04/09/08 労災保険料率の設定に関する検討会 第6回議事録           第6回 労災保険料率の設定に関する検討会                        日時 平成16年9月8日(水)                           15:00〜                        場所 厚生労働省労働基準局会議室 ○岩村座長  ただいまから、第6回の労災保険料率の設定に関する検討会を開会いたします。  早速、今日の議事に入らせていただきます。これまで5回にわたって検討していただ いた料率の設定、メリット制、業種区分というものを中心にして、事務局と私のほうで 相談をしながら、中間報告の叩き台を作成させていただきました。今日資料としてお手 元にお配りしてあります。  最初にまずこの叩き台について、事務局のほうからご説明をお願いします。 ○数理室長  お手元にお配りした料率の設定についての「論点整理」ということで資料のご説明さ せていただきます。  I「はじめに」は、この検討会の開催の経緯を記述したものです。労災保険率につい ては、関係政省令の定めによって、将来にわたる労災保険の事業に係る財政の均衡を保 つことができるよう、過去3年間の災害率等を考慮して、業種別に設定するということ で、近年は新たな災害率等が把握される3年ごとに、公労使三者から成る審議会での審 議を経た上で改定しているところです。  その他、平成15年12月に総合規制改革会議においての第三次答申、これは平成15年12 月22日ですが、業種別リスクに応じた適正な保険料率の設定について、より専門的な見 地から検討を行い、本年度中に結論を得べきとされたところでございます。これを受け て、皆さん方にご参集いただいて、近年の産業構造や就業構造の変化等を踏まえ、料率 設定の具体的な方法などについて検討を行うということにしたところです。  2頁目が、「労災保険制度の概要」を簡単にまとめたものです。労災保険について は、業務上の事由又は通勤災害等に対して、迅速かつ公正な保護をするために必要な保 険給付を行うということと、併せて、被災された労働者の社会復帰の促進、その当該労 働者及び遺族の援護等、それから適正な労働条件の確保を図るということで、労働者の 福祉の増進に寄与することを目的とするということです。  一方、基準法においては、事業主の無過失賠償責任の理念が確立されておりまして、 災害補償を受けるのは労働者の権利であるということが明確にされておりますし、それ と同時に労災保険については、業務上の災害に際して、事業主の一時的な補償負担の緩 和を図る。保険のシステムで、事業主の補償責任を担保する制度として、役割を果たし てきているところですし、給付内容については、段階的に充実が図られてくるというこ とです。  労災保険は、一部の事業を除いて、労働者を使用する全ての事業に適用される強制保 険であるということで、それにかかる費用については、事業主が負担する保険料がほと んどで、若干の国庫補助等によって賄われているということです。労災保険によって、 被災労働者等に対する給付がなされた場合には、その範囲で事業主は労基法の補償責任 は免れるということになります。  保険料については、冒頭に申し上げましたが、徴収法令の定めによって、将来にわた る労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるように、事業の種類ごとに過去 3年間の保険給付等に基づき、算定した費用の予想額などを基礎として、過去3年間の 災害率、労働福祉事業の費用、それから事務の執行に要する費用の予想額、その他の事 情を考慮して定めていくというところでございます。  労災保険においては、保険料負担を調整することによって、事業主の労災防止の自主 的努力を促進する機能を有しているところで、業種区分ごとに災害に応じて保険料率が 上下する業種別の設定もそうですし、個別事業の災害率に応じて上下する、いわゆる 「メリット制」によって機能しているところでございます。  こういう形で、労災保険については被災労働者に対する迅速かつ公正な保護を行うの みならず、労働災害防止のインセンティブをも併せ持つ制度でございます。  3頁目が、今回の「検討の視点」です。労災保険率は、業種ごとに作業態様の差異に よって災害率が異なるという実態を前提として、災害防止のインセンティブ促進の観点 ということで、業種ごとに設定しているところですが、社会保険である労災保険制度に おいては、必ずしも厳密に業種別に収支均衡させる必要があるという考え方は特にとっ ていないところですが、料率算定の際には、給付の一部に相当する費用については、全 業種一律の賦課によるところとしております。  こうした中で、料率改定にかかる基礎資料の公開なり、料率設定手順の一層の透明化 が求められているとともに、業種別のリスクを正確に反映した料率設定とはなっていな いのではないかという問題提起がされたところでございます。  労災保険の業種区分については、現在51に区分しておりますが、長年にわたる産業構 造の大幅な変動によって、約1,000人程度の規模の業種から、適用労働者数では全業種 の約6割を占めるような業種も現れているということで、そのような現状について見直 しが必要ではないかということも考えられます。  近年、事業主団体等の一部からですが、メリット増減幅の拡大の要望があって、メリ ット増減幅を拡大することに関して、その効果・影響について総合的に検討を行う必要 があるということです。  以上の問題意識を踏まえて、労災保険料率の設定に関する主な論点、大きくは「労災 保険率」「業種区分」「メリット制」等ですが、これらを網羅するような形で検討する ことにしたということです。  この検討に際しては、労災保険が被災労働者に対して迅速かつ公正な保護を行うため に、事業主に加入が義務づけられた強制保険であるということを踏まえ、被災労働者に 対する保護機能を維持しつつ、労災防止のインセンティブが損われないように配慮する 必要があると考えるところです。  検討の結果については、行政において所定の手続を経て、今後の料率改定に反映させ ることが望まれるということです。  4頁以降が、II「検討すべき課題」ということで、それぞれ「労災保険率」「業種区 分」「メリット制」について、現状と課題という形で、ここはまとめているところで す。  まず労災保険率の現状については、労災保険率については51の業種ごとに定めてお り、料率算定の基本的な考え方については、業務災害の短期給付については、一定期 間、これは3年間ですが、この収支が均衡するように賦課する「純賦課方式」を採用す るということです。  長期給付については、災害発生時点の事業主の集団に、年金給付等の将来にわたるよ うな給付にかかる費用を賦課する「充足賦課方式」を採用するということですが、給付 の一部に相当する費用については、全業種で賦課していくということです。  その他、過去債務分、非業務災害分、これは専ら通勤災害等に当たるもの、及び二次 健康診断等給付というものもございまして、これと労働福祉事業及び事務の執行に要す る費用というものがありますが、これらについては全業種一律の賦課としようというこ とです。  全業種一律賦課の部分については、列挙しましたが、労災保険率の設定にあたって は、以下の部分は全業種一律というところでございます。1つは、短期給付について。 これは労基法81条の打切補償等の規定をメルクマールとして、災害発生から3年を経て いる給付については、全業種一律賦課で計算する。  長期給付については、同じく労基法上の打切補償の規定、それから障害補償の規定等 をメルクマールとして、被災後7年で分けて、7年を超えて支給開始したものについて は、全業種一律賦課として算定しているところでございます。  過去債務については、平成元年度に長期給付に係る財政方式を変更しましたが、それ 以前の方、いわゆる平成元年度当時の既裁定年金受給者に係る将来給付分が、以前であ れば積立ててないということがありましたので、その将来給付にかかる費用の不足分に ついて、平成35年度まで、全業種一律に賦課しているということです。これは、平成元 年度当初は1,000分の1.5ということでしたが、それを段階的に縮小していて、現在では 1,000分の0.1までに引き下がっているという状況です。  労災保険率の設定の関係ですが、いわゆる上記の基本的な考え方に沿って算定される 率に基づいて、3年ごとに改定しているところで、改定に際しては、料率が過大に変動 することがないよう、それとまた、産業構造の変動等を踏まえて、激変緩和などの措置 等の配慮を行っているところです。  課題としては、労災保険率については、必ずしも業種ごとの収支は均衡しておらず、 業種別のリスクを正確に反映したものとはなっていないということで、事業主の労働災 害防止へのインセンティブを有効に働かせるという観点から、業種ごとに異なる災害リ スクを正確に反映したものとすべきという考え方があります。また一方では、社会保険 として必ずしも業種別の収支が均衡する必要はないとの考え方もありますので、それら の考え方を踏まえて、適正な労災保険率のあり方について検討する必要があるというこ とです。  労災保険率を設定するルールについては、現状においては必ずしも全てにわたって明 確に示されているとは言えない状況ということですので、今後はより明確なルールを示 す必要があるのではないかということです。その際には、長年にわたる産業構造の変化 によって規模が小さくなっている業種において、過去に発生した災害等によって過大な 負担となるという問題があって、これをどのように考えるかということがあります。  また、保険料の水準が過度に変動することを避けるという観点から、激変緩和措置を とっておりますが、そのあり方についても併せて検討する必要があるということです。  労災保険率改定のプロセスを通じての料率改定に関する基礎資料の公開、それから決 定手順の透明化についてもより一層の改善方策を検討する必要があるということです。  2の「業種区分」の問題ですが、現状としては、業種ごとに作業態様等の差異によっ て、災害率が異なるという実態を前提として、労災防止のインセンティブ促進の観点か ら、業種別に料率を設定することが適切との判断に基づいてやっているところです。  業種区分については、労災防止のインセンティブを有効に機能させるという観点か ら、作業態様や災害の種類の類似性のあるグループに着目して、そのグループごとの災 害率を勘案して分類しておりますが、その際には、費用負担の連帯性の関係、それから 労災防止活動を効果的に浸透させるということで、業界団体等の組織状況についても斟 酌することとしておりますし、保険技術上の観点から、保険集団としての規模なり、日 本標準産業分類に基づく分類等も勘案することとしております。  現在、労災保険の適用事業場数としては265万、労働者数としては4,800万人等を擁し ておりまして、その業種は現在51の業種に区分されております。上記の考え方に基づい て、災害率の比較的高いと思われるような製造業、建設業などでは、細分化されている ようなところもございますが、サービス業を中心とするような第三次産業などにおいて は、比較的大括りの区分というような現状になっているところです。  課題としては、そのように、保険集団としての規模が相当小さくなっているもの、例 えば、小さくなっているといっても、規模は小さいけれども、災害率が低いために、保 険の収支状況と料率が低く安定しているような業種もありますが、産業構造の変動によ って、規模が急激に減少したということで、過去における災害等による影響で、収支状 況が悪いというような業種もある。そういった規模が小さくなっているような業種のほ かに、一方で「その他の各種事業」のように、適用事業場数が130万、適用労働者数が 2,800万人と、全体の6割を占めるような、ほかに比べると規模がかなり大きいような 業種で、その中を見ると、卸売・小売とか、医療、教育等の多様な産業が含まれるとこ ろもございます。  そういったことから、最近の産業構造の変動なり、技術革新の進展等を踏まえて、上 記(1)の基本的な考えに基づいて、改めて検討する必要があるのではないかというこ とです。  3の「メリット制」としては、現状は、一定の要件、継続事業については一定の規模 以上、有期については確定保険料又は請負金額等が一定額以上のものですが、それを満 たす事業について、個々の事業の労災保険の収支率に応じて、労災保険率、非業務災害 分を除く保険率又は保険料の額を、継続事業については±40%の範囲で、一括有期及び 有期については±35%の範囲で増減させる制度です。  このほかに、特例メリット制として、中小企業である継続事業場が安全衛生措置、特 に快適職場の認定関係ですが、そういう措置を行って、その適用を希望した事業場に対 して、メリット増減幅を±45%にするという制度がございます。  現状としては、メリット収支率の適用事業場の分布を見ると、メリット適用で8割以 上の事業場が保険料の割引となっているということです。  増減率の分布状況を見ると、−40%、または+40%という、最大の引き下げになって いる所、もしくは割増になっている所に事業場が集中しているような状況です。−40% の事業場が多いというのは、近年の災害の減少傾向を反映して、無災害が増加している ためではないかと思われるところです。  +40%の事業場が多いのは、保険給付の充実なり医療費の上昇等によって、メリット 収支率の計算式において、分子に占める金額が増えているとともに、災害の減少等によ って、保険料率の引き下げが長期的には推移しているところがあるので、分母に当たる 金額は減少しているという状況。それから、小規模事業場にあっては、一度重篤な災害 が発生すれば、メリット収支率は極端に悪化するといったことが考えられるということ です。  課題としては、業種区分が同一であっても、無災害の事業場と災害を発生させている 事業場との間に、保険料の差を設けることは、労災防止のインセンティブを後退させな いためには、必要不可欠でありますが、問題としては、適用事業場の要件のあり方、そ れからメリット増減率の幅の問題があるということです。  これらについては、災害防止のインセンティブを損なわないということも必要ではあ りますが、適用要件の緩和、それからメリット増減率の拡大というのは、保険料収入、 いわゆる保険料を返す事業場の割合が高いということで、保険料収入が減少する効果を もたらすということになるので、その減少分を確保するためには、全体の設定料率が引 き上がるおそれがあるということで、メリット制が適用されない事業場にとっては不利 になるということも考慮する必要があるのではないか。検討に当たっては、全般的に災 害率が低下してきている中でのメリット制のあり方、その効果及び影響についても考慮 する必要があるのではないか、ということです。  継続事業と有期事業で、メリット増減率の幅に差がありますが、それについても検証 する必要があるのではないかということです。  特例メリット制について、適用状況が少ないということがあるので、中小企業の安全 衛生水準の向上に資するような有効な政策として活用を推進する方策について検討する 必要があるのではないかという整理です。  8頁以降が、検討会の中で出された主な意見の概要の取りまとめです。この内容につ いては、先生方でご発言されたことを、同じ趣旨となるような形で書き改めたところも ありますので、趣旨が違う、意味が違うというようなことがあれば、ご指摘いただけれ ばと思います。  まず1の「労災保険率」の関係で、(1)として、労災保険率の改定に際して、基礎 データの公開、手続の透明性が担保された適正な料率の算定及び設定が求められている ということです。  (2)として、保険料負担のあり方ということで、業種別に設定されていて、長期給 付については充足賦課方式を採用するなど、一定の範囲内において産業構造の変化に対 応しているということですが、急激な産業構造の変化などによって、当該業種の責任で はなく、外部的な要因によって負担が激増したような業種もあるので、そういった負担 については、当該業種だけでなく、全業種にわたる調整が必要ではないかというご意見 です。  労災防止のインセンティブを損わないように、業種別の保険料負担のあり方について 検討する必要があるのではないかというご意見です。  (3)として、労災保険率の設定の関係では、短期給付及び長期給付について、労基 法上の規定をメルクマールとして、短期給付の一部、長期給付の一部については全業種 一律賦課としておりますが、その範囲について精査する必要があるのではないかという ご意見です。  過去債務分については、1,000分の0.1で、それについては全業種一律賦課としており ますが、賦課することの意味合いがなくなってきているのではないかということから、 廃止してはどうだろうかというご意見がございます。  激変緩和措置について、現状において一定の構造不況業種と思われるところについて は、低い料率設定になるように配慮しているようなところがありますが、仮に料率を引 き上げることになった場合には、激変緩和措置が必要ではないか。他の業種において も、料率を引き上げるに際しては、激変緩和措置が必要ではないかというご意見がござ いました。  2の「業種区分」の問題については、業種区分の見直しに当たっては、保険集団とし ての規模を考慮する必要があるのではないか。ただ、その最小規模については、一般に 想定されるような頻度で労災が発生したとしても、料率が大きく変動しないような程度 の規模であるべきですが、保険集団としての最低規模のメルクマールを一義的に定める ことは難しいのではないかというようなご意見がありました。  業種区分を考えるに当たっては、次のaとbという項目の調和を図る必要があるので はないかということで、1つは、社会保険として業種別に災害率等のリスクの幅を広げ て、社会的な連帯責任という考えを取り入れていく側面を考えると、全産業の収支のバ ランスをとりながら、負担を求めるような方向であれば、小規模業種の統合を進める必 要があるのではないか。  一方、「事業主の労働災害防止努力」を重視するのであれば、業種の異なる集団が連 帯して労働災害防止を進めることが難しいということ、必ずしも容易ではないというこ とから、細分化をより推進すべきではないか。そういった考え方があるので、その2つ の考え方を調和させながら考えるべきではないかというご意見がございました。  業種区分を検討するに際しては、日本標準産業分類、これは事業主にもおおむね浸透 しているということですので、その業種区分の見直しにあたっては、業種区分のメルク マールの1つとすべきではないかということでございます。  「その他の各種事業」については、検討会の中でも議論があったところですので、そ れについて特記したところですが、全体として、全労働者の6割を占めているというこ とですので、例えばその状況を見直す場合には、その適切な適用労働者割合を考える必 要があるのかなということです。例えばその中で、卸売・小売などでいくと、全体の25 %程度を占めているような状況もあるので、そういったことで、適切な適用労働者割合 を考える必要があるのではないかということです。  (2)が、業種区分の1段下の区分が、いわゆる適用事業細目という整理をしておりま すが、適用事業細目ごとの収支状況については、過去においては給付データが集計され ていないような状況がありましたが、今後のグループ化の見直しにあたっては、そうい った細目を基準としたようなデータの整備が求められるのではないかということです。  「その他の各種事業」における現状の適用事業細目の中で、災害リスク等の観点か ら、多様な業種が入っているようなところもあるので、それを見直す、それより細分化 する必要があるか、見直しを行って、必要なものについては細目を細分化して、データ を蓄積して検討すべきというようなご意見もありました。  3「メリット制」の関係では、メリット適用要件の問題としては、労災防止のインセ ンティブを促進させるということから、適用要件は緩和すべきではないかというご意見 がございました。  それから、適用要件の緩和は難しいのではないかということで、1つは、小規模事業 場の災害発生割合は、全産業平均の半分以下というような状況ですし、大半の事業場が 無災害だということで、その無災害が安全対策を行った結果か、もしくはたまたま無災 害であるのか、これはなかなか判断が難しいのではないか。  要件の緩和については、適用拡大される小規模事業場の多くが無災害であることか ら、単に保険料の引き下げの措置と同じような効果、結果的には保険料収入が減少する 効果になって、その効果のために、全体の設定料率が引き上げられるおそれがあるので はないかということです。  小規模事業場においては、一旦災害が発生した場合には、収支率が悪化することか ら、−40%から+40%に振れてしまうというような問題も出てくるのではないかという ことです。  メリット増減幅の問題については、労災防止のインセンティブを促進させるために は、増減幅を拡大してはどうかというご意見がございます。  メリット増減幅については、見直しの必要性について、以下の状況を踏まえて検討す べきではないかということで、増減幅の拡大に伴う影響としては、保険料収入の減少を 伴うことが予想されるということで、その減少に見合う全体の災害の減少によって、保 険給付が減少するということがない限りは、保険料の減収分については、全体で負担す ることになるということで、もともとメリット制の適用がない小規模事業場において は、保険料負担が増加するおそれがあるのではないか。  インセンティブとの関係で、過去の高度経済成長期においては、労災が多発していた ということで、増減幅の拡大は、結果として労災防止に効果があったと言えるかもしれ ないけれども、近年のように、災害が非常に下降しているような状況では、メリット制 の要件の緩和、増減幅拡大による災害防止意欲を高揚させる効果を予測することは難し いのではないかというご意見です。  特例メリット制の関係では、申請実績が少ないという状況もあるので、その要因につ いて検証が必要であるということです。  最後が、「今後の検討の進め方」ということで、今回、今後の料率設定に関して中間 取りまとめとして論点整理を行ったということで、今後は課題と意見に加えて、さらな る現状分析、見直しの必要性、具体的方策等について、引き続き検討を行って、最終報 告として取りまとめていきたいという形でまとめたということでございます。  参考資料1は、無災害事業場の割合を取りまとめたものです。いちばん左が、事業場 数、これは「事業所・企業統計調査」から持ってきたもので、次の労災発生件数が労働 者死傷病報告書から持ってきたものです。いちばん右側が、労災が発生しない所の割合 を見たものです。労災発生件数を事業場数で割ったものではなくて、労災が発生しない 所の割合を事業場数で割った割合ということです。規模が小さいほど、いちばん右側 は、いわゆる「無災害事業場の割合」という形になりますが、規模が小さいほど、無災 害の事業場の割合は高くなっている。小規模ほど発生件数が高いのですが、事業場数が 多いということ、圧倒的に多くなってくるという状況があるので、無災害事業場の割合 としては、小規模なほど割合が高くなってくるかなという状況です。  参考資料2は、その無災害事業場の割合をグラフ化したものです。以上、資料のご説 明を終わります。 ○岩村座長  ありがとうございました。初めに言い忘れましたが、今日、倉田委員は、台風の影響 で飛行機が飛ばないためご欠席です。  ただいまの中間報告の案を作るにあたっては、私のほうで検討会の2、3の先生方に ちょっとご意見も伺ったところでして、そのご意見も踏まえて、報告案の作成をしてお りますことを申し添えておきたいと思います。  そこで、いまご説明があったこの案の内容について、ご意見を伺ってまいりたいと思 います。時間の制約もあるので、私のほうでちょっと整理をさせていただいて、それに 従いながら検討を進めていただければと思います。  まず最初に、1頁の前に「目次」ということで、全体の構成が記載されていますが、 「はじめに」という、いわば前書き的なものと、「課題」と「検討会での意見」のまと めと、最後に「今後の検討の進め方」という4部構成をとって、IIとIIIの所は、それ ぞれ「労災保険率」、「業種区分」、「メリット制」の3つのテーマに即して論述をす るという構成をとらせていただいたわけですが、この報告書全体の構成について、何か ご意見ございますか。  よろしいですか。それでは各論それぞれのパートを検討した上で、何か全体の構成に ついてご意見があれば、またお伺いしたいと思います。  そうすると、以下順次、「はじめに」ということで、1頁目で、検討会開催の経緯と 趣旨と、参集者が記載されておりますが、ここについて何かコメントなりございます か。 ○大沢委員  冒頭のところで「保険率」となっていますが、「労災保険率」ですね。ここは「料」 を入れなくてよろしいでしょうか。 ○数理室長  法令の規定では「労災保険率」ということになっておりますので、ここはそうさせて いただいたところです。 ○岩村座長  これは、労働保険料率でしたか、労働保険は「料率」になっていて、その内訳は「労 災保険率」と「雇用保険率」でしたか。法令上は「労災保険率」という言葉を使ってい るのですね。  ほかに何かございますか。それでは1頁目はよろしいということで、次に2頁目で、 ここでは特に今回検討の対象としたところを意識しながら、労災保険制度の概要という ものを、ごく簡単にまとめているわけですが、ここについてはいかがでしょうか。  特にないようでしたら、次に3頁目で、「検討の視点」です。ここが、この後のIIと IIIの所で取り上げている3つのテーマを検討するに至った経緯、理由というものが記 されているところですが、よろしゅうございますか。 ○高梨委員  この検討会が設置された直接のきっかけは、前の所にも書いてあるように、総合規制 改革会議の第三次答申の中で、検討しろということを言われているわけです。ですか ら、ここの最初のパラグラフの所で問題提起がなされて、以下いろいろなことが書かれ ている。この問題提起の大きさというのは、非常にウエイトが高いのだと思うのです。 まさに、総合規制改革会議から、業種別のリスクを正確に反映した料率になっていない のではないかということがあって、それで今回の設置要綱と言いますか、設置の趣旨の ところでも、こういうことで検討をする、ということなので、ここの、1番目のパラグ ラフと、それ以下の記述とは、ウエイトが違うと感じました。  もう1つは、3つ目のパラグラフのところで、メリット制の増減幅の要望があるよと いうふうに書いてあるのですが、さらに続けて、「拡大することに関しては、その効果 及び影響について総合的に検討云々」とある。このことは、実は後ろにも書いてあるん です。次の「課題」のところに書いてあるにもかかわらず、まず最初から、「検討の視 点」として、「効果及び影響について」という、いわば否定的な側面で、ここのところ で書くのは、いかがであろうかと思います。 ○岩村座長  最初の点はいかがですかね。何となく私の感じでは、パラグラフの長さで重みづけが あるのかなという気はしていたのですが。第1段落、第2段落、第3段落と、それぞれ の書きぶりの比率の大きさというのがあって、それがやはり、規制改革会議の問題提起 の受止め方の大きさというものを示しているかなという。 ○高梨委員  そうはならないと思うのです。ここのところはパラグラフがいくつかあるのですが、 最後から2つ目のパラグラフのところで、「これらの検討に際しては云々」ということ で、「これら」というのは、上の4つのパラグラフを踏まえて、こういうことを言って いるのです。いちばん最初のこのきっかけといいますか、そこのところが、4つの中の 1つのものとしての位置づけにしかなっていないと思うのです。  まあ、読み方の主観の問題ですから、そうでないよとおっしゃるなら、それはそれで 結構ですけれども。 ○岩村座長  それでは、いまのところは、どういうことが考えられるかということを、少し再度考 えさせていただきたいとは思いますが、いちばん頭に書いてあって、段落としても大き く書いてあってということで、そういう趣旨を反映しているということだろうと、私な どは思っていたのですが、いまのようなご指摘もありましたので、ちょっとそこは何か 書きぶり等あれば、考えてみたいと思います。  第3段落のところは、ご指摘のとおりの部分がもしあるとすれば、ここは「検討の視 点」なので、もう少し中立的に書くということもあるでしょうが、ただ、この序列が、 メリット増減幅の拡大に対して否定的だというふうには思っていないのですが。 ○高梨委員  明らかに、全体の構成を見ると、「視点」のところでのメリット制についての書きぶ りと、「検討すべき課題」においての書きぶりと、それから「委員の意見」としての書 きぶりと、すべて共通していて、非常に否定的な形で書いているのです。私にはそう読 めます。そのまず第1番目の「検討の視点」ということで、「効果及び影響について総 合的に検討」ということを、まずこの「視点」のところに入れておこう、こういうふう に思えたのです。私の主観ということであれば、それはそれで結構です。 ○岩村座長  ただ、どうですかね。この書きぶりだけで、消極的だということはないと思うのです が。やはり、いずれにしてもメリットを動かすか、動かさないかということについて は、やはり制度を動かすか動かさないかということについては、動かすことによってど ういう効果とか影響があるのかということも、やはりプラス・マイナスを考えていくの かなという気がするので、このこと自体がメリット増減幅の拡大に消極的な意味だとい うふうには、ちょっと。後を読むとそうだと言われてしまうと、そうなってしまうのか もしれないのですが、ここのところは中立的な書き方ではないかという気がするのです が。 ○高梨委員  というのは、その前に書いてある、「業種区分」の問題にしても、あるいはその前の 「リスクを正確に反映した料率設定」の問題をどうするかという問題にしても、明らか に一定の変化をさせるとすれば、それに伴って出てくる効果なり影響というものは、必 ず検討した上で考えなければならない課題だと思います。  ところが、ここの所だけ、なぜ効果及び影響について考えなければならないかという ことを「視点」として、予め言わなければならないのかと思います。 ○岩村座長  わかりました。ではご指摘も踏まえて、書きぶりがもう少しいい形になるかどうかを 考えさせていただきたいと思います。  そのほかいかがでしょうか。 ○大沢委員  いまの意見に関連するのですが、第1パラグラフに出てくる「業種別のリスクを正確 に反映した料率設定とはなっていないという問題提起」、これは具体的に、規制改革会 議のほうからあった指摘で、それは初めのところに書いてあるとおりですね。この同じ 文章の前段に書いてある、「料率改定に関する基礎資料の公開」と「透明化」、これも 同じく規制改革会議からのご指摘なのでしょうか。 ○数理室長  規制改革会議の中で、基礎資料として、まだ資料の公開が不十分ではないかというご 指摘もございましたので、それを含めて改定に取り組んでおりますということです。  それから、ついでに業種区分の問題で、「その他の各種事業」が全体の6割を占めて いるということで、それについてのご指摘は、規制改革会議の中でございました。 ○大沢委員  これも指摘があったわけですね。 ○数理室長  ええ、6割を占めるところについて、見直し等は行われていないでしょうかというご 指摘は、規制改革会議の議論の中ではございました。最終答申ではなくて、途中経過の 議論としてはございました。 ○大沢委員  そうすると、第1パラグラフも第2パラグラフも、問題提起があったということと か、現状を見直す必要があると考えられる、というふうになっていて、第3パラグラフ のところだけ、「総合的に検討を行う必要がある」と書かれているので、おそらく、高 梨委員から、書きぶりがニュートラルではないのではないかというご意見が出てきます から、この「事業主団体等の一部からメリット増減幅の拡大の要望がある」と、理由が 書かれていないので、「何々等の理由により、拡大の要望があり、検討が求められてい る」とかというふうに書けば、ここだけ問題提起に終わらず、検討の仕方を総合的にと 言いつつ、消極的な書きぶりというふうに読まれやすい書きぶりになっているのではな いかと感じたものですから。  「効果及び影響について総合的に検討を行う必要」というのは、第1パラグラフも第 2パラグラフも、全部にかかることなので、それは、例えば第4パラグラフの、「以上 の問題意識を踏まえて(中略)網羅する形で検討することとした」というところに、そ れぞれの改定なり何なりの効果及び影響について、総合的に検討とかというのは、この 第4パラグラフに入れれば、全部にかかってニュートラルというふうな感じになるのか なと思いましたが。単なる参考意見です。 ○岩村座長  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。それでは高梨委員と大沢委員のご 意見も踏まえて、いまの点については検討させていただくことにしたいと思います。  では、特段ほかになければ、次のII「検討すべき課題」に移らせていただきます。全 体の構成は3つのパートに分かれているので、順番に進めていきたいと思いますが、ま ず最初が、「労災保険率」ということです。ここでは、やはりほかの2つとも一緒です が、現状というものと、それから課題というように記述は分けて述べさせていただいて おりますが、労災保険率の現状と課題の部分について、ご意見があれば、どなたからで も結構ですので、お願いいたします。 ○高梨委員  まず、「労災保険率」について申し上げますと、現状については、ポイントからする と、こういうことかなと思ったりはするのですが、「現状」として、10行ほど書いてあ って、その次のところに、「(全業種一律賦課)」という部分が出てきて、(1)から(3) まで書いてあるわけですね。「全業種一律賦課」ではない、ある業種の給付に必要な費 用は、その業種の負担で賄うという考え方があって、その原則というか、その基準に該 当しない「全業種一律賦課」ということもありますよということだと思うのです。そ の、「当該業種の責任において賦課する」という部分と、「全業種一律賦課」というの を並列した形で書いたほうが、全体としてわかりやすいのではないか。  ですから、短期給付の中で3年までの分は、この各業種で負担していますよ、長期で も7年未満のものは、その業種で負担していますよ、ということを書いておいたほう が、わかりやすい、全体的なバランスがとれると思いました。 ○岩村座長  そうですか。何となく、こちらの頭の中では、業種ごとで短期と長期のそれぞれの部 分については、一律賦課を除く部分については、業種ごとでの収支均衡というのが当然 の前提になっていて、そうでない部分をむしろ説明するという発想だったものですか ら。まあむしろ、業種ごとでの一定期間での、短期についての収支均衡というのは、あ るいは長期については、将来給付分を予め取ってしまうというのは、その業種ごとで考 えるというのは、ある意味で前提であるけれども、ということだったのですが、やは り、高梨委員のご意見は、それはそうなんだけれども、きちっと書いたほうがいいので はないかというものですか。 ○高梨委員  要するに、全業種一律賦課が原則みたいなことで、ここで並べてこう書いたのではな く、上の10行くらいのところには、基本的な考え方が書いてあるのですが、基本的な考 え方というのは、両方あるよというのが基本的考え方じゃないかと思います。  それともう1つは、5頁の(2)「課題」の第1パラグラフのところで、「業種ごと に異なる災害リスクを正確に反映したものとすべきとの考え方」の次に書いてあるの が、どうも趣旨がよくわからないのです。「社会保険として必ずしも業種別には収支が 均衡する必要はない」、要するに収支のことは、業種別のことにおいては全く考える必 要はないという考え方が、どなたか我々のメンバーの中から出ていたのかどうか。ちょ っと私も議事録を全部繰ったわけではないのですが、それほど極端なご意見はなかった ような気はするのですが。 ○岩村座長  まず、前者については、全業種一律賦課というものを前面に出そうという趣旨では特 になくて、前の2段落目にあるように、給付の一部に相当する部分については、「全業 種一律賦課」というふうに書いてあるので、その全業種一律賦課というのが、一体どの 部分について、どういう考え方でしているのかということを、そこで明らかにしている ということだと思うのです。だから、特に全業種一律賦課が原則だという書きぶりでは ないと思ってはいます。  それから、「課題」のほうで、いまおっしゃったところですが、「社会保険として必 ずしも業種別の収支が均衡する必要はない」というのは、これは多分、全く収支均衡を 考えなくていいということをおっしゃった方はいらっしゃらないと思うのです。ただ、 そんなに細かい収支均衡を考えなくてもいいのではないかという意見はあったと、何と なく記憶していますし、ここでの趣旨は、要するに、業種別の収支を考えるとしても、 完全に業種別で均衡を考えなくても、全体として社会保険、つまり労災保険の全体で収 支均衡していれば、それでいいのではないかという、その程度の意見だと思っています ので。  いま高梨委員がおっしゃったような、非常に極端な考え方を、この一節が表現してい るというふうには思わないのですが。 ○高梨委員  繰り返しになりますが、この検討会は、総合規制改革会議が、災害リスクを反映させ た保険料率について検討しろということを言っているわけですね。一律の部分を、どう いうふうに定めるかということを強調しているわけではないのです。災害を発生させた 部分をどう反映させるかということなのですから、そこの部分は、いまの制度ではこう やっているんですよ、ということを明確に書いたほうがいいと思いますけれども。いい です、結構です。 ○岩村座長  なるほど。わかりました。ご趣旨はわかりますので、そこは検討してみます。 ○大沢委員  いまお話があった部分について、4ページから5ページにかけてはっきり書いてある と思うんですけど、最初のスタートは51の業種区分毎に定められた労災保険率で、これ が大前提なわけです。誰が見てもわかるように書いてあって。なおかつ、2パラ目で給 付の一部に相当する部分が全業種一律賦課、そのほかに、まだ全業種一律賦課の部分も あるというふうに書いて、その中身をその下で説明しているのですが、最初の文章にな っているところが単なる前振りで、その下に箇条書きみたいになっているのが中身だと いうふうに不注意に読んでしまう人がいると、全業種一律賦課がまず第1の原則なのか というふうに読まれかねないから、という指摘を、高梨委員はなさっているのだと思う のです。  ですから、むしろこの(全業種一律賦課)という括弧書きで始まる箇条書きの部分 は、言ってみれば注みたいなものなので、ポイントを落とすなり、脚注みたいな形にす れば、そういう意味での間違いというのは起こらないのではないかという気がします。  それから、5頁の「課題」のところで、社会保険として必ずしも云々と、これは、私 が2回ほど発言していると思います。細かいプレミアムセッティングをしないというの が、むしろ社会保険に一致しうる機能なので、そういう趣旨のことは、一度出席したと きにも発言した記憶がありますし、紙で出したものにも、そのようなことを書いたと思 いますので、これは私が申し上げたと思います。  「必ずしも」というふうに入っていますし、それから均衡させるタイムスパンはどう 考えるかとか。例えば3年ごとに必ず均衡しなければいけないとか、そういうことでは ないけれども、ある程度のタイムスパンを考えれば、その業種で著しい不均衡が生じて いるのが、制度設計の問題でもありますから、そういうことは反映する必要があるでし ょうが、短いスパンで必ず業種ごとに均衡しなければいけないという考え方は、社会保 険ではとらなくてもいいのではないかという趣旨の意見でして、この今日の文案に、 「必ずしも」ということが書かれていますから、私の意見が反映されたのかなと思って います。  高梨委員がおっしゃったような意味での極端な考え方というのは誰もとっていないと 思いますので、この書きぶりで、私としては納得したところでございます。 ○岩村座長  ありがとうございました。そのほかのところはいかがでしょうか。労災保険率の「現 状」と「課題」について。よろしいですか。それでは次は「業種区分」、5頁から6頁 で、やはり「現状」と「課題」ということです。どうぞご自由にお願いします。 ○高梨委員  明確に言えないのですが、6頁の(2)の「課題」で、「業種区分を見ると」という のは、「現行の業種区分を見ると」という書き出しだと思うのですが、そうすると、規 模が相当に小さくなっているものがあるよと。要するに、51の業種をよくよく見ると、 小さな規模のものもありますね、というのが書いてあって、一方、大きなものがありま すね、ということだけが書いてあるんですね。  そもそも、業種区分はどういうふうに設定するかという点については、結局、最後の 2行のところの、「上記(1)の基本的な考え方に基づき」と書いてあるのですが、こ この2つのこと。すなわち、「その他の各種事業」のような、ものすごく大きいところ と、それからうんと小さいところがありますね、ということだけでよいのかどうか、と いう点がちょっとありそうな気がするのです。あまりこだわりませんけれども。 ○岩村座長  そうですね。ただ、あまり小さくなってしまったときに、保険集団として適正規模か どうかという議論が当然起きてくるということと、これは、後者のほうは規制改革会議 との関係で大きくて大ざっぱなのではないかという議論ということがあって、業種区分 ということを考えるときには、その両者に目配りをして検討しましょうという趣旨だと いうふうに思います。  ただ、ひょっとすると、私も気がつかなかったのですが、前者の1文と後者の1文 と、この段落、2つの文章からなってしまっていて、多分、このパラグラフの下から3 行目の「業種区分もある」というところで、多分1回切って、そして第1文と第2文に かかるような形で、最後の1文を「改めて検討する必要がある」という文脈のもってい き方にしたほうが、より良かったのかもしれません。そのほうが、高梨委員がおっしゃ るような趣旨をより反映する形になるかと思います。そこはまた検討させていただきま す。 ○小畑委員  確認させていただきたいのですが、課題の2行目に(例えば、・・)と括弧がありま すが、その括弧の中は、業種区分を見ると、保険集団としての規模が相当少なくなって いるものが存在しており、その中には、規模は小さいが災害率が低いから安定している 業種もあるけれども、規模が急減したために収支状況が悪く、料率が高い業種もあると いう趣旨ですか。 ○岩村座長  そうですが、「規模が少なくなっている」というのはおかしい。「小さくなっている 」ですね。ただ、規模が小さくなっていても一律に論じられない、という趣旨です。 ○高梨委員  あまりこだわりませんが、私なりに(1)の業種はどういうものがあるのか、(2)の業種 はどういうものがあるのかというのをデータで見てみたわけです。(1)に相当するのが 原油・天然ガスというような、労働者数1,000人ぐらいの所。あとは「小さい」という 基準をどこに置くかによって変わってくるのです。(2)のほうは明らかに、いまの業種 区分でいけば金属鉱業で、その中に入っているのは石炭鉱業になるわけです。それが 「小さい」ということなのです。  しかし、それだけが問題でいいのかという点があると思ったりするのです。次にいく と「その他の各種業種」ということで、それ以外のところは何も触れていないことにな るので、課題として見落としていないかと。  それから、最後の落とし方が「上記(1)の基本的な考え方」というのは、ここにい くつかの側面が書いてあるので、どうなのかという感じがしたのです。感想です。 ○岩村座長  中間はどうなるのだという考え方もありますので。 ○労災部長  先生のおっしゃるとおりです。 ○岩村座長  いちばん極端な所だけ取って、では真ん中はどうなるんだという問題があります。ど こまで書けるかというのは分かりませんが、いまの点もまた考えさせていただきたいと 思います。 ○阿部委員  この「課題」を通じて言えることですが、最後の3行に「最近の産業構造の変動状 況、技術革新の進展等を踏まえ、業種区分に関する上記(1)の基本的な考えに基づ き、改めて検討する」と書いてあるのですが、業種区分を考える際には産業構造と技術 革新が重要であって、保険集団そのものの問題点というのは「課題」の中には載ってな いような読み方もできるのです。我々は、保険集団としてどうなのかという議論もして いるわけですので、そういった点も考慮すべきではないか。入れていいのではないかと 思います。 ○岩村座長  おっしゃるとおりだと思いますので、いまご指摘の点は取り入れるような形で検討さ せていただきます。この点についてほかにお気付きの点があれば後ほど出していただく ことにして、6〜7頁の3「メリット制」について討議したいと思います。これも「現 状」と「課題」という書き分けになっておりますが、ご意見があればご自由におっしゃ ってください。 ○高梨委員  7頁の(2)の「課題」ですが、適用要件の緩和や増減率の拡大をしたときに、全体 の設定料率が上がってしまうという側面があるという指摘は、理論的にはそうだと私も 思います。  正規分布の形にならなくて災害率を減少させた所が多いし、しかもアッパーの所に集 中するということがあるのでそういう状況が出てくるのだと思うのです。  上がることは確かなのですが、上がる幅は一体どれぐらいなのかという点についての 推計のようなことをしてみた上で、やはり相当上がるという判断をするか。確かに上が るけれども、それは全体的な災害率の減少の中の下がり幅の中で吸収できるものなのか どうかによって判断がかなり違ってくるだろうと思うのです。今は表現ぶりの問題とい うことよりは、事務局で一定のデータが取れるのか、あるいは試算していただけるのか どうかという点について何か工夫していただければありがたいと思います。それが1点 目で要望です。  2点目は7頁の最後で、特例メリットについての記述があるのですが、私自身はこの ような課題の捉え方ではないのです。要するに、特例メリットの効果が出るように特例 メリット制度を改善していこうと書いているのだと思うのです。しかし、私は、増減幅 を拡大していくような方法のほうがいいと思うので、果たしてこういう課題が適切かど うかと思いますので、私の意見として述べさせていただきます。 ○岩村座長  後者については、この後に意見の取りまとめの部分がありますので、そこに書いても いいかと思いますが、高梨委員のお考えとしてはいかがでしょうか。課題の捉え方自体 が間違っているという話だと、ここを直さなければいけないのですが。 ○高梨委員  はっきり申し上げれば、ここには書かなくて、後ろの意見の所で書いておけばいいの かなと思うのです。 ○岩村座長  「課題」の特例メリットの部分は取り払って、「意見」の所で書くというご趣旨です か。 ○高梨委員  そうですが、それは私の意見で、ほかの方のご意見もあると思いますが。 ○岩村座長  いまの点は少しお考えいただくとして、ほかの方に伺います。前者のほうです。これ はまとめの段階の話なのか、まとめをしたあと、更にこの検討会での検討が続くので、 そこの場での検討ということで整理させていただいてよろしいでしょうか。 ○高梨委員  冒頭で申し上げてしまったことなのですが、「課題」があって、「委員の意見」とい うことで整理されるわけですが、「委員の意見」の整理の方向にその問題が関わってく ると私は思うのです。要するに、メリットの増減幅を拡大することによって不利益にな る人が相当いるとなれば、そう簡単に増減幅を拡大することは悪影響があるから難しい ということになります。  しかしそれは、デメリットは出てきても、増減幅を拡大しないよりは小さな下げ幅に なるという程度の場合であれば不利益の状況が違うのかなと思うのです。私が勝手に試 算できないものですから、事務局の推計の可能性の問題と関わってくるのですが、早い 段階で試算ができるかどうか伺いたいのですが、いかがですか。 ○数理室長  メリットの増減幅をこのように拡大した場合にどういう影響が出てくるかという推計 はできるかと思いますので、トライしてみたいと思います。ただ、どういう条件を与え るかによって推計値が変動していくことも考えられるので、どういう条件を講じたらい いのかも併せて検討したいと思います。推計は、実績に基づいてできると思いますが、 災害がどれぐらい減少するかというのは見込める話ではないので、それとの兼ね合いは 難しいと思っています。ただメリット増減幅を拡大した影響、例えば現状で、継続は40 %ですが、45%にしたらどうなるか。有期は35%ですが、それを40%にしたらどうなる かとかという影響は、ある程度前提条件をつけなければいけないのですが、その推計は できるかと思います。 ○岩村座長  それをどうするかなのです。次回もう一回予定しておりますが、それを考慮してまと めに持っていくのか。まとめについては、今日こういう議論があったということで審議 会には出させていただいて、具体的に詰める段階の話になったところで、今のような推 計を基にして、より具体的な詰め作業をすることにするかということだと思います。 ○高梨委員  勝手な希望からすれば、今日ともう一回この検討会があって、そこで中間まとめが行 われるのだとすれば、次回のときにその辺の試算を出していただいて、それを見ながら 最終的な中間報告の整理をする。そういうことが可能かどうか私もよくわからないので すが、私からすれば、そんなことで試算していただければありがたいと思います。 ○岩村座長  問題は多分、どの程度のものが出せるかということなのです。 ○数理室長  1年間での影響は単年度のデータで計算できると思うのですが、料率メリットであれ ば過去3年間のデータに基づいてやっているような所もあるので、そこまで、過去3年 間のデータに基づいた形で出せるかどうかは難しいところがあります。 ○高梨委員  いま継続事業は40%が上限になっているわけですが、それについて45%というのをつ くったときに、今まで40%に固まっていたグループのうち、全体が45%になるのではな くて、一部は40%のままとどまって一部が45%に移るわけです。過去何回かやっている 中でも、十数パーセントぐらいはそこに残って、残りが移っているのです。そういうふ うになったときの財政的な影響と、メリット率そのものの5、6%の適用がどれぐらい 拡大するか。そこのところが私は分からないのですが、それによって、ある程度財政的 なアップ分が出てくるので、それを平均的に前と比べてみたらどうなるのか。これは大 ざっぱな話ですが。 ○岩村座長  そこは、やってみてどうなるか。しかも、それがどの程度実際的な意味として使える かというのはわからないので、一応やってみていただいて、次回それを用意できる範囲 で出してもらって、中間取りまとめの中に反映できるかどうかを考えてみることにした いと思いますが、いかがでしょうか。 ○阿部委員  この議論はまた機会があるとは思うのですが、メリット制がなぜあるかというと、災 害防止のインセンティブを引き出すためだと思うのです。メリットの増減率の幅を拡大 することによって、事業主の労働災害防止努力が果たしてどれぐらい引き出されるのか がいちばん本質的な問題であって、そこを議論しないで、財政はどうなるとかというこ とだけでやると、危険かなと思っています。災害防止努力がデータでどれぐらい引き出 されるかを検証することは事実上難しいことですし、この点を少し議論することは必要 だと思っていますが、果たしてそれを中間報告段階で書いていいものかどうかは、少し 議論の余地があるのではないかという思いを、いま感想として持っています。 ○大沢委員  いま阿部委員が言われたことと関連しますが、このドラフトの10頁の(1)「メリッ ト適用要件」の(2)に、無災害が安全衛生対策を行った結果によるものか、たまたま無 災害であったのか、現状のデータからは判断できないということが書いてありますが、 このようなことは7頁辺りに書いてあってもいいのではないかという気がするのです。 7頁の問題になっている辺りでは、労働災害防止のインセンティブを後退させないため に必要不可欠であると書かれています。多分そうなのでしょうが、もっとめり張りのあ るメリット制をとる。増減幅を拡大すれば、インセンティブは促進されるかもしれない けれども、インセンティブが促進されたからと言って、災害防止のための人的・時間的 ・金銭的な投資が実際に増えるのかどうか。そして、投資したら災害防止の実効性がど れぐらい上がるのかについては検証できていないわけです。「できない」と下に書いて あるわけです。ですからこの辺に、保険料収入が云々とすぐ行くのではなくて、損なわ ないことも必要であるが、インセンティブを促進したからと言って労災防止の実がどの 程度上がるのかが検証されていない、できないというようなことを書いてもいいという 気がするのです。  また、「メリット制が適用されない事業にとって不利になることも考慮する必要があ る」とあります。どの程度不利になるのかというのがいまの高梨委員の問題提起なので すが、それ以前に、メリット制の増減幅を拡大したら必ず労災防止効果が上がるのかと いう辺りは、実は検証されていません。労災防止というのは今かなり極限までいってい るので、限界的にインセンティブを増進し、限界的に投資が増えても、それによる限界 予防効果はもうぎりぎりの所まで来ているのではないか、という一般的な印象があるの です。逆のほうで難しいことを言ってしまったかもしれませんが、そういうことを少し におわせてもいいのではないかと思うのです。 ○岩村座長  このドラフトの考え方は、ここの部分では、なるべく課題を端的に書き出し、検討会 の中で出てきた議論は「意見」の所で書く、という書きぶりにしているのです。いま大 沢委員のご指摘の部分は、「課題」に入れてしまうと、ほかの所との関係もあって全体 のトーンが合わなくなってしまうので、それは少し難しいかと思います。  データの問題についてはいろいろな検証の必要性等もあって、いま阿部委員から慎重 なご意見も出たということもあるので、事務局のほうで一度、どこまで数値が出せる か、データが取れるかということもやってみてもらって、次回それを拝見した上で、こ の書きぶりをどういうふうに考えるかについて、検討会で相談したいと思いますが、よ ろしいですか。 ○数理室長  増減率の幅の拡大による影響については計算しやすいと思いますが、規模の拡大とか 規模を下げる効果については、まず、規模別の事業場数の労災のほうの収納額の状況が 必ずしも規模別にうまく取れない状況もありますので、そこのところは推計が難しい気 がしていますので、その点を含んでおいていただきたいと思います。 ○岩村座長  それを含んだ上で、どこまで推計が可能かということで次回検討させていただくこと にしたいと思います。  次はIII「意見の概要」のまとめです。1、2、3となっていますが、最初に「労災 保険率」です。ここはなるべく検討会で出た意見を両論並記でまとめる形になっており ます。大体まんべんなく取り上げているのではないかと思いますが、ご意見はございま すか。 ○高梨委員  「検討会での意見」の労災保険料率の関係の記述ですが、(2)の最初のパラグラフ は、外部的な要因によって負担が激増した業種のことだけを言っていると思うのです。 私の理解では、石炭産業などはその最たるものではなかろうかと思いますが、もっと一 般的なことからすれば、外部的な要因で激増した業種以外の業種の問題にも当然触れな いといけないのです。その業種で負担するという問題と、その業種の負担が過大になる という問題をどうするか。そこのところをまず記述した上で、外部的な要因の問題もあ るということなのかと思ったのが1点です。  もう1点ですが、いま事務局で行っている作業として、設定料率と算定料率と両方あ るわけです。私自身は、設定料率を算定料率にできるだけ近づけるべきではないかとい う意見を出したつもりですが、その点がちょっと読みとれないのです。  3点目は質問です。8頁の(3)の(3)で「現状において一定の構造不況業種につい ては、低い料率設定」という記述があるのです。私は説明していただいたかどうか、は っきり記憶がないのですが、どういう基準で構造不況業種というのを捉えて、その業種 について、どういう方法で料率を少し甘くする。ここは、そういうことをしたと読める のですが、私は、そんなことがあったとは受け止めてなかったのです。激変緩和措置、 あるいは、従来の経緯があってこうしたということは何遍か説明していただいたと思う のですが、構造不況業種云々というのは説明されなかったので、現状について、どうい うものを構造不況業種と捉えて、何パーセントぐらい調整したかが分かれば教えてもら いたいのです。 ○岩村座長  第1点について、高梨委員のご指摘はもっともなのですが、どちらかというと先ほど の議論と一緒で、それを前提とした上で何が問題かというところで、ここでは意見をま とめさせていただいています。ご指摘はちょっと考えさせていただいて、書きぶり等の 改善の余地があるかどうか検討したいと思います。  検討会で出てきた算定料率と設定料率の問題ですが、私の理解では、設定料率につい ては(3)の(3)で取り上げていると思っていたのですが。 ○数理室長  ちょっと足りないところがあるのかもしれませんが、そういうつもりで記述したと思 います。 ○岩村座長  ですから、そこの問題は十分意識した上で、(3)の(3)で書いているという趣旨で す。高梨委員の3点目の質問については事務局からお答えいただけますか。 ○数理室長  石炭鉱業や金属鉱業、それから林業等、規模が著しく小さくなっているにもかかわら ず、過去の災害等によって給付が続いているような業種です。構造不況業種とは何であ るかについて十分な説明や定義づけのようなことは検討会でしていなかったと思いま す。そして、それまでの算定料率に比べると結果的に低い料率になっている所、いまま での激変緩和として、配慮という言い方が適切かどうかは問題があるかもしれません が、そういう形で措置をしていたという意味合いです。 ○高梨委員  激変緩和については、まず、「あるべき方向性」の記述があって、その「あるべき方 向」について激変緩和が必要であるということだと思うのです。まず「あるべき方向性 」の部分の記述がここでは読み切れないのです。むしろその問題は、(2)でそういう 方向性の議論があって、更に(3)の問題もあるというようにしたほうがわかりやすいと 私は思います。 ○岩村座長  (3)の(3)は「激変緩和措置等」と書いてあって、激変緩和措置だけを述べている という趣旨ではないと思っていたのですが、ご指摘もありましたので、そこは検討して みたいと思います。  9頁の2「業種区分」に進みます。ここは(1)が「区分の考え方」と、(2)が 「その他の各種事業」です。(1)が先ほど少し話になった、両端だけでなくて真ん中 のものも入っているという話だと思います。もう1つは、規制改革会議等で問題になっ た「その他の各種事業」の扱い。そういう整理の仕方で意見をまとめていきたいと思い ますが、いかがでしょうか。 ○高梨委員  「業種区分」の(1)の(2)は、a、bの調和を図ると書いてあるのです。aという のは小規模業種の統合を進めるということだから、現在の51業種の中で、あるものとあ るものは統合するというイメージで私は受け止めたわけです。  ところがbのほうは、業種の異なる集団があるから、業種の異なる集団が連帯してや ることは容易でないから細分化を進めるということで、a、bというのは調和の問題で はないような気がするのです。調和というのは、一定の対立点があって、それをどう調 和させるかということなのでしょうけれど、これは違うことを言っているので、調和な のかどうかと思うのです。 ○岩村座長  aのほうは、どちらかというと、集団は小さくしないほうがいいという考え方です。 なぜ小さくしないほうがいいかというと、収支バランスが非常にとりにくくなって、リ スクが分散できない。他方で労災防止努力ということを考えたときには、むしろ、なる べく業種別にやっていたほうがいいという話になって、その両者のどこで折り合いをつ けるかを考えようというのが(2)であるという趣旨に私は理解していたのです。そのこと を表しているのだと思います。 ○高梨委員  細分化したところで、異なる集団が連帯してやるようなことはできないという面があ る、という書き方ならまだわかるのですが、ちょっとどうかなと思います。 ○岩村座長  そこは、いま出たご意見も考えてみますが、それほど明確でもないような気がしま す。  次は10頁の3「メリット制」です。これは先ほど少し議論も出たところですが、いか がでしょうか。 ○高梨委員  メリット制について、適用要件緩和の問題と、増減幅の拡大と2つの問題が書いてあ りますが、私として、両方に共通して申し上げたい部分と、個別に分けて申し上げたい ことがあります。私自身は、適用要件の緩和なり増減幅の拡大というのは必要だと考え ています。なぜかというと、事業主で努力をした所が報われるという制度をつくってお いたほうがいいと思う。今でも制度があるわけですが、それをより促進していく制度が あっていいと思っているからなのです。現実には、努力をしない所が報われるという現 象が出てくることがあると思いますが、それはそれでやむを得ないことではないのかと 思うのです。むしろ逆に、努力をしても報われないという制度のままにしておくより は、一部努力をしないで報われるというような所が出てくるとしても、それはそれでや むを得ないのではないのかと、こんなふうに思います。  しかも、努力しても報われない所が出てくる、保険料率が上がるということが出てく る可能性があるわけですが、保険料率が高くなった事業主が永久に高い保険料率のまま 行くということではなくて、やがて自分たちも努力をしていけばマイナスの増減幅にな るわけですから、敗者が復活できるシステムにもなっているのだと思います。そういう 意味で、方向性としては、メリット制についての緩和という方向で動くべきだと思いま す。  正確かどうかわかりませんが、自動車損害賠償保険制度でも、自分がたまたま病気で 自動車に乗らない。だから、事故も起こさない。それは全く努力していないわけです が、次のときに1ランク上のメリットが適用になるという制度もあるわけです。  さらに、労災適用事業所が約260万あるわけですが、メリット制が適用されているの は、現状では15万(5.7%)の事業所だけです。それ以外の所はメリット制の適用にな らないというのがいまの仕組みです。どこまでがいいかというのは別として、5.7%を 上回るような制度づくりをしてもいいのではないかと私は思います。  最近、大企業において重大な事故が生ずるということが結構頻繁に起きています。そ れで、その災害防止を図ってもらおうというときに、規制を強化するという方向、いわ ゆるムチによって災害防止をさせる方向のみということではなくて、一定の努力をすれ ばメリットがあるという制度を併せて行って、自主的な災害防止活動を促進させていく ことも必要ではないかと思います。  さらに、適用要件の緩和。(1)の(2)のbで、適用拡大される小規模事業場の多く が無災害であるということでデータを出しているわけですが、ここで小規模事業場と言 っているのは、どの程度のことを念頭に置いた記述なのかよくわかりません。すでに配 付された資料によると、印刷・製本、電気機械、交通運輸、電気・ガス等の場合は、97 人の事業所でもメリット制の対象にならないのです。人数と災害率とを組み合わせた形 で行っているためですが、約100人、97人以下の所が定められた保険料率の適用になる よりは、もっと小さな所でもメリット制が適用になる仕組みをつくったほうがいいので はないかと思うのです。  継続事業と有期事業との関係ですが、一括有期の建設や立木の伐採事業の場合は、保 険料額が年間100万円を超える所が対象になることになっているのです。一方、人数と 災害率で計算すると、私の大ざっぱな計算で、年間の賃金総額が500万円ということで 計算すると、継続事業の場合、保険料が200万円を超えます。どちらに合わせるかとい う問題になるのですが、それでは一括有期のほうを上げればいいではないかという考え 方ではなくて、もう少し範囲を拡大する方向に動いてもいいのではないかと思うので す。ところが、メリット制についての委員の記述を全体的に見たときの私の印象は、非 常に否定的な形での記述にしかなってないと感じられるので、いかがかと思います。 ○岩村座長  (1)と(2)のウエイトというのは、否定的か肯定的かということよりも、検討会におけ る発言の状況が反映されているのかと思っていて、特に肯定的か否定的かという趣旨で (1)と(2)のウエイトをつけているのではありません。 ○大沢委員  (1)と(2)は両論並記ではないかと思いますので、いま高梨委員がおっしゃったことを (1)に書き足せばいいわけです。今まで検討会でおっしゃったことが反映されていない というお考えのもとに、今日繰り返しておっしゃっているのか。それとも、今日改めて おっしゃったということで、それが(1)にもう少し書き込まれればよいということなの でしょうか。出た意見を書くということなので、それ以外にはないと思うのです。出な かった意見は書けないし、出た意見をむげに無視するわけにもいかない。(2)のほうが 分量的に大きくなっているのは、それだけ意見が出たということだと思います。 ○高梨委員  (1)が2行で、(2)がa、b、cと非常に詳しく書いてあるので、私としては大変気に なったということです。 ○岩村座長  わかりました。いま大沢委員のアドバイスもありましたので、配慮させていただきま す。 ○大沢委員  これは当然議論があったと思うのですが、いま高梨委員のおっしゃった、努力して報 われるとか報われないというのは、保険料負担が軽減されるかどうかということだと思 うのです。労働者の立場から見れば、事故が起こらないようにする。つまり、事故率を 下げるというインセンティブがあって投資しても、それによって事故率が下がる糊代み たいなものはかなり限られているということを考えると、インセンティブだけを強調す るのはいかがなものかというのが私の意見です。  それから、事業主が努力をしなかったからといって、その下で起こった事故で被災労 働者の保護あるいは救済が行われないことがあってはならない。それが労働者の側から のいちばん基本的な点だと思います。そのことは、前のほうには書かれているのです が、後ろのほうになると、事業主のインセンティブの話が多くなるので、そのことはも う一回踏まえておきたいのです。  自動車保険の話があって、病気で運転しないと次の保険料が安くなるということでし た。これを事業主に当てはめると、操業しなければ保険料負担が安くなるような話です が、そうではなくて、操業して雇用機会を提供して、その上で事故の防止にも努める。 しかし、不幸にして事故が起こってしまった場合には、被災労働者の保護に抜かりない システムであってほしいということではないかと思います。アナロジーがいささか合致 しないのではないかという印象を受けた次第です。 ○岩村座長  メリット制についてほかに意見がなければ、11頁の特例メリット制の所に進みます。 これについては先ほど議論のあったところですので、特段のことがなければ、それでよ ろしいということにさせていただきたいと思います。最後の12頁は「今後の検討の進め 方」についてですが、引き続き作業をいたしますということですので、検討会の委員の 皆様には引き続きよろしくお願いするということでよろしいでしょうか。  今日の論点整理(案)については貴重なご意見をいただき、ありがとうございまし た。特にご異議等がなければ、進め方として、次回の検討会で、今日出た委員の皆様の 意見を踏まえて中間報告の取りまとめを行いたいと存じます。その上で、労災保険部会 に中間報告を提示するという流れになろうかと思っておりますが、それでよろしいです か。                  (異議なし) ○岩村座長  事務局のほうも、それでよろしいですか。 ○数理室長  はい。 ○岩村座長  では、そういうことで進めさせていただきたいと存じます。次回の検討会の開催につ いて、事務局から説明をお願いいたします。 ○数理室長  次回の検討会については、日程調整等をしたところ、10月5日(火)の17時から開催 したいと考えております。場所はこの会議室ということで予定しておりますので、よろ しくお願いいたします。 ○岩村座長  次回は第7回になりますが、10月5日(火)の17時からということになりますが、そ れでよろしいでしょうか。                   (了承) ○数理室長  ご欠席の委員もおられますので、その方のご意見もお聞きしたほうがいいと思います が。 ○岩村座長  今日は少し遅れて来た方も欠席の方もおられましたので、それらの委員の意見は、別 途事務局のほうから取って頂くことにいたします。 ○数理室長  いまご出席の委員でも、後で意見を言い忘れたけれどもということがあるかと思いま すので、1週間ぐらい余裕を持って、15日ぐらいまでに意見の提出をお願いしたいと思 います。 ○岩村座長  今日ご欠席の方については事務局のほうからご意見を取っていただき、今日ご出席の 方々も、何か意見があれば、15日ごろまでに事務局のほうにお寄せいただくということ にさせていただきます。今日は長時間にわたり大変充実したご議論をいただき、どうも ありがとうございました。今日の検討会はこれで終了いたします。 照会先  労働基準局労災補償部労災管理課労災保険財政数理室  電話:03−5253−1111(代表) (内線5454,5455)