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資料1−1

個人情報保護に関して検討すべき事項について
●個人情報保護法とヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の整理

 個人情報保護に関する法律は、「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)」及び「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(独立行政法人等個人情報保護法)」がある。
 ここで、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(ゲノム指針)」とこれらの個人情報保護に関する法律の関係を整理すると、個人情報保護法第8条に「国は、・・・事業者等が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための指針の策定・・・を講ずるものとする。」とあり、国が指針を策定することが示されている。ゲノム指針は、社会の理解と協力を得て、研究の適正な推進が図られることを目的に、人間の尊厳及び人権を尊重することを基礎として、策定されたものであるが、その基本方針の1つとして個人情報保護の徹底を掲げており、ゲノム指針の一部は個人情報保護法第8条の趣旨にかなうものであるといえる。
 個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法及び地方自治体において個人情報保護法第11条第1項の趣旨を踏まえて制定される条例が適用されるそれぞれの研究機関等は、個人情報の取扱いにあたってはそれぞれに適用される法律又は条例を遵守する必要があることは言うまでもない。ただし、個人情報保護法の義務については、学術研究機関が学術研究の目的で個人情報を取扱う場合は、この義務の適用除外とされ、民間研究機関等が学術研究としてヒトゲノム・遺伝子解析研究を行う場合に、個人情報保護法の適用を受けず、それらの機関等については個人情報保護に関して努力義務が課せられている。他方で、当該研究を実施する全ての研究機関等は、ゲノム指針の遵守が求められている。そこでは、個人情報の取扱いについて、国の研究機関、国立大学法人及び独立行政法人と民間研究機関等との間に区別はない。
 従って、ここでは、ゲノム指針において、少なくとも個人情報保護法の趣旨を踏まえているか整理を行った。


○定義
【個人情報保護法】
(定義)
二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

【行政機関個人情報保護法】
(定義)
第二条
 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう

【独立行政法人等個人情報保護法】
(定義)
第二条
 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

【指針】
第2・4 研究機関の長の責務
(3)  試料等の提供が行われる機関等の個人情報を取り扱う研究機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究において、個人情報の保護を図るため、個人情報管理者を置かなければならない。(以下略)
第2・6 個人情報管理者の責務
(1)  個人情報管理者(分担管理者を含む。以下6において同じ。)は、原則として、研究責任者からの依頼に基づき、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に試料等又は遺伝情報を匿名化しなければならない。(以下略)
(2)  個人情報管理者は、匿名化の際に取り除かれた個人情報を、原則として外部の機関に提供してはならない。
(3)  個人情報管理者は、匿名化作業の実施のほか、匿名化されていない試料等を使用する研究担当者を適切に監督する等、個人情報が含まれている情報が漏洩しないよう厳重に管理しなければならない。
第6・14 用語の定義
(5)  個人情報
 個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
(6)  匿名化
 ある人の個人情報が法令、本指針又は研究計画に反して外部に漏洩しないように、その個人情報から個人を識別する情報の全部又は一部を取り除き、代わりにその人と関わりのない符号又は番号を付すことをいう。試料等に付随する情報のうち、ある情報だけでは特定の人を識別できない情報であっても、各種の名簿等の他で入手できる情報と組み合わせることにより、その人を識別できる場合には、組合せに必要な情報の全部又は一部を取り除いて、その人が識別できないようにすることをいう。匿名化には、次に掲げるものがある。
 連結可能匿名化
 必要な場合に個人を識別できるように、その人と新たに付された符号又は番号の対応表を残す方法による匿名化
 連結不可能匿名化
 個人を識別できないように、上記aのような対応表を残さない方法による匿名化
(7)  個人情報管理者
試料等の提供が行われる機関を含め、個人情報を取り扱う研究機関において、研究機関の長の指示を受け、提供者等の個人情報がその機関の外部に漏洩しないように個人情報を管理し、かつ、匿名化する責任者をいう。

<整理すべき事項>
 指針で定義される匿名化された情報は、法の「個人情報」の定義と照らして、どのように解釈すればよいか。

 法及び指針において、「個人情報」の定義は、個人に関する情報のうち、特定の個人が識別できる情報であり、識別可能性に基づき「個人情報」であるか否か判断されるものと考えられる。
 指針において、「連結不可能匿名化」は、その人に新たに付与された符号又は番号の対応表を残さない方法による匿名化であり、この場合、個人に関する情報は特定の個人が識別できない情報しか残っておらず、法及び指針における「個人情報」には該当しないと考えられる。
 一方、「連結可能匿名化」は、必要な場合に個人を識別できるように、対応表を残す方法による匿名化であるが、法と指針の「個人情報」に定義されている「識別可能性」に照らすと、この対応表を保有しているかどうかにより個人の識別可能性が判断される。つまり、法の趣旨を踏まえると、研究の実施及び試料等の提供が同一法人で実施されている場合においては、研究実施者が所有する情報(匿名化されている情報)と試料等提供者が所有する情報を連結させることで、法人全体として、匿名化されている情報についても個人を識別できるものと整理され、個人情報に該当するものと考えられる。ただし、この考え方は、匿名化されている情報について匿名化されていない情報と同様の安全管理措置を一律に求めるものではない。なお、研究の実施と試料等の提供が別法人で実施されている場合においては、研究実施者が匿名化された情報から個人を識別することはできず、当該情報は「個人情報」に該当しないものと考えられる。
 ただし、連結不可能匿名化された情報や、連結可能匿名化の場合の対応表を保有しておらず個人の識別が不可能な状態にある情報を保有する機関についても指針の適用範囲であり、保有する情報には、匿名化されているとはいえ、遺伝情報や診療情報などセンシティブな情報が含まれることから、これらの情報のみを保有する機関に対しても、安全管理措置など必要な措置を講ずることが求められることが明確となるよう指針に規定する。また、対応表を保有していない場合でも、連結可能匿名化された情報については、対応表と連結させて使用することが考えられるため、連結不可能匿名化された情報に比べてより一層の管理が必要となる。
 なお、遺伝情報等の特殊性から、識別不可能な情報も個人情報として広く定義するという方法もあるが、この場合、以下の問題が生じる。
  (1) 連結不可能匿名化された場合、また連結可能匿名化であっても対応表を保有していない場合に、これらの情報を「個人情報」と定義すると、法では個人情報取扱事業者、行政機関及び独立行政法人等の義務として保有個人データ又は保有個人情報の開示や利用停止等の措置を求められるが、個人の識別性を有しない情報のみを保有している機関においては、インフォームド・コンセント撤回時の試料等の廃棄及び個人情報の開示要求等に直接対応することは不可能であり、現実的ではない。
  (2) 法と指針で「個人情報」の定義が異なる場合、法が適用される行政機関、独立行政法人及び民間研究機関で研究を行う場合、運用上混乱することが想定される。
 こうした理由から、匿名化されていない情報及び連結可能匿名化の場合で匿名化の対応表を保有していることにより個人の識別が可能な状態の情報については、法と同様に「個人が識別可能な情報」という範囲で「個人情報」とし、これらの情報を取り扱う者には、現行の指針において既に対応されているところであるが、個人情報管理者の設置などの義務が課せられるものである。

 指針及び個人情報保護法の「個人情報」の定義では、「容易に」が含まれているが、行政機関又は独立行政法人等個人情報保護法では、「容易に」の文言はなく、より厳しい定義となっている。指針の枠組みからみれば、匿名化された情報の個人の識別可能性は、上述の議論から、実質的に照合可能か否かにより判断されるところであり、照合可能性の容易さは特段考慮されない。したがって、指針の「個人情報」の定義は、行政機関等の個人情報保護法の定義と同様の規定とし、「容易に」の文言は削除する。


○利用目的の特定、利用制限、利用目的の通知について
【個人情報保護法】
(利用目的の特定)
第十五条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。
(利用目的による制限)
第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
 法令に基づく場合
 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

(取得に際しての利用目的の通知等)
第十八条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。
 個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。
 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、又は公表しなければならない。
 前三項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
 利用目的を本人に通知し、又は公表することにより本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該個人情報取扱事業者の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合
 国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、利用目的を本人に通知し、又は公表することにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合

【指針】
第3・8 インフォームド・コンセント
(2)  研究責任者は、提供者に対して、事前に、その研究の意義、目的、方法、予測される結果、提供者が被る可能性のある不利益、試料等の保存及び使用方法等について十分な説明を行った上で、自由意思に基づく文書による同意を受けて、試料等の提供を受けなければならない。
(3)  研究責任者は、提供者本人から(2)によるインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合には、その実施しようとしている研究の重要性が高く、かつ、その人からの試料等の提供を受けなければ研究が成り立たないと倫理審査委員会が承認し、研究機関の長が許可した場合に限り、提供者本人の代諾者等からインフォームド・コンセントを受けることができる。
<細則1(代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合の取扱いに関する細則)>
 提供者本人からインフォームド・コンセントを受けることが困難であり、代諾者等からのインフォームド・コンセントによることができる場合及びその取扱いは、以下のとおりとし、いずれの場合も、研究責任者は、研究の重要性、提供者本人から試料等の提供を受けなければ研究が成り立たない理由及び代諾者等を選定する考え方を研究計画書に記載し、当該研究計画書は倫理審査委員会により承認され、研究機関の長に許可されなければならない。
  ・  提供者が痴呆等により有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断される場合
  ・  未成年者の場合。ただし、この場合においても、研究責任者は、提供者本人にわかりやすい言葉で十分な説明を行い、理解が得られるよう努めなければならない。また、提供者が16歳以上の場合には、代諾者とともに、提供者本人からのインフォームド・コンセントも受けなければならない。
  ・  提供者が死者であって、その生前における明示的な意思に反していない場合

<細則2(代諾者の選定の基本的考え方に関する細則)>
 研究責任者は、代諾者について、一般的には、以下に定める人の中から、提供者の家族構成や置かれている状況等を勘案して、提供者の推測される意思や利益を代弁できると考えられる人が選定されることを基本として、研究計画書に代諾者を選定する考え方を記載しなければならない。
 1.  任意後見人、親権者、後見人や保佐人が定まっているときはその人
 2.  提供者本人の配偶者、成人の子、父母、成人の兄弟姉妹若しくは孫、祖父母、同居の親族又はそれらの近親者に準ずると考えられる人

<細則3(遺族の選定の基本的な考え方に関する細則)>
 研究責任者は、遺族について、一般的には、以下に定める人の中から、死亡した提供者の家族構成や置かれていた状況、慣習等を勘案して、提供者の生前の推測される意思を代弁できると考えられる人が選定されることを基本として、研究計画書に遺族を選定する考え方を記載しなければならない。
  ・  死亡した提供者本人の配偶者、成人の子、父母、成人の兄弟姉妹若しくは孫、祖父母、同居の親族又はそれらの近親者に準ずると考えられる人

(6)  研究責任者は、提供者又は代諾者等からのインフォームド・コンセントを受ける手続きにおいては、提供者又は代諾者等に対し、十分な理解が得られるよう、必要な事項を記載した文書を交付して説明を行わなければならない。(以下略)

第4・11 研究実施前提供試料等の利用
(1)  研究機関において、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に提供され、かつ、保存されている資料等の利用の可否は、提供者又は代諾者等の同意の有無又はその内容及び試料等が提供された時期を踏まえ、(2)から(4)までに定めるところにより、倫理審査委員会の承認を得た上で、研究機関の長が決定する。
(3)  A群試料等(試料等の提供時に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用を含む同意が得られている試料等)については、その同意の範囲内でヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。
(4)  B群試料等(試料等の提供時に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられている試料等)及びC群試料等(試料等の提供時に、研究に利用することの同意が与えられていない試料等)については、原則として、本指針において定める方法等に従って新たに提供者又は代諾者等の同意を得ない限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用してはならない。

<細則1(本指針施行後に提供されたA群試料等の利用に関する細則)>
 研究機関の長及び研究責任者は、A群試料等が提供された時点における同意が、他のヒトゲノム・遺伝子解析研究への利用に関し、そのヒトゲノム・遺伝子解析研究の意義、研究目的又は匿名化等の方法等に、どの程度言及された同意であったか、また、同意が得られた時期等にも配慮して、その利用の取扱いを判断し、また、倫理審査委員会も、同様の事項に配慮して、その利用の取扱いを審査しなければならない。

<細則2(本指針施行前に提供されたB群試料等の利用に関する細則)>
 本指針施行前に提供されたB群試料等については、以下のいずれかの要件を満たす場合として、倫理審査委員会でその利用を承認し、研究機関の長により許可された場合に限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。
  1) 連結不可能匿名化されていることにより、提供者等に危険や不利益が及ぶ可能性がない場合
  2) 連結可能匿名化されており、かつ、ヒトゲノム・遺伝子解析研究により提供者等に危険や不利益が及ぶ可能性が極めて少なく、研究に高度の有用性が認められ、他の方法では実際上研究の実施が不可能又は極めて困難である場合

<細則3(本指針施行後に提供されたB群試料等の利用に関する細則)>
 本指針施行後に提供されたB群試料等については、上記<細則2>に記載された要件に加えて、試料等の利用を拒否する機会が保障されており、特に連結可能匿名化の上で実施される研究については、B群試料等が提供された時点における同意が、他の研究への利用に関し、研究目的や匿名化等の方法等にどの程度言及された同意であったか、また、同意が得られた時期等にも配慮して、倫理審査委員会がヒトゲノム・遺伝子解析研究への利用を承認し、研究機関の長により許可された場合に限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。

<細則4(本指針施行前に提供されたC群試料等の利用に関する細則)>
 本指針施行前に提供されたC群試料等については、以下のいずれかの要件を満たす場合として、倫理審査委員会がその利用を承認し、研究機関の長により許可された場合に限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。
  1) 連結不可能匿名化されていることにより、提供者等に危険や不利益が及ぶ可能性がない場合
  2) 連結可能匿名化されており、かつ、次のすべての要件を満たしている場合
  ヒトゲノム・遺伝子解析研究により提供者等に危険や不利益が及ぶ可能性が極めて少ないこと
  その試料等を用いたヒトゲノム・遺伝子解析研究が、社会の利益に大きく貢献する研究であること
  他の方法では実際上、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施が不可能であること
  ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施状況について情報の公開を図り、併せて提供者又は代諾者等に問い合わせ及び試料等の研究への利用を拒否する機会を保障するための措置が講じられていること

<細則5(本指針施行後に提供されたC群試料等の利用に関する細則)>
 本指針施行後に提供されたC群試料等については、上記<細則4>に記載された要件に加えて、特に連結可能匿名化の上で実施される研究については、症例数が限られており、かつ、緊急に研究を実施する必要がある場合等、倫理審査委員会が真にやむを得ないとその利用を承認し、研究機関の長により許可された場合に限り、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。

<整理すべき事項>
代諾者等への同意について
法第16条では、個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えた場合の利用にあたっての本人の同意を得ることを規定しているが、指針では原則本人の同意を必要としているが、一定の条件の下、代諾者等の同意による利用も可能としている。

 法第16条第3項第3号において、公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であり、本人の同意を得ることが困難であるときは、本人の同意を必要としない。指針において、代諾者等の同意により個人情報の利用を可能としているが、この場合、
(1) 本人が痴呆等や未成年であるなど、その判断力や理解力を考慮した上で、限定していることから、すなわち本人の同意能力の可能性を判断していること
(2) 代諾者等の選定理由、実施しようとする研究の重要性及び(1)の状態にある提供者から試料等の提供を受けなければ研究が成り立たない理由を研究計画書に記載し、当該研究計画書は倫理審査委員会の承認及び研究機関の長の許可を受ける必要があること
の条件を設けており、したがって、法第16条第3項第3号の要件の該当性について、倫理審査委員会において審査されると考えられ、法の趣旨を踏まえた対応がなされているものと考えられる。なお、法では「個人情報」は生存する個人に関する情報であり、死者の情報は含まれていないが、指針ではこれも保護すべき対象として、代諾者等(遺族)の同意を求めることとしている。

利用目的変更時の本人同意について
 法第15条では、個人情報保護の利用目的の特定、法第16条では、個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えた場合の利用に当たっての本人同意を、法第18条では、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、本人に通知し、又は公表することを規定しているが、指針では、C群試料等(試料等の提供時に、研究に利用することの同意が与えられていない試料等)の利用にあたって、要件を定めて提供者等の同意を得ないで利用を可能としている。なお、この場合、指針第4・11の細則4・2)・dにおいて、研究の実施状況について情報公開を図ること、また提供者等に試料等の研究への利用を拒否する機会を保障するための措置を講じることを求めている。

 本人の同意を得ないで試料等を利用する場合として、指針では社会的利益の貢献が大きな研究に限定しており、すなわち法第16条第3項第3号の例外規定の「公衆衛生の向上」の要件の該当性について、倫理審査委員会において審査されると考えられること、さらに、法第18条については、この場合は指針で公表することが規定されていることから、法の趣旨を踏まえた対応がなされているものと考えられる。


○適正な取得
【個人情報保護法】
(適正な取得)
法第十七条 個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

【指針】
第3・8 インフォームド・コンセント

<整理すべき事項>
 指針において、試料等の提供を受ける場合は、インフォームド・コンセントを取得することを求めている。インフォームド・コンセントの取得にあたっては、説明文書により研究内容等について示すこととされており、当該文書は研究計画書において明記され、研究機関等の倫理審査委員会において審査され、かつ研究機関の長の許可を得るものであり、偽りその他不正の手段により個人情報を得ることは想定されず、指針において法の趣旨を踏まえた対応がなされていると考えられる。


○データ内容の正確性の確保
【個人情報保護法】
(データ内容の正確性の確保)
法第十九条 個人情報取扱事業者は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人データを正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない。

【指針】
規定なし。

<整理すべき事項>
 指針に当該規定はないことから、個人情報(匿名化された場合は匿名化情報)を正確かつ最新の内容に保つよう努めることを規定する。


○安全管理措置
【個人情報保護法】
(安全管理措置)
第二十条 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
(従業者の監督)
第二十一条 個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
(委託先の監督)
第二十二条 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

【指針】
第2・3 すべての研究者等の基本的な責務
(4)  すべての研究者等は、職務上知り得た個人情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を辞した後も、同様である。
(5)  すべての研究者等は、個人情報の保護を図るとともに、個人情報の取扱いに関する苦情等に誠実に対応しなければならない。
(6)  すべての研究者等は、個人情報の予期せぬ漏洩等の提供者等の人権の保障の観点から重大な懸念が生じた場合には、速やかに研究機関の長及び研究責任者に報告しなければならない。
第2・4 研究機関の長の責務
(1)  研究機関の長は、その機関におけるヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に関する最終的な責任を有し、研究責任者及び研究担当者が研究計画に従って適正に研究を実施するよう監督しなければならない。その際、研究機関の長は、提供者等の人権を最大限保障すべきこと及び本指針、研究計画等に反した場合に懲戒処分等の不利益処分がなされ得ることについて、その機関の関係者に対する周知徹底を図らなければならない。
(2)  研究機関の長は、個人情報の漏洩防止のための十分な措置を講じなければならない。
<個人情報保護のための措置に関する細則>
 個人情報を厳重に管理する手続、設備、体制を整備し、例えば、コンピュータを利用する場合には、個人情報を処理するコンピュータは、他の一切のコンピュータと切り離す等の措置を講じなければならない。
(3)  試料等の提供が行われる機関等の個人情報を取り扱う研究機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究において、個人情報の保護を図るため、個人情報管理者を置かなければならない。また、必要に応じ、指揮命令系統を明確にした上で、分担管理者又は個人情報管理者の監督の下に実際の業務を行う補助者を置くことができる。
<個人情報管理者の要件に関する細則>
  1.  個人情報管理者及び分担管理者は、刑法(明治40年法律第45号)第134条、国家公務員法(昭和22年法律第120号)第100条その他の法律により業務上知り得た秘密の漏洩を禁じられている者(医師、薬剤師等)でなければならない。
  2.  個人情報管理者及び分担管理者は、その提供する試料等を用いてヒトゲノム・遺伝子解析研究(試料等の提供を除く。)を実施する研究責任者又は研究担当者を兼ねることはできない。
(10)  試料等の提供が行われる機関の長は、試料等を外部の機関(試料等の提供が行われる機関において、同時にヒトゲノム・遺伝子解析研究も行う場合は、その研究部門は外部の機関とみなす。)に提供する際には、原則として試料等を匿名化しなければならない。
<匿名化せずに行う外部の機関への提供に関する細則>
 提供者又は代諾者等が匿名化を行わずに外部の機関へ提供することに同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わずに、外部の機関に提供することが認められている場合には、試料等の匿名化を行わないことができる。

第2・5 研究責任者の責務
(4)  研究責任者は、許可された研究計画書に盛り込まれた事項を、すべての研究担当者に遵守させる等、研究担当者が適正にヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施するよう監督しなければならない。
(6)  研究責任者は、原則として、匿名化された試料等又は遺伝情報を用いて、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施しなければならない。
<匿名化を行わない研究に関する細則>
 提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、試料等又は遺伝情報の匿名化を行わないことができる。
(7)  研究責任者は、匿名化されていない試料等又は遺伝情報を原則として外部の機関に提供してはならない。
<匿名化せずに行う外部の機関への提供に関する細則>
 提供者又は代諾者等が匿名化を行わずに外部の機関へ提供することに同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、匿名化されていない試料等又は遺伝情報を外部の機関へ提供することができる。
(8)  研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の業務の一部を委託する場合には、受託者に対しては、試料等又は遺伝情報を原則として匿名化しなければならない。
<匿名化せずに行う委託に関する細則>
 提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、試料等又は遺伝情報の匿名化を行わないことができる。

第2・6 個人情報管理者の責務
(1)  個人情報管理者(分担管理者を含む。以下6において同じ。)は、原則として、研究責任者からの依頼に基づき、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に試料等又は遺伝情報を匿名化しなければならない。ただし、研究担当者等が補助者として匿名化作業を行う場合にあっては、それが適正に行われるよう、監督しなければならない。
<試料等の匿名化の例外に関する細則>
 提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、試料等の匿名化を行わないことができる。
(2)  個人情報管理者は、匿名化の際に取り除かれた個人情報を、原則として外部の機関に提供してはならない。
<個人情報の外部の機関への提供に関する細則>
 提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長が許可した研究計画書において匿名化を行わないことが認められている場合には、個人情報を外部の機関へ提供することができる。
(3)  個人情報管理者は、匿名化作業の実施のほか、匿名化されていない試料等を使用する研究担当者を適切に監督する等、個人情報が含まれている情報が漏洩しないよう厳重に管理しなければならない。

第4・12 試料等の保存及び廃棄の方法
(1)  保存の一般原則
 研究責任者は、研究機関内で試料等を保存する場合には、提供者又は代諾者等の同意事項を遵守し、研究計画書に定められた方法に従わなければならない。
(2)  ヒト細胞・遺伝子・組織バンクへの提供
 研究責任者は、試料等をヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供する場合には、当該バンクが試料等を一般的な研究用試料等として分譲するに当たり、連結不可能匿名化がなされることを確認するとともに、バンクに提供することの同意を含む提供者又は代諾者等の同意事項を遵守しなければならない。
(3)  試料等の廃棄
 研究責任者は、研究計画書に従い自ら保存する場合及びヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供する場合を除き、試料等の保存期間が研究計画書に定めた期間を過ぎた場合には、提供者又は代諾者等の同意事項を遵守し、匿名化して廃棄しなければならない。

<整理すべき事項>
 安全管理措置について、指針では研究機関の長が遺漏防止の措置を講ずること等が規定されているが、個人情報の遺漏防止は個人情報保護にあたって重要であると考えることから、どのような措置が必要であるのか以下により示すこととする。
(対応案)
 
 研究機関の長の責務として、研究内容や当該機関が保有している個人に関わる情報の個人の識別性、連結可能性に応じた組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講ずることを規定する。また、細則において、組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置について、以下のように示すこととする。
  ・ 組織的安全管理措置
 組織的安全管理措置とは、安全管理について研究従事者等の責任と権限を明確に定め、安全管理に対する規定や手順書(以下「規定等」という)を整備運用し、その実施状況を確認することをいう。組織的安全措置には以下の事項が含まれる。
 (1) 個人情報の安全管理措置を講じるための組織体制の整備
 (2) 個人情報の安全管理措置を定める規定等の整備と規定等に従った運用
 (3) 個人情報の取扱い状況を一覧できる手段の整備
 (4) 個人情報の安全管理措置の評価、見直し及び改善
 (5) 事故又は違反への対処

  ・ 人的安全管理措置
 人的安全管理措置とは、研究従事者等に対する、業務上秘密と指定された個人情報の非開示契約の徹底や教育・訓練等を行うことをいう。人的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
 (1) 雇用契約時及び委託契約時における非開示契約の締結
 (2) 研究従事者等に対する教育・訓練の実施

  ・ 物理的安全管理措置について
 物理的安全管理措置とは、入退館(室)の管理、個人情報の盗難の防止等の措置をいう。物理的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
 (1) 入退館(室)管理の実施
 (2) 盗難等の防止
 (3) 機器・装置等の物理的な保護

  ・ 技術的安全管理措置
 技術的安全管理措置とは、個人情報及びそれを取り扱う情報システムへのアクセス制御、不正ソフトウェア対策、情報システムの監視等、個人情報に対する技術的な安全管理措置をいう。技術的安全管理措置には、以下の事項が含まれる。
 (1) 個人情報へのアクセスにおける識別と認証
 (2) 個人情報へのアクセス制御
 (3) 個人情報へのアクセス権限の管理
 (4) 個人情報のアクセスの記録
 (5) 個人情報を取り扱う情報システムについての不正ソフトウェア対策
 (6) 個人情報の移送・通信時の対策
 (7) 個人情報を取り扱う情報システムの動作確認時の対策
 (8) 個人情報を取り扱う情報システムの監視

 委託者の監督について、個人情報保護法第22条を踏まえ、「研究を行う機関の長は、研究を委託する場合は、委託された個人情報の安全管理及び個人情報に該当しない匿名化された情報の適切な取扱いが図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行なわなければならない。」ことを追加して規定する。また、「必要かつ適切な監督」の例示として、「委託契約書において委託者が定める安全管理措置の内容を契約に盛り込むとともに、当該内容が遵守されていることを確認すること」を規定する。


○第三者提供の制限
【個人情報保護法】
(第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。
 法令に基づく場合
 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。
 個人情報取扱事業者は、第三者に提供される個人データについて、本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているときは、前項の規定にかかわらず、当該個人データを第三者に提供することができる。
 第三者への提供を利用目的とすること。
 第三者に提供される個人データの項目
 第三者への提供の手段又は方法
 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること。
 個人情報取扱事業者は、前項第二号又は第三号に掲げる事項を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない。
 次に掲げる場合において、当該個人データの提供を受ける者は、前三項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。
 個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合
 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合
 個人データを特定の者との間で共同して利用する場合であって、その旨並びに共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人データの管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いているとき。
 個人情報取扱事業者は、前項第三号に規定する利用する者の利用目的又は個人データの管理について責任を有する者の氏名若しくは名称を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない。
(開示等の求めに応じる手続)
第二十九条
 開示等の求めは、政令で定めるところにより、代理人によってすることができる。
第八条 法第二十九条第三項の規定により開示等の求めをすることができる代理人は、次に掲げる代理人とする。
 未成年者又は成年被後見人の法定代理人
 開示等の求めをすることにつき本人が委任した代理人

【指針】
第3・8 インフォームド・コンセント
(3)  研究責任者は、提供者本人から(2)によるインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合には、その実施しようとしている研究の重要性が高く、かつ、その人からの試料等の提供を受けなければ研究が成り立たないと倫理審査委員会が承認し、研究機関の長が許可した場合に限り、提供者本人の代諾者等からインフォームド・コンセントを受けることができる。
<細則2(代諾者の選定の基本的考え方に関する細則)>
 研究責任者は、代諾者について、一般的には、以下に定める人の中から、提供者の家族構成や置かれている状況等を勘案して、提供者の推測される意思や利益を代弁できると考えられる人が選定されることを基本として、研究計画書に代諾者を選定する考え方を記載しなければならない。
  1.  任意後見人、親権者、後見人や保佐人が定まっているときはその人
  2.  提供者本人の配偶者、成人の子、父母、成人の兄弟姉妹若しくは孫、祖父母、同居の 親族又はそれらの近親者に準ずると考えられる人
第3・9 遺伝情報の開示
(3)  研究責任者は、提供者本人の同意がない場合には、提供者の遺伝情報を、提供者本人以外の人に対し、原則として開示してはならない。
<提供者以外の人に対する開示に関する細則>
  1.  提供者の代諾者等(未成年者の代諾者を除く。)が提供者本人の遺伝情報の開示を希望する場合には、その代諾者等が開示を求める理由又は必要性を倫理審査委員会に示した上で、当該委員会の意見に基づき研究機関の長が対応を決定しなければならない。
  2.  研究責任者は、提供者が未成年者の場合に、その未成年者の代諾者から当該未成年者の遺伝情報の開示の求めがあった場合には、当該代諾者にこれを開示することができる。ただし、未成年者が16歳以上の場合には、その意向を確認し、これを尊重しなければならない。また、研究責任者は、未成年者の遺伝情報を開示することによって、提供者に対する差別、養育拒否、治療への悪影響が心配される場合には、研究機関の長に報告しなければならない。研究機関の長は、開示の前に、必要に応じ、開示の可否並びにその内容及び方法についての倫理審査委員会の意見や未成年者とその代諾者との話し合いを求めるようにしなければならない。
  3.  研究責任者は、提供者が自らの遺伝情報の血縁者への開示を希望していない場合であっても、次のすべての要件を満たす場合には、提供者の血縁者に、提供者本人の遺伝情報から導かれる遺伝的素因を持つ疾患や薬剤応答性に関する情報を伝えることができる。
1)  提供者本人の遺伝情報が、提供者の血縁者の生命に重大な影響を与える可能性が高いことが判明し、かつ、有効な対処方法があること
2)  研究責任者から1)の報告を受けた研究機関の長が、特に下記の事項についての考慮を含む開示の可否並びにその内容及び方法についての倫理審査委員会の意見を求め、それに基づき、研究責任者と協議し、必要な情報を血縁者に提供すべきとの結論となること
 a  血縁者が同一の疾患等に罹患している可能性
 b  血縁者の生命に及ぼす影響
 c  有効な治療法の有無と血縁者の健康状態
 d  インフォームド・コンセントに際しての研究結果の開示に関する説明内容
3)  2)の結論を踏まえ、研究責任者は改めて提供者の理解を求め、血縁者に対する必要な情報の提供につき承諾を得られるよう努めること
5)  提供者の血縁者に対し、十分な説明を行った上で、情報提供を希望する意向を確認すること

<整理すべき事項>
 法第29条第3項及び政令第8条で、開示等の求めは、法定代理人または任意代理人によってすることができるとあるが、指針では任意後見人等の他に「親族またはそれらの近親者に準ずると考えられる人」に対しても、本人の委任がなくても代諾者として開示を求めることができるとしている。

 代諾者等からの開示の希望があった場合、指針では「その代諾者が開示を求める理由又は必要性を倫理審査委員会に示した上で、当該委員会の意見に基づき研究機関の長が対応を決定」することとしている。
 そこで、倫理審査委員会が審査を行う際、及び研究機関の長が対応を決定する際に、当該開示の理由又は必要性が法第23条第1項第2号及び第3号に掲げる場合に該当することを個別に確認できれば、代諾者等のうち「親族またはそれらの近親者に準ずると考えられる人」についても提供者の個人情報を提供することは妥当である。

 また、指針では提供者の血縁者に、提供者本人の遺伝情報から導かれる遺伝的素因を持つ疾患や薬剤応答性に関する情報を伝えることができるとしている。

 この場合は、血縁者の生命に重大な影響がある可能性がある場合と規定しており、法第23条第1項第2号「人の生命・・の保護のために必要がある場合であって・・」に該当するものと考えられ、第三者である提供者の血縁者に開示を認めることについては、法の趣旨を踏まえた対応がなされている。


○保有個人データに関する事項の公表等
【個人情報保護法】
(保有個人データに関する事項の公表等)
第二十四条 個人情報取扱事業者は、保有個人データに関し、次に掲げる事項について、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む。)に置かなければならない。
 当該個人情報取扱事業者の氏名又は名称
 すべての保有個人データの利用目的(第十八条第四項第一号から第三号までに該当する場合を除く。)
 次項、次条第一項、第二十六条第一項又は第二十七条第一項若しくは第二項の規定による求めに応じる手続(第三十条第二項の規定により手数料の額を定めたときは、その手数料の額を含む。)
 前三号に掲げるもののほか、保有個人データの適正な取扱いの確保に関し必要な事項として政令で定めるもの
 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの利用目的の通知を求められたときは、本人に対し、遅滞なく、これを通知しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
 前項の規定により当該本人が識別される保有個人データの利用目的が明らかな場合
 第十八条第四項第一号から第三号までに該当する場合
 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの利用目的を通知しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

(保有個人データの適正な取扱いの確保に関し必要な事項)
第五条 法第二十四条第一項第四号の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
 当該個人情報取扱事業者が行う保有個人データの取扱いに関する苦情の申出先
 当該個人情報取扱事業者が認定個人情報保護団体の対象事業者である場合にあっては、当該認定個人情報保護団体の名称及び苦情の解決の申出先

【指針】
第2・5 研究責任者の責務
(9) 研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進捗状況及びその結果を定期的に及び提供者等の求めに応じて、分かりやすく説明し、又は公表しなければならない。(以下略)
第3・8 インフォームド・コンセント
(6)  研究責任者は、提供者又は代諾者等からのインフォームド・コンセントを受ける手続きにおいては、提供者又は代諾者等に対し、十分な理解が得られるよう、必要な事項を記載した文書を交付して説明を行わなければならない。(以下略)
<説明文書の記載に関する細則>
 提供者又は代諾者等に対する説明文書に記載すべき事項は、一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できる。(抜粋)
  ・ 提供者又は代諾者等は、自らが与えたインフォームド・コンセントについて、いつでも不利益を受けることなく文書により撤回することができること
  ・ 研究の意義、目的及び方法(対象とする疾患、分析方法等。将来の追加、変更が予想される場合はその旨。単一遺伝子疾患等の場合には研究の必要性、不利益を防止するための措置等の特記事項等。)、期間
  ・  研究責任者の氏名及び職名
  ・  提供者及び代諾者等の希望により、他の提供者等の個人情報の保護や研究の独創性の確保に支障が生じない範囲内で研究計画及び研究方法についての資料を入手又は閲覧することができること
  ・  遺伝情報の開示に関する事項
  ・  研究終了後の試料等の保存、使用又は廃棄の方法(他の研究への利用の可能性と予測される研究内容を含む。)
  ・  試料等をヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供し、一般的に研究用資源として分譲することがあり得る場合には、バンクの学術的意義、当該バンクが運営されている機関の名称、提供される試料等の匿名化の方法及びバンクの責任者の氏名
  ・  問い合わせ、苦情等の窓口の連絡先等に関する情報

<整理すべき事項>
 指針では、説明文書の記載に関する細則において、一般的に記載すべき事項を示しているが、法第24条第1項第1号及び第3号に関して補足しておく必要があるか。

法第24条第1項第1号に関する補足事項
指針では、インフォームド・コンセント取得時の説明文書において、研究責任者の氏名及び職名の記載を規定していることから、研究機関名及び機関の長の氏名については特に規定しないこととする。
法第24条第1項第3号に関する補足事項
開示等の手続き等については、「開示等の求めに応じる手続き及び手数料」の項を参照。


○保有個人データの開示
【個人情報保護法】
(開示)
第二十五条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの開示(当該本人が識別される保有個人データが存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を求められたときは、本人に対し、政令で定める方法により、遅滞なく、当該保有個人データを開示しなければならない。ただし、開示することにより次の各号のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。
 本人又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 当該個人情報取扱事業者の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合
 他の法令に違反することとなる場合
 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部又は一部について開示しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。
 他の法令の規定により、本人に対し第一項本文に規定する方法に相当する方法により当該本人が識別される保有個人データの全部又は一部を開示することとされている場合には、当該全部又は一部の保有個人データについては、同項の規定は、適用しない。

(個人情報取扱事業者が保有個人データを開示する方法)
第六条 法第二十五条第一項の政令で定める方法は、書面の交付による方法(開示の求めを行った者が同意した方法があるときは、当該方法)とする。

【指針】
第3・9 遺伝情報の開示
(1)  研究責任者は、個々の提供者の遺伝情報が明らかとなるヒトゲノム・遺伝子解析研究に関して、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、原則として開示しなければならない。ただし、遺伝情報を提供する十分な意義がなく、開示しないことについて提供者のインフォームド・コンセントを受けている場合には、この限りでない。
<遺伝情報の開示に関する細則>
  1.  研究責任者は、提供者からインフォームド・コンセントを受ける際に、遺伝情報の開示をしないことにつき同意が得られているにもかかわらず、当該提供者が事後に開示を希望した場合は、以下の場合を除き、当該提供者の遺伝情報を開示しなければならない。開示しない場合には、当該提供者に遺伝情報を開示しない理由を分かりやすく説明しなければならない。
 多数の人又は遺伝子の遺伝情報を相互に比較することにより、ある疾患と遺伝子の関連やある遺伝子の機能を明らかにしようとするヒトゲノム・遺伝子解析研究等であって、当該情報がその人の健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性に欠けており、提供者個人に知らせるには十分な意義がない研究であることにつき、研究計画書に記載され、当該研究計画書が倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長により許可された場合
  2.  研究責任者は、未成年者の提供者が、自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、開示した場合の精神的な影響等を十分考慮した上で当該未成年者に開示することができる。ただし、未成年者が16歳未満の場合には、その代諾者の意向を確認し、これを尊重しなければならない。また、研究責任者は、未成年者の遺伝情報を開示することによって、提供者が自らを傷つけたり、提供者に対する差別、養育拒否、治療への悪影響が心配される場合には、研究機関の長に報告しなければならない。研究機関の長は、開示の前に、必要に応じ、開示の可否並びにその内容及び方法についての倫理審査委員会の意見や未成年者とその代諾者との話し合いを求めるようにしなければならない。

<整理すべき事項>
 法では、定められた場合を除き本人から開示要求があった場合には、開示しなければならないと規定しているが、指針では、提供者からの開示要求があった場合でも、遺伝情報を提供する意義がない場合については開示しないことを規定している。

 指針でいう「意義」とは、予防、治療としての臨床的な意義のことと考えられる。従って、意義がないと認められる場合とは、法による不開示理由「本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合」、すなわち得られた研究結果の精度・確実性が不十分である場合、開示することにより本人に精神的負担等を及ぼす可能性が考えられることから、この場合は従来どおり開示しない。
 なお、「意義がない」との記載は、研究の意義がない等の誤解を招くおそれがあることから、指針においても法の規定にあわせて「本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合」と規定することとする。

 * ユネスコ「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」との関係も同様に整理してよいか。
ユネスコ宣言第13条
 提供者自らへの遺伝情報又はプロテオーム情報の開示は、それらの情報が連結不可能匿名化されている場合、又は国内規範によりそれらのアクセスが公衆衛生、公的な秩序若しくは国家の安全のために制限される場合を除き、拒否されるべきではない。


○訂正及び利用停止
【個人情報保護法】
(訂正等)
第二十六条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データの内容が事実でないという理由によって当該保有個人データの内容の訂正、追加又は削除(以下この条において「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有個人データの内容の訂正等を行わなければならない。
 個人情報取扱事業者は、前項の規定に基づき求められた保有個人データの内容の全部若しくは一部について訂正等を行ったとき、又は訂正等を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を通知しなければならない。
(利用停止等)
第二十七条 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第十六条の規定に違反して取り扱われているという理由又は第十七条の規定に違反して取得されたものであるという理由によって、当該保有個人データの利用の停止又は消去(以下この条において「利用停止等」という。)を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有個人データの利用停止等を行わなければならない。ただし、当該保有個人データの利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
 個人情報取扱事業者は、本人から、当該本人が識別される保有個人データが第二十三条第一項の規定に違反して第三者に提供されているという理由によって、当該保有個人データの第三者への提供の停止を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、遅滞なく、当該保有個人データの第三者への提供を停止しなければならない。ただし、当該保有個人データの第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合その他の第三者への提供を停止することが困難な場合であって、本人の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。
 個人情報取扱事業者は、第一項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について利用停止等を行ったとき若しくは利用停止等を行わない旨の決定をしたとき、又は前項の規定に基づき求められた保有個人データの全部若しくは一部について第三者への提供を停止したとき若しくは第三者への提供を停止しない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

【指針】
第3・8 インフォームド・コンセント
(4)  提供者又はその代諾者等は、自ら与えたインフォームド・コンセントについて、いつでも不利益を受けることなく文書により撤回することができる。
(5)  研究責任者は、提供者又はその代諾者等からインフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として、当該提供者に係る試料等及び研究結果を匿名化して廃棄しなければならない。
<廃棄の例外に関する細則>
  1. 試料等及び研究結果の廃棄をしなくても差し支えない場合は、以下のとおりとする。
 当該試料等が連結不可能匿名化されている場合
 廃棄しないことにより個人情報が明らかになるおそれが極めて小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である場合等やむを得ない場合
  2. 既に研究結果が公表されている場合は、研究結果については、廃棄しなくても差し支えない。

<整理すべき事項>
 研究の実施において取得した個人情報の取扱いにおいて、訂正等の規定を設ける必要があるか。

 指針には当該規定はないことから、提供者又は代諾者等から、研究機関が保有する提供者が識別される個人情報の内容が事実でないという理由によって当該情報に対して訂正、追加又は削除を求められた場合に、調査結果に基き、内容の訂正等を行うことを規定する。なお、法では本人から訂正等の要求があった場合までしか想定されていないが、指針では、提供者の判断及び理解力を考慮の上、本人に代わりインフォームド・コンセントを与えることができる代諾者を選定することを可能としていることから、代諾者等からの申し出も受け付けるものとするが、この場合はその事実性について、特に慎重に判断する必要がある。

 法では、保有個人データの利用停止等行ったとき又は利用停止を行わない旨の決定をしたときは、本人に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならないことを規定しているが、指針では、利用停止はインフォームド・コンセントの撤回であると考えられ、その場合には原則、試料等は廃棄することとしているが、本人に通知することまでは規定していない。

 指針において、試料等を廃棄しないこと(連結不可能匿名化の場合やバンクへの提供など提供者から廃棄しないことの同意が得られている場合は除く。)又は廃棄したことについて通知することを規定する。


○開示等の求めに応じる手続き及び手数料
【個人情報保護法】
(開示等の求めに応じる手続)
第二十九条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第二項、第二十五条第一項、第二十六条第一項又は第二十七条第一項若しくは第二項の規定による求め(以下この条において「開示等の求め」という。)に関し、政令で定めるところにより、その求めを受け付ける方法を定めることができる。この場合において、本人は、当該方法に従って、開示等の求めを行わなければならない。
 個人情報取扱事業者は、本人に対し、開示等の求めに関し、その対象となる保有個人データを特定するに足りる事項の提示を求めることができる。この場合において、個人情報取扱事業者は、本人が容易かつ的確に開示等の求めをすることができるよう、当該保有個人データの特定に資する情報の提供その他本人の利便を考慮した適切な措置をとらなければならない。
 開示等の求めは、政令で定めるところにより、代理人によってすることができる。
 個人情報取扱事業者は、前三項の規定に基づき開示等の求めに応じる手続を定めるに当たっては、本人に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない。
(手数料)
第三十条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第二項の規定による利用目的の通知又は第二十五条第一項の規定による開示を求められたときは、当該措置の実施に関し、手数料を徴収することができる。
 個人情報取扱事業者は、前項の規定により手数料を徴収する場合は、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならない。

(開示等の求めを受け付ける方法)
第七条 法第二十九条第一項の規定により個人情報取扱事業者が開示等の求めを受け付ける方法として定めることができる事項は、次に掲げるとおりとする。
 開示等の求めの申出先
 開示等の求めに際して提出すべき書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。)の様式その他の開示等の求めの方式
 開示等の求めをする者が本人又は次条に規定する代理人であることの確認の方法
 法第三十条第一項の手数料の徴収方法
(開示等の求めをすることができる代理人)
第八条 法第二十九条第三項の規定により開示等の求めをすることができる代理人は、次に掲げる代理人とする。
 未成年者又は成年被後見人の法定代理人
 開示等の求めをすることにつき本人が委任した代理人

【指針】
第3・8 インフォームド・コンセント
(6)  研究責任者は、提供者又は代諾者等からのインフォームド・コンセントを受ける手続きにおいては、提供者又は代諾者等に対し、十分な理解が得られるよう、必要な事項を記載した文書を交付して説明を行わなければならない。(以下略)
<説明文書の記載に関する細則(抜粋)>
 ・ 提供者又は代諾者等は、自ら与えたインフォームド・コンセントについて、いつでも不利益をうけることなく文書により撤回することができること。
 ・ 遺伝情報の開示に関する事項

<整理すべき事項>
 法では、開示等の求めを受け付ける方法を定めることができることを規定している。指針ではインフォームド・コンセント取得の際の説明文書に開示に関する事項を記載することを示している。

 法ではあくまでも「方法を定めることができる」としていることから、インフォームド・コンセント取得の際の説明文書の記載事項において、インフォームド・コンセント撤回に関する事項に、「必要であれば撤回の求めを受け付ける方法を含む」こと及び開示に関する事項に、「必要であれば開示の求めを受け付ける方法を含む」ことを追記する。

 法では、開示にあたって、手数料を徴収することができることを規定していることから、開示手数料を徴収する場合は、インフォームド・コンセント取得時に提供者に説明することを追記する。


○理由の説明
【個人情報保護法】
(理由の説明)
第二十八条 個人情報取扱事業者は、第二十四条第三項、第二十五条第二項、第二十六条第二項又は前条第三項の規定により、本人から求められた措置の全部又は一部について、その措置をとらない旨を通知する場合又はその措置と異なる措置をとる旨を通知する場合は、本人に対し、その理由を説明するよう努めなければならない。

【指針】
第3・8 インフォームド・コンセント
(4)  提供者又はその代諾者等は、自らが与えたインフォームド・コンセントについて、いつでも不利益を受けることなく文書により撤回することができる。
(5)  研究責任者は、提供者又はその代諾者等からインフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として、当該提供者に係る試料等及び研究結果を匿名化して廃棄しなければならない。
<廃棄の例外に関する細則>
  1.  試料等及び研究結果の廃棄をしなくても差し支えない場合は、以下のとおりとする。
 当該試料等が連結不可能匿名化されている場合
 廃棄しないことにより個人情報が明らかになるおそれが極めて小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である場合等やむを得ない場合
  2.  既に研究結果が公表されている場合は、研究結果については、廃棄しなくても差し支えない。
第3・9 遺伝情報の開示
(1)  研究責任者は、個々の提供者の遺伝情報が明らかとなるヒトゲノム・遺伝子解析研究に関して、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、原則として開示しなければならない。ただし、遺伝情報を提供する十分な意義がなく、開示しないことについて提供者のインフォームド・コンセントを受けている場合には、この限りでない。
<遺伝情報の開示に関する細則>
  1.  研究責任者は、提供者からインフォームド・コンセントを受ける際に、遺伝情報の開示をしないことにつき同意が得られているにもかかわらず、当該提供者が事後に開示を希望した場合は、以下の場合を除き、当該提供者の遺伝情報を開示しなければならない。開示しない場合には、当該提供者に遺伝情報を開示しない理由を分かりやすく説明しなければならない。
多数の人又は遺伝子の遺伝情報を相互に比較することにより、ある疾患と遺伝子の関連やある遺伝子の機能を明らかにしようとするヒトゲノム・遺伝子解析研究等であって、当該情報がその人の健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性に欠けており、提供者個人に知らせるには十分な意義がない研究であることにつき、研究計画書に記載され、当該研究計画書が倫理審査委員会の承認を受け、研究機関の長により許可された場合

<整理すべき事項>
 指針において、試料等の提供を受ける場合は、インフォームド・コンセントを得ることを必要としており、利用目的を通知しないことは想定されない。

 指針において、開示をしない場合は、インフォームド・コンセント取得時等に説明することを求めていることにより、既に対応されている。

 提供者又は代諾者等からの訂正要求内容に対して訂正しない場合は、その理由を説明するよう努めることを規定する。なお、この場合、診療情報等に関する訂正要求内容が事実でないことを説明することは提供者又は代諾者等への精神的負担等になることがあり得るなど、慎重に配慮する必要があることから、事由に応じて適宜対応することも併せて規定する。

 指針において、インフォームド・コンセントの撤回の際に試料等の廃棄をしない場合(連結不可能匿名化の場合やバンクへの提供など提供者又は代諾者等から廃棄しないことの同意が得られている場合は除く。)の理由については、インフォームド・コンセント撤回者に通知することが規定されていないことから、その理由を通知することを規定する。


○苦情処理
【個人情報保護法】
(個人情報取扱事業者による苦情の処理)
第三十一条 個人情報取扱事業者は、個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない。
 個人情報取扱事業者は、前項の目的を達成するために必要な体制の整備に努めなければならない。

【指針】
第2・3 すべての研究者等の基本的な責務
(5)  すべての研究者等は、個人情報の保護を図るとともに、個人情報の取扱いに関する苦情等に誠実に対応しなければならない。
第2・4 研究機関の長の責務
(9)  研究機関の長は、提供者等からの苦情等の窓口を設置する等、提供者等からの苦情や問い合わせ等に適切に対応しなければならない。

<整理すべき事項>
苦情処理については、指針においても規定されているおり、法の趣旨を踏まえた対応がなされているが、苦情の窓口として、提供者又は代諾者等が申し出のしやすい窓口を設置するよう配慮されるよう追記する。


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