがその
方にとってはメリットがあるという考え方なのでしょうか。

○職認官
　メリットということではなく、具体的な治ゆの基準が決まっていませんので、どうい
う場合にどちらに当たるかはともかく、可能性があるゾーンの中でこちらになればこ
う、こちらになればこうというものをお示ししたということです。

○西村委員
　内容をアップデイトする、時代に合ったものにするということですか、治ゆの基準
を。

○職認官
　それがいまはっきりしていないことが、アフターケアが利用されていないというか、
治ゆになるケースがごく僅かであることの一因かなと思っています。

○横山座長
　よろしいですか。いまのところで、「療養補償は全額支給」という大胆な表現があり
ます。これでいいのですか。

○職認官
　健保の適用のあるものという前提なので、それだけお断りさせてください。

○横山座長
　健康保険の制度の問題、あるいは健康保険がもうなくなってしまった、定年退職後の
患者など、いわゆる国民健康保険で。

○職認官
　実際に健保に入っているかどうかではなくて、健保のほうで保険適用をしている治療
内容については支給しますということです。

○横山座長
　それを書いておかないと、例えば病院によってはベッドの差額があったり、全額支給
ということが出てくるといろいろ問題が起こってくるのではないでしょうか。

○職認官
　報告書に書くときにはそのような注意・配慮をさせていただこうと思いますが、これ
はもう１度制度の仕組みをご理解いただこうと思って作らせていただいたペーパーなの
で、このペーパーを練り上げてどこかに改めて出して使うというつもりではありませ
ん。

○横山座長
　最終的な報告書にはもっと正しく述べられるということですか。

○職認官
　この記載事項のうちというか、記載してある点のこういうことをこういうように報告
書の中に盛り込んでいったほうがまとめた時にわかりやすい、そういうようなことにつ
いては、いまの誤解がないような表現で書いていこうと思っています。

○髙本先生
　保険外のものを使った場合はどうなるのでしょうか。例えば心筋梗塞になって、ショ
ックになって、人工心臓を使わないと助けられない。人工心臓に関しては保険が効いて
いるものと効いていないものもあって、大変な高額になってしまう。保険が効いていな
いとなるとアメリカ製のものだったり、埋込み型ですから家に帰れて非常に良いのです
が、保険の適用は非常に限られていますから効かない場合は相当の高額になる。保険で
効かない場合というのはどうなのでしょうか。

○医療監察官
　基本的には支払いができないということになると考えております。健保準拠で支払い
の可否を判断をしているものですから。

○横山座長
　私どもは、お金のことには大変弱いので、ここにこのように具体的な例を書いてくだ
さってありがたく思っています。何か、ご意見はありますか。

○奥平（雅）先生
　本当のことを言えば、治ゆになった場合のほうが労働者にとって有利なのか、あるい
はそのまま療養を続けていたときのほうが有利なのか。それをはっきり書いていただけ
るといちばんわかりやすいと思います。

○職認官
　私どもとしては、治療が必要な場合にはその分の費用をお支払いします。状態が安定
して、障害補償の対象として評価すべき状態になった場合には然るべき補償をさせてい
ただきますということなのです。報告書がまとまったときに、それをご覧になる方々の
理解の助けのためにということで、先生方のご判断としてそういう書き方をしたほうが
いいというときにはそういう観点からの記述も、どの程度の書き方をするかちょっと微
妙ですが、必要に応じて書き込むということは検討結果としてはあり得るのかなと思い
ます。
　いずれにしても、今日の４頁、５頁のこのペーパーは手直しをして、どこかに出すと
いうものではないということでご理解いただきたいと思います。あくまでも、今日の説
明のために用意させていただいたペーパーということです。

○横山座長
　これは私にとって大変ありがたいものなのです。いろいろ社会的な反応などを考え
て、最終的な段階ではもう少し差し障りのない表現で書いていただいたほうがいいかも
しれません。

○西村先生
　いまの奥平先生の発言なのですが、やはり疾患によってその辺が違うのではないかと
思います。アフターケア制度が非常に有効な方、そうでない方があって、私が労災病院
にいたときの経験だと、脳血管障害などの後遺症の方は、あるいは脳の外傷後の方など
は利用されている場合が多かったように思います。

○横山座長
　労災保険では「アフターケア」という言葉を使っていますか、「リハビリテーション
」という言葉を使っていますか。アフターケアとリハビリテーションでは若干意味が違
うと思いますが。

○職認官
　名称としては「アフターケア」制度となっています。それから、何回かご参照いただ
いたかと思いますが「労働福祉事業」と言って、簡単に申し上げれば保険給付そのもの
ではない事業とご理解いただければと思いますが、その中の１つとしてアフターケアと
いう制度がいくつかの疾患について設けられています。ちなみに循環器はお手許の「必
携」の325、326頁の10番目、「虚血性心疾患等にかかるアフターケア」として載ってい
ます。ここに具体的に支給できる薬剤の種類なども載っていますので、ご参照いただけ
ればと思います。

○西村先生
　先ほどの髙本先生のご質問で、例えば健保に準じたものしか出さない、従来、労災保
険というのは健保の先を行くという考え方だったわけです。健保で補償できないものも
場合によっては補償しよう、という考え方があったではないですか。それを踏襲して労
働者を守るというためで、これは健保より先に行っているのだという姿勢、そういう観
点があってもいいのではないかと思うのですが。

○課長補佐
　確かに、一部にはそのようなものも当然あると思います。しかしながら、治療対象に
ついては結局、先というよりも、健保が認めているというのはやはり医学界としてこれ
が標準的な治療である。これを超える範囲は一応、医学界としてはまだ未承認のものと
いう位置づけであると考えています。あるいは実験段階とか、治療効果としての評価が
決まっていないという位置づけのものであれば私どもが手を出す領域ではないのだろ
う。
　そうではなくて、機械が高価だから出せないとか、補装具の関係などはかなり高価な
機械も労災保険の支給対象品として設けています。そういう意味ではそのような部分も
ありますが、治療の対象としてのものというのはやはり健保以上というか、健保が認め
ていないものはまだ認められない。私どもの基本的な評価はそういうことになっていま
す。

○人見先生
　「アフターケア」という言葉は一般的にしばしば使われる言葉なのですが、労災補償
のところでは特定の意味に取られないと、「アフターケアを行う」と言われてもわから
ないと思います。

○職認官
　これも注釈が要るということでしょうか。

○人見先生
　313頁、「アフターケアの実施」といっても、一般の人はそうは思わないです。ここ
までやっているとは考えない。全体としてちょっと緩いかもしれません。

○横山座長
　心臓疾患の場合、３年間という１つの期限が書いてあります。再発を繰り返している
ような場合、２回目以後はどうなってしまうのですか。また、新規で３年間ということ
ですか。

○職認官
　３年というのは原則でして、必要があればそれを超えて支給ができることになってい
ます。事実上は長期にわたって支給ができますし、再発後に再治ゆした場合でも認めら
れます。

○課長補佐
　いま、先生がおっしゃったように再発を繰り返しているというような状態であれば、
多分治ゆという判断をすること自体が難しいのではないかと思います。

○横山座長
　いや、繰り返すという意味は短期間に何回も起こすというのではなくて、ある長いイ
ンターバルで。

○課長補佐
　10年なり、そのぐらいのスパンでやる。それはその時その時でまた。

○横山座長
　新しくなるということですか。

○課長補佐
　はい。

○横山座長
　私がこのようなことを伺ったのは、患者の立場からすると治ゆの判定をもらったほう
が得なのか、もらわないほうが得なのかどうなのかと思ったのです。

○課長補佐
　端的に言うと、月に１度病院に行って、不整脈を起こさない薬だけをもらうような人
であれば、多分障害補償が一定程度支給されるわけです。そうすると、先ほどの例で言
うと９級の認定がされると約700万円支給される。月に１度休業補償だけもらうと、月
に１万円、年間12万円、10年で120万円となります。
　ですから、月に１度予防薬だけもらうという人であれば治ゆになって、アフターケア
で見てもらうほうがよほど得ではないかと思います。ただ、だからといってむやみに治
ゆにするということになると危ない。ですから、本当に治ゆにできるような人は、普通
に考えれば治ゆの認定を受けて障害補償を受けたほうが得だろうと思います。
　ただ、それ欲しさに何でも治ゆにするなどとなると、今度は逆に変な結果を生じるわ
けです。700万欲しさに、本当は治ゆにできないけれどもいったん治ゆにしてしまって、
700万をもらったらまたすぐ再発にすればいい。そのようなことになると、まさにある
意味不正的なことになります。そういう意味で、ある程度の基準があって然るべきだろ
うと私どもは考えています。

○人見先生
　この財源はどこから出るのですか。労災補償の財源はどこから出るのですか。

○職認官
　労災保険料は全額事業主負担です。労働者を雇っている場合にはその分についての労
災保険料を会社が納める必要があります。その保険料の中からケガをした場合の療養補
償、休業補償、障害補償などをお支払いします。それ以外にも、保険給付そのものでは
ないのですが、それに付帯する事業として労働福祉事業というものがあり、その中の１
つにアフターケア制度があります。財源は事業主が納めた保険料です。

○人見先生
　事業主だけですか。

○職認官
　はい、労災保険は労働者本人負担はありません。

○人見先生
　私も払わなければいけない立場なのですが、どのぐらい掛けていますか。例えば400
人雇っている場合に、その会社というのはどのぐらい払っていますか。

○職認官
　労災保険は、業務上の傷病が起きたときに災害補償を行う制度なものですから、例え
ば建設業など、危険な業種の場合には保険の料率は高くなっています。事務職が大半の
会社の場合には普通、そうそう滅多なことはないでしょうということで、だいぶ料率が
低くなっています。保険料率は賃金額に対して千分率で現すのですが、危険の低い業種
では1,000分の１桁、要するに１％未満です。高い業種になると大雑駁に言えば３％、
４％、５％というものが確かあったと思います。

○人見先生
　払っている賃金の0.1％とか0.3％ということですか。

○課長補佐
　いま、ざっと計算してみたのですが、賃金の支給額が仮に500万とします。500×400、
400人に500万ずつ賃金を払っているとすると、賃金総額が20億になります。20億に例え
ば普通の事務所とか、病院もそうですが、1000分の５という料率になっていますので、
1000分の５というと多分1,000万ですか。これは年間保険料ですが、いまの例で言うと、
500万の賃金を払っている人を400人雇用していると、年間1,000万の労災保険料になり
ます。

○人見先生
　それで大体、トントンでいけているのですか。赤字ではないのですか。

○課長補佐
　労災保険はいまのところ黒字を保っています。

○人見先生
　今回、いろいろなことがあって手厚くしていくことによって、1000分の１とかが上が
る可能性は十分あるわけですね。赤字に転落したものは駄目でしょうから。

○課長補佐
　私どもでは、いまやっていることで対象を広げるとか、いままで認めていなかったも
のを認めようということで考えているわけではありません。いままで、少し基準が曖昧
だった部分をはっきりさせましょうということでやっているので、費用が増えるという
ことは基本的に想定はしていません。ただ、結果として、基準がいままでよくわからな
かったので、本当は払える人に払わなかったというケースが今度はきちんと払えるよう
になるということになると、多分保険料支出としては増えるということになるのだろう
と思います。それは結果としてそうなるということで、それを想定しているわけではあ
りません。全体のいまの規模で、いちばんたくさん掛かるのはやはり医療費部分なので
す。今、検討をお願いしているものは別に医療費に直接関係しないので、私どもの保険
料としては大体１兆円規模なのですが、その中での割合とすればそれほど影響のあるも
のではないというように推測はしています。

○人見先生
　続いて質問します。自分のところの従業員が事故が起こって、労災が適用になるかど
うかを申請します。そのときに、会社としては認められたほうがいいのかどうかという
のは、その会社自体にはいまのところはほとんど影響ないと思っていいのですか。

○課長補佐
　先ほど申し上げた保険料に関して、メリット制という制度がまたあります。これは全
部の事業場に適用されているわけではなくて、割と規模の大きい所に適用されます。メ
リット制が適用されている事業場の場合には、その事業場の保険料とその事業場の労働
者に対して支給された保険給付との比較計算をします。それによって、例えば自動車保
険もそうですが、事故が起これば高くなります。あれと同じような機能は持っていま
す。ですから、事故が起これば保険料が上がるという場合もあるということです。すべ
てがそうではないですが、上がる場合もあるということです。

○人見先生
　普通の病院はどうですか。

○課長補佐
　規模の大きな病院、総合病院のようなところであれば多分メリット制が適用されてい
ると思います。メリット制というのは事故が起これば標準料率より高くなるのですが、
事故が少ないと標準料率よりも下がるという仕組みになっていますから、多分安くなっ
ているのが普通ではないかと思います。
　労災保険というのは、そもそも論を申し上げますと、基本的に労働基準法に労働者が
業務上の負傷というか、仕事が原因でケガした場合には補償することが義務づけられて
います。もともと、それをやらなければ罰則が付いていて、場合によっては懲役という
こともあるという、労働基準法の中にそういうものがもともとあります。それを罰則付
きでやったとしても、現実に治療が受けられないというか、中には「私は刑務所に入っ
てもいいから補償はしない」という人がもし出ると困るのは労働者です。そういうこと
なので、それを国の保険制度で行うといった性格のものです。もともとは個別の事業主
の義務を保険でカバーしているというものです。

○人見先生
　そうすると、国家の補償や補助は全くなくて、事業主で賄っている制度ということで
すか。

○課長補佐
　そうですね。変な言い方をすると事業主が事故を起こして、そのときに１度にドンと
負担するよりも、保険制度で少しずつ払っておけば大きな事故を起こしても大丈夫とい
う制度です。

○人見先生
　もう１つだけお聞きします。研修医が事故死した。それが労災に認定されたというこ
とがありました。あれは全国の事業主に影響が及びますか。

○課長補佐
　及ぶという言い方でもいいかもしれませんが、料率を計算するのはある程度同じ事業
グループで計算します。保険料がどれだけ入ってきて、支出がどれだけあったかという
ことの差引き計算をしているわけです。そのグループで事故がどんどん起これば保険料
支出が増えますから、保険料が足りなくなるわけです。そうすると、料率アップという
方向に行きますので、そういう意味では影響があるというか。

○人見先生
　わかりました。

○横山座長
　次の議論に進みたいと思います。心筋梗塞についての報告書の案文を検討していただ
かなければなりません。事務局からご説明願います。

○職認官
　障害等級の具体的評価のところは後にするとして、８頁から心筋梗塞の案文を用意さ
せていただいています。11頁の頭のところまで、まず読み上げたいと思います。

○障害係
　資料８頁、「第１　障害認定に関する検討」読上げ。

○職認官
　文章の検討をしていただく前に少し補足をさせていただきます。この文章自体、西村
先生にご指導いただいたわけではありません。これは西村先生の名誉のためにお断り申
し上げておきます。従前にご指導いただいて、それを踏まえて事務局なりにまとめた文
章です。
　趣旨をご説明させていただきます。心筋梗塞のダメージというか、梗塞した部位なり
程度によって、予後が変わってくる。予後の悪さ、良さがケースによってだいぶ違いま
す。そのような病態が少し特徴的かと思います。そのような病態を持つ心筋梗塞をどう
考えるかというとき、軽症のものでも多少なりとも悪くはなっていくのだから一切治ゆ
はない、というのも１つの考え方かもしれませんが、一定程度安定している、いまの案
文では「長期的に見ても、著明に症状が変化する可能性が低いと見込まれる」というよ
うな表現を書いてみましたが、その程度のレベルのときには治ゆとしたほうが適当では
ないか、というのが事務局の提案でございます。
　一方、梗塞した部位などによって、左室駆出率は悪いが、症状、運動耐容能としては
比較的高い状態を保つ場合が特に若い方を中心としてあり、その場合、見た目ではわか
らないし、安定しているように見える場合もあるというのも１つ特徴なのではないかと
思いますが、そういう場合は明らかにダメージがあって、中期的・長期的には悪化する
可能性が高いわけですから、そういう見方をして治ゆにはしません。そのような場合も
含めて中期的・長期的に安定している、低下する見込みは低いという場合にのみ、治ゆ
にするのが適当なのではないかということでございます。
　もう１つ、判断基準についてです。判断基準として書いた水準の数字では、このよう
な感じのものを治ゆにするのが適当なのではないかと思っているところをうまく表現し
ているか、のちほどご意見をいただきたいと思います。事務局としては、治ゆになるレ
ベルをうまく導き出せるような数字で、かつ、ある程度医学的に使われている区切り方
がればと考えています。
　しかし、それでもうまくカバーできない場合もあるでしょう。そうした基準ではクリ
アカットにならざるを得ない面が当然あります。３要素について水準が設定できて、ど
のぐらいの症例に対応したものになるのか、ちょっと、と思うところもありますので、
「医学的に安定している」と判断できるといった押さえの基準も合わせて設けたらいか
がでしょうか、ということです。よろしくお願いいたします。

○横山座長
　いかがでしょうか。特に、線引きについてはいろいろなご意見がおありではないかと
思います。笠貫先生、いかがですか。

○笠貫先生
　代謝機能とか、いろいろ細かいところはあとで直していただくとして、この前議論さ
れた中で心機能と不整脈と虚血という３つを大きな要素として扱うと理解したつもりで
す。その中で、虚血というものを罹患冠動脈の枝数で数えるということになりますと、
逆に３枝障害のあった人は絶対に治ゆという形にはならなくなってしまう。
　それに対して、冠動脈のバイパス手術、あるいはＰＣＩ（経皮的冠動脈形成術）です
べての枝が虚血なしというようにもし改善されれば、これは３枝障害でも治ゆという形
に見られるのではないかと思います。そういう意味では、虚血というのはいまの冠動脈
バイパス手術、あるいはＰＣＩ等で虚血が残った場合とする。要するに、治療後の虚血
がどうかという評価にするのか、罹患したときの冠動脈の枝の数にするのか。そのどち
らかにするのか、きちんともう１度評価したほうがいいかなと思います。西村先生、い
かがでしょうか。ちょっと悩むところだと思います。

○西村先生
　上のパラグラフに「治療したときの再建がうまくいっている場合は罹患枝数に含めな
い」と書いてありますが、罹患枝数と虚血とはまた別の評価ですので、先生がおっしゃ
ったように虚血は別にして、罹患枝数は外してもいいのかもしれません。

○笠貫先生
　結論として、ｃのところを治療によって虚血がないというようにするか。もう１つ、
12頁のところで軽度の虚血や不整脈がある場合は等級を上げるという文章があるので、
軽度の虚血が残ったという点をどこまでにするかが難しい。

○西村先生
　その辺の線引きですね。客観的なものを入れて指標をカバーしていこうというと、ど
うしてもいろいろな端々で矛盾が生じやすくなります。だから、「軽度の虚血」ぐらい
にしておいていいのではないでしょうか。「虚血がなし」と言うと大体出てしまったり
して、判断が難しい場合もあるのです。

○笠貫先生
　そうすると、ｃのところは罹患枝数ではなくて、治療後の軽度の虚血まで認めるとい
うことですか。

○西村先生
　あとは左室駆出率を何で測るのか。例えば心エコー法で測るのか、左室造影で測るの
かによっていろいろ意見が出るかもしれません。漠然と左室駆出率40％、左室駆出率と
いう言葉でもいいと思います。特に「安静時」と入れたほうがいいのかどうかというの
は議論で、運動時に左室駆出率を測るのは難しいですから、その代わりに安静時を見
る。安静時の低値の方はやはり悪いと思います。虚血が誘発されれば労作時の駆出率が
落ちてしまいますから、虚血でカバーするという考え方にしたらと思います。

○職認官
　私の理解では、いまの３要素を障害は重さ、程度にもかかわりますが、予後に影響す
る要素として大きくしたがって、治ゆの判定においてこの３要素をよく見る必要がある
というふうにとらえているのですが。
　また、障害の程度のほうは、読み上げていませんが、前回運動耐容能を含めて４つと
いうようにご指摘いただきました。そのうち、例えば左室駆出率は予後に影響する因子
というのは一致した見解なのでしょうが、左室駆出率何パーセントであれば症状、障害
としてどの程度に評価されるべきかというのは、改めて先生に教えていただければと思
っているところです。

○西村先生
　クリアカットにはいかなくて、オーバーラップがいっぱいあると思います。あるとこ
ろの人は左室駆出率は悪いけれども、全然症状はない。ある人はほどほどでそんなに悪
くないのだけれども、症状が強い。運動制限を伴うということがあります。どのような
基準が妥当かは議論があります。40％というのは私は良い数字だと思うのですが、笠貫
先生、いかがですか。

○笠貫先生
　40でよろしいのではないかと思います。そこのところでちょっと気になったのです
が、「いずれを」と言うとこれら全てになるかと思います。

○西村先生
　文章の細かいところはいろいろあるかと思いますが、考え方としてはこの３つの要素
を取り入れて、定量的にならず40％ぐらいで切ると。不整脈はいかがですか。

○笠貫先生
　やはり１時間に10個と言うと、これはアメリカの例でやるしかないと思います。そう
すると、１時間９個以下という形になるかなと思います。

○西村先生
　次に、虚血は何で判断するかというと、またいくつかの方法論がありますので難しい
のですが、「軽度の虚血」としておくほうがいいのかもしれません。

○課長補佐
　いまのお話は10頁の「結論」ですね。ａの「左室駆出率40％以上」の要件はいい。ｂ
の期外収縮が９個以下／時間、これも大体よろしい。その次のところ、ｃの要件という
のはちょっと問題があるということですね。

○西村先生
　虚血ということを言っているときに。

○課長補佐
　ここに「軽度の虚血」と入れればよろしいですか。

○西村先生
　あるいは、「治療後に残存した軽度の虚血」などの基準を１つ入れるか。虚血を何で
診断するのですかと言うと、いろいろな方法があります。

○課長補佐
　「軽度の虚血」が何ということですか。

○西村先生
　いままであっても治ゆとしてもいいでしょうということです。

○髙本先生
　「軽度の虚血に留まる」ということですか。

○西村先生
　「軽度の虚血に留まる」でもいいと思います。

○髙本先生
　なかなか難しいですね。

○西村先生
　そうなのです。これは長期とか軽度という言葉が出てきますよね。長期というのは３
カ月という基準を一方では出しておきながら、長期に安定とか、その辺は定義が難し
い。

○髙本先生
　「軽度」をある程度決めておかないと、判断する人によって全部違ってくるというこ
とがあると思います。例えばチョウサク率何パーセント以下だとか。

○西村先生
　難しい。

○職認官
　時間も来ていますから、「軽度」を詰めるのは今日は見送るとして、先ほど概念的・
観念的に申し上げた治ゆのレベルをこのぐらいに思っていますということとの関係です
が、「長期的に」というのは、例えばあえて年数で言ったら10年ぐらいかなというイメ
ージで、少なくとも５年を超えるぐらいはそれほど変わらないだろうというぐらいのこ
とを考えておりますが、そうした場合、その水準を表す数字としては、40なり９個とい
うのはもう少し低いレベルなのかなと、思われますが、いかがでしょうか。

○西村先生
　ということは、厳しくするということですか。

○職認官
　ただ、もう少し高いレベルにしようと思っても、多分区切りとして使われている数字
がどうもなさそうな気がしますので、そういう意味では、このａ、ｂ、ｃは足切りライ
ンのように使わざるを得ないのかなと思います。それが最終的にａ、ｂ、ｃを満たし
て、かつトータルとして安定だというお医者さんのご判断がかぶってくるという判断構
造にせざるを得ないのかなという気がしています。その点はどうでしょうか。

○西村先生
　その考え方でいいと思います。

○笠貫先生
　どの程度を言うのでしょうか。日本の心筋梗塞は予後が良いですから、例えば５年後
ではいまは10％ぐらいを考えてよろしいのでしょうか。

○西村先生
　そうですね、全部入れて、重症を扱っている人の５年後の生存率、死亡率、重症心事
故率を見て。

○笠貫先生
　それぐらいの頻度を指すと考えてよろしいわけですか、いま言われた延命予防をどの
程度の。

○西村先生
　亡くなる方、心臓の再発作で亡くなる方ですね。

○課長補佐
　もちろん、亡くなるというのは論外です。要するに安定しているというのは、例えば
こういう数値がほとんど変わらないということを想定しています。例えば、この数値が
５年後には相当落ちています、治療したほうがいい状態になりますというぐらいであれ
ば、それはとても安定しているとは言えないのではないかと思います。素人考えではそ
うなのですが、先生方のほうで、それはもう安定しているのではないかというようなこ
とであれば、もちろんそのお考えに従います。

○医療監察官
　ＮＹＨＡの分類でいうIIの一部、IかIIぐらいでずっといくものを症状が安定してい
ると考えているわけです。これが５年たったらかなりIIIかIVに行ってしまう。このよ
うに数年たったら確実に、安静にしていても、心不全状態になってしまうような人にな
ってしまうということだとまずい。基本的な症状としては、10年ぐらいたってもIIはII
のままですとどの程度言えるのか。かなり悪くなるというのはもう全然駄目です。こ
のほか、主治医の先生から見て、一定の要件は満たしているのだけれどもほかにも、年
齢のようなものもあるから、５、６年もたったらち確実に悪くなるねというのだった
ら、ずっと見てあげたほうがいいのではないかというのが私どもの考えです。そういう
目から見たときにいかがでしょうかということなのです。

○西村先生
　期間を３年にするのか５年にするのか、10年にするのかによって違うと思います。そ
のときに予測の外れる確率は、100人見て10人まではいいけれども20人外れたら困る。
許容範囲の数字を決めていくしかないと思います。50％にしてしまえば５年ぐらい安定
していて、40％にしたら再発する人が出てくる率が当然高くなります。間の45％にした
らどうなのか、その辺の判断はどうするかです。根拠となるデータがどれだけあるかと
いうと、治療がどんどん新しくなっているときに、これから先の10年を見ると過去のも
の、例えば先ほどの９個というのは20年前のデータを１つの根拠にして言っているわけ
です。予測が違ってくることの難しさはあります。50％ぐらいにしてしまえば安定して
いる期間は長くなります。

○笠貫先生
　逆に言うと、いまのご説明は心機能が軽度の低下まで、中等度以上は駄目といった表
現と、心室性期外収縮を頻発する場合は駄目だと。もう１つ、軽度の虚血も許すかどう
か。むしろ、そちらが気になっています。やはり、冠動脈、バイパス疾患、ＰＣＩで虚
血なしというところを治ゆと持っていくのが１つの考え方で、心機能と不整脈に関して
は軽度とする。そうすると、軽度は大体40％以上というのが認識としてはあると思いま
す。いま西川先生が言われたように、不整脈を１時間10個でやるかどうか。これには日
本のデータがないので、主治医の先生の「頻発する心室性期外収縮」としておけばその
先生の判断で10にするか、場合によっては20にするか。その辺の幅はいい、あるするこ
とにしていただくと楽だと思います。上の説明のところで、期外収縮で１時間に10個あ
るとか、心機能が大体40％とか30％という説明を入れておいて、「結論」のところは
「軽度の心機能低下まで」、あるいは「除く」か、書きやすいほうはどちらかなと思っ
ています。１つは中等度以上の心機能低下は駄目、頻発する心室性期外収縮は駄目、そ
れから残用心筋虚血のあるものは駄目というようにするのも必要だと思います。

○横山座長
　時間となりました。お持ち帰り願って、ご検討いただきたいと思います。まだ、ちょ
っと議論をしなければならない点があると思います。この次までに素案をまとめていた
だいた上で、循環器の先生方にも見ていただくこととします。

○課長補佐
　循環器の先生にそれぞれ、どういう形がいいのかということでご意見を出していただ
き、次のときまでにその辺をまとめようと思います。

○横山座長
　是非、ご協力をお願いいたします。先ほどちょっと申し上げたように、次回から循環
器と呼吸器に分かれて検討を進めていきたいと思っています。いかがでしょうか、よろ
しいでしょうか。この間調査をなさっていたのですが、次の予定は大体わかりました
か。

○職認官
　循環器ですが、12月２日（木）の２時半から４時半ではいかがでしょうか。循環器の
先生、奥平先生を含めて４人、座長にもご都合が許せばご出席いただければと思ってい
ます。

○横山座長
　呼吸器と循環器というのはある程度共通したレベルにも考えなければならないと思う
ので、奥平先生にもおいでいただき、私もできるだけ出席するようにいたします。呼吸
器はまだ決まらないのですか。

○医療監察官
　呼吸器は11月29日（月）、２時半から４時半を予定しています。

○横山座長
　先生方、お忙しいと思いますけれども、できるだけ都合を付けていただいてご出席く
ださいますようお願いします。

○人見先生
　重複しているかと思いますが、１つだけお願いします。次回でいいのですが、「私病
」という言葉について教えていただけますか。ここに出てきていますのでよろしくお願
いします。

○横山座長
　今日はありがとうございました。以上で閉会します。


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