04/09/13 第4回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会議事録         第4回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会                                日時 平成16年9月13日(月)                           13:00〜                        場所 厚生労働省9階省議室                  ┌――――――――――――――――――――┐                  |(照会先)               |                  |厚生労働省職業能力開発局        |                  |総務課企画・法規係           |                  |TEL:                |                  |03-5253-1111(内線5313) |                  |03-3502-6783(夜間直通)   |                  |FAX:                |                  |03-3502-2630         |                  └――――――――――――――――――――┘ ○諏訪座長  それでは「第4回職業能力開発の今後の在り方に関する研究会」を開催いたします。 本日はお忙しいところご参集いただきましてありがとうございます。  今日のテーマは前回に引き続き、企業の皆様からヒアリングを行いたいと思います。 本日は様々なトレーニングプログラムのもとで、選抜教育を行っていらっしゃるヒルト ン東京の木元貴俊様と、幅広い年代層の転職を支援する人材紹介事業に取組んでいる株 式会社リクルートエイブリックの松園健様及び海老原嗣生様にお越しいただいておりま す。お忙しいところわざわざおいでいただきましてありがとうございます。  まず、事務局から木元様のプロフィールなどを簡単にご紹介し、引き続き木元様にお 話をお願いします。その後、リクルートエイブリックの松園様と海老原様からお話を伺 います。それではよろしくお願いします。 ○総務課長補佐(佐々木)  初めにヒルトン東京(日本ヒルトン株式会社)人事業務部人事担当副支配人の木元様 についてご紹介いたします。木元様は1986年にヒルトン東京にご入社されまして客室部 のご配属となり、ハウスマンを努められておりました。その後、ベルボーイ、フロント デスクエージェントをお勤めになられ、1996年に一度ヒルトン東京をご退職されていま す。1997年からは有限会社ケークラフトにて取締役、グラフィックデザイナーを兼任さ れておりましたが、2000年に同社をご退職されております。2001年には株式会社オリエ ンタルランド、東京ディズニーシーのパーク内レストランで、店舗の運営及び新人教育 などもご担当されておりました。2003年にヒルトン東京に再就職されまして、現職の人 事業務部人事担当副支配人にご就任されております。簡単ですが、以上です。 ○諏訪座長  それではよろしくお願いします。 ○木元貴俊氏(ヒルトン東京)  人事にいる関係上、大学や専門学校へお邪魔させていただき、大勢の学生の前で話を させていただくことには多少慣れているのですが、今日は雰囲気が違うものですから、 若干戸惑っておりますが、どうぞよろしくお願いします。  お手元にも資料をお配りしていますが、私どもは従業員のことを「チームメンバー」 と呼んでいるのですが、代表的なチームメンバーの教育プログラムに関してご紹介した 後、あらかじめご質問を寄せていただいていますので、それに関して若干お話をさせて いただきます。  こちらに「チームメンバー教育制度」と題しまして、ヒルトン・ジャパンということ で、要するに国内のヒルトンで行われている5段階の教育プログラムに関して載せてい ます。  「基礎部門」というのは、入社して早々、新入社員に対して施す教育プログラムです 。ヒルトンという企業でこれから仕事をするに当たり、必要な事柄の基礎の基礎をチー ムメンバーに理解していただくためのプログラムです。これは2日間にわたり9時から 夕方まで行われますので、かなりハードなプログラムでもあるのですが、人事部の者だ けではなく、各部門からゲストスピーカーを呼んで「ヒルトンとは」という話を進めて いきます。  フェース2「職務部門」については、ホテルですのでいろいろな職種があります。各 部門に合わせて、その部門で必要なトレーニングを用意しています。例えばシェフには シェフの、レストランで仕事をするスタッフにはレストランで仕事をするためのプログ ラムを用意しています。これは入社して2年、あるいは3年のスタッフに施す教育プロ グラムです。  「中間管理能力開発」については、国内のヒルトン全体で行われるプログラムが多く なっていますので、その都度、開催される国内のヒルトンまで赴き、さまざまなプログ ラムを受けていきます。  「管理能力開発」になると、1つの部門の長などが受けるプログラムです。これはそ の次の段階の能力開発にもつながるのですが、いかに職場内でリーダーシップを発揮す るか、といったことに主眼を置いたプログラムが増えてきます。組織を運営するに当た り、どういったことに注意して取り組んでいったらいいかをトレーニングとして受けて くるわけです。ホテルで支配人と呼ばれているクラスの者が受けるためのプログラムで す。  「リーダーシップ能力開発」については、部門よりさらに上の上級幹部が受けるため のプログラムです。これは時には世界各国いろいろな場所で開かれます。  次に個々について触れたいと思います。いちばん身近なところからご紹介します。   「ENGLISH LESSON」(英会話)ですが、もともとホテルという所はどうしても外国の お客様がいらっしゃる場所ですので、語学の力が必要な所です。それに加えて外資系と いうことで、幹部スタッフも外国人ですので、英語はかなりの力が求められます。  ENGLISH LESSONは、平日の午後、私どもの建物の中のトレーニングセンターで能力別 、あるいは職場別のクラスで行っています。講師はもちろんネイティブスピーカーです 。こちらを受講していただくことにより、英会話の能力が飛躍的に伸びたチームメンバ ーもおります。  「SKILLS TRAINING」(スキル・トレーニング)は、職場に応じた専門知識、技術など が身につけられるようになっています。これも必要に応じて外から講師を呼んでトレー ニングを受けさせています。  「CROSS EXPOSURE TRAINING」(クロス・エクスポージャー・トレーニング)は、自分 が所属する部署以外の部署で受けるトレーニングを指します。例えば自分が今宿泊部で 仕事をしている場合には、あえてFOOD&BEVERAGEのトレーニングを受けたいと申し出て、 実際にその領域で仕事を行います。これはもちろん自社内だけ、ヒルトン東京内だけで 行う場合もありますし、国内にある姉妹ホテルへ受けに行くケース、あるいは海外にあ るホテルへ受けに行くケースもあります。  「OVERSEAS TRAINING」は文字どおり海外研修です。最近は実績がないのですが、数年 前までは定期的に、例えばイギリス等へ国内のヒルトンのスタッフを派遣して海外研修 を受けさせておりました。  「HILTON UNIVERSITY」は、インターネットを使ったいわゆるバーチャル大学とご理解 ください。現時点では300弱のプログラムを持っており、MBAの取得までできるように なっています。一度ライセンスを取得してしまえば、会社の中だけではなく、インター ネットですので自宅でもアクセスできますから、いつでも、どこでもという形で取り組 んでいただいています。  次は管理職を養成するためのプログラムの1つで「ELEVATOR PROGRAM」をご紹介致し ます。資料に書いてある通り、「早期総支配人養成プログラム」といって、約10年で1 つのホテルの総支配人を養成してしまおうというプログラムです。今、ヒルトン東京の 人事部にはELEVATOR PROGRAMのトレーニーが一人おりまして、彼は現在24歳です。オー ストラリアの方ですが、彼がこのまま順調にいきますと、30代半ばで1つのホテルの総 支配人になってしまうというプログラムです。現状、日本のホテルの総支配人の平均年 齢は50歳を超えていますので、それを考えますと、かなり若い年齢で総支配人にたどり 着いてしまうプログラムになっています。  簡単にご説明申し上げますと、例えば日本人である者がELEVATOR PROGRAMに参加した とすると、全部で18カ月間のトレーニングなのですが、最初の9カ月間、次の9カ月間 、自国以外の2カ国でこのトレーニングを受けるわけです。ですから、いまヒルトン東 京にいるELEVATOR PROGRAMのトレーニーはマレーシアのほうで9カ月間トレーニングを 積んできまして、その後、日本に来て9カ月間トレーニングをしているところです。資 料に書いてあるとおり、実際には財務経理、営業&マーケティング、インフォメーショ ンシステム、人事、宿泊管理、FOOD & BEVERAGE、といった、基本的にはホテルの中の主 要な所を回ってトレーニングを積むわけです。  資料の最後になりますが、こちらは「HOTEL MANAGEMENT TRAINEESHIP」です。わかり やすく申し上げますと、中間管理職養成プログラムです。ヒルトンで正社員として2年 間勤務のキャリアがあれば、誰でもこちらに申し込むことができます。こちらも先ほど のELEVATOR PROGRAMと同様、18カ月間のトレーニング期間があります。ホテル内のあり とあらゆるセクションを回りまして、研修を重ねていきます。ホテル内でのトレーニン グではありますが、内容はかなり厳しいものです。こちらを修了すると、例えばFOOD & BEVERAGE部門で言えば、1つのレストランのマネージャーになったり、宿泊部門ですと 、アシスタントマネージャーになったり、いわゆる中間管理職に就いていただくことに なります。  以上、ヒルトンにおけるチームメンバーの教育プログラムの代表的なものをご紹介さ せていただきました。この後、あらかじめ質問を頂戴しておりますので、それについて 口頭で回答させていただきます。  まず、「新卒採用とアルバイトからの登用による採用の比率に関する基本的方針があ るのか」という質問です。これに関しては、特に明確な基準は設けていません。新卒採 用を何人採ったから、アルバイトからの社員の採用はこれだけということはありません 。その場、その時の状況に応じてアルバイトからも積極的に正社員への登用をさせてい ただいています。  「新卒採用とアルバイトからの登用による採用では、その後の能力伸長に差があるか 」という質問については、特にないと申し上げます。  「アルバイトから正社員に登用する場合の基準」は、細かく申し上げますと、例えば 行動特性でいくつかの項目がありまして、それをクリアしているかどうかは計りますが 、最終的にはその者がアルバイトしている先の職場長の判断に委ねることが多いです。  「アルバイトを採用する際、正社員登用を想定した採用基準を設けているのか」とい う質問ですが、これは設けていません。アルバイトはあくまでもアルバイトとして採用 しております。ただ、アルバイトを何年も務めていく中で、優秀な方がいれば正社員と して登用をさせていただきます。  「新卒者を即正社員にするにはリスクがあるため、学生には職場体験を兼ねたアルバ イトをしてもらう」。確かにそうですが、これはいろいろなケースがあります。通常、 定期採用をする場合は会社説明会を行うのですが、その直後からアルバイトをしていた だくケースが多いです。会社説明会の後に第1次選考、第2次選考…、通常第5次選考 までしているのですが、学生さんはアルバイトをしながらその選考試験を受けていくこ とになります。例えば内定を出す段階で、やはり職場長に「この学生に内定を出しても いいだろうか」という判断を委ねるケースがあります。例えば「このままヒルトンのス タッフとしてやっていけるよ」という判断を職場長が下していれば、そのまま内定を出 したりするケースもあります。  「卒業後」という質問もありましたが、私どもは通年採用をしておりまして、毎年、 新卒が春に一括して入ってくるわけではなく、毎月、毎月分割して入社してきます。で すから、学生によっては3月に学校を卒業してから、その後、半年ぐらい海外へ出る学 生もいるわけです。例えば2004年度の新卒の場合、4月から、一番遅い学生は12月ぐら いまで時期をバラして入社してきます。ですから、学生の中には海外へ出ることもなく 、ひたすら私どもでアルバイトを続けているケースもあります。  「非正規(非典型)型社員への対処はどのようなものか」という質問ですが、例えば 正社員ではなく契約社員の場合は1年契約で更新していくのですが、正社員と契約社員 の待遇面で大きな差はありません。例えば賞与は、正社員であれば年間3カ月の賞与が 出るとすると、契約社員の場合は年間2カ月であったり、あるいは夜勤手当や残業手当 は契約社員は法定どおり、正社員はそれよりもやや上回っているという差でしかありま せん。契約社員で入った場合も、1年後には正社員になっていくケースがほとんどです 。あらかじめ寄せられたご質問に関しての回答は、このようなことになりますがよろし いですか。 ○諏訪座長  ありがとうございました。とても要領よくお話いただいたものですから、かえってあ れこれ聞きたい部分も出てきているかと思います。ご参加の委員の皆様、ご自由にご質 問をお出しください。 ○廣石委員  事前の質問には書いておかなかったのですが、御社の場合は、40歳を目途に管理職に 就くかどうか決まるということを承っています。そうだとすれば、管理職にもし就かな かった場合には、本人の生き方になるのでしょうが、40歳を超えても管理職にならずに 、一般職としてずっと勤務し続けることがあり得るのでしょうか。そうすると、会社と してはそのような人がいてもいいとお考えなのかどうか。  逆に言えば、ホテルという特殊性からすると、経験の関数がかなりあるように思いま す。そういったものと年齢、もしくは40歳を目途に管理職という方針の関係はどうなっ ているのか伺います。 ○木元貴俊氏  40歳で管理職にならなかったからといって、その場で肩叩きをするといったことは決 してありません。やはり習熟が必要な業種ですので、ベテランの方はもちろん大切にさ せていただいています。 ○廣石委員  40歳を超えても、ジョブグレードはアップすることにはなるのですか。 ○木元貴俊氏  それはあります。 ○高橋委員  今の関連で質問させていただきます。私は昔、ヒルトン人材輩出という話をお聞きし たことがあったのです。今でもそうなのかということもあるのですが、ヒルトンの出身 者の方がマーケットで評価される理由はどういうところにあるとお考えになっています か。例えば能力のどういう部分とか、あるいは実際にゼネラルマネージャーになった方 もおられるわけですよね。マーケットで評価され、かつ活躍されている理由は、ヒルト ンのどの経験や教育が効いているのか、どんな能力なのですか。 ○木元貴俊氏  よく言われるのは、およそヒルトンで務まれば、他どこへ行っても大丈夫ということ です。もっと身近な話で申し上げますと、ホテル学校の実習生などにもそういったケー スがあります。学校によっては就学期間中に3回ぐらい実習に出る学校があるのですが 、最初にヒルトン東京で実習をする学生と、最後にヒルトン東京で実習をする学生では 随分状況が変わってきまして、最初に私どもで実習をしていただくと、残り2回の実習 が楽だったと。最後にヒルトン東京で実習をしますと、「私はホテルに向いているのか しら」と、また原点に戻ってしまうぐらい悩んでしまう学生もいるという話を聞かされ たことがございます。ヒルトン出身者は限られた条件、少ない人数の中でいかに効率よ く業務をこなしていくかという点において十分に鍛えられております。そういった事が マーケットで評価され、活躍もできる理由になっているのだと思います。 ○佐藤委員  教育訓練プログラムのことについて、1つはELEVATOR PROGRAMですが、この人たちは コーポレートに人事権が移っていて、人事管理されていると思いますが、選ぶ基準で、 例えば日本のヒルトンの人もそこにエントリーできるのかどうか。そのことも含めてど ういうふうに選ばれているのか。  もう1つは、HOTEL MANAGEMENT TRAINEESHIPの方も、どういう形でここに乗れるの か。これは終わった後、管理職になるようですが、一応管理職としてセレクションした 後の研修のような感じなのか、研修の後、管理職に就けない人はいないのか。  また、アルバイトから正社員に登用するときは、基本的には職場長の判断基準による というお話ですが、しばしば正社員に登用制度がある企業で問題になるのは、現場は正 社員を採りたいが、人事はなかなかうんとは言わない。なぜかと言うと、日本企業の場 合、例えば小売業でも正社員になった後アルバイトの仕事をずっとやるわけではないわ けです。店舗のマネージャーになったり、あるいはバイヤーになったりする。  ヒルトンの場合、職場長の判断ということは、例えばフロントでアルバイトをしてい た人であればもうそこまででいいのだと、その先は考えないで登用していると考えてい いのか。つまりその先のことを考えて登用しなくてなぜ平気なのか。それは40歳で管理 職にならない人は給与は終わりですよ、ということがあるからやられているのか。なぜ 職場長の判断だけでやれるのか教えていただきたいと思います。誰かエントリーしてや るのか、コーポレートが見て選ぶのですか。世界中から選ぶのですか。 ○木元貴俊氏  世界中から選びます。 ○佐藤委員  日本から選ばれた人はいるのですか。 ○木元貴俊氏  今のところ3人いるのですが、残念ながら最後までトレーニングを終了した者はおり ません。 ○佐藤委員  自動的になれるわけではないのですね。 ○木元貴俊氏  18ヶ月間のトレーニングプログラムを終了し、その後主要部門を約10年かけて歴任し た後に総支配人になるのです。  なぜアルバイトから正社員への登用を職場長の判断に委ねて大丈夫かということです が、人事のスクリーンを無事通り越えて職場まで行けば、あとは職場長が実際に仕事ぶ りを見て判断するわけですから、向き不向きも含めて信頼性の高いものになります。 ○佐藤委員  しかし人事がスクリーニングするのは、アルバイト採用のときのスクリーンで、それ は正社員としての基準とは違うというお話でしたよね。 ○木元貴俊氏  アルバイトだけではありません。 ○佐藤委員  私はよく分からないのは、フロントで仕事ができているのを職場長が見ていて、その 後ずっとフロントの仕事をするわけでもないのに何で支障が起きないのかと思います。 アルバイトから正社員に登用して、実態としてそこの職場でずっとやる人が多いのかど うか。 ○木元貴俊氏  実態としてはそうです。 ○北浦委員  アルバイトのことに関連して、会社説明会の後にアルバイトを行うということですが 、どのぐらいの期間、アルバイトしていただいて、それで今言った判断がなされるのか 。これは全く個人差なのか、ある程度を想定しているのか。そこのスクリーニングで落 ちてしまった場合、もう少し様子を見ようということになるのか、あるいはもうお引き 取りをいただく形になるのか。おそらく選抜される過程において、能力差をそこで判断 していくのだと思います。  もう1つは、パートタイマーというのは職種的には別の所で雇っているのか、アルバ イトとまた別の世界なのか。契約社員という入口もあるというお話でしたが、これは特 定の職種に限定しているものなのか。まず、非典型と呼ばれている3つについて教えて ください。 ○木元貴俊氏  まずは新卒の学生を対象にしたアルバイトについてのお話をいたします。最初の選考 から最終的に内定を出すまでには2カ月ぐらいあります。その間で見極めをつけてしま うところはあります。もちろん人事のスクリーニング、各部門のスクリーニングの途中 途中、筆記試験や適性検査などもクリアしていくわけですが、それと並行してアルバイ トということで、最終的に職場長に「内定を出してもいいですか」とお伺いを立てます 。「駄目」というNGのサインが出た場合は、アルバイトしていただいても残念ながら 内定は出さず、その場でお引き取りいただくというケースです。ただ、アルバイトを辞 めろとはこちらからは言いません。実際に内定が出なくても、そのままずっとアルバイ トを続ける学生さんもおります。そういう学生さんが1年、2年経ったあとに正社員で 入るケースもあります。ですから、その辺は学生さんによります。内定がもらえない以 上は、ここでアルバイトをしていても仕方がないという判断のもとに去っていく学生さ んももちろんいます。  パートタイマーとアルバイトは、厳密に言うと意味が違う言葉ですが、私どもの場合 は極端に差はありません。基本的にアルバイトと言っても、週5日、1日当たり7.5時間 、ほぼフルで働いているのです。そういう中で、例えば週5日勤めていた者が、週3日 になったり、結果としてパートタイマーになっていくケースはあります。特別パートタ イマー用の職種を設けているわけではありません。どこでも配属はしています。ただ、 職場の性格上、現時点では宿泊部門、特にフロントデスクの中にはアルバイトの従業員 はおりません。主にレストランのウェイター、ウェイトレス、シェフ、キッチンの部門 でアルバイト、パートタイマーのスタッフがおります。  契約社員も入口が違うだけで、さほど大きな差を設けているわけではないのです。正 面玄関と裏口という捉え方ではなく、ホテルに正面玄関がいくつもあり、右から入るか 、左から入るか、真ん中から入るか、その程度の差しかないとご理解いただければと思 います。 ○高橋委員  おそらく御社に受けに来る新卒の方々は、ホテルや接客業に対する憧れと言うのは変 ですが、そういう所に就きたいという方が多いような気がします。一方でホテルという 業種に向くか、向かないか資質はあると思いますが、その辺りをご覧になって、ヒルト ンを受けに来る学生さん達、ここに入りたいと思う人の気持と、こちらから見て向いて いる人のギャップはどういうふうに感じていますか。あるいは学生さん側の理解のレベ ルも含めてどう感じておられますか。 ○木元貴俊氏  まさに採用側が苦しんでいるところがそこです。やはり憧れだけで受けに来る学生さ んは多く、特に大学生の方に多いです。ホテル学校の生徒というのは、もともとホテル に入りたくてホテル学校に行きますので、ある程度在学中に実習なども経験しています ので、ホテルがどんな所かは分かっているのです。ですから、決して楽な道ではないと いった覚悟をした上で入社します。しかし、大学生の中でも、もちろん企業研究をしっ かりされていて、ホテルがどんな所か分かって来てくれる学生さんもいるのですが、ど うも話を聞いているとそうでない学生さんもいらっしゃるのです。やはり会った瞬間に 、残酷な話ですが向き、不向きは分かってしまうものなのです。また、そういう学生さ んに限って非常に熱心だったりもするのです。ですから、この先どうやってこの子に話 をしていけばいいのか、考えてしまうケースもあります。おっしゃるとおり、まさに向 き、不向きの世界です。ですから、何回も申し上げているとおり、職場長が判断すると ころもそこなのです。「一生懸命だが、向いていないよ」と言われてしまうとどうしよ うもないのです。 ○高橋委員  一生懸命だが向いていないというのは、典型的にどの辺りの資質が欠けているパター ンが多いのですか。 ○木元貴俊氏  口で説明するのは非常に難しいですが。 ○高橋委員  気が利かないとか、そういう感じですか。 ○木元貴俊氏  気が利かないとか、そういったことももちろんありますが、見た目の印象も選考基準 のひとつになります。 ○高橋委員  物理的な問題という以上に、雰囲気がよくないのは駄目なわけですね。なんかモサッ としているとか、パッとしないとか、見てすぐ言葉で表せないものですが、少し話して みて行動してみると、何となくプロにはすぐ分かるという世界ですか。 ○木元貴俊氏  最初の回数が浅い段階の面接では、私も面接官として行くのですが、こういう人に接 客されたら気持がいいなという目で見ているのです。 ○黒澤委員  先ほど他のホテルでヒルトン出身者が多いという話がありましたが、中途採用で考え ますと、ある程度ベテランになってから中途採用をなさって、例えばヒルトンの幹部の 中でもヒルトン以外の出身者はどのぐらいいらっしゃるのですか。 ○木元貴俊氏  それほど多くはありません。やはりほとんどがプロパーの人間です。 ○黒澤委員  非正社員から正社員の登用はあると伺いましたが、例えばライフサイクルではいろい ろなイベント、女性の場合はいろいろあると思います。非正社員と正社員の処遇にそれ ほど違いがないというのは、それは逆に言えば実力主義ということになると思いますが 、それがあるがために、雇用形態についても非常に柔軟に、よくできる従業員の方が長 く続けられるような制度は貴社ではあるのですか。 ○木元貴俊氏  実際にご結婚されて、正社員としての勤務が困難になってきたケースで、一旦正社員 からパートタイマーへ戻したケースはあります。その方はご出産もされて、その間はも ちろん休職でしたが、その後、子育てが一段落されて、普通どおり働けるようになった ところで、パートタイマーから契約社員になりました。これは決してレアなケースでは ありません。ただ、出産をされてしまうと、戻ってこられないケースが多いです。 ○廣石委員  御社ではELEVATOR PROGRAMやMANAGEMENT TRANEESHIPなどプログラムが用意され、それ に対してエントリーするお考えだということですが、これは自発的にプログラムを受け ないと、もうキャリアアップの機会はないのか。例えば人事の目から見て、もしくは上 司の目から見て、この人間は優秀そうだなと思った場合、会社が主導的といいますか、 CDP(Career Development Programs ; キャリア開発プログラム)の一環としてあち こちの部門を回す、もしくは他のヒルトンへ異動させるといったような旧来日本型と言 いましょうか、会社主導で本人のキャリアパスを作っていく考え方はあるのかどうか。 ○木元貴俊氏  私どもは会社主導ではなく、あくまでもチームメンバー主導です。「ヒルトンは性別 や学歴に一切かかわりなく、誰にでも平等にチャンスは転がっています。しかし、その チャンスは会社がくれるものではなくて、自分で全部掴んでいかなければ駄目なんです 。」会社説明会などではよくこのような言い方をしています。あくまでも、やる気のあ るチームメンバーがこれに参加するものです。会社が無理矢理やらせるということはあ りません。ただ、初期のプログラムに関しては、「今度こういったプログラムがあるか ら、参加して下さい。」というお話はいたしますが、キャリアデベロップメント、要す るに幹部になっていく段階になると、それは本人の自主性に任せて、会社から無理矢理 やらせることはありません。 ○廣石委員  各仕事のレベルまでは義務的にと言いましょうか、上司から受講することを勧めるが 、それ以降は上司から特に勧めることはなく、本人が自発的に何らかのプログラムに乗 らない限り、キャリアアップは望めないというイメージでよろしいですか。 ○木元貴俊氏  はい、結構です。 ○佐藤委員  今のに追加的ですが、CROSS EXPOSURE TRAININGがありますが、これもフロントの人が 他の所に移動するというような、仕事範囲を広げる横の移動も本人の希望ですか。 ○木元貴俊氏  そうです。 ○佐藤委員  このトレーニングは、希望する人が手を挙げて受けるということですか。 ○木元貴俊氏  はい。 ○佐藤委員  希望しても相手側が受け取らなければ動けないわけですよね。 ○木元貴俊氏  もちろん、それもあります。 ○佐藤委員  基本的には相当評価されないと、本人が希望するだけではなく、動けないから滞留す る人も相当いる可能性は高い。滞留というのは同じ職場にずっといる、動きたいが相手 が採ってくれなければ駄目ですよね。 ○木元貴俊氏  ただ、ホテルは比較的ターンオーバーが多い業界ですから、そういった希望が出た場 合、それが滞るケースはほとんどないです。 ○佐藤委員  そうならなければ他へ移っていく形ですよね。 ○北浦委員  能力評価との関係で、賃金制度が出ていて、「年齢勤続給」と書いてありましたので 、おそらく日本でローカライズした経営体系なのではないかという気がしたのです。た だ見てみますと、「職能給」という書き方になっていて、それが職務によって随分差が 出るような形になっていると。そうすると、これは単純な職能給ではなく、職務ごとに かなり違いを付けた職務給的な形になっているのか。少なくとも、「職能」の所で「行 動特性」と言われていたので、かなり具体的な基準を入れ込んでいるのか。また、職務 によって差が付くというか、職能と言っておきながら、そんなに差が付いてしまう。そ の辺の仕組をもう少し説明していただければと思います。 ○木元貴俊氏  ヒルトンの中では管理職のことを「DEPARTMENTS HEAD」という呼び方をしていて、A BCと3つのランクがあり、Cからだんだんくらいが上がっていくごとにB、Aとなり ます。職能給もそれに応じてアップしていきます。どちらかと言うと、職能給というよ りはポジション給と言ったほうがいいでしょうか。例えば、レベニューマネージャーと いうタイトルだから、職能給がこの金額になりますという感じです。 ○北浦委員  よく分かりました。おそらく役割給とか、そういうものにかなり近いと思いますので 、職能給というのは名称の問題だけだと思います。  それから40歳で管理職になるか、ならないか、そこで1つの節目があるということで すが、その差の付き方は結構大きいですから、その節目は40にすべてあるのか、その前 に能力の評価によってかなりターンオーバーに入っているのか、実態としてどうなので すか。 ○木元貴俊氏  決して40歳を境にどうのこうのということはないです。もっと早い段階でターンオー バーは行われます。ホテル業界はもともと給与はあまり高くない業界で、そういった意 味で外へ流出してしまうケースも実態としてはあります。 ○廣石委員  今、ターンオーバーのお話が出ましたので、それについて伺います。給料の話は実感 として分かるのかもしれませんが、それ以外にターンオーバーは、どういった理由が真 の理由として持っているとお感じですか。 ○木元貴俊氏  退職時に必ず退職するチームメンバーを呼びまして、私か、もしくは私の上司である 人事担当者が面接をすることになっています。いろいろな話を聞くのですが、非常に多 岐にわたっていまして、一概にこれが理由と申し上げるのは難しいのですが、やはり待 遇面を挙げるチームメンバーが多くいるのは事実としてあります。また他にホテルがオ ープンするときにもターンオーバーは増えます。私どもの話になりますが、来年5月に グループで「コンラット東京」というホテルが汐留にオープンする予定になっているの ですが、これに向けてやはり国内のヒルトンの人事の人間は一体どれだけの人間が動い てしまうのだろうというような感じです。それも踏まえて2005年度の新卒の採用に今は 取り組んでいるところです。 ○諏訪座長  まだいろいろご質問があろうかと思います。私自身も少し伺いたいこともあるのです が、残念なことに予定した時間になってしまいました。大変短い時間に要領よくご説明 いただきありがとうございました。それでは木元様に対するヒアリングは以上をもって 終らせていただき、次の企業ヒアリングに移らせていただきます。どうもありがとうご ざいました。 ○木元貴俊氏  どうもありがとうございました。 ○諏訪座長  それではまず事務局から松園様と海老原様のプロフィールなどを簡単にご紹介いただ き、その後でそれぞれからお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。 ○事務局  株式会社リクルートエイブリック、キャリアプロモーション二部部長の松園様、経営 企画部エグゼクティブディレクターの海老原様をご紹介します。松園様は1982年に株式 会社リクルートに入社され、『とらば〜ゆ』『ベルーフ』などの営業を担当され、1985 年から九州支社で転職情報誌の『B-ing』九州版の版元長、編集長を務められました。19 95年からは企業顧客へ新卒、中途、人材教育サービスを提供する営業部である就職情報 誌事業部渋谷営業部部長を、1999年からは準大手企業、中堅中小企業への採用サービス の専任担当部であるHR事業部の採用総合サービス営業部部長を、さらに2000年からは 大手企業の採用、教育サービスの専任担当営業部である人材総合サービス営業部部長を 歴任されています。2002年からは現職の株式会社リクルートエイブリック、キャリアプ ロモーション二部の部長となられ、情報精度向上プロジェクト等に携わられていらっし ゃいます。  海老原様は、1989年にリクルートエイブリックの前身であるリクルート人材センター に入社され、広告製作、マーケティングを担当されています。その後事業企画、募集企 画、経営企画などを歴任され、2001年から「リクルートワークス研究所」に出向され、 『Works』の編集長を務められたとのことです。その後、リクルートエイブリックで現職 の経営企画部エグゼクティブディレクターとして現在新規事業開発、事業計画策定など の事業運営に関わられているとのことです。 ○諏訪座長  それではよろしくお願いします。 ○松園健氏((株)リクルートエイブリック)  よろしくお願いいたします。私から会社概要を少し説明させていただき、途中から弊 社経営企画の海老原から人材紹介のマッチングの考え方と、質問を事前にいただいてい ますのでその回答をお話したいと思います。弊社の会社概要、対外向けの転職市場の動 向を、求職者、求人側から毎月レポートさせていただいている資料をお手元に配付いた しました。まず会社概要は社名の如くリクルートグループの関連で設立は1977年。当初 は「人材情報センター」という社名でした。当時の言葉でいうと人材斡旋事業というと ころを生業に設立いたしました。直近の業績は154億円ということで人材紹介事業業界の 中ではナンバー1です。具体的な事業内容は人材紹介事業、セカンドキャリアと書いて ありますが再就職支援、アウトプレースメントを含めたセカンドキャリア事業です。最 近若手の離職・転職の問題もあり、「アイカンパニー」というビジネススクール事業も この1年進めております。内訳は人材紹介事業が売上げ構成比からも圧倒的なシェアで す。昨年度扱った転職決定者数が1万1,200余名でこの約1万強が人材紹介の決定実績で す。弊社の中では過去初めて5桁に決定実績が到達しました。これは年間の転職の決定 者数です。そういう意味では感無量ですし、一方では転職マーケットは330万人、ホワイ トカラーでも18万人というマーケットの中で1万強という取扱いですので、まだまだ頑 張っていかなければいけないという状況です。  先ほどお話したように弊社の設立当初は人材斡旋事業というのは、日本ではあまりお 手本となる会社がありませんで、設立から約20年間、ビジネスモデルも試行錯誤を繰り 返しています。その中で社名変更とともにここに書いてあるようにビジネスモデルを6 年前ぐらいに変えました。転職希望をされる求職者側のコンサルタントとしてキャリア アドバイザーという専任のサービスをするコンサルタントを付け、企業、求人をされて いる側にリクルーティングアドバイザーという、いわゆるアメリカの不動産型、それぞ れにエージェントが付き、そのやり取りの中で決定をあげていくというビジネスモデル に変更しています。  具体的には弊社の中で年間の求人は、人数で4万強です。取扱いの社数で言うと約5,0 00社弱。これは全国7大都市を中心に事業を展開していますので、この規模になってい ます。一方で個人の登録者は年間で約5万人弱、4万6,700人の方が弊社に登録されてい ます。そういう意味では5万人近い方に登録いただき、その25%の1万人が弊社を経由 して転職されているということです。転職マーケットの特徴かもわかりませんが、現職 、離職では大体7割ぐらいが現職の方です。技術系、事務系はここには書いてありませ んが、大体4割と6割で事務系が多少多めかと思います。取扱いの求人の規模も大体大 手、中堅、中小3分の1ずつぐらいの割合になっています。内資、外資も大体8割と2 割ぐらいで、最近外資系企業の取扱いも急激に増えています。簡単に申し上げましたが 、弊社の事業内容は今説明させていただいた通りです。続いて海老原から「転職のマッ チングという考え方」について簡単にご説明いたします。 ○海老原嗣生氏((株)リクルートエイブリック)  佐々木さんから最初にいただいたお題が「転職時の目安になるような能力基準、そう いうものはありますか。」という話でした。私自身この話は「ああ、またか」という感 じがしました。最初1999年に経産省とエイブリックでそんなことをやっておりました。 そして私がワークスに行っていたときに、東京都の審議員にワークスの大久保所長がな り、そこで1回。そして経産省のプロジェクトでもう1回ありました。都合私はこれで 4回目です。4回のうちワークスで2回、エイブリックで2回目です。エイブリックで 作ったもの、ワークスで作ったもの両方とも今、企業に広めて使っているかと言うと、 使ってないのです。この辺の話をさせていただきたいのです。なぜ使われなかったかと いうような話なのです。皆さんの念頭にはNVQ(National Vocational Qualification s;英国における職業能力評価制度)やCCE(フランス能力証明システム)があるのだ ったら多少日本は違うのではないかという話をしたいと思います。まず能力基準が一般 的にやはり「能力をどう言葉にするか」に腐心していること。スキル、スペック、ナレ ッジなどは、時事性があり陳腐化が激しいのであまり入れられない。そこで能力とはコ ンピテンシーベースに近いものになっています。これだと中途採用をやっている企業で も、人材バンクでも使わないのですね。問題は2つあると思います。  問題の1、能力基準に従って評価はどうやってやるのかという問題。能力基準自体が 漠然としたものなので、実際に人を評価して点数化するときに、人によって答えが異な ります。まれに基準明示尺度が出ている場合があります。「何がこれくらい出来た場合 、こうだ」と点数を付ける場合もあります。それでもなかなか付けられません。さらに 本格的に能力評価を行おうとすると、ストラクチャードインタビュー、構造化面接をか なり熟知し、インジケータという概念を活用してやらない限りできません。そういう意 味で「能力基準はなかなか作りづらい」、「何とか作ってもそれを評価・考課が難しい 」という問題が出てきます。これが使われない理由の1つ目です。  2つ目の問題がかなり大きいです。2つ目の問題は、こうしたものは例えば社内、業 界内ならまだ使えるのです。同じような経験、同じような職域、同じような知識がある 人たちの中で能力がどうかと比べる場合なら使えるのです。つまり、社内での配置・任 用などには向くのですね。ところがまるで違う業界で、知識も経験も何もない所で能力 だけ同じだった場合に、果たしてそれが活かせるのでしょうか。これは私達が人材バン クをやっているかぎりは「ノー」としか言いようがないのです。例えば営業の能力基準 に書いてある「顧客のニーズや状況を巧みに理解し、条件に合った提案が、本人一人で できる」。こういう能力基準を満たしている人がいたとします。しかし彼がやっていた のは官公庁向け、お堅い所を相手にずっとしゃべるという営業。その彼が転職して、い きなり50代女性のお客様を相手に能力発揮ができるかと。同じ能力でも発揮する場面、 知識によっては明らかに違いが出ます。発揮する場面が違うということで、もう1回作 法を覚えなければならない。知識も覚えなければならない。そうやっていくとキャッチ アップに2、3年かかるのです。そういう意味で再現性に問題がある。即戦力がターゲ ットとなる中途採用には、この基準の活用は難しくなるわけです。どうしてNVQやC CEがうまくいったかは、クラフトユニオンベース、つまり同じ職域内で移動するから ではないかなと私は想像しています。日本ではこれがかなり難しいと思っています。  次に、私達はさらに能力という概念について少しお話したいことがあります。例えば あるWEB系のクリエーター・SE養成学校を出て、SEの勉強をしてきた人はかなり 知識があります。たくさんの実作課題もこなしているはずだから、知識だけではなく、 実作の能力もかなりあるはずです。ところがSEとしては使えません。どうしてでしょ う。これは簡単なのです。SEの本当に必要な能力はその学校では教えてくれていない のです。例えばSEをやっていれば、ものすごい仕事がたくさんきます。たくさんきて 、それを徹夜でこなします。徹夜でこなすとき、みんな泣きが入ります。泣きが入った 人をなだめながらやっていきます。泣きが入っても耐える、耐えて不平を言う人達を抑 える。このような能力がSEには当然必要なのです。そういうものがあるかないか−そ の学校を出ただけでは、ない可能性が高いでしょう。逆にSEで2年間やっていた人達 には、そういう修羅場を何回か経験しているのが目に見えて分かります。それが何回経 験していたか明示的に分かればもっと能力が見えてきます。そういう意味で私達は経験 の方を主体に取るのです。  プリントには経理の話が出ていますが、同じような話です。例えばビジネスパーソン の職務能力としていちばん下に、ポータブル・スキル、ちょっとコンピテンシーに近い ようなもの、企画能力、プレゼン能力、コミュニケーション能力などがあります。これ は表出化しやすいです。表出化困難な能力が上にあります。専門的な経験とともに増え るノウハウ。いちばん表出化しやすい知識が上にあります。この点線の所、私達はコン ピテンシーとは関係ない「ナレッジ・スキル」と呼んでいます。例えば経理の場合なら 、決算業務を経験したというと、徹夜の連続に耐えた。弱音を上げるメンバーを鼓舞し た。締切のプレッシャーに耐えた。膨大な業務を差配した。こういうようなことが目に 見えない能力としてあるわけなのです。経理に本当に必要な能力というのは、これは多 分知識やコンピテンシーとは違うだろうと私達は思っています。逆に経理で決算業務を 2回経験した。多分この修羅場は全部経験しているのだね。それならば2回耐えている ということは、少なくともこれに何らかの耐え得る能力は持っているはずだ、と私達は このように見るわけです。企業も同様に見るわけです。この手法だと、経験を分解して 見るだけでよく、さしたる考課者訓練も必要ないし、明示性も高いのですね。このよう なものをうまくパッケージ化できないか、というのが私達の考え方なのです。ここに出 しているのは端的な例です。コンピテンシーでは見えづらい経験ローカルな能力。例え ば上手な手の抜き方、稟議の通し方、業界の作法。こういうものはなかなか表出化しな いのです。これをすべてパッケージで持っていると同じ業界などには行きやすいわけで す。先ほどヒルトンの話を聞いていたときもそう思いました。ヒルトンにいたというの は「外資系・エグゼクティブ対応」の経験パッケージを持っているわけです。大きな所 で、顧客は外国人が確かに主流で、エグゼクティブで、こういうような経験を全部持っ ているから、それに類する環境に対応することができるのだろうと。だからヒルトンの 人達を進んで飲食業は採用するのだろうと。こんな感じで経験のパッケージ化が採る方 の頭の中でできているのではないかと私は思っています。  経験を構造化するという話ですが、これは大して難しい話ではないのです。しかも汎 用性が非常に強いものなのです。例えば営業で見ると、営業とは何をやっているか。有 形のものをやっているか、無形のものをやっているか。有形のものだった場合、パーツ なのか完成品なのか。完成品だった場合、既成品なのかイージーオーダーなのか注文品 なのか。このような話です。対象が法人なのか、官公庁なのか、顧客、チームの編成、 納品のサイクル、納品ロット。このようなもの、汎用的にこのようなものが使えて、職 種ローカルでいろいろなことが経験には出てくるだろうと思っています。しかもこの経 験が似ていると、似ている所には行けるというのが、私達の肌感覚なのです。例えばよ くある話で、学生向けの教材の営業をやっていた人、これが旅行業界に行く。これは経 験の構造化で見るとほとんど同じなのです。自動車業界のきょうたい筐体設計で、なぜ かAVの設計をやっていた人を採用した。なぜか。これは自動車の筐体など、昔は4年 サイクルだったのがどんどん商品サイクルが短くなって、次々に派生商品を作らなけれ ばならない。そうすると商品サイクル、ロット、そういうものがどんどん小さくなりA V業界に近くなってきた。だから経験が同じだからその人を採ったと。こういう形で経 験が似ていると採用するわけなのです。NVQベースで世界標準があるから、つい頭に 置いてあれを作ろうと思っているかもしれませんが、日本オリジナルだったらこの経験 のパッケージ化というものができないかなと。人材バンクでやっている斡旋というのは この部分が非常に強くなるわけです。こうした形で構造化すると、経験というものが非 常に明示性・一意性が高くなると。情報の蓄積・検索・流通が容易になると。それから 代替も可能になるということを考えております。  「経験の構造化」の具体的なメリットというお話です。1つには、汎用性が高い。先 ほどのストラクチャーは簡単に作ってみましたが、例えばIT業界でもSEの場合でも かなりの部分使えるのです。人事でも採用するのが何人か、大きいのか。それを何人で やるのか、何カ月でやるのか。そういうような形でかなり使えるのです。そういう意味 でパッケージの汎用性が非常に高い。2つ目は、異業種・異職種転職のメカニズムがあ る程度解明できる。知識とナレッジの部分はありますが、それ以外の環境という部分、 経験の類似という部分はかなり説明がつくようになる。3つ目は、明示性が高い。今ま ではSEなどを採用するとき、NTT型の大型規模、大型プロジェクトをやっていた人 、こういうような形で私達の所にオーダーがきたりします。しかしNTT型というのは 受け手によりずいぶん違うわけなのです。ところがこれは構造化していけば、示せるよ うになるだろうと。必要とされる経験はパッケージ化して、明示することができる。  評価が簡単、これが最初のいわゆるストラクチャードインタビューとの差です。評価 基準が一意に理解でき、考課者訓練もほとんど必要ない。このようなものを職種ローカ ルで作っていったらどうかというような話なのです。  最後に少し厳しい話ですが、お話させていただきたいのは、紹介行為として私達がや っているのは、4つのことをやっていますということです。技能の適合、知識やスキル の適合、これが一番分かりやすいです。簡単に表出化できるものなのです。これが今一 般的に一番使われているキーです。次に私達は経験の適合をうまくできないかと、この 2つが適合すると、かなりの割合でいける可能性、いけない可能性が分かるようになる だろう。3つ目が人の肌合い、タイプ、コンピテンシーもこの部分に少しかかりますが 、そのような適合です。4つ目は、待遇や希望ですが、これが転職の場合あまりにも大 きいので、ひっくり返されることがあります。これが辛いところなのです。実業という 言葉を使うと非常に失礼なのですが、実業に1回でも携わってみるとよくわかるのです 。小泉総理がよく転職者はこれだけいる。仕事はこれだけある。問題はミスマッチだと いうような話をします。あれはWorksがリークしたのですが、しかし私達的に言うと、あ れはデスマッチなのです。絶対にマッチしないものなのです。非常に辛いところがあり 、例えばある大手流通業が倒産しました。そこの斡旋の例です。多摩地区に住んでいて 、その地域の店舗に勤めていた方の例ですが、その会社は非常に年収が安く、40歳代半 ばでも500〜600万円しかもらってない。40歳代半ばで流通業の店舗マネージャーという のはなかなか転職先などないのです。探しに探して、彼らの能力や彼らの経験値でぴっ たりな所を探しました。山梨にあるカテゴリキラー(特定分野に的を絞った郊外型安売り 店)の会社です。カテゴリキラーの会社であなたの経験、能力を持てば、本社スタッフで もいいと。本社スタッフで採用で年収は200万円ぐらいアップ、700万円の後半までいき ますが、どうですかと。大月ならすぐだし、こんなの絶対ないですよと。職安に行って もどこへ行ってもないですと私達が言っても、結局家族が山梨に行くのはいやだと言っ て反対して、終わりになるのです。こういうような状況で非常に厳しいのが現実だとい うことです。  下の表はなかなか分かりにくい話なのですが、(1)と(4)、給与、待遇、技能に関して はデータベースにすべて入っているので、これでマッチングすると、例えば首都圏とい うのは70万件ぐらいマッチングがあるのです。そのうちクォター(四半期)当たりで決 まる内定人数は2,000人弱なのです。要するにマッチングでぴったりと、(1)、(4)がぴっ たりな人たちというのは、これだけいても決まるのはこんなに減ってしまう。まずそれ だけ厳しい商売だというのが1つです。ここにさらに経験的適合を入れていくと、この 確率が1桁か2桁アップするのではないか。訴えていることは何となく、話は外れます が、能力という見えないものを基準化するよりも、経験という代償でイメージ化するほ うがいいのではないか。その能力が見えやすくなるように経験というものをパッケージ 化していくというのはどうだろうか。これが私が今日お話したいところです。 ○松園健氏  お手元に事前のご質問に対するある程度の回答、お答えを出させていただきました。 「『大卒である以上、一流企業』という期待値の調整をどのように行っているのか」結 論から言うとなかなかこれは難しいです。世の中の価値観、転職観などが変わってきた という流れはありますが、やはりいわゆる有名企業に転職したいという大きな流れはそ んなには変わっていません。そこで我々がいろいろお話しているのは、そうではない価 値観、転職事例の中でその辺の理解をいただく、思考を少し変えていただく。または敢 えて我々からすれば難しいだろうという案件もあるのですが、一旦ご本人が受けていた だき、自分の中でリアリティを持って期待値調整をしていただく。そういうこともケー スとしてはあります。実際に転職するというのはする側もあまり知識がなく、企業が採 用という行為を振り返ってみるケースもあまりないので、どういう状況で企業が人を採 って、どういうときに人が転職をしてということにあまりリアリティをお持ちにならな い方がいらっしゃいます。そういう意味ではそこの両サイドの視点を我々が提供しなが ら、期待値調整をしています。1問目についてはポイントはそのようなことです。解説 で新卒採用の傾向も書いていますが、中途採用もそう大きくは変わりません。  2番目の質問については、正直言って弊社の場合は、小売業、販売サービス系の職種 の取扱いは、人材紹介の場合、年収に対してのフィーがかかることもあり、あまり案件 としては正直言ってありません。どちらかと言えば、店舗管理、店長というマネージメ ント側が主になるので、ここの質問に関しては参考にならないかもわかりませんが、こ こに3点書いてあります。アルバイトのキャリアでいくと、接客経験があるか、アルバ イトやパートの管理経験があるか、同業もしくは類似業での経験があるか。このぐらい は多少20代で言うと、参考にはなるかなというところです。  3番目の質問、「能力の高い人材」ですが、そもそも何をもって能力が高い人材とし て定義をするかです。一般的に言えば、出身校であったり、いまやっている職種、ポジ ション等々ということになろうかと思いますが、弊社の中では当然それもあるのですが 、それ以外学歴、ポジションなど関係ない中で、もっと幅広い定義の中での能力という ところをおいてサービスをやらせていただいています。そういう前提でお話を聞いてい ただきたいです。  その前に中途採用における能力が高いという定義に関して、もう1つ大きなファクタ ーがあります。転職市場という所で、冒頭の統計にも出ていますが、年間に大体330万人 ぐらいの転職者がいます。現実的に企業側で事業的なコアになるホワイトカラーと言わ れている職種群に限って言うと、1年間で全体で18万人ぐらいかなと思います。その中 である程度のレベルとすると半分ぐらいとなり、昨今の少子化の影響も受けて必ずしも 学卒イコール優秀層ということにはならないという現実があります。採る側の優秀な人 材というものはマーケットの状況がどうかとも密接に関係するということです。要は企 業が優秀な人材を採りたいといっても、なかなかマーケットにはいないということです 。その中で我々がお手伝いをしているケースも含め、採る側の実際優秀な能力に関して は、いろいろなケースがあります。先ほどの自動車の筐体設計の求人で、AVメーカー の筐体設計者を採る企業もありますが、いろいろな事業の流れを踏んで、製品サイクル が短期化していたり、またはコストダウンを図らなければいけない、多様化している、 そういう商品サービスの内容の変更などの所に能力を持っている人材を採りたい。ビジ ネスモデルの変更によるそういうモデルを経験している人が欲しいなどです。ここに7 つぐらい書いていますが、そういう所を企業ニーズとして整理しながら能力の高さとい う定義に置き換えていくという作業です。  企業サイドも、ここをよく捉えて採用を実施する企業とまだまだこういうところもよ く分からないでとにかく中途採用をやりたいというところもあります。中途採用をやり たいということは必要な経験・能力が社内に足りないか、もしくは社内にいないから欲 しいということですから、必ずしも世の中に対象となる人が絶対数いるという前提には ならないということです。  4番目は、職種・分野に関係なくということでは、我々の中でも企業からのご要望で 5つぐらいは共通項として捉えています。矛盾をおこすかも分かりませんが、学歴、そ れなりの学校群の出身、経験企業の規模であったり中身であったりです。転職経験です が、転職は3回までとよく言われますが、いろいろな要素、技術も含め、経験した期間 にブランクがあるかないかです。ブランクがあるとそれを経験していても、もう通用し なくなっていることもあります。あとは経験してきた分野・年数です。この辺がひとつ のスタンダードになってきます。一部ポータブルスキルということで書いていますが、 企業から基本的にベーシックなところと言われているのが、人材タイプに近いかもしれ ませんが、コミュニケーション力があったり、課題設定、課題解決、主体性、昨今多い のがストレス耐性が強いかどうかです。  5番目は、コンピテンシーだけではありませんということで、いちばん重要なのは先 ほど言いましたような学歴であったり、転職回数、経験企業であったりです。2番目は 経験の職務、仕事内容です。3番目が、ポテンシャル、資質です。コンピテンシーに関 しては4番目ぐらいに位置されるのかなというところです。中身に関しては、コンピテ ンシーに関しては当然転職するフィールドにもよりますが、極めて再現性が乏しい部分 があります。前職の中では大変発揮されたコンピテンシーが、フィールドを間違ってし まうとただの人になってしまうケースを散見することがあります。  一方で先ほど話があったように、マッチングの考え方でもあるのですが、経験してき た職種や能力、そこを構造化しながら転職していく経験ベース、類似案件であるかどう かの関係が大変重要で、事例にも挙げましたが、特に営業職などはわかりやすいです。 取扱い商品の属性、顧客属性、営業形態の属性等々で、業界が違っても全くこの属性で の経験が使える案件もあるということです。そうなると再現性が逆に高くなるというこ とです。一部書いていますが、例えばハウスメーカーさんの営業経験者が、医薬メーカ ーさんのMRとして転職されるケースも多いです。旅行業界から学習業界への転職もあ ります。  6番目は、非正規型の社員への対処ということで、まだまだ日本の場合は受け入れ、 マネージメントというのは少し遅れていようかと思います。昨今我々がお手伝いする中 で、いろいろな非正規型の社員への展開を感じています。1つは、常用目的型雇用、よ ければ正社員にしていきますと。ただその手前では、ある一定期間は契約社員です。そ ういう形態も出てきていますし、紹介予定派遣のような一旦は非正規なのですが、将来 的に正規に替えていくという形態も増えています。例えばメーカーさんなどでも最近デ ジタル化が進んでいますが、一方で電源関係、アナログの技術を使わなければいけない 分野も大変重要になってきていて、最近の理系の学生はデジタルしか習っておりません ので、アナログに関しては全くわからないエンジニアが若手には多いと。そういうとこ ろで過去を経験した50代のアナログの開発エンジニアを一旦は契約社員で処遇しながら 、本当によければ正規社員に切り替えて幹部にする、マネージメントだけやっていただ く、そういうケースも出てきています。  非正規で言うと、採用だけではなく、マネージメントの問題もまだ課題が鬱積してい るかと思います。逆流もしています。非正規で派遣に切り替えて、業務がうまく回らな くなって、改めて正社員化する。昨今の情報管理の問題は企業リスクにもなっています から、敢えて非正規ではなく、正社員に切り替えるという動きが世の中では出ています 。掻い摘んでいますが、回答です。 ○諏訪座長  大変ありがとうございました。それでは委員、事務局の方々でご質問があればご自由 にお願いします。 ○佐藤委員  実務経験に基づいてその人が持っている能力をきちんと把握する、経験の構造化は賛 成なのですが、今までコンピテンシーとはリクルートが言っていたのですが、それはエ イブリックはもともとそうだったのですか。つまり海老原さんはエイブリックへ行って 実際にそういうことをやってみると、コンピテンシーでやれないということで変わって きているが、リクルート全体としてまだコンピテンシーと言っているのですか。質問で はないのですが、個人的には知りたいということです。 ○海老原嗣生氏  私はもともとエイブリックローカルなのですが、エイブリックはもとからコンピテン シーはそれほど取り入れていないのです。リクルートは一時言っていましたが、今はそ れほど言っていないです。 ○佐藤委員  それはいいことです。 ○海老原嗣生氏  やはり外資系のコンサルのほうがそれは有名ですので。 ○佐藤委員  早くやめたほうがいいと思います。質問は経験の構造化で、営業職の例がありました が、これは多分実務経験からその人が持っている具体的な職務能力をどう把握していく かというひとつの考え方だと思います。他の職種についてもかなりやられているのか。 例えば経理の仕事の領域だと原価管理、財務管理、資金とあります。そうすると経理の 中での幅というのはそれで見るなど、全くどういう顧客、規模などと単純にいかないと ころがありますが、経理、研究開発などそういうものは作られているのですか。 ○海老原嗣生氏  実際に作っているのではなく、キャリアアドバイザーの頭の中でやっているだけなの です。 ○佐藤委員  そうするとこれについても海老原さんはこういうものはかなり斡旋の現場で使われて いるわけではなくて、頭の中にあるだろうということですか。 ○海老原嗣生氏  頭の中にあるだけです。 ○佐藤委員  という風に、海老原さんが思っているのですか。 ○海老原嗣生氏  多分現場にはないと私も思っています。 ○佐藤委員  そういう意味ではまだこういうものはきちんと。 ○海老原嗣生氏  オーソライズされていないです。 ○佐藤委員  オーソライズされているわけではないと。 ○海老原嗣生氏  はい。 ○佐藤委員  わかりました。非常に考え方としては賛成なので、そうするとまだ開発の余地はある ということですね。 ○海老原嗣生氏  そうなのです。 ○松園健氏  私の経歴の中に「情報精度向上プロジェクト」というのがありましたが、そこは何を やっているかと言うと、求人側と求職者側のマッチングのもっと精度を上げていくとい う前提の中で、何が情報として必要で、何が重要なファクターになるかをまだまだ弊社 の中でコンサルタントの属人的な頭の中で管理しているところもあります。ある程度シ ステムも導入して、少しマッチングを進化させていきたい。ですからまだ出来てないこ ともいっぱいありますが、多少そういう設計を基にインフラ整備をしているというのが 現状です。 ○黒澤委員  今のことにも関連するのですが、経験のパッケージ構造化の習得というのも非常に、 特にキャリアアドバイザーにとっては重要だと思います。そのほかにもやはりカウンセ リングの手法なども重要なのではないかと思いますが、その場合エイブリックでカウン セラーの育成は何をどのようになさっているのか。もう1つは、確かにワーキングパー ソン調査でもあまり効果がないと言われていますが、いわゆるマッチングの過程で資格 はどのくらい有効な機能を果たしているのかと思われますか。これは主観的なことでよ ろしいので、是非お聞かせください。1点目のことに付け加えて、キャリアカウンセラ ーの資格についてはどのように思われるかについてもお願いします。 ○海老原嗣生氏  カウンセラー教育はまず専門知識、次に勉強しなければならないのが労働力需給、L MIです。この2つは1つの業界に携わると結構みっちりあります。その2つをやって 、本当にその人がキャリアアドバイザーとして完全にベテランと同じレベルに達するま ではOJTとして1年かかります。大体9カ月から1年目ぐらい、4クォーター目と私 達は呼ぶのですが、4クォーター目の人たちはほぼベテランと同じ数字を上げます。だ から最初の導入で細かい専門知識、業界作法などを教えた後に、9カ月OJTが必要と お考えください。  資格としてはこういうことがあります。1つは、志向性がわかる。例えば経理の資格 を取って、財務の資格を取って、税理の資格を取って、これは志向性がわかる。この人 はこの方面に対してかなり熱意があるな。そういう意味でひとつはプラスが働きます。 ただそれが経理の資格を取って、ITの資格を取って、英語の資格を取ってというと、 この人は何だかわからないと。こういうことで志向がわからない資格の取り方はあまり プラスではないです。2つ目は、難しい資格を取る人は継続学習能力と頭の良さがある という評価をされます。実務能力よりもこの2つのほうがかなり高いです。そういう意 味では同じ意味でいい学歴というのは、学歴に惚れているのではなく、継続学習能力と 頭が良いのだろうという予測で同じような扱われ方をします。  3つ目、キャリアカウンセラーの資格は、これは正直言って全然使われていないです 。キャリアカウンセラーの資格は今は大手団体で3つあり、そのうち1つがリクルート なのであまり言えないのですが、その3つから私達の事業部はたくさん取っています。 採用は14人しています。主に女性ですが、彼女らに教育するのにやはり一人立ちするの に半年近くかかります。理由は簡単です。資格教育で行われた「受容と共感」により、 彼女らは転職者の悩みをよく聞いて、キャリアをどう設計してあげるか、このようなと ころにはノウハウを持っているのです。ところがLMIは一切知らない。さらにいうと 、仮にLMIを覚えていたとしても、それだけでは駄目なのです。転職というのは無理 なことは無理と言って(行ってみたら良かったということがあるので)、行きたくない 所へも目を向けなさいと言って、こちら側が主導権を取って、イニシアティブを取って やっていかない限り動かないのです。受容と共感で相手は気持よくなります。気持よく なるから永遠に何回も来てくれる。何回も来てくれて転職しないからそのカウンセラー はもうかる。でもそれはカウンセラー商売をやっているときはもうかるかもしれません が、転職斡旋としてはもうからないのです。このようなことがあると思います。 ○松園健氏  1点だけ補足します。キャリアアドバイザーの教育では、フォーメーションの組み方 があり、大体業界ごとに50歳代を中心とした業界経験のある方を契約社員でキャリアア ドバイザーで入っていただきます。そこに若手の正規社員のカウンセラーを含めてミッ クスの組織でやっています。先ほど言いましたように、専門性、転職の相場感の2つを 組織の中のナレッジとして教育しています。  専門性があまり強すぎても、固定観念が強く、転職の斡旋を数こなしてみると、実は さっき言いましたようないろいろな転用ができるような転職にたどり着くという、それ を数やってみるということも必要であり、そことのミックスでキャリアアドバイザーの 教育につなげているというところです。 ○廣石委員  今まで御社のメインのお仕事であるキャリアプロモーション事業のお話を伺ったわけ ですが、セカンドキャリアプロモーション事業においては、今までお話いただいたもの がそのまま通用するというか、基本的には同じものと考えてよいのか、もし違う所があ るとすればどういった所が違うのか、ちょっとお話をいただければと思います。 ○海老原嗣生氏  職能のレベルが高くなりすぎているというか、実務と離れすぎている部分があるので す。例えば営業やエンジニアとしてこういう実務をしていたと言っても、それは昔の話 であって、今やっているのは実務とかなり離れた所にあるものなのです。そのポジショ ンは、次の就職先で同様なものが見つからない可能性が非常に高い。例えば部長として 、部下がやることに対して差配だけをここ5年間行っている人は、その同じ能力で横移 動はもうできなくなっているのです。そうすると、かつて彼らがやっていたような、例 えば5年前10年前にやっていた「実務」能力とかをよく洗い出して、そしてそれもかな り陳腐化していることを理解していただき、給与待遇等レベルが落ちますよと、こうい うようなお話を何回もしていくわけですね。そこには受容と共感のスキルも必要です。 そうやりながら何社も落ちて落ちてとやっていかない限り、転職はできないのです。だ から、OPS(Out Placement service ;アウトプレースメントサービス)に関しては、 行動をパッケージしてそのまま横に移れるというような簡単なものではないだろうと思 っています。 ○松園健氏  ですから、通常の人材紹介より更に過去の経験とか能力というのは、しっかり整理し ながら転用できる求人側を開拓していくということが結構キーだと思います。それに加 えて、セカンドキャリアの方で言うと、転職側というか、40代50代の方なのですが、意 識の問題です。大手金融機関、大手メーカー等々含めて紹介し、面接に行っていただく のですが、どちらかというと、自分が腕組んで、足組んで、逆の立場でしょうというよ うな意識が、本当に3年ぐらい前までは冗談ではないぐらい強かったです。しかし、世 の中ここまでいろいろなリストラクチャーが進んできた中で、さすがにそういう方はだ いぶ少なくなりましたので、意識は変わってきていらっしゃるということだと思います 。弊社の中でも、なかなか社会的な意義はあるのですが、事業部レベルでやっていても ビジネス的に難しい部分もありますし、10月からこの事業だけを分割させて別会社にし ていきますので、もっとスケールアップしていきたいと思っております。 ○北浦委員  経験をいろいろな形で分析をされている点、これは非常に立派な試みだと思って、敬 意を表して聞いていたのですが、要は職務というものの幅と深みというもの、これは一 般的には、例えばこの経験というのはいろいろな所で皆、記述という形で使ってはいる のですが、それをこういうような項目に分析をしていくということが非常に重要なのだ ろうと。その点は全くそのとおりだろうと思います。  ただ、先ほどの話の中において、表出可能な所と表出が難しい所という分け方をされ ましたが、表出が容易な所というのは、逆にいうと学習も可能というか、学習体系を立 てやすい所、表出が難しい所というのは、今度学習という意味ではなかなか実際には難 しい、つまりやったかやらないか、こんな感じになってしまいますね。そうすると、先 ほどの言葉でいくと、再現可能性という所を重視するというふうにいくと、それはやは りそういう経験を持った人はそれでいいけれど、経験を持てなくてこれからその経験を やってみたいとか、今までのところでは十分にそういうものが出ていなかったのだが、 自分としてはやりたいのだと、そういうところについてはなかなか評価がされにくいの ではないかと。こんな感じがするのです。  ですから、転職の場合も、おそらく今までのところにおいてできたところ、成功体験 で、会社側から見ればそこを重視するのは当然だと思うのですが、転職する側で、違う 世界に入ってきたときに、今までここでやって成功していたから、おまえさんこれだよ というふうに言われたときに、実は、それはもうあまりやりたくない、もう少し違う方 向でやりたいというふうな意欲がもしあったとしたら、なかなかそれが評価されにくく なります。その辺のギャップというのはどう考えたらいいのか。やはりそれは無理だと 考えていくのか。そこのところはどうでしょう。 ○海老原嗣生氏  しかも、ナショナルサポート的な意味で言えば、産業自体が変わってくるのだから、 明らかにやったことのない分野に行かせなければならないと、これもニーズとしてある 。ということで、つい、他業界の「職能」を座学で教育すれば、何とかなるのではない かという方向で、雇用施策が打たれておりますね。でも、何とかならないのが実態だと 、つまり、座学だけじゃだめ、経験がないと難しい、それが今回の趣旨になります。そ うすると、「じゃあ未経験者は転職できないじゃないか、それじゃナショナル・サポー トいならない」と思われるでしょう。ただ、鬩ぎ合いしながら、うまく落ち着かせる着 地点があるのです。  例えばこういうことです。経理で2年間やっていた人でみんなで集団で、例えば大会 社で経理をやる場合だったら、経理というのは分担してみんなでやるわけです。結構ド ロドロになりながら、汗かいて、泣きながらやるわけです。細かい仕事をガーッとやり ながら、計算とかいろいろやるわけです。その能力、経験というのは、ほとんどSEと 一緒ではないですか。彼にもしSEの教育やITの教育をすれば、SEになれる可能性 はあるのです。経験が同じで知識がないだけの人もいるわけです。その場合は経験が同 じなのだから、あと知識を乗せればいいではないかと。それがいま、闇雲に知識を乗せ て、経験もない人に乗せているからもったいないと。IT教育をするなら、IT教育を やったらいちばん活きる人にIT教育をやるわけだし、経理教育をするのは、経理にい ちばん適するような経験を持っていて、あと知識だけを付ければいい人にやればいいわ けです。こうやれば、ある程度着地点が見えるのではないかと私達は思っているのです 。 ○北浦委員  今の点はよくわかりました。たぶん分解された中において、今言ったようなことを消 化していけば、実務的にはいろいろな可能性が見えてくるのだと思うのですが、ちょっ と思ったのは、例えば営業なら営業というような職種で捉えていますが、これは細分化 されているのですか。 ○海老原嗣生氏  実際にそういうのはスタンダードがないのです。ただ、キャリアアドバイザーの頭の 中ではされています。営業も、細かく頭の中でされてます。この営業とこの営業は似た ような経験が活きるはずだということで斡旋するわけです。 ○北浦委員  現実的には、営業の中でもルートセールスであるとか、いろいろ分かれるわけですね 。それによって対応が違ってくると。おそらくそれに応じて、先ほどの知識に当たるナ レッジの、ここでおっしゃっているナレッジは真ん中の部分ですから、いわゆる知識と か技能の部分においても違いがあるのですよね。 ○海老原嗣生氏  そうです。 ○北浦委員  その部分の整理はおそらく、最初にちょっと言われましたが、職業能力評価基準なり 、ある程度スタンダード化するということはやってもらったほうがいいのではないかと 私は思うのですが、そこは矛盾しますか。 ○海老原嗣生氏  そこに関しては、私はコンピテンシー的なものではなくて、知識とかスキルとか、こ ういうようないわゆる本当に明示性の高いものでやったほうがいいのではないかと思っ ています。それにプラスして、コンピテンシー的能力という基準を作るのが問題で、「 経験のパッケージ」という形でやったほうがいいのではないかと思っているのです。 ○北浦委員  分かりました。だから、否定するものではなくて、そういうものを一緒に考えること で、実態ができる、そういうことですね。 ○松園健氏  そうですね。そこは本当に、ミックスしていくということなので、全然否定している わけではないのです。それは前提としてあったほうが、経験能力みたいなところはより マッチングしやすくなるという話ですから。 ○上西委員  比較的若い人が転職される場合に、労働条件の問題ももちろんある場合があるでしょ うけれども、仕事が合わないという方が結構いらっしゃいます。その仕事が合わないと いう人をそちらのエイブリックさんから見てどういうふうに評価されているかというこ とと、今の、経験のパッケージ化、構造化という話ですと、やってきた仕事の中身を継 続するということですから、仕事が合わないと思っている人にとっては、果たして自分 に合う仕事に就けるのかどうなのかと思ってしまうのですが、その辺りはいかがでしょ うか。 ○海老原嗣生氏  比較的若い人の話ですが、例えば25、6までならば、いわゆる経験の構造化よりも、資 質のほうが強いです。コンピテンシーと言わず、資質です。例えばこの人は人前で話す のが好きだとか、この人は敏感性が高くて感受性が強いとか、逆に、この人は敏感性が 低くてストレス耐性が強いとか、こういうような資質で結構うまくいきます。基礎能力 、いわゆる基礎学力と資質で、かなりのところがうまくいけるのですね。高度特性では なくて、本人の性格特性に近いところです。20代中盤ぐらいになると、資質だけではだ めで、経験。ただしドンピシャじゃなくて、似ている程度でOKです。経験は似ている が業界は変えるとか、そんなようなことでうまくしのげるはずなのです。例えばさっき 言った経理からITという可能性もありますし、経験自体は結構似ているが全然違う職 種や業界というのがあるので、20代中盤ぐらいは、そのぐらいでしのげます。30代にな ると、両方ビンゴでないとかなりきつくなるというのが現状です。 ○松園健氏  昨今いわゆる第2新卒という若手の登録者の方が倍々ぐらいに増えているのですが、 今話したとおり、何をもって仕事が合わないかというところをもう1回我々は整理して 差し上げて、中には当然転職をやめる方もいらっしゃいますし、一般的に30代前後の方 でいくと、転職活動を我々がサポートするのはせいぜい1年弱ぐらいで、転職されるの です。第2新卒の方は2、3年ぐらい、いろいろな軸があるようでないというか、そこ をやはり身につけていただくために、長期間でフォローしていくというケースもありま す。 ○上西委員  いま20代半ばぐらいまでは資質だとおっしゃいましたが、そうしますと、新卒者を採 用するときに、企業が適性検査のようなものをやりますが、あれはやはり企業にとって は有効なのでしょうか。 ○海老原嗣生氏  新卒者に対しては資質をかなり見ています。見ていますが、例えばこの企業は社会的 内向性が高いか低いかということで、企業として高い人を採るというのではなくて、低 い人を、言葉はちょっと悪いですが、足切りするというような方向で使っています。そ れが現状です。ぴったりなビンゴの人しか採らないというのではなくて、「絶対無理と いう人をスクリーニングする」ようなものに使っています。新卒だと、中に入って育て ればいいという概念があるし、投資だという概念があるので、多少、資質に問題があっ てちょっと違うかなと思っても、チャレンジで採るということは多いので、そんなに厳 しく見ない。だから、絶対駄目だという人だけのスクリーニング用に使っているという 現状だと思います。 ○総務課長(妹尾)  先ほどのご説明の中で、例えば経理を2年間やっていた人が、場合によってはSEの 教育を受ければマッチングする可能性が高いというようなお話があったと思いますが、 例えばいままでずっと経理をやってきたご本人が、転職するときに、自分はSEの教育 を受けてでもそちらへいってみようというふうに思う人というのはなかなかいないよう な気がするのですが、そのご本人の思考と、今言われた、全然別の分野だが、教育を受 けてみたらそちらで合う可能性が高いというエイブリックさん側のお勧めとはどういう ふうにつながるのでしょうか。 ○松園健氏  必ずしも、そうでもないというか、例えば経理からSEという転職に関しては、冒頭 申し上げたように、事例で、例えばあなたと同じように経理をやっていて、SEに転職 され、このように成功されている方がいらっしゃいますというような事例で話していく と、意外にそういうふうに自分のキャリアが広がってくるのですかと言われる方のほう が多いということです。 ○総務課長  説明すれば本人も納得されるケースが多いということですか。 ○松園健氏  当然すべてではないですが。いわゆる選択肢としてそういうことを考えてなかったと いうことです。でも、冷静にそういう事例も聞いて考えてみると、確かに思考的には自 分もそういうキャリア形成があるかもしれないというふうにおっしゃる方も多いという ことです。 ○諏訪座長  ほかにいかがでしょうか。 ○高橋委員  ちょっと質問が1、2あるのですが、ちょっとコメントというか、私の解釈も2、3 入れさせていただいてお話をさせていただきたいのです。  今のお話などもちょっと絡む部分もあるのですが、1つはコンピテンシーというのは どういうものなのかという部分があって、これは、結構最近いろいろな重層化の議論が あって、ベーシックコンピテンシーとかマザーコンピテンシーとかいう話の場合もっと 重要だという話があって、マザーコンピテンシーという言葉を見ていると、ここでおっ しゃっている、面接で見るところ5項目ありますよという話などは、まさにそれですよ ね。主体性とか問対、コミュニケーション力とか、それから、リクルートワークスの大 久保さんが書かれた最近の本の中に出てくるものというのは、まさにそういう感じのも のが出てくると思うのです。ああいうものをあのレベルまで抽象化すると、何か私はか なり再現性が強いのではないかという気もするのですが、もともとのコンピテンシーが 、そもそもマッチングでなくて、ある特定の業界の特定の職務のハイパフォーマーをピ ックアップするために作られた概念だから、マッチングで使うのはそもそも無理だよね と、私は何かそういう感じがしますし、そもそも人事制度の等級とか、評価制度の中で 使うことも、さっきおっしゃったようにすごい構造化されたインタビューに時間がかか るので、毎年全社員やるというところでひっかかるよねと。  だけど、例えば将来の経営幹部候補生を社内からピックアップしようとか、そういう ときにはすごく有効性が高いと思うのです。おっしゃっているように、すべてのツール というのは、何でもかんでも使おうとするととんでもないことになる。特にマッチング の場合、コンピテンシーそのものを直接計るのはすごく手間がかかる。だから、ある意 味でのベーシックコンピテンシーを持っているかどうかを直接計らずに、どんな経験を 持っていたらそれが強くなっている可能性があるかというところで見ようとしていると いうお話なのかなと。ただ、そのときのコンピテンシーというのは、もうちょっと特定 の職務でなく、ベーシックなものなのかもしれません。さっきおっしゃっていた、修羅 場を乗り越えるとかね。そういうコンピテンシーは、修羅場を何回か乗り越えてきたの だろうから、この経験であるのではないかというところを見ておられるのだろうと思う のです。だから、マッチングの部分で考えると、それは非常に面白いのではないかとい う感じはしました。  ただ、そうなってくると、折角そういう話をするのであれば、いまの課長の話にもあ りましたけれども、ご本人ってなかなかそういうふうに考えないのではないですか。自 分のキャリアを狭く考えますよね。それから、さっきのヒルトンさんのお話でもありま したけれども、もっと若くなると憧れとか、そういうときに問題になってくるのが、さ っきのキャリアカウンセラーの問題だと思うのです。  キャリアカウンセラーの問題はリクルートもやっておられるし、私も多少何かで名を 連ねているのであまり言ってもあれですが、いま日本でやられているメジャーなカウン セリングの教育というのは、ほとんどがクライアントセンタードという、いわゆるロジ ャーズの理論に基づいているものを持ってきていて、あれはアメリカでは、どちらかと いうと学校などのカウンセラーのイメージが非常に強いのではないかというのが、私の 印象なのです。あれは学校にいる人間がまだ何にも自分については考えることのない人 間に、本当にその人のために考えてあげるという意味ではいいのですが、例えばアウト プレースメントもそうだし、いまおっしゃっている人材紹介もそうだし、それから、私 なんかが主に抱えている社内でのキャリア自立支援の会社の中のカウンセラーなども、 積極的にクライアントセンターとひたすらトランスペアレント(transparent )になるの ではなく、もっと認知の歪みみたいなものからいくとか、何でそう思っているのですか と、こうはどうして思わないのですかみたいな話は、やりに行かないと仕事にならない という感じがするのです。それもアウトプレースメントの場合と社内カウンセラーの場 合といろいろ微妙に違う所があるのです。あれはベースとしてすごくいいとは思うので すが、あれプラス何か今必要とされているカウンセラー教育みたいなものをどこかがや っていかないと、あれだけでは不十分かなと。逆にいうと、例えばいまの経験の構造化 みたいなものをもし御社で作られていくと、これによって人が登録に来るではないです か。この人が、何か細かく自分の経験をインプットしていくと、「あなたのいまの職種 業でこんな職種があるかもしれませんよ」「えっ」などというのを何かツール化して、 カウンセラーがその人の思いをグーッと広げてやるようなカウンセリングもツールにな るとか、そういうふうに使うとすごく面白いのではないかという気がしました。  それで、1個だけ質問なのですが、私は1つ、今回の研究会でも興味あるのは、その マザーコンピテンシーというか、そういうものを含めて試練を乗り越える経験とか、い ろいろ広い意味での育成上の経験というのは、やはり企業の中での、元いた企業の、単 純に業種職種だけではなく、例えば育成に対する考え方とか異動に対する考え方とか研 修に対する考え方とか、そういうものによって色濃く差が出ていて、端的にいうと、さ っきのヒルトンさんなんかの場合は、売れる人材をつくっているわけですが、それはあ る意味で一種試練を与えているわけです。大体ヒルトンを出た人というと、あそこで5 年やっているということは、このぐらいの試練を耐えてきているのだろうと、だから、 このぐらいのことではへこたれないということを、きっと採るほうもイメージできて採 るのだろうと思うのですが、そういう場合と、何かあそこで5年やっていたって役に立 たないぞという感じの会社、あるいは、会社のイメージではないにしても結果としてそ うなってしまっているという、その会社のマネージメントの問題にちょっと1歩入れな いかなと。すごく結論的に言ってしまうと、何か本当の意味で人材を育成している会社 というのを何か調べて表彰するとか何かできないかなという問題意識を持っているので すが、そういう意味からいくと、来られる方々で、前職はみんなお分かりですよね。人 を育てる会社と育てない会社、もうちょっと言うと、ここで売りやすいマザーコンピテ ンシーとか経験とかをどんどん得やすい会社と得にくい会社の特徴みたいなもの。ここ の会社の、別に特定面でなくていいのですが、一般論として差がどの辺にあるか、何か 感じられるところありますか。 ○海老原嗣生氏  ありますね。簡単に言うと、新卒採用に注目している会社というのは、やはりいまで も教育熱心です。それから、中途でも20代前半に絞って、つまり経験の浅い人を採って いる会社というのは、やはり教育熱心です。あるITの無名企業ですが、この企業はや はり教育体制が整っていて、あそこを出たSEというのは全員転職マーケットで評価を 受けるという企業があります。いちばん大きいのはそこだと私どもは感じます。 ○高橋委員  要するにスペック採用やっているような所。もう明日から即戦力、何が何年で、こう でこうでという、表面的なスキルの全部をこうやってスペック採用をやっているような 会社はいまいちではないかと。 ○海老原嗣生氏  そういうことです。 ○松園健氏  あと、どちらかというとオーナー系会社でその経営者そのものの考え方というか、そ こがより多く発揮されているような組織風土でやっている所の人たちが、通用するとか しないとかというようなのは、すごく傾向がはっきり出ますね。 ○佐藤委員  エイブリックが転職を斡旋したい人が所属する企業と、次に求人として出す企業が違 うということですね。 ○松園健氏  そうです。先ほど説明しなかったのですが、人物タイプみたいなところをもう少し整 理できないかなと。そこは企業のカルチャーとか、ある意味では企業の要素を構成して いるいろいろなファクターを分析して、企業DNAとかその辺のマッチングみたいなと ころももうちょっと整理したいなと思っているのですが、そこは正直言ってまだアナロ グ的にやっているのが現実です。 ○諏訪座長  非常に佳境に入ってきたのですが、申し訳ないことに、時間をオーバーしつつありま す。そこで、以上をもちましてリクルートエイブリックさんに対するヒアリングを終わ らせていただきます。どうもありがとうございました。それでは次回以降の日程につい て事務局からご説明をお願いいたします。 ○総務課長補佐  次回は、10月ぐらいにもう一度ヒアリングを開催したいと考えておりますが、まだど の企業にお願いしようかということ、それから、日程も調整中ですから、また後日ご連 絡させていただきたいと思います。その際、今回と同様に、事前に質問があるかどうか ということをご照会させていただきたいと思いますので、その際にはよろしくお願いい たします。 ○諏訪座長  それでは以上をもちまして第4回の研究会を閉会させていただきます。本日は、皆様 、どうもありがとうございました。