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<IV.健康安全確保総合研究分野>

 健康安全確保総合研究分野は、「創薬等ヒューマンサイエンス総合」、「医療技術評価総合」、「労働安全衛生総合」、「食品医薬品等リスク分析」、「健康科学総合」の各事業から構成されている(表5参照)。

表5.「健康安全確保総合研究分野」の概要
研究事業 研究領域
14)創薬等ヒューマンサイエンス総合
15)医療技術評価総合
16)労働安全衛生総合
17)食品医薬品等リスク分析 17−1)食品の安心・安全確保推進
17−2)医薬品・医療機器等RS総合
17−3)化学物質リスク
18)健康科学総合


14)創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業

事務事業名 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究経費
担当部局・課主管課 医政局研究開発振興課
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要(継続)
 医薬品、医療・福祉機器、保健衛生等の先端的、基盤的技術に関する研究を総合的に推進することを目的として、創薬等ヒューマンサイエンス研究分野においては、(1)先端的創薬技術の開発に関する研究、(2)創薬のための生体機能解析に関する研究、(3)医薬品等開発のための評価方法の開発に関する研究、(4)稀少疾病治療薬等の開発に関する研究、(5)健康寿命延伸・予防診断・治療法の開発に関する研究、(6)医用材料及び製剤設計技術の開発に関する研究、(7)ヒト組織を用いた薬物の有効性、安全性に関する研究を、エイズ医薬品等開発研究分野においては、(1)抗エイズウイルス薬、エイズ付随症状に対する治療薬の開発に関する研究、(2)エイズワクチン等エイズ発症防止薬の開発に関する研究、(3)抗エイズ薬開発のための基盤技術の開発等に関する研究等を推進することにより、もって画期的な治療薬・診断・治療法の開発を行う。
 また、本事業においてはこのような行政上必要な研究について公募を行い、専門家、行政官による評価により採択された研究課題について補助金を交付する。また、得られた研究の成果は適切に行政施策に反映される。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
2,757 2,758 2,576 2,528 2,531

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 現在、医薬品等の研究開発をめぐっては、製薬企業間によるグローバルな競争が激化しているが、創薬環境として我が国の市場が欧米と比べて魅力的なものとはなっておらず、その基盤となる研究開発部分においても、企業1社当たりの研究開発費が米国と比べ5分の1程度と低く、その差は拡大傾向にあり、日米政府におけるライフサイエンス関係予算を比較しても格差は大きい。
 さらに、医薬品・医療機器が開発され医療の現場に流通するまでには、膨大な研究費用と長い研究期間を要するとともに、国民の生命・健康を守るために必要不可欠な安全確保に資する厳しい薬事規制等のハードルを越えなくてはならず、このままでは、我が国の医薬品等産業の国際競争力は将来弱体化していく可能性が高い。そのため、本事業においてはこのような行政上必要な研究について公募を行い、専門家、行政官による評価により採択された研究課題について補助金を交付する。また、得られた研究の成果は適切に行政施策に反映される。
期待される成果
 官民共同研究により、画期的・独創的な医薬品の研究開発、医療現場のニーズに密着した医薬品の開発及び長寿社会に対応した保健・医療・福祉に関する先端的、基盤的技術開発に関する研究及びエイズ医薬品等の研究開発の推進が期待される。
 これまで、112件の特許出願、エイズ患者に対する未承認エイズ薬の治療研究の実施、若手研究者症例研究を通じたポスドクの育成、官民共同研究の実施による研究成果の活用等を通じて、本事業の目的達成を目指しているが、特許については医薬品開発まで相当の時間が必要であり、エイズ治療研究については根本的な治療方法が確立していないため、今後とも継続的して研究を実施する必要がある。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 本事業での研究課題は、3ヵ年計画で研究を実施しており、評価方法についても外部の評価委員で構成される評価委員会が多角的な視点から評価をおこない、成果の見込まれる研究を採択している。
 また、研究成果の帰属については、「(財)ヒューマンサイエンス振興財団の研究事業に係る知的財産権の取扱規程」等により定めているところである。さらに、新規採択課題については、研究者への研究課題の周知徹底、適切な事前評価を実施することにより、レベルの高い研究課題を採択するようにしている。また、継続課題に対しては、中間・事後評価を厳正に実施することにより、質の高い研究を継続させることとする。

(5)事業の概略図
事業の概略図


B. 評価結果

(1)必要性
 画期的医薬品等の研究開発を推進するためには、我が国の研究開発基盤の脆弱性を補完する上でも国が、重点的にライフサイエンス分野への研究資金投下を行い、しかるべく評価をし、研究を推進する必要がある。
 また、エイズ医薬品等開発においては、疾病の重大性を踏まえ、国が主体となってエイズ治療薬の開発推進に取り組むことを明言しているところ。

(2)有効性
 事業内容のとおり、創薬ヒューマンサイエンス研究の7分野、エイズ医薬品等開発の3分野に加えて、国際共同研究を推進するためのグラント、若手研究者を育成するための若手研究者奨励研究、官民共同研究を推進するため、民間からの委託金を含めたマッチングファンド研究を実施している。
 これらの研究に対しては、3ヶ年計画で研究を実施しており、評価方法についても外部の評価委員で構成される評価委員会が、多角的な視点から評価を行い、その結果に基づき適切な研究費の配分が行われている。

(3)計画性
 本事業は、官民共同研究方式を原則として国立試験研究機関と民間研究機関等の研究者、研究資源等を結合し、画期的・独創的な医薬品等の創製のための技術開発、医療現場のニーズに密着した医薬品の開発及び長寿社会に対応した保健・医療・福祉に関する先端的、基盤的技術開発に関する研究を推進するものとしており、公募型研究課題を採択することにより、多様な研究者の有する資源や研究手法を広く集め、研究の推進及び強化を行う。

(4)効率性
 創薬等ヒューマンサイエンス研究の各分野においては、これまでに112件の特許が出願されている。エイズ医薬品等開発研究においては、エイズ患者に対する未承認エイズ薬の治療研究を行っており、更に若手研究者奨励研究を通じたポスドクの育成や官民共同研究の実施による研究成果の活用を通じて当該事業目的の達成を目指している。これらの目標に対する寄与によって達成度が示される。これにより、効率的な事業運営がなされている。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 近年、急速に高齢化が進む中、がん、アルツハイマー病をはじめとして、これまで有効な治療薬が見いだされていない疾病はいまだ多く残されており、国内の研究基盤を整備する上で、政府が投下するライフサイエンス関係予算の強化によって優れた医薬品が一日も早く開発される必要がある。特にエイズについては、世界的に深刻な状況にあり、アジア諸国でも急増傾向といえるが我が国においても例外ではない。このため、官民共同研究により、画期的・独創的な医薬品の研究開発、医療現場のニーズに密着した医薬品の開発及び長寿社会に対応した保健・医療・福祉に関する先端的、基盤的技術開発に関する研究及びエイズ医薬品等の研究開発を推進する当該研究経費の有用性は高いと考える。



15)医療技術評価総合研究事業

事務事業名 医療技術評価総合研究事業研究経費
担当部局・課主管課 医政局 総務課
関係課 指導課、医事課、歯科保健課、看護課、経済課、研究開発振興課、国立病院課

A. 研究評価事業

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要(継続)
医療技術評価総合研究費
【医療における安全確保体制の構築に関する研究】(重点事項)
 (1) 医療における安全確保体制の構築に関する研究
 (2) 医療の質と信頼の確保に関する研究
 (3) 医療安全の確保に資する電子カルテシステム等の開発と評価に関する研究
【自然災害や非自然災害の際の有効な対応システムに関する研究】(重点事項)
 (4) 救急医療体制及び災害時における迅速かつ有効な医療提供体制整備の推進に関する研究
【その他の医療技術評価総合研究事業】
 (5) 診療技術の評価に関する研究
 (6) 医療情報ネットワーク構築の基盤となる情報技術の開発、評価、普及に関する研究
 (7) 在宅医療及び終末期医療の充実に関する研究
 (8) 地域医療の質の向上及び離島・へき地における医療供給体制の整備の推進に関する研究
 (9) 医療機関の質の評価方法及び向上に関する研究
 (10) 看護技術の開発、評価及び看護提供体制に関する研究
 (11) 根拠に基づく医療の手法開発、医療技術の評価及び体系化に関する研究
 (12) 院内感染制御と患者の安全に関する研究
医療技術評価総合研究推進事業費
 (1) 外国人研究者招へい等事業
 (2) 外国への日本人研究者派遣事業
 (3) 若手研究者育成活用事業
 (4) 研究支援事業
 (5) 研究成果等普及啓発事業
 (6) 診療情報提供事業(EBMデータベースの運営費用)

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
867 1,895 1,668 1,718 2,018

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
我が国の医療提供体制は、国民皆保険制度の下で、国民が必要な医療を受けることができるよう整備が進められ、国民の健康を確保するための重要な基盤となっている。一方、少子高齢化の進展、医療技術の進歩、国民の意識の変化等を背景として、より質の高い効率的な医療サービスを提供するための改革を推進することが課題となっている。
 特に、医療安全を確保することは、国民が安心できる安全な社会を構築するための重要課題のひとつであることから、科学的根拠に基づいて医療事故の発生頻度、発生実態を把握するなど基礎資料を収集整理するとともに、ハイリスク領域等における具体的な医療安全対策に関する研究、医療事故発生後の対応に関する研究、医療の安全の評価を行うなど、医療安全対策を推進することが必要である。
 また、大規模災害時に想定される傷病者の救命を図るため、非被災地から迅速に救護班を派遣し、患者を迅速に搬出するシステムが重要であるが、これまでに研究が行われておらず、救急医療体制及び災害時における迅速かつ有効な医療提供体制整備の推進に関する研究が必要である。
 この他、効率的で合理的な医療提供体制を確保するためには、診療技術の評価、医療機関の質の評価、看護提供体制の確保など、医療提供体制にかかるその他の分野においても研究を継続して実施することが必要である。
他省との連携
 これまで研究報告の情報提供や意見交換を通じて関係省庁との連携を図っており、今後も研究内容について情報交換を行うなどにより関係省庁との連携を図っている。
期待される成果
 本研究事業の成果は今後の制度設計に資する基礎資料の収集・分析(医療安全、救急・災害医療、EBM、院内感染)、良質な医療提供を推進する具体的なマニュアルや基準の作成、体制の構築(医療安全、医療機関の質の評価、看護技術、遠隔医療、EBM等)などを通じて、医療政策への反映が期待される。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 トップダウンによって研究を推進する形式など公募のあり方についての検討が必要との指摘(総合科学技術会議)に対して、平成17年度においては、医療安全対策、災害医療対策を重点事項とするなど、医療政策の主要課題を踏まえた研究課題を掲げて公募を行うこととしている。

(5)事業の概略図
事業の概略図


B. 評価結果

(1)必要性
 本研究事業において実施される研究はいずれも、医療技術、医療システム等を評価し、良質な医療の合理的かつ効率的な提供に資することを目的した研究であり、厚生労働省として実施する意義が極めて大きい。
 特に、医療事故が相次いで報道され、国民の医療に対する信頼が大きく揺らいでいる中、医療安全対策の確立のための研究は最優先課題である。
 また、大規模災害時に想定される傷病者の救命を図ることは、社会的要請も強く、非被災地からの救護班を派遣し、患者を搬出するシステムを、早急に構築する必要がある。

(2)有効性
 「(5)事業の概要図」に示されているとおり、いずれの研究においても研究課題の目標の達成度は高く、政策の形成・推進の観点からも有効性の高い研究が実施されていると考えられる。
 例えば、これまでの研究により、ヒヤり・ハット事例や事故事例が報告・分析され、現在の医療安全対策が十分でない状況であることが明らかとなったが、この結果を踏まえると、さらに医療安全に係る基礎情報の収集・分析や個別領域の具体的な医療安全方策の研究等が必要であると考えられる。今後、個別領域の医療安全対策や事故後の対応方策が明確にされることによって、事故発生前の防止対策から発生後までの一貫した医療安全対策が構築され、医療の安全性の確保につながりひいては国民が安心して医療を受けるための体制整備が進むものと思われる。
 また、これまでの研究により、非被災地における重症患者受入体制が被害想定に対して十分であることが確認されたが、今後の研究により、非被災地から迅速に救護班を派遣し、患者を迅速に搬出する救急医療体制が構築されることが期待される。
 根拠に基づいた医療(EBM)の分野においては、平成16年度までに外来入院患者の3割以上に相当する23疾患の診療ガイドラインが完成する見込みである。

(3)計画性
 「(5)事業の概要図」に示されているとおり、いずれの研究においても、研究課題の目標の達成度は高く、研究課題の最終的な目標の達成に向けて、計画的かつ着実に実施されていると考えられる。
 例えば、医療安全対策の確立に向けて、医療安全管理体制整備やヒヤリ・ハット事例等の報告・分析・情報提供等基礎的な研究は最終段階に入っており、次の段階として、ハイリスク領域等の個別分野の医療安全対策、臨床指標の開発、事故後の対応等のより具体的かつ科学的根拠のあるデータを蓄積、提示していく研究が求められている。
 また、非被災地における重症患者受入体制が被害想定に対して十分であることが確認されたことにより、次の段階として、非被災地から迅速に救護班を派遣し、患者を迅速に搬出する救急医療体制を確立することが必要である。

(4)効率性
 これまで、限られた予算の中で、公募された研究課題から、必要性、緊急性の高い課題が採択されている。公募される研究課題は、医療政策の推進状況を踏まえて見直され、また、重点分野が明示されており、本研究は効率的に実施されるものと考えられる。

(5)その他
 今年4月の総務省における「医療事故に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」において、(1)医療機関に対し、安全管理体制の整備、組織的な安全対策の検討・実施、院内報告制度の明確化、(2)すべての病院及び有床診療所に重大な医療事故の報告を義務づけ、分析・情報提供するシステム導入の推進が示された。この指摘への対応として、これまでの対策に加え、さらに研究を積み重ねることにより、知識・技術の蓄積、普及に努める必要がある。

C. 総合評価

 医療技術評価総合研究事業は、医療の内容のみならず制度面において、医療政策を推進する重要な役割を果たしており、専門的・学術的意義だけでなく、行政的意義も大きいと考えられる。



16)労働安全衛生総合研究事業

事務事業名 労働安全衛生総合研究経費
担当部局・課主管課 労働基準局安全衛生部計画課
関係課  

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要(継続)
 労働安全衛生総合研究分野においては、労働者の安全と健康を確保する施策に資することにより安全、安心な健康で質の高い生活の実現を図ることを目的として、(1)基礎疾患の状況と長時間労働による健康影響に関する研究、(2)過重労働等によるストレスの負荷の評価に関する研究、(3)過重労働対策に関する事業場の取組に関する研究、(4)有害化学物質の労働者へのばく露限界値等に関する研究、(5)企業の安全活動の社会的評価に関する研究、(6)工学技術の開発研究における建設安全分野、機械安全分野、電気安全分野及び爆発火災防止分野に係る画期的な技術に関する研究等を推進するものである。
 その成果は広く公表されるとともに、行政の施策に取り入れられることにより、職場におけるメンタルヘルス対策の充実・過労死等の防止、職場における有害化学物質対策の推進、製造現場の安全等の確保に大きく貢献する。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
378 333 308 370

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 労働災害によって今なお年間約53万人が被災し、このうち約1,600人が命を奪われており、一度に3人以上の労働者が被災する重大災害は増大していることから、その一層の減少を図ることは行政にとって大きな課題である。
 近年、労働者のメンタルヘルス等についても社会的関心が高まっているが、ストレスを感じる労働者の割合が63%に達していること、過労死等の労災認定が過去最高の水準で推移していること、精神障害等の認定についても2年連続して100件を越えている一方で、リストラ等により労働者一人一人の負担が増加していること等が指摘されており、過重労働とメンタルヘルスについての知見を充実させることが必要である。健康フロンティア戦略においても、「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」等が掲げられているところであり、メンタルヘルス、過重労働対策を推進する上で科学的な知見の充実を図る必要がある。
 また、職場における有害化学物質については、石綿、シックハウス等による健康被害への社会的関心の高まっているところであり、化学物質に係る作業の多様化、職業性疾病の原因物質の多様化に対応する観点から、いまだばく露限界値が定められていない多くの化学物質について、ばく露に係る知見を充実させることが必要である。本年5月に公表された「職場における労働者の健康確保のための化学物質管理のあり方研究会」においても、化学物質ばく露限界値の充実を図るべきことが提言されている。
 さらに、企業の社会的責任に関する検討が国内外でなされているが、一方で、昨年来、我が国を代表する大規模製造業で爆発・火災等の近隣住民を巻き込む大きな災害が頻発しているところである。労働災害防止に関する事業者の取組を促進するためには、災害事故の経済的損失を明らかにしてインセンティブを高めるとともに、労働災害防止に係る技術開発を促進する必要がある。
 これらの研究により得られた科学的知見に基づいて効果的な対策を推進し、労働者の安全と健康を確保するため、労働安全衛生総合研究の充実を図るものである。
期待される成果
 メンタルヘルス・過重労働対策に係る研究により、過重労働により発症すると考えられる脳・心臓疾患(過労死)が、基礎疾患や生活習慣によって受ける影響に関する知見が充実し、労働者の健康状態や生活習慣に応じたきめ細かな労働時間管理等を実施するため基礎資料が得られることが期待され、ガイドライン等として周知を図ることにより、過労死等のより効果的な防止対策の推進が図られる。
 また、有害化学物質の労働者へのばく露限界値等に関する研究により、管理濃度等が設定されていない多くの化学物質について、参考となる濃度が示されることが期待され、これによって、事業者による自主管理のために必要なデータが充実し、その結果、化学物質による職業性疾病の約半数を占める未規制化学物質による労働災害の減少が図られる。
 企業の安全活動の社会的評価に関する研究により、労働災害によって生じる経済的損失を定量的に予測するための手法の開発等が期待され、これによって、企業の安全衛生活動への取組の動機付けを強めることが可能となり、安全衛生水準の向上が図られる。

(5)事業の概略図
事業の概略図


B. 評価結果

(1)必要性
 労働災害によって今なお年間53万人が被災しており、1600人以上がその命を落とし、過労死闘の労災認定は高い水準で推移している中、労働災害の防止は我が国における重要な課題の一つである。本研究が推進されることにより、国民の健康、メンタルヘルスの向上に深く寄与することが期待される。また、有害化学物質対策については、化学物質による職業性疾病の原因物質の約半数を未規制の化学物質が占めている現状に鑑み、その対策を推進する上で必要不可欠な基礎資料を得るものであり、高く評価できるものである。製造業の現場における安全の確保については、昨年来我が国を代表する大規模製造業において爆発火災災害が頻発していることから、これを効果的、効率的に防止するためのツールを提供するものであり、この成果によって国民の安全の確保に関して大きな寄与があることが見込まれる。

(2)有効性
 過重労働と基礎疾患、生活習慣の間には関係があることが指摘されていながら、これまでその影響について十分な知見はなく、本研究によってこれが補われることにより、現在以上にきめ細かな過労死予防策が推進されることが見込まれ、その有効性はいものと考えられる。
 また、有害化学物質については、労働安全衛生法による規制や産業衛生学会による管理濃度の提示が、十分な科学的知見のもとに設定されている反面、その対象となる物質はわずか数百程度にとどまっており、職場で使用される数万と言われる化学物質のほとんどに指標となる濃度が設定されていない実態がある。本研究によって示されるばく露限界値に基づいて事業者が自主的な取組によってリスク評価を実施することで、法的な規制手法によって担保することが困難な多様な化学物質についても労働者のばく露が一定の値以下におさえられることが期待できるものであり、有効に機能するものと考えられる。
 製造現場の安全の確保については、欧州でCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に関する議論が高まっていることを受けて、我が国でもCSRへの関心が高まっているが、労働災害の減少率が鈍化する中で、本研究の成果は事業者の取組の一層の促進を図るための新たなツールとなりうるものであり、技術開発の促進と相まって、労働災害の減少に非常に有効であると考えられる。

(3)計画性
 いずれの計画も、研究成果が労働災害防止の政策に反映されること及びその効果について十分な検討がなされており、適正に実施することができるものと認められる。

(4)効率性
 社会的にも大きな関心を集めている労働者のメンタルヘルス、過労死等の対策を推進するに当たって、本研究は隘路となっている部分を取り除くとともに、より効果的な対策を推進するための基礎資料を得ようとするものであり、労働者の63%が強いストレスを感じている中で、社会的に大きな貢献が見込めることはもちろん、経済的観点においても労働者の健康の質を高めることにより企業の経済活動を活性化させる上で貢献できるものと考えられる。
 また、有害化学物質対策については、毎年数百の新規化学物質が新たに職場で使用されるようになっている中、それらの化学物質による健康障害の発生を効果的に防止しようとするために不可欠な研究であり、その社会的・経済的貢献度は高いものである。
 製造現場の安全の確保については、労働災害の防止に貢献が見込めることはもちろんであるが、企業の社会的責任に関する議論の高まりと相まって、労働災害防止に関して企業に求められる社会的責任を明確にし、責任に応じた自主的な活動を促進することにより、きわめて大きな社会的意義があるものと考えられる。

(5)その他
特になし


C. 総合評価

 安全衛生総合研究事業については、これまでの研究を引き続き継続して実施すべきことはもちろんであるが、新たにその対象としようとしているメンタルヘルス・過重労働に関する研究、有害化学物質対策に関する研究、製造現場の安全の確保に関する研究のいずれについても、社会的に関心の高い分野であり、行政の施策に取り入れられることにより国民の安全と健康を確保する上で非常に大きな効果が期待できる重要な施策であることから、着実に実施することが必要である。



17)食品医薬品等リスク分析研究事業

17−1)食品の安心・安全確保推進研究経費

事務事業名 食品医薬品等リスク分析研究経費(食品の安心・安全確保推進研究)
担当部局・課主管課 食品安全部 企画情報課
関係課 食品安全部基準審査課、新開発食品保健対策室、監視安全課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要(一部新規)
【食品の安心・安全確保推進研究】
   食品の安全性確保に対する国民の関心は高く、安心・安全な社会の構築のためには必須の課題であることから、すべての食品の安心・安全に係る横断的事項に関する基盤研究を推進するとともに、BSE、遺伝子組換え食品等個別の課題の研究も推進させる。
【横断的基盤研究分野】
   消費者等の食品の安全性理解に対する理解促進のためのリスクコミニュケーション手法の構築や、いわゆる食品テロに関する研究を行うとともに、新たに食品リスクとして重要な食中毒に関し、定量的微生物リスク予測に基づくリスクの存在を前提とした衛生管理手法の開発を行う。
【個別研究分野】
   BSE、遺伝子組換え食品等の検出技術の開発や食品中の添加物、化学物質、汚染物質等の安全性に係る調査研究を行う。さらに新しく「BSEの食品を介したヒトへのリスク分析/評価」「いわゆる健康食品の安全評価・確保」「アレルギー表示法と分析法の確立」「輸入食品の安全対策」等、新たな個別課題についての研究を行う。

(3)予算額(単位:百万円)
H13
(生活安全総合研究)
H14
(食品・化学物質安全総合研究)
H15
(食品安全確保研究)
H16
(食品の安全性高度化推進研究)
H17
2,942 2,650 1,477 1,482 1,887

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 平成15年5月に成立した食品衛生法等の一部を改正する法律により、国の責務として「研究の推進」が盛り込まれたところであり、食品の安全性の確保し、国民の健康の保護を図るために、リスク管理に資する研究や技術開発を行い、行政が適正な検査及び規格・基準の策定を行う必要があることから国が関与する必要がある。
他省との連携
 BSE研究については、農林水産省、文部科学省と「BSE・変異型CJD研究に関する関係省庁連絡会議」を設置し、役割分担、協力体制について連携・調整している。また、その他の研究についても、「生産→加工→消費」という一連の流れの中で、役割分担、協力体制について農林水産省と調整している。
期待される成果
 本研究事業は、食品監視ネットワークの強化、BSE、遺伝子組換え食品、残留農薬等の検査技術の向上、食品衛生法に基づく規格基準の作成に反映する等の成果が期待され、そうした成果は食品の安全・安心の実現、国民の食に対する信頼の回復につながるなど国民生活への波及効果は大きいものと考える。
 具体的には、カドミウムに関する研究では、食品中のカドミウムの国際基準検討に対する日本提案の根拠として使用され、その結果、国際基準の改正がおこなわれているほか、ダイオキシンに関する研究では、一日摂取量調査結果が行政のパンフレット等に使用されるとともに、FAO/WHOに、日本の汚染データとして報告され、さらに食品用香料に関する研究では、開発された含有測定量が規格試験法として採用され、活用されるなど、本研究事業の目標は概ね達成されていると考える。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 昨年度の総合科学技術会議において、「いわゆる狂牛病や遺伝子組換え食品に対する不安が広がる中、食品の安全性確保が重要であり、検出技術並びに客観的評価手法の確立を着実に実施する必要がある。」との評価を受けている。

(5)事業の概略図
事業の概略図


B. 評価結果

(1)必要性
 食品の安全性に関する国民の関心は高く、平成15年5月に制定された「食品安全基本法」においても、「科学的知見に基づく食品健康影響評価の実施」が規定されており、省としても食品安全に関し積極的に関与する必要がある。
 このようなことから、本研究は、行政的意義はもちろんのこと、昨今のBSE問題や輸入食品対策、遺伝子組換え食品等の安全性に関し即座に対応するため、大変意義の高い研究事業であると考える。

(2)有効性
 本研究については、「食の安心」という立場からの「横断的基盤研究」と、個別具体的な問題について安全性と確保するための「個別研究」に大別しており、それぞれの研究分野を連携させることで、大きな成果が得られると考える。
 また、若手研究者の育成や海外との研究協力を行うなど、人材育成も含めた研究基盤の強化も併せて立案されており、食品安心・安全に関する研究が総合的に推進されるものと考える。

(3)計画性
 それぞれの個別分野において、研究が計画的に立案されている。
特にBSEに関する研究については、前年度までが検査法や実験系の確立を目指し、概ねその成果が得られることを受け、次年度からはこれらを利用した自動検査方法の開発や食品を介したBSEリスク評価の検討を行うといった計画になっており、複数年度にわたった研究の計画が立案されている。

(4)効率性
 当研究事業の研究成果は、これまで多くの事項が行政施策に反映されており、例えばこの研究班で確立された検査法は国の公定検査法として広く使用されている。
 特に平成15年度の研究成果では、カドミウムに関する研究のデータが食品中のカドミウムの国際基準検討に対する日本提案の根拠として使用され国際基準の改正がおこなわれた他、ダイオキシンに関する研究では、一日摂取量調査結果が行政のパンフレット等に使用されるとともに、FAO/WHOに、日本の汚染データとして報告され、さらに食品用香料に関する研究においては、開発された含有測定量が規格試験法として採用され、活用されているなど、非常に社会的貢献の高い研究事業である。

(5)その他
 特になし。


3. 総合評価

 当該研究事業は、行政的意義や行政への貢献度が極めて高く、さらに研究事業自体においても、非常に有効性、計画性が高いことから、平成17年度については、引き続き研究を進めるとともに、これからの食品問題に迅速に対応できるような体制の拡充を図るべきであると考える。


<参考>
平成17年度食品の安心・安全確保推進研究事業

【横断的基盤研究事業】
(改)1. 食品安心・安全推進研究分野
 消費者等の食品の安全性に対する理解促進のためのリスクコミュニケーション手法の構築や、いわゆる食品テロ対策に関する研究を行う。
(新)2. 食品リスク分析調査研究分野
 食品に起因する現実的な健康被害は食中毒で、平成14年度では1,850件、27,626名の食中毒が発生、18名の死者(微生物に起因するもの11名、植物性自然毒1名、動物性自然毒6名)が発生している。カンピロバクター、リステリア等の食中毒菌は市販食品を広く汚染しており、定量的リスクアセスメントによる微生物リスクの科学検証が必要なことから、全国の食中毒検体や食品検査における菌分離・PFGEによる遺伝子情報等を一元的に収集・データベース化し、病原性菌の分離状況・対象食品・フードチェーン中のポイント等の因子をシミュレーション解析し、定量的微生物リスク予測に基づくリスクの存在を前提とした衛生管理手法の開発を行う。

【個別研究分野】
1. バイオテクノロジー応用食品対策研究分野
 FAO/WHO専門家会議やコーデックス委員会等での議論を踏まえ、ヒト血清スクリーニング試験系やモデル動物を用いた試験実験系などの遺伝子組換え食品のアレルギー性評価手法や試験法等を確立するとともにし、抗生物質耐性マーカー遺伝子の移行性に関する評価を行う。
 また、後代での遺伝子の変化が遺伝子組換えに起因する変化であるか否かは明らかではないため、挿入遺伝子に係る後代種での変化が食品の安全性に影響を及ぼさないか等の調査・分析を行うことやその追跡調査(ポストマーケットモニタリング)に必要な手法・検査方法を検討・開発する。
 更に遺伝子組換え微生物や遺伝子組換え魚等の新たな食品の開発とその実用化が進んでいることから、適切かつ有用な検知法の開発を進めていく。
 消費者の漠然とした遺伝子組換え食品への不安に対しては、安全性等に関する情報をいかに正確に伝え、理解を得るかが大きな課題となってきているところである。このため、国民に遺伝子組換え食品の安全性に関する理解を深め、これら食品等への安心感を持ってもらうためのリスクコミュニケーションに関する調査及び分析を行う。

(新)2. 健康食品等の安全性・有効性評価研究分野
 特定保健用食品の有効性審査については、これまで西洋医薬品的審査(1つの関与成分に注目し、作用機序、有効性を審査)に基づき行っているところであるが、伝統的健康食品やハーブ類など、実際に効果はあるものの、作用機序、関与成分が特定できないものは審査できないのが現状である。「『健康食品』に係る今後の制度のあり方について(提言)」においても、「食品そのものまたは複数の成分が関係していると考えられ、関与成分の特定が困難な食品等についても研究するべきである」とされており、これらを踏まえ、特定保健用食品の次世代の審査基準を策定するための研究を行う。

(改)3. 牛海綿状脳症対策研究分野
 牛海綿状脳症(BSE)については、これまで異常プリオンタンパクの検出法の開発等により我が国のBSE検査技術レベルの向上が図られ、世界でもトップクラスの検査体制が整備された。しかしながら、食品を介したBSEの人への健康影響レベルついては不明であることから、食品安全対策を検討する上で困難を来している。これらの状況を踏まえ、異常タンパクプリオンの高感度検査法の開発を行うとともに、BSE感染牛由来材料を用いた感染実験による感染・発症機構の検討を行うことにより、食品を介するBSEリスクの解明について研究を行う。

4. 食品中の添加物に関する研究分野
 添加物の安全性に関しては消費者の関心も高く、新たな科学的知見に基づいて安全性の見直しや品質の確保を進めていくことが強く求められている。そこで、化学的合成品を含めた添加物の規格・試験法に関する国内外の動向を踏まえた検討や、天然物に由来する既存の添加物についての毒性メカニズムの解明等を研究により行うことにより、リスク評価や衛生対策の検討に必要な基礎的知見を収集する。
 なお、国内外の既知の情報収集等による添加物の指定や摂取実態の調査等は、事業費により行う。

5. 食品中の汚染物質対策研究分野
 近年、重金属などの汚染物質が食品中に含まれていることが報告されており、その安全確保対策が強く求められている。食品への汚染が十分解明されていない汚染物質やその健康影響が不明なものについて、科学的データを得るための調査研究を早急に実施することが必要であり、取り組みを強化する。
 健康影響メカニズムの解明など衛生対策の必要性の検討などに必要な基礎的知見の収集などを研究により行い、基準の策定に必要な汚染実態の調査などは、事業費により行う。

6. 食品中の微生物対策研究分野
 リスク管理とは、リスク評価の結果、リスクを科学的に洗い出し、そのリスクを軽減、回避、未然に防止するための施策決定をとることである。具体的には、どのようなリスクをどのように管理するかをデータに基づき、選択する必要があるが、この分野の研究の目的は、リスク評価の結果からとるべき管理手法を選択し、さらに実行された施策の評価に必要な研究である。
 健康被害の状況についてより正確に把握するためには、ハイリスクグループ(性別、年齢等)の有無、致死率、散発事例、地域差、通常の食中毒症状を呈さない食品由来疾病の調査等、従来の食中毒統計では把握することが困難な健康被害の状況について、正確に推測することが必要であり、そのための調査手法を開発する。
 危害の特徴付けとは、摂取した菌数によりどのくらいの確率で発症するかを解析することである。病原体をヒトに投与することができないことから、食中毒事例の検食等を用いて摂食菌量及びその発症率等を推定することは有用な手法である。
 リスク管理手法の選択に際し考慮すべき要因、すなわち、どこまでのリスク軽減を求めるべきか、各リスク軽減措置に要する費用、軽減措置の導入に伴い予想される新たなリスク、軽減措置による恩恵とそのもののリスク等、政策を決定するために必要な要因について量的に評価できるデータの収集及びその効率的手法の開発を行う。
 実行されたリスク管理手法が、遵守されているかを確認(モニタリング)し、再評価するリスク管理における施策評価も行う。

7. 食品中の化学物質対策研究分野
 食品中に含まれる内分泌かく乱化学物質の試験法、毒性発現メカニズム、試料分析・モニタリング等に関する研究を行い、食品中に含まれる内分泌かく乱化学物質の健康影響の解明を強力に推進する。さらに、内分泌かく乱化学物質のリスク管理に関する研究を行い、もって内分泌かく乱化学物質が及ぼす毒性等が明らかになった場合の適切なリスク管理及び規制等の対策の実施に資する。
 食品に含まれるダイオキシンに分類される各種類縁化合物の正確な毒性把握をはじめ、食品の汚染実態調査、人体の汚染状況の把握、母乳による乳幼児への影響に関する研究、職域における健康影響把握等を一層推進することにより、ダイオキシン類の健康影響を体系的に解明する。
 ・ ダイオキシン類や内分泌かく乱化学物質の消化管からの吸収調査
 ・ 人体からの排泄促進及び排泄機序
 ・ 食品や煙草煙、日用品の汚染実態
 ・ 容器包装からの溶出実験 等

(新)8. アレルギー表示に関する研究分野
 食品のアレルギー表示については、平成14年4月から、食品中に含まれる5品目(卵、乳、小麦、そば、落花生)については、義務表示とし、その検知法については、同年11月に公定法を通知している。一方、アワビ、いか等の19品目については、通知により表示を奨励しているが、義務表示ではないため、その検知法については、公定法を定めていない。アレルギー表示制度については、施行後約2年が経過し、現在「食品の表示に関する共同会議」において、その対象品目についても検討を行っているが、「19品目についても、食品中にその原材料が含まれているのか、いないのかを検査によって科学的に証明できることが重要であり、これまで研究が行われて来なかったことから、新たな研究により、この19品目について食品中からの検知法の開発を行う。

(新)9. 輸入食品の安全性等に関する研究分野
 放射線照射食品の検知法、我が国で使用実態がない動物用医薬品の検知法等輸入食品特有の問題について、最新の知見に基づく検査方法を開発し、輸入食品の安全確保の推進に資する。
 また、近年の食品輸入の拡大をはじめとした食品安全分野における検査ニーズの多様化や増加などへの対応のため、指定制度から登録制度に移行したところである。今後、登録検査機関が行う検査件数は増加し、また、検査を行う食品も多岐にわたることが予想されることから、登録検査機関について、さらなる信頼性確保を図るため、信頼性確保の指標となる外部精度管理の実施方法及び評価方法について研究を行う。

【若手研究者の育成】
1. 若手研究分野
 食品安全に係る研究推進と若手研究者を育成する観点から、若手研究者が主体的に研究できる環境の整備が必要であり、そのため、若手研究者を対象とした公募枠を設定し、自ら主体的に研究計画を立て遂行する仕組みを設立し、若手研究者の育成を行うこととする。


17−2)医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究経費

事務事業名 食品医薬品等リスク分析研究経費(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究経費)
担当部局・課主管課 医薬食品局総務課
関係課 医薬食品局審査管理課、医療機器審査管理室、安全対策課、監視指導・麻薬対策課、血液対策課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要(継続)
 医薬品・医療機器分野における品質・有効性・安全性の確保等の推進に資することを目的とし、
 1) 医薬品・医療機器等のリスク評価・有効性評価等
 2) 医薬品・医療機器等の品質確保・製造管理技術
 3) 安全な血液製剤等の安定供給・人工血液の開発等
 4) 医薬品・医療機器等の市販後安全対策
 5) 医薬品・医療機器等の適正な提供等
 6) 乱用薬物対策等
 の観点から総合的かつ計画的な研究を推進する。本事業においては、このような行政上必要な研究について公募を行い、専門家、行政官による事前評価等により採択された研究課題から得られた研究成果について、適切に行政施策に反映させる。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
    1,410 1,455 1,610

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 近年、医薬品分野では、バイオ・ゲノム技術を駆使した医薬品が数多く開発され、医療機器の分野においても、バイオ・ゲノム技術のほか、ナノテク等の様々な産業技術・科学技術の応用による多種多様な製品が提供されてきていることに加え、IT化の進展等に伴い、国民生活・産業活動・行政活動が一層世界と直結したものとなり、国際的整合性が求められてきている。
 これらを受け、施行以来、数次に渡る改正を経て、現在の制度体系が構築されるに至っている薬事法について、一昨年、制度の大幅な見直しが行われた。具体的には、(1)医療機器に係る安全対策、(2)生物由来製品への対応、(3)製造承認制度の見直しを中心に、21世紀のニーズを踏まえた制度改正を行うこととされ、平成17年4月より施行されることとなっている。(一部については平成15年7月施行済み。)
 この新制度の下で、有効性・安全性・品質の確保された医薬品・医療機器等を国民に供給するためには、行政が公平な観点から適正な規制を行う必要があり、また、医薬品・医療機器等は、日本国内を流通することから、国が統一した規制を設ける必要があり、規制を設けるための科学的基礎となる研究等を厚生労働省が実施する意義は極めて大きく、医薬品・医療機器等のリスク評価・管理手法の開発等、科学技術の進展に対応した評価基準の作成、高度化等は、患者の安全確保による安全な社会の構築、信頼性の向上のために、緊急を要する課題でもある。
 さらに、薬物乱用対策については、覚せい剤以外のマジックマッシュルーム等、麻薬を含む植物の乱用の拡大も予断を許さない状況であることに加え、地球規模での緊急な対策が必要な課題であり、この分野で国際的な研究を推進していくことは、我が国のみならならず、国際的な貢献につながるものである。
 また、近年の医療技術の高度化、医薬分業の進展等に伴う医薬品の安全使用といった社会的要請がある中、質の高い薬剤師が求められている。この社会的要請に応えるため、今般、薬剤師法の一部が改正され、薬剤師の資質の向上が図られることとなった。国会での審議・付帯決議を踏まえ、今後、医療現場における安全対策に質するため、薬剤師の資質の向上の観点から、様々な検討を行う必要がある。
 この他にも、安全な血液製剤等の安定供給の確保、人工血液開発等の推進等、医薬品・医療機器等に係る様々な領域について、更なる国民生活の安心・安全の確保に貢献していく必要がある。
 同時に、本研究で得られた成果は、行政施策に取り込まれることにより日本国内のみならず世界規模の行政に反映される可能性も秘めており、発展性も大いに期待できる。さらには、世界に先駆けて基準を作成し国際標準化することにより、医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化にもつながるものと考えられる。
期待される成果
 青少年の乱用問題への対応、医薬品・医療用具等の医療事故につながるインシデントに関するガイドラインの作成、国際的動向を踏まえた医薬品等の評価ガイドラインの作成など、薬事に関わる広範な分野において、施策に反映され、国民の安心・安全の確保に対して大きく寄与している。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 医薬品等の承認審査については、ここ数年間に外国臨床データの受入、承認申請データの様式の統一が図られてきており、これらガイドライン等を国内の薬事規制に遅滞なく取り込むことにより、新医薬品の承認審査データの国際的な相互受入れを実現し承認審査を迅速化が可能となる。今後、日米EU3極においてさらに普遍的な有効性、安全性の評価を実現するため、引き続き研究を充実することが必要である。

(5)事業の概略図

医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業の展開

事業の概略図


B. 評価結果

(1)必要性
 有効性・安全性・品質の確保された医薬品・医療機器等を国民に供給するためには、行政が公平な観点から適正な統一した規制を設ける必要があることから、規制を設けるための科学的基礎となる研究等を厚生労働省が実施する意義は極めて大きい。
 また、安心・安全な社会を維持するためにも、最先端の生命科学の研究成果を活用した画期的な医薬品・医療機器の開発が強く望まれており、生命科学の進展の成果を社会に還元するためには、適切な規制がなされていることが必要不可欠であり、科学技術の進展に対応した評価基準の作成、高度化等は緊急を要する課題であるといえる。
 同時に、得られた成果が行政施策に取り込まれることにより日本国内のみならず世界規模の行政に反映される可能性もあり、発展性も大いに期待でき、世界に先駆けて基準を作成し国際標準化することが医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化につながりうると考えられる。

(2)有効性
 本研究事業は、医薬品・医療機器等に関する製造から市販後までの総合的なレギュラトリーサイエンスの構築を目標として、行政上必要な研究課題について公募を行い、評価委員会において、第三者の各分野の専門家による最新の知見に照らした評価がなされ、その評価を踏まえて研究課題の採択、研究費の配分を行っており、限られた予算の中で、必要性、緊急性の高い課題を採択しており、実施体制は妥当と評価できる。

(3)計画性
 評価委員会においては、実現可能性も含めて評価を行っているところであり、これまでも、新医薬品の品質、有効性及び安全性の評価方法等に関する国際的動向を踏まえたガイドラインの作成、ハイリスク医療機器の承認審査ガイドラインの作成等、着実な成果が上がっている。このように、その成果が行政上に反映されるなど、目的の達成度は高く、社会への貢献も極めて大きいものと評価できる。

(4)効率性
 成果が行政施策の形として見えにくい部分や、実用化に向けての途上的なものについて、今後、より一層押し進めていく必要がある。また、医薬品等に関する問題に個別に対応するだけではなく、問題が生じないための将来像を検討しつつ、医薬品の市販後の有効性・安全性の評価方法に関する課題等、広い視野に立った研究にも着手してきているところであり、今後とも継続していく必要がある。

(5)その他
 平成14年7月に成立した薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律の審議の際、医薬品・医療機器の安全対策の推進に関する件(平成14年7月24日衆議院厚生労働委員会決議)が決議され、その中で、生物由来製品に関し、「常に最先端の科学的知見をもって市販後安全対策を推進すること」とされ、また、「人工血液については、その有効性及び安全性が確保されたものの製品化が促進されるよう、研究開発の促進を図ること」とされており、本研究事業において、本決議を踏まえた研究を推進することが必要である。


C. 総合評価

 全体としては、安全性の確保から、品質に関する評価、薬物乱用対策など、医薬品等に係る様々な問題に対し、それぞれの研究が着実に有用な成果を上げており、その研究過程による科学技術への貢献、行政施策としての国民生活の向上へ貢献している。
今後も、バイオ・ゲノム等の科学技術の進展や、社会的な要請等を見据え、更には国際的動向も踏まえつつ、医薬品・医療技術の安全性・有効性・品質の確保するとともに、副作用の発生を未然に防ぎ拡大を防止する体制の構築、薬物乱用の防止等、常に国民的視野に立った貢献を視野に入れた総合的な研究展開が期待できる。


17−3)化学物質リスク分析研究経費(仮称)

事務事業名 食品医薬品等リスク分析研究経費(化学物質リスク研究経費)
担当部局・課主管課 医薬食品局 審査管理課化学物質安全対策室
関係課 大臣官房厚生科学課

A. 研究事業概要

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要(継続)
 日常生活において使用される化学物質等について、より迅速かつ効率的な毒性の評価、より充実した暴露評価、リスクコミュニケーションに関する研究等を行い、もって必要な規制基準の設定や的確な情報発信等の行政施策に寄与せしめる。
 本事業においては、このような行政上必要な研究について公募を行い、専門家及び行政官による事前評価等において採択された研究課題について補助金を交付する。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
    2,049 2,049 2,049

(4)趣旨
施策の必要性と国が関与する理由
 一般国民が暴露を受ける可能性がある生活環境中の化学物質の種類は増加しており、毒性評価、暴露評価を迅速化、効率化させ、必要な規制等を実施する必要がある。化学物質は全国に流通し、使用されるものであり、かつ国民の保健衛生を保護する観点から、その毒性評価、暴露評価とそれに基づく規制の検討は、国レベルで行う必要がある。
他省との連携
 内分泌かく乱化学物質問題、シックハウス問題等について、関係省庁連絡会議の開催により、連携と役割分担に配慮しつつ、研究調査を進めている。
期待される成果
 化学物質の毒性評価手法が迅速化・効率化されることにより、身の回りにある膨大な数の化学物質のリスク評価を効率的に行えるようになる。
 また、内分泌かく乱化学物質問題やシックハウス問題の解明に向けた研究は、国民の不安を解消し、安全な生活の確保を図るものである。
前年度の総合科学技術会議および科学技術部会での評価に対する取り組み
 「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」に基づき設置した、外部委員からなる評価委員会において、本年3月、平成16年度に応募のあった新規課題について事前評価を実施したところ。同様に設置した評価委員会で、本年1月に平成15年度の中間・事後評価を実施し、継続課題についてはいずれも研究の継続が可とされた。

(5)事業の概略図

化学物質リスク評価・管理技術に関する研究

がん研究助成金事業概略図


B. 評価結果

(1)必要性
 化学物質は全国に流通し、使用されるものであり、かつ国民の保健衛生保護の観点から、その毒性評価、暴露評価とそれに基づく規制の検討は、国レベルで行う必要がある。
 一般国民が暴露を受ける可能性がある生活環境中の化学物質の種類は増加しており、毒性評価、暴露評価を迅速化、効率化させ、必要な規制等を実施するとともに、適切な情報発信を行う必要がある。
 本研究は、「科学技術に関する予算、人材等の資源配分方針」の重点4分野の一つである「環境」において掲げられている「化学物質リスク総合管理技術研究」に、該当する。
 特に今年度は子供に対する化学物質の健康影響評価など、国際的にも緊急性、重要性が認められている研究課題に着手することにより、その成果を国内のみならず、国際的な化学物質管理等に反映させることが必要と考えられる。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 本研究事業の実施においては、化学物質の毒性評価、暴露評価の迅速化、効率化を目標として、行政上必要な研究課題について公募を行い、本事業の評価委員会において、第三者の各分野の専門家による最新の知見に照らした評価がなされ、その評価を踏まえて研究課題の採択、研究費の配分を行っている。
 化学物質の毒性評価、暴露評価の迅速化、効率化の基盤となる研究に加え、内分泌かく乱化学物質問題やシックハウス問題等、国民に不安を与えている化学物質問題についての調査研究を進め、作用機構の解明や各種ガイドラインの策定を行っており、国民の不安を解消し、安全な生活の確保を図っている。

(3)計画性
 公募にあたっては、国際的な化学物質安全対策の状況や国内における化学物質管理の現状を踏まえつつ、緊急性、必要性の高い政策課題に即した研究課題を設定している。
 また、内分泌かく乱化学物質問題については、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会」における行動計画等を踏まえた中・長期的な展望に基づいた研究課題の設定を行っている。

(4)効率性
 迅速かつ効率的な毒性スクリーニング方が開発されることで、例えば動物試験の実施等、個別の化学物質の毒性評価や暴露評価にかかる負担が減少し、毒性評価や暴露評価含めたリスク評価が促進することが見込まれる。
 内分泌かく乱化学物質関連の研究成果については、例えば、容器包装の基準、分析法の策定に活用されたほか、スクリーニング試験系として開発された子宮肥大試験は、OECDのテストガイドラインとして採択される方向である。さらに、大規模な疫学研究の実施による化学物質暴露と先天異常発生の関係解明など、他では得難い研究成果が得られつつあるなど、本事業の社会への貢献はきわめて大きいものと考えられる。

(5)その他
 特になし


C. 総合評価

 一般国民が暴露を受ける可能性がある生活環境中の化学物質の種類は増加しており、これらの毒性評価、暴露評価を迅速化、効率化し、必要な規制や的確な情報発信等を実施することは、国民の保健衛生保護の観点からも重要であり、積極的かつ重点的に推進をする必要がある。
 特に今年度は子供に対する化学物質の健康影響評価など、国際的にも緊急性、重要性が認められている研究課題に着手することにより、その成果を国内のみならず、国際的な化学物質管理等に反映させることが必要と考えられる。


【資料】
研究事業の詳細
1) 化学物質リスク評価・管理技術に関する研究
 従来の化学物質のリスク評価体系は、多岐にわたる動物試験を中心としたハザード評価と限られたヒト暴露データに頼っているが、今後将来にわたって、動物試験による毒性評価を省力化すると同時に、トキシコゲノミクスといった手法を活用しつつ、より多くの物質について迅速かつ効率的に毒性をスクリーニング・評価できるシステムの構築を行う。これらの化学物質について、慢性毒性、生殖毒性、遺伝毒性等の毒性と、生体試料保存を含む疫学調査から得られるヒトの暴露量・暴露経路との関係を総合的に評価する(リスク評価)ともに、必要な規制基準の設定(リスク管理)と的確な情報発信・応答(リスクコミュニケーション)を行う、新たなリスク評価系を整備する。特に平成17年度は、化学物質リスク評価の中でも、国際的にも重要な課題として位置づけられている子供と化学物質の安全性に関する評価方法の研究に着手する。また、これまでの成果を踏まえつつ、更に実用化に向けた取組として、吸入暴露による安全性評価試験法体系の検討に着手する。

2) 内分泌かく乱化学物質(ダイオキシン類を含む)総合対策研究
 ヒトの暴露状況と疫学調査、プラスチックからの溶出等の調査測定をはじめ、ダイオキシン類によるヒト生殖機能等健康影響との関係を含む内分泌かく乱化学物質とヒト神経発達、免疫機能等健康影響との関係に関する調査研究は、世代を超えて安全な生活環境を確保していく上で重要な研究課題の一つであり、一層強力に推進する。特に、神経系への影響はまだ知見が少ないが成長・発達との関係で今後知見を充実させていかなければならず、同時にリスク管理として規制等の対策を講じるための判断基準も整備する。またOECD国際試験法の開発と評価に引き続き参画することにより、国際的協力体制の中で確実に研究を推進するものである。

3) 家庭用化学物質安全対策に関する研究
 生活中の化学物質に対する安全対策は重要性を増しており、その実施基盤となる科学的知見として、家庭用品中の化学物質の含有状況の調査、適切な測定法の開発、シックハウス問題の解明に向けた室内空気汚染化学物質の実態の把握、生活環境中の化学物質のヒトの暴露の状況や健康影響の関連に関する研究による知見の蓄積に努め、必要な場合には、家庭用品規制法における規制基準の検討を行う。



18)健康科学総合研究事業

事務事業名 健康科学総合研究経費
担当部局・課主管課 健康局総務課地域保健室
関係課 健康局総務課地域保健室、健康局総務課生活習慣病対策室、健康局生活衛生課、健康局水道課

A. 研究事業評価

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な配分を確保すること

(2)事務事業の概要
 地域保健・公衆衛生の基盤の基礎として「地域保健サービスに関する研究分野」及び「地域における健康危機管理に関する研究分野」の2分野、個別対策分野として、「疾病の早期発見と対策に関する研究分野」(新規)、「健康づくり・生活習慣病(がんを除く)予防に関する研究分野」、「健全な水循環の形成に関する研究分野」及び「生活環境に関する研究分野」の4分野、計6分野から構成された公衆衛生に関する総合的研究事業である。
個別の分野の目的は下記のとおりである。
 地域保健サービスに関する研究分野
 地域の公衆衛生(地域保健)行政を取巻く社会状況は健康危機の頻発、市町村合併等激変してところである。このような社会状況に対応できる組織、人材育成、技術的事項等に関する研究及び開発を行い、公衆衛生行政の基盤の向上を図ることを目的とする。
 地域における健康危機管理に関する研究分野
 SARS、鳥インフルエンザ等の健康危機事例が頻発しており、健康危機対策は社会の安全性及び安心とを確保するためには必要不可欠となっている。健康危機管理対策を支える組織、情報等の体制や対応の整備といった共通の基盤の構築を行うことが重要であることから、健康危機対応に関する共通の基盤を構築するための研究及び開発を行い、危機管理対策の推進を図ることを目的とする。
 疾病の早期発見と対策に関する研究分野(新規)
 疾病の早期発見とその対策に係る科学的知見の構築及びその具体的方策を明確化し、健康増進の基盤を強化するとともに、国における疾病予防サービスについて体系的に研究する新規の研究分野である。
 本研究分野の研究成果をもとにした効率的、効果的な健康診査、保健事業等を実施し、生涯にわたる国民の健康増進の推進とともに、医療費の適正化を図ることを目的としている。
 生活環境に関する研究分野
 室内空気汚染問題をはじめとした建築物における空気環境や給排水等の衛生的環境の確保に関する研究、公衆浴場等の生活関係営業の振興及び衛生的環境の確保に関する研究など、生活環境が人体に及ぼす影響等の研究を推進し、生活衛生の向上及び増進を図る。
 健全な水循環の形成に関する研究分野
 環境・エネルギー面等から最適な水道システムの構築を進めていくための研究を行うとともに、水道水質の安全性の確保を図るために必要な研究、水利用の起点である水道水源を保全するための研究等を行い、水道のエネルギー・環境面での最適化を進め、将来にわたり安全な水を安定的に供給水利用システムを構築することにより、健全な水循環系の形成に資することを目的としている。
 健康づくりに関する研究分野
 健康増進法を基盤とする国民の健康の増進、生活習慣病に着目した疾病予防の推進のため、分子疫学等最先端科学を活用した生活習慣と疾病との関係に関する調査研究等を進めるとともに、給食施設、温泉利用型健康増進施設等健康づくり関連施設に関する研究を行い、国民の健康の増進の推進を図ることを目的とする。

(3)予算額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
714 1,606 2,006 1,150 1,652

(4)趣旨
 地域保健・公衆衛生の基盤の基礎として「地域保健サービスに関する研究分野」及び「地域における健康危機管理に関する研究分野」の2分野、個別対策分野として、「健康づくり・生活習慣病(がんを除く)予防に関する研究分野」、「健全な水循環の形成に関する研究分野」及び「生活環境に関する研究分野」の3分野、計5分野から構成された公衆衛生に関する総合的研究事業である。
個別の分野の目的は下記のとおりである。
 公衆衛生の基盤確保に関する研究分野
 地域の公衆衛生(地域保健)行政を取巻く社会状況は健康危機の頻発、市町村合併等激変してところである。このような社会状況に対応できる組織、人材育成、技術的事項等に関する研究及び開発を行い、公衆衛生行政の基盤の向上を図ることを目的とする。
 地域における健康危機管理に関する研究分野
 SARS、鳥インフルエンザ等の健康危機事例が頻発しており、健康危機対策は社会の安全性及び安心とを確保するためには必要不可欠となっている。健康危機管理対策を支える組織、情報等の体制や対応の整備といった共通の基盤の構築を行うことが重要であることから、健康危機対応に関する共通の基盤を構築するための研究及び開発を行い、危機管理対策の推進を図ることを目的とする。
 疾病の早期発見と対策に関する研究分野(新規)
 疾病の早期発見とその対策に係る科学的知見の構築及びその具体的方策を明確化し、健康増進の基盤を強化するとともに、国における疾病予防サービスについて体系的に研究する新規の研究分野である。
 本研究分野の研究成果をもとにした効率的、効果的な健康診査、保健事業等を実施し、生涯にわたる国民の健康増進の推進とともに、医療費の適正化を図ることを目的としている。
 生活環境に関する研究分野
 室内空気汚染問題をはじめとした建築物における空気環境や給排水等の衛生的環境の確保に関する研究、公衆浴場等の生活関係営業の振興及び衛生的環境の確保に関する研究など、生活環境が人体に及ぼす影響等の研究を推進し、生活衛生の向上及び増進を図る。
 健全な水循環の形成に関する研究分野
 環境・エネルギー面等から最適な水道システムの構築を進めていくための研究を行うとともに、水道水質の安全性の確保を図るために必要な研究、水利用の起点である水道水源を保全するための研究等を行い、水道のエネルギー・環境面での最適化を進め、将来にわたり安全な水を安定的に供給水利用システムを構築することにより、健全な水循環系の形成に資することを目的としている。
 健康づくりに関する研究分野
 健康増進法を基盤とする国民の健康の増進、生活習慣病に着目した疾病予防の推進のため、分子疫学等最先端科学を活用した生活習慣と疾病との関係に関する調査研究等を進めるとともに、給食施設、温泉利用型健康増進施設等健康づくり関連施設に関する研究を行い、国民の健康増進の推進を図ることを目的とする。

(5)事業の概略図
事業の概略図


B. 評価結果

(1)必要性
 個々の研究結果については、地域保健法第4条に基づく地域保健対策の推進に関する基本指針の改正及び水質基準等の「指針」、「基準値」等の改正の科学的根拠として活用するとともに、「健康日本21中間評価」等の施策や対応策における具体的方法に活用される予定であり、今後、地域保健対策の実施のための基礎となると共に、基準値等の設定に必要不可欠な研究である。
 公衆衛生の基盤確保に関する研究分野
 地域の公衆衛生(地域保健)行政を取巻く社会状況は市町村合併、健康危機の頻発等激変していることに加えて、対応する制度等が不明確な事案も増大しているところであることから、今後の公衆衛生組織等に関する方向性を明確化し、公衆衛生の基盤の強化を行うためには、地域における公衆衛生組織、人材、対策等の将来像に関する概念及び具体的な対応策に関する研究を実施し新たな地域保健の課題等に対応するための基盤確保の実施に必要な研究である。
 地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理対策は行政が中心となり推進していくことが必要不可欠な課題であることから、安心・安全の社会形成のためには、組織、人材、育成等の総合的概念的な研究にあわせて、それぞれの分野の健康危機に共通して活用できる概念、機器、組織、物流等、具体的な開発、研究の推進が今後より一層重要となってくることから、必要な研究課題である。
 疾病の早期発見と対策に関する研究分野(新規)
 国民の生活様式の変化による生活習慣病の増加と疾病の早期発見につながる医療技術等の水準の発達に伴い、疾病の早期発見が益々重要になってきているところであることから、健康診査に関する総合的な研究を実施することにより、地域保健対策のための基礎となるだけでなく、今後の施策の見直しや改正、疾病の早期発見とその対策の充実等に必要不可欠な研究課題である。
 生活環境に関する研究分野
 シックハウス症候群、レジオネラ等生活環境による健康影響は社会的にも注目を浴びており、今後も充実が必要な研究分野である。
 健全な水循環の形成に関する研究分野
 本研究分野の成果は、WHOの飲料水水質ガイドライン改訂への反映や、水質基準をはじめとした水道法に基づく各種基準の見直しにおける科学的知見として活用されたことなどから、本研究事業についての必要性は、高く評価しうると思われる。
 健康づくりに関する研究分野
 健康増進施策を推進するうえで必要な科学的な知見を集積し、今後の施策に活用可能な多くの研究成果を得ることができたものの、たばこ対策に関する研究やライフステージ毎の健康課題等、生涯にわたる健康づくりに関する研究の更なる推進が必要である。

(2)有効性
 地域保健(公衆衛生)行政の課題及び施策に対して、本研究事業の結果が積極的に活用されているところである。特に「指針」、「基準値」等の改正の基礎調査研究として活用及び、公衆衛生行政における対応の科学的根拠の確立には大きく活用されていることから、目標に対する達成度は高い。個々の研究事業については下記のとおりである。
 公衆衛生の基盤確保に関する研究分野
 「地域保健関係機関のマンパワーに関係する研究」は、保健所長の職務の在り方に関する検討会の基礎資料として、今後予定している政令改正に活用され、「現状指摘された人材育成に関する概念及び具体的育成に関する研究」では、地域保健法第4条に基づく地域保健対策の推進に関する基本的指針の改正のための基礎資料として、「地域職域の連携における研究」では、具体的な連携方法等が報告されるなどから、現行制度における知見の集積がある程度、行われており地域保健行政の施策展開において有効に活用されている。
 地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理対策を支える組織、情報等への体制や対応といった共通基盤の構築を行うため、平成14年度まで地域保健サービス分野に含まれていたものを別の分野として独立させ研究の推進体制を強化し、平成15年度においては、健康危機管理の情報に関する概念及び取扱等に関する研究を中心に開始されたところである。
 健康危機管理対策は行政が中心となり推進していくことが必要不可欠な課題であることから、本研究課題は行政課題解決のための対策の一つであり健康危機管理共通社会基盤整備等の研究が15年度より系統的に実施されており今後健康危機管理対策に対して有効な結果等を導けるものである。
 疾病の早期発見と対策に関する研究分野(新規)
 本研究成果を活用して、生涯を通じた効率的・効果的な健康診査が実施されるようになれば、国民の健康増進が一層推進されるだけでなく、医療費削減や社会活動の活性化に伴う社会的・経済的な波及効果がもたらされること等から研究成果の有効性は高いと考えられる。
 生活環境に関する研究分野
 本分野は行政施策に密接に関連した研究課題が多く、各研究成果の多くが行政施策に反映されており、その有効性は高い。
 健全な水循環の形成に関する研究分野
 本分野の研究については、行政的な施策目標に密接に関連した課題について実施しており、実施体制も十分考慮し実施しており、今までの研究成果は、国際的にはWHO飲料水水質ガイドラインに反映され、国内的には水道法に定める水道水質基準改定や水道施設や給水装置の資機材等に材質に関する基準の改定に際しての科学的な知見として活用され、本年4月から施行されたこれらの新しい基準等に反映されたこと、その他の水道施策の立案や実施等における科学的、技術的根拠として活用されていること等から、研究の有効性は高いと考えられる。
 健康づくりに関する研究分野
 健康日本21の目標達成度評価手法に関する研究、生活習慣と疾病との関係に関する研究、生活習慣を改善させるための指導方法に関する研究等、いずれも健康づくりに関する施策を推進するうえで必要不可欠な研究であり、現在までに集積された科学的知見は検討会等において活用されている。

(3)計画性
 地域保健(公衆衛生)行政の課題及び施策に対して、本研究事業の結果が積極的に活用されているところである。特に「指針」、「基準値」等の改正の基礎調査研究として活用及び、公衆衛生行政における対応の科学的根拠の確立には大きく活用されていることから、目標に対する達成度は高く計画的に推進が行われている。また、本年度からは研究課題等に関して評価委員等による評価を行い、より社会課題に適応した研究課題設定を計画的に行うものとしている。
 個々の研究事業については下記のとおりである。
 公衆衛生の基盤確保に関する研究分野
 「地域保健関係機関のマンパワーに関係する研究」は、保健所長の職務の在り方に関する検討会の基礎資料として、今後予定している政令改正に活用され、「現状指摘された人材育成に関する概念及び具体的育成に関する研究」では、地域保健法第4条に基づく地域保健対策の推進に関する基本的指針の改正のための基礎資料として、「地域職域の連携における研究」では、具体的な連携方法等が報告されるなどから、現行制度における知見の集積がある程度、行われたと考えており、政策課題に対して計画的な研究課題の設定を行い計画性の確保を行っている。
 地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理対策を支える組織、情報等への体制や対応といった共通基盤の構築を行うため、平成14年度まで地域保健サービス分野に含まれていたものを別の分野として独立させ研究の推進体制を強化した。
 健康危機管理対策は行政が中心となり推進していくことが必要不可欠な課題であることから、本研究課題は行政課題解決のための対策の一つである。
 平成15年度からは、健康危機管理の情報に関する概念及び取扱等に関する研究を中心に開始されたところであるが、健康危機管理対策及び課題に対して系統的な研究課題の設定を行い効率的な研究実施を行っている。
 疾病の早期発見と対策に関する研究分野(新規)
 健康増進法を基盤とする国民の健康の増進、生活習慣病対策に不可欠な疾病の早期発見の推進のため、健康診査制度に関する研究、検査項目の科学的根拠の整理、疫学調査研究、健康診査の精度管理に関する研究等を進め、科学的根拠の蓄積を図り、健康増進施策の基盤整備に関する検討資料、健康増進法第9条に基づく健康診査の実施等に関する指針の改正等の施策に活用する予定である。
 生活環境に関する研究分野
 空気、水、ねずみ昆虫、浴場等、生活衛生に関する幅広い研究分野について、研究期間、分野のバランス等に配慮しつつ、計画的に事業を実施している。
 健全な水循環の形成に関する研究分野
 過去の研究の成果は、水道法に定める水道水質基準改定や水道施設や給水装置の資機材等に材質に関する基準の改定に際しての科学的な知見として活用され、本年4月から施行されたこれらの新しい基準等に反映されたこと、また、平成15年4月の厚生科学審議会答申を踏まえた、基準の逐次改正のための研究も開始していること、さらに環境負荷低減関係の研究では、省エネ法の適用範囲の拡大伴う水道における対策強化に対応するための知見としても活用されていること等から、時々の行政的課題に対して的確な研究成果をあげてきていると考えられる。
 健康づくりに関する研究分野
 健康日本21の目標達成度評価手法に関する研究、生活習慣と疾病との関係に関する研究、生活習慣を改善させるための指導方法に関する研究等、いずれも健康づくりに関する施策を推進するうえで必要不可欠な研究であり、現在までに集積された科学的知見は検討会等において活用されている。

(4)効率性
 地域保健(公衆衛生)行政の課題及び施策に対して、本研究事業の結果が積極的に活用されているところである。特に「指針」、「基準値」等の改正の基礎調査研究として活用及び、公衆衛生行政における対応の科学的根拠の確立には大きく活用されていることから、目標に対する達成度は高く計画的に推進が行われている。個々の研究事業については下記のとおりである。
 公衆衛生の基盤確保に関する研究分野
 「地域保健関係機関のマンパワーに関係する研究」は、保健所長の職務の在り方に関する検討会の基礎資料として、今後予定している政令改正に活用され、「現状指摘された人材育成に関する概念及び具体的育成に関する研究」では、地域保健法第4条に基づく地域保健対策の推進に関する基本的指針の改正のための基礎資料として、「地域職域の連携における研究」では、具体的な連携方法等が報告されるなどから、現行制度における知見の集積が効率的に、行われている。
 地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理対策を支える組織、情報等への体制や対応といった共通基盤の構築を行うため、平成14年度まで地域保健サービス分野に含まれていたものを別の分野として独立させ研究の推進体制を強化した。
 健康危機管理対策は行政が中心となり推進していくことが必要不可欠な課題であることから、本研究課題は行政課題解決のための対策の一つである。
 平成15年度からは、健康危機管理の情報に関する概念及び取扱等に関する研究を中心に系統的な研究公募課題の設定を行い研究を効率的に実施しているところである。
 疾病の早期発見と対策に関する研究分野(新規)
 これまで、健康診査に係る研究が散発的に行われてきたということから、体系的に当該研究を実施することは、研究自体への費用対効果の観点からも効率的である。
 さらに今後、健康診査の実施等に関する指針の推進をはじめとした各種行政施策に反映させる予定であり、これにより健康増進施策の推進、さらには医療費削減等の成果が期待できる。
 生活環境に関する研究分野
 本分野は行政施策に密接に関連した研究課題が多く、各研究成果の多くが行政施策に反映されていることから、事業の効率性は高いと考えられる。また、昨年度の総合科学技術会議での指摘を踏まえ、シックハウス関連研究については、研究課題数を絞りつつ、各研究班の連携を高めるなど、効率的な事業運営に取り組んでいる点は評価できる。
 健全な水循環の形成に関する研究分野
 本分野の研究成果は、水道法に定める水道水質基準改定や水道施設や給水装置の資機材等に材質に関する基準の改定に際しての科学的な知見として活用され、本年4月から施行されたこれらの新しい基準等に反映されたこと、また、この成果は、環境基準等検討の際の基礎的知見としても活用されること、さらに、研究成果の水道施設への適用等により、水道の事業活動による炭酸ガス排出抑制対策等へも貢献していることなどから、目的に対する達成度、社会・経済への貢献は高いと考えられる。
 健康づくりに関する研究分野
 健康日本21の目標達成度評価手法に関する研究、生活習慣と疾病との関係に関する研究、生活習慣を改善させるための指導方法に関する研究等、いずれも健康づくりに関する施策を推進するうえで必要不可欠な研究であり、現在までに集積された科学的知見は検討会等において活用されている。

(5)その他
 公衆衛生の基盤確保に関する研究分野
 地域の公衆衛生(地域保健)行政を取巻く社会状況は市町村合併、健康危機の頻発等激変していることに加えて、対応する制度等が不明確な事案も増大しているところであることから、今後の公衆衛生組織等に関する方向性を明確化し、公衆衛生の基盤を強化するために、地域における公衆衛生組織、人材、対策等の将来像に関する概念及び具体的な対応策に関する研究の実施が必要である。
 地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理対策は行政が中心となり推進していくことが必要不可欠な課題であることから、安心・安全の社会形成を行うために組織、人材、育成等の総合的概念的な研究にあわせて、それぞれの分野の健康危機に共通して活用できる概念、機器、組織、物流等、具体的な開発、研究の推進する必要がある。
 疾病の早期発見と対策に関する研究分野(新規)
 これまで、本分野における研究は、がん検診に関する研究を除き、地域で実施された調査結果等が散発的に発表されている程度であり、健康診査の精度管理等についてはほとんど体系的に実施されていない状況にある。
 こうした状況の下、健康診査制度に関する研究、検査項目の科学的根拠の整理、疫学調査研究、健康診査の精度管理に関する研究等の研究を体系的に推進することが重要であり、必要とされている。
 生活環境に関する研究分野
 生活衛生分野においては、建築物における健康危機管理のあり方に関する研究及び公衆浴場におけるレジオネラ等感染症予防に関する研究等は未だ研究が十分なされていないため、特に充実を図る必要がある。
 健全な水循環の形成に関する研究分野
 環境負荷の低い水利用システムの具体の構築・評価手法、また、水利用における新たな知見等に基づく化学的・生物的因子からの安全の確保、また、安全な水を得るための水道水源の評価手法等が、課題としてなっていることから、これらの課題に対応していくため調査研究を推進する必要がある。
 健康づくりに関する研究分野
 平成17年度の健康日本21の中間評価へ向けて、栄養・運動・休養等、各分野の評価方法や評価の根拠について引き続き調査研究を実施し、科学的データの集積を図るとともに、研究成果を活用して中間評価を行う必要がある。喫煙に関しては、「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」の批准を踏まえた取組を進めており、新たな施策展開と社会環境整備のための調査研究が必要とされている。


C. 総合評価

 個々の研究結果については、地域保健法第4条に基づく地域保健対策の推進に関する基本指針の改正及び水質基準等の「指針」、「基準値」等の改正の科学的根拠として活用するとともに、「健康日本21中間評価」等の施策や対応策における具体的方法に活用される予定であり、有効な活用が行われているものである。
 公衆衛生の基盤確保に関する研究分野
 地域の公衆衛生(地域保健)行政を取巻く社会状況は市町村合併、健康危機の頻発等激変していることに加えて、対応する制度等が不明確な事案も増大しているところであることから、今後の公衆衛生組織等に関する方向性を明確化し、公衆衛生の基盤の強化を行うためには、地域における公衆衛生組織、人材、対策等の将来像に関する概念及び具体的な対応策に関する研究を実施することが重要である。
 地域における健康危機管理に関する研究分野
 健康危機管理対策は行政が中心となり推進していくことが必要不可欠な課題であることから、安心・安全の社会形成のためには、組織、人材、育成等の総合的概念的な研究にあわせて、それぞれの分野の健康危機に共通して活用できる概念、機器、組織、物流等、具体的な開発、研究の推進が必要である。
 疾病の早期発見と対策に関する研究分野(新規)
今後体系的な視点から、健康診査制度に関する研究、検査項目の科学的根拠の整理、疫学調査研究、健康診査の精度管理に関する研究等の研究を推進することは、いずれも疾病の早期発見とその対策に関する施策を推進するうえで必要不可欠な研究である。
 生活環境に関する研究分野
 多くの研究が原著論文を多数発表するなど質の高い研究が実施され、またその成果が行政施策に反映されるなど、質及び効果ともに本事業は高い実績を残した。
 健全な水循環の形成に関する研究分野
 WHOのガイドライン改訂や、水質基準等の改定における科学的知見等として活用されたことなどから、本研究事業については、高く評価しうると思われる。
 健康づくりに関する研究分野
 健康増進施策を推進するうえで必要な科学的な知見を集積し、今後の施策に活用可能な多くの研究成果を得ることができたものの、たばこ対策に関する研究やライフステージ毎の健康課題等、生涯にわたる健康づくりに関する研究の更なる推進が必要である。


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