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確定拠出年金
連絡会議
第11回
平成16年10月28日
資料4

確定拠出年金制度の実態調査の実施状況について(中間報告)


 ヒアリング対象企業については、14年度、15年度に実施したアンケート調査に2年連続で協力してくれた企業18社、15年度のみの協力企業からはていねいに回答が記されている企業21社、合計39社をまず抽出し、そこからさらに業種、所在地などを見て、連絡会議から調査先について提案のあった中小企業を中心に、15社に絞り込んだ。
 しかし短期日に調査を行う必要のあることから、関東地区・関西地区、北九州地区が中心となった。
 労働組合を有する9社には、併せてヒアリングを行いたい旨申し入れたが、4社からは対応できない旨、回答があったため、承諾を得ることのできた5社に対して行った。
 これに基づいて、平成16年7月末から9月末までに、確定拠出年金を実施している14社(1社は、合併に伴う規約改正中であり、11月中旬になる見込み)、及び運営管理機関3社に出向き、直接、担当者から「投資教育」を中心に聞き取り調査を行った。

[調査結果の概要]

(1) 投資教育の内容
 大部分の企業で、確定拠出年金導入の背景、趣旨、制度の仕組み等を説明し、自己責任、自助努力の必要性を説明している。
 確定拠出年金は例外なく既存の退職給付の一部を移行したものであるため、制度導入時には移行前後の制度の違いを説明している。このとき、資産運用上の指針となるように、給付設計上の想定利回りも明らかにされている。
 制度導入時及び新入社員には、資産運用の基礎知識、運用商品の内容については一通りの説明が行われている。
 大部分の企業では制度導入後1年程度しか経過していないため、まだ継続教育に対する明確な方針を持っていない。継続教育の一部として、制度内容の周知、運用商品の内容説明を繰り返し行ったり、運用実績データを広報している企業もある。

(2) 情報提供の具体的方法
 制度導入時には、例外なく、全加入者に資料を配付し、一人当たり2時間程度の説明会を開催している。
 この他に、大部分の企業で、ビデオ、コールセンター、Webが情報提供の手段として用いられている。また、DC専用ヘルプデスクを設置している企業もある。
 継続的に、適宜説明会が行われている。また、継続教育では、一般にはWeb、コールセンターが用いられているが、この他に一部ではフォロー・セミナーの開催、ニュースレターの配付等が行われており、運用状況や経済状況などについても情報が提供されている。

(3) 情報提供方法の工夫等
 事業所が分散している企業では、説明会の開催場所、開催時間の設定に工夫をこらしている場合が多い。
 説明資料は、絵や図を使い分かりやすいものを作成している。このとき、大部分の企業で運営管理機関が持っている知識・経験を活用している。
 一部の大企業では、家族の理解を得るためにビデオを個人に配付している。
 継続教育では、Web、コールセンターを積極的に活用している場合が多い。また、運用実績が想定利回りに満たない者へ個別にアドバイスしている場合もある。
 運営管理機関と生涯にわたってのライフプランや資産運用などについてかなり詳細の研修会を行っている。また、その後に希望者には別途、個別に相談できるような対応を取っている。現在は、自主性に任せている部分が多いが、今後、各自の知識レベルやライフスタイルなどに合わせたクラス別のセミナーなどを企画する予定がある。

(4) 事業主の協力内容
 例外なく、制度導入時の説明会の会場、機材の提供及び就業時間内の実施に便宜を与えている。
 ビデオの作成等を事業主と共同して行っている場合が多い。
 海外勤務者への情報提供に便宜を図っている。
 投資教育を新入社員研修のプログラムに組み込んでいる。
 運用結果の分析等を社内報に掲載している。

(5) 加入者の理解度
 「制度導入時の説明会だけでは、全員共通の理解度を求めるのは難しい」というのが一般的な評価である。
 「教育後の理解度アンケートによれば、8割が理解している」あるいは「9割の社員は理解できている」と高く評価している企業がある。
 その一方では、「教育の効果はある程度あったと思うが、理解のレベルは高いとはいえない」あるいは、「理解度が高まっているかは掴み切れていない」とする企業がある。
 「コ−ルセンターに対する制度、運用に関する問い合わせが増加した」という事実から、「投資に対する関心をある程度持つようになった」と評価している企業がある。
 新入社員については状況を把握している企業は少ないが、「制度概要については理解されたと思われるが、資産運用についての理解度は低い」という評価が一部に見られた。
 継続教育に関連しては、「スイッチングや運用状況に興味を持つ社員が増えた」あるいは「少ないながらも、投資信託のアクイティブ型への移行が見られる」という見方もあるが、多くの場合「スイッチングを行った者は少ない」として、理解度は低いと見ている企業が多い。
 「最近、スイッチングの問い合わせなどが出てきており、リスクとリターンのことを考えて資産配分を考えている社員が増えてきた」と感じている企業がある。
 「説明内容が多岐にわたるため消化不良の感があり、投資経験のない者にとっては専門用語が理解できない」としている企業がある。
 「元本確保型商品の選択が多く、想定利回りを確保できない者が多い」ことから、投資教育の効果に疑問を呈する向きもある。
 今回の導入によって、「これをきっかけにライフプランや資産運用などに関心を持つようになった」と見ている企業がある。
 「セミナーへの出席率やポートフォリオの組み変えなどによって従業員の関心度をみている」という企業も見られた。

(6) 課題・問題点等
 公的年金制度を含めた退職給付の中での確定拠出年金の位置づけを認識させることが必要である。
 確定拠出年金を老後のライフプランの中で考えてもらうことが必要である。
 加入者の興味・理解度には個人差があるので、加入者の意識をどう高めていくかが課題である。
 全国に数多くある営業所の全員が説明会に出席できるようにしているが、出席した者と出席しなかった者について、理解度に個人差が出てきており、これをどうフォローしていくかが課題になっている。
 社員の投資経験に応じて、制度や資産運用への興味・関心に二極分化傾向がみられる。投資経験を何らかの形で把握し、それを継続投資教育に反映させる必要性を痛感している。

(7) 労働組合からの意見
 会社の業績が悪化する中、債務負担の軽減を考えて制度導入に協力したが、景気が回復しつつある現在、その必要性に疑問を感じている。
 従業員一人ひとりが老後生活を設計できるようにライフプランセミナーをしっかりやってほしいが、思うようにできていない。会社は、定年前研修としては行っているが、確定拠出年金の関係からは、若い従業員に投資教育に関心を持ってもらいたいということにも関連して、もっと早い時期から行う必要があると考えられ、組合独自に取り組む必要もあると考えている。
 組合の幹部に知識がないので、組合としてどう対応していいかわからない。できるかぎり組合員の老後生活が危うくならないよう、一定枠が保障されるよう考えている。組合員も、会社が費用を負担していることもあって、もうひとつ「自己責任」ということがわかっていない。



ヒアリング企業プロフィル

番号 企業名 本社所在地 業種 従業員の状況 他の
退職給付
導入時の
選択制度
労組の有無 ヒアリング実施日
正規
従業員数
その他 合計
1 A社 東京都 サービス業 1,004人 8人 1,012人 7月27日(火)
2 B社 東京都 建設業 1,303人 158人 1,461人 厚年
適年
7月27日(火)
B社労組
3 C社 大阪市 サービス業 428人 5人 433人 7月27日(火)
4 D社 大阪市 建設業 945人 72人 1,017人 一時金
規約型確定給付企業年金
7月27日(火)
5 E社 東京都 建設業 242人   242人 前払退職金 8月5日(木)
E社労組
6 F社 東京都 運輸通信業 11,961人 1,510人 13,471人 厚年
一時金
8月6日(金)
F社労組
7 G社 東京都 サービス業 11,500人 1,700人 13,200人 一時金
企業年金基金
8月6日(金)
8 H社 北九州市 サービス業 281人 35人 316人 8月6日(金)
9 I社 神戸市 サービス業 23人 1人 24人 8月11日(水)
10 J社 秦野市 電気・ガス業 42人 3人 45人 厚年 8月23日(月)
11 K社 福岡市 金融・保険業 908人 1,000人 1,908人 厚年
一時金
8月26日(木)
12 L社 東京都 サービス業 3,943人 1,529人 5,472人 厚年
一時金
8月31日(火)
13 M社
M社労組
東松山市 製造業 6,461人 200人 6,661人 キャッシュバランス 9月2日(木)
14 N社 神戸市 製造業 1,527人 581人 2,108人 厚年 9月21日(火)
N社労組
15 O社 大阪市 卸売・小売業 76人 5人 81人 一時金 11月中旬(合併に伴う規約改正が終了してからヒアリングを行うため)

ほか、運営管理機関3社にヒアリングを実施。


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