04/09/30 第21回社会保障審議会児童部会                社会保障審議会児童部会                  第21回議事録              厚生労働省雇用均等・児童家庭局            第21回社会保障審議会児童部会 議事次第                  日時:平成16年9月30日(木) 16:58 〜18:59                  場所:霞が関東京會舘 1.開会 2.少年非行法制の見直しについて 3.児童虐待死亡事例等の検証等について 4.三位一体改革について 5.その他 6.閉会 ○岩男部会長  それでは、まだ1分ぐらい前かもしれませんけれども、前田委員からは30分程度遅れ るという御連絡をいただいているそうでございます。渡辺委員はおっつけお見えになる と思いますので、ただいまから、第21回「社会保障審議会児童部会」を開催させていた だきます。本日は、大変御多忙の中お集まりいただきましてありがとうございました。  まず、本日の出席状況について事務局から御報告をお願いいたします。 ○高井総務課長  本日は、服部委員、松原委員、無藤委員、山崎委員が所用により御欠席と伺っており ます。  今、部会長お話しのように、前田委員は遅れるというふうに聞いております。渡辺委 員は来られるように存じております。  以上です。 ○岩男部会長  それでは、議事に移りたいと思います。  本日はまず、「2.少年非行法制の見直しについて」を議題とさせていただきます。  本日は大変お忙しい中、法務省より、本件御担当の瀬戸刑事局刑事法制企画官にお越 しをいただいておりますので、瀬戸さんから法制審議会への諮問の内容や今後のスケジ ュール等について御説明をいただき、その後、関連の資料について事務局から御説明を いただきたいと思います。  どうぞよろしくお願いをいたします。 ○瀬戸法務省企画官  御紹介いただきました、法務省刑事局の瀬戸と申します。  配布資料の中、2枚目の裏になりますでしょうか。横書きですけれども、「諮問第72 号」という書面が3ページにわたってあるかと存じます。原文は縦書きでございます が、ホームページに掲載しているものが横書きでありますので、その横書きが皆様のお 手元にはあると思います。  法制審議会が今月、9月8日開催されまして、その中で法務大臣より法制審議会に対 して諮問を行ったというものでございます。  内容についてはここに書いてあるとおりですが、若干、この審議会でも関係するよう なところを中心に御説明したいと思います。  まず、「第一 触法少年及びぐ犯少年に係る事件の調査」というところでございま す。  触法少年というのは、犯罪に当たる行為を行ったものの、当該行為を行った者が14歳 未満であるということで、犯罪には問われない、犯罪の責任は負わないというものでご ざいます。  ぐ犯少年と申しますのは、一定の事由がある者で、将来、犯罪を犯すおそれがあると いうふうに認められる者をぐ犯少年と申します。  14歳以上で刑罰法令に触れた者につきましては、犯罪少年と言われまして、刑事訴訟 法の手続に基づいて捜査というものが行われます。しかしながら、触法少年及びぐ犯少 年について事案の解明のための手続規定というものは、明確なものはございませんでし た。  しかしながら、このような非行少年についてどう対応していくのかということを考え るときに、何を行ったかということをまず知ることが重要であろうということから、こ の調査手続を整備しようということになったものでございます。  第一の一及び二で、その具体的な調査権限を置いております。これは、いわゆる任意 の調査が行えるという内容のものでございまして、その中でも特に明文で置くものを第 一の三及び四で記載しております。  そして、第一の五でございますが、これは触法少年の事件、つまり、社会現象として は犯罪でありながら、少年が14歳未満であるという理由で犯罪とはならないものについ ては、対物強制処分である、捜索、押収、検証等、をすることができるというものでご ざいます。  次に六でございますが、これは警察官から児童相談所長に対する事件の送致というも のでございます。  御承知のとおり、現在、児童福祉法第25条によりますと、警察官は一般人と同じ立場 ではありますが、要保護児童を発見した場合には児童相談所に通告するという制度がご ざいます。しかしながら、非行少年の中には要保護性があるということで通告される少 年もおりますし、親がしっかりしているなどの理由で通告に至らないという少年もおり ます。  しかしながら、一定の重大な事件を犯した者、あるいは家庭裁判所の審判に付した方 がいいような少年については、要保護児童でない場合であっても、あるいは要保護児童 であってももちろんよいわけですが、警察から児童相談所に送致という形で、書類とと もに事件を児童相談所に係属させるという制度でございます。  具体的には、六の1のイというところに、「少年の行為が少年法第二十二条の二第一 項に掲げる罪に係る刑罰法令に触れるものである」とあるのは、いわゆる重大事件と呼 ばれるようなものでございまして、重大事件を犯したような少年については警察から児 童相談所に事件を送致して、児童相談所において措置を考えていただこうというもので ございます。  ロでございますが、それ以外の事件につきましても、警察が調査をした結果、家庭裁 判所の審判に付した方がいいのではないかと考えるに至ったものについては、やはり同 じように送致という形で、児童相談所に事件を送るということを規定しております。  次に、第一の七でございますが、これは現在、児童相談所に児童の案件が係属してい るときにどのような措置を採るかというのは、児童相談所、または都道府県知事の裁量 によるわけですけれども、ここでは六の1のイの送致に係る少年、つまり、重大事件を 起こしたような少年については、原則として家庭裁判所の審判に付すということを規定 しております。  その趣旨は、重大事件を起こしたような場合には、本人の要保護性も通常は高いであ ろうということも考えられますし、事案が重大でありますから、事案解明、家庭裁判所 においてきっちり事実認定をしてもらうという要請も高いであろうということで、この ような類型の犯罪に当たる行為を行った少年については、原則として都道府県知事、ま たは児童相談所長は家庭裁判所に送致するということとしております。  ただし、例えば事案が明らかであって、あえて家庭裁判所で審判をする必要はないで あろうと、それから、実際、当該行為を行った少年が8歳であるとか、あるいは10歳で あって、あえて家庭裁判所に事件を送らなくても、当然ながら、これは児童福祉法上の 措置で足りるようなものであると、こういうようなものもおるわけでありますから、そ のような場合には、このような手続は煩さにすぎるわけですので、児童相談所の判断に おいて家庭裁判所に送らないということを認めるというものが七の全体像でございま す。  以上が、第一の調査に関する概要でございます。  次に、第二でございますが、現在、少年院というものを法務省が所管しております が、少年院に収容できる年齢は少年院法という法律で14歳以上の少年に限定されており ます。しかしながら、実際の社会での事件を見ておりますと、14歳未満の少年であって も、場合によっては児童自立支援施設等ではなくて、少年院において早期に矯正教育を 施した方がよいのではないかと、そういうような児童もいるのではないかと言われてい るところでございます。  したがいまして、少なくとも選択肢として、家庭裁判所に係属した場合に児童自立支 援施設に入れる方がよいのか、少年院に入れる方がよいのか、そういう選択肢を増やし ておいてよいのではないかということから、「第二 十四歳未満の少年の保護処分の見 直し」ということを考えております。  具体的には、前後いたしますが、第二の二というところで、現在、少年院法に書いて あります被収容者年齢の下限を削除すると。つまり、理論的には年齢制限がなくなるわ けですが、第二の一といたしまして、家庭裁判所は、14歳に満たない少年については、 特に必要と認める場合に限り、少年院送致の保護処分ができるということで、これは例 外的な措置なのであるということを明示することを考えております。  続きまして、第三でございます。こちらはどちらかというと法務省プロパーの話にな るのかもしれませんが、「一 保護観察中の者に対する措置」でございます。  単純化して申しますと、保護観察を受けている少年については遵守事項というのが定 められておりますが、少年の中には遵守事項を守らない者もおります。そこで、遵守事 項の守れない者に対しては保護観察所の長がまず警告を発する。警告を発したにもかか わらず、遵守事項を守らない場合には、保護観察所の長が家庭裁判所に処分の変更申請 を行う。そして、家庭裁判所は、その申請を受けたときに、その遵守事項違反が重大で あるかどうか、そして、そもそも保護観察ではもう対応し切れていないかどうかを判断 し、そのような場合に当たると考えた場合には児童自立支援施設送致、または少年院送 致という施設内処遇に移行する決定をするというのが第三の一の概要でございます。  第三の二でございますが、これは少年の非行の原因の中に、親に対して働きかけが十 分でない、あるいは親の自覚が足りないということも言われているところでございます ので、今回、少年院の長、または保護観察所の長がこれら少年の保護者に対してあらゆ る面での働きかけができるようにしようと。それを明文で規定しようというものでござ います。  非常に簡単でございますが、以上が今回行った諮問の内容でございます。  今後、この諮問につきましては、法制審議会の少年法部会というところで来月から審 議を始め、もし可能であれば、来年の通常国会にでも、この内容、あるいは答申を経た 上で法制化をしようと考えているところでございます。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。 ○山田家庭福祉課長  それでは、厚生労働省の方から、関連の資料について若干、補足で説明をさせていた だきます。  その次のページにございます「関連条文(抜粋)」、これはごらんいただければと思 いますし、次のページの「青少年育成施策大綱(抄)」、この中に、今ほど御説明のあ った方向性が昨年12月青少年育成推進本部決定ということで書かれている部分があると いうことでございます。  その次のページの「触法少年・虞犯少年(14歳未満)の手続の流れ」につきまして は、今ほど御説明のありましたことをチャートにしたものということでございます。  資料1−2でございますが、先ほど少年院の送致年齢のことが触れられましたので、 児童自立支援施設との対照した資料を付けてございます。  児童自立支援施設につきましては、御案内のように、対象年齢としては18歳未満とい うことで、当然、14歳未満も含まれているということと、設置主体といたしましては、 少年院が国でありますのに対しまして、都道府県・政令市がつくっているものが多いと いうこと。  入所の経路といたしましては、都道府県知事と相談所長の措置によるところがあると いうこと。  入所時の年齢につきましても、14歳、13歳辺りのところが割合としては多いというこ とでございます。  処遇形態、処遇体制でございますけれども、自立支援施設の場合は基本的に開放処遇 という形になっておりまして、ただし、例外的に一部の施設においては強制的な措置が あるということと、それから、処遇の体制といたしまして、最近はかなり減ってきてお りますけれども、夫婦小舎制ということで、家庭的な養護をするというような形で処遇 をされているという形態が多いということ。  処遇の職員といたしましても、先ほどの設置主体との関係でもございますけれども、 少年院が法務教官、国家公務員であるのに対しまして、自立支援施設の場合は、県立施 設の場合は県の吏員であるというところでございます。  資料1−3でございますけれども、児童自立支援施設に入所する対象児童でございま すけれども、これは御案内のように、児童福祉法25条の要保護児童「保護者のない児童 又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童」。要するに、保護者との関 係が非常に大きな要素として入っている要保護児童の中に、児童自立支援施設の対象児 童も含まれているということでございます。  簡単ですが、以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして何か御質問、あ るいは御意見がございましたら、自由に御発言をいただきたいと思います。  津崎委員、お願いします。 ○津崎委員  以前、児童相談所におりました津崎といいます。よろしくお願いします。今の説明で 多少気になるところを幾つか聞かせていただきたいと思います。  1つは、少年院の入所年齢14歳が削除される部分です。多分、裁判官の判断に任され るということになるんだろうと思いますが、年齢の制限、下限がないということは、場 合によっては小学生も当然対象になるということが想定されるわけですが、少年院の基 本的な矯正教育は、今までであれば14歳以上を対象にしているということですから、そ ういう低年齢の児童を受けることによる影響、あるいは、今度は少年院の中での処遇の 工夫であるとか、新たな要素を十分に検討しないと、今の少年院をそのままにして、年 齢だけ下げますというふうにはなりにくい面があるのではないか。  当然、例えば小学生ということを想定すれば、それに相ふさわしいような少年院内部 での工夫と一体化していないと、当初の思いで入れられたとして、入れられた後の中身 が十分、少年にとってふさわしいものになるのかどうなのかというふうなことが気にな るところです。  更には、児童相談所に送られたケースの重大事件については、原則家裁送致。これに ついてもかなり柔軟な形を取っていただいて、相談所の方で、このケースについては大 丈夫だということであれば、そういう措置も可能であるということですから、かなり実 務的な柔軟性を保証していただいているというふうに思うんですが、ただ、原則送って いくということになると、その子どもの扱いです。  御存じのように、児童相談所で扱うとなると、身柄は一時保護所に入るわけです。そ れで家裁にケースを回すということになると、通常は子どもは身柄付き送致をされて、 鑑別所に入るという扱いになってきます。その辺の判断のときに、原則、裁判所に送る んだということになると、通常は一時保護を場合によってはしないで、警察の方に一時 保護委託をした形で、家庭裁判所に回すという扱いをすることが実務ではかなり多いと 思うんです。  重大事件の場合は一時保護所に保護したときに、一時保護所には任意で扱う幼児も含 めた子どもたちが入っています。単に親が病気であるとか、養育上の理由で児童相談所 に預けに来る。そういう子どもと混合処遇になってしまうということの実際上の無理が ありますので、重大事件をした子については、割と一時保護委託で対応することが多い んですが、ただ、これも実務の問題を言いますと、警察に委託をするときに、子どもの 一時保護委託は困るというふうに言われることが結構多いんです。  実は警察に委託すると保護室の方で対応する。それは、子ども用につくっていないと いうふうに言われるんです。大人用であると。そこへ子どもを保護するについては、警 察の各署レベルではそういう設備がない。だから、受けられないということになること が多いと思うんですが、その辺の家裁に送る、そして、その身柄の扱いをどうするかと いうことを考えたときに、身柄の確保の先もきちっとした対応が考えられないといけな いのではないかという部分がちょっと気にはなっているところです。  とりあえず、その点について御意見をお聞かせ願えればありがたいと思います。 ○岩男部会長  お願いします。 ○瀬戸法務省企画官  まず、少年院の態勢なんですけれども、もちろん、まだこれは具体的な法制化をされ ているわけではないですが、少なくとも、これを我々が諮問した際には矯正局とも話を しまして、きちんと受入態勢をつくれるかどうかというのは議論しております。  もちろん、これはどのぐらいの頻度であるのかと。どの程度の数の少年が実際入って くるのかというのは、もちろん、予想はできる話ではないですが、通常はほぼ、本当に 例外的な件数になるであろうと。その場合に、具体的に対応できるようなプログラムは もちろんつくっておくというのが今の矯正局の考え方だと思います。  また、実際それではそのプログラムがきちんとできてきているのかどうかというのを 家庭裁判所が知らなければ、安心して少年院送致というのは送れないわけですけれど も、実際は、家庭裁判所が処理をするに際しては受入先がどのような態勢になっている のかというのは十分に把握できるような形にはなっておりますので、仮に少年院の処分 をしても十分に当該少年院で扱うことが難しいというような場合であれば、むしろそれ は少年院送致がふさわしくないという判断に立って、少年院送致は行われないと。そう いう結論になるのかなと考えてはおります。  それから、2点目の一時保護所の関係は、私の方からでよいのかどうか。 ○山田家庭福祉課長  それでは、ちょっと私の方から。不足があれば補足していただいて。  一時保護委託、あるいは児童相談所の一時保護所で保護をする、どちらかということ になるわけですね。それで、先ほど御説明があったように、ある程度、警察として調査 をするということになれば、家裁に送られる前に、ある一定期間、どこかで児童を保護 するということが必要になるわけですけれども、やはり、基本的に児童相談所がそこで ある程度関与するということは当然必要だというふうに考えておりまして、一時保護の やり方についてはこれからいろいろ、どういうやり方をすればいいのか、そういったこ とを検討しなければならないというふうに考えておりますし、先ほど委員が御指摘され た問題点というのはそのとおりだと思いますので、どういうやり方がいいのか、また、 いろいろとお知恵もいただきながら相談していきたいと思います。 ○岩男部会長  どうぞ。 ○津崎委員  今の点でちょっと補足なんですが、現行法でいくと、警察での委託は24時間が限度に なっています。場合によっては、もう少し処遇について検討したいということになる と、その24時間の縛りがあると、やはり対応が難しいということになります。ただ、今 の警察の保護室を考えれば、余りそこで延長するのは望ましくないということもありま すので、理想論から言いますと、警察の中にもう少し子どもの処遇ということの配慮が できるような保護の場、例えば県単位と政令指定都市単位で、1か所でもいいと思うん ですが、そういう設備を持てないのかと。  そうすると、身柄の扱いが、例えば児童相談所での混合処遇の中で混乱するよりは、 非行の子どもについてのより適切な保護の場を確保しながら、その子についての最善の 処遇を検討するという両方の部分がうまく整理できるのではないかと思っていますの で、その辺のことについても御検討いただければありがたいと思います。 ○岩男部会長  それでは、渡辺委員、それから、網野委員の順番でお願いいたします。 ○渡辺委員  発達途上、特に思春期の子どもたちの虞犯や重大事件というものの現象に対して、医 療側は児童期の精神障害の分野では、例えば行為障害とかいろんな障害の医療的な診断 ということをやるわけですけれども、このようなケースの場合に、どの段階で小児の精 神保健、あるいは精神科医が児童期を扱う、思春期を扱う人たちが入って、その背景 に、例えばうつ状態がないかどうかとか、身近な人の対象喪失がなかったかどうかと か、トラウマ体験がなかったかどうかとか、あるいは最近、私ども児童青年育成精神学 会の中で大変心を痛めておりますけれども、アスペルガーのような偏りのあるお子さん たちの思春期の不安定さというものがないかどうかというのを、どの段階で、どの程度 きちんと、その子の人権というんですか、その子に対してフェアな形でできているの か、そこら辺を伺いたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。 ○瀬戸法務省企画官  まずは、少年法を預かる法務省の方から一言言わせていただきますと、医療の関係で あれば、少なくとも少年法制の中では、最近、具体的事件でありますけれども、少年審 判の段階で精神鑑定等が行われて、その中で当該事件に至った背景、生育暦等が、ある 程度、明らかになるようにされているのではないかと思います。  それから、処遇の場面でいきますと、例えば少年院の中には医療、精神医療等を扱う 医療少年院というものがございまして、そこでは相当専門的な治療を含めた処遇が行わ れておりますので、そういう形で本人の病気を踏まえつつ、適切な対応をしているので はないかと、そのように考えております。 ○渡辺委員  私の経験で、例えばウィルソン病という診断が付いた25歳ぐらいの若者なんですけれ ども、14歳の段階で非行・不良、それから、どんどんどんどんいろんな問題、エスカレ ートしたために、やはり警察で保護されたり、そういう処遇でずっときたんです。です けれども、ある段階からけいれんが出たりして、精神病院にも行ったりしたんですけれ ども、その時点で私が神経内科にいたときに回されて、神経内科の診断をしましたら ば、明らかにウィルソン病だったんです。  ですから、発達する途上の子どもたちに、やはりきちっと身体的、あるいは精神機能 の上でどうかというのを1回、どこかでちゃんと責任を持って誰かが見ると。そこで見 落とすこともあり得るとは思うんですけれども、その人のその時点での所見がきちんと 公的に残って、そして、後で何かあったときに、あの時点では問題がなかったから警察 の方の処遇でよかったということなのか。それとも、そこから学んで、そういったケー スの場合に、ここは医療的な問題は既に見る人が見れば出ていたから、一番大事なこと は、そこから薬を投薬することだったといったことなどを蓄積していきませんと、現代 のこのいろんなストレスの多い時代には、やはり思春期の子どもたちや乳児が一番不適 応を起こして、破壊的な悪循環を引き起こしやすいわけですから、少し、そこら辺は私 は大事な問題ではないかというふうに思います。 ○岩男部会長  それでは、網野委員、お願いします。 ○網野委員  現在、法務省で検討し、それから、法制審議会でこれから本格的に議論するという中 で、今の御説明伺ったいろんな重要なポイントの基礎にあるものとして、刑事責任年齢 ということについては、説明いただいた中でも余り具体的なものははっきりは出てこな かったんですが、この資料1−3で出ています刑法で、やはり41条で「刑事未成年者」 となっているという、この重さです。この刑事責任年齢は14歳以上からあるという、こ の趣旨が、いわゆる子どもが何か、例えば重大事件、殺人とか傷害致死のようなことが 起こったときに、刑事責任年齢である程度区別されてきたということは、少年法と児童 福祉法の中では明らかに過去の歴史の中に、これだけではありませんがあったと思うん です。  今回は、刑事責任年齢については具体的には検討はしないということなのかどうかを 一つ、まずお聞きしたいことなんです。  つまり、諸外国を見ましても、確かに上限でいうと14歳未満というのは決して多くは ないです。むしろ、もうちょっと低い年齢とかの場合もあって、実際に日本でも、この ような非常に世上で関心持たれるような事件が起きて、現実には、この子はもう罪を犯 したのではないか。加害者ではないか。被害者の気持ちをどうするのかとか、そういう 適正手続の面では間違いなく児童福祉法は全く触れないといってもいいぐらいの方針で やっているわけです。  恐らく、少年院へ入院する、14歳未満でも入院することができるというのは必ずしも 刑事責任年齢とはストレートには関連していないでしょうが、やはり適正手続的な部分 も含めて、少年法にしろ、児童福祉法にしろ、この子がやったんだというような部分は 余り表に出ない。むしろ、もっとほかの保護育成とか、それを大事にしていたと思うん ですが、少なくとも初等少年院では、この面で言えば、やはり罪を犯したという気持ち を本人も非常に自覚して、いろいろ矯正されていくという部分があったと思うんです。  その場合、手続上はよくわかるんですが、児童福祉法、具体的に言えば、都道府県知 事や児童相談所長が事実上、これは間違いなく家庭裁判所に送らなくてはいけないとい うケースも形式的には取り扱った上で、結果的に少年院に入院するという子どもが出て くることになりますが、そうしますと、津崎委員の御質問ともまた関連するんですが、 少年院の処遇体系の中で、児童福祉法の趣旨とか方針とか、重要な教護という従来の専 門性を含めて、これはやはり、かなり検討していただく必要があると思いますし、その 点からいいますと、児童自立支援施設の中で、例えば国立児童自立支援施設が14歳未満 の子どもの重大事件に絡む場合に、もう一つの特別児童自立支援施設というのはあるか もしれませんが、何かもう少し、現在の14歳未満の法のシステムで、やはり子どももし っかり罪といいますか、これを自覚する中で加害とか被害のことも含めて、そういうこ とをしっかり受け止めながら教護を受けていくということは恐らく、法制審議会では検 討されないのかなと思いますので、そのような意味では、法制審議会の中で児童自立支 援施設、児童養護施設も含めて、この2つの施設に関してかなり十分議論していただく 方が含まれていることを非常に切に希望したいんです。  質問と意見といいますか、希望を申し上げたいと思います。 ○瀬戸法務省企画官  まず最初に、刑事責任年齢の問題ですけれども、今回は、その見直しというのは入っ ておりません。基本的に、刑事未成年の制度というのは、まさに当該少年に刑罰という 制裁を科すかどうかという基準になるわけですが、それについては今回、それをあえて いじるような状況にはまだないであろうと。前回、少年法改正になったときに、刑事処 罰の可能性という意味では16歳から14歳に下がったわけですけれども、更に、それを 今、下げるとか、そういうことは現在のところ考えてはおりません。  ただ、少年法の理念というのは刑事罰ではなくて、少なくとも改善・更生ということ が少年の健全育成というのがまさに目的なわけですから、その趣旨で刑事未成年である 14歳未満の少年について、少年院での処遇ということは、少なくとも本人の健全育成の ために矛盾するものではないという考えではおります。  それから、児童自立支援施設と少年院の関係でございますが、それぞれ根拠法が異な る中で設置されていますので、基本的な考え方には違いがあるというのは事実だと思い ますけれども、恐らく矯正局としても、今後、より低年齢の少年が収容されてくるよう になれば、今まで以上に当該少年の対応については、あるいは今まで専門に扱ってこら れた児童自立支援施設等のやり方というのも十分参考にするのではないかとは考えてお ります。  それで、もちろん、その辺りの比較に当たるようなものについては、我々もできるだ け厚生労働省さんにいろいろお願いをして、資料の比較等はしているところではござい ますし、また、法制審議会の議論の中では、厚生労働省の方も加わっていただいて、そ の辺り、各委員の方に説明をしていただければというようには考えております。 ○岩男部会長  どうぞ、柏女委員。 ○柏女委員  網野委員の意見と若干、重なるところがあるかもしれませんけれども、私自身は、こ の問題については、児童福祉の基本的な視点でやるべきだという考えは今でも持ってい ます。したがって、例えば少年院に14歳未満のお子さんが入院する。それは、児童福祉 の視点から少年院を利用するという必要があるという場合が当然あり得るだろうという ふうに思いますが、それは児童福祉法第27条の措置で少年院に入院すべきだというふう に私は考えています。  児童福祉法の第27条でも、病院に入院させる措置を取るとかいうような方法はあるわ けですから、そのような形で少年院の処遇を児童の福祉のために使うと。そういう形で やれるのが、私は望ましい考え方ではないかというふうに思っておりますが、そうでは ない考え方を今回は取られるということになりますので、是非、児童福祉の理念という ものが生かされるような形で進んでいくことを願いたいというふうに思っています。是 非、そのことをお願いできれば。  厚労省の方もいろいろ入られるということですので、是非、そうした視点からの御発 言等々をお願いできればというふうに思いますし、また、少年院と、それから、児童自 立支援施設の処遇の在り方の問題についても、議論も更に両省で進めていっていただけ ればと思っています。 ○岩男部会長  まだ御意見がおありかと思いますが、それでは、どうぞ。 ○津崎委員  済みません、時間がないときに。もう一点だけ意見を言わせていただきたいんです が、保護者に対する措置。これは、ある意味では今までなかった措置ですから、非常に 重要な、新たな手だてだというふうに考えています。  特に児童自立支援施設に入っている非行の子どもたちの6割は、実は被虐待児という 調査結果もありまして、子どもたちの非行の前段階に虐待がある。いわゆる、それはま さしく子どもたちの問題ではなくて保護者の問題なんだと。そこを何も手を付けずに、 結果としての子どもだけの矯正というのは非常に不合理ですから、やっとその部分につ いて一定の手だてが取れる形になったということについては、私は一歩前進だというふ うに思っています。  ただ、実際上の問題として、その措置を取るのが少年院の長、あるいは保護観察所の 長というふうになっています。まだ保護観察所の場合は地域でのフィールド活動をやっ ていますから、多少は保護者にも手が届きやすいと思うんですが、少年院の長が保護者 に対して具体的な手だてがとれるのか少し疑問に思います。  私は本来は、この部分はもっと裁判所が調査のプロセスの中で、やはり保護者の生活 の態度であるとか状況に対して問題があるというふうに認めたときに、本来は裁判所が 改善の勧告を出すとか、そういう措置を取るのが望ましいのではないかというふうに思 っているんですが、そういう意味では、この保護者の措置をどういう形で運営していく ことが一番効果を発揮できるのか。  この保護者の指導は、実際上すごく難しい部分です。それに対する効果ということを 今後の措置の中で十分検証していただいて、よりよい保護者の指導の在り方ということ を更に深めていただければというふうに思いますので、その意見を申し述べさせていた だきたいと思います。 ○岩男部会長  どうぞ。 ○瀬戸法務省企画官  申し訳ありません、お忙しいところ。簡単に数点だけ。  まず、矯正施設、少年院がどういうことを具体的にやるかというお話ですが、もちろ ん、これは現在、条文がなくても実際にはやっているものでございますが、例えば保護 者が少年院に面会に行ったときの少年との接し方によって、やはり非常に悪い場合には 少年が悪影響を受けてしまうと。ですから、面会のときの対応というのもかなり少年院 側では気を使っているというのがまず一つあり得る。  それから、少年院にとっても早期に仮退院するというのが一つの目標にはなるわけで すが、そのために環境調整というのが必要になります。ですから、例えば仮退院をした ときに就業先なり、あるいはどこか学校に行けるのであればそういうのを見つけてもら うとか、そういう場合に保護者が来られたときにいろいろ話し合いをするということが 実際としては行われているということでございます。  それから、もう一点、家庭裁判所の役割なのでございますが、家庭裁判所は保護観察 か、もしくは少年院に送致する決定をしたときは、必要があれば保護観察の長に対して 家族その他の環境調整に関する措置を行わせることができるという規定が少年法の24条 にございまして、必要がある場合は家庭裁判所はそのようなことを行っているというの を参考までに申し上げておきます。 ○岩男部会長  ただいま、4人の委員から非常に重要な御指摘がいろいろとございました。この問題 は児童部会としても非常に重要な問題というふうに考えておりますけれども、本日は時 間の関係で、ほかの議題がございますので、議論はこのくらいにさせていただきたいと 思いますけれども、今後の取扱いについて事務局の方でお考えがあれば、それをお話し いただきたいと思います。 ○山田家庭福祉課長  本日、当部会で御議論をいただいているわけですけれども、もう一つ、児童部会の下 に社会的養護の在り方に関する専門委員会、当部会の松原委員が委員長をされておりま すが、そこの委員会も非常にこの問題と関係が深いことを議論するところでございます ので、そこでも御議論をいただいて、当部会での御議論と、専門委員会での御議論を当 部会の部会長、それから、専門委員長と御相談の上で整理したものを法制審議会の少年 法部会に、法務省とも相談をさせていただいた上で、できれば提出をしたいというふう に考えております。 ○岩男部会長  ただいま御説明があったような段取りで進めさせていただければと思いますが、よろ しゅうございますでしょうか。  それでは、そのような形で進めさせていただきたいと思います。  それでは、次に「3.児童虐待死亡事例等の検証等について」を議題といたします。 まず、事務局から御説明をお願いいたします。 ○山本虐待防止対策室長  虐待防止対策室長の山本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  資料2をお開きいただきたいと思います。児童虐待死亡事例等の検証等につきまし て、厚生労働省の今後の取り組みを御説明をさせていただきます。  まず、「1.趣旨」のところでございます。  虐待による死亡事例、児童の死亡という最悪の結果に至る前にこれを防ぐ手だてはな かったか、どのような対応を取るべきであったかを検証していくということは、再発防 止をする上で大変重要でございます。厚生労働省では、今年の1月、岸和田事件が大き く報道された直後に各自治体に対し、「子どもの安全確保の優先」といった基本に立ち 返った取り組みを求める通知を出すとともに、これまでも自治体の方にお願いしており ました事例の検証と改善策の報告をとりまとめ、虐待による死亡事例を検証し、対策を 公表するという初の取り組みを行ってきたわけでございます。しかしながら、この事件 以降も大変不幸な事件は続いており、特に児童相談所という、子どもの生命を守る大変 強い権限を持つ機関が関わりながら未然防止ができなかったという事例も出てきており ます。9月中旬に、栃木県の小山市で児童2名の死亡事件が起きましたが、9月16日に 現地に私どもの職員を派遣して、児童相談所の対応状況等についてヒアリングを行って おり、これとその後の情報をふまえ、現時点の評価といたしましては、1つには今回の 事件の課題は、同居人を含む家族関係等の情報収集が不足しており、アセスメントが不 足していたがために虐待事件であるという判断がされなかった、また、危機レベルの大 きさの判断に隔たりが生じたのではないかという点があるのではないかと考えておりま す。2つ目は、家族による引き取り後のフォロー体制が十分構築されていなかった。地 域の虐待防止ネットワークとうまくつながらなかったというような課題があったという ふうに推察しております。  そうした中で、先の通常国会で児童虐待防止法が改正され、明日から施行されること になっておりますが、その中では、虐待対策は我が国が取り組みを始めてから大変日が 浅く、外国も試行錯誤をしながらやってきたという状況を踏まえて、国・自治体の責務 として、虐待防止のために必要な事項について検証を行うということが明確にされたわ けでございます。  こうした状況を受け、児童虐待による全国の死亡事例について、これまで事務方で行 ってきた検証を様々な専門分野の方々の御意見も聞いた上で、多角的な角度からより客 観的に、透明性を持って検証していくことが必要ではないかと考えているところでござ います。1つの事件を、一自治体の事件ということではなくて、全国の児童福祉関係者 が取り組んでいくべき課題ととらえ、徹底する必要があると考えております。このこと は、運用面の改善を通じて再発防止に役に立つと同時に、制度面の課題を抽出し、将来 的な、必要があれば制度についての検討をしていくことも可能になるのではないかと考 えております。  このため、今後の具体的な取り組みとして3点ほど挙げさせていただいております。  1つは、児童部会の下に「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」を設置 いたしまして、児童虐待による死亡事例の総体的な分析や、児童虐待等の重大事案を取 り上げて検証を行っていただければというふうに思っております。具体的なイメージと いたしましては、本年2月に、死亡事例の相対的な分析を公表したところでございます けれども、それ以降も死亡例が積み上がってきておるわけでございます。おおむねのイ メージとして、年2回程度のペースで新たに情報収集をされたケースも取り上げまし て、その内容を改定していくということを、専門的な視点から御検討いただき評価をし ていただきたいと思っております。個人情報を取り扱う可能性がありますので、審議の 過程は非公開といたしますけれども、検討の成果は個人情報の取扱いに十分配慮した上 で公表するという扱いにしてはどうだろうかと考えております。メンバー表は、次のペ ージの別紙でございますけれども、あらかじめ、岩男部会長と御相談させていただいた 各分野の方々をコアメンバーということで挙げさせていただいております。これらの 方々のほか、事案とか検討の内容に応じまして必要な専門家の方に御参加いただければ というふうに思っております。  2つ目の取り組みでございます。「全国の児童相談所の業務体制等についての実情把 握」でございます。  私ども、全国の自治体から客観的な数字のデータは毎年いただいているわけでござい ますけれども、児童相談所というのは自治体の組織であり、まさに地方自治そのもので ございます。職員の専門性の確保のための取り組みであるとか、どういうローテーショ ンで人を充てるかといったような、児童の分野の人事政策のようなものにつきまして も、紙でというか、数字でいただくわけにもいかないということもありまして、是非、 こうした実情を把握していきたいというふうに思っております。また、業務の方法等に つきましても、各種の原則、マニュアルというものがあるわけでございますけれども、 どのような形で運用されているかということにつきまして、実情を把握するために厚生 労働省職員や、更に可能であれば外部の有識者の方にも御参加をいただきまして、各都 道府県・政令指定都市の児童相談所を少なくとも1か所程度を訪問し、ヒアリングをし ていきたいというふうに思っております。ここで得られたものは、逐次、検証委員会の 方で情報として活用させていただければと思いますし、また、別途制度の在り方という ことで我々が内部で活用するということも考えていきたいと思っております。  最後の3点目でございますが、「要保護事例に対応するための情報収集と評価に関す る指針の作成及び周知」でございます。今までは虐待のリスクアセスメントにつきまし ては各種のマニュアルがあったわけでございますけれども、これは虐待事件であるかど うかというスイッチが押されないと、なかなか活用されないという問題があったかと思 います。そこで、一人ひとりの児童の状況に応じた最適な支援を行うため、児童、家 庭、地域社会の実態を把握し、評価するための基礎的な情報は何かというものについ て、専門家のお知恵もいただきながら、指針を作成し、周知をしていきたいと思ってお ります。  以上、3点の取り組みを今後やっていきたいと考えておりますが、児童部会の下に専 門委員会を設置するという点につきましては、部会の決定事項でございますので、御審 議をお願いできればというふうに思います。  以上でございます。 ○岩男部会長  ただいまの御説明につきまして、御意見・御質問がございましたら、どうぞ御発言を お願いいたします。  まず、この専門委員会の設置について、これを御了承いただけるかどうかをお諮りし たいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。  それでは、そういうことで、是非、委員の先生方、よろしくお願いをしたいと思いま す。  これまでにも非常に不幸な事例が幾つも起こって、そのたびごとに関係者は反省を し、問題点が指摘されというようなことが繰り返されてきたと思うんです。  そこで検証の中に、是非入れて頂きたいことがあります。つまり、問題点が指摘さ れ、こういうふうに改善をということになったにもかかわらず、なぜ、それが生きない のか。現場で、きちんと対応しなければいけないところで、なぜ対応できないのかとい う、そこまでを含めて、検証をしていただければと思います。  それから、この児童相談所の業務体制について実情把握をなさるということなんです けれども、この前の小山市の事件の後でも報道もされていましたけれども、あるいは有 識者のコメントの中で言われていたことかもしれませんけれども、半年前までは税金に 関する業務を担当していた人が児童相談所に行って、虐待の事例を扱っている。これで はどうしてもアンテナの感度が悪くなるわけです。検証をなさっていく、あるいはヒア リングをなさる過程で、どういう前職の方が現在、担当になっておられるのかというよ うなことも調べていただけると、いかに専門性が十分に確保されていないかという、そ この辺りの問題点というのが浮き彫りになり、それに対する具体的な対策が打てるので はないかというふうに思います。  もう一つは、これは法律改正が必要になるのかもしれないんですけれども、小山市の 場合にガソリンスタンドで虐待を受けているのを見ていながらスタンドのスタッフが何 も対応しなかったということが明らかになったわけです。これはアメリカだったら完全 に法律で刑事罰の対象になると思うんです。私は、こんなこと許されるのかと報道を聞 いていて大変残念に思ったわけです。やはり何か基本的に足りない部分があると思うん ですけれども、その辺りのことも、是非、含めて検証していただければと思います。  どうぞ、御意見ございますでしょうから、御発言をお願いしたいと思いますが、よろ しいですか。  どうぞ。 ○前田委員  部会長が言われたので、私もちょっと補足させていただきたいと思ったんですけれど も、今、山本室長から児童相談所はまさに地方自治そのものということで、なかなか実 情把握が難しいとのお話がありましたけれども、是非、児童相談所の実情がどうなって いるかということを見ていただきたいです。  勿論、津崎委員がおられますので、津崎委員が一番御存じだと思うんですけれども、 横浜には、前に申しましたように、4つ目の児童相談所ができます。それから、一時保 護所も、養護施設も、乳児院も満杯です。職員は、横浜の場合は自治体の規模がありま すので、幸いに専門職のケースワーカーは雇えますが、一応、人口当たりの比率はクリ アーしていますが、1人当たり100 〜130 ケースも担当しております。  皆様おわかりのとおり、虐待は発見も重要ですけれども、その後に何十倍ものフォロ ーが要りますので、そういう意味での配置、それから、ケースワーカーの燃え尽き、そ れから、研修や育成にしたくても、とても新人を先輩のケースーワーカーが育てていく 余裕がない。こういうことは、実は児童相談所に関係をしている方たちは多分、何年も 前から御存じだったのではないかと思います。去年から来た身で言わせていただけれ ば、こんな状態がいかに長く放置されていたかということと、やはり高齢者に介護保険 が、障害者も支援費が導入され、抜本的に改善されました。今、財源がないと厚生労働 省も悩んでいらっしゃると思うんですけれども、他の分野がかなり改善した中で、やは り一番遅れている分野だということは確かです。私も何度も、児童相談所の所長とケー スワーカーの育成をどうするか議論するんですが、ケースワーカーをずっと児童相談所 に置いておくことがいいことかどうかということがあるんです。ケースワーカー、いろ んな社会に子どもたちをつないで、家族の再統合もしなければなりませんので、ほかに 社会につなぐどんなルートがあるかということを知ることも必要ですから、ずっと児童 相談所にいることがいいかどうかもよくわからないんです。その一方で、毎日毎日事件 が起こって、目の前のことを処理するのに精一杯で、長期的な布石が打てない。本当に 善意で子どもたちを救おうと思って精一杯やっていますが、今、本当にマンパワー不足 と、ケースがどんどん難しくなっていく中で、個人の善意や能力だけには頼れない。根 本的なシステム改革が必要ではないかと思っております。まさにこれが国の役割で、児 童相談所の現場の人たちは毎日の対応で追われていますので、これから体制をどうする のかとか、育成をどうするのかとか、実は横浜には虹の研修センターという、虐待防止 のための職員の研修センターもつくっていただいたんですけれども、是非、こういうこ とこそ委員の方にやっていただきたいし、特に津崎先生なんかは児童相談所のケースワ ーカーのお気持ちもよくおわかりだと思いますので、是非、どうぞよろしくお願いしま す。 ○岩男部会長  ほかに。  どうぞ、山縣委員。 ○山縣委員  岸和田事件に少し関わった人間として、現行体制では児童相談所を中心とした検討を されるというのはいたし方ないし、是非、やっていただきたいというところなんですけ れども、今、厚生労働省の提案されている児童福祉法の審議中の改正等、やはり、市町 村の体制ということがこれから非常に重視されてくるだろうと。そういう提案になって いるし、この岸和田事件でも、児童相談所と市町村の保健、福祉、教育、担当部局との 信頼関係の崩れといいますか、ちょっと表現はきついんですけれども、十分な信頼関係 が構築されていなかったことがそういう問題につながっていた部分があるというふうに 私は認識をしておりまして、是非、この検討の範囲の中に市町村を幾つか、モデル的な ところなり何なりを視野に入れていただいて、市町村の体制整備ということに関する一 定の見解も示していただけるとありがたいというふうに思っています。お願いです。 ○岩男部会長  よろしゅうございますか。  それでは、これから専門委員会の方で、鋭意、御検討をいただき、また、その御報告 をいただくというようなことで進めていただきたいというふうに思います。  それでは、次の議題に移りたいと思います。  前回の児童部会では、地方6団体から要望のあった三位一体改革について御議論をい ただきました。事務局において、前回の主な議論を整理して資料を作成していただいて おりますので、まず、その内容について御説明をいただきたいと思います。  どうぞよろしくお願いします。 ○高井総務課長  資料3でございますけれども、事務局におきまして、前回出ました三位一体関係の意 見をまとめたものであります。事項ごとにまとめましたので、お一人の方の御意見が幾 つかの○にまたがっていることを御了解いただきたいと思います。  順次、ごらんいただければと思いますけれども、1つ目の○でございますけれども、 「少子化社会対策基本法や次世代育成支援対策推進法が制定されてきた中で、障害者や 高齢者以上に子ども関係の補助金が教育・保育問わず廃止の対象とされているのは理解 できない」という御意見。  「地方の裁量が拡大すること自体はいいが、今の地方の財政難の中では、公私幼保の 再編がマイナスの方向に進む可能性がある。総合施設構想についても、我々が議論して きた『子どもの最善の利益』とは違う方向で使われてしまう懸念がある」。  「地域コミュニティづくりを、ソーシャル・インクルージョンという社会的に排除さ れる人を出さないための地域づくりという発想で、子ども、子育て家庭も含め、新しく デザインすることができないか」という御意見でございます。  それから、次の方の御意見では、「人間の一生ということで考えたとき、本来、トー タルで見るべき人間の一生における健康と安心の保障がライフステージによって分断さ れてしまうことは大きな問題。人間の一生の入り口である子どもが生まれ育っていく時 は地方が負担して、高齢者になったときは、国も負担し、国民すべてが一定の負担をす るという仕組みはおかしい」。  それから、「このような仕組みの下では、子育て支援サービスの熱心な自治体で育っ た子どもたちが成人したときに、子育て支援サービスには熱心でなかった自治体の高齢 者を支えていくことになる。こういう仕組みの中で、自治体に子どもの生まれ育つ環境 作りを積極的に進めていくインセンティブが働くのか疑問」。  「少子化対策を進めるべき大事な時期に、そのインセンティブが働かないような仕組 みにしていくのは疑問。少なくとも、国が財源においても一定の責任を果たす仕組みに するべき」。  「子どもを育てていくための仕組み、財源、サービスの内容、提供方法、利用方法を 抜本的に議論するべき」。  次のページで「地方の負担も都道府県が負担しているものと、市町村が負担している もので分かれている。要保護児童関係は、都道府県のみ負担しており市町村は負担して いないが、そのような仕組みで本当によいのか」。  「子育てに対する社会的な評価の低さや高齢者に偏った社会保障の配分の見直しなど についてアピールしてはどうだろうか、当部会として一定の提言なりを行うなど、社会 に訴えかけていく必要がある」。  次の御意見は、「社会保障給付費の中に占める児童関係分が余りに低いのは問題であ り、こうした点を含め、意見を集約していくことが大事」。  次の御意見でございますが、「子どもたちが生まれた地域の財政力によって基本的、 経済的な生活保障の格差がつくのは問題である。児童手当や小児医療の扱いは、国がし っかりとした基準を作るべき」。  「現実に即した現物給付(サービス)については、現場である自治体の方がよく知っ ている。国の補助金は、基準が細分化され地方の裁量が発揮できなかったり、使い勝手 が悪かったり、補助金の採否が決まらないと計画が進められないなど自治体現場独自の 計画づくりがしにくい。その意味で、一般論としては一般財源化に賛成」。  「自治体では、これまで機会がなかったため、政策を独自に考えていく訓練ができて いない。これからは、そういう訓練を自治体もしていく必要がある」。  「一般財源化を行ったとしても国のやるべきことはある。生活基盤を安定させるため の基準の整備や労働環境の整備などの法整備は国としてますます重要な役割である。国 と自治体それぞれが行うべき役割を議論していくことが必要」。  「少子化は日本の国家的危機である。国を挙げて子どもたちに資源を投入し、子ども たちを守り育てるという姿勢を示すことが必要。もう少し、社会保障の予算を児童福祉 分野に配分できる構造的改革が必要」というものでございます。  なお、昨日、社会保障審議会の総会が開かれました。資料ございませんので、恐縮で ございますけれども、岩男部会長も御出席されておられますけれども、御指示によりま して、昨日も三位一体が議論になりまして、少し御意見を御紹介したいと思いますの で、お聞き取り願いたいと思います。資料なくて恐縮でございます。  三位一体について、地方の独自性を発揮するのは大事だけれども、政府は少子化対策 が目玉と言っている一方で、今回、少子化対策の分野も削除の対象となっている。プラ イオリティーの検討が必要であると。  次の方の御意見は、作業の手順に危機感を覚えると。財政的な数字合わせになってい るのではないか。また、福祉の分野が切り捨てられないか。少子化は、これから取り組 まなければならないが、先んじて再編されるとされており、問題であるという御意見が ございました。  それから、三位一体について、地方の主張はお金がかかるものには国にというふうに 聞こえると。どういう事業を国・地方に分けるのか、議論をすべきではないかと。  それから、少子化対策は国が主導しないといけない。地方に委ねるのはいかがかとい う御意見でございます。  それから、地方分権は大事だが、一律はおかしい。日本は、どちらかに傾くとすべて そちらに行くが、バランスよくやらないといけないのではないかということでございま す。  一方で、この三位一体を進めるというお立場からの御意見として、補助金をなくして 自治体の自由度を増したいのであって、結果的に補助金を税金に変えていく。そして、 自治体は仕事をするということであるので、仕事をしないということではないとのお 話。  それから、現場主義の観点から政策の具体化を進めて、スムーズな移管、この場合は 税源移譲等を進めるべきであるというような御意見がありました。  三位一体改革と少し関係ございませんけれども、児童虐待について児童相談所の権限 を強化したり、プロフェッショナリティーの訓練の方に力を入れるべきではないかとい う児童虐待の御意見も昨日、出ていたところでございます。  以上でございます。 ○岩男部会長  この件につきましては前回も御議論いただいたわけですけれども、本日も引き続き議 論を深めていきたいというふうに思いますので、どうぞ御自由に御発言をいただきたい と思います。  どうぞ、津崎委員。 ○津崎委員  三位一体に関しては先行的にいろいろ議論をしていただいて、それなりの納得のい く、説得力のある意見を出していただいていると思うんですが、私たち児童福祉の現場 を預かる者としては、特に児童虐待あるいはDVなんかもそうですが、命に関わる問題 です。今、室長の報告にもありましたように、一歩間違うと死んでしまうという結果に つながる非常に重要なテーマだと思うんです。  ところが、日本の場合、法律ができて4年そこそこで、この問題に対してまだ制度と して熟していない。むしろ、今からこの制度を全国レベルで最低限の安全ネットとして 形づくっていかなければならない。これは地方自治体のそれぞれの思いでやっていただ きたいという段階にまで来ていない、基本の枠組みがまだできていない段階です。この 段階にすべて丸投げで地方でということになれば、最低ラインの安全ネットの役割が果 たせないのではないか。  従来であれば、もう少し地域あるいは親族というものが連帯の中にありましたから、 インフォーマルな介入が多分できていたんだろうと思うんですが、今、都市化現象の中 で地方の都市に行きましても、家庭に他の人が入っていけない。そういう状況の中で親 に課題があったときに、それがもろに子どもに影響を与えてしまう。その家庭の一方で プライバシーということを重視しながら、なおかつ介入のバランスをどういうふうな形 で全国レベルにセッティングしていくかというのは、今、新たに求められている重大な 社会政策の基本のところにあるというふうに思います。その枠組みをつくる前に予算、 あるいは政策を全部地方に任すということにならないと思っています。  現時点でも、児童相談所の児童福祉司の配置一つを見ましても、地方でかなり格差が あって、交付税の配置基準を満たしていないところが少なくとも半分程度はあるとか、 さっき山縣委員が言われた市町村の今後重要になっていくであろう体制づくり、地域ネ ットワークなんかもつくっているところは多くなってきていますけれども、中身を一つ 見ていくと割と形式的な情報交換のネットワークが多くて、本当の活動実態を保障する ようなネットワークというのはこれからの作業だというふうに思うわけです。  そうすると、やはり人の命に関わる、そういう安全施策というのは、少なくともいま しばらくは国のレベルで一定の体制づくりということをした上で、それが熟してきて最 低ラインができましたよと、あとは、地方の状況に応じて創意工夫ということであれば わかるんですが、今、つくりかけているときにということになってきたときに、下手を すると最低の安全ネットはつくれないまま、犠牲がこれからもどんどん出てくるという 事態になりかねないので、現時点のタイミングでこれが地方に全部行くということにつ いては非常に危険性が高いということをあえて申し上げておきたいと思います。 ○岩男部会長  小笠原委員、お願いします。 ○小笠原委員  子育て支援対策推進法が緒についたといいますか、ようやく国と地方の役割で日本の 将来をどうあるべきかという論議をしようとする、まさにその入り口に来た途端に、本 質的な議論をしないままにこの金目の話に突っ込んで行っているということは本当に不 可解な話だと思うわけです。  私は、基本的には地方分権というのを賛成はする者でございますが、地方分権の問題 は、私どもの考える保育とか子育て支援をしている者として、地方分権がすべて一般財 源化に結びつくというのは本当におかしな話ではないかと思うわけです。  国の虐待防止の問題でも、障害のある子どもさんの問題にいたしましても、保育所の 運営費の問題にいたしましても、中学校の義務教育費の問題でも、これは基本的には国 の義務的事業というのが法律で定められておるわけで、言い方を代えれば一般財源化が なされる以上は、義務的事業が対象であってはならないということが前提であるべきで す。  私どもの保育園運営費の中の子育て支援のための運営費の中には奨励的補助金がござ いまして、津崎委員がおっしゃいましたように、子育て支援というものが地について安 定してくるまでの奨励的補助金と、ナショナルミニマムをもって保育水準を守る基準の 2つの補助金がありまして、それを奨励補助金と法令補助金というふうに分けておりま す。奨励補助金は地方分権化の中で自由に使わせてほしいという理屈はわかるんです が、国のナショナルミニマムを保障する部分をいきなり、義務教育費もそうですが、こ れを全部三位一体改革で補助金をなくすというのは、どう見ても日本の国家がこれだけ の少子化になって危機を抱いているという国家の危機感と矛盾するのではないでしょう か。小泉総理が、所信表明で第1番目に御自分の口で、ご自分の手でお書きになられた 少子化対策、待機児童対策と一般財源化は矛盾するのではないかと。これらの対策と逆 行するような形でありまして、これでは児童福祉法が、形骸化というどころか死文化し てしまうと思うのです。地方の自治体の首長さんや助役さんに聞きましても、「私たち はちゃんと子どもたちのためにやるんだ、あなたたちは何で一般財源化反対するんだ」 と言うわけです。裏を返せば、そういうことをおっしゃるということは、国の定めた仕 事の規制を崩そうとしているわけです。補助金の自由性という問題と仕事の自由量とい うのは決まっているわけですから、市に「それでは国の決めた仕事量を自由にしたいの でしょう」と言い返したら、市は「何で我々を使用しないんだ」と言うわけです。信用 するしないと言うことではなくて、「一般財源化されてもそれに必要な経費というもの は必ず私たちは負担します」という担保が設定されておりませんと、危険な方向に行く のではないかと危惧するわけです。地方自治体が保育の質をしっかりと担保する根拠も なく一般財源化を進めることは、少子化対策ではありません。日本の少子化対策は、世 界から見て笑われるような仕組みを作っている、と言われますよ。  昨年、公立保育所が一般財源化になりまして、『福島民報』の6月号のコラムに書い てあったんですが、公立保育所が一般財源化になって、ある市町村では国から予算の半 分も来ないと。結局、どういう姿勢にでるかというと、一人ひとりの保護者負担を月3 万円以上も上げなければ地方自治体はやっていけなくなったとコラムに書いてあるので す。  補助金を削る代わりに三位一体改革の論理でちゃんと市町村には補填し保障します、 と言われたものの現実には地方自治体には全額補助されていないということです。  国費といいましても、実は保育運営費の中の負担の半分は完全に保護者負担でござい まして、地方自治体が保護者から徴収して国庫に入れて、その国庫が再び地方の保育運 営費として還元される時には税金という形で支弁されるわけです。保育運営費収入の半 分は保護者負担でありまして、これを除いたいわゆる純粋な部分である税金で国が25% 負担し、県がその12.5%、市町村が12.5%という仕組みでございます。これが勢い、丸 ごと補助金がなくなりまして完全に一般財源化になりましたら、保護者負担分の非常に 公費負担分の多い市町村地方世帯、たとえば低所得世帯の多い地域においてはかなりの 保育料を上げなければいけないという事態が生まれるわけです。保育料の負担が高く国 基準の平均50%以上の負担をしている大都市世帯、例えば名古屋とかそういうところの 大都市では、1人当たりの担税力というのも高いですし、一人当たりの公費負担分も低 いわけですから、一般財源化しても平気で行政は保障していけるでしょうが、非常に財 政も厳しい、一人当たりの公費負担の多い市町村では今後の子育て支援がうまくいくわ けがありません。私は夜間保育をやっておりますが、現在五十七名中、何と約半分以上 の世帯が保育料は負担できない保護者が利用している状況にあります。生活保護費を受 給している世帯の方は別にしましても、保育料の保護者負担が、1,000円とか 2,000円とか1万円くらいの負担をしている人たちも多くいます。一般財源化にな るとこのような状況の自治体は財政負担となりますが、そう簡単に保護者に負担増を求 めるわけにもいかず、結局、保育所運営に力を入れなくなるのは当然だろうと思うんで す。一昔前と違って今、保育所は虐待すれすれのボーダーに近い子どもさんたちもひき とっており、また注意欠陥多動性障害のお子さんもいて課題の多い時代となりました。 一般財源化しても、市長さんたちが「私たちはちゃんやるんだ、ちゃんとやるんだ、私 たちに任せてくれればあなたたちの運営費は保障しますよ」と言いますが、そんな保障 はないわけです。今、全国的に保育園の子育て支援事業は相当人気がありまして、虐待 に近い行為もっているお母さんたちも子育ての負担が軽くなり大事に至らずに済むと か、あるいは障害のある子どもさんを持っていらっしゃるお母さんにとっても大変勇気 づけられているとか、保育現場として文字では表せないぐらいの経験をいっぱい持って おります。全国の保育水準が低くならないようにする政策こそ、私どもが国に期待して おり一般国民も大いに期待していると課題だと思います。  医療や高齢福祉は国が責任を持つ。どうも弱いところから補助金を切っていく、切り やすいところから切っていく、取っていきたいところから取っていくという精神が見え 見えでございます。申し上げたいのは、たとえ百歩譲って奨励補助金は地方自治体の自 由にしても、せめて国庫負担については、全国各地で子育ての格差がでないよう、現在 の水準を落とさないよう是非とも堅持しなければなりません。なぜなら、現在の奨励補 助金でも、地方自治体の自由裁量が十分に働いているからです。私の保育園の例です が、夜間保育で朝の3時までの保育をしております。それでもこの保育時間に足りない ジャーナリストや看護婦さんがいまして、「急に手術が入ったから子どもを今晩宿泊さ せてください」と。それで、職員が一緒に泊まり、そしてついに24時間の夜間保育園に なりました。そこで、当方としては延長保育のための奨励補助金である延長保育基盤整 備事業の補助金450 万円をあてにして、市に申請したのですが、市は、「延長保育をし ているのは1箇所だけではない、10時間以上延長保育しようが1時間延長も2時間延 長も時間延長には変わりはないので、貴園だけに特別に補助金をつけるわけにいかな い、1時間延長保育と同じように70万円です」という返答なのです。国は、延長保育 を広く安定的に普及させるために奨励補助金450万円を予算組みしていているのです が、市の財政状況や担当者の思惑、市長のさじ加減でどうにでもなるということです。 どんなに職員が汗を流しても苦労しても、1時間延長の保育園と朝まで保育している延 長保育園には格差はつけられないとの見解で簡単に片付けられてしまったのです。子ど もの保育を受ける権利と職員の労働条件を確保するために補助金があるわけですが、以 前に労働基準局からの調査があった折、夜間保育の職員ローテーションのことで助言指 導があり、基準局の担当者がその責めを法人だけに求めたので、「それは私ども法人に 指導するのではなく、宮崎市に言ってくださいよ、原因は市ですよ」言い返したら、今 度は「市は国からそのような補助金が出ているのに、なぜ意欲がないのか、なぜお金を 出さないのでしょうか」と、不思議がり私に強い口調で言われたわけです。こういうこ ともあってその後、市は国基準どおりに改善してくれて今日にいたり今は助かっている わけです。このように今の奨励補助金ですら、市町村の自由裁量で行われているわけで すから、国庫負担金が一般財源化になったら行く末は見え見えです。少子化対策とか、 子育て支援とか、虐待防止等、全部含めて一般財源化になると福祉が後退すること必至 です。 ○岩男部会長  吉田委員、どうぞ。 ○吉田委員  今のお話の勢いだけで何か伝わってくるような気がするんですが、少し関連で申し上 げますと、私立幼稚園も高校以下、私学助成で一般財源化と。  それで、私学助成は目的が3つとよく言われています。1つは保護者負担の軽減、も う一つは教育条件の維持向上、もう一つが私学経営の安定と。保育所の運営費の場合は 児童の処遇ということが基本でしょうが、強いて言えば、やはりこの3つが性格的にな るのではないか。  仮に一般財源化された場合に保護者負担の軽減ということでいえば、保育料徴収基準 は市町村で議会で条例等で決めていきますので、ある程度は議会承認すれば上げる下げ るは地方の自主性だろうと思うんですが、あるいは経営の安定にしても、これもある程 度、自助努力というのがあろうかと思うんですが、教育条件、保育所でいえば保育環境 あるいは保育条件の維持向上という部分にかなりしわ寄せが行くのではないか。  現に、市町村財政難の中で公立保育所のいわゆる正規職員を抑えてパートを今、もの すごく増やしているという現状があります。あるいは、財政難が理由で民営化を図る。 つまり、民間の創意工夫を生かすという本来の趣旨というよりは、むしろ財政苦しいか ら苦し紛れに民営化という、本来の民営化でない方向に行く。つまり、人とか子どもの 環境にしわ寄せが行くという可能性がやはり、かなりあるのではないか。そういう意味 で、地方分権で地方の自主性・主体性を大事にするというのは大変結構なことですが、 上に向かって自主性・主体性で努力する部分は結構、御自由にということなんですが、 それが結果的に下に行く場合があり得る。そういう意味では、津崎委員がおっしゃった ようにセーフティーネットという視点はやはり必要だろうと思います。  そういうリスクを避ける仕組みとして、やはり子どもの最善の利益とか、結果、社会 的な排除者を生まないようなセーフティーネットとしての国の役割というか、下支え的 な役割という意味での国の関与をやはり何か財政面でも残すべきではないかというふう に思います。 ○岩男部会長  ほかにいかがでしょうか。  山縣委員、それから、柏女委員という順番でお願いします。 ○山縣委員  先ほどの小笠原委員の発言に基本的には賛成する者なんですけれども、小笠原委員が 地方の方から、なぜ信頼しないんだと言われて余り反論されなかったのが不思議だった んですけれども、私は一般財源化は基本的には賛成という立場なんですが、条件つき で、その条件は何かというと、地方議会と地方役所が信頼できないからだ。恐らく、次 世代育成支援の方向に向かう施策を打てるような状況にはないのではないか。だから、 一般財源化は非常に危険であると。ちょっとお隣に前田さんがいらっしゃって怖いんで すけれども、例えば、今、国を挙げて取り組んでおられる次世代育成支援対策推進法に 基づく行動計画を見ましても、結局、国では省庁を挙げた計画だという姿勢をきっちり 持っておられるわけですけれども、地方に行くと結局、せいぜい教育委員会レベルまで 含めたものに過ぎなくて、基本はやはり厚生労働省施策であって、そこの中の自助努力 だというスタンスが非常に強いと思うんです。それらが典型的な状況ではないかと思い ます。  それから、厚生労働省を批判するわけではないんですけれども、次世代育成支援行動 計画を全省庁でやると言いながら、結局、数値目標は厚生労働省の14項目以外は基本的 には求められていないものですから、地方自治体でやっていることというのはその14項 目の数値目標を出す、それの予算をどう工面するかというところに集約をされていまし て、他の部分については非常に形式的な議論しか行われていないのではないかと。その 辺を考えましても、私は自治体の裁量というのは大切なことだとは思いますけれども、 今の段階でそこまでの体力を持っているのかどうかということについては疑問があると いうふうに思っています。 ○岩男部会長  柏女委員、それから、網野委員の順番でお願いします。 ○柏女委員  今日はちょっとお休みをさせていただくかもしれないと思ったものですから、事前に 参考資料としてペーパーを出させていただいたんですけれども、前回、発言をした後、 ある雑誌から投稿してほしいということで依頼を受けて作成をしたものですが、是非、 3点を考えていきたいというふうに思っています。  今、小笠原委員、山縣委員のおっしゃったことはとても大切なことではあるんですけ れども、私はなぜ、その3.2 兆円の補助負担金の廃止を提言したときに、結果的に半分 が次世代育成支援分野になってしまったのかと、そこから考えていかなければならない のではないかというふうに思っています。  それはやはり、子どもの分野が他の高齢者や障害者の分野と、あるいは年金とか医療 の分野と仕組みが違うから、結果的にこういう着眼点でもって補助金を洗い出したら、 結果的に子どもの分になってしまったということだろうというふうに私は思うんです。 その違いは一体何かというと、個人給付かそうではないかという視点が大きいのではな いかというふうに思います。  児童の分野でも、児童手当とか児童扶養手当とか、個人給付の部分は残されているわ けです。そうなると、それでは児童の分野は何なのかというと、これは事業者に対する 補助金が圧倒的に多いということだろうと思います。支援費制度にしても、それから、 介護にしても、給付が施設の方に渡るとしても、考え方としては個人給付ということ、 生活保護も個人給付です。やはり、ここのところが一番違ってしまった。となると、児 童の分野はなぜ個人給付という形にならないのかと。この議論をやはり、もう一度やっ ていかなければいけないのではないかということを思っています。  ここで3点、提案をさせていただきたいんですが、実は1点目は前回させていただい たことですが、やはり児童部会として、今、子どもたちの問題、大きな問題になってい ますので、この点については社会に対して発信をすべきではないかと。  子どもたちの少子化の問題あるいは虐待問題、それから、非行の問題。私たちがやら なければいけないことはさまざまあるわけですけれども、それらについてもっともっと 社会が関心を持ってほしい。そして、子どもたちの問題に財源を振り分けてほしいとい う提起を、やはりまず第一に我々が社会に向けて発信すべきではないかというのが1点 目です。  もう一点目は、先ほど申し上げたことから派生するんですが、社会保障審議会本体に 対して、人間の一生をトータルにとらえた保障の仕組みというものを一度検討してほし いと。これは岩男部会長にも提案をしたいんですけれども、つまり、個人給付が大人の 部分になっていて、児童はそうではなく、事業者に対する補助負担金という形になって いる。ここの仕組みの違いです。それについて議論をしてほしい。  それで、私たちは去年の8月に高齢者の給付が社会連帯の仕組みになるのならば、子 どもたちの分野についても、やはり社会連帯の仕組みで、同じような仕組みでやれるよ うにしてほしいという提案を研究会として出させていただきましたけれども、そうした 人間の一生をトータルにとらえて、どういうふうにして保障していったらいいかという 仕組みを考えていただくような提案を、児童部会から社会保障審議会本体に対して提案 をするということが2点目です。  そのときに、私がよく言うのは、年金、医療、介護などというふうに言われているわ けです。そして、少子化という別の問題でとらえられているわけです。年金、医療、介 護などではなく、年金、医療、介護、育児というふうに三つ葉ではなくて四つ葉のクロ ーバーでいきたい。その方が、人間の幸せは四つ葉のクローバーでないとやはり出てこ ないというふうに思いますので、これからは年金、医療、介護、育児、この4つで考え てもらいたいというような提案を是非していただければと。これが2点目です。  3点目は、児童部会で今回の問題を契機として、児童の子ども家庭福祉あるいは次世 代育成支援の在り方についてやはり根本的に議論をすべきだろうと。  この私の提案の一番最後のところにも書かせていただきましたけれども、今回の地方 6団体の提案というのはいみじくも市町村と都道府県に分断され、首長部局と教育委員 会部局に分断され、かつ、サービス事業者に対する補助負担金に依存をしている。こう いう現行の子ども家庭福祉、次世代育成支援の問題点というか、それを特徴をあぶり出 す形になったのではないか。これは、本当にそれでいいのかどうかという議論をもう一 度ここで、これは我々、天につばするような話ですけれども、やっていかなければいけ ない。  この3つを是非、取り組んでいかなければならないのではないかということで、ちょ っと提案をさせていただきたいと思います。  以上です。 ○岩男部会長  御提案の、まず第1点の、社会に向けた発信のところですが、後ほど御相談をさせて いただきたいというふうに思っております。それから、社会保障審議会に向けてという ことは、その形もまた御相談をさせていただきたいと思いますが、まず御意見を伺って からにさせていただきたいと思います。  網野委員、お願いします。 ○網野委員  今、非常に大変大きな視野から御意見がありましたので、私はその面は省略させてい ただいて、やはり根本的に、今回の三位一体に関する地方6団体の提言の中の、これだ けはちょっと譲れないのではないかという部分を申し上げたいと思います。  先ほど、何人かの委員の方が既にお話しされていましたが、セーフティーネットと か、あるいはナショナルミニマムという点でいいますと、保護を必要とする子どもに関 しての国の責任、都道府県の責任、市町村の責任と今までのシステムで言いましたら、 むしろそれこそ国の責任として非常に大きい部分があったと思います。具体的に言え ば、今回の提案の中で、やはり乳児院とか児童養護施設とか、そのような入所措置に関 する費用、私はこれが一番関係していると思います。  ただし、三位一体改革の大きな方針で言えば、利用者主体ということでいろいろ考え ていったときに、利用者と提供者との関係で成立する部分は勿論、この方向は決して今 後、進めていく上でマイナスだけではないと思いますし、非常にメリットも大きい部分 もあると思います。  しかし、保護者が同意しない、親権者が同意しないという問題がこんなにこじれてい て、しかも先ほどの児童虐待の死亡事例も全くこれに当てはまると思いますが、子ども の生存権とか発達権が基本的に侵されている部分についての責任は財源、費用も含めて 国、都道府県は、場合によっては今以上にもっと持つべきではないかと思います。その 点では、今回の提案のいわゆる措置に関する費用ということはもう少し検討する必要が あるかと思います。  実は先ほど来、少年法改正もそうですし、更にいろいろ議論されている中で、例えば 児童相談所がバーンアウトしそうだ、あるいは施設の職員も本当に今、バーンアウトし そうだということの背景は、このことと決して無関係ではないと思います。人や質や財 源を増やすということで解決しなくてはいけない部分がちょっとおろそかになってい る。そのポイントは、三位一体改革の方向ではカバーしきれない部分があると思いま す。  実は昨年、この審議会児童部会で中核市でも児童相談所を設けることができるという 方向が示され、今、国会に提出していますが、その際、私、実は前総務課長に質問をさ せていただきました。具体的には、中核市にも現行の都道府県指定都市の措置に関する ような部分も移行させるという方向は検討してもいいのではないかという質問の際に、 やはり、それは責任上、いろんな体制の上で今のところ考えられないというお答えでし た。このことが、今度の三位一体改革と関連して見たときに、児童相談所が措置をする という部分を背景に持っているのは何か。市町村が財源を考えてこれを進めた場合に、 かなり遊離した部分が出てくると思います。  やはり、先ほどの非行もそうですが、家庭裁判所はすべて国、少年鑑別所も国、少年 院も国なわけですね。そのような点も含めて、本当に保護を必要とする子どもに対し て、取り分け親権者と対立するような状況、あるいは社会治安といいますか、そういう ことも含めて、必要な子どもの保護に関しては、財政上もかなり国、そして、措置権を 持っている児童相談所が必要だと思います。  ただし、児童相談所の措置権を移譲する、中核市にしろ、そのようなことでどんどん 子育て支援、次世代育成支援の土俵に児童相談所の活動も広がっていくという方向は一 つ、十分あり得るとは思いますが、しかし、その場合でも特別の保護を必要とする子ど もに関しては、現在の提案のものをある意味では超えて、セーフティーネットやミニマ ムを是非、確保してほしいと思います。 ○岩男部会長  大日向委員、どうぞ。 ○大日向委員  私が申し上げたいと思ったことは、先ほど小笠原委員が大変な熱情を込めておっしゃ ってくださいましたし、それから、この問題の大局的な整理は柏女委員が見事にしてい ただいたように思います。このお二人の委員の御意見、今までもいろいろ出て、ほかの 委員さんの意見を含めてですが、そこにも尽きていると思います。  しかしながら、今、子育て支援がこんなに言われているときに、この地方6団体の提 案、これはベクトルを間違えるという危機感をこれほど部会は持っているんですが、一 般の社会はまだ周知していないのではないか。それから、小山市のあの虐待問題に関し ても、新聞紙面を見ましても非常に情緒的な記事が書かれていますが、この三位一体改 革とつなげた提言をしている記事というのは本当に少なかった。そういう意味で、先ほ ど柏女委員が言われました、この部会が社会にいかに発信していくかというふうに議論 をおまとめいただければありがたいと思います。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、前田委員、どうぞ。 ○前田委員   ○岩男部会長  そんなことはないんですけれども。 ○前田委員  自治体代表や6団体の代表としてではなくて個人的な意見を言わせていただければ、 この三位一体改革、大きいことですので、私、何回も市職員と話しました。  実は、私の意見や現場の職員の意見は、津崎委員と意見が似ておりまして、私も大変 苦しい立場なんですけれども、やはり介護保険とか障害者の支援費でどこら辺の数字を 目指すかということも全国的に示されたわけですね、介護保険の仕組みがあって、法律 ができましたし。やはり全国的に普及をして、目指すべきレベルが決まったものをやは り自治体に配分していただくとありがたい。  それから、保育所なども、実は今、横浜市、病後児保育や病児保育を増やそうとして いるんですが、厚労省の基準、大変厳しいので、なかなか機動的にできないことがござ います。小笠原先生もいろいろ言い分があると思うんですけれども、保育所などもかな り、全国で何万という施設で利用者が増えていますので、ある程度、全国的に普及し、 普遍的なサービスとなってサービス水準が示されたものが、やはり現物給付を自治体が ある程度、裁量をもって行う方がありがたいと。  しかし、児童虐待に関しては、今現行の前提を崩して地方に任されても全然だめなわ けで、これからは、まさにおっしゃるとおり、職員の熱意だけではもうできない状態 で、それはまさに地域社会では考えられなくなってきます。何もかも公的に支えるとな ると重荷も増えてくるんですけれども、このような目指すべきレベルがまだ決まってい ない分野をやはり、ある程度水準を示していただく。その水準までになれば、地方に渡 していく。児童虐待の分野は、現場ではまだ早いのではないかと言っていますし、実は 私もそう思います。  ただし、もう一つ申し上げたいのは、この三位一体改革は、地方に行ったから次世代 育成ができなくなるとか、国が持っているからできなくなるとかではなくて、何回も申 し上げたように、国も自治体もお金は全くございません。もしも、本当に子どもに次世 代育成をしなければならないというならば、やはり皆さんに負担増をお願いするか、社 会で子どもをどう支えるかという議論をして新しい財源を見つけない限り、国が持とう が、地方が持とうが、これ以上のことはできない。今、市では子育て事業本部というの を立ち上げて次世代育成にかなり力を入れています。けれども、その次世代育成に回す 1万円は高齢者福祉なり、ほかの事業を削っていますので、すぐ限界がくるんです。  私は、やはり次世代育成というか、少子化は日本社会全体に関わる危機なので、思い 切ったお金を投ずるべきだと思っておりますけれども、今はどこにもないので、どこか で見つけなければならない。それは三位一体に関係なく考えていかなければならないと いうことを申し上げたいと思います。  以上です。 ○岩男部会長  まだまだ御意見がおありかと思いますけれども、実は大体予定をしている時間を過ぎ ており、まだもう一つ議題もございますので私の方からも皆様にご提案をしたい。先ほ ど柏女委員からも御提案がございまして、大日向委員からも御提案ございましたが、児 童部会としてこれだけ、立場は若干違いますけれども、この問題について、みんな危機 感は共有しております。  そこで、社会に向けた発信をきちんとするということで、児童部会としての意見をと りまとめてというか、もう既に前回、それから、本日もいろいろ御議論をいただいたわ けで、そのポイントをまとめて、児童部会の意見として公表をするというようなことを してはいかがかというふうに思っております。まず、そういう形で進めてよろしいかど うかということをお伺いしたいと思います。よろしいですか。                (「賛成」と声あり) ○岩男部会長  公表する前には勿論、皆様にお目通しをいただきますけれども、既にいろいろ御意見 をいただいておりますので、それを踏まえてとりまとめ、私にそのとりまとめ案を御一 任いただければと思います。  いろいろ御意見をいただいき、私も全部覚えているわけではございませんけれども、 ポイントの1つは三位一体の改革、つまり地域の独自性・自主性を尊重するという、こ このところは皆様賛成だと思います。また、補助金というものが使い勝手がいいものに 改められなければいけないという、この点についても御異論はないと思うんです。  ただ、この少子化の問題、あるいは虐待の問題を含めた次世代育成という、ここの点 については、まず代弁者がいないので、私たちはきちんと子どもの利益代弁者としての 責任を果たさなければいけないというふうに考えておりますけれども、次世代育成法は まだ本当に緒についたばかりであって、特に、虐待の問題についても、枠組みがようや くつくられかけたというような状況にあるわけです。そういう意味でも、まだこれか ら、国と地方との役割についても十分な議論が行われて、その結論が出されなければい けない問題である。皆様の御意見はそういうことではなかったかと思っております。  それから、前回も私も申し上げましたけれども、社会保障費の中の児童に充てられる 部分が余りにも小さい。やはり、これから次世代育成のサービスを強化しなければいけ ないわけでございまして、これは国の根幹に関わる課題といいますか、テーマだと思い ますので、そういったようなことを入れて、とりあえず私の方で文案をつくりまして、 皆様にごらんをいただくことにしたいと思います。余り時間をかけずに用意したいと思 っておりますので、是非、よろしくお願いをしたいと思います。  それから、社会保障審議会に対しましては、堀委員もメンバーですし、私もメンバー ですけれども、やはり、この部会としてのこういうまとめというようなものを上げると いうことはできると思うんですが、社会保障審議会は頻繁に開かれなこともあり、事務 局とも具体的にどういうふうにしたらいいかを御相談させていただきたいと思います。  先ほど御発言のあった個人給付の問題なんかは、これまで全く議論されてきておりま せんので、こういったような基本的な問題も今後、当然、議論していかなければいけな いことだと認識をしております。  最後に「5.その他」といたしまして、前回の児童部会で堀委員より御指摘がござい ました、働き方の見直しに関する現在の取組状況や労働時間の実態について、事務局か ら御説明をいただくようお願いをしてございましたので、それをお願いいたします。 ○三富調査官  それでは、前回御意見のありました労働時間、それから、働き方について、資料4に 沿って、限られた時間ではありますが、御説明させていただきたいと思います。  まず、1ページ目、「I.労働時間等の現状」の中で、長期的な時系列で、「労働者 1人平均年間総実労働時間の推移」を載せてございます。  労働時間につきましては、昭和62年の経済審議会建議におきまして、当時の国際協調 と国民生活の向上という観点から、労働時間短縮の政策目標として総労働実時間1,800 時間程度という政策目標が掲げられておりまして、それ以降、労働基準法の改正である とか、時間短縮促進のための臨時措置法といったような制定によりまして、週休2日制 の普及、あるいは年次有給休暇の取得促進、時間外労働の削減等の対策が推進されてま いりました。  この表でごらんになっていただければわかるように、総実労働時間は長期的に減少し ておりまして、昭和62年には2,111 時間であったものが、平成15年には1,846 時間まで 減少しているという状況でございます。  1ページめくっていただきまして、2ページ目のところですが、しかしながら、これ は1人当たり、パートもフルタイムも総じて、平均した数字では減少してきたわけです が、労働時間の短い方、それから、長時間の方という形で分けて推移を見てみますと、 近年、これは平成5年以降を載せてございますが、週労働時間が35時間未満の者が上の 表になります。それから、週労働時間が60時間以上の長時間労働者の方、2つともがと もに増加しておりまして、ちょうどほどよい中間の方が減少するという、労働時間の長 短二極化が進展しております。  先ほどの平均ではなく、パートを除く一般労働者で見てみると、総実労働時間は平成 15年で2,016 時間という、依然として長時間が続いているという状況でございます。  したがいまして、先ほどの1ページ目の長期的な減少は、近年のパート労働者の増加 によるところも大きいということが考えられます。  こうした中で、月におおむね45時間を超えて時間外労働が続いていることと、それか ら、過労死等の事案についての密接な関連性ということが既に指摘されておりますが、 ここ最近、過労死についての事案も増加傾向にございまして、労災認定件数は平成15年 に300 件を超えているという状況にございます。  続きまして、3ページ目をめくっていただきまして、ここに、次以降、労働時間と、 それから、子育ての影響について、少し資料を御説明したいと思います。  このページの資料ですが、これは年齢階級別に1週間の就業時間を見てみたものでご ざいます。  真ん中の左辺りに30歳代前半、それから、後半層の年齢階級を見てみますと、週60時 間以上の長時間労働者の割合が23.2%、23.3%ということで、2割以上がこうした長時 間労働をしているという高い比率になっているということがわかります。  次のページ、4ページをめくっていただきまして、こうした30代の働き過ぎについて 10年前と比較をしてみたものでございます。  平日の行動時間、男性有業者について2001年と10年前とを比較してみたものでして、 これは、3つの棒グラフのある中の一番左の一番濃い部分が仕事時間でございまして、 10年前より仕事時間が増えていると縦軸プラスの方に、それから、時間が減っていれば 下のマイナスの方にというようにグラフをつくっております。  これを見ていただくとわかるように、30歳代について、それから、40歳代については 仕事時間が10年前より増えていると。一方で、そのほかの年齢について、特に若年等に ついては仕事時間が減り、余暇についてもかなり増えているということで、30歳代の働 き過ぎというのは10年前と比べてもかなり深刻化しているという状況がうかがわれま す。  続きまして、5ページ目めくっていただきまして、このグラフは未就学児のいるお父 さんについて、平日の帰宅時間を地域別に取ってみたものでございます。  特に、南関東が20.5%の父親が、帰宅時間が23時以降、翌朝3時未満ということで、 非常に深夜にわたる人が2割いるということですが、全国平均でも見ても、14%の父親 はそうした深夜の帰宅になっているという状況でございます。  次のページをめくっていただきまして、これも地域別に長時間労働者の比率と、それ から、出生率の関係を見たものでございまして、横軸が週60時間以上、長時間働いてい る方の割合。それから、縦軸に合計特殊出生率を取っております。  これを見ますと、長時間労働者の割合が高い地域、例えば南関東地域、北海道、近畿 といったようなところについては合計特殊出生率も低いという傾向が見られます。  ちなみに、これは有配偶の男性正社員、正規職員について見たものですが、女性の有 配偶、正社員等について同じようにとってみても、全く同じ傾向が見れます。  ただ、この出生率と労働者の長時間労働の関係だけではなくて、地域的な3世帯同居 の比率とか、持ち家比率とか、さまざまな要因も関係しているということで、一概に、 この2つだけで要因が決まるわけではないんですが、何らかの関連性があるのではない かということが、このグラフからもうかがわれるということです。  次の7ページ目に移りまして、こうした労働時間とか働き方の現状も踏まえまして、 「II.仕事と家庭の両立支援、働き方の見直しに関する取組状況」、最近のものをとり まとめて1枚にしております。  まず、次世代育成支援につきましてですが、これまでの働き方を前提として両立支援 等を行っても、その効果が限定的ではないかという考え方に立ちまして、平成15年3月 の「次世代育成支援に関する当面の取組方針」の打ち出し以降は、従来の施策に加えま して、男性を含めた働き方の見直し、それから、多様な働き方の実現といったことを施 策の重要な柱の一つとして掲げております。  特に次世代育成支援では、企業に対して仕事と子育ての両立に関する行動計画の策定 実施によりまして、企業が主体的に働き方の見直しや両立支援に取り組んでいただく仕 組みを設けたところでして、また、その下、改正育児・介護休業法案についても、子育 てしながら働きやすい職場環境整備のために、育児休業の対象となる労働者の拡大等の 内容を盛り込んだものを提出しているところでございます。  その後ろは、これらの関連の補足の資料になりますが、そのほか、雇用均等・児童家 庭局以外における取り組みとしまして、最近、新聞記事にも出ましたけれども、労働基 準行政においては労働時間対策を所掌しておりますが、そこの部分で行っている施策と しまして、こうした労働時間の長短二極化であるとか、長時間労働者の過重労働、ある いはメンタルヘルスの問題といったようなことが深刻化しているという現状を踏まえま して、現在、労働時間対策の見直しを検討しております。  具体的には、時間短縮促進法が、これは時限的に平成18年度末までに廃止するものと されておりますが、その促進法の見直し。あるいは、同法に関連して規定されておりま す労働時間対策について、労働政策審議会の労働条件分科会の場で現在、審議が始まっ たところでございます。  私からは、以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、余り時間ございませんけれども、ただいまの御説明について御質問ござい ましたら、どうぞ。  堀委員、どうぞ。 ○堀委員  こういう資料を出していただきまして、ありがとうございました。大変参考になりま した。  施策は、これから見直しされるということなんで、これからの課題だとは思うんです が、やはり労働時間を制限する施策は必要ではないかと。それは労働基準法の改正だけ ではなくて、一般によく言われている超過勤務の割増賃金の問題とか、これは大変、経 済界とかいろんな反対する意見があるということは承知しているんですけれども、そう いったことを講じなければ、いろんな施策を講じることは大変なんですが、そういうこ との一つとして考えていただきたいというふうに思っています。 ○岩男部会長  よろしいですか。  少子化への対応として、この働き方の見直しということがずっと言われ続けてきたに もかかわらず、ここが一番進んでいないところです。ほかは待機児童ゼロ作戦など着実 に進めていただいていますけれども、この働き方を何とかしないといけないということ だと思います。  それでは、もう予定をした時間、近づきましたので、次回以降の日程について。  どうぞ。 ○柏女委員  済みません、時間を取らせていただき、申し訳ございません。  少年法の改正問題ありましたけれども、私は、これは実は三位一体の問題と深く関わ っているのではないかと。いわゆる、国と地方の関係、役割の改定だというふうに私は 考えています。  実は今まで、先ほど私は、少年院に入院するのだったらば、児童福祉法第27条の措置 でやれるようにすべきだというふうに申し上げました。これは、県の権限なんです。で も、今回は少年法で、裁判所で少年院に入れるというのは国の権限に持っていってしま うという話で、県は責任を逃れるという話になって、それから、費用負担もなくすとい う話になるわけです。つまり、地方分権と逆行した話になるわけです。  私はそこで、やはり福祉の視点からということを申し上げたわけですが、まさに福祉 の視点からやるということであれば、それは地方が、自分たちが責任を持っている、子 どもたちの育ちというものは持っているということであれば、当然、地方6団体は、こ の提案に対して、少年法の触法少年については家庭裁判所の判断で少年院に入所できる ようにするということについては反対だという提案をしていただけることを私、希望し ておりますけれども、実は、その辺から考えていくことが必要なのではないかというふ うに思っています。 ○岩男部会長  それでは、まだほかにいろいろ御意見おありかと思いますけれども、最後に次回以降 の日程につきまして、事務局から御説明をください。 ○高井総務課長  次回以降でございますけれども、また追って御連絡させていただきたいと思っており ますので、御連絡の上、よろしくお願いしたいと思います。 ○岩男部会長  それでは、先ほどの部会としての意見はできるだけ早く起草して、皆様にお目通しい ただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  本日は大変お忙しい中、ありがとうございました。                    (照会先)                    雇用均等・児童家庭局総務課 (担当)水口                    03−5253−1111(内線7823)