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今後の障害保健福祉施策について
(改革のグランドデザイン案)

【説明資料】




平成16年10月12日
厚生労働省障害保健福祉部


 本案は、厚生労働省としての試案であり、今後、関係審議会の意見を聴き、関係機関等との調整を行い、(1)地域の基盤や実施体制の整備に一定の準備期間を要する項目と、(2)制度の持続可能性の確保の観点から、できる限り速やかに実施すべき項目等に区分して、実施スケジュール等を整理するものである。
 なお、精神障害固有の問題については、本案に記載するものの他、「精神保健医療福祉の改革ビジョン(厚生労働省精神保健福祉対策本部 平成16年9月)」に基づき、改革を進める。
 また、介護保険制度との関係については、基本的考え方、論点について、別途整理して提示する予定である。


I 改革の基本的視点

図


II 改革の基本的方向

1 現行の制度的課題を解決する。
 市町村を中心とするサービス提供体制(市町村、都道府県、国の役割、サービスの計画的な整備等)
 効果的・効率的なサービス利用の促進(障害者相談支援体制、利用決定プロセスの透明化等)
 公平な費用負担と配分の確保(利用者負担の見直し、国・都道府県の補助制度の見直し)


2 新たな障害保健福祉施策体系を構築する。
 障害保健福祉サービス体系の再編(給付体系等の見直し、施設・事業体系の見直し等)
 ライフステージに応じたサービス提供(雇用施策と連携した就労支援、極めて重度な障害者対応等)
 良質な精神医療の効率的な提供(精神病床の機能分化、地域医療体制の整備等)

介護保険との関係整理(別途整理)


1 現行の制度的課題の解決を図る。

(1)市町村を中心とするサービス提供体制の確立

 【基本的考え方】

図

<福祉サービス実施主体の現状>
  身体 知的 障害児 精神
在宅 市町村 市町村 市町村 市町村
施設 市町村 市町村 都道府県等 都道府県等
うち福祉工場 都道府県等 都道府県等    

<在宅サービスを実際に提供した市町村数(全市町村に占める割合)>
  身体 知的 障害児 精神
ホームヘルプサービス 2,491(78%) 1,706(53%) 1,190(37%) 1,671(53%)
デイサービス 1,624(51%) 1,101(34%) 1,456(46%)  
ショートステイ 967(30%) 1,643(51%) 1,583(50%) 531(17%)

※身体、知的、障害児は平成16年1月、精神は平成16年3月のデータ



 【具体的な内容】

 1)福祉サービスの提供に関する事務の市町村移譲と国・都道府県による支援体制の確立

図
 障害児については、被虐待等の要保護性を有する者に係る実施主体の問題があり、概ね5年後の施行を目途に3年以内に結論を得る。


 2)障害保健福祉サービスの計画的な整備手法の導入

図

このほか、次のような取り組みを進める。
 報酬請求事務等の電算化、外部化などの障害種別を超えた効果的・効率的な事務執行体制の整備の取り組み
 「精神分裂病」の「統合失調症」への名称変更などの障害等に対する国民の正しい理解を深める国の取り組み


(2)効果的・効率的なサービス利用の促進

 【基本的考え方】

図

  <ホームヘルプサービスの増額の内訳>

図


 【具体的な内容】

 1)市町村を基礎とした重層的な障害者相談支援体制の確立とケアマネジメント制度の導入

図

 2)利用決定プロセスの透明化

図

このほか、次のような取り組みを進める。
 ○ 各サービス共通の尺度を開発して客観性のある障害程度区分を設定し、標準的な費用額を設定するなどの取り組み。
 ○ 人材確保と資質の向上の取り組み。


(3)公平な費用負担と配分の確保

 【基本的考え方】

制度への信頼性の向上

制度を維持管理する仕組みの確立と客観的・合理的な基準、手続きに基づく運営
制度の公平性と持続可能性の確保

利用者の公平な負担と財政責任の確立

利用者負担の見直し


 他制度と均衡のとれた利用者負担の導入

 受けたサービス量に応じた負担と家計に与える影響等を勘案した一定の負担上限
(扶養義務者負担は廃止)


 入所施設と地域生活の均衡ある負担

 負担能力の乏しい者への配慮

国・都道府県の補助制度の見直し


 他制度と均衡のとれた国、都道府県の財政責任の確立

 配分の重点の変更
 入所サービス中心
 → 自立支援サービス中心
 医療費負担の軽減措置
 → 地域福祉サービス確保

<障害保健福祉関係の財政構造>
 障害保健福祉部平成16年度予算総額6,942億円(義務的経費5,873億円、裁量的経費1,060億円、公共投資関係9億円)

図
 ※1 上図には公共投資関係は含まれていない。また、(  )内の数値は裁量的経費の額を示している。
 ※2 施設訓練等支援費に係る医療費は、医療費ではなく支援費で整理している。


 1)福祉サービスに係る応益的な負担の導入

 サービスの量に応じて負担が変わる応益的な負担を導入。扶養義務者の負担は廃止。
 家計に与える影響等を勘案し、一定の負担上限(毎月)を設定。
 負担率、負担上限は、他の同様の制度等を勘案して設定(経過措置も検討)。
 負担能力の乏しい者については低い負担上限額を設定。

図
※負担上限の該当の有無は、各サービスに係る負担額の合計で計算する。


 2)地域生活と均衡のとれた入所施設の負担の見直し

 入所施設利用者と地域で生活する場合の費用負担の均衡を図る。
 医療費、食費、日用品費は、原則自己負担。
 個室利用(状態等から必要な者は除く)や施設が生活の場となっている場合には、一定の利用料を負担。
 負担能力の乏しい者に係る食費、施設利用料については、他制度との均衡を図りつつ別途配慮措置を検討。

図


 3)障害に係る公費負担医療の対象の見直し

精神障害者通院公費、更生医療及び育成医療について、医療保険制度を補完する仕組みとして、
 給付対象者を、(1)負担能力の乏しい者、(2)重度で継続して医療費負担の発生する者等に重点化。
 障害者福祉サービスや医療保険制度等と均衡のとれた応益的な負担と負担上限を導入。
 入院患者の食費は原則自己負担とし、負担能力のない者については、配慮措置を検討。
 精神障害者通院公費については、他制度と同様に指定医療機関制度を導入。

図
(1) 経済的理由から、十分な治療を受けずに障害が固定化するおそれのあるグループ (継続)
(2) 重度で継続的に医療費負担が毎月発生し、家計に対し大きな影響を与えるグループ(継続)
(3) 一定所得以上の者については、医療保険による対応とすることとし、給付の対象外
(4) その他の者については、これまでの給付実績を踏まえ、受診開始から一定期間給付の対象
 ※ 医療費の大きさにより、実際に給付されない場合あり


障害に係る公費負担医療の利用者負担のイメージ(見直し後)

図


 4) 国・都道府県の補助制度の見直し

利用者負担の見直しや制度を維持管理する仕組みの強化等と併せて、
 国・都道府県の補助制度を義務として支弁する仕組みに改め、利用状況に応じて一律に支払う分(障害区分別に設定する標準的な費用に利用者数を乗じた額の一定割合を上限)と、均衡のとれた整備を促していくために使用する分(調整交付金)で構成。
 都道府県負担は、障害種別、実施主体、サービスの種類等に関わらず、統一する。

障害福祉サービスの負担構造
図


調整交付金による調整
図



2 新たな障害保健福祉施策体系の構築

(1)障害保健福祉サービス体系の再編

 【政策目標】

図

<就労支援で成功している授産施設の退所状況>

退所者のうち就職を理由に退所する割合
図
【資料出所】 厚生労働省障害保健福祉部調べ
全国平均は、社会福祉施設等調査(平成12年)


 【具体的な内容】

 1)総合的な自立支援システムの構築

図


 2)障害者の施設、事業体系や設置者、事業者要件の見直し

<見直しの方針>
 ○「地域生活支援」、「就労支援」といった新たな課題への対応するため、自立訓練や就労移行支援等の地域生活への移行へ資する機能を強化するための事業を実施する。
 ○入所期間の長期化など本来の施設の機能と入所者の実態の乖離を解消するため、サービス体系を機能に着目して再編し、効果的・効率的にサービスが提供できる体系を確立する。

図


多機能型のイメージ


障害者支援施設の報酬体系のイメージ


居住支援サービスの再編


居住サポート事業のイメージ

家主・障害者とも安心して入居できる環境→地域生活の場(住まい)の確保
障害者の地域生活の支援→施設から在宅への流れの促進
地域生活支援事業の基本事業と位置づけ、障害保健福祉圏域ごとの相談支援事業者が実施。

居住支援サービスの再編

このほか、次のような取り組みを進める。
 ○ 障害者の権利擁護を推進する体制や障害者施設、事業に係る第三者評価の仕組みを計画的に進める。
 ○ 精神障害者社会復帰施設、福祉工場(身体、知的)の報酬体系について、現行の施設単位の支払方式から個人単位の支払方式に見直す。



(2)ライフステージに応じたサービス提供

 1)雇用施策と連携のとれたプログラムに基づく就労支援の実施

 既存の授産施設、更生施設等を、就労移行支援事業、要支援障害者雇用事業等に再編。
 雇用施策との連携を強化することにより、障害者の意欲と能力に応じて職業生活を設計・選択できるような支援体制を確立。

就労支援に係るサービスマネジメント体制


就労移行支援事業のイメージ


 2)極めて重度の障害者に対するサービスの確保

基本的な考え方 対象者のイメージ


 3)障害児施設、事業のサービス体系の見直し(概ね5年後施行を目途に3年以内に結論)

<見直しの方針>
 ○ 措置権については、原則として都道府県から市町村に移譲し、大人の障害者と同様の制度に改める。
(※ 被虐待等の要保護性を有する障害児への入所について、現在、国会に法案が提出されている児童虐待防止対策を含む。児童福祉法改正の動向を踏まえた上で、概ね5年後の施行を目途に3年間以内に結論を得る。)
 ○ さまざまな年齢や障害程度の異なる児童が混在するなど、本来の施設の機能と入所児の実態の乖離を解消するため、サービス体系を機能に着目して再編し、効果的・効率的にサービスが提供できる体系を確立する。(措置権移譲と同時期に着手)
教育と連携を図りつつ「発達支援・育児支援システム」を体系的に整備していくため、親の障害受容を促すための事業や適切な発達を確保していくための事業を実施する。

図



(3)良質な精神医療の効率的な提供

 【政策目標】

図

<受入条件が整えば退院可能な者の推移> 図
  【資料出所】 患者調査(平成11年・平成14年)


患者の病態に応じた精神病床の機能分化の促進と地域医療体制の整備

 
 入院患者の早期退院を促進し地域の目標値を達成するため、急性期、社会復帰リハ、重度療養等の機能分化を促進し、患者の病状等に応じた適切な医療を各病院の病棟・病室(ユニット)単位で柔軟に実施できる体制を、平成18年度には実現することを目指す。
 精神科救急について、輪番制など二次医療圏単位での既存体制に加えて、地域ごとの社会資源を活かして、中核的なセンター機能を持つ救急医療施設の整備を進める。

病床の機能分化のイメージ


救急医療システムの考え方(案)

このほか、次のような取り組みを進める。
 ○措置入院を受け入れる病棟の看護職員配置を3:1以上にするなどの医療体制の改善を段階的に進める等の適切な入院処遇の確保。
国公立病院の機能等に関する評価軸を設けその結果を公表する等、精神医療の透明性の向上を図る。


III 法改正に向けて

 【基本的な考え方】
  ○ 各障害者共通の自立支援のための給付・サービス体系や利用者負担体系、財政システムの整備や、各障害別の課題(統合失調症への名称変更など)等に対応するために、次期通常国会に法案を提出すべく関係機関等と調整を進める。なお、被虐待障害児の措置権の問題等もある障害児関係の一部事項については、概ね5年後の施行を目途に、社会保障審議会障害者部会等で引き続き検討し概ね3年以内に結論を得る。
  ○ この場合、福祉サービスに係る共通部分については、障害者施策を総合的に進める視点のほか、制度運用の整合性の確保、制度に関わる者の事務負担の軽減、財政の有効活用等の観点から、現行の各障害別の法律を個別に改正するのではなく新たな共通の法的枠組みを導入する可能性について検討する。
  ○ 各障害に共通の給付・サービス体系等に係る介護保険制度との関係については、年内に結論を得て、必要な内容を法改正に反映する。


 【具体的な法律構成のイメージ】

図


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