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社保審―医療保険部会 資料3
第10回(H16.10.22)

医療費の適正化対策について(事務局案)

1.基本的考え方

(1)  近年の急速な高齢化の進展の中で老人医療費は増大し続けており、その国民医療費全体に占める割合は、年々上昇する傾向にある。

(2)  こうした中で、医療保険制度を今後とも持続可能なものとしていくためには、現役世代の負担が過重なものとならないよう、老人医療費を中心として医療費の伸びの適正化を図っていくことが重要である。

(3)  医療費の水準は、地域における疾病の発生状況及び患者の受診動向のほか、地域における医療提供体制の状況、保健事業及び介護サービスの実施状況等とも関連があり、これらは都道府県ごとに格差が大きい。こうした状況を踏まえ、都道府県単位で関係者が連携して医療費の適正化に取り組んでいく。

(4)  医療の地域特性に応じて、若齢期からの健康づくりや高齢者の生活機能を重視した医療・介護サービスの提供等に取り組み、国民のQOL(生活の質)の向上を図ることを通じて、医療費の適正化の実現を目指す。


2.医療費適正化計画の策定

(1)  都道府県が、保険者・医療機関・市町村等の関係者による協議の場を設け、地域の医療特性を把握・分析した上で、医療費の適正化に向けて取り組むための計画(以下、「医療費適正化計画」という。)を策定する。

(2)  医療費適正化計画の策定に当たっては、まず地域の医療特性を把握・分析し、当該地域における課題を明らかにした上で、具体的取組の在り方を検討する。

(3)  医療費適正化計画では、特に次の視点を重視し、都道府県ごとの取組の目標を設定した上で、実効性ある取組を推進していく。
(1) 生活習慣病予防を中心とする保健事業の推進
(2) 急性期医療の質の向上と効率化
(3) 地域における高齢者の生活機能の重視(介護サービスと連携した在宅医療の充実)

(4)  医療費適正化計画については、同じく都道府県が策定する健康増進計画、医療計画、介護保険事業支援計画と相互に整合性を確保する。

(5)  国は、都道府県が策定する医療費適正化計画に関し、指針の策定などの技術的支援を行うとともに、計画の実効性ある推進のため、各種方策を総合的に実施する。


3.具体的対策

(1) 生活習慣病予防を中心とする保健事業の推進
  (1)  基本的考え方
 保険者が地域保健と連携しながら、若齢期からの保健事業に積極的に取り組むことにより、生活習慣病の発症を抑制し、加入者の健康度やQOLを向上させるとともに、中長期的な観点から医療費の適正化を図る。
  (2)  具体策
ア.  生活習慣病の発症・重症化予防や医療費適正化について一定の成果を上げている取組について検証を行った上で、科学的根拠に基づいた効果的な保健事業の手法の開発・普及を図る。
イ.  具体的には、地域における取組として、健診後の保健師の戸別訪問による健康相談や運動教室の開催等により老人医療費の適正化に効果を上げている例、並びに職域における取組として、運動習慣がない者に対する個別指導の実施が健保組合の医療費の適正化に効果を上げている例などがあり、さらにこうした事例の収集・分析を行うことを通じて、効果的な保健事業の手法を明らかにしていく。
ウ.  都道府県が主体的な役割を発揮しながら、保険者と地域保健が一体的に保健事業に取り組む体制を構築し、両者の役割分担と連携の在り方を明らかにしつつ、保険者自らがより積極的に推進できるようにしていくことを目指す。
エ.  特にこれまで十分に行われてこなかった健診後の事後指導・フォローアップについて、保険者が中心となって取り組んでいく体制を強化する。
オ.  都道府県単位での保険者協議会の設置等により、保険者同士の連携や地域と職域の連携を強化し、サラリーマンに対する現役時代・退職後を通じた一貫した健康管理や被扶養者に対する保健事業の取組などを推進する。

(2) 急性期医療の質の向上と効率化
  (1)  基本的考え方
 若年期・壮年期はもとより高齢期においても、疾病の特性や重症度に応じた質の高い急性期医療がより効率的に提供されることを目指す。
  (2)  具体策
ア.  急性期入院医療を担う医療機関について、地域のニーズを踏まえ、それぞれの専門性に応じた機能の明確化を図る。
イ.  急性期の入院患者に対し、必要な医療資源が集中的に投入されるようにし、在院日数の短縮を図ることにより、急性期医療の質の向上と効率化を図る。
ウ.  急性期入院医療に係る診断群分類別包括評価(DPC)について、その導入の影響を検証し精緻化を図りつつ、疾病の特性や重症度を反映した包括評価の実施に向けて検討を進める。
エ.  急性期の入院から回復期(亜急性期)、慢性期の医療へと至る患者の流れを円滑なものとするため、地域における医療機関の連携を推進する。
オ.  具体的には、地域において機能を明確化させた急性期医療を担う病院が、当該病院を退院した後の回復期(亜急性期)、慢性期の医療をも視野に入れた診療計画を作成することなどにより、地域の医療機関との連携の強化を図る取組を進める。

(3) 地域における高齢者の生活機能の重視(介護サービスと連携した在宅医療の充実)
  (1)  基本的考え方
ア.  急性期の入院から、回復期(亜急性期)等を経て、在宅(多様な居住の場)での療養に至る患者の流れを促進する。
イ.  在宅(多様な居住の場)における介護サービスと連携した医療サービスの充実を図ることにより、患者のQOLの向上を図るとともに、上記アのような入院から在宅への患者の流れを促進し、社会的入院の解消を図る。
  (2)  具体策
ア.  医療機関からの転換を含め、多様な居住の場(ケアハウス、グループホーム、ユニットケア型特養・老健施設、小規模多機能型施設等)の質的・量的充実を図り、退院後の患者の受け皿を確保する。
イ.  入院から在宅(多様な居住の場)での療養生活に円滑に移行できるよう、入院医療提供者と在宅医療・介護サービス提供者の間の連携を強化する。
ウ.  既に要介護認定を受けている高齢者が心身の状況に応じた必要な医療を受けるため、地域において医療・介護の間で一層連携がとられ、生活機能を重視した形で総合的にサービスが提供できるような仕組みを検討する。
 この場合、とりわけ在宅でサービスを受ける後期高齢者に対して地域で主治医やケアマネージャーが一層協働できるようにする。
エ.  療養病床、訪問看護、訪問リハビリなど医療保険と介護保険に共通するサービスについて、その機能分担の在り方を明確化する。
オ.  介護保険施設におけるホテルコスト及び食費に係る費用負担の在り方に関する議論を踏まえ、医療保険制度としての対応の在り方を検討する。

(参考) その他これまで議論されてきた医療費の適正化対策の例
 老人医療費の伸び率管理制度
 日本型参照価格制度
 OTC(一般用医薬品)類似薬(ビタミン剤等)の扱いや免責制など公的保険給付の内容及び範囲の見直し


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