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平成16年度厚生労働科学研究費補助金
厚生労働科学特別研究事業


新特定保健用食品制度に関する
基準等策定のための行政的研究・中間とりまとめ





主任研究者  田中 平三

平成16年10月28日


はじめに

 健康食品に係る今後の制度のあり方については、平成15年4月から「『健康食品』に係る制度のあり方に関する検討会」において検討が進められ、本年6月に「「健康食品」に係る今後の制度のあり方について(提言)」(以下「提言」という。)が示されたところである。
 「提言」においては、国民が健やかで心豊かな生活を送るためには、一人一人がバランスの取れた食生活を送ることが重要であるとともに、国民が日常の食生活で不足する栄養素を補給する食品や特定の保健の効果を有する食品を適切に利用することのできる環境整備を行うことが重要であるとされている。そのためには、国民が様々な食品の機能を十分に理解できるよう、正確で十分な情報提供が行われることが必要であり、健康食品において表示できる内容を充実させることがその主要な柱の一つとして提言されている。
 具体的には、現行の特定保健用食品の許可制度を維持した上で、科学的根拠に基づく表示内容の一層の充実を図ることとし、以下の(1)〜(4)の見直しを行うこととした。なお、これらについては、具体的な基準等を策定するにあたって、関係分野の専門家の意見を聞く場を設け、有効性の評価方法等について検討するべきであるとされている。

(1)条件付き特定保健用食品(仮称)の導入
(2)規格基準型特定保健用食品の創設
(3)疾病リスク低減表示の容認
(4)特定保健用食品の審査基準の見直し

 これを受け、新特定保健用食品制度に関する基準等策定のための行政的研究班(以下「研究班」という。)では、(1)〜(4)について、特に有効性の考え方を中心に検討を行い、今般、以下の通り中間的にとりまとめを行った。
 なお、上の(1)〜(3)は以下【課題1】〜【課題3】に対応しているが、(4)については、(1)と重複する論点も多かったことから、【課題1】において検討を行った。


【課題1】条件付き特定保健用食品について

1 制度の枠組み
 現行の特定保健用食品(以下「特保」という。)の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルには届かないものの、一定の有効性が確認される食品を、限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として、許可対象として認めることとする。
 表示内容は現行どおり構造機能強調表示のみとし、申請があれば薬事・食品衛生審議会、食品安全委員会において個別審査を行う。
 申請に必要な資料は現行と同じとする。

(参考)「提言」より
 条件付き特保の考え方について、
  ○ 現行の特定保健用食品制度では、身体に対する特定の効果に関する「身体の構造/機能表示」を十分認めることができていないため、消費者にとって曖昧な表示を増加させているおそれがあり、国民に対する情報提供が十分でない。
  ○ このため、国民に対する食品機能についての正確で十分な情報提供を確保する観点から、食品機能の表示の科学的根拠が現行の審査基準を完全には満たしていないものであっても、一定の科学的根拠が存在すれば、効果の根拠が確立されていない旨の表示を付けることを条件として、「身体の構造/機能表示」を広く許可するべきである。

 なお、特保の審査基準の見直しについては、
  ○ 以上とは別途、現在の特定保健用食品の審査基準について、関与成分の作用機序や体内動態の明確化を重視する医薬品的な考えに準じた審査を行う仕組みを改め、実際に効果があることが科学的に確認される食品について、必ずしも作用機序が明確化されなくても許可できるよう改めるべきである。
  ○ また、審査基準の見直しにあたっては、申請者側の負担、既許可品も含めた再評価や市販後調査の必要性等も考慮して、その明確化を図るべきである。

2 許可の基準
 現行の特保の有効性の審査基準は、(1)作用機序が明確であって、(2)RCT(Randomized Controlled Trial:無作為化比較試験)により効果が示される(原則として5%以下の有意水準)ものであるのに対し、条件付き特保に求める審査基準をどのように考えることができるかについて、研究班では、以下のような意見があった。

研究班における意見
試験デザインとしては無作為化比較試験(RCT)を求めることとし、その質に幅を持たせて条件付きを拾うこととするか、RCT以外の介入試験であっても一定の質が担保されるのであれば条件付きとして認めることとするか。
RCTを求めない場合、当該論文が学術雑誌に受理される可能性が低くなるが、特保の審査において査読に代わりうる十分な検討をすれば足りるのではないか(なお、RCTでない論文であっても受理されているものはある)。
コホート研究については、当該食品の有効性を示す方法と理屈上なりうるが、特保の許可の根拠データとしての活用は現実味が薄いのではないか。
条件付き特保では、当該食品と関与成分の同等性が確保されていれば、当該食品を用いたヒト試験をしていなくても、関与成分に関する知見のみで許可することができるのではないか。
有意水準1%や5%でのデータが得られなくとも、有意傾向があれば有効性の根拠の一つとできるのではないか。
条件付き特保については、その許可後、特保に移行できる仕組みにしておく必要があるのではないか(例:ヒト試験をもう少し大規模に行う等)
試験デザインにおいて、無作為化については、不要な場合もあるのではないか。2群間の比較可能性を担保するためには、初期値が大きく異ならないことが必要であるが、無作為化によらない試験も根拠データとなり得るのでないか。
主観的な指標のうち、例えば疲労については、学会等において、疲労と食品の因果関係が証明され、それを測る指標がオーソライズされる等、個別の申請時に参考とするに足りる下地があれば、認めてもよいのではないか。
主観的な指標のうち、痛みを緩和するようなものについては、食品の保健の用途としてはなじまないのではないか。

 以上のような意見を踏まえ、作用機序と試験デザインの2つの要素について、現行の審査基準を緩和したマトリクスを作成し、条件付き特保を認める部分を以下の通りに整理した。

試験

作用機序
RCT(無作為化比較試験) 非無作為化
比較試験
(同5%以下)
対照群のない
介入試験
(同5%以下)
有意差あり
(有意水準
5%以下)
有意傾向あり
(5%を超え
10%以下)
明確 現行特保 条件付き特保 条件付き特保 ×
不明確 条件付き特保 条件付き特保
(※)
× ×

 比較試験の実施に当たっては、以下の点に留意することが必要である。
研究対象者を明確にしておかなければならない。すなわち、対象者の性、年齢、指標(例えば血圧の場合、軽症高血圧、正常高値血圧等、収縮期血圧と拡張期血圧の数値)を記載する。
プラセボ食品を摂取する対照群の設置は必須である。
マスク化については、ダブルブラインドが望ましいが試験の性質によってはシングルブラインドでもよい。非マスク化は、心理的効果などのバイアスの混入を否定できないので適当でない。
割付については、試験開始時に、全対象者を無作為に当該健康食品摂取群とプラセボ食品摂取群とに配置する方法(非逐次実験法)だけでなく、一時に多数の対象者を得ることができない場合、得られてくる対象者を一人、二人と順次無作為に割り付け、必要な大きさの標本数に達するまで試験を続けていく方法(逐次実験法)も許容される。なお、割付の開鍵は、全ての試験を終了した後行うことが必要である。
非無作為化比較試験であっても、当該健康食品摂取群とプラセボ食品摂取群との間で、性、年齢、指標等の比較性がある程度担保されなければならない。比較可能性の観点から、当該健康食品摂取群と性、年齢、指標等を、ある程度マッチさせた対照者にプラセボ食品を摂取させるというような研究デザインも考えられる。

 対照群のない介入試験については、平均回帰や経時的変動を除外できないことから、有効性を判断する試験デザインとしては不適切であると考えられ、条件付き特保のエビデンスとしても認められないと判断した。

 試験の質については、様々な観点からの総合評価となるため、個別の審査時に判断することとするが、判断のために以下の事項について明確な記載がされているべきである。
エントリー時、介入途中における研究対象者の選択や除外に関する基準
対象人数(研究の検出力と有意水準の設定)
観察期間
比較可能性について(性別・年齢・指標等)
エンドポイントの測定条件(精度管理を含む)
 なお、RCTで有意傾向(有意水準が5%を超え10%以下)がみられるが、作用機序が不明確であるもの(上表中の※部分)については、サンプルサイズ等によっては有効性を判断するエビデンスとして不十分な場合等がありえるため、特に厳密に検証する必要がある。

3 表示について
 許可表示文言については、例えば、「○○を含んでおり、血圧が高めの方に適した食品です。」という現行の表示に対し、条件付き特保は、「○○を含んでおり、根拠は必ずしも確立されていませんが、血圧が高めの方に適していることが示唆されている食品です。」とする。なお、条件付き特保の科学的根拠は4通りあることから、どういう点で科学的根拠が不足して表示に条件が付されているかについて、個々の商品の条件の詳細を別途厚生労働省ホームページ等による積極的な情報提供を行う。
 また、許可マークについては、現行のマーク中の文字「特定保健用食品」を「条件付き特定保健用食品」とする。


【課題2】規格基準型特定保健用食品について

1 制度の枠組み
 薬事・食品衛生審議会における個別審査で有効性・安全性を確認しなくても特保として許可できるものについて、事務局審査とすることにより、結果として表示許可を迅速に行うことができる制度を創設する。具体的には、関与成分等について規格基準を定め、事務局において適合するか否かの審査を行う。
 規格基準を作成するにあたっては、現行の特保の許可件数が多いもの等、有効性・安全性の観点から科学的根拠が蓄積したものについて順次作成していくこととする。
 表示できる内容は構造機能強調表示のみとする。

(参考)「提言」より
  ○ 現行の特定保健用食品制度において許可されている食品の中でも、難消化性デキストリン、オリゴ糖など(いわゆるプレバイオティクス)、乳酸菌、ビフィズス菌など(いわゆるプロバイオティクス)の中には、既に特定保健用食品の表示の許可件数が多い成分がある
  ○ こうした成分や、又は、その食品と「身体の構造/機能表示」との関係に関する科学的根拠が高い成分等については、その他とは分けて、規格基準型とし、表示を迅速に行えるようにするべきである。

2 規格基準策定の対象選定の基準
 規格基準を作成する対象の考え方として、「有効性・安全性の観点から科学的根拠が蓄積したもの」を具体化することとなるが、例えば、許可件数、最初の許可からの経過年数、ヒト試験の蓄積本数等の基準が考えられる。
 これらについて、研究班では、以下のような意見があった。

研究班における意見
ヒト試験を行った特保の申請や学術研究が十分蓄積され、様々な食品形態で関与成分が使用されている状態になれば移行してもよいのではないか。
腸管から吸収されて機能を発揮する成分(例えば血圧に関与するペプチド、骨形成に関する大豆イソフラボンなど)、あるいは腸管からの吸収を抑制する成分(コレステロールの低下に関する低分子アルギン酸ナトリウムやキトサン、食後の血糖値上昇を抑制する難消化性デキストリンなど)に関しては、食品の形態、食品中に含まれる他成分が、その機能発現に影響を与えると考えられる。
規格基準の設定から施行までの間に、開発中のメーカーを保護するための猶予期間を設ける必要があるのではないか。
効果の再現性を見るという意味で許可件数の蓄積を求めるのであれば、香料違いの許可等はカウントせず、有効性についてのヒト試験を行っている許可に限って考えるべきではないか。

 規格基準型への移行については、科学的根拠の蓄積の度合い、他の食品成分との相互作用等について、専門的観点から検討が必要と考えられる。したがって、一定のルールによりスクリーニングをした関与成分について、専門家による検討(研究班等)を行った上で、薬事・食品衛生審議会において規格基準作成の可否及び規格基準の内容について審議することとする。

 一定のルールとしては、以下の2つの条件をともに満たすこととする。
許可件数が100件を超えている保健の用途に係る関与成分であること
当該関与成分が最初に許可されてから6年以上経過しており、その6年間に特段の健康障害が出ておらず、かつ複数の企業(※)が許可を取得していること
 (※ただし、臨床試験を含む試験・成績の共有など共同開発にあっては、一企業として取り扱うこととする。)

 これらを満たす関与成分について、薬事・食品衛生審議会における審議に先立ち、専門家による検討を行い、必要な情報を整理するものとする。

 規格基準の設定に当たっては、類似した関与成分をグループ化し、そのグループ内にある関与成分を含むことにより既に許可されている食品の形態であれば、当該関与成分が当該食品形態において許可されていなくても、当該食品形態での規格基準型特保として、上記の条件を満たすものについて、認めることとする。個々のグルーピングの仕方については、専門家による検討を行うこととする。

3 今回規格基準を作成する関与成分とその内容について
 許可が100件を超える保健の用途としては、「おなかの調子を整える」等の表示をするもののみが該当する。
 そのうち、スクリーニング基準(関与成分の許可から6年以上経過し、複数企業が許可を取得していること)を満たす関与成分は以下の通りである。

 難消化性デキストリン、ポリデキストロース、小麦ふすま、グァーガム分解物、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖

(なお、生菌については、現時点でスクリーニング基準を満たすものはない。)

 今後、当研究班において、規格基準の作成が可能かどうかの議論及び個別の規格基準の作成を行う。

 当該関与成分で許可実績のない食品形態でも規格基準型特保として認めることのできるグループとしては、食物繊維、オリゴ糖、生菌と分けた。これについては、当該グループごとの食品形態であれば、どの関与成分も機能を減弱されることはないと解され、適当であると判断される。

4 表示について
 許可表示文言については、保健の用途をもたらす関与成分の効果ごとに基準を決め、その表示のみとする。また、許可マークについては、現行のマークと区別する必要性がないため、現行と同じものとする。
 また、研究班においては、同じ関与成分が多種の食品に入ることが想定されるので、消費者が含有量を合計して摂取上限値を超えないようにできるような表示の工夫が必要ではないかという指摘があった。この点については、現行制度においても、関与成分の食事摂取基準(栄養所要量)が定められている場合はその充足率を表示させているため、この仕組みを維持することによって担保できるものと考える。

5 個別品目の申請について
 安全性については現行通りのヒト試験を求めることとする。
 なお、有効性については、規格基準に適合していることをもって確認されており、申請時に現行で求めている資料を提出する必要はないものである。

 また、規格基準型特保の許可に当たっては、制度の濫用を防ぐため、許可に当たっては、食品中の他の成分等を関与成分とする特保であるとの誤解を招かない表示がなされているかどうかについて、表示見本を厳正にチェックする。既許可品に含まれていない副原材料等が使われている等、有効性・安全性について事務局で判断できないものについては、通常の個別審査へ移行させることとする。


【課題3】疾病リスク低減表示について

1 制度の枠組み
 特保の許可制度の中で、医学的・栄養学的に確立している関与成分について疾病リスク低減表示を新たに認めることとする。構造機能強調表示とは別に、疾病リスク低減表示を認めようという国際的な健康強調表示の流れにも合致するものである。
 諸外国で既に認められている疾病リスク低減表示制度を見ると、摂取過剰となっている脂肪、コレステロール、ナトリウム等について、例えば、「低ナトリウムの食事は高血圧になるリスクを減らします」等、摂取量を減らすことによる疾病リスク低減表示が一般食品に認められている例があるほか、当該食品又は栄養素の疾病リスク低減効果について、科学的な根拠が乏しいとして限定的な表示をさせているものがある。これらを日本における疾病リスク低減表示の考え方に取り入れることもありうるが、現行の特保の制度になじむものであるかどうかについての検討が必要である。
 特保の考え方は、当該許可食品を通じた関与成分の積極的な摂取が健康の保持増進に寄与するというものである。一方、「低ナトリウムの食事は高血圧になるリスクを減らします」等、食品中のある成分の摂取量を直接減らすことによる効果の発現は、特保の考え方とは発想が逆であり、特保の制度になじまないものと考えられる。なお、現行の制度では、低ナトリウム等の表示は特別用途食品(病者用食品)において許可がなされているところである。
 また、限定的な疾病リスク低減表示については、科学的根拠のレベル等について将来的な検討が望まれる。
 なお、科学的根拠が確立されている「カルシウムと骨粗鬆症」「葉酸と胎児の神経管閉鎖障害」を表示しようとする際の申請に当たっては、有効性を示す資料は規格基準型と同じく省略可能である。薬事・食品衛生審議会及び食品安全委員会における個別審査においては、安全性や再現性、表示内容についての検討を行うこととなる。

(参考)「提言」より
  ○ 疾病リスク低減表示については、アメリカで既に認められているほか、コーデックス、EUにおいても認められる方向にあることから、表示の選択肢を拡げ消費者に対して明確な情報を提供する観点から、わが国においても認めるべきである。
  ○ ただし、認めるにあたっては、疾病には多くの危険因子があることや十分な運動も必要であることなどを表示すること、過剰摂取に十分配慮した表示をつけることを条件とし、さらに、認める表示内容についても、
 「日頃の運動と、適切な量のカルシウムを含む健康的な食事は十代の若い女性が健全な骨の健康を維持し、歳をとってからの骨粗鬆症になるリスクを低減するかもしれない。この食品はカルシウムを豊富に含む。」
 「適切な量の葉酸を含む健康的な食事は、女性にとって、脳又は脊髄の神経管閉鎖障害を持つ胎児が生まれるリスクを低減するかもしれない。この食品は葉酸を豊富に含む。」
など、その科学的根拠が医学的、栄養学的に広く認められ確立しているものとするべきである。

2 カルシウム・葉酸以外について求めるエビデンスの考え方
 「科学的根拠が医学的、栄養学的に広く認められ確立しているもの」の具体的内容については、以下の通り具体化できる。現時点では、この条件を満たし、個別の食品において疾病リスク低減表示を認める必要があると考えられるものは、上述の「カルシウムと骨粗鬆症」「葉酸と胎児の神経管閉鎖障害」である。これ以外の栄養成分と疾病リスク低減効果の関係について、表示許可を求める場合は、この考え方に沿って文献・データ等を収集し、申請することとなる。

国際的または国内において、複数の疫学的研究があること。疫学的研究については、試験デザイン、研究の質等から見て、十分な科学的根拠であると判断されるものであること。また、介入研究だけでなく、観察研究も存在すること。
原則として、コクランデータベースに収載されている等、複数の疫学的研究をメタアナリシスした論文があること。例外となるのは、既に多くの諸外国において一致した公衆衛生政策がとられており、その根拠となる疫学的研究が共通していることが示された場合等が考えられる。
当該関与成分と疾病の関係が、諸外国で疾病リスク低減表示の対象となっている場合は、その表示が限定的(条件付き)でないこと。

 これらの評価のための方法論については、アメリカの疾病リスク低減表示制度(Health Claim)等で用いられている、複数の科学的根拠を総合的に評価する考え方を参考とした。

 また、関与成分の疾病リスク低減効果を十分に示すことのほか、以下のような事項について、データを付した説明が必要である。
日本国民の疾病の罹患状況等に照らして、当該疾病リスクについての注意喚起が必要であるか。
注意喚起が必要である場合、一般的な勧告や食生活指針等による普及啓発では足りず、個々の食品に対する表示許可という形で行わなければならない合理性はあるか。

3 カルシウム・葉酸についての考え方
 カルシウム・葉酸についての科学的根拠は参考資料として添付した。
 これらの疾病リスク低減効果を担保するために必要な1日当たり摂取目安量について、通常の食品からの摂取量を踏まえ、特保からの1日当たり摂取目安量として設定することとする。
 諸外国の状況を見ると、食品において疾病リスク低減表示を認めている米国では、カルシウムと骨粗鬆症、葉酸と神経管閉鎖障害についても表示の対象である。米国での摂取目安量については、カルシウムについ400mg以上、葉酸は400μgとされているところである。

4 表示について
 許可表示文言については、コーデックスガイドラインに沿った2段階表示で、日本語になじむよう前後を入れ替えたものとして、例えば次のような表示とする。
 「この食品はカルシウムを豊富に含みます。日頃の運動と、適切な量のカルシウムを含む健康的な食事は若い女性が健全な骨の健康を維持し、歳をとってからの骨粗鬆症になるリスクを低減するかもしれません。」
 「この食品は葉酸を豊富に含みます。適切な量の葉酸を含む健康的な食事は、女性にとって、二分脊椎などの神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクを低減するかもしれません。」
 また、表示文言にあるように、多くの場合、疾病は種々の要因によって発症するものであり、食生活のみによって発症リスクが低減されるものではないことから、疾病リスク低減効果のある関与成分を大量に摂取しても当該効果は増大しない旨の表示を併せて行うこととする必要がある。

 許可マークについては、現行のマークと差別化を図る必要性がないため、現行と同じものとする。

5 個別品目の申請について
 カルシウム、葉酸については、医学的、栄養学的に認められていることこと等から、有効性を確認する試験を求める必要はないと解される。一方、当該食品の安全性については、規格基準型と同じ考え方に則り、現行通りのヒト試験を求めることとする。

 なお、カルシウム・葉酸以外の関与成分については、上述「2 葉酸・カルシウム以外について求めるエビデンスの考え方」に沿って十分なエビデンスを揃えた申請があった場合に、専門家による検討(研究班等)を行った上で、審議会にて決定することとする。


おわりに

 当研究班では、医薬品的な考えによるとされてきた特保の審査を、食品としての有効性の評価に改めるにはどのようにすればよいか、という観点を中心に据えて検討してきた。これについて、作用機序が明確でない場合、試験結果で有意差が出ない場合、科学的根拠が蓄積している場合等について有効性の根拠として認めることで、食品としての評価方法の考え方を示したものである。
 今後は、規格基準型特保の個別の規格基準の作成等、残された課題についての研究を進めることとする。


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