1 | 「労災保険料率の設定に関する検討会」の開催 |
2 | 労災保険制度について |
3 | 検討の視点 |
1 | 労災保険率 |
2 | 業種区分 |
3 | メリット制 |
1 | 労災保険率 |
2 | 業種区分 |
3 | メリット制 |
1 | 「労災保険料率の設定に関する検討会」の開催
労災保険率は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律及び関係政省令(以下「徴収法令」という。)の定めにより、将来にわたる労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるように過去3年間の災害率等を考慮して、業種別に設定することとされ、近年は新たな災害率等が把握される3年ごとに公労使三者から構成される審議会での審議を経た上で改定を行っている。 平成15年12月、総合規制改革会議(平成16年4月1日、「規制改革・民間開放推進本部」、「規制改革・民間開放推進会議」に組織変更。)の第三次答申(平成15年12月22日)においては、業種別リスクに応じた適正な保険料率の設定について、より専門的な見地から検討を行い、平成16年度中に結論を得べきこととされたところである。 これを受けて、社会保障、保険(保険数理を含む。)、経済等を専門分野とする学識経験者を参集して、「労災保険料率の設定に関する検討会(以下「検討会」という。)」を開催し、近年の産業構造や就業実態の変化等を踏まえ、料率設定の具体的な方法等について検討を行うこととした。 |
氏名 | 所属機関・役職名 | |
阿部 正浩 | 獨協大学助教授 | |
座長 | 岩村 正彦 | 東京大学大学院教授 |
大沢 真理 | 東京大学社会科学研究所教授 | |
岡村 国和 | 獨協大学教授 | |
小畑 史子 | 京都大学大学院助教授 | |
倉田 聡 | 北海道大学大学院教授 | |
高梨 昇三 | 関東学園大学教授 | |
(50音順) |
2 | 労災保険制度について
労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)は、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、適正な労働条件の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的としている。 |
3 | 検討の視点
労災保険率は、業種ごとに作業態様等の差異により、災害率が異なるという実態を前提として、事業主の労働災害防止のインセンティブ促進の観点から、業種ごとに設定されている。しかし、社会保険である労災保険制度においては、必ずしも厳密に業種別に収支均衡させる必要があるという考え方はとっておらず、料率算定の際には、給付の一部に相当する費用については、全業種一律の賦課によることとしている。このような中、料率改定に関する基礎資料の公開、料率決定手順のより一層の透明化等が求められると共に、業種別のリスクを正確に反映した料率設定とはなっていないという問題提起がなされている。 |
(1) | 現状 労災保険率(料率)は、51の業種区分ごとに過去3年間の労災保険の給付等に基づき算定した保険給付に要する費用の予想額を基礎とし、二次健康診断等給付に要する費用、労働福祉事業及び事務の執行に要する費用等の予想額その他の事情を考慮して定めることとされている。 料率については、業務災害における短期給付分及び長期給付分について業種別に算定を行うことを基本的な考え方としており、このうち その他、過去債務分、非業務災害分(通勤災害分及び二次健康診断等給付分)、労働福祉事業及び事務の執行に要する費用があり、これらは全業種一律の賦課としている。 労災保険率
(注)
| ||||||
(2) | 課題 労災保険率については、業種毎の収支は必ずしも均衡しておらず、業種別のリスクを正確に反映したものとはなっていないが、事業主集団の労働災害防止へのインセンティブを有効に働かせるという観点からは、業種毎に異なる災害リスクを正確に反映したものとすべきとの考え方がある一方で、社会保険として必ずしも業種別には収支が均衡する必要はないとの考え方もあり、これらの考え方を踏まえて適正な労災保険率のあり方について検討する必要がある。 労災保険率を設定するルールについては、現状においては必ずしもその全てにわたって明確に示されているとはいえない状況があり、今後はより明確なルールを示す必要がある。その際、長年にわたる産業構造の変化に伴い規模が小さくなった業種においては、過去に発生した災害等により過大な負担となるという問題があるが、これをどう考えるか、また、保険料の水準が過度に変動することを避ける観点から行われている激変緩和の措置のあり方等について検討する必要がある。 さらに、労災保険率改定のプロセスを通じての料率改定に関する基礎資料の公開、料率決定手順の透明化についてもより一層の改善方策を検討する必要がある。 |
(1) | 現状 労災保険制度は、業種別に料率を設定する制度を採用している。これは、業種ごとに作業態様等の差異により、災害率が異なるという実態を前提として、労働災害防止のインセンティブ促進の観点から、業種別に料率を設定することが適切であるとの判断に基づくものである。 労災保険の業種区分は、労働災害防止インセンティブを有効に機能させるという観点から、作業態様や災害の種類の類似性のある業種グループに着目して、当該グループごとの災害率を勘案して分類することとしている。その際には、費用負担の連帯性の下に労働災害防止活動を効果的に浸透させていくことのできる業界団体等の組織状況等についても斟酌することとしている。また、保険技術上の観点から、保険集団としての規模及び日本標準産業分類に基づく分類等について勘案することとしている。 労災保険は、適用事業場数約265万、適用労働者数約4,819万人を擁しており、その業種は、現在51業種に区分されている。これまでは、上記の考え方に基づき、災害率の比較的高い製造業、建設業などでは区分が細分化されているが、サービス業を中心とする第三次産業等については、比較的大括りの区分となっている。 |
(2) | 課題 現行の業種区分を見ると、各業種は概ね数万人から百数十万人程度の規模の保険集団として構成されているが、その中には、保険集団としての規模が相当縮小して 以上の状況 |
(1) | 現状 労災保険のメリット制は、一定の要件(継続事業については一定の規模以上、有期事業については確定保険料又は請負金額等が一定額以上のもの)を満たす事業について、個々の事業の労災保険の収支(メリット収支率)に応じて、非業務災害分を除く労災保険率又は保険料の額を、継続事業については±40%の範囲で、一括有期事業及び有期事業については±35%の範囲で増減させる制度である。 このほかに、特例メリット制として、中小企業である継続事業場が安全衛生措置(快適職場の認定事業場)を行い、その適用を希望した事業場に対して、メリット増減幅を±45%の範囲で増減させる制度がある。 メリット収支率別の適用事業場の分布を見ると、メリット適用事業場の80%以上の事業場で保険料が減額されている。 また、−40%又は+40%の最大の引下げ又は引上げの区分に事業場が集中している。 −40%の事業場が多いのは、近年の労働災害の減少傾向を反映して、無災害事業場が増加しているためと考えられる。 一方、+40%の事業場が多いのは、 | ||||
(2) | 課題 業務災害に係るメリット制 これらを検討するにあたっては、全般的に災害率が低下している中で労働災害防止のインセンティブをより高めるという観点から、メリット制がどのような役割を果たし得るか考える必要がある。また、 継続事業と有期事業の間に、メリット増減率の幅に差があることについても検証する必要がある。 また、特例メリット制については、充分活用されていない現状を踏まえ、中小企業の安全衛生水準の向上等に資する有効な政策として活用を推進する方策について検討する必要がある。 |
検討会の中で出された主な意見の概要
1 労災保険率
(1) | 労災保険率の改定 労災保険率の改定に際しては、基礎データの公開に基づき、手続の透明性が担保された適正な料率の算定及び設定が求められている。 | ||||||
(2) | 業種別の保険料負担のあり方 労災保険率は、業種別に算定されており、長期給付分については充足賦課方式を採用する等、一定の範囲において産業構造の変化に対応しているが、急激な産業構造の変化など、当該業種の責任だけではなく、外部的な要因によって負担が激増した業種も存在しており、そうした負担については、当該業種のみに負担させるのではなく、全業種にわたる調整が必要である。 また、労働災害防止のインセンティブを損なわないように、業種別の保険料負担のあり方について検討する必要がある。 | ||||||
(3) | 労災保険率の設定
|
(1) | 業種区分の考え方
| ||||||||||
(2) | 「その他の各種事業」について
|
(1) | メリット適用事業の要件を緩和するとともに、メリット増減幅を拡大することを検討すべきである。
| ||||||||
(2) |
| ||||||||
(3) |
| ||||||||
(4) | 特例メリット制について申請実績が少ないことから、その要因について検証が必要ではないか。 |
IV 今後の検討の進め方
本報告においては、今後の労災保険料率の設定に関して、中間とりまとめとして論点整理を行った。
今後、II及びIIIで示した課題と意見に加え、更なる現状分析、見直しの必要性と具体的方策等について引き続き検討を行い、最終報告としてとりまとめる予定である。