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社保審―医療保険部会 資料7
第10回(H16.10.22)



国民健康保険における
都道府県の役割の強化



国民健康保険における都道府県の役割の強化

医療保険制度改革に関する基本方針(平成15年3月28日閣議決定)
 保険者の再編・統合
 高齢者医療制度の創設
 基本方針の具体化に当たっては、以下のような取組が必要
(1)  総合的な医療費適正化の推進
 医療費を誰がどう負担するかの議論だけでなく、まずは住民の生活の質(QOL)を向上させるとともに医療費の適正化を図るための総合的な取組の推進が不可欠

図

 (2)  医療費の地域差の縮小と保険料の平準化
 保険運営の広域化を推進するため、市町村間の医療費の地域差の縮小と保険料の平準化が必要

 「都道府県は、国民健康保険事業の運営が健全に行われるように、必要な指導をしなければならない。」(国保法第4条第2項)とされており、都道府県の役割の強化が必要。
   
 都道府県の役割・責任の強化のための国保における都道府県負担の導入

 都道府県に対し都道府県の医療費の適正化や保険料の平準化における役割・責任を強化するため、国民健康保険における財政調整機能の付与等を行うとともに、国保の給付費に対する都道府県負担を新たに導入する。
 



平成16年度予算ベース
費用総額  約65,900億円
国庫負担額  約34,900億円
国庫負担割合  約1/2
(療養給付費負担金、調整交付金等の10/10)
都道府県を中心とした医療費の適正化や保険運営の広域化への第一歩


国保財政の現状

国保財政の現状の図
※1  給付費等の10%に加え、保険基盤安定制度負担金の一部に相当する額を調整交付金としており、実際の額は給付費等の10%とならない
※2  給付費等の40%を原則とするが、地方単独措置に係る波及増分のカット等により、実際の負担額は給付費等の40%とならない


市町村国保の地域格差(平成14年度)

(1) 一人当たり医療費の格差
  最高・最低の市町村 最高・最低の都道府県 全国平均
最高(A)
赤平市
(北海道)
 690,423円
北海道 460,758円 358,322円
最低(B)
小笠原村
(東京都)
 172,034円
沖縄県 273,670円
(A)/(B) 4.0倍 1.7倍

(2) 一人当たり保険料(調定額)の格差
  最高・最低の市町村 最高・最低の都道府県 全国平均
最高(A)
羅臼町
(北海道)
 115,162円
栃木県 88,091円 79,321円
最低(B)
十島村
(鹿児島県)
 21,260円
沖縄県 53,885円
(A)/(B) 5.4倍 1.6倍

(注1)  国民健康保険事業年報(平成14年度)による。
(注2)  老人医療受給対象者を含めた被保険者数を用いて算出している。
(注3)  保険料(調定額)には、介護納付金分が含まれている。


都道府県の地域差指数の比較

都道府県の地域差指数の比較のグラフ
注: 1人当たり医療費は、都道府県の年齢構成の違いによる医療費の格差を除去して指数化したもの(地域差指数)を記載した。
(例えば、地域差指数が1.2というのは、年齢構成の違いを除去した後の医療費が、全国平均の1.2倍ということを意味する)
資料出所: 厚生労働省保険局「国民健康保険事業年報」(平成14年)等から保険局において算出。


保険者規模別構成割合の推移
保険者規模別構成割合の推移のグラフ


国民健康保険における都道府県の主な事務

項目 内容
都道府県(知事)の事務  
1. 総則
一般的な指導義務

 国保事業の健全な運営のための一般的な指導権限(§4(2))
2. 助成
財政援助
 保険基盤安定制度に係る負担金(§72の2(3))
 基準超過医療費共同事業に係る負担金(§72の3(2))
 国保事業に要する費用について補助金の交付、貸付金の貸付ができること(§75)
 広域化等支援基金の設置(§75の2)
 高額医療費共同事業に係る負担金(附則第16項)
3. 指導・監督
保険者等
(市町村、組合等)
〔市町村〕
 重要事項(給付率、保険料率、任意給付の種類・内容)に係る条例の制定、改廃に関する協議に応じること(§12)
 高医療費市町村に対する助言、指導等(§68の2(5))
 事業、財政状況に関する報告の徴収及び検査(§106、§107)
〔国保組合〕
 組合設立、解散、組合の運営の重要事項(規約の変更等)に関する認可等(§17、§27、§32)
 事業の状況報告の徴収及び検査、改善命令等運営に関する指揮(§25、§107、§108)
〔国保連合会〕
 連合会の設立、解散、運営の重要事項(規約の変更等)に関する許可及び事業の改善命令等運営に関する指揮等(§84、§108)
 診療報酬審査委員会の審査委員の委嘱等(§88)
  ○ 医療機関
 保険医療機関等に対する指導、報告の徴収、検査等(§45の2)
  ○ 医師等
 医師等に対する質問、検査(§114)


市町村国保の財政調整交付金の概要

市町村国保の財政調整交付金の概要の図


健康保険法等の一部を改正する法律附則第2条第2項の規定に基づく
基本方針について(平成15年3月28日閣議決定)(抜粋)

2. 保険者の再編・統合

(2)  具体的な方向

(1)  保険者ごとの再編・統合の方向

 国保

 市町村国保については、「市町村合併特例法」の期間中は、市町村合併の推進や事業の共同等により、保険運営の広域化を図る。

 さらに、国、都道府県及び市町村の役割を明確にした上で、都道府県と市町村が連携しつつ、保険者の再編・統合を計画的に進め、広域連合等の活用により、都道府県においてより安定した保険運営を目指す。なお、被保険者管理や保険料徴収等の事務については引き続き住民に身近な市町村において実施する。

 また、低所得者を多く抱える市町村国保の保険運営の安定化を図りつつ、財政調整交付金の配分方法の見直しや都道府県の役割の強化を図る。

 国保組合については、市町村国保の補完的役割を果たしているが、職域保険と地域保険という観点から、その在り方について検討するとともに、小規模・財政窮迫組合の再編・統合に資するよう、規制緩和を進める。

 また、市町村国保との財政力の均衡を図る観点から、国庫助成の在り方について見直しを行う。

(2)  地域における取組

 地域の実情を踏まえた取組

 保険者、医療機関、地方公共団体等の関係者が、都道府県単位で連携して地域の住民に対し質の高い効率的な医療を提供できるような取組を推進する。

 保険者・医療機関・地方公共団体が協議する場を設け、医療の地域特性の調査・分析・評価を行うとともに、医療計画、介護保険事業支援計画及び健康増進計画との整合性を図りつつ、医療費の適正化に向けて取り組むための計画を策定する。

 当該計画の実施に当たり、住民の健康づくりや適切な受診、病床の機能に応じた効率的な利用の促進等地域における取組に関し、国と都道府県の間で協議・検討を行い、必要な措置を講ずる。

 医療の地域特性に起因して生ずる医療費の地域差部分については、地域における適正化努力を促すような仕組みを導入する。

 保険者による取組

 再編された保険者は、レセプト点検等の取組を更に強化するとともに、被保険者相談、地域の医療サービス等に関する情報提供、きめ細やかな保健事業について都道府県単位で共同実施を推進する。


主要制度における公費負担の割合(1/2)

制度 公費負担に係る国と地方の分担 経緯 備考
基礎年金 国 10/10
(公費負担=全体の1/3)
制度発足時より10/10  
健康保険
(政管健保)
国 10/10
(公費負担=全体の13%)
制度発足時より10/10  
国民健康保険
(地域保険)
国 10/10
(公費負担=全体の1/2)





保険基盤安定制度(低所得者対策)
 国1/2、都道府県1/4、市町村1/4
基準超過医療費共同事業(高医療費対策)
 国1/3、都道府県1/3、市町村1/3
市町村国保特別会計への繰入れ措置等





制度発足時より10/10
ただし、地方の負担について欄外の注1参照
国が公費負担の一義的責任を負ってきたが、論議の上、昭和63年度から、低所得者の偏在や医療費の地域格差等の地域問題について、地方の協力が不可欠として、地方負担を導入。
生活保護 国 3/4 都道府県
or市 1/4
(〜S59)  8/10
(S60〜63)  7/10
(H1〜)    3/4
制度発足時は地方2割負担。国の責任としつつも地方も応分の負担を行い、協力して実施。(欄外の注2参照)
児童扶養手当 国 3/4 都道府県
or市 1/4
(〜S59)  10/10
(S60)  8/10
(S61〜63)  7/10
(1〜)  3/4
制度発足時は母子福祉年金の補完的制度。
昭和60年に福祉対策として位置付けられ、国と地方が応分の負担で協力して実施。
児童手当 国 2/3 都道府県
1/6
市町村
1/6
制度発足時より2/3 制度発足時から2/3。国が地方よりは責任をもつべきとの観点。
老人医療 国 2/3 都道府県
1/6
市町村
1/6
制度発足時より2/3 前身の老人医療無料化制度当時の医療保険と公費の負担割合を踏襲。
(公費負担=全体の1/2)
※平成14年10月より5年間かけて3割から5割に段階的に引上げ。
介護保険 国 1/2 都道府県
1/4
市町村
1/4
制度発足時(H12)より1/2 前身の老人福祉制度の公費負担の内訳が国1/2、都道府県1/4、市町村1/4であること等に倣い、制度発足時から、国と地方が応分の負担。
(欄外の注2参照)
(公費負担=全体の1/2)
障害者支援費 国 1/2 都道府県
1/4
町村
1/4
(〜S59)  8/10
(S60)  7/10
(S61〜) 1/2
制度発足時は地方2割負担。国の責任としつつも地方も応分の負担を行い、協力して実施。(欄外の注2参照)
(施設支援) 国 1/2 市1/2
障害者支援費
(居宅支援)
国 1/2 都道府県
1/4
市町村
1/4
保育所
児童養護施設
の運営費
国 1/2 都道府県
1/4
市町村
1/4
(〜S59)  8/10
(S60)  7/10
(S61〜) 1/2
制度発足時は地方2割負担。国の責任としつつも地方も応分の負担を行い、協力して実施。(欄外の注2参照)

(注1) 〔国民健康保険に係る国負担・地方負担の経緯〕
昭和56年に、医療費の定率補助40%のうち5%を都道府県負担とする形で昭和57年度予算の概算要求したが、地方団体の強い反発により、見送られた。
昭和63年の国民健康保険法改正で、保険基盤安定制度 (※1)や基準超過医療費共同事業 (※2) に都道府県負担が導入され、市町村への助言・指導のみならず、一定分野での補助等、運営に都道府県も参画することを法令上明確化。
(※1) 低所得者に対する保険料の軽減相当額を、国(1/2)、都道府県(1/4)、市町村(1/4)が負担する制度
(※2) 高医療費市町村に係る基準超過医療費の一定部分を、国(1/3)、都道府県(1/4)、市町村(1/3)が負担する制度
また、昭和63年度からは、都道府県ごとに設置された国保連合会が行う高額医療費共同事業(※3)に対する都道府県の補助に対して地方財政措置を実施し、平成14年度まで継続。平成15年度からは当該事業を法律上の措置(15〜17年度の暫定措置)として位置付け、その費用を国(1/4)、都道府県(1/4)、市町村(1/2(国保特会からの拠出金))で負担。
(※3) 1件当たりの額が高額な医療費が発生した場合に、その一定部分を国・都道府県・市町村からの負担を財源として国保連合会が負担する事業
平成4年度以降、国民健康保険財政の安定化、保険料負担の平準化等に資するため、市町村が所要の経費を一般会計から国保特別会計に繰り入れられるよう毎年度地方財政計画に一定額を計上。(平成4年度:約1,000億円、平成5〜12年度:約1,250億円、平成13年度〜:約1,000億円)
(注2) 〔福祉施策に係る国負担・地方負担の経緯〕
生活保護や老人福祉等福祉制度の国庫負担率は、昭和59年までは8/10であったが、昭和60年度から、国の厳しい財政状況等を背景として、暫定措置として、高率補助金の一律一割削減の中で、7/10とされた。
老人福祉、児童福祉、障害者福祉等については、福祉の一般化の観点から昭和61年度以降1/2とされた。
一方、生活保護については、昭和63年度まで7/10が継続された後、政府・与党間で特別に協議した結果、平成元年度から3/4とされた。


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