04/09/30 医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会第6回議事録     第6回医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会議事録                           日時 平成16年9月30日(木)                           17:00〜                        場所 共用第15会議室 ○樋口座長  ただいまから、第6回「医療機関等における個人情報保護のあり方に関する検討会」 を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中ご出席いただきまして誠 にありがとうございます。事務局から、委員の出欠状況等について報告をお願いいたし ます。 ○総務課長補佐  大山委員から、欠席の連絡をいただいております。そのほかの委員からは、欠席の連 絡はいただいておりませんので、多少遅れていらっしゃると思います。  事務局の異動がありましたので、併せて紹介させていただきます。医政局歯科保健課 長の日高です。医政局総務課企画官の梶尾です。 ○樋口座長  議事に入ります。本検討会では、7月の時点で、医療・介護関係事業者を対象とした 個人情報保護法が適用される場面についてのガイドラインの策定を第1の課題として、 それについて総論的にどのような方向性を出すべきかについて、各委員の見解を伺って きました。  それが第1ステージだとすると、第2ステージは、その後しばらくの時間をいただい た後で、事務局を中心にして実際のたたき台を作り、そのたたき台を元にして、たたき 台の後の素案を作る段階ということでいま第2ステージに入っています。そして、もっ と広い方々のご意見を伺うというパブリックコメントへ進みたいという段階です。ここ のところで、きちんとしたものを出しておかないと仕方がないというので、ある程度の 、あるいは相当程度の時間をいただいているところです。  私が聞いたところでは、今週は金融と信用の分野でも、ガイドラインの素案が出てき たところで、パブリックコメントに移る段階に入っているようです。別に競争でやって いるわけではないのですが、我々としても一生懸命やろうということだと思います。  ガイドライン案について、これまで各委員からいろいろと意見を寄せていただいて、 それをできる限り取り入れた形でガイドライン案のいちばん新しい案を作成していただ いているわけです。この後、資料の説明をしていただきますが、これに基づいて再度全 体を見直してみる、という作業に入ります。配付資料について、事務局からご確認いた だくとともに、資料の説明をお願いいたします。 ○総務課長補佐  本日は、資料1「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガ イドライン(案)」です。これは、前回までご議論いただきましたガイドライン素案を 、各委員からの指摘を踏まえて修正したものです。資料2「医療・介護関係事業者にお ける個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン(案)(見え消し版)」となってお りますが、前回の会議資料であった素案に、見え消しの形で修正したものです。したが って資料1と資料2は、内容は全く同じですので、本日の説明や、これからの議論をお 願いする際にも資料2を使って進めさせていただきます。  資料2の表紙をめくりますと左側が「目次」です。皆様からいただきました意見や指 摘の中に、素案の構成、全体的な枠組みなどについての意見はいただいておりませんの で、素案の形を踏襲しております。  目次のII「用語の定義」というところに「等」という文字を追加しております。ここ の部分は、定義以外の解説的な部分がありますので「等」を追加いたしました。また、 内容の充実に併せて項目が若干増えております。全体を説明いたしますと、大変分量が 多くなりますので、I「本指針の趣旨、目的、基本的考え方」までを説明させていただき ます。  指摘をいただき、前回から修正のあった部分が見え消しになっておりますので、その 部分を中心に説明させていただきます。また、字句の修正、用語の統一などの修正の部 分については説明を省かせていただきます。  1頁の上から4行目、本指針の趣旨の中で、「第6条第3項及び」を追加しています 。これについては、次の頁以降にある「5,000件以下の小規模事業者について」の記載を 追加したものに合わせた修正です。  2頁の上から7行目、「しかし、医療・介護関係事業者は」という部分の段落を追加 しております。前回の議論で、法の義務の対象となっていない小規模事業者についても 、この指針を遵守していただくように、努力義務として求める方向にする、という合意 ができておりますので、この段落のいちばん最後に「本指針においては個人情報取扱事 業者としての法令上の義務を負わない医療・介護関係事業者にも本指針を遵守する努力 を求めるものである」という記載を追加しております。  4の、本指針の対象となる個人情報の範囲の4行目などに、「カルテ等の形態に整理 されていない場合でも個人情報に該当する」として、個人情報の範囲について記載を追 加しております。  これは後ほど説明させていただきますが、基本的に死者の情報については法の趣旨を 踏まえてこの指針の対象としないということになっておりますが、なお書きの部分につ いては、生存していた患者が亡くなった後についても、それぞれの事業者が保存し続け ている個人情報については従前のとおり安全管理措置を講ずる必要がある、ということ を追加しました。  5の「大臣の権限行使との関係」の4行目の後ろのほうで「また、法の適用除外とさ れている小規模事業者については、努力義務として本指針の遵守が求められる」という 記載を追加しました。先ほどの、「5,000件以下の事業者についてもこの指針の遵守を求 める」という部分に合わせたものです。  3頁の7「責任体制の明確化と患者・利用者窓口の設置等」については、7月からの 会議で度々指摘をいただいておりますが、専門性と指導性を有する事業者全体を統括す るような責任体制を構築する必要があるということ。患者・利用者等が疑問に感じた内 容を、いつでも気軽に問い合わせできるような窓口機能を確保することが必要であると いう指摘がありましたので、そのような体制と、窓口機能の設置の必要性がある。その ような相談を受ける窓口が、それ以外のサービス提供の窓口との有機的な連携が必要で あることを指摘しております。  8は、「遺族への診療情報の提供の取扱い」です。この内容としては、そもそも個人 情報保護法として、死者の情報は原則として個人情報とならない、法の対象とならない ということから、本指針の対象とはならないということをまず明示しております。しか しながらということで、患者・利用者が死亡した際に遺族からのさまざまな記録などに ついての照会が行われた場合について、患者・利用者本人の生前の意志や名誉等を十分 に尊重し、特段の配慮が求められるという観点から、既に定められております診療情報 の提供等に関する指針に示された取扱いを踏まえた記録の提供を行うことを示しており ます。  4頁の10は、「遺伝情報を用いた検査・治療を行う場合」です。前回、研究分野の検 討のほうから申し出がありました。遺伝情報については、その特殊性から漏えいした場 合に本人などが被る苦痛は大変大きなものになるという観点から、特段の扱いが必要で ある、ということを記述しております。いちばん最後のほうで、このため遺伝情報を用 いた検査や治療を行う場合には、遺伝カウンセリングの実施や、適切な情報提供などが 必要であるという指摘をしております。  5頁の「他の法令等との関係」の中で、先ほども申し上げました「診療情報の提供等 に関する指針が定められていることから、この内容に従うものとする」ということで、 改めて確認をしております。  最後に12の「認定個人情報保護団体における取組」です。「医療・介護関係の団体等 は、積極的な取組みを行うことが期待される」という記述を追加しております。まず、 ここまでは以上です。 ○樋口座長  見え消し版を使って、いまのたたき台案のおさらいを1つずつやっていこうというこ とです。その中でI「本指針の趣旨、目的、基本的考え方」という総論的な部分について はいかがでしょうか。これまで検討会で出された意見を、できる限り入れるような形で 相当な加筆がされております。 ○武田委員  2頁の小規模事業者の5,000件ですが、5,000以下の小規模事業者を除外しておかない と具合が悪いのでしょうか。 ○樋口座長  ここの趣旨は、法律上政令で5,000件という数字を挙げてしまっていますので、法律上 の義務としては5,000件ということを確認しておいて、ただしというので、「しかし」以 下が我々にとっては重要なので、医療のところはそれでは済まない、あるいは介護のと ころもそれでは済まないのだけれども、法律的な意味では努力義務といいますか、ガイ ドラインで定めてこういう方向へ持っていこうという趣旨であります。趣旨にすぎない というのではなくて、趣旨であるから頑張ろうということなのです。 ○武田委員  前にも申し上げましたけれども、5,000件以下の診療所からの照会のような場合に漏え いしたときに、7番の責任体制の明確化からいくと、責任は病院のほうに来るのではな いでしょうか。まだ、罰則規定も何もわかりませんので、どのぐらい責任を負わなくて はいけないのかがわからないということで、病院としては非常に心配しています。努力 義務ということですが、努力にどのぐらいの責任が持てるのかということです。 ○樋口座長  個人情報保護法上の罰則規定が適用される場合というのは、極めて悪質な場合という か、それを繰り返す場合ということです。だから、罰則規定自体が非常に遠いものでは あります。それが5,000件未満の小規模事業者には適用がない、ということだけは確実で す。努力義務というのはそういう意味ですから適用はできない。しかし何もないのかと いうと、それは別個のことを考えるということですが、少なくとも個人情報保護法上の ものではあり得ません。  12番のところに、「認定個人情報保護団体における取組」とわざわざ書き加えてくれ たのはそういうこともあるので、それぞれの団体でそのような事業者がいれば注意して いただく。注意で聞くのかどうかということはありますが、そういう形である専門家団 体のグループ全体の意識を高めていく努力が必要になる、ということかと理解しており ます。 ○武田委員  診療所からの照会の問題もありますが、これは診療情報その他の守秘義務があります ので、問題はそう広くはならないと思います。医療関連サービスである、例えば検査所 などに5,000件以下の所もあると思うのです。そこで漏れてしまった場合に、指導・監督 という項目がありますので、それはかぶってくるという心配があります。その辺のこと はどのように取り扱っていただけるのでしょうか。 ○総務課長補佐  ご質問の趣旨に十分お答えできるかどうかわかりませんけれども、第1回検討会の資 料の74頁に、個人情報保護法の条文があります。下のほうに罰則というのがあり第56条 以下に、個人情報保護法に違反した場合の罰則・罰金などが書かれています。  ここの部分に書かれているとおり、そもそも法律の義務を負う、もしくは罰則を受け る対象は個人情報を持っている数が5,000件以上の事業者に限定されてます。このガイド ラインの中では、法律上の罰則規定がないような小さな所にも、大きな所と同じような 努力をしていただく、ということを書いているものです。法律上適用除外になっている ので、5,000件以下の所に、ガイドラインによって罰則を課すことはできないわけですが 、同じように守ってほしい、ということを書いているという趣旨です。  病院が診療所からの情報を渡した場合ということですが、これは基本的に病院が病院 としてきちんと守るべき責務を守って、情報を適切なルールに則って提供した場合で、 提供した先が何か違反をして漏えいした場合には、提供元である病院が罰則を受けるも のではない。病院としてきちんとしたルールを守っていれば、まずはそこで大丈夫で、 むしろすべての医療機関がきちんと自分のところでルールを守るよう頑張っていただく ということが、大切かと思っております。 ○武田委員  ありがとうございます。範囲をはっきりさせていただいたので安心いたしました。 ○樋口座長  言わずもがなのことなのかもしれませんが、罰則のほうの関係でいうと、小規模事業 者に、直ちに個人情報保護法上の罰則規定は適用にならないというのは明白なことです 。 ○武田委員  そこを与えてくれ、と言っているのではありません。 ○樋口座長  わかります。ただ、こういうガイドラインが出来上がって、努力義務ではありますが 、それを全く無視するような行動を繰り返すようなことがあった場合には、小規模事業 者であっても、厚生労働省自体は、診療所であれ何であれ監督権限を持っているはずで す。それは誤解を与えるといけないので、何でも罰則を適用する、規制するような話を 厚生労働省がどんどんしていくのも本当は問題です。努力義務なのですから、努力する のを、後ろからサポートするような話であってしかるべきなのです。  本当に稀に悪質な何とかがいた場合に監督権限はあるのだ、というふうに理解はして おります。私はそう思っておりますので、何もないのかというと、それはあり得ないよ うなことかと思っております。  2つ目のご懸念は、主として委託の情報が例えば検査機関であれ何であれ、委託先の 監督の義務が元の病院にはあって、それをきちんとしている限りにおいては、もちろん 病院の責任が問われることはないということかと思っております。しかし、そういうこ とが起こらないように一層きちんと監督してください、ということにはなると思います 。 ○高津委員  3頁の7番の下から4行目の後半のところで「相談や苦情処理等の受付を行う窓口の 設置する」という記載があります。これも、歯科等を含めて小さい所では事業者が少な いわけです。こういうときには、歯科医師会の組織として、例えば県レベルで医療に関 する苦情相談窓口がありますから、そういう所で代行するという形でよろしいでしょう か。個人の小さい所では、誰が窓口の相談員という対応はなかなかできないかと思いま す。 ○樋口座長  その点は、どう考えたらいいのでしょうか。 ○総務課長補佐  法令の体系からいくと、まず、窓口という独立したものをつくる必要まではないもの の、それぞれの事業者自身が患者から相談を受ける、苦情があった場合には適切に対応 する、ということが最初の段階です。それに対して、さらに患者が望む場合には関係の 団体や、都道府県などの行政窓口というステップになります。  ここで「窓口」と書いておりますと、独立したものが必要というイメージになってし まうので、書きぶりの修正をしようかと思いますが、法令の趣旨を踏まえれば、各事業 者においてまずは対応していただくという趣旨にしておくべきと考えております。 ○高津委員  わかりました。 ○辻本委員  いまと同じ項目のところで、これは字句の問題で「苦情処理等の」とあります。私た ち患者の立場から、相談や苦情を申し出たときに、それを処理されるという扱いは非常 に心外です。「それに対応する」とか、「受け付ける」ということで、少なくとも「処 理等の」という文言はカットしていただきたいということをお願いいたします。 ○樋口座長  私も、語感として「処理」というのはどうなのかと思います。これは、個人情報保護 法自体に使われている言葉です。しかし、我々はガイドラインなのでもう少しやわらか な表現で、ということはあり得るかもしれません。 ○総務課長補佐  わかりました。 ○樋口座長  これは、個人情報保護法に基づくガイドラインだからということで、そこまでの意識 が行ってなくて、そのまま使っているということなのかと思います。 ○総務課長補佐  座長にご指摘いただきましたとおり、法律の第31条では、「個人情報の取扱いに関す る苦情の適切かつ迅速な処理に努めなければならない」という言い方で、法律上「処理 」という言葉がありますので、こちらのほうも「処理」という形になっております。法 律の書きぶりの関係に配慮しつつ、別の表現を考えてみたいと思います。次回までに検 討させていただきます。 ○高津委員  5頁のところで、前回は診療情報の提供等に関する指針の比較の一覧表が出ていまし た。これは非常に初歩的な最初の問題なのですが、刑法で定められている守秘義務との 関係で、網のかかり方というのは、そちらが優先だよ、こちらが後だというのは何か関 係がありますか。医療関係は、最初から守秘義務で来ています。インフォームド・コン セント等が言われない以前の問題でもそうでしたね。 ○樋口座長  ご趣旨がよくわからないのですが、4頁のいちばん下に刑法の話が出ています。だか ら、一応言及はあって、優先関係というのが十分うまく理解できなかったのです。刑法 の守秘義務が適用される限りは、当然刑法も適用されるというだけかと思っております 。 ○高津委員  そちらが優先というか。 ○樋口座長  刑法が適用される場面が、ある限られた場面で、医師についてははっきり書いてあり ますからあり得るということだけを言っているので、それ以上の意味はないと思います 。 ○総務課長補佐  個人情報保護法の場合には事業者という形で、事業者の責務もしくは罰則は事業者に 対してかかることになります。また、刑法や各資格法の場合には医師・歯科医師等の場 合には各個人に対して罰則がかかることになりますので、それぞれの場面に応じて、そ の状況に応じた処分が行われると考えております。 ○樋口座長  そういう説明があるかもしれないですね。個人で開業している医師だと、事業者とし ての医師と、個人としての医師が当然あって、刑法ではこちらだけれども、結局は同じ ことなのですが、そういう整理になるかもしれません。 ○松原委員  4頁のいちばん上のところで、診療情報の提供等に関する指針のあり方について、前 回大道委員からもご意見をいただきました。遺族に対して死者の情報をどうするかとい うことですが、これについては上から5行目に「診療情報の提供等に関する指針の策定 についての9において定められている取扱いを参考にし」と書いてあります。この前の お話では、これに従っていただきたいと思いますので、参考にするだけでは困ります。 従って、開示その他を行うということをご確認いただけたらと思います。 ○総務課長補佐  この部分については、まさに医療に関しては「従って」という趣旨であると考えてい ます。一方、こちらの指針では介護については含まれていないという点の整合がありま すので、いまは「参考に」という文言を使っておりますが、いまご指摘がありました「 従って」という趣旨にしたいと思います。 ○樋口座長  後でIの部分に戻ってこられますので、IIの「用語の定義等」の部分へ進みたいと思い ます。事務局から説明をお願いいたします。 ○総務課長補佐  6頁から8頁までの「用語の定義等」の説明をさせていただきます。1の「個人情報 」の部分の中ほどの(例)のところです。前回、特に介護分野などではどのような書類 の作成もしくは保存がなされているのかが明確でない。もしくは各事業者では戸惑って しまうのではないかという指摘がありましたので、別表1を作成いたしました。ここに 、作成・保存が義務づけられている記録の例を例示いたしました。したがって、前回あ りました「別表1以降」については、「2以降」に1つずつ変わっております。この別 表1については後ろに付いておりますので、後ほどご覧ください。  7頁の1行目で1文字訂正があります。「I7.に示す取扱いによるものとする」とい うのがありますが、これは「I9.」です。  7頁の3「個人情報データベース等」のいちばん最後の段落で、「また、検査等の目 的で」という部分で、「個人情報」という言葉と、「個人データ」というものは、法令 上それぞれ定義がされておりますので、その内容についてわかりやすく説明いたしまし た。  4番の「本人の同意」の部分、その下の5番「家族等への病状説明」の部分です。5 番を先に説明させていただきます。医療では、本人だけではなくて、家族等へ病状の説 明をしたり、また治療などに当たっての同意を得るような必要があるという場面も想定 されます。そういう場合に、家族等本人以外の人にどのように病状説明を行うか、とい うことについてここにまとめました。  8頁の上から3行目「本人に対し、あらかじめ病状説明を行う家族等の対象者を確認 する。そして同意を取ることが望ましい」ということです。それから、本人から申し出 がある場合には、例えば治療の実施に支障がない範囲において、その説明をする相手と して、現実に患者の世話をしているような親族やそれに準ずる者を加える。それから、 家族の特定の者についてだけ説明をする、という取扱いをしてはどうか。その下の段落 では、意識不明の患者について、もしくは重度の痴呆性の高齢者の場合などどうするか 、ということについて記載しております。  この中で、その段階で意識が不明であった患者の意識が、その後回復した場合につい ては速やかにその情報の提供や収集した個人情報の内容などについて本人に説明をして 、本人の同意を得ることが必要ではないか。その際に、本人から申し出があれば、その 後は先ほど申し上げたような取扱いを行うということにしてはいかがかということです 。  最後の段落については、明らかに意識不明ということではありませんが、判断能力に 疑義があるような場合、必ずしも明らかに同意しているかどうかが確認できないような 場合については、まずは意識不明の患者と同様の対応をとるということでいかがである か。その後、意識の回復に合わせて速やかに本人への説明などを行う、ということを書 いております。  また、同様の趣旨が7頁の「4.本人の同意」のところの2つ目の段落、「また患者 ・利用者が意識不明でないものの」ということにも記載しています。IIについては以上 です。 ○樋口座長  「用語の定義等」というのは、単なる定義ではなくて、先ほど説明がありましたよう に、やや解説的なところも含まれているのでということで、少し詳しく、また丁寧な表 現にしているものですからこういう形にしたということです。  しかし、いくつかのキーワードがあって「個人情報」「個人情報の匿名化」「データ ベース等」「本人同意」というのがあり、「家族等への病状説明」というのは用語の定 義ではないと思いますが、どうしても医療の場面では「本人同意」という原則だけでや れるかというと、やれない場面が日常茶飯事的に起こってくるので、「本人同意」の中 身もそうですけれども「家族等への病状説明等」というのを付け加えて、医療の現場に 即したような形のガイドラインにしたという趣旨だと思います。  「用語の定義等」の場面で、ほかにどういう問題があるか、あるいは、ここではもう 少し表現ぶりなどでどうだろうかということがありますでしょうか。 ○大道委員  この場面で問題を提起することが適当かどうか少し判断に迷うのですが、「個人情報 の匿名化」について少しご議論いただけるならばお願いしたいと思います。ここに掲げ られている趣旨は、匿名化をするというのは、個人が特定できない形にして、一般的に は本人がそれを見るということではなくて、その個人の情報を、他の目的に使うことが 想定されていると思うのです。基本的には同意を取ることが可能であればそれなりに問 題の整理はつくのですが、医療にかかわる情報の中で、本人が同意する場合もあるし、 しない場合もあるような、しかしなおかつ、個人の情報ではあるけれども、他で大いに 役に立つ情報、又は他の目的のために使う必要があるような情報がいくつか存在すると 思います。  例示が適当かどうかわかりませんが、今日的な課題として医療安全、もっと言うと医 療事故に関連した情報をどう扱うか、ということがかなりクリティカルな問題としてあ ります。端的に申せば、もちろん医療事故は起こしてはならないわけですから、医療事 故を起こさないために、その事故事例を他の医療機関が学ぶ、又は広くそのような事故 の状況を情報として提供して再発を防止するという趣旨で、医療機関の外に医療事故に 関連した情報が出ていくことが一方で求められ、かつ事故の当事者、又は前ので申せば 、事故で不利益を被った患者の立場から、この情報をどう使われるかということについ ては、さまざまな問題が指摘されています。  これに関連して、法の定めで医療事故についてこれを報告する。これは行政にも報告 するというのは、所管監督当局に報告するということはこれまでもあったことです。別 の法体系で、警察等に届出をするということも一方ではあります。いまここで議論した い、あるいはする必要があるのではないかと申し上げているのは、専ら行政上の適切な 、まさに法的手続に基づいた対応をとるための報告ということとは別に、いま申し上げ ている医療事故を起こさないために、他の医療機関がそれを事例として学ぶとか、ある いは広く医療事故を起こさないための、一般的な知識体系だとか、ある種の有益な前例 とする、ないしはさまざまな形での医療安全に寄与するという趣旨で、この報告をする なり提供するということがあります。  個別の事例を出していいかどうかわかりませんが、現在特定機能病院と国立病院機構 の病院等から、法に基づいて医療事故の提供を求めています。しかし、これがなかなか 難しい状況の中で、行政の窓口等に直接報告するというのだと、それはそれなりに法の 対応なのですが、第三者機関にこれを提供するという状況が出てきました。一般的には 匿名化されて出されることが想定されておりますが、ここで議論したいのは、匿名化と いうことの実際の姿です。氏名を隠すだけということだと年齢が残る、性別が残る、場 合によっては当該医療機関が情報として残って、これは個人情報であるのかないのかと いえば、それは残ることがあり得るわけです。  このような状況の中で、個人情報が大変厄介な問題になって、患者の中には、事故が 起こって、経済的にも精神的にも心理的にも非常に強い障害が起こった中で、これを他 の目的のために使うことは決して許さないという立場の方から、二度と起こさないため に、是非活用してほしいという言葉は使いませんけれども、有効に対応してほしいとい う趣旨までかなり幅があります。  こういう問題は、非常に限られた特異な状況なのかと思われる一方で、実は医療にお ける個人情報の目的外利用というか、利用目的の中では大変重要なものを持っておりま す。このガイドラインにどうかかわるか、ここの検討会での意見に従うしかないとは思 っております。技術的な問題として、匿名化をどこまでやるかという話は付いて回る話 です。それ以前に、情報の匿名化の趣旨とその運用の形を本日の段階でよろしいのか、 あるいはパブリックコメントのような形で答えをいただいてもいいのかと思いつつ、用 語の問題としてここに出てまいりましたので、かねてから問題意識を感じておりました ので発言させていただきました。 ○寺野委員  私がその前に質問しようとしていたことと関連するのですけれども、結局こういうも のと、法第50条というものとの関連がどの程度のものなのかがよくわからないのです。 法第50条というのは1・2・3・4・5項があって、「これについて前章の規定は適用 しない」ということで、「その中の大学等々の学術研究等々、あるいは手術に関するも のは一切適用しない」と言っているわけです。その辺の範囲がこういうものとの関係で どうなのか。私もいろいろな発表などで、この内容そのものが問題だということを前に 発表したことがあります。  これがあるから、それは全部外されているのだなと思ったのです。学術発表だとか、 いま大道委員が言われたような内容に関しては、第50条ということで全部外した考え方 でいいのかどうかをお聞きします。 ○樋口座長  これは、例によって宇賀委員にお願いすることになると思いますが、一言だけ発言さ せていただきますと、大道委員がおっしゃった特定の例だけでいうと、いわゆる第三者 機関に情報を集めて、医療安全のための、つまり同じようなことを繰り返さないために その事例を分析し、その再発を防ぐためにどうしたらいいか、ということの方策を各種 ほかの病院等にも通知するような機能が、寺野委員がおっしゃった、第50条第1項第3 号でいうところの機関のところで「大学その他の学術研究を目的とする機関」という話 に、第三者機関が当たるかどうかという話が1つあります。そういう活動が学術研究と いう話になるかどうかという2つのバリアがあって、それは難しいのかなという気がす るのですが、宇賀委員いかがでしょうか。 ○宇賀委員  第50条のところで「大学その他の学術研究を目的とする機関もしくは団体、それらに 属するもの」となっています。ここで念頭に置かれているのは、例えば私立の大学、民 間の研究所、学会、それ以外でも学術研究を主たる目的とする機関や団体等です。そう いう研究が個人で行われる場合もありますから、そういう所に所属している者も含みま す。まず、そのように主体の面で縛りがかかっているわけです。目的の面でも、学術研 究の用に供する目的、というところでまた縛りがかかっていて、この2つの要件を満た す場合ということになります。  それから、国立の研究機関や独立行政法人等の研究機関、国立大学法人、地方独立行 政法人化した大学や研究機関は、そもそも個人情報保護法の適用を受けるのではなくて 、別の行政機関個人情報保護法や、独立行政法人等個人情報保護法の適用を受けますか ら、それは、ここではそもそも念頭に置いていないわけです。 ○樋口座長  寺野委員のご意見も、方向性としては先ほど大道委員が挙げられたような事例で、医 療情報の利用ができないのはおかしいというのですか。やはり、できるようにすべきで ある、ということだと理解していますが、その方策をどういう形で明確化するかという ことだと思います。ここでは、問題が個人情報の匿名化という話になっていますから、 匿名化された情報であれば、個人情報保護法の対象外になります。そういう形で利用し ていくというのが1つの方法であります。  そのときに問題になるのは、匿名化というのはどの程度の話でしょうか、というのが 大道委員のコメントです。たぶん2つ方法があって、1つはいちばん全うな方法なのだ と思うのですが、このガイドラインが何を目的としているかというと、個人情報保護法 でいうところの個人情報の利用と保護のバランスを取るという話を、医療面に即してい うと、医療情報の場合は一層保護も大事だけれども、利用も大事ということです。患者 であれ、国民一般であれみんなということですが、医療情報はこういう形で社会的に利 用されているのだと。その反面自分の個人情報が予想していないような、自分が是認で きないような形で利用されるようなことはないような保護が、何らかの形でシステムが できているのだという安心感とともに、単に自分の治療だけの目的以外の所で、いろい ろな形で利用されているのだと。自分の情報だけではない、ほかの人のものも含めて利 用し、いまの事例では医療安全ですけれども、安全のための利用が行われているのだと いうことを理解していただくことが大事で、理解していただいた上で、同意していただ いて、使わせていただくというのがいちばん基本的な道かもしれないです。大道委員が おっしゃるように、患者の中にもいろいろな方、あるいは遭遇した医療事故によっては いろいろな思いがあって、とてもそのように平明な、あるいは平静な感じではいられな いという場合もあるということで、この道がとれない場合もあります。  もう1つの道が匿名化であり、さらに3つ目は個人データの第三者提供の法第23条の 例外に当たるものかどうかを検討するというのもあって、3つぐらいの道があるのかも しれません。ほかにもあるかもしれませんが、そのようなことかと思っております。 ○大道委員  いま座長から、考え方の筋道を3つお示しいただきました。私もこの問題を、この検 討会の流れの中でどう整理するかということで、3つかあるいはいくつか細かい方向が あるのかもしれません。そういうことで整理をしていただいて、一定程度それが受け止 められるような書き込みがどういう形になるのかをお示しいただきたいのです。それか ら、再度しっかり読ませていただきたい、場合によっては提案もしたいと思っています 。  これ以上この話の裾野を広げるというか、ややこしくするつもりはないのですが、こ の背景には個人情報の問題もあるのですけれども、診療録等医療の記録というのは、個 人の情報とともに、医療を提供した側の業務記録の側面があります。医療安全の問題と いうのは、そこに医療の過誤があったのではないか、あるいは医療機関に責任を問うよ うな側面を非常に色濃く持ち合わせるような個人情報なのです。  したがって、患者が単に自分の問題を、医療事故という特異な状況に置かれたから情 報を出したくないとか、むしろ出してほしいということに加えて、医療機関との間の責 任の所在をどうするか、場合によってはそこに民事、刑事の事件性がある問題もあるこ とがあります。そこのところもあって、出すとか出さないということです。  一方、医療機関側も、情報を外に提供することによって、医療事故というのは医療機 関も辛い思いをするわけですから、是非起こしてくれるなという意味合いで出したいと いう向きもありますし、逆にこれを出すことによって責任を追及されるぐらいだったら とても出せない、場合によっては隠すというか、隠蔽的な方向が正直なところあったわ けです。  こういう状況の中で、個人情報保護が法制化されて、運用の現実的なガイドラインも 求められていて、あまりにも今日的なものですからどこまで申し上げていいかわからな いのですが、背景にはそういうことがあることは、それぞれの立場でご理解いただけて いると思います。  このガイドラインで、匿名化とのかかわりが、話の取っかかりとしてはどうもこの辺 りで書けるのかなということをかねてから思っていましたので問題提起をさせていただ きました。いずれにしても、先ほどの2つないし3つの個人情報保護の流れの中での整 理をしていただいて、お示しいただけると、医療の現場はまさにガイドラインとして手 がかりになることがあると思いますのでよろしくお願いいたします。 ○高橋委員  いまおっしゃったことは、介護の世界でも全く同様だと認識しています。医療の場合 は、非常にクリティカルな形で社会的な課題になっているので、より鮮明な形で問題が あります。介護事故の場合は、隠蔽なり隠すなりという問題があります。あるいは、介 護サービスの水準の向上の場合は、研究機関というより、実務的なレベルで情報を共有 しながら検討する機会が非常にありますので、その辺のルールについては非常にルーズ なところがあります。匿名化の問題まで含め、これが結果的に情報提供を共有したサー ビスの質を上げるための貢献につながらないような形に逆機能しては困るので、いまの 議論は介護サービスについても、介護事故を念頭に置いて整理していただくということ 。利・活用をどういう形で可能にするか、という視点でいろいろご検討いただけるとあ りがたいと思います。 ○樋口座長  高橋委員と大道委員から提起された、後のほうの問題というのは、おそらく第25条の データの開示のところに直接関係するような話かと思いますので、またそこでもという ことになると思います。 ○松原委員  話が変わってしまうのですが、個人を識別する情報というのは、個人にとってはどん な情報でも、自分であることはすぐわかると思うのです。どの程度の社会的通念上の範 囲を言っているのでしょうか。例えば、一般の人がわからないということであればいい のでしょうか。本人にしてみたら、自分の情報はすべて自分だということがわかるわけ ですが、一般社会の人たちが社会通念上これを見て個人が特定できないような形であれ ばよろしいのでしょうか。そのように理解しているのですが、その理解でよろしいでし ょうか。 ○樋口座長  大道委員のいちばん初めのところへ戻って、匿名化ということの定義、あるいは個人 情報保護法における匿名化ということの意味ということなのですが、宇賀委員からコメ ントをお願いいたします。 ○宇賀委員  個人情報というのは、個人識別性があるということが前提になっています。個人識別 性を考えるときにどうするかという問題は、いまは個人情報保護のところで議論してい ますが、情報公開の世界でも、個人に関する情報は、個人識別性のある情報であること が前提になっていますので、そこでも議論の蓄積があります。  これまでの判例や内閣府の情報公開審査会の答申などは、いわゆる一般人基準を採っ ています。一般人に識別できるかどうかという基準を採っています。ただ、本当にそれ で十分かというと、一般の人だと識別できなくても、ある特定の範囲の人々は一般人が 持っていない特別の情報を持っていて、その情報と組み合わせると、あの人のことだと いうことが識別されてしまうケースが十分あり得ます。そこをどう考えるかという問題 があります。  実は、ここの部分も個人情報保護法と、行政機関情報保護法、独立行政法人等個人情 報保護法では規定の仕方が違っています。個人情報保護法は第2条第1項で「特定の個 人を識別することができるもの」というところに、「他の情報と容易に照合することが でき」ということで、「容易に」というのが入ってきます。  ところが、行政機関個人情報保護法と独立行政法人等個人情報保護法は「他の情報と 照合することができ」ということで、「容易に」という言葉は入っていません。そこは 意識的に違えています。「容易に」というのが取れると、識別される範囲が広がってき ます。ということは、個人情報の範囲が広がってくるということです。行政機関個人情 報保護法と独立行政法人等個人情報保護法のほうが、個人情報の範囲が広がっていると いうことです。  なぜそのようにしてあるかというと、行政機関や独立行政法人等のほうが、より広範 な義務等を負うべきだからです。それに対して個人情報保護法の第4章以下は、民間を 念頭に置いていますから、そこでは営業の自由等の兼ね合い等もあって、あまり厳格に 個人識別性を要求しないために「容易に」という言葉を入れているわけです。  まず、識別するときにどの範囲の人かという一般人基準と、もう少し広げて特定の範 囲も含めるかというところで議論がありますが、これまでの判例や内閣府情報公開審査 会答申などに照らすと、いわゆる一般人基準が採られています。  それから、「容易に」というのが入っていますので、徹底的にいろいろな所を調べ回 ると識別できることがありますが、そこまでは個人情報保護法では要求していません。 そのために、「容易に識別できる」というふうになっているわけです。  本当にそれだけでいいかというと、情報公開の世界では、いま内閣府の情報公開審査 会答申などでは一般人基準を採っていますけれども、個人が識別できなくても、個人の 権利利益を害するときには不開示という規定が、行政機関情報公開法第5条第1号の中 に入っています。それで、一般人基準を採って個人識別性は狭く解しながら、しかし特 定人に識別できる部分というのはそこのところを適用して、個人は識別できないけれど も、個人の権利利益を害するということで不開示にしています。そういうことで個人情 報を守っています。  全体としてみると、必ずしも一般人だけではなくて、もう少し広い範囲で特定の情報 を持っている人も含めて保護しているということになります。その辺りを非常に広げて しまいますと、識別できる範囲というのはあまりにも広がりすぎるので、それはちょっ と行きすぎだと思います。本当に一般人だけでいいかというと、それだけでは済まない 問題があると思います。ですから、個人情報を保護するという観点から、もう少し広め に考えていく必要があるのだろうと思います。その場合にどの程度の調査をするかとい う点については、個人情報保護法は「容易に」ということで、いろいろ徹底した調査を やって初めて識別できるようなものまではいいですよということになっているわけです 。 ○松原委員  法律の趣旨に従えば、一般人が容易に識別できるということで、それについてはいろ いろ問題はあるけれども、そこのところは法律の規定と考えてよろしいのですか。 ○宇賀委員  「容易に」という部分は法律に明記されています。 ○松原委員  医療の場合には、非常に細かいバラエティの問題がありますので、ここのところはお 示ししないと、実際に医療現場は混乱してしまいます。やはり、法律で定められたもの は何か、ということは示しておかなければならないと思うのです。厳格に言えば、兄弟 だったら、すぐにその人だということがわかりますし、親族だったらすぐわかります。 また、近所の人だったらわかることもあります。同じ町の人だったらわかることもあり ます。ここのところの識別の範囲というのは、宇賀委員がおっしゃるように、とことん 突き詰めてやってという話ではないということであれば、一般人が極めて簡単に、容易 に判断できるということで理解してよろしいのでしょうか。 ○宇賀委員  徹底した調査をして、初めて識別できるという部分までは入らないということは明確 です。そのために、わざわざこちらのほうは「容易に」として、行政機関と独立行政法 人等の個人情報保護法のほうは、「容易に」というのは取っているわけですから、いろ いろ徹底的に調査し回って初めて識別できる、というようなものは含まれないというの は、法の趣旨として明確と言っていいと思います。  ただ、一般人基準を採るかどうかということは、そもそも法の趣旨としても明確では なくて、解釈の余地があるところです。医療の世界というのは非常にセンシティブな情 報を取り扱いますから、一般人基準というのは少し緩すぎるのではないかと思っていま す。 ○松原委員  具体的に各医療機関に説明するときに非常に困るのです。 ○大道委員  いまのことは当初から問題意識としてあります。原案が、「個人情報の匿名化」と第 1パラグラフの次に「このような処理を行っても、事業者内で医療・介護関係個人情報 を利用する場合は、事業者内で得られる他の情報と照合することで云々」とあります。 これは、一般人がそれと識別できるということと、まさに個人情報取扱事業者、医療機 関の場合は医療機関自身が識別できる場合は、みたいなところまで踏み込んでおられま す。  正直言って、これのドラフト版を先般医療記録の関連の何人かの役職者に見せました 。「この辺りはどうするんですかね」と、医療機関から見ればわかる。当事者か、ある いはそうでない医療機関ならばわかるか、いろいろなニュアンスに取られて、原案の表 現がこのままだと、松原委員がおっしゃるようなことが起こり得ます。医療というのは 非常に厄介な世界ですので、なにぶんこの辺のご配慮もいただきたいと思います。 ○松原委員  宇賀委員がおっしゃるように、個人の権利を侵害することには十分配慮しなければな らないのは当然のことで、医療機関というのはそこのところは配慮しながらやっている わけです。やはり原文どおりに、一般人がすぐにわかるというようなものであると理解 しつつ、宇賀委員がおっしゃるような、患者の利益を損ねないような範囲で考えるとい うことだと理解して読んでいるわけです。 ○宇賀委員  「容易に」の部分は、徹底した調査まで必要ありませんよということです。そこはそ れでいいのです。ただ、一般人基準か、もう少し広い範囲で特定人基準かということは 、それとは別の問題です。先ほど私が内閣府情報公開審査会は一般人基準を採っていま すと言いましたけれども、実は情報公開法にある、個人が識別できないけれども、特定 の個人の権利利益を害するという部分で、特定人に識別できる部分はそこで読み込んで います。不開示にする範囲、個人情報を保護する範囲というのは、実は一般人基準では なくて、特定人基準になっていると言っていいのです。私の考えでは、一般人基準と言 い切ってしまうのは少し問題があるように思います。 ○松原委員  これは、かなり議論があると思いますので、少し考えさせていただくということでよ ろしいでしょうか。私ども、実際に説明しなければならない立場になりますので、それ だったらどういう限度なのだという話になって、極論を言えば先ほど言ったように、親 族はわかってしまうではないかという話にもなってしまいますので、ここは問題点とし て保留させてください。 ○樋口座長  いまの点について、事務局からコメントはありますか。 ○総務課長補佐  現時点のガイドライン(案)では、通常の利用の場合には、氏名、生年月日、住所の 記述等を取り除くということで匿名化できる。もしくは、顔写真の場合には目の部分を マスキングするということでよい、という考え方をとっています。  2段落目では、事業者内の場合には、本人と直接会ったことがある人もたくさんいる 、もしくは医療に詳しい方がそういう情報を見ることによって、本人が特定できてしま うような場合には氏名、生年月日、住所を消すことだけでは、匿名化されたことにはな らないという、2つのパターンを考えておりますので、これではもう少しということで あれば、具体的にどのぐらいかというご議論を、本検討会で行っていただければと思い ます。 ○松原委員  私が主張しているのは、仮にこの説明でどう説明したらいいのかということですので 、これについてどうこう言っているわけではありませんから、議論を先に進めていただ いて結構だと思います。 ○武田委員  いま松原委員がおっしゃったのでいいのですが、最後に同意を得れば、一般的な匿名 化で済むことではないかと思うのです。それが一般人にわかると言ってしまうよりも、 一般人にわからないように努力したという形であればいいのではないかということです 。それで出来なければ同意を得ると。 ○樋口座長  下から4行目にも、いま武田委員がご指摘になったようなことが書かれていると思い ますが、その上の段の「当該情報の利用目的や利用者等を勘案した」という所が、やは りキーフレーズになっています。「これをたまたまこの患者の兄弟が見ればわかるじゃ ないか」と言っても、兄弟が見る可能性がないような利用目的と利用者の範囲であれば 、その点は本当はあまり気にされる必要はないのではないかと思っているのです。この 点についてもう少しということでもよろしいのですが、ほかの所でも何かご意見はあり ますか。  では、いよいよ本体のIII、医療・介護関係事業者の責務について並んでいる所へ進む ことにいたします。これは長い部分ですので、いくつかに分けて説明をお願いしようと 思います。 ○総務課長補佐  まず、9頁から14頁のIIIまで説明いたします。9頁が「医療・介護関係事業者の責務 」の中の1.「利用目的の特定等」です。修正点としては、10頁の(2)の(1)「法令に 基づく場合」です。この部分に前回の議論を踏まえ、具体的な例示を追加しました。追 加した部分の最初の段落は、「他の法令により回答が義務づけられているような場合は 回答しなければならない」というものです。  次の段落は「回答するか否かについては個別の事例ごとに判断する」というものです 。この場合は前回も議論がありましたが、回答したことによって当該本人から、民法に 基づく損害賠償請求等を求められるおそれもあります。  その下の(3)「公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場 合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」の例示としては、「医療安全の 向上のため、院内で発生した医療事故等に関する国、地方公共団体又は第三者機関等へ の情報提供のうち、氏名等の情報が含まれる場合」を追加しております。先ほども匿名 化の考え方についての議論がありましたが、匿名化した場合は個人情報には該当しない けれど、調査の状況によっては氏名等を含めて報告する場合もあり得ます。この場合は この条文の例外規定に該当すると考えています。  その下の(4)「国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める 事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ること により、当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」としては、11頁の上にあり ますように、「国等が行うような統計調査」という例示しております。行政機関が行う 統計調査の場合、「法令に基づく場合」という(1)に基づいて行う調査と、法令に基づか ない場合、いわゆる届出統計調査とがあります。そのうちの法令に基づかない場合につ いては、こちらのほうに該当するものと考えております。  2.「利用目的の通知等」の中の13頁【その他の事項】として前回議論のあった、初 診時や入院・入所時における説明だけでは、ご本人の個人情報の取扱いについて、十分 な理解が得られないような場合も想定されますので、患者・利用者が落ち着いた時期に 改めて説明を行うとか、もしくは診療計画書などの中に取扱いについて記録をするとい うことなどを行って、患者・利用者が個人情報の利用目的を理解できるように配慮する 必要があるということを書いております。その下に書いておりますように、さらに必要 がある場合は「詳細な説明や当該内容を記載した書面をさらに交付する」ということも 記載しております。  14頁の3.「個人情報の適正な取得、個人データ内容の正確性の確保」として、2つ 目の・では、「本人からの直接収集のほか、第三者提供について本人の同意を得ている 他の者からの情報の収集」を追加しております。それに併せて下の「その他の事項」の 部分も、「本人又は情報の提供を行った者に確認を取る」という形に修正しております 。 ○樋口座長  いまの部分について、いかがでしょうか。先ほど大道委員が指摘された点については 、10頁の(3)で一応こういう形があると。つまり3つの方法のうち、3つ目の処理があり 得るという例示なのです。ただ医療安全のために第三者機関へ提供するときに、必ず氏 名等の情報まで入れないといけないかどうかというのが、一つの問題です。個人情報保 護法の精神からすると、本当に要らない情報まで、安全と何の関係もなければ匿名かと いう話があります。そういう意味では二本立てなのかと思います。ただ氏名等の情報が 含まれていても、こういう条項で外し得るという。 ○大道委員  法の趣旨ならびにガイドラインとして書き込む文脈は、理解できるのですが、現実的 にこういう非常に厄介な情報を扱っている者から見ますと、武田委員は「同意を取れば 、別に匿名化も何もいりませんね」とは言うものの、現実には同意の取り方にさまざま な形が示されています。ポスターにそのようなことを記載しておけばいいのかというレ ベルから、こういう趣旨で、こういう状況で、こういう利用目的で個人の情報を活用し たいのでよろしいかという、かなり個別具体的なご説明の上でご了解をいただく場合ま で、それなりにいろいろあるわけです。  それと利用の目的、先ほどのような議論のかかわり方というのは、実はさまざまな事 項があるのです。法やそれに基づいたガイドラインとなると、どうしても簡単に整理が つかない、その場その場で適当にやるわけにはいかなくなるものですから、問題意識が 起こってくると思うのです。いま座長がご指摘された(3)は、例外の解釈をガイドライン で示されたわけですので、氏名が含まれることは一般的にはないのだろうと思うのです が、氏名だけにかかわらず、例えば診断名をどうするか、具体的な処置行為、手術など をどうするかなど、さまざまな状況が想定されます。  それと、これもここで議論すべきではないのかもしれませんが、この種の情報が外に 出たときの有責性などの問題を議論されると、必ず訴訟や紛争処理のための一つの証拠 としての扱いが、外に出て行ったがゆえに保全的な対応があるのではないかといった、 医療機関側、場合によっては患者の立場からの思いが交錯して、個人情報がまた一気に 複雑な様相を呈してくる側面があります。ただ、これはそういうことがありますという ことをご紹介しているだけの話で、このガイドラインがどうのこうのということではあ りません。背景にはそういうこともあるというご紹介です。 ○高橋委員  質問です。先ほどの介護のことも含めると、(3)の「公衆衛生の向上又は児童の健全な 育成の推進」という項目と、「医療の安全の向上」を例に出すことについて、やや違和 感を感じるのです。これがなぜここに入ってきたのですか。多分、ここでは健康増進法 を想定して公衆衛生を、児童虐待を想定して児童を入れていると思うのです。そうする と、この事例の場所に非常に違和感を感じます。当然ここには介護事故などは入りませ んから、そこら辺の説明をお願いします。 ○総務課長補佐  個人情報保護法を法制化する時点で、内閣府と厚生労働省との議論により、医療安全 に関するものについては、「公衆衛生の向上」に含むという解釈になっています。 ○高橋委員  それなら「そうですか」としか申し上げられません。 ○樋口座長  高橋委員が想定しておられるというか、気にしておられる介護関係の事故について、 第三者機関の同じようなシステムがつくられるとします。実際につくるかどうかはとも かく、そういう所へ情報を集めてという話になると、それはまだ検討していないという ことになるのですか。 ○高橋委員  まだまだだと思います。これは先の宿題ということにして、是非老健局に引き取って いただくということでいいのではないかと、実は思っております。 ○樋口座長  そのほかにいかがでしょうか。 ○松原委員  実際に医療現場で仕事を行うわけですが、医療というのは一生懸命努力をして、完璧 を目指していても、生命である以上、どうしても結果が悪くなることは避けられないこ とであります。全力を尽くし、完全を目指して行っていても、どうしてもその結果が悪 い結果になったときには、実際上は保険に入ってそれをカバーして、少なくとも患者が 受けたダメージを保険で償うという方法を取っております。私は、これは患者のための システムでもあると思いますし、医療を行っている者にとっても、そういったシステム があるから、安心して医療ができるという面もあるのです。  介護でもそうです。事故が起きたときの対応というのも、我々の業務の中の一区切り として入っております。これがなくなりますと検査も必要なものだけでなく、100%、12 0%を求めれば、患者に対してありとあらゆる検査をして、すべての項目を除外しなけれ ばならなくなります。また事故が起こったときにこういった保険に入っていなければ、 当然医療機関が個人的に何千万円という賠償を負うわけですので、非常にややこしい局 面が出てくるのではないかということが想定されます。したがって医療という業務にお いては、こういった保険は不可欠のものでないかと、私どもは考えているわけです。損 害を受けた患者を守るということでも、そういったことが必要だと思っております。  賠償責任の保険に入っているわけですので、実際問題として医療事故が起きたら、医 師会を通して保険会社に連絡をするという現在のシステムを動かし、医師会に対しては 自分たちのやった医療行為に大きな間違いがなかったか、ということを検証してもらう ようなシステムが中にあります。客観的にほかの医師が見て、大きな問題があったかど うかをそこで議論するわけです。そういった医賠責のシステムが動いているという現実 がありますので、それを患者にどのように説明していくかという問題が起きてくるわけ です。やはり私どもは、これは医療という業務の一連のものではないかと思います。  例えばレセプトを請求して、それに対して対価を支払っていただくとか、患者が退院 されるときに、さまざまな手続を行うということと同じように、医療事故が起きたとき には、それに従って速やかに紛争が処理されるような形にする、いちばん最後の段階に あるわけです。ただ、これはすべての症例で適用になるわけではありません。しかし、 これが速やかに対応できる状況にありませんと、実際の医療現場が回らなくなると思っ ております。  このご議論には異論もあるかもしれませんが「利用目的の特定」という所に、治療を するということと、例えば退院の手続をする、請求事務をするということなどと併記し ていただきたいのです。9頁の(1)の「利用目的の特定及び制限」の3行目、「医療 ・介護保険事務、入退院等の病棟管理」に併せて、「医療・介護関係事業者の賠償責任 保険の処理」というのを入れていただけたら、非常に安心してそういった保険を活用で きるのではないかと考えております。いかがでしょうか。もちろん、そのような形にな りますと、別表2の【他の事業者等への情報提供を行う事例】として、最後の所あるい は最後から上の所に、「医療・介護関係事業者の賠償責任保険の処理」というものを、 医療の提供において必要な一要素であると考えて「利用目的」の中に入れていただけた ら、現場は非常に混乱なく、速やかに行えるのではないかと考えます。 ○樋口座長  いまの点は特定の点ではありますが、非常に重要なご指摘です。21頁あるいは20頁に 、「個人データの第三者提供」という部分があります。おそらくこれとも非常に密接に 関連した話です。第三者提供の取扱いということで、まずいちばん重要な原則は、第三 者に提供する場合は同意原則であるということです。次のような場合として、例示がい くつかあって、そのいちばん上に「民間保険会社からの照会、その他」として、民間保 険会社との関係が書いてあるわけです。私はそのとき、いま松原委員がご紹介されたよ うな事例は想定していないで、こういうものも普通に入ってきてもいいのではないかと 考えていたのです。  9頁へ戻りまして、私のほうでシチュエーションだけをご紹介すると、松原委員がお っしゃったように、医療というものがすべて成功して、手術がうまくいってということ であればいいのですが、現実にはなかなかなく、思いがけない結果が生ずる場合があり ます。しかも人間の技ですから、過失のある場合もある。そういう場合に損害を分散す ることを保障するものとして、賠償責任保険制度というのがあります。これは医療だけ ではありません、普通の運送事業者であれ、介護事業者であれ何であれ。製造物をつく っているメーカーは、製造物責任の保険制度に入っています。そういう意味では一般的 な話ですが、それは事業者を守ると同時に、それによって被害を受けた人を守るための 正当な制度だということで、どこの国でも発展してきているわけです。  そのときに医療のところへ話を持って帰ってくると、医療でうまくいかない事例とい うのがあります。それが過失を伴う事故か、実際に過失があるかどうかというのも、結 局は後追いの判断なので、事故の時点ではわからないことがあります。しかし、こうい う事態が起きたときに、これは保険の対象になるものかどうかということを、病院であ れ、各担当の医師であれ照会するというか、相談をすることはあり得ます。その相談を するときは、やはり具体的な事故の名、状況を説明をせざるを得ない。それが患者の情 報であることは間違いない。それが相談できないという話は、おかしいような気がする のです。  いまは責任保険の話をしていますが、もっと明らかに事件や事故で重大なものの場合 は、医師によっては、あるいは病院によっては顧問弁護士がおられて、弁護士にも相談 してみるかもしれません。しかし弁護士に相談するときも同じように、個人情報をつま びらかに話して相談することになります。そのときに必ず、まずはそこの部分について も同意を得るという話になりますと、専門家と相談して事実をもう少し解明してからと いう段階では、それができない形にもなります。その場合は何らかの形で個人情報の利 用ができるようにしてもいいのではないだろうかというご判断だと思うのです。  しかし、そこについては異論があるという場合もあり得ると思うのです。委員の方に よっては、ご意見が違う場合もあるかもしれませんが、弁護士にも相談できない、ある いは事故が起きた場合、商法上入っている責任保険の担当者にもすぐ通知する義務があ るのに、「こういう」というのではなく、非常に抽象的な形で「事故が起きました」と いうだけを通知するのは、本当は意味のないことです。やはり具体的な情報を明らかに して相談する、通知するということになると思います。そのときに個人情報保護法との 関係で、一体どういう処理が適切だろうかというお話です。  いまの松原委員のご意見は、9頁で利用目的として明確に掲げて、まさに透明化して 、こういう形でも医療情報が利用されることはあり得るべしということで行うというの が、一つの方法としてあるのではないかというご意見だと思います。ただ、それは一つ の有力なご提案だとは思うのですが、どこまであるのか。私のほうでも少し意見があり ますが、それはまた後にして、少し皆様のご意見を伺うことにしましょう。これについ て、いかがでしょうか。 ○山本委員  賠責の話ですが、薬局でも似たような事例があります。調剤は処方せんに従って、正 確に調剤をすることが原則ですが、不幸にして誤った調剤をしてしまうことがあります 。日本薬剤師会では会員を対象とする賠責保険を準備していますが、過誤がおきると、 まさに賠責の対象になるケースが出てまいりますので、いま松原委員がおっしゃったよ うなことが、薬局でも発生するのでしょう。そういうことからしますと、賠責処理の報 告については、自分たちの問題として情報をどう使うかということについて一定のガイ ドラインがあったほうが、薬剤師の立場からも仕事がしやすいと思います。発生した事 故をきちんとした処理をするという意味でも、十分な情報開示も含めて議論すべき問題 だろうと考えますので、そうした点についてもご議論いただければ、大変ありがたいと 思います。 ○樋口座長  薬局のほうも含めて議論していただきたいというご趣旨ですね。 ○山本委員  座長の言われているとおりです。似た例で申し上げますと、8頁もそうですし、その 後の事例として挙げられている別表2の中の項目もそうですが、通常、医療機関と薬事 法上でいう薬局とは同一にされない場合もあります。ここでは「医療機関」という言い 方と、「医療機関等」という言い方と「薬局」という言い方とが多少混在しております 。医療法との関係からしますと、どこまで薬局が含まれて、どこまで医療機関で、どこ まで医療機関等なのかという、非常にややこしい関係が出てまいります。  私どもも医療提供体制の中で、きちんとした仕事をしてまいりたいと考えております ので、薬のことだけをことさら申し上げるのではなく、薬局が含まれるよう、整合性が うまく取れるようなガイドライン上の表現にしていただければ、ありがたいという気が いたします。  また、8頁の病状の説明ですが、通常、我々は患者等に病状の説明をすることはない わけですが、投薬をした結果、患者ではない第三者、つまり家族も含めて安全な服用を するための説明をするケースも発生することが想定されます。そうした場合、一体どう いう本人の了解を取ればいいのかということも出てまいります。こうした点も視野に入 れた議論をしていただければ、ありがたいという気がいたします。ガイドラインに示さ れた方法できちんとした対応をすることが、本来的な姿と思いますが、このガイドライ ンでは明確に記載されていません。そのため薬局・薬剤師は、どこまでの範囲を守って いいのかが見えてきません。今後ご議論があれば、そのあたりも含めて、是非議論して いただきたいと思います。 ○樋口座長  いまの山本委員のご指摘は重要な点です。これは医療・介護関係事業者という形で広 く取っているのですが、やはりどうしても医療機関がいちばん中心になっています。介 護の方の所は、相当いろいろな点で配慮していると思いますが、薬剤師や薬局等の関係 については、この表現ではまだ曖昧であるということが、きっとあるのだろうと思いま す。山本委員からも個別に、こういう点についてどうかということをご指摘いただけれ ば、ありがたいと思います。 ○山本委員  折りに触れて気が付いたところは、申し述べさせていただきたいと存じますので、よ ろしくお願いします。 ○樋口座長  後でメール等の形でいただければ、ありがたいと思います。  先ほどの問題に返って、表現はいろいろあると思うのですが、個人情報の利用目的と して賠償責任保険に関する相談等というか、松原委員がご紹介くださったような表現も あると思うのです。ともかく、そういうことを入れておくと。当然この場合、医療機関 が情報を扱うところの本来的な利用目的の範囲ということにすれば、特定の患者、例え ば私だとすれば、私が責任保険のところだけは使ってはいけないということで、そこに ついてだけは同意できないという話で同意原則のところへ持ってくることは、もはやで きないことになりますか。 ○宇賀委員  個人情報保護法第15条第1項で、利用目的をできる限り特定しなさいとなっていて、 第2項で目的を変更するときは、相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲とな っていますね。そして、「特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報 を取り扱ってはならない」というのが、第16条ですよね。ですから最初から利用目的の 中に、医賠責のために使うということを入れておけば、目的の変更でないということは 明確になりますから、第15条第2項の問題は生じてきません。ただ目的の変更は相当な 関連性を有すると合理的に認められる範囲であれば出来るわけですから、初めから入っ ていなくても、私はこの範囲でも読み得ると思うのです。ただ、その点については初め から議論の余地なく明確にしておきたいということであれば、最初から「特定する利用 目的」の中にそれを入れておくべきことになります。その範囲で使う限りは、第16条第 1項の問題は生じてこなくなります。第三者提供はまた別の問題になりますが。 ○樋口座長  そこが問題なのです。やはり一種の第三者提供であるということになって、第23条で 同じ問題が蒸し返される可能性はあるのでしょうね。 ○宇賀委員  損害賠償保険会社に渡すとなりますと、第23条の問題になってきます。したがって、 原則としては、本人の同意が要るということになるわけです。そのときに何か例外で読 み得るかどうかと考えていくと、1つは第23条第1項第2号です。ここでは「人」とな っていますが、自然人に限らず、法人その他の団体も含んでいます。したがってその財 産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときに 当たらないかが問題になります。  この例外規定は「本人の同意を得ることが困難であるとき」ということなので、本当 に困難なのかどうかという問題は残ります。実際に同意を得ることが非常に難しい場合 、結局医賠責が利用できないということになりますと、医療機関にとって財産上の損害 が生ずるということになります。そうすると「財産の保護のために必要がある場合であ って」という第23条第1項に当たりますから、ここで同意なしに第三者提供を認める余 地があるだろうと思います。 ○樋口座長  第23条第1項第2号だと、私が例示したような弁護士への相談というのも、同じ形で 整理できる可能性はありますか。 ○宇賀委員  そうですね。例えば医療事故があって、損害賠償請求訴訟が提起される可能性が非常 に高く、被告の立場に立たされるということになりますと、当然弁護士に相談すること になりますよね。そのときに損害賠償請求に応ずるわけですから、ここで言う「財産の 保護」というのに読み得ると思います。ただ、ここの所は「生命、身体又は財産の保護 のために必要がある場合」というだけでなく、もう1つの要件として、「本人の同意を 得ることが困難であるとき」というのがありますから、この「本人の同意を得ることが 困難であるとき」というのを、どこまでカテゴリカルに判断していいかどうかという問 題があります。 ○樋口座長  それ以前の問題として、事故が起きて被害者と加害者という構図になりつつあるとき は、医療機関として患者、あるいは亡くなられている場合は遺族に説明するのは当たり 前のことですが、それとは別の次元の問題として、結局金銭的な問題が生じます。ある いは訴訟ということもあり得るので、弁護士や損害保険会社に相談にも行けないという のも、どうなのかと思うのです。  極端な例ですが、9頁では松原委員が出されたようなことも、本当に有力な方法だと 思うのです。ただ言葉の上ではそういうことで利用することが、「患者・利用者にとっ て明らかと考えられる」というのが、本当に明らかなのか。ここは言葉を何らかの形で 訂正するというのもあるかもしれませんが、それよりも大事なことは、そこへ入れてお くだけだと、結局最後の第23条で。  例えば私が医療事故に遭って、しかもその医師について前から何らかの不満を持って いて、実際にこういう形でうまくいかなかったということで、非常に関係が悪化してい る場合があります。そういうことまで考える人間かどうかは分かりませんが、そのとき に私のほうは第23条について考えようとすれば考えられるわけです。「第23条で、それ は結局第三者提供に当たるから、私のカルテ等は一切そちらには提供するな」と言って しまうわけです。そうすると損害保険会社に相談はできるかもしれませんが、実際には データ等が全然行かないということになります。保険会社としても、データもなしに支 払いを行うことは絶対にできないはずですから、保険では賄えないということになりま す。折角入っていた損害保険制度の根幹のところ、損害分散のための仕組みが利用でき なければ、その医師が個人で払うことになります。それを目的として私が行動する場合 も、稀な例とは思いますが、あり得るかもしれないですね。  実際に私のような患者がどんどん増えてくるとは、本当は思いたくもないし、それは 非現実的な想定かもしれませんが、損害保険制度というのは、本来は患者のためでもあ り、医師のためでもありという話で構図ができているのに、仮に何人かそういう人が出 てくると、損害保険制度そのものを否定する、賠償責任保険制度そのものを否定すると いうことになりかねません。そういうことまで個人情報保護法が意図してつくられてい るのだろうかというと、それは私は相当疑問だと思うのです。むしろ素直に、これは第 三者提供の制限で、本来は同意を得なければいけないことだけれど、その例外に当たる ような場合であると。いまの宇賀委員のご示唆のように、第23条第1項第2号が当たり 得るというのであれば、そういう形で整理しておくのも、1つの方法ではないかと考え ます。 ○神作委員  いまの論点について、本人の同意を得ることが困難な場合について、1点ご質問し、 その後、1点コメントさせていただきたいと思います。  10頁の(2)の例では、「身元不明の患者」「意識不明の患者」「重度の痴呆性の高齢者 」という場合が挙げられております。これは本当に本人の同意を得ることが困難な場合 だと思われますが、(3)を拝見しますと、本人の同意を得ることが困難であるということ が、例の中で一体どういうように反映されているのでしょうか。逆に(3)では「本人の同 意を得ることが困難であるとき」については、(2)と同様に考えているのか、(2)とはち ょっと違ったレベルで考えているのか。そういう意味では「本人の同意を得ることが困 難であるとき」というのは、場合によっては相対的な概念と言いますか、程度によって 差をつけるという解釈論もあり得るのではないかと思うのです。(2)の例で挙げられてい ることと、(3)の例で挙げられていることの関係について、是非教えていただきたいとい うのが質問です。  コメントですが、私は個人信用情報の保護についての産業構造審議会にも、メンバー として加わっており、今日の午前中にそこで会合がありました。そこで会の冒頭に、金 融庁の方から、昨日審議された金融情報についてのガイドラインのご説明がありました 。私はそちらのほうには入っておりませんので、本当に私の理解が正しいか確実でない のですが、私がそこで理解したところによると、医療情報や健康に関する情報というの は、いわゆるセンシティブ情報なので、そういったものは金融機関は原則として扱って はいけない。例外的に、保険会社については本人の同意を得れば、そういった情報を取 得することができる、おそらくそういう内容だったと思います。  そうしますと、例えば医療側、病院側で第三者提供しますということについて患者の 同意を得ても、保険会社のほうでも本人の同意を得なければ、それを取得できないのだ 、と言われる可能性がないのかという点が心配になりました。場合によっては金融情報 、特に保険関連のガイドラインとの調整が必要になるのではないかと思った次第ですの で、コメントさせていただきたいと思います。 ○樋口座長  最初のご質問については、いわゆる「本人の同意を得ることが困難であるとき」とい うのが、10頁の(2)(3)で、あるいはいま我々が議論しているような類型で、いろいろな 意味があり得るわけですが、いろいろな意味があり得るという形でよろしいかどうか。 これも宇賀委員、ひとつコメントをお願いします。 ○宇賀委員  「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得 ることが困難であるとき」の「本人の同意を得ることが困難であるとき」というのは、1 0頁の(2)で書かれていますように、本人の同意を得ることが物理的に困難な場合、すな わち、本人が行方不明や意識不明で困難というのが、典型的な例です。また本人に同意 を求めたけれど拒否された場合も、これに含まれますし、本人に同意を求めることによ って、違法又は不当な行為を助長するおそれのある場合も含まれます。もし本人に意識 があっても、同意を求めた本人が拒否した場合も、当然ここに入ってきます。そういう 場合が含まれるということは明確です。ですから必ずしも(2)で例示されているような、 物理的に不可能又は困難な場合に限られないということになります。  いま問題になっているのは、本人に同意を求めたが拒否された場合ではなくて、そも そも本人に同意を求めること自身が非常に難しい場合です。そういう場合も含めるかと いう問題です。そこはこの解釈をどの程度柔軟にするかという問題です。立法者意思は そういうものを明確に排除するという趣旨ではないと思うのです。柔軟に解釈すれば、 そういうものも含まれるということになりますが、そこを厳格に解釈していけば、やは り一応本人に聞いてみて、「ノー」と言われたからということになります。ですから、 そこはある程度解釈の幅があり得るのだろうと思います。 ○樋口座長  抽象的な言い方で恐縮ですが、法律論として、第23条第1項第2号ではっきり同意原 則から外すような話ですよね。そういうものと、そうではなく、先ほど松原委員がご紹 介したような話は、まだ同意原則が残っているという違いがあります。それが金融庁の ガイドラインとの抵触関係もありますので、そこのところはもう少し時間をかけて整理 する必要、調整する必要があるのかもしれません。  もう少し先に進んでよろしいでしょうか。それでは事務局の方、先に進んでください 。 ○総務課長補佐  15頁の4.「安全管理措置、従業者の監督及び委託先の監督」の部分について説明し ます。まず15頁の(2)の4行目ですが、従業者の範囲については「雇用関係にある者のみ ならず、理事、派遣労働者等も含むものである」というように、範囲を具体化いたしま した。  16頁の最初は、1つの事業者が複数の病院、もしくは複数の薬局を開設しているよう な場合、同一の事業者の中で情報のやりとりをする場合には、第三者提供には該当しな いわけですが、かといって患者が通常通っている病院以外の病院に、その情報を渡して いくということが、個人情報の利用目的に本当にかなっているかという部分の議論があ りました。そういう観点を踏まえ、複数の施設を開設する場合は、それぞれ施設ごとに 安全管理措置を講ずるなど、本来の目的以上に情報を流通させないような配慮が必要で はないかということを書いております。  16頁のいちばん下の部分ですが、労働者派遣に関しては、すでに平成11年に労働大臣 告示として、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」が制定されております。その中で 、派遣先となる事業者が行うべき責務の1つとして、「必要に応じた教育訓練に係る便 宜を図るように努めなければならない」とされております。これは派遣先は自分たちが 雇っている労働者と派遣労働者とを同じように、研修などの機会を与えるように努める べきだという趣旨ですが、個人情報の取扱いに係る教育研修についてもこれに配慮して 「できるだけ研修の機会を確保すべき」という記述を追加しております。  18頁の(5)は、「個人情報の漏えい等の問題が生じた場合における2次被害の防止 等」です。こちらについては今年4月2日に定められた基本方針の閣議決定などがあり ますが、その中で漏えい等の問題が生じた場合には、2次被害の防止もしくは類似事案 の発生回避などの観点から、事実関係をできるだけ公表するようにという指摘がありま す。このため、個人情報の保護に配慮しつつ、可能な範囲で公表するということを追加 しております。 ○樋口座長  4の部分については、いかがでしょうか。これは実際上、非常に重要な部分ですね。 安全管理措置がしっかりしているかどうかというのが、結局いちばん重要なところだと 思うのです。また委託先の問題、従業員の監督の問題も、同様に重要なところです。こ れはいちばん初めのたたき台から、あまり動いていない部分でもありますが、何かご意 見はありますか。  次の「個人データの第三者提供」は、先ほどからすでに議論が始まっているようなと ころなので、そこへ進めたいと思います。 ○総務課長補佐  では5の「個人データの第三者提供」の説明をさせていただきます。まず21頁の(1 )「第三者提供の取扱い」です。例示についてはイメージが湧きにくいので、できるだ け具体的な場面を記入するようにというご指摘がありました。また、いちばん最後の項 目、「マーケティング等を目的とする会社等からの照会」を追加しました。この部分は 前回、もう少し例示を増やすべきというご指摘もありましたので、さらに追加すべき事 項があれば指摘していただければと思います。  内容について、まず最初の「民間保険会社からの照会」という点については、2つの 例示を挙げております。1つ目は、すでにその医療機関にかかっている患者が、民間の 生命保険に新しく加入する場合、生命保険会社から医療機関に対し、その患者の健康状 態や過去の病歴などについての問い合わせがあるような場合です。そういう場合、医療 機関は患者の同意を得てから患者の状況を伝えなければならないというものです。  もう1つは、交通事故によってけがを負った患者が病院に通っている場合、保険会社 から保険金の支払いに当たって、その患者の病状がどうなっているか、けがの具合がど うなっているかを確認したいという照会があった場合です。その場合、患者の同意を得 てから、病状などを回答しなければいけないと考えています。これらの場合については 、本人の同意を得てから回答すべきというご意見と、特に後者のほうですが、最終的に は患者自身のためという観点から、本人の同意は必要ないのではないかというご指摘も ありましたので、改めてご意見をいただければと思います。また先ほどからご議論のあ った医師賠償責任保険に係る取扱いについても、同じような取扱いをすべきかどうかと いうご意見もありました。  2つ目、3つ目の職場もしくは学校からの照会についても、本人の同意を得ずに回答 してはならないという例示をしております。「マーケティング等を目的とする会社等か らの照会」については、健康食品などの販売を目的とするような会社から、高血圧など 、特定の症例に該当するような患者がいるかどうかという照会、もしくは具体的にその 人の名前や住所を教えてほしい、直接ダイレクトメールを送りたいというような依頼が あった場合、患者のためになるという考えから患者の氏名や住所を教えることがあるか もしれませんが、そういうときも患者の同意がない場合は回答してはいけないという例 示をさせていただきました。  22頁の(3)と(4)の例は、先ほど10頁、11頁で記入したのと同じ例示を追加しておりま す。  25頁の(5)「その他留意事項」ですが、いちばん最後に「医療事故等に関する情報 提供」というのがあります。先ほどできるだけ情報提供をするという部分の追加があり ましたが、一方、患者への配慮という観点から、医療事故等に関する情報提供に当たっ ては、患者・利用者および家族等への感情に配慮して、報告において氏名等が必要とさ れる場合を除き、原則としてマスキングを行う、特に医療事故が発生した直後、マスコ ミへの公表を行う場合については、直後という観点からいきますと、匿名化した場合で あっても、原則としてご本人などの同意を得る必要があるのではないか、という観点か らの追加をしております。  また22頁の(3)「本人の同意が得られていると考えられる場合」については、前回 までの各委員からのご意見などを踏まえて作成した段階では、あらかじめ22頁の(3) の(1)に書かれているように、このような情報をあらかじめ患者に提供しておけば、患者 による黙示の同意があったものと見なし、第三者提供をしてもいいのではないかという ことで、(3)の記述や事例2も含めて記載しておりましたが、このような指摘があり ましたので、改めて本日、皆様のご意見をいただければと思っております。  ご指摘としては、情報を提供する第三者が他の医療機関とか保険者というように、範 囲は概ね限定されているけれど、どの医療機関であるか、相手先が具体的に特定されて いない状態である、または院内掲示や職員から注意を促すなどの行為をしているけれど 、患者が明確に同意しているのではなく、黙示による同意をしているという状況である 、もしくは相手先が特定されていないとか、いつ情報を提供するかについても、具体的 に定まっていない形で、同意されているとみなすことについて、法第23条に書いている 「本人の同意」を得たと本当にいえるのか、もっと議論すべきではないかというご指摘 もいただいているところです。 ○樋口座長  いくつか重要な点が指摘されていたと思うのですが、いかがでしょうか。 ○宇賀委員  いまご説明のあった所ではないのですが、25頁のいちばん下です。ここに書いてある こと自身はそのとおりですが、それが【その他の事項】に入っているという点が引っか かるのです。つまり【その他の事項】というのは、「法に基づく義務等ではないが、達 成できるように努めることが求められる」という類型なのです。ここで言おうとしてい るのは、最初にその同意があった、しかし後で同意を取り消した場合ですよね。その場 合、同意のあった範囲に限定して取り扱うわけです。そもそも原則として、事前の同意 が要るということで、オプトインの権利を認めているわけです。ところが後からオプト アウトしようとすると、それについては事業者側の努力義務ですということにはならな いのではないかと思います。これは位置を、「法の規定により遵守すべき事項」の所に 移す必要があるのではないかと思います。 ○樋口座長  むしろ「法の規定により遵守すべき事項等」の上へということですね。 ○宇賀委員  書いてあることはそのとおりで、全く問題ないのですが、位置をちょっと上に移して いただいたほうがいいのではないでしょうか。 ○樋口座長  おっしゃるとおりですね。  私のほうからですが、21頁の「第三者提供の取扱い」については、まず同意原則でい くということですね。これがいちばん重要なことですから、もう少し例示を膨らませて ここをというのを、私のほうからも申し上げたので、こういう形でいろいろ充実させて いただいたのだと思うのです。私が知っているアメリカの例も含めてご紹介すると、民 間保険会社からの照会で、アメリカでいちばん問題になっているのが、ここに書いてあ る生命保険会社への勧誘です。  ここへはっきりこういうことまで書く必要があるかどうかは分かりませんが、すでに 我が国でも医療機関で遺伝子診断、あるいは検査その他で遺伝情報を持っていることが あります。この遺伝情報を利用して、将来病気になりやすいという憶測、あるいは推測 の段階で、生命保険に排除される可能性が大きいわけです。ですから、それはやはり簡 単に出してもらっては困るので、同意原則というものをはっきりさせておかないといけ ないということに、彼の国ではなっています。これは多分、日本でも同じようなことで はないかと思います。これが1つです。  2つ目の例ですが、交通事故によるけがの治療を行っている患者に関して、患者が例 えば私だとすると私が傷害保険等、あるいは医療保険に入っているとします。保険の名 前が正確でないかもしれませんが、それで自分で請求するときに診断書等を付けますが 、もっと詳しい情報がほしいというので、保険会社から医療機関のほうへやって来る。 そのときに原則は、ここのように患者の同意を得ずに回答しないということでよろしい と思いますが、ごく例外的な場合として、本当は適切な例でないのかもしれませんが私 が何回も足を折るとします。そのたびに何度も同じ医療機関を利用するのはどうなのか 。医療機関のほうと連結させなくてもいいですが、どうなのだろうかという疑いを兆す ような場合が稀にはあるのではないか。もっと極端な場合は保険金殺人の場合だと思い ますけれども、そういう例というのは、我が国だけでなくどこの国でも実際にあるわけ です。  そういう場合に保険会社は何らかの調査をしたいとなります。そのときに医療機関に 照会があるわけですが、まさに先ほどの第23条第1項第2号の「人の生命、身体又は財 産の保護のために必要がある場合」があって、本人の同意を得ることが極めて困難であ ると思うのです。そういう場合には、ここでは同意原則という形で、それは当然だと思 いますが、大多数の場合は健全に保険を利用する形で行われているので、そういう場合 に同意を得てというのは当たり前のことだと思いますが、例外があり得るということ。 ここに書き込むのが適切かどうか、いまのような事例まで書いておくのがいいのかどう かわかりませんが、そういう趣旨も少し裏には含めてあっていいのかなというのが私の 感想です。この部分についてはそれが適切かどうかわかりませんが、そう思います。  マーケティング等も、こういうような事例だと思いますけれども、アメリカであった 事例では、例えば私の所に突然、バイアグラの試供品が送られてきて、私の所だけでな いのですがたくさん送られてきていて、何で自分がこういうことで悩んでいるのを知っ ているんだという話で大騒ぎになったことがありました。試供品が得られてありがたい と思う人もたまにはいるのかもしれませんが、そうでなくて本当に嫌だなと思うのはア メリカ人だけでなく日本人も同じでしょうから、こういうことが今後とも非常に重要に なると思いますので、同意原則をはっきりさせておかないといけないということかと思 っています。これは感想とかコメントといったものですが、ほかに、いかがですか。 ○寺野委員  もう既に議論されたのだろうと思いますが、25頁の(5)の「その他留意事項」のと ころで下線の部分ですが、この事項は、おそらく実際に医療事故が起こったときのマス コミ対応に関して極めて尖鋭に出てくる問題なのです。これは非常に重要な問題で、実 際に私どももマスコミ公表などをするときに、患者あるいは家族の同意を得て「やって いいですか」と言った場合に、そういうのを公表したくないという人もいるのですが、 実際のマスコミ対応においては事実上許されないということで、かなりしつこくやられ るわけです。だから我々としては、これを根拠として「それはできない」とはっきり言 っていいのかどうか。これは極めて尖鋭な対決場面だと思いますが、いかがですか。 ○総務課長補佐  ここの部分は、できないかということでいくと、最後に「原則として本人又は家族等 の同意」とあり「原則として」と書いてありますから、これを根拠にしてマスコミに対 する公開をできないという趣旨ではありません。 ○寺野委員  原則としてということで大体済むのですか。 ○総務課長補佐  どのような形で医療事故の報道について取り扱うかという点についても、本日ご議論 いただければ、その方針により、ガイドライン(案)を修正したいと考えます。 ○樋口座長  これは私の間違いかもしれませんが、ここの委員の方の中にはマスコミの代表という か、そういう方はたまたまいらっしゃらないですか。 ○岩渕委員  困りましたね。ご本人がどうしても嫌がっているという場合は、これはやむを得ない と言えばやむを得ないとしか言いようがないのですが、それ以外の形も大分想定されま す。あるいは本人が嫌がっているということを大義名分というか、隠れ蓑にされる場合 がどうしても考えられるわけです。 ○樋口座長  マスコミの方は実際に疑うかもしれないですね。 ○岩渕委員  通常、こういう医療事故の取材などいうことになると、当事者というか診療側のガー ドは極端に堅くなり、全く拒否の姿勢というのが通常です。マスコミのほうできちんと 本人に確認する必要は逆にあるのですが、そこのところでもう少し何か考えようがない のかというところは、是非、配慮していただきたいと思います。 ○樋口座長  先ほど大道委員からも医療安全のところへの情報提供ということで、できる限り患者 の方の理解を得た上で、本当は同意を得て提供するのがいちばんいいけれども、それが できない場合に、その情報は医療安全のために本当に使えないのだろうかという問題の 指摘があり、それは何らかの形で対応することを工夫するという話がありました。  マスコミという言葉がいいかどうかわかりませんが、メディアで医療事故を広く知ら せるというのも、医療安全を高める1つの方策であり連続した話ではあります。そうす ると、ここでマスコミのほうだけこういう形でというのも、何か非常にバランスを欠く ように思います。その2つでバランスを取るのがいいのかどうかはあると思いますが、 先ほど事務局の方が、原則としてというところを強調するのであればもう少し踏み込ん で、本人または家族等の同意を得るよう努めるものとするという話で、同意を得ないと いけないというニュアンスにするのはどうなのでしょうか。しかも匿名化していますし 、匿名化の意味については今日の会議の当初に議論があったところで、本当に嫌がって いる場合には相当程度の配慮をしないといけないだろうと思います。その辺が微妙な表 現だけれども、もう少し、いま岩渕委員からもご指摘があったように、これを隠れ蓑に して記者会見しないような話が起こり得る疑いが想定されるというか、そういう疑いを 兆すようなことであるのは本意ではないです。 ○松原委員  自賠責の問題をしつこく申し上げて申し訳ありませんが、実際に私どもが医療をして いるときに、例えばこれで助からないかもしれないという患者を診たときに、もし手術 をして、うまく手術ができれば助けられるというときは果敢に努力します。そのような 状態のときに、例えば1本の血管を五分五分で切る可能性もあるし、切らない可能性も ある。切らなければ助けられる。万が一、メスが当たって切れたらそれで出血して終わ りであるという形のときに、先ほどから申していますように、果敢にその方を助けるた めには全力を尽くすわけですが、血管を切ることは過失ですから、過失をすることによ ってその方が亡くなるかもしれない。そういったときの判断の際、私どもにとっては自 然科学ですから100パーセントというのは絶対に無理ですから、賠償責任保険というのは 大事なものです。また患者に対する償いの意味でも大事なわけです。そういったときに この保険が使えなくなるかもしれないことを考えながら、果敢な医療ができるかと言う と、それをすべての医師に求めるのは難しいと思っているわけです。  そういったことから考えると、先ほど宇賀委員からお聞きしたところ、同意を得られ ないというのは、物理的に同意を得られない場合も含まれるし拒絶された場合も含まれ ると言われました。そういうところから理解すると、このガイドラインも先ほど樋口座 長からご指摘いただいたところの第三者への情報提供の例外として、身体、財産に関す るところの例示で、そのようにきちっと表現ができれば非常にありがたいとは思うので す。  例えば第三者提供の例外、つまり22頁のいちばん上の例のところに、医療並びに介護 関係事業者の賠償責任の処理に関して、本人に情報公開を拒絶された場合と具体的に書 いていただいたら、かなり明瞭にその賠償責任についてきちんと連絡して、スムースに 行えるのではないかと思いますが、宇賀委員、いかがですか。 ○宇賀委員  要するに本人に同意を求めたけれども、本人がそれを断わったという場合ですね。 ○松原委員  それは問題ないでしょうか。 ○宇賀委員  それを明示したいということですね。ただ、先ほど神作委員が言われたように、金融 庁のほうが金融機関のガイドラインを作っていますので、それとの整合性についての調 整が必要だと思います。 ○松原委員  そうだと思います。ただ、医療機関側の問題と損害保険会社側の問題はまた別ですの で、もちろん法律上、それが禁止されればできないわけですが、それは損害保険会社の ほうの問題ですから、整合性が取れればそれは可能でしょうか。 ○宇賀委員  金融庁と調整していただいて、そちらのほうでうまく調整が取れれば、例示しておく ことも考えられると思います。 ○松原委員  生命保険と損害保険は少し違って、生命保険のときには100パーセント同意が必要だと 思いますが、損害保険の場合にはこういった難しい例がありますので、十把一絡げにし て全部禁止されてしまうと、保険自体が作動しなくなる面があります。そのあたりをご 検討いただいて、もし可能であれば明示していただければ、医療を実際に担当している 者としては最後まで人の命を助けたいという目的が、いかなる障害もなくできるという 状況が望ましいと思いますので、お願いします。 ○武田委員  いま、松原委員が言われたことは医療機関の保護にもなりますが、患者の立場から考 えても必要なことだと思いますので、是非、松原委員のおっしゃることを実現してくだ さい。 ○樋口座長  誠に申し訳ないのですが時間が限られていますので、できれば今日、このガイドライ ンでいろいろな修正が入っているところだけは、おさらいをしておくところまでいきた いと思います。時間が過ぎていますが先に進みたいと思います。 ○総務課長補佐  黙示の同意という部分について、いかがでしょうか。 ○樋口座長  いまのは、この文脈からははっきり出てきていないのですが、22頁に「本人の同意が 得られていると考えられる場合」というのがあって、ここでは既にずっと説明してあり ますが、利用目的のところでいろいろな形で利用していることを、できるだけわかりや すく理解していただく努力が大事だというお話です。それは院内掲示その他ですが、 詳しい説明書も用意した上で、こういう形で利用していますということを明確に患者に 示すということ。その明確に示す中に、第三者へこういう形で情報提供することがあり ますという部分がありますね。その場合には、それについて今の賠償責任もそういう処 理をすれば同じことになると思いますが、それについて異議が出てこない場合には、黙 示の同意があったという形で整理しています。  しかし、その場合に本当にそれでいいのだろうかという議論があるということです。 だから事前にそういう形であっても、実際に第三者提供するときには、第三者提供する 第三者というのがもっと特定化されているはずですから、それについて改めて同意を取 る。逆に言うと黙示の同意というのが、実際には有効でないことにもなりかねない。だ からもし書くなら、もっとはっきり書くべきです。具体例がいいと思いますが、どうい うのがありますか。  43頁を見ていただくと、「患者の診療に当たり、外部の医師等の意見・助言を求める 場合」とあります。この外部の医師というのは、この表現だけだと絶対わかりません。 だから「樋口医院では松原委員を頼りにしていて、松原委員に意見・助言を求める場合 があります」とはっきり書いておけば、これは黙示の同意であってもはっきりしたもの だということです。これだけだとはっきりしていないので、実際に松原委員か宇賀委員 に聞くときには、この表現では足りないという議論があり得るということです。これは どうだろうかという話ですが、どうですか。 ○松原委員  例えば医療というのはさまざまな疾患を抱えていますので、専門家もさまざまです。 できれば私ども医療を担当する者としては、それについていちばん適切な意見を述べる 方に相談したいと思っています。そうすると、具体的にこの方という表示をすると、さ らに適切な治療法を編み出した方とか、それについて非常に造詣の深い方に対してでき なくなります。できれば少し包括的な形のほうが望ましいと思います。  ただ、これはあくまで医療機関から医療機関に対して問い合わせる場合です。という のは相手の医療機関も刑法によって確実に守秘義務を負っているわけですから、そうい ったことを考慮していただいて、少し広めにしていただいたほうが実際的かと思います 。 ○樋口座長  そうですね。ただ、個人情報保護法自体は第三者提供のところで、相手が守秘義務が かかっている場合は例外とするというのは全然規定にはないので、そうすると今のよう な話に戻って来るのです。  それで外部の医師等の意見・助言を求めるときに、いまの例でいいのかどうかわかり ませんが、実際に患者に同意を求めることは求めたらいいではないかという話はあるの かもしれませんが、求めてその患者が、松原委員には求めていいけれども、宇賀委員は 嫌だということがあるのだろうかという感じもするのです。そうすると、何でわざわざ そんなことを聞いてくるのですかという感じもあって、このような場合にまで、そうい う特定性というのが本当に必要なのだろうかという感じがします。  現実の問題としては、いちばん初めに松原委員とか宇賀委員というふうに特定してお かなければ、これは同意として有効でないのだというのは、何だか空理空論みたいな気 が私にはします。ただ、個人情報保護法の解釈論からすると、そう簡単に黙示の同意論 を広げていくと結局のところは弊害もあり得るわけです。そのあたりのバランスの問題 かと思うので、何度も宇賀委員を頼りしているようでいけないのですが、私の場合は初 めから黙示でなくて明示的に宇賀委員を頼りにしていますと書いてあるようなものです が、宇賀委員、どうですか。 ○宇賀委員  ここで例示されている、外部の医師等の意見・助言を求める場合ですが、ここで医師 という形では特定されている。しかし、誰かというところまでは特定されていないわけ です。そのときに、もちろん個人情報保護という観点からすれば具体化された段階で同 意を取ることが望ましいことは言うまでもありません。ただ、この個人情報保護法も個 人の権利利益の保護だけを唯一の目的としているわけではなくて、個人情報が適正に利 用されて、それがいろいろな社会の利益につながるということも考慮に入れて、それと のバランスを図っているということです。そういう観点から、いま言われたように当初 から個別に特定しておくことが非常に難しく、ある程度包括的に書かざるを得ないとい うこととであれば、私はここのところは外部の医師等の意見・助言を求めることという 形での特定でもいいのではないかと思います。 ○松原委員  余計なことかもしれませんが、例えば肺癌の可能性を我々が考えたとき、肺癌の専門 家にそのフィルムを見てもらいたくて持って行くときに、患者に可能性が5%しかない のに、あなたの疾患は肺癌の可能性がありますから肺癌の専門家に見せますから1週間 お待ちくださいと言うことが、果たして現実問題として患者の利益になるかというと、 そういったことは私は利益にはならないと思いますので、本質的にこの法律の趣旨に基 づいて判断していただかないと、医療現場としては混乱すると思いますので、よろしく お願いします。 ○樋口座長  先に進みます。続けて次の部分について説明を伺います。 ○総務課長補佐  26頁の6以降、36頁まで通して説明します。具体的な修正については32頁の9.「開 示等の求めに応じる手続及び手数料」です。この部分は(1)(2)を追加しています が、32頁の法第29条第2項の3行目です。「個人情報取扱事業者は、本人が容易かつ的 確に開示等の求めをすることができるよう、当該保有個人データの特定に資する情報の 提供その他本人の利便を考慮した適切な措置をとらなければならない。」と書いていま す。  これについて(1)で具体化して書いています。「開示等を行う情報の特定」として3 3頁の上から5行目の部分ですが、「当該本人の保有個人データが多岐にわたる、データ 量が膨大であるなど、全体の開示等が困難又は非効率な場合は、本人の意思を尊重しつ つ、本人に過去の受診の状況、病態の変化等の概要を説明するなど、本人が開示等の求 めを行う情報の範囲を特定できるよう配慮するものとする。」という指摘を書いていま す。  (2)の「代理人による開示等の求め」で、代理人の範囲について記載していますが 、これは34頁と関係していますので34頁のほうに・を2つ追加しています。前回、書い てあったことを拡充していて、「代理人等、開示の求めを行い得る者から開示の求めが あった場合」には、「原則として本人に対して開示を行う旨の説明を行った後に、開示 の求めを行った者に対して開示を行うこと」としています。また2つ目の・ですが「代 理人等からの求めがあった場合で、本人による具体的な意思を確認できないような包括 的な委任に基づくような請求があった場合、もしくは開示等の請求が行われる相当以前 に行われた委任に基づいて請求が行われた場合」などについては、開示を行うにあたっ て本人に対して十分に説明し確認する必要があるという指摘をしています。  35頁ですが【法の規定により遵守すべき事項等】の1つ目の・のいちばん最後の部分 はその他の事項のほうに書いているものと重複していましたので、こちらを削除してい ます。  36頁に、「指針の見直し等」とあります。前回、必要に応じた見直しということで簡 単に書いていましたが「法について国会の附帯決議において、法の全面施行後3年を目 途として施行状況などについて検討を加えて、必要な措置を講ずる」という指摘が書い てあるという趣旨を追加したことと、診療情報の提供等に関する指針の運用状況等も踏 まえながら、見直しを行うという説明を追加しています。  具体的な修正は以上ですが、その他として28頁に「本人からの求めによる保有個人デ ータの開示」に関連してご指摘をいただいています。この内容について紹介しますと、 カルテ等に記載される内容の中には医師等の判断が伴っている項目がある。そういうも のについては患者の個人情報であると同時に医師の個人情報であもるのではないか。そ うであるとすれば患者への開示にあたって、医師の同意を得る必要はあるかという指摘 がありましたので、併せてご議論いただければと思います。 ○樋口座長  重要な点が幾つかあると思いますが、いちばん最後の点は明確にしておきたいと思っ ています。第25条に関係するところですが、このときに伝統的にこういう考え方が根強 く行われてきたというので、ご紹介するということですけれども、医療情報というのは 非常に多岐にわたるもので、言うまでもなくこの場合は患者情報という意味の医療情報 ですから、患者の情報であることは間違いない。しかし、そのうちの一部分は少なくと も医師の判断、その他が入っています。実際に診断した人が誰かというのも医師の名前 などが特定されているわけですから、それは医師の個人情報でもあって、一部分は共有 の情報ではないか。だから情報は誰のものかという議論は私自身は好みませんけれども 、そういう議論が根強くあります。そのときに開示を本人が求めてきたと言っても、共 有の部分については簡単に出すという話にならないのではないかというのが、1つの議 論です。  2つ目には、それのバリエーションだと思いますけれども、その情報の中身として客 観情報と評価に関わるような情報というのがあって、客観的なデータについては、まさ に保有個人データの開示の対象になりますが、評価の部分は必ずしもならないと言える のではないかという議論も根強くあると思います。この点も個人情報保護法の立場から すると、どうなのだろうかという点について、宇賀委員、コメントをお願いします。 ○宇賀委員  例えば患者についての診療録を考えてみますと、客観的な検査をしたデータもありま すが、それに対して医師が行った診断も書かれています。それは座長が言われたように 、全体が患者の個人情報であることは疑いがないところです。つまり個人情報というの は、個人のさまざまな属性とか個人に対する評価とか、そういうものを全部含んでいる わけですから、これは全体が患者の個人情報であることは疑いないところです。  診療録を作成した医師のほうから見ると、まさに医師が診断という行為をしているわ けです。自分の診断をそこに書いているわけですから、それは医師の個人情報とも言え る。そういう面では確かに二面性を持っているということが言えます。そうすると医師 の個人情報としての側面も持っている部分に関して言うと、第三者提供についての本人 同意の問題というのは確かに出てくるのです。ですから、これが特定の法令の根拠なし に誰かが求めてきた場合に、医師が「これは自分の個人情報でもあるから自分の同意が 必要だ」と言うのは、1つの理屈として成り立つのです。  それでは、個人情報保護法に基づいて、例えば患者が自分のカルテ全体について開示 を求めたときにどうなるかということですが、第23条の第三者提供の規定のところで、 本人の同意が要らない場合の例外が、第23条第1項第1号から第4号まで書かれていて 、第1号で法令に基づく場合というのが書いてあるわけです。ここは「他の法令」とは 書いていなくて「法令に基づく場合」と書いてあります。他方で、例えば第25条第3項 を見ると「他の法令」という言葉を使っています。  つまり、第23条第1項第1号の場合には個人情報保護法自身も含んでいるわけです。 個人情報保護法では第25条のところで開示の求めを規定しているわけですから、個人情 報保護法に基づいて患者が開示を求めてくると、これはまさに法令に基づく場合という ことになります。そうすると、その場合に医師の個人情報に当たる部分を出すとしても 、医師の同意は要らないということになるわけです。  これは何も医療情報に限らず、こういう評価について二面性を持つということは教育 情報でもあることです。例えば指導要録などは生徒の評価ですけれども、評価をした教 師から見れば、その教師の個人情報という二面性を持っています。あるいは人事評価に ついて考えてみると、評価された従業者の個人情報であると同時に、評価した者の情報 という二面性を持っています。地方公共団体では個人情報保護条例に基づいて、教育情 報、医療情報、例えば、指導要録、診療録などの開示請求は既にかなり出てきています 。国のほうは行政機関個人情報の全部改正されたものが来年4月に施行されるわけです が、現行のものは医療情報、教育情報の開示請求権を外していますし、いわゆる職員情 報、人事管理情報も外していますので、国のほうでは問題が出てきていませんが、自治 体のほうでは医療情報、教育情報が入っていますから、すでにこれらに対する開示請求 が出てきているわけです。  そういう場合に、確かに評価した者の情報という面があるけれども、診断・評価され た者から開示請求が出てくれば、診断・評価の部分も含めて開示請求の対象になるのは 当然の前提として処理されています。なぜかというと、それはまさに法令上の根拠があ るわけです。そういう請求権を与えているということです。  だから、あと問題になるのはどこかというと、開示請求の対象になるかどうかという 問題ではなくて、今度は不開示情報のところの判断で、例えば第三者の権利利益という ときに、その評価した者の利益を保護する必要があるから不開示情報に当たるかどうか という問題は出てきますが、開示請求の対象には入ってくるのです。  そのことは、第25条の開示の求め、第27条の利用停止等の求め、第26条の訂正等の求 めの規定の仕方を比較しても明らかだと思います。つまり第26条の訂正等の求めのとこ ろは事実に関してということを明確にして、評価は明らかに除いているわけです。です から訂正等の求めの部分については事実だけが対象になって、評価の部分の訂正という のは求められない。そういうふうに、はっきりと事実ということをここは書いているの です。ところが、第25条の開示の求めとか第27条の利用停止等の求めは、そういう書き 方はしていない。そのことの反対解釈からも、第25条の開示等の求めというのは評価の 部分も含めて対象にしていると解されます。 ○樋口座長  屋上屋を架すかもしれませんが、ここにあるのは宇賀委員の個人情報保護法の逐条解 説ということで、32頁のところで、いま宇賀委員は私が2つに分けた問題を1つにまと めて処理してくださいましたが、まず個人に関する情報には個人の属性、行動、個人に 対する評価、その他当該個人と関係するすべての情報が含まれる。評価というのも当然 開示請求になるのだと。これは宇賀委員お1人が少数説をここで書いているわけではな くて、いまのお話だと先例、判例等に裏打ちされ、かつ個人情報保護法の制定過程から も、その点は明らかであるということだと理解してよろしいですね。  かつ情報の中で医師の個人情報に当たる部分も、医療というものから考えると当然あ り得るけれども、その部分について自分が嫌だと言うから開示できないのかというと、 それはまさに第25条あるいは第23条のところとの関係だと思いますが、解釈で医師には 開示の義務が課されている。医療情報ですから、個人情報保護法上は医師のほうにはそ ういうことが言えない。患者のほうには言えるという形で、個人情報保護法はできてい るということです。この点について補足ないし疑問などがありますか。 ○大道委員  診療情報等の提供の先ほどのガイドラインの論議の中でも、実は不開示事由に関連し て、いまの件は多少の議論があったところです。これまで医療界の中で個人情報保護に ついての見方の中で私も申し上げたのですが、専門的な関係学会の議論の過程の中で、 いまのお話ですと診療録と言う以上は、患者たる個人に関する記録総体だから、言って みればすべてが個人情報であるという解釈のもとで、しっかりと捉えるということが必 ずしも徹底していなかったところがあります。だからこそ、医師に関する情報は医師の 個人情報でもあるというので、私はその視点で申し上げなかったのですが、そういう議 論があって、いまもあり得る話だと思って聞いていました。  今回の立法の趣旨がそういうことであるというのは、その後、この検討会が始まって 以降、医療機関における個人情報ですから直接的には診療録、場合によっては広く看護 師あるいはコメディカル等が記載する医療記録に関わる、患者の個人情報保護の中での 開示をどう考えるかといったときに、どうであれ医療における記録というのは、そもそ も適切な医療を行うためにあるのだと、これは理念的にそのとおりだと思います。  かつて医師が備忘録としてメモをしているのだみたいなところもあったということに 、ある種の反省も含めた総括もあるのですが、こういう時代になって明らかに今のよう な捉え直しをするということであれば、徹底させる必要があります。適切な医療を提供 するために記録があるのであれば、まさにそのことを捉えて運用も考えるべきだと思い ます。だからこそ評価的な所見だから開示することには若干問題があるとか、患者の氏 名あるいは明らかな事実の範囲のところは個人情報だからということではなくて、いわ ば一体的な開示というものが、医療の適切な提供のために必要だという趣旨を受ければ 、全部または一部の開示という法文上の表記がありますけれども、こと医療については 一体的な開示ということは、いまの基本の理念を受ければ必要である。ないしはそれが 本来の姿であるということの捉え直しで、ガイトラインは作るべきであろうと思います 。  それでも医療というのはさまざまな側面がありますので、先ほど宇賀委員も指摘され ましたが、そうであるならば非開示の事由の運用を、よほどしっかり考え直す、ないし は捉え直す。運用上も考えていかなければならないというところに、どうも立ち戻って きているのかなと思います。  個人情報保護法では、第三者の利害と当該事業の運用に当たって重大な支障があると きというところがあるので、これは深読みすると医療機関の場合はさまざまな状況が想 定されるのです。診療情報の提供等についてのガイドラインでは、ここのところは患者 の心身に重大な障害がある場合という趣旨の書き込み方で、別に差し換えたわけでもな いのです。素朴に素直に考えて、そういうふうな非開示の事由の組立て方をしたわけで す。したがって申し上げたいことは、医療の理念に照らして、診療録等の医療記録につ いては、基本的な方向としては一体的な開示ということを改めて申し上げたいと思いま す。  その上で、最後に示していただいた実際の開示等の求めに応じる手続及び手数料のと ころで、付け加えられた形でかなり現実的なところがあります。本人の意向等によって 全体を示すことが非効率な場合とか問題がある場合については、本人の意向を尊重しつ つ云々という書き込み方をされて、これが外に出ると、いまの言い方を受ければ逆にこ れは現実にどうしたらいいのですかと、医療機関の場合はなるのです。こういう言い方 をされると、本人の意向を最大限と言っても、患者自身がわからないことが大いにあり 得ます。  本人の意思を尊重しつつ、ある範囲のと言われても、事実と評価とかいう話ではない のですよとなると、極めて現実的に膨大な長い入院期間の数百頁に及ぶカルテを情報提 供するのは大変だから、そこのあたりで少し絞り込むのかみたいに取れるのですが、む しろこのあたりをもう少し具体的に示すのか、あるいは医療機関の主体的な判断に委ね るのか。いずれにしても現場の個々の医療機関から見ると、もう少し現実的なガイドラ インを求めているのではないかという思いで、私は今日の説明を承りました。  申し上げたいことは前半で、後半の今日お示しいただいた、最後の修正的な追加の部 分のところの現実的な運用は、ではどうするのですかという思いで受けとめたことを付 け加えたいと思います。 ○樋口座長  松原委員、どうぞ。 ○松原委員  忘れないうちに瑣末的なことから先に申し上げます。34頁の最後のフレーズのところ です。これは完全に同意が代理権を与えているかどうか非常に不明な場合があるので、 それが包括的なものだと生命保険会社などが代理人を立ててきた場合には非常に難しい 問題があると、私が申し上げたことに対する対応だと思いますが、是非、ここ最後のと ころは、本人への説明に際し、開示の求めを行った者及び開示保有個人データの内容に ついて十分説明し、しかも開示の範囲を確定する必要があると私は思っています。  というのは全部渡すと、この前申し上げたように本人の既往歴から出産歴から、何か ら何まで持って行かれるというのは非常に難しい問題があります。本人が示してほしい のは、例えば生命保険に入ったときの病状とかであると思いますので、是非ここのとこ ろは開示の範囲を確定して文章を入れていただけたらと思います。  宇賀委員に1つ伺いたいのですが、個人情報保護のための個人参加の原則に基づいて 、この開示をすべしというのが、この法律の趣旨ではないかと思いますけれども、その とおりでしょうか。 ○宇賀委員  OECD8原則の中に、個人参加の原則というのが入っています。それがまさに本人 からの開示の求め、訂正の求め、利用停止等の求めです。この第25条、第26条、第27条 というのはそれにまさに対応しますので、おっしゃるとおり、OECDの8原則で言っ ている個人参加の原則に対応する位置づけになります。 ○松原委員  ということは、個人情報というのは大事なものですので、それが間違ったものであっ たり、間違った評価だといろいろなことがあるわけですが、そういったものを自分で見 て、間違っていればそれを修正できる権利と考えたらよろしいですか。 ○宇賀委員  そうですね。第26条では訂正等の求めというのを入れていますので、自分の情報が間 違っているときには、それが評価ではなくて事実であれば、第26条に基づいてその訂正 を求めることができるわけです。 ○松原委員  そうすると、この開示の項目というのは、個人情報保護のための個人参加の原則に基 づいて開示しているわけですね。 ○宇賀委員  はい。 ○松原委員  そうすると私どもが前から申しましたように、実はいま大道委員も言われた非常に難 しい問題も含めて、診療情報というのは簡単な話ではなくてさまざまな問題を含んでい ます。あくまでも前回の診療情報に対するガイドラインというのは、個人が診療を受け て、診療における自己決定権を目的として制定したものです。そうしますと自己決定権 で、その診療が適切かどうかを見て自分で決定するということであれば、本来は個人情 報保護のための開示ではなくて、診療情報の開示に相当するものではないかと思います 。それから考えると、個人情報保護のための個人参加の原則に基づいて開示する場合は 本指針に従って、もし診療における自己決定権を目的とする開示については、やはり診 療情報の開示のガイドラインに従うべきだと思いますが、いかがですか。もしそうなる と開示を請求されたときに、どのような目的かを聞き、それに対して医療機関として適 切に対応したいという考え方があるのですが、いかがですか。 ○宇賀委員  個人情報保護法では、開示の求め、訂正の求め、利用停止等の求めについては、例え ば本人が開示を求めるときに開示の目的は別に問うていないわけです。この法律自身は 、自己情報コントロール権という言葉は使っていませんが、プライバシー概念について は、自己情報コントロール権説が非常に有力な学説です。自分の情報について自分でコ ントロールする権利があるということです。だから他人が持っているものについても開 示を求めて、事実に誤りがあればその訂正を求め、それが違法に収集されたり利用提供 されている場合には利用停止を求めることができる。そういう自己情報コントロール権 の発想でできているわけです。  ですから、この部分はもう既に法律で定まっているわけですから、これはこれとして 認めざるを得ないと思います。本人がどういう目的でそれを求めているかは問わずに、 そういう開示の求めができるわけですから、それに対しては理由を聞いて、こういう理 由だったら駄目ですよとか、こういう理由ならば出しますよということは、個人情報保 護法の体系からは言えないわけです。 ○松原委員  駄目ですよと申し上げているのではなくて、こちらの目的だったらこういうふうに開 示しましょう。もし自己決定権の問題であれば診療情報の開示に関するガイドラインで 行いましょうということです。というのは、実際問題としてこれを行うときに幾つかの 具体的な話をすると問題が出てきます。例えば、精神疾患のある方で自らのコントロー ルが難しい場合、要するに心身喪失に近い状態にある場合、あるいは心身症の方で、そ の病気についてあまり説明すると病状が確実に悪化してしまう方もいるわけです。そう いったことに対して、その方が自分でどんな治療をしたいのかを決定する。あるいは、 それについて知った上で対応したいということであれば、前回作ったガイドラインに従 って、その方にとってのいちばんいい方法を選ぶシステムがあったわけです。  そういったことで対応するのが本来の医療の姿であって、例えばその情報が個人情報 の保護を目的として正しいかどうかについて開示し、それを修正していくものとは少し 種類が違うのではないかと私は思っています。個人情報の開示というのはあくまでも自 己参加の問題であって、診療情報の開示に関しては診療情報の開示に関するガイドライ ンに従って開示していくのが、正しいのではないかと思います。  私は開示しないと申し上げているのではなくて、医療というのはさまざまな問題があ りますので、この法律の趣旨に基づいて開示するべきだと思います。もしその趣旨では なくて、本人が認識していなくても自己決定権のために開示してほしいのであれば、そ れなりに対応するのがあるべき姿ではないかと思います。 ○宇賀委員  例えば本人に個人情報を開示することによって、かえってショックを受けて病状が悪 化してしまうとか、あるいは自暴自棄になってしまうことは当然あり得ますので、その 場合は第25条第1項第1号の不開示情報で不開示にできます。ここは第三者だけでなく て本人というのが入っています。本人の生命、身体、財産、その他の権利利益を害する おそれがある場合には不開示にできることになっています。  したがって、いま言われたようなケース、例えば不治の病であることを本人に開示し てしまうと、医療上かえってマイナスになるという場合には、この第25条第1項第1号 によって不開示にすることはできるようになっているわけです。ですから、この中でも いま言ったような医療の特性を考慮しながら、不開示情報のところで判断していくこと はできます。 ○松原委員  そういったことで対応できるというのは私も理解しています。先生は法学者ですから 法律的な概念でお考えになると思いますけれども、この法の趣旨から考えてガイドライ ンを作っているわけです。このガイドラインが法の趣旨に基づいて開示を規定している わけですが、私はこのガイドラインが示すべきものは、個人の情報を保護するための自 己参加の原則を求めるものであって、あくまでもインフォームド・コンセントを基にし た、診療に対する自己決定権をするための開示ではないのではないかと考えています。  そのひとつの表われとして、開示の第25条第3項のところです。他の方法があってこ の条項に当たらない場合には、個人のデータまたは一部の個人保有データについては同 項の規定を多用せず、他の法令の規定により従うという文章もあります。そういったも のも立法趣旨の表われではないかと思いますが、いかがですか。 ○宇賀委員  第25第3項のところで具体的な例として念頭に置いているのは、例えば自動車安全セ ンターが申請者に対して行う運転経歴証明みたいに、それ自体、独自に法律で開示の制 度ができているものについては、そちらのほうでいきますよという話なのです。ここで 言っている法令には指針は含まれないので、ここで読み込んで、だから別にやるという わけには法律上はいかないのです。 ○松原委員  法令ですから、令のところがどうかという議論があると思います。 ○宇賀委員  法令に指針を読み込むのは無理です。 ○松原委員  法の立法趣旨に従って考えるべきだという、先ほどの私の意見はいかがですか。 ○宇賀委員  この法律は、まさにインフォームド・コンセントのためにも使い得るわけです。おそ らく医師と患者との間で、医師のほうが十分にインフォームド・コンセントの理念に従 って情報を出していれば、この法律の開示の求めの規定が使われるということは私はな いと思います。それがなされていないと、それではもうこれを使うしかないということ で、こちらのほうに来るということです。ですから私は決して矛盾する関係とは捉えて いなくて、本来、医師と患者との関係は信頼関係のもとで医師も十分に情報を提供して インフォームド・コンセントを得てやっていくのが望ましい姿だと思います。それが行 われている限りは、個人情報保護法の開示の求めは使われてこないと私は思います。  通常は、何もこういう法律に基づく開示の求めなどせずに、信頼関係のもとで情報の 提供がされていくと思います。ただ、インフォームド・コンセントに基づく医療が患者 の側から見てうまくいかないときに、最後に頼るのがこれだということです。通常はま さに松原委員の言われるように、診療情報の提供等に関するガイドラインに従った形で 対応されていくと思います。開示の求めは、それでうまくいかなくなったときに、最後 に出てくる伝家の宝刀みたいな形で使われるのだろうと思います。 ○松原委員  そうすると原則としては、診療を行う上では診療情報の開示のガイドラインに従って いれば、よろしいわけですね。 ○宇賀委員  通常はそれで問題ないと思います。 ○松原委員  それで自分の自己決定権が不十分でない。かつ自分のデータの正誤について調べたい というときに、これが使われるということですか。 ○宇賀委員  はい。 ○辻本委員  33頁の上の部分ですが、下線の引いてある(2)の上のところです。本人の意思を尊 重しつつ、本人に過去の受診の状況云々、範囲を特定できるよう配慮するとあります。 尊重しつつとか配慮するということが非常に曖昧というか、どうにでも取れます。いま 、宇賀委員が言われたように伝家の宝刀というか、やはり何か不信感があったという方 の請求ということも十分あり得ます。そのときに医療者側がその範囲を特定し配慮して 、「患者さん、あなたのためですよ」となると、この部分は何か突然、パターナリズム 医療というのが復活していような読み方も、患者の立場としては読み取れるわけです。 いまからそこを議論する時間はないと思いますので、文言の有り様をもう一度ご検討い ただきたいということを、お願いしたいと思います。 ○樋口座長  ただ、私が申し上げるのも何ですが、ここの部分は前回までで非常に膨大なカルテと いうので、しかも閲覧だけでなくコピーとかいうと、本当に何十万円もかかるような事 態をポンと投げ出して、これで開示したのですよというので、本当にそれはいいのだろ うかという話なのです。だから方向性としては単なるパターナリズムということではな いと理解しています。 ○辻本委員  そこにもし、ここは見せたくないなという医療側の思いなどが見え隠れしていたとき に、医療側に裁量権が委ねられる形になってしまうと、いちばん肝心なところが見られ ないということがなくはない。あってはいけないのですが、そういうことも患者の立場 としては懸念します。 ○大道委員  いまの松原委員、辻本委員とも関係するのですが、私の理解では診療情報の提供等に 関する指針という先ほどの指針については、28〜29頁にかけて開示の例外という規定が あって、事例1、事例2でしっかり書き込んである。これは当初から診療情報の提供等 に関する指針を、それなりに反映させた表現で書き込まれてあって、松原委員がご指摘 の、こういう場合は先の診療情報提供等のガイドラインを使い、そうでない場合という か伝家の宝刀かどうかは別にして、個人情報保護の運用のガイドラインが、ダブルスタ ンダード的に二重に見えるというふうには私は受けとめられないのです。そのまま素直 にこれを読んでいくことで、あの場合はこちらを、別の場合はあれをということではな いような形は取るべきなのかなと思います。  そのときに前々回、相互補完的にみたいなニュアンスのことを申し上げたのですが、 ガイドラインというのはダブルスタンダードはもちろんうまくないわけで、私はこの流 れがそれなりに診療情報提供等のガイドラインを受けとめて、整合は取れるような努力 でこのようになったと受けとめています。  その上で、辻本委員が指摘の部分の表現がちょっと冗長というか、いろいろご配慮が あったのかなという気はするのですけれども、むしろここの部分で医師が患者のために とか、医療者と医療を受ける者との間の信頼関係確保のためにということの思いは受け とめられるのですが、こういう時代ですので、ここのところのある種の調整が必要なの かなと思います。このままパブリックコメントに出したときに、ここのところは医療機 関側からも、場合によっては医療を受ける立場の方からも、かなり意見が集中するので はないかと、逆に危惧します。  松原委員は先ほど、開示する個人情報の範囲を限定するとは言われなかったけれど、 ある程度はっきり明確にしたいと言われたのは、私も当初は法の趣旨を十分に受けとめ ていないままに、評価的な部分と事実の部分を分けていくことになるのかなと思い、そ うであるならばそういう対応をしなければと申し上げたのですが、それがなかなか立法 の趣旨からも、医療の現場の運用からも、そう幾つかに分けられるものではないとする ならば、基本的には一体的だけれども、しかし実務運用上の問題としてこうであるのだ ったら、限定するとかでなく基本的には全部見せるのです。ただし、さまざまな状況の 中から現実の手続論として、こういうこともあるというスタンスで書き加えるというか 、そういう趣旨で記載していただくことを、私個人の意見として申し上げたいと思いま す。 ○樋口座長  私も一言申し上げます。先ほどの問題は重要な問題かと考えていて、宇賀委員からも 説明がありました。いまの大道委員の意見に乗っかって言えば、2つの指針があってダ ブルスタンダードというのは困る。それは当たり前のことだと思います。さらにその上 に個人情報保護法というのがあって、その下でのガイドラインにならざるを得ない。い ちばん上に法律がありますから。例えば第25条で開示という義務が定めてあるときに、 ある部分についてはその目的等何らかの区別をして、第25条の適用にならないような部 分の開示があって、あとの原則としての部分で、医療の場面の主たるところでは第25条 は適用になりませんよということはガイドラインではとても書けない。第25条を含めた ところの個人情報保護法の下でのガイドラインだということだけは、当然ですが確認せ ざるを得ないと私も考えています。  その他の部分も含めて最後までの部分ですが、他にご注意、ご意見がありますか。 ○宇賀委員  26頁の法の規定により遵守すべき事項等のところ2行目です。そこに法第18条という のが出てきて、いちばん最後の行にも出てきます。ここは厳格に第18条第4項第1号か ら第3号というふうにしていただきたいと思います。第18条第4項の中でも第4号は除 かれていませんので。 ○樋口座長  第1号から第3号と、はっきり明示するべきだというご指摘です。相当時間も押して いますが、その他に全体としてでも結構です。 ○大道委員  高橋委員が指摘されたことですが、例えば22頁のところで医療安全に関連した情報は 先ほど申し上げたとおりですけれども、立法過程の中で公衆衛生の向上という枠組みの 中に位置づけられることが、どうもしっくりこないのです。ここの趣旨は法理論的には 解釈できるのかなと思っていますが、例えばいまの22頁の上の(3)のところは、ほかに1 ヵ所ないし2ヵ所出てきますけれども、この捉え方が「医療安全の向上のため」以下云 々の中で、氏名等の情報が含まれる場合というのは匿名にされていなくても、例外とし ていいですよという趣旨なのでしょうけれども、こと公衆衛生の向上という観点から言 うと、個人情報として受けとめなくても活用はできる。氏名などなくてもいいのです。 場合によっては年齢もぼかしたいと言うのだったら、場合によったら年齢は「10歳代」 とか「20歳代」でも、それなりに活用はできるのです。  公衆衛生の向上ということの趣旨ですが、一般的に医療安全について言えば、事故の 防止に直接的に役に立つということなのですが、先ほど座長も言われたように、医療事 故と一言で言っても医療者、特に臨床家たる医師は医療事故についての定義や範囲につ いて、いまものすごくセンシティブです。私がやったことは医療事故と思わないと言う と、それなりに一理はあるけれども、患者から見るとこれは医療事故だと、このせめぎ 合いが相変わらず続いている中で、この趣旨はどうも公衆衛生の向上というよりは、こ ういう医療事故が現実に起こっているのだということを社会、もう少しはっきり言うと 国、もっと言うと行政がはっきりさせたいという趣旨の中で、だから法に基づいて結果 的には報告なのだと、公衆衛生の向上というよりは事実の把握ないしは報告ということ で捉えたいという趣旨が、どうもあるやに受けとめられます。  私は患者側から見てきた立場でもあるし、医療機関の実情を知る者として、公衆衛生 の向上という枠組みの中で医療安全という問題が捉えられて、これは介護もそうだと思 いますが、かなり違和感があります。もし医療事故ないしは医療安全上の状況を事実と しての把握をしたいと言う場合と、それを医療安全の向上のために資するような調査と して、ないしは経験共有だとか情報共有で行う場合とでは、ある種の配慮はいただいた ほうがいいのではないか。  医療機関にとってみると、先ほども出ましたけれども、患者の意向だから、プライバ シーの問題ないしは知られたくないということで、これについては報告してほしくない ということを逆手に取って、あえて報告しないということも正直あり得るのですが、そ こだけを捉えてこういう流れで書き込まれると、医療機関にしてみると非常に不本意で 、本来の医療を本当の意味で向上させたいという思いが、ちょっと歪曲化されてしまう おそれも無きにしも非ずというところを感じます。  あまり細かいことをあれこれ申し上げることは、これ以上は避けますけれども、例え ば22頁の(3)の公衆衆衛生云々のところの扱いについて、ガイドラインですからあまり具 体的にあれこれ申し上げるのはやめますが、いま言った趣旨での受けとめ方をしていた だければ大変ありがたいと思っています。 ○寺野委員  ついでのことで22頁ですが、先ほど事務方から指摘されたことで黙示の同意という部 分です。これは非常に重要な部分だけれども、いままでどれだけディスカッションされ たのか、ちょっと私も把握していないのですが、これを読んでいくと今まで議論してき たことが何なのだろうというぐらいのことになってしまうのです。原則と例外が逆転し ているようなところがあって、ここへこれだけの表示をしておけば、もういいんだよと いうことになってきて、23頁の(イ)のところで実際に意思表示を行わない場合には、 患者の同意が得られたものとすることとなってくると、これはよほど理解できる人でな いと駄目なのです。この辺は、この法全体を本当に有効にするのかどうかのポイントに はなるので、もうちょっと聞く機会があったら、突っ込んでおいたほうがいいのかなと 思います。なぜかというと、あまり下線の文章がないから議論がなかったのかなと私は 思ったのですが、私が欠席したときに議論があったのかもしれません。 ○樋口座長  ご指摘のとおりだと思いますが、ただ、医療情報については他の重要情報、信用情報 その他のものと比べてすら、適正な利用というのが相当範囲あって、全うな利用を阻害 する話というのがどうなのだろうかというのがある。ただ、その全うな利用として本当 にどんな利用がなされているのかというのは、国民の皆さんが本当にわかっているかと いうと、そうでもない場合がある。だから、この機会に医療の有り様としてちゃんとや っているというところを明確化し透明化して、こうやって公表し、できるだけ具体的に 並べていく。その具体的というのが先ほどの外部の医師への意見照会みたいなことで、 外部の医師ということだけでも相当具体化していると思いますが、それで足りないとい う議論もあり得るので、先ほどご意見を頂戴したところでもあるのです。  だから、原則と例外が逆転しているではないかと思われるような部分も、確かにある と思いますが、その例外を一つひとつ見ていくと、これはそもそも適正な利用なのでは ないかということを並べているのではないかと思っているのですが、ただ、一つひとつ についてこれはそうでないよということがあれば、さらにご意見をいただいて改めるこ とにしたいと思います。ともかくご指摘のように原則論は寺野委員が言われるとおりだ と思います。ただ、医療のところは少し特殊な考慮がそこは必要なのかなと私は個人的 に思っているわけです。ほかには、いかがですか。 ○松原委員  先ほどの問題に戻って申し訳ないのですが、私どもは患者との人間関係を保って良い 医療をしたいと思っているわけです。そこで先ほどの話に戻りますけれども、インフォ ームド・コンセントの概念に基づいて、自己決定権のための開示であれば、原則として は私は診療情報のガイドラインに従いたいと思います。ただ、原則ですので、それで問 題があれば開示請求権を使っていただいて開示していただくのは、人の権利ですので全 然問題ないと思いますが、その他の項目のところに是非、それを目的としている場合に は、診療情報の開示のガイドラインを使うという1文を入れてくださればと思います。 実際に医療をやっている者にしてみたら、とにかく患者のためを思ってやっているわけ ですから、最初から何か訳のわからないというか、訳のわからないというのは、担当し ている医師にとって別の次元の話がドンと下りてくると皆さんびっくりしますので、原 則としては、患者がそういった人間関係を保つために開示を求めておられるのであれば 、診療情報の開示もガイドラインを使っていただきたいと思います。そういったことを 、その他の項目に記入することも難しいでしょうか。 ○宇賀委員  先ほど申し上げたとおり、診療情報の提供等に関するガイドラインに従ってインフォ ームド・コンセントしていただくというのは非常に望ましいことです。それはそれでや っていただく必要があります。ただ、ここでは患者が個人情報保護法に基づく開示の求 めをしたいのだと言ってきたときの話が書いてあるわけです。  その開示の求めはどういう目的かということは、そもそも問わないわけです。結局、 インフォームド・コンセントについて患者本人が、それが十分なされていないのではな いかと思ったときに使われることになると思いますけれども、別にそういう場合にしか 使ってはいけないと限っているわけではありませんので、原則として開示は診療情報の 提供等に関するガイドラインで行うということまで書くのは、少しどうかなと思います 。 ○松原委員  原則を除いて、そういったことについて診療情報提供を求めるときは診療情報のガイ ドラインに従うというような1文をその他の項目に入れてくださると、実際に医療をし ている者から見れば、とりあえずそちらで話をすればいいとなる。患者が求めているも のが要するに自己決定権であれば、そちらをまずお話させていただくということになる と思います。それで十分に満足いただけなければ、データの適否について開示請求が行 われるのは仕方のないことだと思いますが、実際に医療をやっている人間の立場から見 れば、最初から何か問題があるみたいな形で来られると非常に辛い面があるのは事実で す。  せっかく作ったガイドラインで、非常に効率よく効果的に機能しているわけですから 、そういったものをインフォームド・コンセントについては、まず使っていただきたい と思います。ただ、先ほど申し上げたように、個人情報の保護についての自己参加権に ついては100パーセント、こちらでされたら問題ないと思います。 ○宇賀委員  実際に自治体の例を見ても、教育情報とか医療情報について個人情報保護条例に基づ いて開示請求が出てくるのは、よくよくの場合なのです。信頼関係が崩れて最後の手段 として使われていますので、本当によくよくの場合です。実際に個人情報保護法の開示 の求めが使われるのも、基本的にはそういう場合なのだろうなと思います。  ただ、別にこの法律自身は、そういう場合しか使ってはいけないと言っているわけで はなくて、いつでもできるわけです。ですから、インフォームド・コンセントをしっか りやって、それが崩れた場合に最後に出てくるということに、実態としてはなると思い ますが、法律上は別にそういう場合に限定しているわけではありませんから、医師がよ く説明していても患者が開示の求めをしたいと言ってくれば、それに応じざるを得ない 。  あとは不開示情報に当たるかどうかの判断になります。そこはインフォームド・コン セントをしっかりやって、それがどうしてもうまくいかなかった場合に、初めて個人情 報保護法に移行するというような形で書いてしまうと、ちょっと法の趣旨に抵触します 。おそらく、そういうことをおっしゃっているのではないのだと思いますが、そういう ふうに取られかねないような表現は、ちょっと法律の趣旨からしてできません。実態と しては、おそらくインフォームド・コンセントをしっかりやっている限りは、こういう 問題に移行してこないと思います。 ○松原委員  私どもは一生懸命患者にいろいろなことを説明して、わかっていただいて、対等の立 場でその患者の診療の決定を助ける方向で治療をしているわけです。実際のところ、そ ういったことをやっているわけですが、そういったときに今までの診療情報の開示のガ イドラインというのは、まさにそれをサポートするものであって、ある意味では患者に 対しての説明の1つの拠り所であったわけです。  それに対して法令がポンとできて、このままでということになって、逆に言えば前の は要らないという話になると非常に当惑するというか、現実問題として困ってしまうの ではないかと思うので、先ほど申しましたように法の趣旨に従って対応していただき、 インフォームド・コンセントが十分でないと判断されれば、当然、この法律があるわけ ですから、開示請求権を使っていただいたらいいと思います。その辺は実際の医療現場 に即して対応していただけたら、私は診療情報の開示に対するガイドラインで十分説明 できると思います。医師がきちんと説明申し上げれば、それはそれで十分な機能を果た すのではないかと思いますので、そのあたりのご配慮をいただけたらということを主張 しているわけです。 ○宇賀委員  診療情報の提供等に関するガイドラインに従ってしっかりとインフォームド・コンセ ントをやるべきであり、それをやることが、本人がわざわざ開示の求めをする必要をな くしていくことになるのだと思います。だから、インフォームド・コンセントはガイド ラインに従って積極的にやるべきだと書くのは構わないと思います。 ○松原委員  わかりました。 ○樋口座長  時間も相当経過していますので今日はこのぐらいとして、一応、最後までおさらいは できたということだと思います。ただ、幾つか重要な宿題があって、その宿題の中には 他省庁との調整などもあるので、それが簡単にできるものかどうかというのも、あるよ うに思います。それで私の理解では、次回は10月6日を予定していたかと思います。6 日までに特に他省庁云々という話になると、どうなのだろうかというのもあって、そう いうことも含めて今後のスケジュール等について、事務局から説明を伺いたいと思いま す。次回も今回伺ったいろいろなご意見を反映させて、再度何らかの形で修正をしたも ので、もう1回議論していただくことになろうかと思います。今日、十分に言い尽くし ていないご意見もあるでしょうから、それはまた事務局宛にご連絡をいただきたいとい うことです。その上で今後のスケジュール等について、事務局からお願いします。 ○総務課長補佐  長い時間にわたり貴重なご意見、ありがとうございました。ただいま座長からもござ いましたとおり、本日の資料2のガイドライン案について、さらにご意見がありました ら来週の火曜日、10月5日ぐらいを目処にメールなりファクシミリなり、どんな形でも 結構ですから私ども事務局宛に送っていただければと思います。次回の会議においては 、そのご指摘までを踏まえた本日の案の改訂案をお出しして、また関係省庁との調整の 状況についても、併せてご報告できる形にしておきたいと思います。  また今後の日程については、来週の予定についてこのような状況ですので一度白紙に 戻して、本日、お手元に日程調整表をお配りしていますので、改めて日程の調整をさせ ていただこうと思います。これについては本日ご記入いただいて机の上に残しておいて いただくか、もしくは今週中にファクシミリで送り返していただくようにお願いします 。 ○樋口座長  本日はこれで閉会します。本当に長い時間にわたって恐縮でしたが、委員の皆様方、 ありがとうございました。                 照会先  医政局総務課                 担当者  濱田・安川                 連絡先  (代表)03-5253-1111 (内線)2522