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4.がん研究助成金

事務事業名 がん研究助成金
担当部局・課主管課 医政局国立病院課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要
(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標 がん政策医療の推進
施策目標 がんに関する高度専門的医療、新たな社会ニーズに対応するモデル的医療の実施
国立病院機構の政策医療ネットワークを活かし多施設共同による新しい診断・治療法の開発普及
医療内容の高度化・多様化に対応した臨床研修の向上、医療専門職の養成
研究成果や最新の医療、標準的医療等に関する情報発信

(2)事務事業の概要(継続)
 がん研究助成金は、昭和38年に創設され「がん対策の企画及び行政を推進し、並びにがん医療の向上を図る」ことを目的として必要な研究に対して交付されている。
 当該助成金は、がん政策医療ネットワークを構成する全国の国立病院機構施設、がん専門医療施設等の多施設共同による、がんの新しい予防、診断・治療法の開発普及、医薬品の臨床試験など臨床に直結した研究を主体としている。
 がん研究助成金においては、特にがん政策医療の推進やがん医療の全国的な均てん化を推進していく上での基盤づくりのための研究、がんの臨床や研究において将来性の期待される萌芽的な研究に重点を置いており、がん医療・研究の先端を切り拓くことを主眼とする厚生労働科学研究費補助金「がん克服戦略研究事業」とは研究の目的及び内容を異にしている。
 また、研究を効果的に推進するため、関連学会や社会的要請に基づき計画的かつ集中的に実施する研究を「指定研究」、がんの診断・治療・予防法を確立するための臨床研究及びそれに関連する基礎研究並びに行政的研究を含めて総合的に実施するものを「総合研究」、関連学会等で重要性が認識されている研究を「計画研究」として位置づけている。
 当該助成金にかかる事務は国立がんセンター総長に委任されており、研究課題及び研究者の選定、研究費の配分、研究成果の評価について審議するため行政関係者、学識経験者等24名で構成される運営委員会を設置している。
 平成15年度の研究課題数は95課題(指定課題10,総合研究8、計画研究75、機械開発研究2)研究者総数は823名となっている。
 主な研究課題として、(1)各種がんの予防、診断・治療法の開発、(2)がん臨床試験体制の確立、(3)がん情報ネットワークの構築、(4)がん登録による発生頻度及び死亡率の把握等があげられる。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
1,850 1,850 1,850 1,850 1,850

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 がんは昭和56年以来わが国の死因の第一位を占めており、がん対策は厚生労働省における最も重要な施策のひとつとして位置づけられている。がん研究助成金による研究は厚生労働省医政局国立病院課のがん政策医療推進の一環として行われているものであり、厚生労働省として実施する行政的意義は非常に大きい。とくにがん研究助成金は「がん対策に関する企画及び行政を推進し、並びにがん医療の向上を図る」ことを目的として、国立がんセンターを中心とする多施設共同により、わが国のがん対策を推進していく上での基盤づくりのための研究、がん予防、診断・治療に係る臨床研究や疫学研究、萌芽的な研究などに重点を置いており、がん政策医療の目的に沿って実施されていることから、行政施策との関連性は非常に強い。また、がん研究助成金においては、がん政策医療ネットワークを構成する全国の国立病院機構をはじめ、がん専門医療施設、大学等の積極的な参加のもとに多施設共同による研究が実施されており、参加施設のレベルアップを図るとともに厚生労働省のがん政策医療やがん医療の均てん化を全国的に推進する上でも重要な役割を果たしている。
他省との連携
 文部科学省管轄の大学等が幅広く参加している。この結果、大学研究成果との融合・発展がなされ、多角的な研究展開が図られ、がん領域の研究全体の向上を目指している。
期待される成果
 当該助成金の特筆すべき成果のひとつとして、世界的に通用する質の高い臨床試験体制の確立が上げられる。これにより全国のがん専門医療施設約190カ所の多施設共同によるがん臨床試験の実施体制(JCOG)が構築されるとともに、がん臨床試験の品質管理及び品質保証(データマネジデント)の方法論が確立され、その第一歩として肺がんに対する化学療法と放射線療法の同時併用による標準的治療法が確立された。また、1990年からは14万人規模の大規模コホート研究が開始され、がん死亡の危険度を定量的に評価することが可能となった。この他、頭頚部がんに対する陽子線この他、機能温存手術の開発普及、発がん要因の探索などがんの診断・治療および予防に関して、国際的にも注目される成果を上げている。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 第3次対がん10カ年総合戦略の指針を基に課題採択を行うと共に、厚生労働科学研究費の研究で対応されていない分野を積極的に公募している。また、指定研究等の多施設共同研究により見いだされた新たな研究の方向性の内、研究内容を深める課題設定も行い、有機的な研究課題設定ができるシステムとなっている。
 がん研究助成金の運営にあたっては運営委員会が設置されており、研究課題及び研究者の選定、研究費の配分、研究成果の評価等について、運営委員会における審議のもとに適正な運用が図られている。事前・中間・事後と評価をおこない、運営委員による指摘を研究者に逐一連絡し、対応を適時的に行ってきた。特に中間発表会による課題評価は厳密におこなわれ、運営委員の評価が研究継続の可否、及び研究費の配分金額にも反映され研究者は本助成金の目指すアウトラインからはずれることなく研究を深めていくことができる。この評価については関連学会や社会的要請に基づき総合的に判断される。長期にわたり計画的及び集中的に実施する必要のある研究を指定研究と位置づけ実施している。この他各分野の専門的知識を入れながら評価基準を設けて研究期間を原則2年間ないし3年間を単位とし、研究の成果及び評価結果に応じて研究課題の見直しも行い、有効性と効率性にも配慮した適正運用が図られている。
 また、この評価の結果に基づく研究の成果については「厚生労働省がん研究助成金報告集」やインターネットホームページにより公表し成果の普及と外部からの評価にも耐えうるものとなっている。

(5)事業の概略図
がん研究助成金事業概略図

 がん研究助成金は運営委員会により、運営方針等事業展開が決定される。課題評価のための評価委員会は運営委員会委員により構成されている。運営委員会の決定事項は事務局により処理され、シンポジウムの運営、班友選考、備品選考に当たっての委員会等が事務局により開催され、常に公正かつ多角的な判断がなされる体制となっている。


がん研究助成金事業概略図


B. 評価結果

(1)必要性
<専門家の意見、国内外の状況等を踏まえて、明確に記述してください。>
 国立がんセンターを中心として、がん政策医療ネットワークを構成する全国の国立病院機構、がん専門医療施設及び大学等の参加のもとに行われている多施設共同研究により、重要な医療施策であるがん治療技術の均てん化等厚生労働省のがん政策医療を推進することも大きな役割を担っている。また、国内外の学会にて成果が発表され更なる研究の推進が求められており、臨床現場では地域がん登録・院内がん登録等その成果が具体的な形として定着しており今後の診断等に大きな貢献が期待されている。また、大規模コホート研究による成果は新たな知の領域を切り拓き、新たながんへのアプローチが試みられるようになってきた。

(2)有効性
 がん研究助成金による研究はがん政策医療の推進の観点から、がん対策の企画やがん医療・研究の推進に役立つ実践的な課題を対象としており、研究課題の設定の段階から国立病院部や生活習慣病対策室等の関連部局との緊密な連携のもとに実施されている。また研究の目的・内容により「指定研究」「総合研究」「計画研究」及び「機器開発研究」に分類し、これに応じた研究班の構成や研究費の配分を行うなど研究の効果的な推進が図られている。
指定研究:関連学会や社会的要請に基づき計画的かつ集中的に実施する研究
総合研究:がんの診断・治療・予防法を確立するための臨床研究、及びそれに関連する基礎研究並びに行政的研究を含めた総合的研究
計画研究:関連学会等で重要性が認識されている研究について、焦点を絞り効果的に推進するための共同研究
機器開発研究:がんの診断・治療に必要な機械器具の開発を行うための研究
 また研究課題及び研究者の選定、研究費の配分並びに研究課題の評価にあたっては、行政関係者及び有識者で構成する運営委員会において、社会の要請や最新の知見に照らして審議決定されており、適正な運用が図られている。
 研究の実施体制についても、研究班は全国の国立病院・療養所をはじめ、がん専門医療施設、大学など広く第一線の機関で構成しており、医療現場の実情を踏まえた実践的な研究が行えるよう配慮されている。
 以上のように、がん研究助成金は、研究課題の目標達成度は全般的に高く、行政的にも有用性の高い研究が数多く実施されている。

(3)計画性
 がん研究助成金の運営にあたっては運営委員会が設置されており、研究課題および研究者の選定、研究費の配分、研究成果の評価等について、運営委員会における審議のもとに適正な運用が図られている。また、関連学会や社会的要請に基づき計画的かつ集中的に実施する必要のある研究は指定研究として位置づけて実施しているのをはじめ、評価基準を定めて研究課題を評価し、その結果を課題の選定及び研究費の配分に反映させているほか、研究期間を原則2年間ないし3年間を単位とし、研究の成果及び評価結果に応じて研究課題の見直しや継続の可否を判断するなど、有効性と効率性を十分配慮した、適正な運用が図られている。

(4)効率性
 がん研究助成金による研究については、指定研究、総合研究、計画研究等の分類に沿って、研究課題ごとの目的や内容に応じた研究班の規模及び研究費の配分が運営委員会で決定されている。1課題当たりの配分額は指定研究については約6000万円(研究者25名)、総合研究については約2300万円(研究者12名)、計画研究については約1200万円(研究者6名)となっており、適正な規模で効率的に研究が実施されるよう配慮されている。
 研究課題の評価については、学術的観点及び行政的観点から評価基準が定められており、これに基づき運営委員会による評価を毎年行うとともに、その評価結果は課題の採択のみならず、研究費の配分にも反映させており、効率性、妥当性が高いと判断される。また研究期間についても、原則2年間ないし3年間を単位としており、研究の成果及び評価結果に応じて、研究課題の見直しや継続の可否に反映できるよう効率性が確保されている。
 また、当該助成金による研究成果は「厚生労働省がん研究助成金報告集」として刊行し広く関係機関に配布しているほか、年1回の発表会及びシンポジウム等において発表するなど、研究成果の普及・公表にも努めている。
 当該助成金によるこれまでの研究より、わが国で初めて国際的に認められたがん臨床試験体制が確立されたのをはじめ、内視鏡治療や機能温存手術の開発のように既に実用化され体への侵襲が少なくかつ安全性の高い根治療法を可能としたもの、固形がんに対する同種細胞免疫療法のように副作用が少なく有効な治療法の開発に結びついたものなど、即臨床や研究に役立つ成果が多数出ており、当該研究費の目標達成度や有効性は高い。
 さらに、がん研究助成金による研究班は、大学・研究機関の研究者に偏らず、がん医療を担う全国の国立病院機構、がん専門医療施設等の研究者、医療従事者を中心に構成しているほか、班友制度を設け、研究意欲のある国立病院機構の職員に研究へ参加する機会を提供しており、研究者の養成、資質向上にも貢献している。

(5)その他
 特記事項なし


C. 総合評価

 がん対策はわが国の健康対策において依然として重要な位置を占めており、がん研究はその重要な柱の一つとなっている。とくにがん研究助成金については、国立がんセンターを中心として国立病院機構におけるがん政策医療やがん対策を推進するための、基盤づくりあるいは牽引的な役割を果たしてきた。
 また研究成果は発表会やシンポジウムのほか、「厚生労働省がん研究助成金報告集」やインターネットで公表するなど、成果の普及と研究の透明性確保にも努めている。
 さらに、がん研究助成金については、国立がんセンターを中心として、がん政策医療ネットワークを構成する全国の国立病院機構、がん専門医療施設及び大学等の参加のもとに多施設共同による研究が行われており、参加施設のレベルアップとがん医療の均てん化、並びに厚生労働省のがん政策医療を推進する上でも重要な役割を果たしている。
 今後のがん対策を推進する上でがん研究はこれまでの成果を集約しつつ、一層重要性が高まることが予想される。とくにがん研究助成金は、がん対策を企画・推進していく上で有用な研究やがんの予防法、診断・治療法の開発普及に結びつく臨床研究を主体としており、こうした研究費の性格から、がん研究助成金の社会的必要性や行政的意義は大きく、さらなる研究の進展が期待される。


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